■議事録一覧■

エコツーリズム推進会議(第3回)議事要旨



○日時 平成16年6月2日(水)10:00~12:00
 
○会場 東京都千代田区麹町 東条インペリアルパレス4階「吹上の間」
 
○出席者 推進会議委員27名中25名出席(下村委員、吉野委員欠席、代理出席5名)
随行者、傍聴者、マスコミ関係者等を含め、出席者総数115名
 
○議題 [1] エコツーリズムの推進方策について
 
【議事】
  1. 環境大臣挨拶
     
  2. 委員の出席
     
  3. エコツーリズム推進会議及び同幹事会の経緯について
     
  4. エコツーリズムの推進方策について
    事務局から提示された5つの推進方策等に関するフリーディスカッションの後、とりまとめ
     
  5. その他

<委員からの主な意見>

○初出席委員からの発言
日本エコツーリズム協会は、自然保護を実践する者と観光業に携わる者が共にエコツーリズムを推進しようと設立された団体である。当初は議論ばかりであったが、最近では実務を担えるようになってきた。今後本会議で決定された事項の実践に携わる中で実力をつけ、現場を持つ自然保護関係者や観光業関係者と、行政との橋渡し的な役割を果たしていきたい。ナショナルトラスト協会の会長も務めているが、最近は単に維持するだけではなく、人々に使ってもらうことで保全につなげる議論も出てきている。民間企業が開発を目的として購入した土地が、今未開発のまま残されているケースが多い。このような企業に積極的に働きかけ、エコツーリズムでの活用を図ってはどうか。
自然環境保全と観光振興の両立を基本施策の一つとする北海道では、エコツーリズム推進に向けて最大限努力していきたいと考えている。世界自然遺産地域として推薦されている知床については、関係自治体及び団体と連携しつつ、エコツーリズムの先進的な取り組みになるよう努力し、さらにこの運動を道全域に広げていきたいと考える。
今まではツーリズムが環境に与える負の影響のみ言われてきたが、ツーリズムが環境保全に寄与できること、保全型のツーリズムが成り立つことを強調するべきである。そのためにはエコツーリズムの定義を憲章等で明確にする必要がある。現案はわかりやすく読みやすいが、定義がはっきり謳われていない。また、エコツーリズムは自然の保全とともに文化保全の要素も含んでおり、日本の自然は原生的なものだけではなく里地里山も多い。エコツーリズムを推進する上では、文化面も含めた幅広い考え方を伝える工夫や里地里山地域における取組を支援していく必要がある。モデル事業実施地区として世界遺産地域が多くあがっているが、身近な自然も都市住民にとっては同じくらい重要であり、そのような場所における取組にも力を入れているというアピールがもっと必要。
 
○エコツーリズム憲章について
現案は、観光パンフレットにある宣伝文句のように感じる。エコツーリズムが積極的に自然を保護・回復する活動であることを強調すべきであり、地域の環境保全活動を促進するものである必要がある。自然保護憲章の行動指針は非常にシンプルな形でわかりやすいが、この抽象的な文章からは何をしてよいのか読みとれない。どのように行動すべきなのか、より具体的な表現をすべきである。
5つの推進方策の中で最も画期的なものがエコツーリズム憲章である。他の方策は時間とともに変化していくが憲章は変わらないものであり、今回国が言葉を認めて推進していくことに歴史的な意味がある。マニュアルにおいてエコツーリズムの概念は明確にされているので、ガイダンスとルールの必要性を可能な限り憲章本文にも盛り込んでほしい。憲章の大きな目的は、エコツーリズムと他のツーリズムとの違いを感覚的に理解してもらうことだと思うが、今の案ではわかりづらいところが弱点。
日本は海に囲まれた国にもかかわらず、「海が広がっている」という表現のみでは寂しい。
事業者には緩やかすぎる印象があるかもしれないが、この憲章は、一般の人々に対して自分と自然との関係をどう作っていくかという観点から、やさしく入りやすい形で訴えかけたいということだと思う。やさしいトーンでも、自然に対する謙虚な気持ちを表す言葉は入れられると思う。また、最後の部分で「大自然」・「里山」と限定しているが、今後エコツーリズムが都市観光にも広がっていく可能性がある中で、限定しないほうがいいのではないか。
憲章はエコツーリズム推進の核となるもの。ガラパゴスではまず観光客に対して厳しいルールの説明がある。エコツアーと称した環境破壊もずいぶんあるので、やさしさの中にも厳しさが必要。あいまいだとエコツアーと称するものはすべて環境に配慮した観光に入ってしまうことになる。小学生にもわかるような、明確かつわかりやすいものにしてほしい。始めは狭くしておいて徐々に広げていかないと、いきなり底辺を広げて精神からはずれたものが流布した後に原点に戻ろうとしてもできないと思う。
本会議ではエコツーリズムを里地里山などにおける取り組みも含めて広くとらえている。この憲章は事業者より国民一般に向けたものであり、こういう形で良いと思う。やさしい言葉ではありながら「自然のいのちと人のいのちを共振させる」とは実はとても厳しいことを言っており、謙虚さがあらわれている。
幹事会における議論では、エコツーリズムの考え方をいかに広く理解してもらうか、エコツーリズムにいかに夢を持ってもらえるかということを盛り込むよう考えた。できる限りエコツアー的な文章にして、読む人の感性に訴えかけるものを作ろうということでこのような形になったと理解している。
ある程度エコツーリズムを理解している方からは、もっと厳しくしなくてはいけないといった意見が出るかと思われるが、今はエコツーリズムを知ってもらい、その入り口に立ってもらうことを考えるべき段階である。「自然のいのちと人のいのちを共振させる」という文言を理解すれば、おのずとやるべきことが見えてくるだろう。伝えるためにはまず広く読んでもらうことが大事。ルールはエコツーリズムの必須条件ではあるが、付属の説明資料に含めればよいのではないか。
この憲章案を読んで非常に大胆なものだと感じた。自然保護憲章などとは違う形になったのは、既存のものとは違う切り口で取り組んだことの表れだと思う。エコツアーは自然を保護しつつ楽しむという一段レベルの高いツアーだと思うので、抽象的な表現からすべきことを読み取ってもらい、伝えていくということで結構だと思う。
詩では主体が重要だが、憲章の中間部分ではその主体があいまいになっている。エコツーリズムの多くの舞台は地域の農産漁村である。そこで生活をしている人々の希望や誇りから出てくる生の言葉を詩に表現し、その言葉を全国の人々が憧れを持って耳を傾けるという形が良いのではないか。
具体的な修正案として、例えば、「人のくらし、歴史や文化を、そうした自然とともに育てていこう」という形で、地域の自然や文化の保全に主体的な関わっていく必要性を示してはどうか。また、「森が~」の連において、永遠に変わらないものをただ外から眺めるという描写だけではなく、その自然の中がどうなっているのか見てみること、生き物が生きていることを知ること、などを加えてはどうか。
憲章を今後どのように活かしていくかが大切である。旅行者ばかりでなく、エコツーリズムの商品づくりをする旅行業者や地域住民などの理解を得て、流れと体制をつくることが重要である。
 
(事務局)
 この場でまとめることは困難であるため、事務局預かりとさせていただきたい。各委員からいただいたご意見の根本的なところについては、最大限検討して推敲した上で、別途ご相談させていただく。
 
○その他の施策について
エコツーリズム推進マニュアルにおいて、エコツーリズムの定義に齟齬がみられるので、再度精査すべき。
マニュアルでは第4章が「資源管理」となっているが、保全の意味合いが薄れてしまう。既存のツーリズムとの区別のためにも「環境保全」の方が良い。モニタリングや野生生物との付き合い方についても記述すべきである。また、ガイドとインタープリターの表現についてもどちらかに統一すべきである。エコツーリズムは、地域振興や文化資源の保全の面でエコミュージアムと関係が深いので、エコミュージアムが推進されるしくみにしてほしい。
モデル事業実施地区は当初予定の8箇所から13箇所に増やしたとのことだが、各地区500万円程度の予算ではできることが限られてしまう。東京都は小笠原の自然環境保全に年間1億円以上の予算をつけている。広く薄くやるよりも、限定した地域に集中投下し、その後広げていく方が良いと思う。
自然環境の保全が中心であり、文化保全の要素が見えにくい。海外事例では、少数民族がエコツーリズムに活発に参加しているが、今回アイヌ文化がモデル事業に入っていないのが残念。少数民族の文化に興味を持っている外国人観光客は少なくないし、他にも日本には魅力的な文化遺産が数多くある。また、グリーンツーリズムやブルーツーリズムとエコツーリズムの区別が見えない。農業体験や漁業体験はどこでもやっているが、エコツーリズムでは資源保全型の体験となる基準が必要ではないか。バンクーバーの環境歴史ツアーは、都市化による環境変化を見るもので、都市型のエコツアーの例として参考になると思われる。
エコツーリズム大賞は継続的な評価が重要である。3~5年に一度開催し、回を重ねるたびに選定の基準を高くして、レベルを上げていくことが考えられる。また、入選しても再度応募ができるようにして、連続して受賞する地域が評価されるようなシステムにする。マスツーリズムのエコ化については興味深く、どのようなしくみで実現させていくかを考える必要がある。
本会議における結果を観光施策に活かしていきたい。また、ここでの議論は成熟過程のものであり、現場の取り組みを踏まえて、柔軟な見直しをすべきである。マニュアルにある「資源管理、特に自然生態系の管理」の表現は、自然に対する謙虚さに欠ける印象を受けるので、変更したほうが良い。
沖縄県では、沖縄観光振興計画に基づくエコツーリズムの推進を実施しており、エコツーリズム推進計画の策定、重点推進地域として指定されている西表島の仲間川における保全利用協定の県知事初の認定など、先進的な取り組みを行っている。
 
(事務局)
 マニュアルについては、本日の議論を踏まえて内容を再確認し、用語統一をきちんと行う。モデル事業の箇所数については、53件という予想を超える応募があったこと、直接担当者からのヒアリングを実施した上での判断ということでご理解願いたい。選定されなかった応募自治体についても、別の形で支援を行い、連携の関係を築いていきたいと考えている。
 なお、本日の議論は大変短い時間しか確保できなかったこともあり、各委員におかれては、エコツーリズムに対する思い、ご意見について、千字程度でまとめて事務局にご提出いただきたい。極力各推進施策に盛り込ませていただく。