平成24年5月14日(月)13:30~17:00
環境省第1会議室
大久保尚武 | 小泉 透 | 桜井 泰憲 |
佐藤友美子 | 白幡洋三郎 | 白山 義久 |
辻本 哲郎 | 土屋 誠 | 中静 透 |
中村 太士 | 堀内 康男 | 宮本 旬子 |
吉田謙太郎 | 吉田 正人 | 鷲谷いづみ |
自然環境局長 | ||
大臣官房審議官 | ||
自然環境計画課長 | ||
総務課長 | ||
生物多様性地球戦略企画室長 | ||
国立公園課長 | ||
生物多様性施策推進室長 | ||
自然ふれあい推進室長 | ||
野生生物課長 | ||
動物愛護管理室長 | ||
外来生物対策室長 | ||
鳥獣保護管理企画官 | ||
自然環境整備担当参事官 | ||
生物多様性センター長 |
1.次期国家戦略における骨子(案)について
2.その他
生物多様性国家戦略小委員会名簿・座席表
【事務局】 定刻となりましたので、ただいまから中央環境審議会、自然環境・野生生物合同部会第4回生物多様性国家戦略小委員会を開催いたします。
委員名簿につきましては、お手元の資料の中にお配りさせていただいていますが、本日は21名の委員のうち、16名の委員にご出席いただく予定となっております。
次に、本日の資料について確認をさせていただきます。
議事次第の裏面にあります資料一覧をご覧ください。
委員名簿と座席表をつけておりまして、その後、資料1、2、3としまして、次期生物多様性国家戦略の構成(案)、さらに資料2としまして、骨子(案)、資料3といたしまして愛知目標の達成やわが国の課題を踏まえ必要と考えられる事項ということで、お配りしております。
その他、山岸委員からのご意見という形で1枚紙を一番最後につけさせていただいております。
資料の漏れ等、ございましたら事務局までお申しつけください。
それでは、これよりの議事進行につきましては、武内委員長にお願いいたします。
【武内委員長】 それでは、ただいまから第4回になりますが、生物多様性国家戦略の小委員会を開催させていただきます。
本日の議題でございますが、お手元に配付されております次期国家戦略における骨子(案)についてのご審議でございます。
まず、事務局から骨子(案)について一通り説明いただき、その後、幾つかの章単位ごとにご議論をいただきたいと思います。
途中、15時前後を目処に、一度休憩を挟み、その後、17時まで議論をさせていただければと思います。なお、最後の30分ぐらいは必要に応じて全体を通しての議論をできれば行いたいというふうに思います。
本日も長時間にわたる議論になりますが、どうぞ議事の進行にご協力をよろしくお願いしたいと思います。
それでは、早速でございますが、事務局より骨子(案)について説明をお願いいたします。
【生物多様性地球戦略企画室長】 生物多様性地球戦略企画室長の奥田でございます。それでは、骨子(案)についてご説明申し上げます。
資料は1から3をご覧ください。基本的にこの新しい骨子は、大方針としてスリム化を図って読みやすくするのと、また大きな方向性がわかるように構成するということを目標にしております。このため、重複記述がなるべく少なくなるように構成をし直しております。
資料1の表と裏にわたって、現行戦略、新戦略(案)の全体の構成の違いがわかるように並べてございます。
大きな違いは、戦略と行動計画の2部構成だったものを、第2部に、裏のほうにありますけども、愛知目標の達成に向けたロードマップというものを挿入して、3部構成としたことが大きな構成の違いでございます。細かいところでは幾つか違いはございますけれども、この後の資料の説明の中でご確認をいただければと思います。
例えば、第1部、第2章、第2節では、これまで危機を3プラス1として整理していたんですけれども、この地球温暖化による危機を地球環境の変化による危機として、第4の危機として整理していると、こういったような構成の違いをつくってございます。
第3部の行動計画についても構成を変えていますので、後ほどご説明させていただきたいと思います。
それでは、資料1は適宜、横に置きながらご覧になっていただいて、資料2をご覧いただきたいと思います。
資料2、最初の前文でございますけれども、こちらは生物多様性の保全と持続可能な利用の重要性を一般向けに簡潔に記述するという場所でございます。その際には、今回の見直しの背景として、COP10での愛知目標の採択、それから東日本大震災を踏まえた復興と生物多様性の関係についても記載をするというように考えてございます。
続きまして、第1部でございます。第1部は、生物多様性の保全及び持続可能な利用に向けた戦略ということで、こちらのほうは、まず第1章、生物多様性の重要性と理念というところから始まります。
第1章の第1節は、生物多様性とは何かでございますけれども、これは生物多様性の定義について記載をしてございます。このうち、遺伝子の多様性の部分、1ページ目の一番下のところにございますけれども、現行戦略では、ゲンジボタルの発光周期というものを例示に挙げていますけれども、これは遺伝子の違いではないんではないかというご指摘もあったことから、記述ぶりを変更するとともに、こうした遺伝子の多様性が地域ごとの多様性、種の固有性に関わっている旨の記載を追加する予定でございます。
続きまして、2ページを見ていただいて、第2節、いのちと暮らしを支える生物多様性、これは最初に生態系サービス-生物多様性の恵み-という項を立ててございます。
現行戦略では、具体的な例示をもとに生物の多様性のもたらす恵みについて解説していますが、生態系サービスという言葉を用いるとともに、生態系サービスによって、我々人間の暮らしが支えられ、また生物多様性を保全することが人類の福利につながるという点を説明する箇所でございます。
それから2番目、第2項ですけれども、生物多様性と人間の活動ということで、これは現行戦略では第1節に記載されている大絶滅と人間の活動を、こちらのほうに移して記載をしようと考えております。過去に失われた生態系の再生に向けた取組が各地で進められておりますけれども、生態系が自らの回復能力を超えてしまった場合、全く同じ生態系を人間が再現できないという点、また個体数が著しく減少した種については、個体数の回復に向けた取組によって、順調に個体数が回復しているものもありますけれども、遺伝的な多様性は非常に低い状態にあると言われているものもある、そういったことなど、自然の世界、生物多様性という世界は非常に複雑なバランスのもとに成り立っている上、まだまだ人間にとってわかっていないことや、できないことが少なくないという点を記載したいと考えております。
私たちは、この複雑なバランスを崩すことなく、生態系の回復能力を超えないことで、多様性のもたらすさまざまな恵みを持続的に利用していくことが可能となる点も強調すべきと思います。
続きまして、3ページ、第3節、こちらは生物多様性の重要性でございます。
生物多様性が地球上の命を支えているということを踏まえて、生物多様性の保全と持続可能な利用の重要性を示す考えとして、現行戦略にもある、すべての生命が存立する基盤を整える、人間にとって有用な価値を持つ豊かな文化の根源となる、そして将来にわたる暮らしの安全性を保障するという四つの考え方を記載したいというふうに考えております。
この部分では、既にこれまでの委員会で山岸委員、土屋委員から、人間にとっての有害生物への考え方についてご指摘がございました。これについては、骨子に加えて、生物多様性、一番下の丸ポツに書いてありますけれども、ここの記述には、恐らく生物多様性は非常に複雑なバランスのもとに成り立っている点の理解というものを前提にした記述が必要と考えております。この記述ぶりについては、またご意見をいただければというふうに思っております。
また、この章そのものが重要性と理念という章ですけれども、一般的に理念というのは根本的な考え方を示す言葉でございます。ただ、これまでの戦略のこの部分では、生物多様性の重要性やとらえ方に記述がとどまっておって、根本的な考え方に記述が及んでいなかったのではないかなと思っています。今回の改定では、愛知目標の採択や大震災といったことがありましたので、生物多様性を基盤とした今後の自然共生社会の考え方、こういったものを明確に打ち出すべきではないかという考えもございます。この点も、今日、この理念の部分、ご議論をいただければというふうに思っております。
続きまして、4ページに移ります。
4ページから第2章でございます。第2章は生物多様性の現状と課題でございます。
第1節は世界の生物多様性の現状と日本のつながりというものを記載してございます。
第1節では、COP10、MOP5の成果として、愛知目標の戦略計画ですね、それから名古屋議定書などの主な成果を記述することとしております。また、世界の生物多様性の現状を平成22年5月に公表した地球規模生物多様性概況第3版(GBO3)こちらをもとに記載をしたいと考えております。
さらに、生態系と生物多様性の経済学、TEEBと呼ばれる報告書ですとか、気候変動による生物多様性の影響についても記述をする箇所と考えております。
また、5ページ目の3番、世界的にみた日本の生物多様性の特徴では、我が国の生物多様性のユニーク性、世界的にも生物多様性のホットスポットとして認識されているといったことを記述すべきと考えております。特に、海洋については、黒潮、親潮、対馬暖流などの海流と列島が南北に長く広がっているということが相まって、多様な環境が形成されております。長く複雑な海岸線や、豊かな生物相を持っている干潟・藻場・サンゴ礁など、多様な生態系が見られること、日本海では、種多様性が極めて高い生物多様性のホットスポットで、全海洋生物種数の14.6%が分布することなどを記述しようと考えております。
複数の先生から、ここの部分では生物多様性におけるアジア地域とのつながりについてご指摘がありました。これについても記載をしたいと考えております。
そして、4番の世界の生物多様性に支えられる日本という項を立てておりますけれども、こちらでは、エコロジカル・フットプリントのデータを紹介して、我が国で消費する資源の多くを海外からの輸入に頼っている、また海外の生物多様性にも影響を与えていること、そして我々の暮らしが世界の生物多様性ともつながっていることを認識する必要があると、そういったことをここで記載したいと考えております。
続きまして、5ページ目の下、第2節、生物多様性の危機の構造でございます。ここの部分では、我が国の生物多様性の危機の構造として、これまでの整理されてきた三つの危機、それにプラスして地球環境の変化による第4の危機というものを加えて四つに整理をしたいというふうに考えております。
第1の危機、これ、人間活動や開発による危機でございますけれども、これは現行戦略の記述と同様、現在は急激な開発は収まっていると思われますけれども、依然として影響は継続しているということを記載したいと考えております。
また、第2の危機、自然に対する働きかけの縮小でございますけれども、こちらのほうは、特に里地里山の問題、第2の危機、継続・拡大しているということ、また、シカ、サル、イノシシなどの一部の中・大型哺乳類の個体数や分布域が著しく増加、拡大して、また深刻な農林業被害や生態系への影響が発生していることを記載したいと考えております。
さらに、2050年までに現在の居住地域の2割が無居住地化するということ、さらに4割以上の地域で人口が半分以下になると予想されている、そういった問題点も記述をしたいと考えております。
それから、第3項、第3の危機でございます。これは人間により持ち込まれたものによる危機では、外来種が地域固有の生物相、生態系に対する大きな脅威となっており、特に島嶼部での影響が大きいこと、また化学物質による生態系の影響についても、いまだ明らかではない部分はありますけれども、その影響が懸念されておって、化学物質による生物多様性への影響についても注意が必要であるといったことを記載したいというふうに考えております。
続きまして、6ページ目の一番下、第3節、わが国の生物多様性の現状に移ります。
第3節では、まず、平成22年5月に公表された生物多様性総合評価報告書(JBO)の結果として、わが国の生物多様性の損失は、これまでの生態系に及んでおって、全体的にみれば、損失は今も続いていると結論づけられたということを記載したいと思います。
右側のページに移りまして、第2項の野生生物等の現状では、絶滅のおそれのある野生生物の現状のほか、中・大型哺乳類の分布が全国的に拡大をしているということ、特にニホンジカの分布拡大は大きく、今後も拡大が予想されていること、そして中・大型哺乳類の分布域拡大や個体数の増加による農林水産業、さらには自然生態系への被害や影響というものが深刻化していること、そういったことを記載したいと思っております。
また、外来種については、外来種の防除の活性化等の外来生物法の一定の成果が出ておりますけれども、特定外来生物の根絶ですとか、もしくは封じ込めの成功例は少数に留まっており、侵略的外来種による生態系及び人間生活への被害が、近年深刻化しているということなどを記載したいと考えております。
9ページの4番、東日本大震災による生物多様性への影響のところでは、これは東日本大震災というものが東北地方太平洋沿岸域の自然環境に大きな変化をもたらしたことを記載したいと考えております。
第4節でございます。9ページ下です。生物多様性の保全及び持続可能な利用の状況、こちらでは、生物多様性の保全及び持続可能な利用に係る制度の概要、それから地域指定制度等の概要を記載することにしております。
また、トキ、アホウドリに関する保護増殖事業ですとか、やんばるですとか、奄美におけるマングースの防除など、一定の成果が出ているという取組についても記載を考えております。
また、10ページ、4番の国際的な取組では、国際的には地球規模の生物多様性の保全に向けた資金動員戦略として、革新的資金メカニズムの開発、こういったことについても議論が行われていますけれども、こうした仕組みづくりについても、積極的に関与していくことが必要といったことを記載したいと思っております。
続きまして、5番の東日本大震災からの復興に向けた取組では、「国立公園の創設を核としたグリーン復興-森・里・川・海が育む自然とともに歩む復興-」を基本理念として、関係者と連携・協働してグリーン復興プロジェクトを進めていくこと、また津波により甚大な被害を受けた太平洋沿岸の海岸防災林を再生するにあたっての技術的方針を取りまとめるとともに、また一部では復興事業に着手していること、そして福島の原発の周辺地域では、放射性物質による生態系への影響の把握ですとか、被災ペットの救援支援を行っていることなどを記載したいと思っております。
第5節、10ページ下です。生物多様性の保全と持続可能な利用に向けた課題、この節でそれを整理したいと思います。
課題としては、COP10を機に生物多様性の認知度は高まったと考えられるが、地球温暖化のような一般的なものには至っていないということ。また、日本人というものは自然と対立するのではなく、自然に順応した形で自然と共生してきた。しかしながら、近年は自然のメカニズム、歴史性を踏まえた伝統的な智恵や技術が忘れられつつあること、そして、生物多様性の状態が十分に把握されておらず、科学的認識に基づく評価と対策のための基礎的な情報と知見が不足していること、そして科学と政策の接点というものが十分でない、そういったことをここで課題として挙げたいと思っております。
また、地域で生物多様性の保全、野生鳥獣の保護・管理、生態系の管理、生物多様性に関する教育を担う人材というものが不足しており、取組を継続するための仕組みづくりは必要であること、それから生物多様性の保全に向けた動きは進展しつつあるものの、まだ点的な取組や個別の主体の取組中心であり、地域や流域など、まとまった単位における様々な主体間の連携した取組の促進が必要であるということ。さらには、多くの資源を輸入するなど、世界の生物多様性に支えられている認識が不足していること、そういったことをここで記載していきたいというふうに考えております。
続きまして、12ページ、第3章に移ります。
こちらでは、生物多様性の保全及び持続可能な利用の目標ということで、まず第1節では、わが国の目標、これは第2部の愛知目標の達成に向けた我が国のロードマップという、第2部、書きますけれども、そちらでの検討も踏まえて、我が国の目標設定をしていきたいと考えております。
目標設定に当たっては、先般、閣議決定された第4次環境基本計画、もしくは現行の生物多様性国家戦略の目標を参考に検討を進めていく予定でございます。
それから、第2節は、生物多様性から見た国土のグランドデザインでございます。こちらのほうは、生態系によって違いはあるものの、過去に損なわれた生態系を回復していくためには、100年という歳月で考えていくことが重要ということで、100年先を見据えて、目指すべき目標像として生物多様性から見た国土のグランドデザインを、現行戦略を踏まえて記載していきたいと思います。
第1項の生物多様性から見た国土のとらえ方は、現行でも同じですけども、国土を7地域に区分して考えていくという記述にしたいと思います。
それから、2番目の基本的な姿勢についても、少なくとも、100年先を見通した長期的視点を持つことが重要である点は現行戦略と同様でございます。ただ、環境基本計画の見直しの際に、白山委員からご指摘のあった沿岸・海洋生態系の時間スケールというものが陸域に比べ短いと言われていると、そういった生態系によって時間スケールが異なる点に留意することが必要であるということを追記したいと思っております。
生物多様性から見た国土デザイン「100年計画」というのも現行施策と同様、また国土の特性に応じたグランドデザインについても、現行戦略を踏襲したいと思います。
それから、国土の特性に応じた七つの地域の説明ですね、こちらのほうは14ページから書かれておりますけれども、この各地域での目指す方向、望ましい地域のイメージは、現行戦略を踏襲しようと考えております。ただ、(2)の里地里山・田園地域の目指す方向として、奥山周辺、中山間地、都市周辺、大都市近郊といった各地域の自然環境や社会状況に応じた里地里山の保全を進めるという点を追記しているところ、それから16ページに飛びますけれども、沿岸域のところでは、安全と環境の調和を図っていくことの大切さについて、これは磯部委員からのご指摘もありましたけれども、安全・安心と環境が調和した沿岸域の保全回復と持続可能な利用を進めるといったことを追加してございます。
国土のグランドデザインにつきましても、自然環境の変化や社会環境の変化を踏まえて、見直すべき点があればご意見をいただければと思います。
続きまして、19ページ、第4章に移ります。
こちらのほうは、保全と持続可能な利用の基本方針でございますけれども、第1節の基本的視点を五つ掲げたいというふうに考えております。これは、これまでの現行戦略では、四つだったものを、環境基本計画を踏まえて五つに整理させていただいております。
1番の科学的認識と予防的順応的態度につきましては、恵みであると同時に大きな脅威となる自然のメカニズムや歴史性を理解し、科学的データに基づいて行われるようにすることが必要であるということを追記してございます。
それから、2番目の広域的な認識につきましては、現行戦略では地域重視というタイトルになっていましたが、地域に即したという用語に修正してございます。
それから、地域における適切で継続した営みというものが、多様性豊かな地域づくりにつながって、それが地域の個性となって人を引きつけ、地域の活力、自立につながるという点を記載したいと考えております。
それから、生物多様性の問題は、地球規模のものから全国規模、地域規模といったものまで、さまざまな階層性とつながりを持っている点、こうした空間のつながりを意識した広域的な視点を持って、各地域における個別、具体な課題の解決に向けた取組を進めていくことが重要である点を記載したいと考えております。
20ページ、連携と協働では、各主体の連携が一層重要ということを強調したいと思います。
それから、21ページ、4番の社会経済的な仕組みの考慮では、大久保委員からもご指摘がありましたけども、技術開発とその普及の必要性について追記してございます。
また、吉田委員からも、ご指摘のあった直接お金に変えられない多様性の恵みというものを評価した上で、社会経済的な仕組みの中に組み込んでいくことも必要であるという点を記載したいと思っております。
5番の統合的な考えと、長期的な観点につきましては、武内委員長からご指摘いただいた、多様性の危機というものは、それぞれ個別に存在しているのではないという点を引き続き記載していきたいと思います。
また、国民あるいは人類が長期的・持続的に受ける利益を考え、生態系の回復能力を損なうことがないよう、健全な生態系を将来にわたって維持管理・保全・回復していく視点を持つことがますます重要になっていくという点を強調したいと思います。
続きまして、21ページの基本戦略に移ります。
第2節の基本戦略では、現行の四つの基本戦略に加えて、これまでは地球規模の視野を持って行動するという中に含まれていた科学的基盤を強化するというものを五つ目の基本戦略として独立させ、五つの基本戦略としております。
重点的に取り組むべき施策など、基本戦略の具体的な内容については、行動計画も踏まえて記載していくことになりますが、それぞれの概要としては、1番の主流化のところでは、その実現のために広報の推進ですとか、連携の促進、さまざまな主体の参画、教育・学習、そういったさまざまな施策を検討するとともに、次期戦略では生物多様性の経済価値評価についても位置づけていきたいと考えております。
また、22ページの2番の人と自然との関係を再評価・再構築するというところでは、伝統的に実践されてきた持続的な農林水産業のあり方について、これを再評価して、里地里山、里海の保全、野生鳥獣との適切な関係の構築などを通じて、人と自然との豊かな関係をつくっていくということ、これは自然共生社会、循環型社会、低炭素社会の統合的な取組を進めていくと、そういったことを記載したいと思っております。
ただ、この現行戦略では、地域における人と自然との関係を新しい形で組み立てていく必要があるという記載はありますけれども、これはどういった考え方で組み立てていくべきかというところ、これについては中静委員から生態系サービスの需給のミスマッチのお話もございました。また、下村委員からは造園学会の提言の中にもさまざまな地域の問題を指摘されております。こういったものを踏まえて、その地域の中での循環だけでなくて、それを生態系サービスでつながる地域なので、循環の輪を広げるということ、また地域を自立すると同時に、広域での連携・交流、また互恵関係を構築するといったこと、すなわち共生圏といったような考え方もあると思いますので、この辺はぜひ深いご議論をいただけたらというふうに思っております。
3番目、森・里・川・海のつながりを確保する、では、こちらは生きものの生息の基盤となっているつながりの確保のために、優れた自然条件を有している地域を核としながら、生態系ネットワークを形成し、流域全体の生態系管理の視点に立って、さまざまなスケールでその空間をつないでいくと。また、保全・再生を進めるという点を記載していきたいと思っております。
現行でも、森・里・川・海のつながりを確保するという現行戦略はありますけれども、この施策の方向性をもう少し明確にするためには、前の3章の国土のグランドデザインの中で示されていた国土レベルでの生態系ネットワークの縦軸、横軸のつながりを基盤にして、国土の保全管理を進めていくと、そういった考えもあるのではないかと思います。そうした基盤は、例えば、国土の環境軸といったようにも読めるんじゃないかなと思いますけれども、この辺もぜひご議論を深めていただければというふうに思っております。
それから、23ページの4番、地球規模の視野を持って行動するでは、ここの部分では、生物多様性というのが、海や空を介して各国とつながっている、また資源の輸入を通して、影響を与えているということ、我々の暮らしが地球規模の生物多様性に支えられているということの認識の強化が必要ということを強調したいと思います。
また、つながりの深い、アジア太平洋地域を中心とした国際協力など、地球規模の生物多様性への視野を持って行動していくこと。
特に、COP10において採択された愛知目標の達成に向けて主導的な役割を果たし、例えば里山イニシアチブを通じた二次的自然環境の持続可能な利用と保全と、それから生物多様性の観点からの地球温暖化への緩和と影響への適応、そういったものの国際協力を推進していくことを記載したいと考えております。
23ページ、真ん中の下の、5番の科学的基盤を強化するでは、自然環境の現状と時系列、時間的な変化を的確にとらえるための指標の開発ですとか、モニタリング、またデータを迅速に収集・分析するといったこと、そしてそれを評価するということですね、それから、さらにはデータを多様な利用者が利用目的に応じて利活用していくこと、そしてまたその整備体制の構築・保全を、状況を評価するために必要な情報の収集、調査研究の推進などの施策を記載したいと思っております。
この意味では、4月に設立が決定したIPBESという世界的なプラットフォームへの貢献といったものも必要であるということを記載したいと思っております。
第3節の各主体の役割と協働、これ24ページになりますけれども、こちらについては、さまざまな主体間の連携とか協働による取組を進めていくということを記載したいと思っております。
ちょっと、時間のほうが過ぎてきましたけども、続きまして、25ページ、第2部、愛知目標の達成に向けたロードマップ、これは新しく立てる項でございます。こちらは、愛知目標の採択に向けて、その前に、GBO3で2010年目標というのが達成されなかったということを結論づける、もしくは臨界点(Tipping Point)を超えるともとに戻らない、生態系サービスの劣化が生じるリスクが高いということで、人類に対する警鐘を鳴らしておりますけれども、これを踏まえた、ここまでの経緯というのを書いていきたいというように考えております。
愛知目標はご承知のとおり、長期目標と短期目標(ミッション)として、効果的かつ緊急な行動の20の個別目標というのを定めてございます。こちらのほうで、実際条約全体の取組を進めるためには、目標達成に向けた自国の貢献を考慮しつつ、各国の生物多様性の状況やニーズ、優先度に応じて国別目標を設定し、それを国家戦略の中に組み込んでいくということが求められております。
このため、この新しい国家戦略では、目標の達成に向けたロードマップとしての役割を担っているという、このあたりはきちっと説明をこの中でしていきたいと思います。
それで、その次にある目標及び年次計画、具体的にマイルストーンの設定につきましては、2020年、もしくは中間評価年である2015年を目標年とする個別目標の達成に向けて、それに沿った形でのわが国の国別目標というのをできる限り設定していきたいというふうに考えております。
行動目標については、第1部の基本戦略とも整合性を図って記載する必要があろうかと思います。
また、国別目標のうち、可能なものについては年次の計画(マイルストーン)ですとか、達成状況を把握するための指標というものも設定をしていきたいというふうに考えております。
ここの部分につきましては、2015年の中間評価の結果を踏まえて、必要があれば見直すことになるかと思います。
次のページ、26ページ、第3部に移らせていただきます。
行動計画のほうは、環境基本計画の重点分野の施策体系をベースに構成を見直す予定にしております。わかりやすく、読みやすくするために施策内容を整理して、重複部分を避けるということで、国土空間的施策、横断的・基盤的施策の2章構成だった現行計画を章を変えて、並べかえて章立てしております。そのリストがここにある構成案でございます。
ここでも可能なものについては、数値目標を設定し、ベースラインとなる数値も記載できればというふうに考えております。
各省庁の、あと役割分担を明確化するために、現行戦略と同様、関係省庁名を列記することとしております。
資料2につきましては、以上でございます。
最後に、資料3でございます。こちらは、愛知目標の達成やわが国の課題を踏まえ必要と考えられる個別の施策事項について整理をしております。
大きく(1)から(8)、個別の説明は省かせていただきますけども、八つに分けて整理をしております。今後、これで記載された施策を参考に、第3部の行動計画についても整理をしていきたいというふうに考えておりますけれども、第1部の戦略も、ここを踏まえて考えていかなければいけないと思いますので、必要な取組等についてご意見があればいただきたいと思います。
若干長くなりましたけれども、事務局からの説明を以上で終わらせていただきます。
【武内委員長】 どうもありがとうございました。
それでは、骨子(案)の議論に入らせていただきたいと思います。
まず最初に、委員からのご意見・ご質問を受け付けて、そして回答が必要なものについては、まとめて回答をさせていただくということにさせていただきます。
最初に申し上げましたように、幾つか区切ってということでございますが、まずは前文と第1部、生物多様性の保全と持続可能な利用に向けた戦略について、ご意見、ご質問のある方は、お手元の名札を立てていただければと思います。
小泉透委員。
【小泉委員】 ありがとうございます。前文について、最初の項で、震災からの復興について触れられておりますが、具体的な記述がないので、どういう内容になるかわかりませんけれども、震災に関しては、多くの場合、地震と津波と、それから放射性物質の影響をセットとして震災というふうにしてとらえられていることが多いので、この点、記述はバランスよく配慮していただきたいと思います。
それから、震災と生物多様性の関係についてなんですが、これは震災によって直接影響を受ける場合と、それから地域の人間がいなくなってしまうことによって、それまで地域で培われていた人間と、それから野生生物との相互作用的な関係が大きく変化してしまって、それがもう今後修復できないのではないかというような懸念があります。間接的な影響と言うべきかもしれませんけど、そういう心配がありますので、その点についても触れていただきたいと思います。
以上です。
【武内委員長】 ありがとうございました。
今の震災の話ですね、私も途中まで見ていて少し気になっていたんですが、放射能の影響というのは、一部ちょこっと出るんですね。ですから、あんまり全面的に取り上げようとしていないわけですけれども、今のお話のように、世界ではその三つが日本の様々な環境政策、エネルギー政策を変えた大きな出来事であったということでとらえられているわけで、前文で書くとすれば、多分、事務局は、このことについてはまだ書きにくいということがあるんでしょう、放射能影響みたいなやつは。
【生物多様性地球戦略企画室長】 まだ、これからだと思います。
【武内委員長】 だけれども、そこのところは少し、とりあえず考えてみて、次回までどうするか、私はいろんな意味で森林への影響もありますし、これから流域を通して、いろんな副作用が出てくることもあると思いますし、それから野生動物への影響というのもかなり大きいし、今現在でいうと、ペットや何かの話もありましたよね。ですから、もう既に出ていることもあるので、どこまで前文と本文で書けるかというのは、ちょっと大きな課題だと思いますけれども、最初からそこを外して議論をするというふうにしないほうがいいと思いますね。
同じことで、再生可能エネルギーの議論がすごく出ていて、そして自然環境保全との共存を考えていかないといけないという、非常に大きな状況を迎えているわけですよね。太陽光、風力、地熱、水力、こういうものと生物多様性なり生態系というのがどういうふうにこれから関わっていくのかというのは、これはまた非常に大きな課題なわけですから、ちょっとその辺も少し、従来はそういうことをあまり考えてこなかったと思いますけれども、そこは非常に新しい論点としてとらえていく必要があるんじゃないかと思います。
吉田委員。
【吉田(正)委員】 私も同じ視点のことで申し上げようと思っていたんですけども、やはり放射能による影響、特に生物多様性への影響、野生生物への影響ということについては、まだ長期的にモニタリングが必要だということでございますので、やっぱりそれは入れたほうがいいだろうと思います。
実は、昨日、哺乳類学会、霊長類学会、野生動物医学会と野生生物保護学会の共同で東日本大震災の影響に関するシンポジウムを行いまして、主に議論としては、放射性物質による影響という問題が出たわけですけども、急性の影響はすぐに見られているわけじゃないんですけども、例えば、森林総研の長谷川先生からは、腐食生態系を通じた食物連鎖による影響というものなどについては、実際ミミズだとか、それを食べる生物だとか、そういったものにもある程度考えられるということで、そういったものについては継続的なモニタリングが必要であると。そういったものを今のところ個別に、もっと計画区域の中で調査したいという研究者もいるんですけど、個別だとなかなか許可していただけないということもあって、学会のほうでも連合して、ちゃんと組織的に計画的にやっていきたいという、そういう座長のまとめなども出ておりましたので、ぜひ環境省としても、例えば放射性物質による影響というのは第3の危機に入るのか、そういったことがあると思うんですけど、そういった位置づけをきちっとして、継続的なモニタリングが必要であると、そういった中に自主的なモニタリングの取組なども取り込んでいただくような、そういった書きぶりが必要かなと思います。
【武内委員長】 ありがとうございます。ほかに。
第1部、結構です。土屋委員、お願いします。
【土屋委員】 1ページの第1部の最初のところで、生物多様性とは何かとまとめていただいております。確かに、生物多様性条約では三つのレベルで議論をしておりますけれども、最近の動きとしては、それに加えて景観の多様性を議論することも多かろうと思います。生態系というのは、境界がはっきりしているところもあれば、何となくぼやけているところもありますので、それを景観という形でとらえるなり、あるいは生態系と生態系のつながりを議論することも盛んに行われておりますので、一つ加えて、最近の動向も紹介するのがよかろうと思います。後のほうでは、そのつながりも、かなりいろんな言葉で出てきておりますので、最初にそこを紹介しておくことによって整合性がとれるのではないかと考えます。
それから、生態系サービスのあたりはかなり議論が出てくるのではなかろうかと思いますけれども、それを生物多様性の恵みとして、どう解釈していくか、説明していくかということについては、非常にたくさんの説明が必要かと思いますので、また今後議論させていただきたいと思います。
【武内委員長】 小泉委員、お願いします。
【小泉委員】 たびたびすみません、どうもありがとうございます。
第1部についてですが、これは恐らく生態系サービスという言葉、考え方が非常に中心的なものになっていくと思います。これは、後のほうにおいても、社会に生物多様性をどのように浸透させていくかという中で、生態系サービスというのは非常にキーワードになっていくと思います。その割には、非常に記述があっさりし過ぎている感じがあります。特に、第2節のところは、生態系サービスというのは、この四つありますというふうにとどまっているところは大変残念に思います。
その中身は、次のページの第3節に重要性として書かれているところの大部分は、実は生態系サービスの四つの機能の解説とほぼ同義であると思います。もう少し構成を考えて、生態系サービスというのがもっと前面に出てくるように記述と配置をお願いしたいと思います。
【武内委員長】 ありがとうございました。
私もちょっと、今おっしゃったようなことが気になっていて、何か生物多様性条約とか、それからミレニアム生態系評価とかのやつを、かなり教条的に写して書いているというか、そこで思考停止しちゃっているという感じがちょっとあるんですね。ですから、例えば自然共生社会というのは、むしろ我々が考えて国際社会に提案したことですよね。そういうこととの関わりでいうと、生態系サービスというものの持っている問題点だってあるわけですよね。つまり、何でもかんでもサービスという言葉でもって表現することによって評価してしまうと。そうすると、かけがえのなさみたいなものが飛んじゃって、そこのところが自然共生社会の哲学と相入れないみたいなものもあるわけで、そういうことをきちっと考えた上でここに入れ込まないと、例によって基盤だの供給だのという、何だか全然何も考えずに書いているという、ちょっとそんな感じがしますね。ぜひ、そこをもう少し深掘りしてみてくださいませんか。
白山委員、どうぞ。
【白山委員】 ありがとうございます。第1部、非常に長いものなので、たくさんコメントしちゃいそうで申し訳ないんですけども、主に4点コメントさせていただきたいと思います。
まず、全体的になんですが、生物多様性の中で遺伝子の多様性って非常に重要なんだけれども、もう少し、それの重要性と、それに対する保全の戦略というのは書き込まれてよろしいんではないかという印象を持ちます。
特に遺伝子資源というものの見方がかなり最近は出てきていて、そして、その資源を保全とするということ、あるいはCBDの考え方からいえば平等な利用というようなことですね、そういうところがもう少し必要な内容として書き込んでいただければいいなというふうなのが一つあります。
それから、国家戦略なので、政府がやることはかなり一生懸命書いてあるんですが、例えばNPOとか市町村に関してちょっとだけしか書いていなくて、もっと役割として非常に大きなものを期待していいはずなので、もう少し大きく扱われてはいかがかという印象を持ちました。
それと、海域に限った話で一つコメントさせていただきたいのは、公海の問題ですね、Open Ocean、何も書いてないんですけれども、国際的な日本での役割みたいな視点で、公海での生物多様性に関する何らかの取組、保全の取組に関してしっかり、例えばFAOと協調するとか、日本ですと外洋域での漁業みたいなもの、かなり大きいですので、そのあたり、少し記載をしていただければと思います。
最後に、24ページのあたりですけれども、科学的基盤の強化という中でぜひ入れていただきたいのが、データの透明性とか公開性とか、そういうことをキーワードとして入れていただけないかと。つまり、非常に多くのデータがとられても十分に公開されていないというのは、現状認識としてはありますので、ぜひそれに取り組んでいただきたいというふうに思います。よろしくお願いいたします。
【武内委員長】 ありがとうございました。鷲谷委員。
【鷲谷委員】 第3の危機の記述に関して、化学物質による生態系の影響について、いまだ明らかではないという言葉があって、注意が必要というふうになっているんですけれども、世界的に見ても科学的な知見がありますし、日本でも、例えばアカトンボの話を前回か前々回しましたけれども、2000年代になってからの急激な減少については、もちろんそれだけではなくて、もしかすると中干しの時期が変わったということも複合している可能性はありますが、育苗箱にイミダクロプリドが利用されるようになってから急激な減少が認められていて、正確な数字は覚えてないんですけれども、半分の都道府県で1000分の1ぐらいにアカトンボが減少して、きちっとモニタリングしているわけではないので、若干、数字はいろいろ吟味しなければいけない点がありますけれども、そんなことがありますし、作用機構などについても、種子を処理して、植物体がいつも発現しているような現状になって、それが昆虫に与える影響というのは、国際的な科学の雑誌にも論文が出ているようなものだと思います。そういうことを受けて、フランス、ドイツ、イタリアはネオニコチノイド系の農薬の種子処理剤としての登録を停止しているのではないかと思いますし、アメリカやイギリスでもいろいろ検討が進んで、政府が既に政策としてつくっていないまでも、イギリスだと最大の生協がそれを使った農産物の取引をしないというようなことを決めていたり、いろんな動きもあると思いますので、わかっていなくて注意が必要というよりは強い記述が必要なのではないかと思うんですが、日本で特に影響が大きいのは、食品の農薬の残留基準がヨーロッパなどに比べてかなり高いんですね、濃度が。例えば、アセタミプリドですと、イチゴではEUの300倍濃度で、アメリカ合衆国の5倍ぐらいですし、ブドウだとEUの500倍、アメリカ合衆国の15倍ぐらいの緩い基準なので、種子処理においては禁止されているものがヨーロッパなどよりも大量に使われていることがあって、ここは生物多様性に関して議論する場ですけれども、ブドウなどをたくさん食べる人が中毒になることもあったり、空散が行われる場合もありますので、子どもたちの健康への懸念なども表明されているところなので、もうちょっと強い書き方がいいんじゃないかと思いますし、野生生物の現状のところにも、少しアカトンボの問題等を、もしかすると国立環境研究所の方も研究されているかもしれません、ちょっと確かではないんですけれども、何人かの方がアカトンボに関して報告や論文を書かれているのではないかと思います。
それから、この農薬が本当に意義のある使い方をされていれば、副作用という言い方もあるかもしれないんですけれども、かなり愚かな利用のされ方もしているんですね。特に、斑点米カメムシ対策に空中散布などがよく行われているんですが、斑点米カメムシというのは水田では増えることがなくて、周りの外来牧草などが多くあるような場所で増えていて、そこが発生源なんですね。稲の穂が出ると田んぼにやってきて、吸汁して斑点ができるんですが、予防的にその直前ぐらいにこれを撒きますと、クモなどの天敵をむしろ殺してしまう可能性もあるんですね。問題の根本解決にはあまりならないような使い方がされている場合もある。多様な使われ方をしていますし、そういう利用に関する基準の全くないような、全くというのは言い過ぎですね、家庭用の殺虫剤などにもたくさん使われていて、日本では環境中に随分多くネオニコチノイド系の農薬が放出されていて、昆虫などに多大な影響を与えていると思われますので、もう少し書き方を工夫していただいたほうがいいような気がいたします。
それからちょっと違うことを簡単によろしいでしょうか。
遺伝的多様性についての例なんですけれども、ちょっと我田引水で申しわけないんですが、サクラソウは環境省から推進費をいただいて、徹底的に遺伝子レベルから上のレベルまでの研究がしてあって、モデル植物的になっているんですね、遺伝子に関しては。例えば、あるところから株を持ってきて、それがどこの自生地のものか判定もできるぐらいにもなっていますし、そういうことを挙げると、植物の例として挙げていただいてもいいかもしれません。
【武内委員長】 ありがとうございました。
桜井委員、お願いします。
【桜井委員】 まず一つ、大きい点は、恐らく生物多様性国家戦略、前回の後に、海の生物多様性の国家戦略をつくられましたね。そのときに白山委員が座長をされておりまして、これを受けて文言とか事例とかをかなり修正したはずなんですね。それが組み込まれていないので、多分それを入れ込むともう少しきれいになるんじゃないかなと思います。
もう一つ、先ほど公海域の問題がありましたけども、最近起きてきているのは深海サンゴですね、深海サンゴの問題は世界的にも問題になっていて、日本で一番近いとすれば天皇海山なんですけれども、これも国際法的に今取り組んでいらっしゃいますので、その辺の書き込みもできるかと思います。
それからあと、公海域の漁業についても、現在、関係国で地域漁業連携とか、要するに協議を結ぶような会議を始めようとしています。そういった新しい動きもありますので、そういった情報も取り込んでいただければと思います。
あと、細かい点は省略しまして、一番気になったのが、科学的基盤という言葉を使っていらっしゃいますが、この中で、一番重要なのは、じゃあ、生物多様性というのをどういう形で評価するのか。いわゆる数値化できるのか。モデル化できるのかということについて、あまり書き込みがないんですね。例えば、多様度指数という言葉がありますし、海ですと、海と陸では全く違いまして、海の場合には栄養階層が1から5階層あって、非常に多様な生物がいるので評価の方法が違うんですけれども、この場合には栄養階層指数というのを使うんですけれども、そういった意味で、数値化した形での目標、過去がどうであって、これは現状がどうであって、今後どうするかというときの数値化の目標としての値というのが出るはずなんですね。ですから、そこまでやることが今できなければ、そういったことに対する科学的基盤の整備という形で是非それをしていただければ、漠然とした生物多様性のまま行っちゃいますので、どこかでやっぱりモデル化、数値化というのが必要になるかと思います。
【武内委員長】 ありがとうございました。
中村委員、お願いします。
【中村委員】 いろいろあって、ちょっと頭まとまっていないかもしれないんですけれども、武内委員長が言われたように、私もエネルギーの問題を危機として記載するかどうかは別にしても、やはり社会がこれだけいろんな意味で関心を持っているということは重要だと思います。
EUのメンバーと話したときに、例えばwater frame directiveみたいなやつも強いんですけど、例えばエネルギーのダイレクティブが来た場合は、非常にそれに押されてしまうということもあって、これも例えば多様性でいくのか、生態系サービスを加味した上で、いわばエネルギー問題をとらえていくかというのもあり得る。だから、ひょっとするとサービスがどれだけよくなるかとか悪くなるかといった議論のほうが、社会はエネルギーとの基盤の中では議論しやすいのかもしれないという感じもします。
それから、13ページぐらいにある、国土の特性に応じたグランドデザイン、これも小泉委員がおっしゃって、私も最初にサービスが書いてあって、その後、それがずっとある意味つながっていなくて、ここに書かれているような感じがしていて、例えば、昨今の水源税、最近はそんなに多く増えていないかもしれないんですけど、各都道府県がこれだけ導入した水源税というのも、基本的に森林が持つ生態系サービスであるということで、これだけすんなり受け入れられるということも含めて、また社会が多様性とのつながりを持つ意味も含めて、やはりサービスの、前段で出た定義のやつをこの辺に入れ込まないと、たとえグランドデザインといったときも、多様性だけでグランドデザイン組むのは極めて無理があるというか、そういう意味では、社会とのつながりで考えていくと、そのサービスの議論をこの辺に入れていくのもいいのかなという感じがしました。
特に、七つの地域区分ごとというのは、生態系区分で分かれちゃっているものですから、それの生態系のつながりという議論をするときに、サービスの議論を入れていくのが一番すんなり入りやすいのかなという感じがします。
それから、これは全体論として、今のところも、どちらかというと、コアとバッファーとか、コリドーとか、ネットワークとか、どちらかというと保護域の議論が重要な一つの軸ではあるんですけど、もう一つ、ここの中でも書いてあるように、例えば農林水産業がどういう形で生物多様性に配慮した管理をしていくかということも、この委員会の中でも随分ヒアリングしたテーマだったと思うので、よく言うマトリックスの部分ですね、保護から外れた部分でどういう形で議論していくかという、そんな主張ももう少し見える形であってもいいのかなという感じがしました。ひょっとしたら、詳しく見れば書いてあるのかもしれません。
それから、16ページぐらいにある川の問題ですけども、豊かな水量の確保と河川本来の変動の回復とは書いてはあるんですけど、現状で起こっている河床がすごく下がっている、低下しているとか、氾濫原が樹林化しているとか、そういった問題を、前段の最初の生態系のところの現状の姿のところに書き込んで、もう少し、いわゆるディスターバンスなんですけど、攪乱を加えていくようなシステムをつくっていかないとよくない。この本来の回復というのが一体何を意味しているのか、いま一つ、見る側はわからないだろうということで、はっきり言ってしまうと、今おとなしくなり過ぎている、活力がなくなり過ぎている川の変動をもっと活性化するというのは、すごく重要な方向なんじゃないかなというふうに思います。
それから最後に、科学的基盤のところなんですけれども、JBOがあって、その後、地図化の議論をされて、いわば指標をつくらないと地図化も当然できないでしょうから、そういった指標をつくると同時に、それが社会が具体的に自分の地域はどうなんだといったような形で、地域戦略にも結びつくような、そういった取組を今後もずっと進めていっていただきたいし、いわゆる評価というのは、その地図がどんな形で変わっていくんだ、よくなっていくんだということが表わされるのが一番いいのかなという感じがしますので、ぜひそのモニタリングだとか基盤的なデータベースを整えて、何回も言われているような、各省庁でやられているような、もしくは国は整備したけど、都道府県が整備されていないとか、それのシェアだとか、そういったさまざまな問題をテクニカルな形で解決しながら、やはりそこを進めていっていただきたいなというふうに思います。
【武内委員長】 ありがとうございます。
宮本委員、お願いします。
【宮本委員】 2点ございます。一つは、生態系サービスという言葉についてなんですけれども、サービスと聞きますと、非常に受け手という、人間が生態系サービスを受ける側というような印象が非常に強くなってしまいますので、人間の側がどういうアクションをすればいいのか、どんなアクションが必要なのかということとか、それによって生態系サービスがどういうふうに変わる可能性があるのかということを一言加えていただいた方がわかりやすいかと思います。
それから、2点目なんですけれども、3ページの生物多様性の重要性につきまして、これは理念として四つ挙げてくださって、大変わかりやすいと思いますが、生物多様性が失われると一人一人の人間に何が起こるのかという具体例を挙げていただくことができるかどうかということをちょっとお伺いしたいと思います。
例えば、仮定の話というのは、こういう場に非常に書きにくいことだとは思うんですが、後の方の、主流化できるかという問題とも関連してくるんですけれども、温暖化とか、それから酸性雨というのは、いかにも一人一人の頭の上に降ってくるようなイメージが描きやすいんですが、生物多様性については、どうも日常生活で、例えば食卓からこれがなくなるとか、こういうものの供給がなくなるとかということは非常にイメージしにくいので、そこを具体例を挙げて説明していただくことができないかなというふうに思います。
ありがとうございます。
【武内委員長】 今の話の関連で、ご存じだと思いますけれども、200人ぐらいの日本の研究者の方にご協力いただいて、里山と里海の生態系サービスの評価を、過去50年の変化も含めてやったんですね。それが英語と日本語で本になってまとまっていまして、日本語は朝倉書店から最近出版されていますので、ぜひそれなんかも見ながら、先ほど私も申し上げたように、ただ、世界のミレニアムでこう言っているから、そのまま写すというんじゃなくて、少しそこで日本の事情にも配慮しながら、そのことを意訳していっていただければありがたいと思います。そういうこともいろいろやっています。特に、第2の危機を評価してもらって、すごく難しかったんですね、特に海外の人に。そんなのはおかしいと最初言われて、それが生態系サービスがどうなるんだというようなことを議論していますので、ぜひお願いしたいと思います。
中静委員。
【中静委員】 ありがとうございます。3点ぐらいあるんですが、一つは、ちょっと簡単なことなんですけど、4ページの気候変動による生物多様性への影響というふうに書いてあるんですが、議論としては、生物多様性の影響ももちろんあるんですけど、適応策として考えたときに、生物多様性条約と、気候変動枠組条約で協力してやっていけることがあるだろうという点が、結構大きな点だったと僕は思っていますので、その点は、むしろ見逃さずに書いていただいたほうが、これからの協力を広げる意味というのでも大きくなるのかなというふうに思いました。
それからもう一つは、その一つ上のTEEBの問題と、それからその次のコメントにもつながるんですけど、こういうTEEBの方向性というのが何を見ているのかということだと思うんですけれど、ここにもさらっと書いてあるんですが、やっぱりこういうことをやることで、多様な主体がきちんと入ってもらうということと、やはり後に見てるような革新的資金メカニズム、今回のCOP10では、最終的には公式文書にならなかったんですけれども、そういう議論が進んでいるんだということをやはり書いていただいたほうが、例えば、21ページの社会経済的な仕組みの考慮というところにつながると思うんですね。世界もこういう議論をしているし、やはり日本もこういうものを考えていくべきだというふうなことになるんじゃないかなというふうに思いました。
それで、三つ目のコメントは、社会経済的な仕組みの考慮なんですけど、これ、経済的な仕組みはもちろん、ここに書いてあるようなこともあるんですが、もう一つは、先ほどちょっとあれもあったんですけど、ミスマッチといいますか、要するに意思決定のレベルの問題というのがやっぱり大事だと僕は思っていて、例えば今回の国立公園の話もそうなんですけど、国立公園というのは、日本の国民全体が生態系サービスを受けている場所ですので、その管理に関しては国が責任持つべきだと思うんですね。特定の県の人が利益を優先して開発されると、それは国民全体の利益を損なうという意味で、どういうふうな形で意思決定のレベルを設定するのがいいのかということは、私はこういう生物多様性の問題を考える上で非常に大事な問題だと思っていますので、これは私の私見なんですけど、そういうことが書けるようであれば、それをぜひ書いていただきたいなというふうに思いました。
それから、今の社会経済的な仕組みの考慮というのは、1節の基本的視点には含まれているんですが、それが2節の基本的戦略の中にどういうふうに入っているのかという構造がよく見えないなというのがもう1点で、例えば、特に、先ほど指摘もありましたけど、企業の方たちにやっていただくことって、随分その意味ではあるのかなというふうに思ったので、そういうものを2節のほうにもある程度見える形で入れていただいたほうがいいのかなというふうに思いました。
【武内委員長】 ありがとうございます。
吉田謙太郎委員、お願いします。
【吉田(謙)委員】 第1部全体で構わないんですね、第1部長いですけれども。
【武内委員長】 いや、第1部ではなくて、狭い意味で言っていたんですが、もういいです。どうぞ。もう大分いっちゃっていますから、どうぞ。
【吉田謙太郎委員】 第1章だけなのか、第1部だけなのかと考えて、ちょっと。これは後からにしたほうがよろしいですかね。
【武内委員長】 もうしゃべり始めたんですから、どうぞ。これからの議論は、ちなみに第2章も含めてご議論いただきたいと思いますので、どうぞ。
【吉田(謙)委員】 すみません、それではまた後ほどに少し議論をとっておくことにしますので。
私は、21ページのところ、ちょっと言及しようと思ったんですけど、それは後ほどお話しさせていただきたいと思います。
危機のところで、第4の危機まで入って非常にわかりやすくなって、よかったのではないかと思います。それで、第2の危機のところなんですけれども、細かい点なんですが、農林業被害と生態系への影響が中心になって、いろいろなところで書かれているんですけれども、これ、人身への影響とか、そういった点も非常によく取りざたされるところですので、その点も入れておいていただけると。まあ、入れられない理由もあるのかもしれませんけれども、そこを読んでいて少し疑問に感じました。
もう一つ、放射能汚染のことなんですけれども、放射能汚染、先ほどいろいろな委員からご意見ございましたけれども、生態系そのもの、生物多様性そのものに対する影響もあるんですけれども、現時点で非常に大きいのは、やはり生態系サービスへの影響だと思うんですね。生態系サービスが劣化して、それを人々が利用できなくなってくるというところに非常に大きな影響が出ている。これは賠償問題とか、いろいろな風評被害と関わってくるので、扱いにくい点かもしれませんけれども、僕も先週か先々週、霞ヶ浦のウナギからも非常に高いレベルの放射性汚染が発見されたということを聞いて、かなり広範囲に野生生物に対して影響が出ているということを感じます。それを利用する人間が余計なコストを払わなければいけない。モニタリングも含めてですね。そういった点が今後日本にとって大きな影響を発生させるだろうと。
それで、対比させるのはあまり適切ではないかもしれませんけれども、私、たまたま今長崎に住んでおりますし、広島と長崎、原爆と今回の原発事故というのは、かなり影響の長さという点で違うかもしれませんが、長崎、広島では基本的に、私も爆心地から1㎞のところに住んでおりますけれども、これもちょっと余談なんですが、随分生態系も回復してきて、ちょうど森の隣に住んでいるんですけれども、最近だと、シュレーゲルアオガエルだとか、そのうるささで朝目が覚めてしまうような状況になって、随分生態系のレジリエンスというのは非常に高いなと。今回、そういったところを日本はいろいろと経験してきているわけですから、そういったものも踏まえて、今回の福島の原発事故による放射能汚染による影響、これについて言及するのであれば書いていただいてもよろしいのではないかなと。これは、必ずということではありませんけれども、私、ちょっと気づいた点ですので、言及させていただきました。
【武内委員長】 ありがとうございました。
では、辻本委員、お願いします。
【辻本委員】 ちょっと、どこまでの議論なのかがよくわからないんですけれども、詳細というよりも考え方の議論なんだろうなということで、ちょっとはみ出すかもしれませんけれども。一番最初、まず生物多様性の意味と重要性、それからどうとらえるかの中で、例えば生態系サービスとかいうふうな形で書かれているところがあるんですけども、生物多様性がどんな意味なのか、重要なのか、役割を持っているのかということとともに、もう一つ、書いておかなきゃいかんことは、生物多様性を保全するということの意味をしっかり書いてほしいなと。生物多様性はどんな意味があって、どんな役割があって、個別的に守っていかなきゃいかんということは、その重要性を並べることによってわかったんだけども、生物多様性を保全するという、その人間の行動そのものがどんな意味を持っているのかということをやっぱり書くべきだと思うんですね。生物多様性の持つ、それぞれの役割、それぞれの機能を、例えば生態系サービスを保全するということと、先ほど委員長が言われたように、かけがえのないものであるというふうなものとは、必ずしも同時に守るということが、実は生物多様性保全の意味なんですね。だから、個別の意味とともに、生物多様性を保全するということはこういう意味なんだということをやはり一番最初のところで書けていないところが、そういう誤解を生むのかなという気がしました。
それから、やはり今申しましたように、生物多様性の話というのは、かなり統合的・全体的、後からもそういう話が出てきているんですけども、ホリスティックなものである。一つ一つを守ったり、一つ一つを対象にしているんではなくて、かなり統合的・全体的なものであるということはいろんなところで出てきます。例えば、地域割りするときも、七つの地域ですよというふうに、湖沼であるとか、海域であるとか、沿岸域であるとか、都市域であるとか、農地であるかというふうに分けているんだけども、それがもう少し大きな地域区分の中で、例えば気候帯であるとか、植物帯の中で、どんなつながりを持って存在しているかの中での都市域であったり、流域であったり、沿岸域であるというふうな地域割りがやっぱり大事で、そういう意味でのつながりというものが、一つのホリスティックであることの一つの側面だと。
もう一つは、先ほど再生エネルギーの話であるとか、持続性の問題とか、循環型社会とか、あるいは低炭素の問題であるとか、政策のそれぞれも同じように全体的な問題で、その全体的な問題を国土のグランドデザインの中で、一方的に生物多様性のところからというか、全体をホリスティックに見るんだけれども、その中で生物多様性の面から見るとどんな役割があるのかということを書かないと、再生エネルギーの話もこの面から書けますね、低炭素の話も生物の面から書けますねということじゃなくて、提案するんじゃなくて、やはりその中の役割というものをしっかり見極めるというふうなこととどう連携するのか。すなわち、個別の問題なんだけども、いつもいつも全体的なものと関わっているというのは、そういうところにあるんだなということを最初のところで、今議論しているようなところで明言しておくのがいいのかなという気がしましたのでご意見申し上げました。
【武内委員長】 ありがとうございました。
佐藤委員。
【佐藤委員】 第2節のところですよね、今ずっと議論になっているのは。第2節と第3節の辺なんですけれども、以前のほうが割と平易に書いてあって、今回は、例えば生態系サービスというような、割と専門的な用語が前面に出たりとかして、なかなかするっと読めないというような感じがちょっとあるんですね。
そのサービス、さっきもちょっとお話が出ていましたけど、サービスってすごく消費的なイメージを持ってしまうので、こちらが当然対価を払ったらもらえるものというふうになってしまいがちですけれども、この場合のサービスというのは、それができないものですよね、お金で買えないものなので、その辺、しっかり説明しながら使わないと誤解が生じるのではないかなというふうに思いました。
この第2節の1、最後にただし書きで書いてあるんですけど、そのただし書きの書き方でいいのかどうかという感じがちょっとあって、逆にそれが本当に一番大事なことではないかと、それがただし書きになっているのではないかなという、ちょっと不安を覚えます。順番のやり方もそうなんですけど、生態系サービスを先に出さずに、先ほども辻本委員の話も出ていたように課題がすごくあるわけなので、そこをちゃんと踏まえた上でサービスを受けるというんでしょうか、そういう態度が必要なのではないかなというふうに感じます。
それから、この第3節のところ、これは実は前のときとほとんど変わってないと思うんですけど、まだすごく抽象的で、先ほどこれがだめだったらどうなるかという事例を書かれたらというお話も出てましたけれども、これも何でもいいんですが、何か具体的にイメージができるものがあれば大分違うと思うんですね。このまま書かれても、ああ、確かに、確かにとは思うんですけど、それ以上、なかなか自分の生活に影響力がないというんでしょうかね、なかなか重要だと思えない。まあ、そうでしょうね、確かに立派ですねという、当然そうでしょうというぐらいな感じなんですね。だから、ここで具体的な、自分の生活とどう結びつくんだというようなところで、現代の事例をうまく挙げるとか、何か少し工夫をしないと広がっていかないんじゃないかというふうに思いますので、その辺、できたら少し書き込んでいただけたらいいというふうに思います。
【武内委員長】 どうもありがとうございました。
そしたら、一応ここまでということにさせていただいて、事務局から。
【生物多様性地球戦略企画室長】 かなり幅広いご議論をいただいたので、どこからお答えしていいかもよくわからない部分があるんですけど、本当にどのご意見も、しっかり噛み締めて、本文を書く際の参考にさせていただかなければいけないなというふうに思っております。
それで、全体的な話でいいますと、我々の作業の方向性として、コンサイスにすることによってわかりやすくしたいという部分があって、特にこれは何回も繰り返してきて、非常に教科書としてはいいんですけれども、やっぱり一般の人たちが、こんな厚いのを、興味持った人は見てもらえるけども、どこまで読んでもらえるかなと、それがさっとわかるような形でできればなという思いもあったので、大分抜け落ちている部分が出てきている、これまでのものに比べると抜け落ちている部分が出てきて、今のご指摘につながったところがちょっとあるのかなと思いますので、そこはまたちょっと考えさせていただきたいなというふうにも思っております。
それから、特に放射線のご指摘は多くの先生方からいただきましたので、これは環境省のみならず、関係省庁とも相談をしながら、どういう形でこの中に書き込んでいけるのか、少なくとも問題点、ご指摘いただいた部分というのは、きちっと認識をしていかなきゃいけないと思いますので、その辺、施策にすぐに結びつけられるもの、結びつけられないもの、あろうかと思いますけども、そこはちょっと整理をして考えていかなければいけないんじゃないかなというふうに思ってお聞きしました。
それから、農林水産業の役割、人の役割の点のご指摘もあった部分については、散りばめてかなり書き込んである部分があるので、もう少し整理してハイライトして、恐らく理念的な部分を整理して書くことによって、今までとは違った、特に自然との共生する社会という、愛知目標を達成し、愛知目標ができた後の戦略であること、それからやはり人と自然との共生のあり方というのを、ここにも一部書き込んでありますけれども、災害という脅威を持つ自然とどう向き合っていくかというところですね、その辺に対する理念は十分書き込ませていただきたいというふうに思っております。
それで、ちょっと個別・具体の質問がどこにあったかというのが完全にあれですけども、1点、中静先生からだったと思いますけれども、後ろのほうの基本的な視点、経済的な評価ですとか、そういったところが基本戦略の中で、もう少し整理をしたほうがいいんじゃないかというところは、主流化という部分で少し書き込んであるつもりなんですけども、この辺も少しわかりやすくさせていただけたらなというふうに思っております。
とりあえず、私から今の段階でお答えする点は以上でございますけれども、あと、公海の話につきましては、あと先ほどあった主体の、白山先生からもう少し書き込んだらいいというところにつきましては、二つだけ、できる限り書き込んでいきたいと思うんですけれども、国家戦略そのもの自体は政府の計画として位置づけられるものなので、もちろん自分たちがやることは明らかに書けるんですけども、他主体がやることについての位置づけをどこまで書き込めるかという、そこのところの限界をどう突破していくかというのをもう少し考えていきたいというのが一つと、公海の部分につきましても、基本的には国際協力の部分で先ほどヒントをいただきましたので、どこまで書き込めるかということを考えていきたいと思いますが、どうしても国境のテリトリーの及ぶ範囲内での部分を中心に施策が今まで組み立てられているというところで物足りない部分があったのではないかなと思って、そこももう少し考えていきたいというふうに思っております。
各課室から、もし補足なり、訂正なりあったらお願いしたいと思いますけども。
【武内委員長】 いずれまた修正したものの説明があると思いますので、少し議事録をきちっと見ていただいて、その説明の際に、前回のこういう方のこのご指摘に対して、こういう文章になっていますという説明をしていただければいいんじゃないかと思います。
それでは、時間も大分過ぎましたので、ここらで休憩にさせていただきたいと思います。3時10分まで、13分ほど休憩というふうにさせていただきます。
(休憩)
(再開)
【武内委員長】 それでは再開をさせていただきたいと思います。
先ほど、混乱があった理由がよくわかりました。私の台本が間違っておりました。前文と第1章というところが第1部と書かれて、私はそのとおり、どうも読んだようであります。大変失礼をいたしました。
したがって、今の時点では、第1章までというふうに思って発言された方と、第1部全部と思って発言された方がおられますが、第1章までと思って、それ以降の発言を控えられた方がおられる可能性が高いと思いますので、この台本では、次が第2章を議論して、さらに第3章を議論しろと、こういうふうになっているわけですが、第4章も、2章、3章、4章全部含めて、第1部全体について、さらに質問、あるいはご意見のある方は札を立てていただきたいと思います。
それじゃあ、辻本委員。
【辻本委員】 先ほども少し申しましたけれども、第3章なんですけども、第3章に国土のとらえ方というのがございますけれども、ぜひ、この国土のとらえ方を一つ一つの典型でなくて、先ほど少し言いました気候帯とか、植生帯とか、そういうものでとらえた、もう少し、日本全体を北から南へ分けた中で議論することが重要じゃないかという気がします。ここに国土のとらえ方というものを、こういう限定的な形をされたのが、今までの生物多様性に関わる調査のベースがこういう典型といいますか類型の景観だったんだけども、我々の国土の中で物を考えるときには、それ以上に北から南、気候帯みたいなもので見ることのバックグラウンドが重要だということと、それから先ほど中村委員からも出ましたように、河川の連続性の話であるとか、同じ都市でも氾濫原にあるものと、それから盆地にあるもの、そういったものでかなり違ってくるので、そういったことも注意するほうが、全体の戦略の中では私は大事なことだと。それの一つ一つのマスタープランを立てていく中で、こういうタイプの景観の類型で議論することが大事だということが私自身は国土のグランドデザインということには非常に賛成ですので、そういう国土のグランドデザインという形で、ぜひそういう方向でやっていただきたいということをお願いしたいと思います。
【武内委員長】 ありがとうございます。
私も、階層的な国土のとらえ方みたいなのを入れていかないと、平板に類型化しただけだと、ちょっとまずいんではないかなと。私、昔からよく言っているんですが、等質地域と結節地域を相互に見ていくようなとらえ方ですね。つまり、山体で見ていくみたいなとらえ方と、それから流域みたいにヘテロでとらえるとらえ方というのを空間のスケールを変えて交互に見ていくというふうに考えていくと、かなり国土の自然の特徴が立体的に理解できるものですから、そういうふうなとらえ方の中で、あるところはホモジーニアスで、しかも軸的に、例えば脊梁山脈とか、湿地帯とかというふうなとらえ方ができるところと、それから山・川・海みたいな、そういうとらえ方ができるというのと、それから、それぞれの中で、また一つ一つがホモジーニアスな単位で、里地とか里山みたいにとらえられるものと、里海みたいにとらえるものとあってというふうに少し立体的に組み立てていくことも可能、少なくとも概念的にはそういうふうに整理しておいて、その中での地域区分だというふうなことを明確にするというふうなことがあったほうがいいように思いますね。ありがとうございました。
堀内委員、お願いします。
【堀内委員】 地方自治体を代表して一言お願いをしていきたいなと思います。
この生物多様性の国家戦略において、地方との連携・協働というものはここに書かれておりますが、かなり弱いような気がします。やはりこの国家戦略としてのこの考え方を地方に浸透させるためには、我々地方自治体にとりましての最上位計画というのは、それぞれの市町村、県などがつくっている総合計画なり、総合振興計画が最上位計画であります。それに基づいてさまざまな施策を進めておりますので、その計画に生物多様性が盛り込まれているかどうか、これによって、それを意識するかどうかということになると思いますので、それが盛り込まれている総合振興計画なりがどの程度あるのかというのは、私は把握しておりませんが、少なくとも自然と共生とか、そういう言葉は必ず出てきますが、生物多様性という言葉がそれぞれ地方の総合振興計画に必ず盛り込まれるような表記をするべきではないかなと。そのことによって参画とか協働とか、ここに地方自治体と企業や市民の参画と書いてありますが、これは非常に弱い表現ではないかなというふうに思います。
【武内委員長】 ありがとうございました。
吉田正人委員。
【吉田(正)委員】 私も第3章のところですけれども、16ページ、17ページの部分で、沿岸域、海洋域のことが書いてあります。昨年、白山委員が座長をされてまとめられた海洋生物多様性保全戦略では、もう少し踏み込んだことが書いてあるんですけども、そういったものとの整合性というか、あるいはそういった踏み込んだ部分があまり目指す方向に書かれていないんではないか。もしかしたら第3部に書く予定なのかもしれないんですが、例えば、重要な海域の選定とか、そういったものを海洋保護区にしていくとか、あるいは沿岸域の場合に、かなり開発ということが行われるわけですけども、そういったものに関して適切な環境影響評価をしていくとか、そういった海洋の生物多様性保全戦略で書かれていることで大事なことは、全体の国家戦略のほうでも書くべきだなと思っております。
【武内委員長】 ありがとうございました。
桜井委員、お願いします。
【桜井委員】 ちょうど今お話しされたように、先ほど言ったように、海の生物多様性の国家戦略に書き込まれた部分については、ぜひもう一度見てほしいということと、それからその後、起きた現象として、新しい知見が少しずつ入っています。例えば、特に最近沿岸で大きな問題となっているのが無酸素ですね。非常に湾の中の酸素がなくなってしまって、生物多様性が一気に損なわれるということが、かなり頻繁に起きています。ですから、こういったものが一つあるということと、それから最近一番海の変化で大きいのは、クラゲの異常発生ですね。これも実際には、生物多様性が損なわれていなければ起こり得ない、いわゆる捕食者がいればクラゲはあんなに増えるわけじゃないんですけれども、例えば、人間が大きな魚だけをとってしまうとか、その次の魚だけとってしまうと、その生態系を単純化した結果、クラゲが大発生するということも起こり得るわけですね。
もう一つは、陸域で、例えば中国のように淡水を使って、淡水が海に入ってこない、減ってきてしまったと。結果的には暖流水が、例えば黒潮の続流が黄海とか渤海に入り込んでいく。そういう形で水質構造が変わってしまう、水が変わってしまうということが結果として起きる。こういうことが結構頻繁に起きていますので、これも新たな書き込みになるかと思います。
それから、瀬戸内海で最近一番のホットな話題では、はしけのような人工構造物をつくった場合に、そこに付着生物が全くいないところができるわけですね。そうしますと、最初につくのはミズクラゲのポリプとエフィラですね。それが大量についちゃって、それが基質となってミズクラゲの大発生を起こしているということもあります。ですから、そういったことを考えていくと新たに起きたそういうもの、海の多様性を脅かすものには人工構造物も当然入ってきますし、今言いましたように、陸からの水が供給されないとか、そういうこともありますので、もう少し、もう一歩踏み込んだ書き込みができるかと思います。陸よりも一気に脆弱になります。非常に単純化しちゃいますので、その辺のところも含めて、もし事例が必要でありましたら紹介しますので、お願いいたします。
【武内委員長】 ありがとうございます。
大久保委員。
【大久保委員】 先ほどの中静委員のお話に非常に近いんですけども、この第4章の基本的視点という点は非常によくまとまっていて、いいなと思います。ただ、これと基本戦略とのつながりが、それぞれがかなりずれているなという感じがして、どういうつながりで、どう国民に対して、あるいは国家戦略としてどういう行動を期待しているのかというのが、せっかく基本的視点であるきちっとしたスタンスを出しているにも関わらず、その後がうまいことつながっていないなという感じがして、もったいないなという感じがしております。
それから、この基本的視点の1で、科学的認識と予防的順応的態度というのがあるんですけども、書いてある中身と言葉がちょっと難し過ぎて、特に予防的順応的、要するに今のように自然もものすごく変動が激しいし、いろんな思いがけないことが起こる中で、我々が生物多様性というものに対処していくのが、もうちょっとフレキシブルに考えないといけないんだよということを言っているんだと思うんですが、非常に僕はいいと思うんです。だから、もうちょっとわかりやすく、やさしい言葉でできれば書いていただければいいなという感じがしています。
それからもう1点、やはり国家戦略としての保全という問題と利用という問題のバランスの問題だと思うんですね、全体的にバランスの問題だと。その中で、今回の会議にずっと出ていて、農林水産省の取組が非常にかなり積極的になってきたというか、これは非常に成果だなというふうに思っております。特に、利用ということを考えて、あるいは戦略という立場で考えると、農業、林業、水産業というあたりの位置づけというか、そこの問題をきちっと位置づけていただいたら、さらに行動面で迫力が出るんじゃないかなという感じがいたしました。
【武内委員長】 ありがとうございます。
土屋委員、お願いします。
【土屋委員】 今とほとんど同じ部分について意見を申し上げようと思いましたけども、重複しない部分について申し上げると、21ページの第2節の基本戦略で、2番に、地域における人と自然の関係を再評価・再構築すると書いてあって、次のページに、その説明があるわけですけれども、地域におけるというところがうまく解説されていないような気がするのですね。
それと、地域という言葉が出てくると、現在、それぞれのところで地域戦略を策定しつつあるわけですけれども、それとの関係もここでは意識しておられるのか、あるいは日本は北から南まで非常に変化に富んでいるので、地域ごとにいろいろ戦略を考えなければいけないということを言いたいのか、そのあたりが少し明確ではないような気がしましたので、ご検討いただければと思います。
それからもう1点、現段階ではアウトラインを示していただいていますので、細かいところを拝見するときにまた意見が変わるのかもしれませんが、少し表現があいまいになっているような気がする部分があります。例えば、ちょっと前に戻りますが、11ページの上から二つ目の丸で、日本人は自然と対立するのではなく自然と共生してきた、歴史性を踏まえた伝統的な智恵や技術が忘れられつつあるので何とかしなければいけないというコメントですけれども、これはどこまで戻れと言っているのかが不明確。人間が自然環境にいろいろ圧力を与え始めた、農業をするとか、養殖等を始めるところ、初期の段階まで戻れというのか、まさか狩猟民族まで戻れといっても賛成する人はほとんどいませんので、もう少し具体的に示していくと、読む人がわかりやすいのではないかと思いますが、こういう点がいろいろなところに見受けられますので、今後ご検討いただければと思います。
【武内委員長】 ありがとうございました。
中村委員。
【中村委員】 すみません、さっき言い忘れたというか、忘れていたところで、3章なんですけども、14ページのところで、里地里山の現状は、例えば急激な人口減少とか、高齢化の問題が書いてあったり、野生動物の被害拡大というか、野生動物生息域の拡大の問題が書いてあったりするんですけど、対策のところでは、まだ何となく、これまでの方向性と同じようなことが書かれていて、例えば12ページでは、100年先を見通した上での基本的な姿勢、「100年計画」と書いてあるとすると、人口は7,000万とか、まあ、推計によって違うかもしれませんけど、そのぐらいに減ってしまった日本の国土の状態だと思うんです。それを前に出しといて、ここの目指す方向はあまりにも弱いんじゃないかなという感じがします。ということで、現実的には放棄、もしくは限界集落、あるときは消滅集落というのかもしれませんけど、北海道も相当なスピードで起こり出したときの、里地里山というのは、多分すべてを手をかけることは無理であるという、僕はそんな感じがします。そういう意味では、どこを重点的になりわいも含めて保全戦略に持っていくのか、どこは、放棄してもある程度もとの自然に戻るといったような条件があるならば、そこからはあまりお金をかけずに、それこそ今ある生態系サービスに依存していくといったような、うまく言えませんけど、とりあえずめり張り的なものをつけざるを得ないんじゃないかなという感じはします。その辺が、どうも現状の上の部分と、下の部分の目指す方向がうまくつながっていないというか、書きにくかったのかもしれませんけど、その辺を書いていただければなというふうに思います。
【武内委員長】 ありがとうございました。
宮本委員、お願いします。
【宮本委員】 第3章の第2節のグランドデザインのところなんですけれども、7地域の間の関係について触れる必要はないのかなということが若干気になりました。
何人かの委員がご指摘になっておりますように、都市と地方とか、奥山と里、それから陸と海というような、何か相対する位置にあるものが並んでおりまして、多分、生物多様性に関しては、非常にこの間で濃淡があるだろうと。それだけではなくて、例えば保全に関わる人手であるとか、資金とか、あとは森林に関連して、酸素の供給源に関しても、非常に極端に濃淡があると。その中で、物の流れる方向とか、あと、人の移動の方向とかが一方向的である場合もあるのではなかろうかと思いますので、せっかくつながりというキーワードが最初のほうに出てきておりますので、グランドデザインで分かたれた7地域に関しても、その間の関係性について触れていただくということをぜひお願いしたいと思います。
以上です。
【武内委員長】 吉田謙太郎委員、お願いします。
【吉田(謙)委員】 2点、主にありまして、最初に10ページの3、野生動植物の保全に関する取組のところなんですけれども、こちらはここに書いてあるとおりで、最近もトキのニュースがずっと続いていますし、ライブカメラもかなりアクセス数が多くて、非常に関心高いところだと思うんですけれども、コストという観点から考えると、やはりああいう状況になる前に、ここに書いてあるというのは、かなり絶滅の危惧が進んでこないと、なかなか対策が進まないと。そうすると遺伝的な多様性を確保したり、いろいろな保護・増殖を行うのに規制も厳しくなるし、なかなか難しい面もあると。日本は固有種の宝庫ですし、特にこれから国立公園化とか、世界遺産登録目指している奄美ですとか沖縄ですとか、そういったところの固有種なんかも、まだまだ何とかなるというような状況のときに、きちんと種の保護を行っていくような取組、そちらのほうがコスト的にはあんまりかからないだろうと思うんですね。国が全部やるわけではなくて、当然ながら民間が、民間というのはNPOも個人も企業もいろいろと関わってくると思いますけれども、多様な取組できちんと固有種を残していくんだと。そこにはコストの意識もきちんと入れて、予防的にやっていくと。現在、ここに書いてあるようなものというのは、かなり厳しい状況になってから対策が進められているのでコストがかかっている。そういった点を意識されるとよいのではないかなというふうに考えております。
もう1点なんですが、21ページの4、社会経済的な仕組みの考慮です。こちらに書いてあることは、そのままなんですけれども、特に四つ目の丸のところで、価値を認識した上で、社会経済的な仕組みの中に組み込んでいくことも必要というふうに書かれてあります。これだと一つ弱いのかなという気がします。TEEBも踏まえて考えていくと、今後本当に主流化していくためには、いろんな対策をどんどんとっていかなければいけない。認証ももちろんそうですし、あと、ここに言葉が書かれていないんですけど、PES、生態系サービスへの支払い、Payment for Ecosystem Servicesというのが今後重要なキーワードになってくると思います。こういった点を環境省がきちんと後押しするということが重要になってくるのではないかというふうに考えております。
なぜかというと、これまた話は変わるんですけれど、例えばレジ袋の有料化一つとってみても、地方自治体から進んだり、企業から進んだりしてきましたけれども、環境省がきちんと方針を出すことで、例えば県レベル、市レベル、いろいろなところでやりやすくなってきているという面がありました。生物多様性に関してもそうだと思います。卑近な例でいえば、先日、毎日新聞でしたか、屋久島の有料化の、いろんな新聞に書いてあったかもしれませんけれども、屋久島の入島税というか、入島料をつくるというような話がいよいよ本格的に進みそうであると。議会の中でいろいろと議論があって今までうまく進んでいなかった点もあると思いますけれども、これはし尿処理が随分お金がかかっているということでしたんですけれども、本来的には、やっぱりいろいろな野生の動植物を保護するための予算を含めて、資金をきちんとつくっていく。それに対して、環境省として指針を出していく、そういうことによって地方自治体であるとか、NPOも含めて、民間企業も含めて、いろいろなところで主流化を進めやすくなってくるんではないかなというふうに考えております。
先ほど、森林環境税の話も出てきました。森林環境税はたしか30くらいの自治体、県で導入されておりまして、非常に成功している事例だと思います。私も神奈川県の税などに関わってきて、税額の決定などに関わってきたんですけれども、これはうまくいっている割に、主流化という観点からすると疑問を感じるところがあります。
それは何かというと、多分徴収されている個々人が取られていることを理解をあまりしていない。これ県民税に超過課税として課税されていますけれども、それがなかなか見えてこない、詳しく知っている人は知っているけれども、自分がお金を払って、それが生態系サービスの保全につながっているんだという、そこがなかなか見えてこないという仕組みになっているような気がします。もちろん、広報活動はいろいろとされているんですけれども、お金を払っていて、それが保護されている、保全されているという仕組みがいろいろなところで見えてくるといいなというふうに考えております。
ですから、先ほどのように、例えば自然豊かな地域に入る、例えば希少な野生動植物を見ると、そういったときにきちんと対価として支払われて、それが保護につながっているというようなことが一つ一つ見えてくるというのが見える化であり、主流化ではないかなというふうに考えております。
【武内委員長】 ありがとうございました。
佐藤委員、お願いします。
【佐藤委員】 一つは、先ほども出ていましたけど、グランドデザイン、100年ということなんですけど、都市の地域をもうちょっと書き込んでいただいてもいいんじゃないかなと思うんですね。例えば、大阪では北ヤードを森にしようかというような話まであって、大分都市の中での緑の考え方って変わってきていると思うんですよ。それが今までどおりのトーンでいくと大分遅れた感じになるので、河川もそうですよね。都市の中の河川も、どんどんこれから触れるようにしようとか、そういう動きがありますので、その辺を先取りして書いていただく。そうすると都市の人、影響力がすごく大きいですので、見えると思うんですね。その辺を少し厚くしていただきたいなというのが一つです。
それと、都市の人が、これはちょっとグランドデザインとは違うんですけれども、連携のところで、援農みたいなことで、地方に出かけていくというか、郊外に出かけていくことも、これからもっと増えるんじゃないかなと。都市で野菜づくりとかしている人も随分増えていますし、そういうこともちょっと頭に入れて、いろいろ連携のところも考えていただきたいというふうに思います。
20ページのところで、国だけでなく、国民、企業などということで、企業も少しあるんですが、前に比べると企業の量が少なくなっているんじゃないかなと。前は、何でも前がいいというわけじゃないですけど、企業は非常に大きなインパクトがあると思うんですね。企業が生物多様性と関わるということは、CSRなどやるときに必ず生物多様性が入ってくるようになれば、いろんな人たちが興味を持って、お金も出せますので、企業は何ができるかということ、生物多様性でどういう責任を果たしていくのかということについては、きっちり書いていただいたほうが、企業のほうもやりやすいと思うんですね。企業は評価されることをやりたいので、その辺も戦略的に考えていただければいいんじゃないかと思います。
【武内委員長】 ありがとうございました。
ほかに。どうぞ、辻本委員。
【辻本委員】 一つは、どなたもあまりおっしゃらなかったんですけども、エコロジカル・フットプリントというのが一番最初の理念のところにありました。あと、地球規模でどう考えるかとか、広域にどう考えるかというところで、少し触れているんですけれども、一番最初にエコロジカル・フットプリントで一体何を考えるのか、我々の生物多様性は世界のそれと関わっていると書いているんだけども、実はそれに対して脅威を与えているというふうな、突っ込んだ書き方もあり得るんじゃないかということと、それによって、その後の生物多様性に対する地球的な規模で、あるいは広域的な規模で我々がしなければならないときの基本的な視点と基本的戦略が決まってくると思うんですけども、そうなれば、一番最初のところで、それが地球規模での生物多様性に我々がそれに依存していることによって脅威を与えているという書き方で、だから何をしなきゃいかんという視点と、どういう戦略があるのか。戦略のほうは少し、そういうものに対する世界的な、国際的な枠組みについて考えるというふうな戦略を書いてあるんだけども、その流れが少し見えるように、すなわち前半のほうから中間のところに、視点で書いてあるところと戦略で書いてあるところとつながるようにしていただけたらと思いました。
同じことなんですけども、基本的視点と基本的戦略がもう少し1対1に対応していたらいいんだけども、よく見るとあまり対応してないんですね。せっかくいいことが第4章の第1節に基本的視点が述べられて、その後、第2節に基本的戦略があるんですけども、これがうまく対応がとれていればいいんだけども、とれているところと、とれてないところがあります。先ほど言った一つの考え方の中で、生物多様性の問題というのは、かなり全体的、ホリスティックな問題であると。それから最初のほうで、いわゆるエネルギー再編の問題とも関わっているんですよ、あるいは低炭素の問題とも関わっているんですよ、循環型社会とも関わっているんですよ、持続性と関わっているんですよと言っているんだけども、じゃあ、そういう認識が第4章の中で基本的視点と基本的戦略にうまく生かされたかというと、本来ならば、総合的な視点の中に、21ページに幾つか書いてあるんだけども、エネルギーの面まで必ずしも踏み込めてないし、低炭素の社会まで踏み込めてないというきらいがあるし、じゃあ、基本的戦略でどう取り組むのかというふうに見ていくと、すなわち最初から最後まで一つの視点で見ていったときに、やっぱりバランスのとれてないところがあるので、前半のほうにどう書いたか、中間でどういうふうにそれを取りまとめて最後に戦略にまとめたか、1本筋の通るようにしていただけたらと思いました。
【武内委員長】 ありがとうございました。
ほかに。よろしいですか。
それじゃあ、今までのところについて。
【生物多様性地球戦略企画室長】 ありがとうございました。
特に最後の辻本委員のご意見を含め、先ほど中静委員からもご指摘のあった、まさに端的にいえば、視点と戦略のつながりとか、全体の構成の中でどう全体の流れが見えるようにして、またここで整理したものがそれぞれの戦略につながっていくかというのが見えるかというのが大きな課題だと思っています。何を隠そう、かなり前の戦略をベースに、基本的に大きく変わらない部分は残しながら、生かしつつ新しいものをつけ加えるという形で整理したものですから、その辺がやっぱりまだ十分整理し切れていない骨子だったかなと思って、再度、そのあたりは見直させていただきたいと思います。
あと、佐藤委員の都市の部分についても、我々ももう少しこの辺は書き込んでいかなきゃいけないだろうというようにも考えておりますし、それから農林水産業の位置づけ、大久保委員からも再度ご指摘がございました。この辺についても、ハイライトをきちっとしながら、また海の問題の部分でも具体的なところが不足している。特に海洋生物に対する保全戦略との整合性は、先ほどもご指摘いただきましたけれども、新しくできて、しかも環境省でつくった部分があったので、それをどう書き入れて、文章にまで持ち込んでいくかというところは、きちっと考えていかなければいけないだろうなというようには考えております。
そのほか、地方との部分についても、まさに堀内委員ご指摘のとおり、今、どういう形で何を連携して考えていくかというところは、クリアに考えていかなければいけないでしょうし、今の地方の中でどこまで、ご承知のとおり、生物多様性地域戦略自体がまだまだこれからだという状況の中でどうすれば、背中を押すという言い方はちょっと失礼ですけども、具体的に進めていっていただくことができるのかというところは考えていかなければいけないところだと思います。
それと辻本委員からあった、まさに国土のとらえ方の部分、軸の問題、階層的な話、委員長からもご指摘をいただきました。これは先ほどもちょっと説明の中で触れさせていただいたんですけども、全体をこの戦略の中でとらえていく、計画全体をとらえていく視点みたいなものをクリアにすることによって、ご指摘の部分を対応していくことができたらいいのかなというように思っています。
それと最後に、宮本委員からご指摘のあった地域間をつなぐものという、そのつながりというキーワード、その間の関係性というのは、これについても先ほど、地域内で考えることと、地域自体をつないでいくことという話は説明の中でも、ぜひご議論いただきたいとお願いしたところですけれども、その共生域みたいな考え方みたいなものをどう書き込んでいくかというのは、具体的に文章化する中で、もう少し考えを深めていきたいと思っております。
あと、社会経済的な視点、吉田謙太郎委員のご指摘についても、具体的に文章をする中で、きちっと書き込めるところを書き込んでいきたいというふうに思います。
私からは以上でございますけれども、補足的なものがあればお願いしたいと思いますが。
【武内委員長】 よろしいですか。今の都市と生物多様性については、条約事務局の前の事務局長のイニシアチブで、そういう議論を今していて、今度のCOP11に素案をまとめるという段取りで、今、文書が書かれています。恐らく今月末ぐらいにはゼロ・オーダー・ドラフトができると思うんですね。私、アドバイザーなんで、それ入手できますので、是非そういうのも見ながら、今、生物多様性の領域の中で都市をどういうふうにしてとらえようとしているのか。これも、条約事務局も、都市を外したというか、余り重要視しなかったために主流化に成功しなかったんだという認識も非常にあるので、ここで言われた話と非常に共通性が高いので、そのことをちょっと比較してみながら、日本についてどう考えるかというふうに考えていただければいいんじゃないかと思います。これ、私のところに来たらお送りしますので、一応頭の中に入れておいてください。正式な名前は何て言うのですか、イニシアチブ。city and biodiversityですか、COP11でも、かなり時間をとって、それ議論するように聞いています。
それでは、ここで当初の台本に戻りまして、今度は第2部で間違いないと思います。愛知目標の達成に向けたロードマップについて、ご意見・ご質問のある方はお手元の名札を立てていただきたいと思います。
吉田正人委員。
【吉田(正)委員】 これは、どちらかというと質問に近いんですが、今の構成案は、我が国の施策とか、それから地域とか、そういったものに並べてあるんですけれども、ここは第四次環境基本計画に基づいた形なのかもしれませんが、単純な質問ですけれども、これは、どうして愛知目標の個別目標順に並べないのかということですね。そのほうがわかりやすいんじゃないかと思うんですけれど。
【生物多様性地球戦略企画室長】 第3部の構成ということでしょうか。
【吉田(正)委員】 失礼しました。第2部と第3部、一緒に並べて見てしまいました。第2部は、あくまでも個別目標順に並べるということなんでしょうか。
【生物多様性地球戦略企画室長】 そうです。むしろ第2部というのは、愛知目標と、第3部がある程度、日本の国の側からのさまざまな個別の行動計画を整理したものになっているので、それを愛知目標から持ってきてしまうと、どうしても明らかに、さまざまな意味での日本の政策として並べて考えていくものと、国際的な視点で各国共通のものとして考えていく部分と、さらに愛知目標の場合は、かなり交渉の結果の部分もあるので、逆に、せっかく日本の政策というのを大分並べてきたものがわかりにくくなってしまう部分があると思いますので、逆に愛知目標の達成に向けて、政策はどういう形で整理できて、それでもって具体的な目標というのは、どう書き込めるかというのを、3部との間をつなぐのが第2部の役割として、愛知目標の達成に向けた行動計画としての整理を第2部において少し見えるような形で整理させてもらって、第3部には個別具体に、それぞれの具体的な説明を書き込むというような整理でいきたいというふうに考えておるところですけれども。
【吉田(正)委員】 ちょっと、25ページのところだけなのでイメージがつかめないんですけれども、愛知目標の20の個別目標に従って、どういったことを目標に我が国ではしていくということが書かれて、2020年までには、どういった目標を達成する、あるいは中間である2015年までにはどういったこと、そういうようなことが書かれたような、そういう表のようなイメージになるのか、その辺の第2部のイメージを、もうちょっと説明していただけるとありがたいなと思います。
【生物多様性地球戦略企画室長】 今、実はここのところは、具体的な目標の設定をどうするかというところで、関係各省とも、そもそも愛知目標の解釈の部分でも相談をしているところでございまして、ちょっとイメージとして、確実にはできなくても、一つの案としては、確かに表のような形で書くという案もございまして、そういったものができるかどうかというのは、逆に国別目標をどう書けるか、もしくは、それに対する指標をどう整理できるかというところにも係ってくるものですから、今回、そこまでの整理が間に合わなくて、具体的なイメージがお示しできなかったのは申し訳ないんですけれども、次のときには、少なくともイメージがお示しできるようにしたいと思っております。
【武内委員長】 ほかに。
私から一つ、これ、どういうふうにお考えなのか伺いたいと思うんですが、愛知目標というのは世界の目標であり、それぞれの国が取り組むべき目標ですよね。そのときに、日本の中でこうしますよというのもいいんですけれども、やはりこれ、日本がリードして、この目標の採択にまで至ったわけですから、世界のほかの国に対してどういう貢献ができるのかとか、あるいはグローバルな問題と、それから国としての問題の間の関係をどう考えていくのか。あるいは先進国と途上国をどういうふうにして位置づけていくのか。その辺の議論がここになくて、いきなり日本と来ているんではないかなという感じがするんですが、その辺はどうなんですか。
【生物多様性地球戦略企画室長】 今の整理は、どちらかというと戦略の第1部の部分でうまく書き込むことができれば、第2部、第3部につなげるかなというふうに思っておりまして、特に第2、第3は、具体的なアクションプランとして個別の、何を目標にして何をやっていくかというところを順次書き込んでいくところですので、例えば、第1部の中でも、基本戦略の中では地球規模の視野を持って行動するということですとか、現状と課題の部分でも国際的な取組というのを第2章第4節の4項で書いたりして、そういう中で整理ができればというふうに思っておったところですけれど、ちょっと、それが確かにさまざまに分かれているという中でうまく、どういうふうに具体的に、もう少しわかりやすく示す場所がつくれないかどうかというところは検討させていただきたいと思いますけれど。
【武内委員長】 既に一部実施をしているわけですけれども、途上国の、つまり愛知目標達成への道筋を示すための国家戦略について、日本が支援をして能力形成すると、こういう話はありますよね。ですから、そういうものも、かなり具体性を持った話として、例えば、こういう中に書き込んでいくということも可能なんじゃないかと思うんです。ここでいきなり世界と日本みたいな話を出すと、それはそれで非常に抽象的な話なので、それはもっと前のほうで出した方がいいと思いますけれども、愛知目標の中に、そういうのはないんでしたっけ。ありますよね。ありますよね。
【生物多様性地球戦略企画室長】 多分、お手元に愛知目標のパンフレットを置いてあるかと思いますけれども、今の話は戦略目標Eという中で…。
【武内委員長】 お手元にはないようですけど。
【生物多様性地球戦略企画室長】 お手元にないですか。すみません、申しわけございません。
【武内委員長】 このファイルの中にあるんですか。
【生物多様性地球戦略企画室長】 大変失礼いたしました。愛知目標の整理表、お手元の資料の、前回お配りした資料の別紙3というところに、一応個別目標について簡単な整理というものが書いてございます。一つは、目標20のところで、資源動員ということで、戦略、後期計画の効果的実施のために資源動員がなされるということが締約国によって報告されるということですとか、17で、先ほどおっしゃったような各締約国が国家戦略行動計画を策定し、政策手段として採用し実施しているというところが、今、ご指摘いただいた部分について関係するところではないかなというふうに思いますけれども。それで、行動計画の中においても、第3部の第5章のところで国際的取組というのはまとめて書くことにしておりまして、この中で具体的な、その愛知目標の達成のための支援みたいなものはきちんと書き込んでいきたいというふうに思っております。
【武内委員長】 ほかにいかがでしょうか。
どうぞ、中静委員。
【中静委員】 僕は、第2部をつくっていただいたのは大変よかったなと思います。この中で、恐らくは第3部で出てくる個々の施策といいますか、行動計画の中から、第2部では愛知目標の達成に向けたものというのが拾われてきて、しかもマイルストーンとか指標をつくるということですので、大変わかりやすい構造になったなというふうに思います。ありがとうございます。
【武内委員長】 私からもう一つ、別の観点から。これ、ドライビングホース・プレッシャーとか、そういうステータスとか、そういうレスポンスとか、そういう順番で構造をつくっていますよね。目標自体が。そのことを20だけばっとやっちゃうのと、それを、まず全体としてうまく書き込んで説明して、それを回していくこと自体が重要だという話というのは別途必要じゃないですかね。
【生物多様性地球戦略企画室長】 わかりました。そうすると、第2部のところで、愛知目標そのものの説明というのも少しきちっと書き込まなければいけないので、その中で、今言ったご指摘のような話というのは、わかりやすく示すことが…。
【武内委員長】 意識が変われば、その意識が変わったことによって、人々の認識が深まり、そのことによって問題をより解決するというインセンティブが生まれ、そしてそれが施策につながっていって、施策がうんと進展していけば、人々ももっと、さらに深く、その恩恵を認識するようになるという、一種の螺旋状の循環系による生物多様性の回復というんですかね。それが最終的には2050年を目標にした超長期的な自然共生社会の実現というところにつながっていくんだみたいな話を、ちょっとここで書いておいたらどうですかね。そのことを書いた上で、個別の目標について具体的に記述していくというふうにすれば、頭の中に入りやすいと思うんですね。そうしないと、全部個別で指標が、たまたまあるやつがずっと並んでいるみたいな、そういう表だけになってしまうので、それではちょっと、この目標設定の意義の大事なところが欠落しちゃうんじゃないかと思いますので、ちょっとお考えいただければと思いますが。
愛知目標に関することで、ほかに。
白山委員に、ちょっとお伺いしたいんですけれども、例えば海域の目標みたいなのがあったときに、何を大事だということを定義するかによって、面積、全然違ってきますよね。その辺が、私、すごく気になっているんですけど、もちろん陸域もそうですけれども、陸域は何となく、何とか自然度みたいなのがあったりとか、それから国立公園のランキングがあったりとか、何となくイメージしやすくて、どこまで入れるかという話で、例えば国立公園で言うと普通地域は入れないとか、何かそんな話になると思うんですが、海域については、どういうふうにして。10%でしたっけ。
【白山委員】 海域の10%ですね。
【武内委員長】 だから、何をもって10%と言うかによって、達成したとも言えるし、全然達成できないとも言えるという、そういう状態じゃないかなと思うんですけれども。
【白山委員】 海洋生物多様性保全戦略の中で、海洋保護区とはこういうものだという定義を一応書かせていただいております。それに基づいて、各省庁で積算をされた面積の足し算が海洋政策本部で、現在海洋保護区は何平方、管轄面積の何%という数字があって、それがオーソライズされて8.何とかパーセントです。ただ、つい10日ぐらい前に日本の管轄水域が大陸棚の延伸で広がりましたので、減ったと。目標は遠くなったということになったと思います。一応、それで定義は明確に書いてございます。ただ、いわゆるIUCNの保護区に関するクライテリアが非常にたくさんございますけれども、一番甘いと言うとちょっと語弊がありますけれども、とりあえず、あのクライテリアのすべてが包含されるような形で定義としては書いてあるというふうに認識をしております。したがって、クライテリアの厳しいほうだけを集めると数字は減りますしという状況だというのが現状だと思います。
【武内委員長】 鷲谷委員、どうぞ。
【鷲谷委員】 海の生物多様性を有効に進めるに当たっては、量だけではなく質についての考慮というのが重要だと思うんですけれど、それぞれ固有の生態系があったり生物多様性がありますけれども、日本の沿岸域で多様性の面で重要な場所というのは、砂があって正常な状態、きれいなという意味ですけれども、状態になっているような場所で、そういうところが時には潮が引いたらあらわれたり、砂帯という言葉もありますけれども、そこの生物多様性というのは一番厳しい現状にあるというふうに、渚の生物多様性の研究をされている方がおっしゃっていらっしゃるんですが、そういうところでの人間活動を少し抑えていかないと、軟体動物とか節足動物、お魚だけじゃなくて、そういうようなものの多様性を維持するのが難しくなるんではないかと思いますが、懸念される人間活動として、今、海砂を採集するということがとても多くなって、特に生物多様性保全上重要な海域で海砂が採集されていて、かつては川砂が採集されて、川の生態系が大きく変わったんですけれども、そのことが今、海で起こる。コンクリートがたくさん必要とするような現状があるがゆえに、海砂採集というのが盛んになりつつあると思うんですが、そういう場所は多少規制をしないと、いい場所、生息場、物理的なつながりにおいていい場所というのは維持するのが難しくなるんだと思うんですが、どこにデータがあって、そういうことがきちっと把握されているかどうかがよくわからない面もあるので、それをもう少し、モニタリングというのか何かわかりませんけれども、問題は意識されていることでもあるので、客観的な事実がどうなっているか把握した上で、有効な手を早く打つ必要があるのではないかと思います。
【白山委員】 現在、環境省の中で、海洋生物多様性保全戦略に基づいて重要海域の抽出というのを始めております。国際的には、オープン・オーシャンの多様性の保全に対して、クライテリアとか、その後、どういう保全地域を選ぶべきかみたいなものがCOP9でアペンディクスの中に明記されておりまして、EEZの内側ですと、必ずしもそれはそのまま使う必要はないんですけれども、かなりそれに近い形でクライテリアを設定して、保全すべきと思われる重要海域の抽出という作業が現在行われておりますので、鷲谷先生のご懸念となるような重要な海域としての抽出の結果を、そんなに遠くない将来にお示しできる予定ということになっております。それは、環境省の事業として進められていることです。
【武内委員長】 ありがとうございました。吉田正人委員は2回目ですね。どうぞ。
【吉田(正)委員】 ちょっと海の話が出ましたので関連してなんですけれども。まず、8.3%という海洋保護区の面積の話がありましたけれども、実際上、その6.9%じゃなくて8.3%のうちの6.9%という意味ですが、海洋水産資源開発促進法に基づいた指定地域ということで、実際、どの程度、その海域に関係する方々が、そこが海洋保護区と認識されているかどうかわからないという、そういうものが、かなりの面積を占めているということなんですね。ですから、私としては、とにかく10%に近づけるために、きちっと認識されていない地域まで全部含めて膨らませるというよりは、日本の沿岸において、どういう海洋保護区が望ましいのか、日本に合っているのかというのをちゃんと議論することが最初に重要で、アメリカで指定しているようなトップダウンで指定できるようなところではなくて、日本の場合利用しているところが多いということは、それはもうそのとおり、歴史的なものがあるわけですから、その中で、どういった管理の仕方をしていくと、より海が豊かになっていくのか、あるいは開発から守れるのかという議論をきちっとした上で数値に近づけていくというのは、二の次のような気がするんですね。
そういった感想を持ちましたのでということと、それから、自然保護協会で、皆様のお手元にチラシを配らせていただきましたけれども、19日に白山先生にも基調講演をいただいて環境省の方にも出ていただく「海の生物多様性フォーラム」というのも開く予定でございますので、そういった中でも議論ができるかと思いますので、ぜひともお時間ありましたら、委員の方にもご出席いただければと思います。
それと、先ほどの愛知目標の件については、武内先生おっしゃったように、五つの戦略目標に沿った説明、整理というのが、私は重要だと思います。先ほど、委員に配られている資料では、2015年までの目標と2020年までの目標というタイムスケールで分けてしまっていますけれども、その前に、なぜ20の目標が出てきたかという、そういう理由があるわけですから、それに対応した日本の取り組みはどうなのかという整理は愛知目標としては重要だと思いますので、時間スケールで分けてしまうよりは、五つの戦略目標というのを忘れずにきちっと入れたほうがいいと思います。
【武内委員長】 ありがとうございます。ほかに。どうぞ。
【桜井委員】 この会議でも時々発言しておりますけれども、実は、この海洋保護区の8.7%ですか、これについては、恐らく沿岸の共同漁業圏をもとにして計算されていると思いますけれども、私たちからしても、共同漁業圏イコール海洋保護区という考え方が果たして沿岸にいる人たちに理解されるかとすると、全くされていないと思います。ですから、もう少しきちっと明確な定義をしてやるべきだというふうに思っております。この数字だけがひとり歩きするのを非常に心配しておりました、我々も。ですから、例えば知床の例でも、ちょうど16ページにありますけれども、16ページの書き方はちょっと間違っていまして、沿岸域ところの丸の三つ目ですけれども、「特に沿岸域においては」の後に、これは既存の法的ルールに加えて漁業者による自主的な共同管理という形で、沿岸漁業については法的なルールがあります。ですから、そのルールに基づいて、なおかつ漁業者自身が、みずからが自分たちで浜を守るというやり方ですね。そういったところを拾い出していかないと定義ができないんですね。ですから、今の場合には、一気に共同漁業圏イコール海洋保護区ということですけれども、我々としては納得していないんです。ですから、もう少し議論して、きちっと日本の海洋保護区としてのあり方について、もう少し明確化していく、しかもクライテリアをつくっていくということをしないと、国際的な舞台に上げたときに、どう説明するのか。これは非常に重要だと思います。
以上です。
【武内委員長】 ありがとうございます。ほかに。
よろしいでしょうか。それでは、事務局の方から何かございますか。
【自然環境計画課長】 海洋保護区のことが随分話題になったので、私から。
白山先生と、桜井先生からご説明があったとおりで、要は、政府としては何かを決めなくちゃいけないので、みんなで合意できるものを決めましたけれども、議論が十分ではなかったという点は理解をしておりますので、今後、見直しの機会とか、そういうのはあると思いますから、そこで議論を十分したいと思いますし、それから重要海域の調査を現在やっております。平成23年から、あと2年間やりますので、その中で、どういうところが大事なところなのかというのが明らかになってきますので、その議論も踏まえながら、さらに議論を深めていくという作業が、これから残ってくるんだと思います。いろいろご指摘、どうもありがとうございました。
【武内委員長】 それでは、第3部の議論に移らせていただきたいと思います。生物多様性の保全及び持続可能な利用に関する行動計画という部分でございますが、これについて、ご質問・ご意見のある方は札を立てていただければと思います。
鷲谷委員、どうぞ。
【鷲谷委員】 自然環境データの整備の(7)に当たるところですけれども、そこで二つほどあるんですが、一つは、各種モニタリングの継続的な実施というタイトルがあるんですが、各省がやっていて生物多様性にもかかわるようなモニタリングについてですが、コスト削減のためだと思うんですけれども、間隔が大きく伸びたり、例えば河川・水辺の国勢調査という調査がありますが、同じ分類群の調査が、次は10年後に行われるというような間があくモニタリングになってしまっているらしいんですね。そうしますと、今、変化が大変急ですので、モニタリングの結果を見て何か保全などのアクションにつなげようと思っても、10年たったらすべて終わってしまっていると。モニタリングが、単にモニタリングだけのモニタリングに、継続はされているけれども間隔が余りあいているということになってしまって、やはり自然環境データを整備したら、それを使って保全とか持続可能な利用につなげていくということが重要だと思うんですけれども、そういうモニタリングでなくなる可能性がありますので、コストもあるかもしれませんけれども、目的に十分かなうデータとして、使えるデータをとっていくということが重要ではないかと思います。
それから、放射線による野生動植物への影響の把握という項目ですけれども、放射性物質がどう広がったか、事故の初期のころに関しては、国際紙にも、日本人がファーストオフィサーになって、モデルも使って推定が出ていますが、海に多くの、例えばセシウム137が落ちたということが特徴なんですね。チェルノブイリのときに全くなかったのは、海に大量の放射性物質が落ちたということですし、陸に落ちたものも次第に、今、例えば関東地方だったら東京湾に集まってきているという面もあって、海の生態系にどんなことが起こっているかというモニタリングがとても重要ではないかと。水産物に関しては、食品として適しているかどうかという観点からのいろいろなデータは出てくるんですけれども、海の生態系の物質循環等がどうなっているかということ、そして、長期的にどんなことが予想できるのかということが予測できるような、そういうモニタリングというのが日本のためにも必要ですし、海がこれだけ汚染されたのはきっと初めてだと思いますので、そういう事故を起こした国として世界に対する責任、きちっとデータをとって、それを提供していくということは重要な責務なのではないかと思います。
以上です。
【武内委員長】 ありがとうございました。
今、鷲谷委員が説明されたのは資料3に基づいてということですよね。これも私が台本を見ていると、台本には何もないんですが、これはどうなるんですか。
【生物多様性地球戦略企画室長】 失礼しました、ちょっとシナリオが不十分で。第3部に、先ほどちょっとご説明しましたけれども、こういう具体的に重要な課題を踏まえ必要と考える事項を、ここにとりあえずピックアップをさせていただいたものを、かなり中心に添えながら第3部の整理を行っていくというか、具体的に書き込んでいくということですので、資料3については、まさに第3部の一部というふうにお考えになっていただいて結構だと思います。失礼いたしました。
【武内委員長】 それでは、土屋委員お願いします。
【土屋委員】 第3部の第3節に環境影響評価などという項目がありますが、ここで、どういうことが書かれるかは大変気になります。アセスメントにかかわってきて、なかなか自然を守るような結果にならないことが多々あったわけですけれども、あるいは環境影響評価そのものにいろんな批判があることも、よく承知しておりますけれども、この国家戦略として、どういう方法でこれを書き込んでいくのかというところ、まず、原案などをお示しいただけると議論がしやすいと思います。
【武内委員長】 ありがとうございます。中静委員。
【中静委員】 3点ほどあるんですが、一つは第4章で、持続可能な利用で農林水産業、エコツーリズム、生物資源というふうにあるんですけど、ここに入るのかどうなのかあれですけど、例えば企業の資源調達といいますか、そういうものをどこかに入れていただくというのはいいんではないかなというふうに思いました。
それから、第5章は、たびたび言っていることなんですけど、国際的な取組の推進の中に、やはり日本が生態系サービスを輸入している、あるいは海外の生物多様性をもしかしたら損ねているかもしれない可能性に対しての取り組みというのは、何とか入れてほしいなというのがもう1点です。
それからもう1点は、先ほど21ページのところで社会経済的な仕組みの考慮というのがありましたが、それがどこに入るのか。もう少しイメージ的に入れていただいたほうがいいんではないかなというふうに思いました。
以上です。
【武内委員長】 ありがとうございました。白幡委員。
【白幡委員】 ちょっとした質問ですが、国家戦略の2010ではなかったのが、第4章の持続可能な利用の中で、エコツーリズムという章が立てられているんです。これ、対応するところ、例えば自然との触れ合いとか、教育・学習とか、人材の育成とか、こういうのを全部ひっくるめて、こういうふうな項目になっているのかなと思うんですが、対応させて考えると。これはどういうふうにお書きになるのか。例えば、さっき、お話が出ていました都市と自然環境あるいは生態系というようなことを考えるときに、普通の人、大多数の人間は、そういうふうな都市と自然とのかかわりみたいなところで接触することが多いと思うんですね。このエコツーリズムという立て方は、ぐっと生業にかかわる人というよりは、重心を一般の利用者みたいなところ、国立公園利用者というような感じ、利用のところに重心を置こうという書き方にするのか、その辺をちょっと教えていただきたい。
【武内委員長】 今のところは、ちょっとスペシフィックな問題なので、今の時点で。
【生物多様性地球戦略企画室長】 中静委員、白幡委員、両方とも特定のところのご指摘だったので併せてお答えしたいと思いますけれども、企業の資源調達ですとか、社会的な仕組みの考慮とか、そういうのは、現段階では、恐らく第1章の主流化に向けた取組の強化という中でうまく書き込んでいく部分と、完全に海外との関係というところでは、国際的取組というところとも関連する部分はあろうと思いますけれども、先ほどのお話の中では、第1章のところで書くということ。
それからあと、第7章の統合的な取組の部分等に分かれる部分がありますので、実際これから施策を関係省庁及び省内で、具体的にどんなことが次の戦略の中で書き込んでいくことができるかというのを集めていく段階ですので、それを整理しながら、この項目立てについても、フィットしないということがあれば新しい項目をつけ加えたり、もしくはそこから漏れるものが入るような形で考えていきたいと思っています。
それから、白幡委員ご指摘のエコツーリズムの部分は、まさに現行の計画でいうと第2章の第3節3の自然との触れ合いという部分を持ってこようというように考えているところです。そういう意味では、ちょっと言葉自体が狭くなる部分があろうかと思いますけれども、これについても具体的にここに何を書き込むかという中で、タイトルについても再考していく必要があろうかというふうに思います。
【武内委員長】 中村委員、お願いします。
【中村委員】 まず2章のところで、全体として並びがわかりにくいというか、前も書いてあるんです。ですから、僕が前をちゃんとチェックしてないのかもしれないんですけど、広域連携施策という括弧書きがあって、その次に地域空間施策という言葉があって、例えば広域連携の中には環境影響評価が入ってくるけど、もしくは自然再生が入ってくるんですけれど、地域空間施策の中にはそれが外されているとか、その後に野生生物の適切な管理が出てきたり、持続可能な利用というのが特出しして出てくる。例えば、理解が間違いでなければ、広域連携施策というのは、どちらかというと保護帯みたいな、そんなイメージが強く出ていて、それで地域連携は人とのなりわいみたいな、さっきのマトリックスみたいな、そんな議論がここに書かれているのかなという気はするんですけど、例えば自然再生でやられている中でも、地域のなりわい、例えばトキの問題であったりしても、地域の農業の仕方とか、いろいろ絡んでくるわけですよね。そうすると、上の広域連携施策に例えば自然再生は入っていて、地域空間施策には出てこないとか、どうしてこういうふうに並ぶのか、僕にはよくわからないんですけど。持続可能な利用というのは、まさに地域空間施策の一つの中に入ってくるのかなという気もしたんですけれど、その辺はうまく並んでいるんですかね。
それともう一つは、生態系サービスに関する議論というのは、行動計画の中には何も出てこないのかなという感じがしちゃったんですけれど、その辺も教えてください。
【武内委員長】 今のもスペシフィックな話なんで。大変大事な話ですよね、順番。
【生物多様性地球戦略企画室長】 資料1の現行の計画、縦長の表で比較しながら御覧になっていただいたほうがわかりやすいかと思うんですけれども、現行の計画そのものが国土空間的施策と横断的・基盤的施策という大きな分け方をして、その中で広域連携施策と地域空間施策という整理をしていたので、これを基本的に踏襲するような形で組み込むような持っていき方をするというのが、今回の新しいやつの第2章の整理だったんです。ですから、これちょっとセットで持ってくるという整理をしながら、実は横断的・基盤的施策というところ、上にも書き込んだのがもう一回出てくるということで非常に重複が多かったものですから、大きく国土空間的施策と横断的・基盤的施策という分け方をしないで、国土の保全管理というのを一つの大きな広い取組と、個別のテーマを持った施策というような分け方の一つとして第2章というのを位置づけてしまって、それで、残った、この整理論の中で割り振れないものをどこに入れ込むのが最も適当かということにおいて、例えば環境影響評価、先ほどちょっと土屋委員の質問にお答えしてなかったんですけれども、環境影響評価というのは、前の現行計画では第2章第8節にあるものを広域連携施策として位置づけるのが、この中では一つあり得るのかなということで、そこに入れ込んだということで、実際には現行計画の中に書き込んであるものプラス、さらに今後やっていくもの、また新しい法律に基づくような取組みたいなものが考えられるものを、ここに書き込んでいくということで、具体的な中身は、今、関係各課とともにネタ集めをしているところでございます。
ですから、そういう意味において、既存のものをうまく持っていきながら、抜け落ちる部分について、この中で最も適当なところに入れ込んだという整理をしたものですから、中村委員ご指摘のとおり、確かにちょっと違和感のある部分も出てきてしまっているのかなと。今回の整理の中でもどうしても重なる部分はあるんで、必要に応じて再掲の部分をしなければいけないんですけれども、今ご指摘の部分についての整理の理由としては、そういうことということでご理解いただいて、もし、こういった形のほうがわかりやすいというものがあれば、またご意見をいただきたいと思います。
【武内委員長】 基本的には過去のやつを手直ししながらやってきて、こうなっているということですけれども、その配列について、全面的に直すというのか、あるいは部分的に入れかえるともうちょっとうまくいくというのか、そこいらいかがですか。
【中村委員】 ちょっとまだクリアなアイデアはないんですけれど、例えば、なぜここに環境影響評価が来るのかもちょっとわかりづらい。例えば2章で書かれることと、例えば4章で持続可能な利用という言葉があって、それで2章でも持続可能な利用の観点から見たというのが出てきますよね。この辺もちょっと混乱するだろう。しかも、そこの中に農地は当然入ってくるということだと思うので、やっぱりちょっと整理しないと、少なくとも今の配列だと何が書かれているかがわからないので、ちょっとコメントしづらいんですけれども、ちょっとオーバーラップしているようなキーワードが、章であったり節であったり、そういうところに出てきたり、例えば自然再生も仮にそれが、どちらかというと保全すべき、もしくは保護すべき生態系の中に自然再生だけが入ってしまうと、さっき言っていたような人の営みがあって維持される里山的な自然再生、さっきやったコウノトリとかトキとか、それから阿蘇といったような、そういった議論が地域空間施策の中に入るのかなと思ったんですけど、そうではないんですか。その辺の矛盾を感じちゃうんですけど。
【生物多様性地球戦略企画室長】 先ほどの言葉の重複については、整理についてはもう少し考えたいと思いますけれども、単に第2章の持続可能な利用が出ているというのは、これはセットで生物多様性という言葉を出したときに保全と持続可能な利用というのでセットで使っているというだけの理由で、ここで持続的な利用というのを特記しようという意図ではございません。ですから、この辺の言葉の使い方は考えたいと思います。
あと、確かに自然再生、この広域連携と地域空間という分け方そのものを、どうしても前のほうが重要地域の保全とかに近いところにあるので、そのことばかり考えているんではないかという、ちょっと見え方としてですね。決してそういう意図ではなくて、むしろ自然再生というのは、ある意味で多分広い視野を持って考えていく部分もあろうかということで、これは正直申しますと、2010の現行の計画の中で広域連携施策として整理されていたものですから、その整理をそのまま持ってきたというだけの話で、今、ご指摘のような観点があるというわけではございません。
【中村委員】 現状、持ってきたということはいいんですけど、今のここの議論は、これからどういう形で良くするかというときに、前のやつだと、例えば農林水産業は第1章の第4節に入っていますよね。そうすると、これは、いわゆる原生的な自然を保護しようという議論とは違うことが、この広域の中にも入っているわけですよね。とりあえず、ちょっと今は僕も議論しにくいので、その辺の整理をされたほうがいいかなということを感じました。
【野生生物課長】 野生生物課長というよりは、5年前に三次の戦略のときにこういう整理をしたときの立場からお話をさせていただくと、今の2010の形というのは5年前の三次戦略の形を踏襲しているんですけど、その5年前の三次戦略のときは、施策全体の整理の仕方として、大きく地べたに張りついたようなハード的な施策を第1章で国土空間的施策と書いて、ソフト的なもの、そういう施策を第2章で横断的・基盤的施策として整理をしたという経緯があります。さらに、国土空間的施策の中で広域連携施策と地域空間施策に分けたのは、地域空間施策のほうで森・里・川・海とか、そういう区域割りごとにどういう施策が行われるかというような整理で地域空間施策の整理をして、広域連携施策は、そういう区域をまたがって行われるような重要地域の保全とか、再生もいろいろなところで行われますから、そういう区域をまたがってかかれる施策。農林水産業も田園地域だけでなくて、水産業に関しては海洋で行われますから、そういう区域割りとは違う形での整理として、広域空間施策の方を整理したというような経緯があるんですけれども、それはそれで多少の重複はありますので、今回は、そういう重複を排除するために横断的基盤的なソフト施策としての環境影響評価を上のほうへ持ってきたりということで、再整理はちょっと必要なのかなという気はしますけれども、過去の整理の経緯を申し上げると、そういうふうなことでございます。
【武内委員長】 次回に少し考え直して、もう一回出していただけますかね。それをベースにまた皆さんに議論していただくということで。ちょっと、取ってつけたような配列になっているという印象があるということですから、そうでないようにするということが大事。
吉田委員、どうぞ。
【吉田(正)委員】 すみません、今の場所なので、先に手を挙げさせていただきました。失礼しました。
環境影響評価と自然再生をここに持ってくるのは、私は賛成なんです。なぜかというと、今までの考え方としては、そういった生物多様性を現地で守るというような、そういう保護地域をつくるというようなものが一つのツールであって、それに対して積極的に再生していくというのが自然再生で後ろにくっついていたという、そういう形なんですけれども、環境影響評価は、本当に横断的な総合政策局がやるものとして一番後ろのほうにくっついていたんですけれども、こういったもの、環境影響評価も自然再生も、生物多様性を保全回復していくための施策として一括して考えていくという考え方が非常に重要で、戦略的環境影響評価についても、生物多様性基本法ができたので、そういうふうに動き始めたわけですよね。そういったことを考えると、それから環境影響評価に関して生物多様性条約の中の決議で、スクリーニングの時点で、例えばそこが生物多様性に非常に重要な地域であるとか、そういったことも考慮に入れて、その事業を環境影響評価の対象にすべきかどうかというのは、そういうことをやるようなことが求められるような決議もあるわけです。そういったことを考えると、環境影響評価というのが単に事業が行われると決まって、プロセスだからという形で消極的にそれを使うんじゃなくて、むしろ環境影響評価を使う中で環境保全措置を行ったりとか、それからモニタリングを行ったりとか、そういう形で、今までの環境保全措置は、環境影響評価をやってもマイナス100になるところが何とかマイナス50でとどめようというような、あるいはうまくいけばゼロでとどめようというような、そういうマイナスをいかに少なくするかという考え方でしたけれども、プラスをどう多くしていくかという考え方で、これから環境影響評価をやっていくべきだというのが、この生物多様性の戦略の中での位置づけを、そういうふうにしていくことが必要だと思うんですね。そういった面で私は、ここにあるのは非常に重要だと思います。同様に自然再生も、ここの位置にあるのは大事なんですけれども、そういう面では、自然再生推進法も、今は自主的な形で協議会をつくられていくのを待っている状態なので、これでは失われたものの15%を回復していくなんていう愛知目標はとても達成できませんから、やはり重要なところであれば、これは壊すときは国が全総とか新全総とか、そういうので計画的に壊していったわけですから、回復するときも計画的に、こことここはつなぐ必要があるので、ここの干潟は回復しようというような形で、着実な実施じゃなくて計画的、政策的な実施という形で戻していくと。そういうふうにすると、生物多様性の地べたの部分、守ること、それから、それを回復していくことというものが一つにつながっていくと思います。
あともう1個だけ。同じ27ページの第3章1節のところは、「絶滅のおそれのある種の保存」しか書いてないんですけれども、これは皆さんどなたもわかるとおり、トキの再生にとっては田んぼの再生が重要だったわけですから、「絶滅のおそれのある種と生息地の保存・回復」というような形で、もうちょっと積極的に回復する方向で、この題名を変えていただければと思います。
【武内委員長】 多分、表題が悪いと思うんですよ。また考えてもらえばいいんですけれども、例えば第2章の「貴重な自然を守る」というタイトルにする。そこで重要地域の保全を言う。その次に自然への悪影響を回避すると言って、その中にアセスメント、戦略とか、さっきの、むしろ増やしていくというか、代償ミティゲーションなどがあって、失われたものよりもより多いものにしていくというような話が入ってきて、それで三つ目が失われた自然を再生するというようなテーマにすれば、その三つが相互につながっているという印象を与えるでしょう。それを貴重な自然の保全で、環境影響評価で自然再生と言うから、何か全然つながりのないものを当てはめたという格好になる印象を与えるんで、今のような説明は大変わかりやすいので、だとすると、タイトルもそういうふうなタイトルにして、つながっているようなタイトルにしたらいいかと思いますけれども。
それでは、宮本委員、お願いします。
【宮本委員】 資料3の(8)なんですけれども、エネルギーと生物多様性ということで、再生可能エネルギーの利用と生物多様性の保全との両立というのが挙がっているんですが、これにつきましては、第3部の4章なのか7章なのか、ちょっとよくわかりませんけれども、どのあたりで言及されるのか。
それから、具体的な行動計画というところまで踏み込んでいかれるのかどうかということについて、ちょっとお伺いしたいと思います。と申しますのは、最近、かなり具体的に、どこに大規模な風車群をつくるとか、太陽光パネルを並べるとかいうような計画が新聞等で取り上げられておりますけれども、その大半の地域というのが、やはり特定の場所というのが生物多様性の保全上重要な地域と重なってきていて、特に里地里山とか、あるいは沿岸域、あるいは島嶼において、その両立ということがこれから非常に急激に大きな問題になる可能性があるのではないかと危惧いたします。どのあたりまで踏み込まれるのかということについて、次回でも結構ですので、お教えいただければと思います。よろしくお願いいたします。
【武内委員長】 ありがとうございます。今の時点で、何かありますか。
【生物多様性地球戦略企画室長】 場所としては、第7章の第2節のところで、「自然共生社会、循環型社会、低炭素社会の統合的な取組の推進」という項目がございます。恐らくここのところで書き込むことができればいいと考えています。具体的にどこまで書き込めるかというところについては、次回までにご説明できるようにしたいと思います。
【武内委員長】 それでは、辻本委員、お願いします。
【辻本委員】 ありがとうございます。先ほども言いましたように、基本的な視点、基本的な戦略から、もう一つは愛知目標を通して、ここのところへスムーズに流れるようにという意味で、今の7章の問題も、統合的な問題としては、ここのところへエネルギーの問題も含めて入ってくるということで、これが独立しているのは、それでいいのかなという気がします。
それから、国土デザインあるいは国土管理という視点が非常に重要なポイントかなという気がするので、それが2章の中にずらずらっと書かれたときに、この中では並びがいいと、私は吉田委員と同じような感覚を持ちました。まず、自然の保護するべきところはどこかという行政的な、法律的なものから、さらに事業を進めるときには、どういうふうな手当てが必要か、失われたところにはどうするのかということが一連として並んでいるのは、行政あるいは施策としていいのかな。その次のところは、前も、先ほどもお話ししましたように、類型的な景観の中で、それをどうしていくのかというポイントになっていると。その前には、委員長もおっしゃったけれども、類型景観と、もう一つは国土の中でどんな位置づけなのかということも、すなわち類型景観のつながりも含めて考えておかないといけないというところが、その二つの1行あいているところに何か必要かなという気がしました。ということで、私は、ここのところは国土デザインという視点から流れてくるところで、うまく影響評価と自然再生が入ったなという気が、むしろしました。
それから、この中で、農業・水産業が落ちちゃったというのが前回から比べてあれなんですけれども、ここの第2章のところは、国土の土地利用とか、あるいは国土の類型景観をどう張りつけていくかという問題で、農地には農地という類型的な景観をどこに置くかという話と、もう一つは営農という人間のやり方、ライフスタイルにかかわる、あるいは営農スタイル、そういったものにかかわる問題は、うまく持続的な利用のところへ入れ込んだというのは一つのポイントかなと。すなわち、基本的な視点、基本的な戦略からつながってくる流れの中で、うまく生きたのかなと。確かに委員長おっしゃるように、一つ一つの章のネーミングには、まだまだ改良を加える必要があるかと思うんですけれども、そういう気がいたしました。すなわち、ここのところにエコツーリズムとか、新しいもの等含めてここに出てきたというのは、営農としてどういうような農地の利用の仕方をするのかということで、私は持続可能な利用のところに入ってくるのが良くて、田園地帯という視点では、やはり2章の中でうまく、先ほどの行政的な保護区と、それから人間がそれにどうかかわっていくか、それから類型的なものにどう注意するかというような流れなんだという理解で、今日の基本的視点、基本的戦略からつないでいただければいいかという気がいたしました。
【武内委員長】 どうもありがとうございました。ほかに。どうぞ。
【小泉委員】 ありがとうございます。中村委員の意見を受けているというふうにお考えいただいて構わないと思うんですが、これは行動計画になっていまして、今日一日の議論を顧みると、愛知目標を受けてどのような行動計画を立てるかというところに行き着いているんだと思うんですね。もう一回、第1部を見てみますと、主流化というキーワードがあって、その主流化を強化するために生態系サービスという考え方があって、それを普及させるというやり方で進めていきましょうというのが第1部だったような気がするんですが、そういう理解でいきますと、第3部の章立てというのは非常に戸惑っています。ただ、国土政策がベースにあって、その空間施策が根底にあるんだと、こういった行動計画の大もとにあるのが空間施策であるということで進めてこられたのであれば、この章立てに特に異論はありませんが、それぞれの章や節の中に、その生態系サービスの強化というのをどういうふうに進めていくかという視点を盛り込んでいただきたいと思います。そうしますと、恐らく第7章の統合的施策の第1節は、最終的に持っていくのは地球温暖化の緩和ではなくて、生態系サービス、それから主流化というところに行くのではないかなというふうに思います。そのあたり、ちょっとご検討いただければと思います。今、ここでご回答いただかなくても結構です。
【武内委員長】 どうぞ、中静委員。
【中静委員】 細かいことなんですけれども、資料3のところで検討していただきたいなと思うことだけちょっとあるんですが、例えば、方向がもう既に定まっているのはいいんですけど、結構議論が必要なものが幾つかあるというふうに思っていて、例えば、それは資料3(2)の湿地や高山帯の脆弱な自然環境の保全・再生の取組強化なんですが、例えば温暖化で絶滅が確実化されるようなものが出てきたときに、どういうふうにやっていくかという、その指針がないかもしれない。要するに、現地外保全するのか、リロケーションするのか、本当に保全で頑張るのかとか、そういうもののクライテリアがまだないような気がします。
同じように、都市の生物多様性の確保に関しても、これはどうやったらいいのか、まだ非常に難しい問題が残っていると。
それからもう一つ難しいのが、自然再生の考え方だと思うんですけど、15%再生するといっても、その15%の中にどういうものを含めていくのかということなんですよね。例えば(4)に出てきている広葉樹導入によって、広葉樹林化みたいなものを自然再生の中に入れるのかどうなのかということで、随分この施策というか行動計画も変わってくると思いますので、これは今お答えいただかなくてもいいんですが、こういう議論が必要なのではないかなというふうに思います。
【武内委員長】 ありがとうございます。ほかに。どうぞ。
【辻本委員】 一つ忘れていました。第1章を見ると、前回の第2章の一部が、第3節がそのまま来ているんですね。普及と実践だけがぽこっとここへ来て、それがすべて主流化だと。主流化は戦略の中でも非常に重要なのに、生態系サービスにしたって、いろんな概念を普及させていくだけで本当に主流化なのでしょうかと。ここで主流化として達成したことは、例えば統合的取り組みの中でも主流である、さまざまな課題の中で、いわゆる気候変動枠組みとか、そういうものと比べても生物多様性保全というのは主流であるんだというふうなことがしっかり明確になっていかないといけないし、持続的なものをつくっていく中でも、生物多様性がほかのものと並んで主流であること。それから国際的取り組みでも、主流として、そういうものが認知されているとか、あるいは国土マネジメントの中でも生物多様性というのが主流であるのであって、普及とそこの部分だけで主流化が果たせるわけでなくて、戦略の一番大事である主流化はどうやって果たすのかというのは、やはりもう少ししっかり考えないと、これだけで主流化という基本的戦略にこたえる行動計画ではないんだということで、書き方は非常に難しいと思うんですけれども、一番大事にしているものをどう書くかというのは、先ほども言いましたように、国際的戦略も、ほかのものとの総合的なものの中でも、この問題が主流なんだということをどう示すかということが、やっぱりしっかり書かれないといけないんじゃないかという気がしますので、1章は、ちょっと考えていただきたいと思います。
【武内委員長】 ありがとうございました。
もう全般的で、もしまだご発言のある方、お願いしたいと思います。
どうぞ、吉田謙太郎さん。
【吉田(謙)委員】 全般的な意見というには少し細かな話なんですけれども、資料3の(4)とも関係するんですけれども、これは野生鳥獣との適切な関係の構築と外来種対策の一層の強化ということで、私、経済的な話からの発言が多かったんですけれども、主流化するには、やはり教育の問題も避けて通れなくて、子どもたちにどう教えるか、人々が身近なところで野生動物、動植物と接するときに、どう物事を考えるのかということは非常に重要になってくると思うんですが、都市の生態系を考えてみると、かなり外来生物が入ってきて、生き物との触れ合いという場合に外来生物が触れ合いの対象になっていたりとか、緑地をつくったり、そういったところでもどう物事を考えていくのか、今後どのようにしていくのかということを少し整理されていくといいなというふうに考えております。
それともう一つは、野生鳥獣の話がかなりクローズアップされてきて、私は非常に興味深いんですが、これはあまり今の段階では発言すべきじゃないのかもしれませんけれども、最近のニュースで、ゼニガタアザラシの管理の話が出てきて、これなんかも非常に論争を呼ぶんだろうなという気がしております。カモシカなんかもそうですけれども、希少な野生動物が増えているからといって捕殺していくというのは、なかなかちょっと、どういうふうに考えたらいいのかというのは、例えば教育の問題なんかも考えると難しい問題が出てくる。先週でしたか、ニュースで、かわいらしい美しい生き物のほうが保護されやすいと。そういったものをメーンに据えて保護を進めていくべきだというようなカナダの研究の成果が出ていましたけれども、そういったことも考えると、野生の動植物の保護の問題を主流化していくときには、外来種対策をどう考えていくかというのと、野生鳥獣を管理するということの意義づけがやっぱり必要かなというふうに、今、国家戦略2010を見てみても、やはりそこの哲学的なところが、まだまだ我々不足しているんだなということを感じました。
【武内委員長】 ありがとうございます。
土屋委員、お願いします。
【土屋委員】 全般的なことで、実現するかどうかわかりませんが、一番最後のまとめというのはお書きにならないんでしょうか。第3部が終わって、第8章で終わりますね。前回も、それで終わりました。ただ、恐らく読者は、自分にかかわりのあるところを中心に読むことが多い。1から10まで通して読むことというのは非常に少ないのではないかと予想、あるいは危惧するわけですが、ただ、この本全体として、どういうことを言いたいのかということを、最初のイントロと自分が読みたいところと、それから結論の部分があってもいいのではないかと思いますので、まとめとして、どういうものができるかどうかわかりませんが、ご検討いただくのはいいことではないかと思います。
【武内委員長】 今まではなかった。
【生物多様性地球戦略企画室長】 今まではなくて、全体のまとめみたいなのは、実は前文のところに、先にサマリーみたいなのを前文に書いてあったということです。
【武内委員長】 全体のサマリーがあるとしても、課題みたいなものをまとめて最後に書くということはあり得るかもしれませんね。ちょっとご検討ください。
それでは、白山委員お願いします。
【白山委員】 ありがとうございます。全体として、生物の多様性という言葉からすぱんと抜けているのがバクテリアとか微生物とか、そういう生物の多様性というのは、実は物すごく重要だというのは自然科学的には今わかりつつあるわけですね。一般の、あるいは政策のというところからいうと、なかなかそこにはつながらないんですけれども、今のところ第4章の第3節で微生物資源の利用と保存という言葉が入っておりますけれども、何となく取ってつけたような感じなんですけれども、例えば生態系サービスの主役というのは、基本的には微生物であるという認識も持つべきものだろうと思いますので、せめて、そのくらいのコメントは、どこかに入れていただけないかなということをお願いしておきたいということでございます。
【武内委員長】 今のお話に関連するんですけれど、多分ABSの記載がほとんどないでしょう、これ。今までは。
【生物多様性地球戦略企画室長】 大分、回を重ねるごとに書き込みつつあるのですけれども。
【武内委員長】 そうですか。例えば、海外のものをどうこうという話の中にABS的なものがあって、その中で微生物というのが非常に重要なエレメントになると思うので、少し、そういうことで、これもやはりCOP10を意識した形にしたほうがいいかもしれませんね。
【生物多様性地球戦略企画室長】 わかりました。恐らく今のご指摘は戦略部分で受ける話かと思いますので、ちょっと全体の中で、施策がどこまで受けられるかというのはちょっと難しい部分もありますので、それは検討させていただきたいと思います。
【武内委員長】 ほかに。よろしいですか。偶然にも、ちょうどいい時間になりました。大変多くのご指摘をいただきましたので、一応、今日の小委員会は閉じさせていただきたいと思います。
事務局より連絡事項等がありましたら、お願いいたします。
【自然環境局長】 事務局の不手際にもかかわらず、本当に今回の新しい戦略の改定に当たって、とても貴重な意見、たくさんいただきましてありがとうございました。すごく幅広くいただきました。次回は素案ということになりますので、その作業に事務局としても一生懸命反映させていきたいというふうに思います。
前回から今回にわたって、今度の改定で、自然の側面だけじゃなくて人と自然の関係に着目していかなきゃいかんと。その上でのキーワードとして生態系サービスの考え方をわかりやすく、今まで以上に入れていくことが大事ということで、そこをどこまで掘り下げて日本の実情に合った形で、この生態系サービスの考え方を入れていくかというあたり、大事な点かなと思います。それを入れていく上で、環境省だけではなくて、各省の連携であり、統合的なアプローチでありということの大事さがより出てくるわけだと思いますし、そういった考え方が国土のグランドデザインにどう反映されていくかということが大事かなと思います。今回の戦略で、生態系の回復能力、レジリエンスの強化だとか、震災も受けて災害リスクを緩和する国土管理と国土環境全体の再生というのを両立させる道筋を描いていくことが大事かと思うんですけれども、そういったときにも、この生態系サービスなり統合的な視点、アプローチということを大事にしながら素案づくりをしていくことが必要かなというふうに思いました。
国土のとらえ方、今まで七つの地域区分ということでやってきましたけれども、この辺も非常に重要になってくるので、いかに国土のとらえ方をいろんな切り口で、階層的、立体的にとらえたグランドデザインを示せるかといったあたりも検討していきたいと思います。そして、その主流化なり、その政府以外の様々な主体の参加というのが、これまた非常に重要な点になってきて、その多様な主体で支え合う仕組みをどうつくるかということだと思います。今までの戦略で、閣議決定の戦略なので、政府の行動ということで、おのずと限界もあったんですけれども、その中で、政府以外のセクターの参画について、どこまで踏み込んで変えていけるかということもチャレンジしていく必要があるんじゃないかなと思います。その中で、国と地方の連携、協働といったところについても、ぜひ強く打ち出していきたいというふうに思います。また、この再生可能エネルギーと生物多様性、あるいは放射能の影響、今までの戦略では扱ってこなかったテーマも出てきたということで、この辺も、どこまで書けるかということで考えていきたいと思います。
次回は5月31日ということで、あと2週間とちょっとしかないので、かなり期間が限られていて、事務局も一生懸命やりたいと思うんですけれども、そのちょっと作業の過程でご意見、皆さんからいただきましたので、ご意見をいただいた各委員にも個別に、この作業の過程で必要に応じて相談もさせていただきながら、次回の素案の検討をしていただく資料づくりを進めていきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。
次回の日程等について、事務局から、さらに補足させていただきます。
今日はどうもありがとうございました。
【事務局】 次回の日時でございますが、5月31日木曜日13時30分から5時まで。本日と同じ、こちらの会場、環境省第1会議室にて行います。
また、本日お配りした資料につきまして郵送ご希望の委員の方々は、封筒にお名前をお書きいただければ後日郵送させていただきます。
また、この後、5時15分からNGO主催の意見交換会が、この会場で行われます。ご都合つく方は、引き続きご参加いただければと思います。
さらにNGO主催による19日に開催予定の「海と生物多様性フォーラム」に関するチラシも配付してございますので、お持ち帰りください。
本日は、どうもありがとうございました。
【武内委員長】 どうもありがとうございました。