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■議事録一覧■

中央環境審議会 自然環境・野生生物合同部会
第7回 生物多様性国家戦略小委員会
議事要旨


1.日時

平成24年6月26日(火)15:00~17:30

2.場所

スタンダード会議室 虎ノ門HILLS 2階ホール

3.出席者(敬称略)

委員長:
武内和彦
委員長代理:
山岸哲
委員:
あん・まくどなるど、小泉透、桜井泰憲、白幡洋三郎、辻本哲郎、土屋誠、中村太士、宮本旬子、吉田謙太郎、吉田正人、鷲谷いづみ(五十音順)
事 務 局:
環境省(自然環境局長、大臣官房審議官、総務課長、自然ふれあい推進室長、自然環境計画課長、国立公園課長、野生生物課長、外来生物対策室長、鳥獣保護管理企画官、生物多様性地球戦略企画室長、生物多様性施策推進室長、自然環境整備担当参事官、生物多様性センター長)

4.議事要旨

(1)次期生物多様性国家戦略(案)の検討

環境省より[資料1]に基づき次期国家戦略の案を説明。この後、その内容について検討した。

<前文及び第1部(理念、目標)について>

2ページで、自立分散型の地域社会という言葉が出てくる一方で、ネットワークを形成するという記述があり、矛盾しているように感じる。また、36ページの網掛けで示してある部分は何を意味するのか。
自立分散型を基本としながら、その地域中でまかなえないものについては地域を広げて考え、ネットワークを形成していくという考え方を示している。また、網掛け部分については、レッドリストの改訂を予定しており、時間的に改訂結果を反映することができるようであれば反映する見込みであることを示している。(生物多様性地球戦略企画室長)
前文から第1部前半にかけて、生物多様性をテーマに何が問題かを分かりやすく構成されている。理念もこれまでの意見をうまくまとめて分かりやすくなっている。理念は生物多様性国家戦略の理念というよりは、生物多様性を踏まえたあるべき社会の理念ということであれば書き方が少し異なるので、表現は工夫をした方がよい。第4の危機については、生物多様性という考え方に基づくと危機は4つあるという整理でよい。具体例が多く記述されているが、各危機の根本的な内容を最初にまとめて記述し、具体例は補助材料という扱いにした方がよいのではないか。
世界の生物多様性に責任を持つ日本の姿勢を示す記述があった方がよい。日本人が暮らしの中で消費しているものが、生産現場で絶滅危惧のリスクを高めているという問題がある。科学誌のNatureに、サプライチェーン分析によってどの国がどの程度影響を与えているかを分析した論文が掲載された。国別では、アメリカが第1位で1000種、第2位は日本で700種であった。グローバルな視点で定量的なデータが示されたのは初めてである。こうした認識をどこかに記述してほしい。
57ページの「短期目標」は、国別目標の達成を目指して行動を実施するとなっているが、行動を実施することにより国別目標を達成するとした方がよいのではないか。また、72ページでは章のタイトルでは基本方針とあるが、その後には出てこない。基本戦略が基本方針にあたるのではないのか。
短期目標の書きぶりについては、愛知目標でも短期目標は緊急かつ効果的な行動を実施するというように、アクションを起こすことを目標としており、これを踏まえた内容としている。基本方針については、これまでの国家戦略でも基本戦略と基本的視点の二つに整理をしているので、これを踏襲したい。鷲谷委員ご指摘の海外の生物多様性に影響を与えているという点については、例えば10ページや、56ページの自然共生圏に関するところなどで記述している。危機の構造について、白幡委員の理念的な内容と具体例を書き分けた方がよいというご指摘については、現在も内容としては別々に書いているので見せ方を工夫したい。(生物多様性地球戦略企画室長)
8ページの記述は、マングローブ林を伐採してエビ養殖場をつくることが良いことに感じる記述となっているので見直した方がよい。75ページの森林環境税がPESと結びつけて記述されているのはありがたいが、森林環境税は水源地の保全に焦点を絞っており、従来の森林管理の延長にある。今後、生物多様性の観点を入れていくという課題があるという記述にするとよい。
エビ養殖場の記述については見直しを検討したいが、他に良い事例があればご指導いただきたい。(生物多様性地球戦略企画室長)
エビ養殖場の記述は書き方を工夫することで対応可能ではないか。
一時的には供給サービスを向上させるように見えるが、別のサービスが低下するというトレードオフの関係にあるということ。
69ページで海洋保護区について記述されているが、どこかに海洋保護区の定義を記述した方がよい。また、日本のあるべき海洋保護区の姿を何処かで示しておくと良い。

<第2部について>

105ページでImpactのところは、Impact/Benefitとしないと愛知目標と合わない。
ご指摘の点については、原文を確認した上で修正をしたい。(生物多様性地球戦略企画室長)
107ページ国別目標A-1-3では、奨励措置がおまけのように入っているが、独立した目標にしてほしい。また、負の補助金を見直すという記述も是非入れてほしい。ODAなど国際的な補助金が、ハード整備などで海外の自然に影響を与えている例も指摘されている。 108ページB-1-3、B-1-4については、環境省と農林水産省の役割分担を明確にするために分けたとのことだが、野生生物管理は個体数管理と生息地管理と被害防除の3本柱であり、これでは環境省は個体数管理の担い手確保だけを進めるように読める。また、B-1-4では農林水産省が被害対策をすることになっているが、農業被害と森林被害の両方を入れる必要がある。二つに分けたことで抜け落ちている点があるのではないか。 110ページで藻場・干潟の創造面積、117ページで湿地・干潟の再生の割合という指標があるが、何が違うのかが分かりづらい。 113ページのC-1-1で、保護地域について手法とベースラインを整理するというのは良いが、関連指標群では保護地域の面積など量的な指標しか設定されていない。質的な指標として、IUCNの管理効果評価を行った公園の数などを設定してはどうか。
A-1-3の奨励措置はおまけとして記述しているものではない。負の奨励措置については、何が対象となるか政府内でも整理ができていない状況であり、国の目標として掲げることは難しい。このため、正の奨励措置を実施するという記述にしている。 B-1-3については、「個体数管理をはじめとする」とあるように、個体数管理だけをやればよいという認識ではない。主要行動目標はすべてを網羅する書きぶりにはなっていないが、ある程度網羅的に欠かざるを得ないという限界の中で記述していることにご理解をいただきたい。 干潟等の指標については、元となるデータが異なっているためご指摘のような表記となっており、「藻場・干潟の保全・創造面積」は水産庁の漁港魚場整備長期計画、「湿地・干潟の再生の割合」は国土交通省の社会資本重点整備計画から引用している。 IUCNの指標については、指標として設定できるかどうか十分な検討が必要であり、現段階で指標として追加することは難しい。今後、保全・管理の手法を検討していく過程で検討させていただきたい。(生物多様性地球戦略企画室長)
118ページで(関係府省)とあるが、環境省以外の府省については決まっていないということか。
関係府省で構成する生物多様性国家戦略関係省庁連絡会議を設置しており、その構成メンバーとなる。(生物多様性地球戦略企画室長)
行動目標の最後の括弧内に省庁名が書いていない場合、その省庁はやらないということか。A-1-2の可視化は良い目標だと思うが、国土交通省が入っていないなど、行動目標に関係の深い省庁が入っていない場合があるのではないか。関連指標群についても、これですべて網羅しているという理解でよいのか。それとも、今後さらに検討をしていくものなのか。例えば、森林面積などは生物多様性の保全に直接寄与しているかなど吟味がされているのか。また、121、122ページで行動目標と第3部の施策との対応を整理しているが、指標とはどう関連しているのか。
関係府省については、再度よく検討して整理していきたい。 関連指標群について、現時点で出せるものを整理したが完璧なものではないと認識している。生物多様性の総合的な評価や中間評価を実施する中でさらに検討していきたい。(生物多様性地球戦略企画室長)
今回初めて愛知目標の達成に向けた指標について整理したが、今後改善していくという位置づけのものであるということであれば、その旨を第2部に記述できないか。
106ページで「中間評価の結果も踏まえ、必要に応じて見直す」と、記述している。(生物多様性地球戦略企画室長)
この表現では、現時点でもちゃんとした指標を設定しているが、それをさらに改良していくと読める。そうではなく、現時点では不十分な指標であるが、今後指標を追加していくことや精度を高めていくということが読めるような記述とした方がよい。
委員長にご指摘いただいた方向で作業したい。愛知目標の達成状況について、客観的に数値で示せる指標を出していくというチャレンジは大事と認識している。指標については、不十分だが試みとして出しているということを書いていきたい。まだ時間があるので、今のものもより良くしていきたい。(渡邊局長)
107ページで、A-1-3は多様なものが含まれ曖昧な目標になっており、関連するA-1-4は技術的な狭い目標になっている。生物多様性地域戦略の策定を促すという目標を設定してもよいと思うが、なぜ設定できないのか。また、関連指標群から生物多様性地域戦略の策定自治体数が削除されている。
生物多様性地域戦略の策定促進を緩めるということではなく、A-1-3の中で生物多様性地域戦略も含めた広い意味で整理している。(生物多様性地球戦略企画室)
生物多様性地域戦略の策定を促すとした方がずっと分かりやすい。
記述の順番も含めて再度検討したい。(生物多様性地球戦略企画室長)
大事な点は愛知目標を読み込む必要がある。愛知目標を採択するまでに、さまざまな議論があって負の奨励措置と正の奨励措置の2つ入れることになった。行動目標でもこの2つについて言及する必要がある。具体的に何が負の奨励措置か特定できないという課題があるのであれば、課題として何があるかが分かるような記述は必要である。IUCNの管理効果評価など現段階で指標にできないものについても、なぜできないかを分かるようにしないとそのまま検討されないおそれがある。
いただいたご指摘を踏まえ、関係省庁とも相談して、現時点でどこまで反映できるか検討したい。(渡邊局長)
行動目標と指標の関連性について、例えばモントリオールプロセスでは目標として設定した基準に対し、どの程度達成されたで達成度を判断する。この国家戦略で示されている行動目標と指標は、実際の達成度を明確に示す関係になってないのではないか。また、関連指標群はオリジナリティを出そうとして挑戦的なものを掲げているように思える。白書などで使われている長期的な統計資料でも良いのではないか。
整理については更に検討したい。(生物多様性地球戦略企画室長)

<第3部について>

これまでの生物多様性国家戦略について、うまくいった点、うまくいかなかった点などをまえがきなどに書くと分かりやすくなるのではないか。説明の途中で「評価」と言った言葉が出てきたが、国家戦略の評価についてはどのようになっているのか。[再掲]はページ数を書いた方が分かりやすい。250ページの「第3章第1節東日本大震災からの復興・再生」の「基本的考え方」について、「森・里・川・海のつながり」という表現があるが、東北で実際に被害を受けたのは海岸に近い方々であり、自分たちの住んでいるところを里と認識しているのか。里という表現だけでは海に近いところということが読み取れない。
生物多様性国家戦略については点検を毎年行っており、国家戦略2010の点検結果については本審議会でも報告させていただいているが、評価の役割は点検が担っている。なお、第1部の基本戦略の中において、これまでの施策の現状と課題が分かるよう記述を見直している。本国家戦略の評価等の方法については前文に記述している。なお、ご指摘のあった「評価」は今後実施する予定の生物多様性の総合評価についてとなる。 [再掲]の表示の仕方については検討したい。 東日本大震災における「森・里・川・海のつながり」については、グリーン復興プロジェクト自体が地域全体の復興というコンセプトであり、周辺の里も含め、地域全体で被害地域を支えていくという趣旨であり、被災地域だけを対象としたものではないのでこのような表現となっている。(生物多様性地球戦略企画室長)
前の方で出てくる里山と里海のつながり、森・里・川・海のつながりという言葉を整理するとよいのではないか。山の方と沿岸でそれぞれのかたまりがあることと、それがつながっているということは二つに分けて書くとよいのではないか。
第1部で使われている重要な言葉と、第3部で各省が使っているテクニカルタームとの整理をしてほしい。森林において「多面的機能」という言葉が出てくるが、これは生態系サービスと同じではないか。意味が同じであれば、表現も同じにして注釈をつけるなどの工夫をしてほしい。
森林については生態系サービスという言葉で使った方が良いと思っている。「多面的機能」と「公益的機能」は違う意味で使われているのかなどを整理し、言葉の統一をする必要がある。
言葉の統一については、関係省庁と相談し、整理できるものは整理することとしたい。(生物多様性地球戦略企画室長)
199ページ30行目の保護増殖事業計画については、その種を圧迫している要因が捕獲や売買だけでなく、里山の生物など生息地の改善等が保全に効果的な種も対象とするということか。そうであれば、もう少し分かりやすい表現にしていただきたい。 200ページ22行目のジュゴンについては、今までどおり進めるということだが、普天間基地問題でも絶滅の縁に立っていることは明らかになっており、早急に国内希少野生動植物種として位置付けるなど、もっと前向きなことができないか考えてほしい。 208ページ35行目の「外来種ブラックリスト」の作成についてはよいことであるが、「ブラックリスト」という言葉に誤解があるといけない。悪影響を与えるおそれがあるものや影響が現れるまで時間がかかるものなど「グレー」のものも含んで欲しい。 227ページ26行目のボン条約について、「対応も検討」と今までよりは前向きであるが、「条約への加盟を検討」などもう少し前向きな記述をお願いしたい。 229ページ8行目の「ユネスコエコパーク」は愛称であり、生物圏保存地域(ユネスコエコパーク)とすべき。
保護増殖事業計画の記述の主旨はご指摘のとおりで、生息環境整備が必要な種は生息環境整備を進めるとともに生息域外保全など必要な対策を進めるということである。もう少しその辺りが伝わる表現を考えたい。 ジュゴンについて、危機的な状況であることは認識している。 ブラックリストについては誤解のないようにもう少し説明を加えたい。 ボン条約への対応については政府内でも意見の相違があり、「加盟」とまでは書くのは難しい。(亀澤野生生物課長)
海洋保護区については既に定義ができているが、中身は曖昧なものである。海洋保護区は漁業だけでなく、海上風力発電など全ての人間活動による海域利用と関わっている。海洋保護区として認識されていないことも多く、啓発も必要ではないか。また、環境省だけでなく全ての関係省庁が関わってほしい。
関係省庁と十分相談し、できる限り良い表現としたい。(自然環境計画課長)
森林の「基本的考え方」の中には攪乱の重要性がきちんと書かれているが、具体的施策ではそれを踏まえた施策が書かれていない。例えば、風倒木については風倒被害と捉えるのか、風倒地を残すとするのか。そうした場所を新たに造成して植林しても結局うまくいかない。海外でも攪乱の模倣をどう技術として取り入れるかを考えている。こうした考え方が書けるなら書いて欲しい。
本日の各委員への回答で、真意を理解してほしいという説明が多かったが、一般の人はそれを聞く機会がないので、具体的な対応も忘れないようにお願いしたい。
森林総研の記述について、修正案を送りたい。
東日本大震災関連の記述を第3章としているが、生物多様性に関わる内容だけで章を立てようとすると無理があるのではないか。第2章の「自然共生社会、循環型社会、低炭素社会の統合的な取組の推進」の中で限定的なものとして捉えた方が現実的ではないだろうか。
委員長とも相談して判断したい。(生物多様性地球戦略企画室長)

<全体について>

本日は小委員会の最終回として、パブリックコメントにかける生物多様性国家戦略(案)を決定する必要がある。本日いただいたご意見等に対応した修正案の最終的なとりまとめは委員長に一任させていただきたい。最終的な生物多様性国家戦略は、7月から実施するパブリックコメントと2回の審議会合同部会を経て決定される。
今年1月に審議会に諮問し、小委員会は3月から7回にわたって貴重な御意見をいただいたことに感謝申し上げる。今回の改定は5回目の戦略づくりで、COP10を受けての対応、東日本大震災を経て自然だけでなく人と自然の接し方を考え直すことを含めた改定ができればということで検討を進めた。今後実施するパブリックコメントでの意見も活かした形で修正案を作成し、この後の合同部会でご議論いただきたい。(自然環境局長)