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■議事録一覧■

中央環境審議会 自然環境・野生生物合同部会
(平成19年度 第2回)
議事録


1.日時

平成19年11月5日(月)14:00~16:30

2.場所

フロラシオン青山 2F 芙蓉

3.出席者

(合同部会長)
熊谷洋一
(委員)
石井信夫、石坂匡身、石原收、岩熊敏夫、加藤順子、川名英子、隈研吾、是末準、近勝、齋藤勝、桜井泰憲、佐藤友美子、鹿野久男、篠原修、高橋佳孝、田中正、田部井淳子、土野守、土屋誠、中川浩明、中静透、中道宏、服部明世、浜本奈鼓、原重一、三浦慎悟、森戸哲、山岸哲、鷲谷いづみ、和里田義雄 (五十音順、敬称略)
(事務局)
環境省:
地球環境審議官、自然環境局長、大臣官房審議官(自然環境担当)、自然環境局自然環境計画課長、生物多様性地球戦略企画室長、自然環境局総務課長、国立公園課長、野生生物課長、鳥獣保護業務室長、自然環境整備担当参事官ほか
農林水産省、国土交通省、文部科学省、経済産業省

4.議題

(1)
第三次生物多様性国家戦略答申案の検討
(2)
その他

5.配付資料

  • 小委員会 座席表
  • 小委員会 名簿
資料1 生物多様性国家戦略見直しのスケジュール(案)
資料2 第三次生物多様性国家戦略案の全体構成
資料3 生物多様性国家戦略 第二次と第三次案の構成の比較
資料4 第三次生物多様性国家戦略案 前文および第1部(事務局案)
資料5 第三次生物多様性国家戦略案 第2部(事務局案)
資料6 パブリックコメント実施結果の概要
資料7 パブリックコメント意見および対応一覧表
[参考資料]
  • 新・生物多様性国家戦略
  • パンフレット いのちは創れない
  • 生物多様性国家戦略の見直しに関する資料集
  • 中央環境審議会関係法令等

6.議事

【司会】 それでは、定刻を過ぎましたので、ただいまより、中央環境審議会自然環境・野生生物合同部会を開催いたします。
 本日の審議のためにお手元にお配りしている資料につきましては、議事次第の下にある配付資料一覧のとおりとなっておりますので、ご確認をお願いいたします。また、委員の皆様のお手元にのみ、参考資料といたしまして、新・生物多様性国家戦略、パンフレット いのちは創れない、生物多様性国家戦略の見直しに関する資料集、中央環境審議会関係法令の4点をお配りしています。配布漏れがございましたら事務局にお申しつけください。
 それでは、これよりの議事進行につきましては熊谷部会長にお願いいたします。熊谷部会長、よろしくお願いいたします。

【熊谷部会長】 はい、かしこまりました。
 それでは、ただいまから平成19年度第2回自然環境・野生生物合同部会を開催いたします。本日の議題は、第三次生物多様性国家戦略答申案の検討でございます。現行の生物多様性国家戦略の見直しについては、4月に環境大臣より諮問があり、これまでに生物多様性国家戦略小委員会を6回開催し、9月に小委員会としての第三次戦略案をまとめていただきました。小委員会の委員の皆様には、短期間の集中的な討議にご参加いただき、熱心なご議論を大変ありがとうございました。本日は、その後1カ月間実施いたしましたパブリックコメントの結果を事務局で反映したものを用意してもらっていますので、それに対して合同部会の皆様からご意見をいただきたいと考えております。どうぞよろしくお願いをいたします。
 それでは、まず事務局より概要の説明をお願いいたします。

【亀澤生物多様性地球戦略企画室長】 生物多様性地球戦略企画室長の亀澤でございます。私から資料に沿って説明をさせていただきます。座って失礼をいたします。
 本日、資料の4と5としてお示ししておりますのが三次の国家戦略の案文でございますが、9月6日の国家戦略小委員会でまとめていただいたものに、その後のパブリックコメントでいただいたご意見を踏まえて、必要な修正を加えたものでございます。パブコメによる修正は小委員会でまとめていただいた案から大きく構成を変えるような変更はございません。
 まず、中身に入る前に、次第の裏の方についています資料の1、これでスケジュールと書いた資料でございますが、これによりまして、これまでの小委員会での審議経過を簡単に振り返ってみたいと思います。小委員会は5月29日の第1回以降、6回開催してまいりました。その間、関係各省からのヒアリングや第3回ではNGOだけでなく、地方公共団体、企業、学会からのヒアリングも行い、7月の第4回以降、骨子、素案、そして案と審議を重ねていただきました。その結果として、まとめていただいた案を9月14日から10月14日までの1カ月間、パブリックコメントにかけました。パブコメでは、およそ200の個人・団体から項目別・箇所別に分けまして、約1,100件のご意見をいただいております。このパブコメにはできるだけ答える方向で修正を行いまして、各省とも調整をして本日の案文をお示ししております。今後の予定としては、本日のご議論も踏まえた修正を行った上で、来週14日に予定をしております合同部会で答申としてまとめていただくようにお願いしたいと考えております。その答申をいただいた上で、第三次国家戦略を政府として決定したいと考えております。決定の時期は今のところ確定しておりませんので、若干、この資料では幅を持たせて書いてございます。
 続きまして、第三次戦略案の概要をざっと説明をし、その後、パブコメ結果についてご説明をしたいと思います。戦略本体はおよそ280ページと大部ですので、ここでは資料の2として、A3の縦長の全体構成という図を用意しておりますが、それを中心に、時々本文を開いていただきながら説明をしたいと思います。資料2でご説明をいたしますけれども、まず、全体的な構成ですけれども、前文と第1部、第2部に大きく分かれ、第1部を戦略的部分、第2部を行動計画と位置づけております。前文では、まず生命の誕生以来、生物が進化の歴史の中で環境との相互作用により、今の地球環境を形成してきたこと、人類も生物の一種で、周りの生き物がいなければ生きていけないこと、そういうことから書き始めまして、三次戦略を「いきものにぎわいの国づくり」を目指す政府の計画と位置づけた上で、それぞれの地域での活動が重要であり、地方や民間などとの協働が必要であることを書いております。ここに掲げました過去の戦略のレビューのうち、現行戦略のレビューについては、改善すべき点として、実行に向けた道筋が明確でないこと、各省施策の並列的記載がまだ残っていること、国民的アピールに欠けること、長期的展望や地球規模の視点が弱いこと、地方・民間の参画を促進しようという面が弱いことを記述しております。それも踏まえまして、三次戦略の性格・役割というところでは、特に行動計画で実行への道筋を示し、各省が関係する施策をできるだけまとめたこと、多様性について、よりわかりやすく解説したこと、100年計画といった長期の視点や地球規模の視点を強化したこと、地方・民間の参画を強調したことを記述しました。それから、点検と見直しにつきましては、毎年の点検と5年後程度をめどに見直すという、現行戦略では最後の第5部に書いていたものを、ここでは前文に移しております。
 続きまして、第1部は第1章、生物多様性の重要性と理念、第2章、現状と課題、第3章、目標、第4章、基本方針という構成としております。まず、生物多様性の重要性と理念ですが、生物多様性とは何か、なぜ重要かといったことがなかなか世の中に浸透していないことから、その点を特に強調し、わかりやすく伝えるべく最初の第1章で取り上げております。第1節では、地球上の生命の多様性として数え切れない生命が地球の環境を形成し、進化を重ねてつくり上げた生物多様性が地球の長い歴史の中ではぐくまれたかけがえのないものであること、現代が第6の大量絶滅時代と言われており、人類がいなかった過去5回の大絶滅との違いは、絶滅スピードが早いことと、原因のほとんどが人間活動の影響と考えられることを記した上で、このままでは人間が引き起こした環境の悪化により、人間自身が滅びかねないことも書いております。
 続く第2節では、いのちと暮らしを支える生物多様性として、生物多様性の重要性をわかりやすい表現で説明し、1の生きものがうみだす大気と水では、植物が光合成で出す酸素を動物や植物自身が呼吸していることや、豊かな土壌は生き物の死骸や植物の葉が分解されてできること。2の暮らしの基礎では、自然の力に依存する面が大きい水産物をはじめとする食べ物、植物などの遺伝情報を利用する医薬品や農作物の品種改良、あるいは空気抵抗の少ない新幹線の車両デザインなど、生き物の形や性質に学ぶバイオミミクリーという技術など。それから、3生きものと文化の多様性では、自然と共生してきた日本人の伝統的な自然観、地域性豊かな風土がはぐくむ地域に固有の料理など、文化の多様性につながっていることを書いております。4自然に守られる私たちの暮らしでは、サンゴ礁やマングローブなど、自然の海岸線が津波被害を軽減し得ること、地形に逆らわないことで大規模な土木工事よりは効率的な安全確保につながる、といったことを記述しております。
 それらをまとめる形で続く第3節では、生物多様性の保全及び持続可能な利用の理念を1、すべての生命が存立する基盤を整えること、2、人間にとって有用な価値をもつこと、3、豊かな文化の根源となること、4、将来にわたる暮らしの安全性を保証する、の4点を掲げております。これらの理念は、現行の戦略にも盛り込んでおりましたけれども、よりわかりやすくしたということと、1点目につきましては、人間の生存基盤と現行戦略でしていたものを人間だけではなく、すべての生命の存立基盤と、より広げた形にしたという違いがございます。
 続く第2章、現状と課題では、まず第1節で、多様性の危機の構造を記述しております。我が国の生物多様性の現状として、現行戦略で整理した3つの危機、すなわち人間活動や開発による第1の危機、里地里山などにおける人間の働きかけの縮小に伴う第2の危機、人為的に外部から持ち込まれる外来種などによる第3の危機については、依然として進行していること。それから、この3つの危機という整理が徐々に浸透しつつあるということもありまして、その3つの危機という整理を引き継ぐことにしました。その上で地球温暖化につきましては、IPCCの報告書なども踏まえ、種の絶滅や脆弱な生態系の崩壊など、生物多様性にとって逃れることのできない深刻な問題であると位置づけておりますが、グローバルな広がりや問題の大きさから、むしろ3つの危機を超えた危機として、別建てで温暖化による危機を掲げました。
 その流れで続く第2節、地球温暖化と生物多様性を1節起こして取り上げました。サンゴの白化、ソメイヨシノの開花の早期化など、温暖化によると考えられる影響や、農業や漁業への影響あるいは感染症のリスクの増大など、生物多様性の変化を通じた人間生活への影響について、事例とともに記述しております。生物多様性の観点から見た地球温暖化の緩和と影響への適応についても触れておりまして、これにつきましては、本文、ちょっと見ていただきたいと思いますが、資料4の本文23ページの上から8行目からごらんいただきたいと思いますけれども、土壌も含めて多くの炭素を固定している森林や泥炭などに炭素を貯蔵している湿原・草原を保全すること。それから、人工林の間伐や草原の管理などから生ずる木材や草をバイオエタノール化による燃料や草資源を利用した発電など、化石燃料の代替エネルギーとして活用することなどは、温室効果ガスの排出抑制につながるという点で地球温暖化の緩和に役立つとしております。それから、同じページの真ん中あたりから下の方ですけれども、温暖化による多様性への影響を把握するための継続的なモニタリングを行うとともに、その影響に対応できるよう環境変動への適応力の高い、それぞれの地域に固有の健全な生態系を保全・再生することや、多様な種や生態系が時間をかけて温暖化に適応して変化していくことに幅広く対応できるよう、まとまった規模の生物多様性が豊かな地域の配置とつながりを地域の特性に応じて確保し、生態系ネットワークを形成していくことが地球温暖化による影響への適応策として重要であるということを書いております。
 資料2の全体構成の方に戻りますが、第2章の右側、第3節、3つの危機の背景では、戦後50年ないし60年の間の社会経済的な変化を分析しております。第1の危機の関連では、特に昭和30年代・40年代の高度経済成長期の急激な工業化と、それに伴う開発が進んだこと、第2の危機では、里地里山における、やはり昭和30年代以降の急速な農業人口の減少・高齢化と、そのころ、エネルギー源や肥料といった資源利用の面で、石油など化石燃料への依存が急速に進み、人手により維持されてきた里山林や野草地との関係が希薄になったこと。第3の危機では、経済・社会のグローバル化に伴う人・物両面での出入りの増大が我が国の生物多様性に影響を与えるおそれのある生物の持ち込みの増加につながり、輸入相手国の生物多様性にも影響を与えていることなどを記述しております。
 第4節、生物多様性の現状では、世界の生物多様性の現状として、2005年に国連が公表したミレニアム生態系評価、MAと略しておりますけれども、これを引用し、生物多様性の恵みを生態系サービスとして人間生活との関係をわかりやすく紹介し、地球規模でのその状況が悪化傾向にあると評価したことや、ここ数百年で人間が種の絶滅速度を1,000倍に加速させるなど、人類は根本的に地球上の生物多様性を変えつつあることなどを記述しております。日本の生物多様性につきましては、現行戦略策定以降の動きとして、環境省がレッドリストの全10分類群の見直しを行い、リストに掲載された絶滅のおそれのある種が約2,700種から約3,200種に増加したことや、シカ・イノシシ・クマなど、中・大型哺乳類の分布の拡大が明らかになったこと、その背景には主として農山村地域における過疎化・高齢化、耕作放棄地や収穫されないまま放置される作物の増加などがあること、農業被害やシカによる生態系への被害、クマによる人身事故など、鳥獣とのあつれきが深刻になっていることなどを記しております。それから、世界とつながる日本の生物多様性としては、多くの渡り鳥、アカウミガメ・ウナギ・サケやザトウクジラといった回遊魚、海棲哺乳類など、国境を越えて移動する野生動物を例に、我が国の生物多様性がアジアを中心とする環太平洋諸国とつながっていること、これらの動物を保全するためには、関係各国との連携・協力による取り組みが必要なことを述べております。
 続く第5節、保全の状況では、多様性に関する法律、その中でも特に国立・国定公園などの保護地域制度と、その指定状況といった国の制度の状況のほか、地方公共団体による取り組みを記述するとともに、企業・NGOなど、民間による取り組みについて、さまざまな活動事例や期待される活動を記述し、昨年採択された多様性条約の民間参画の決議についても紹介をしております。
 続いて、第3章、目標の関係は、本文の43ページをお開きいただきたいと思います。豊かな生物多様性を将来に引き継ぎ、その恵みを持続的に享受できる「自然共生社会」を構築するための目標として三つ掲げました。一つ目は、地域に固有の動植物や生態系の保全と生態系ネットワークの形成を通じた国土レベルの生物多様性の維持・回復。とりわけ種の絶滅のおそれが新たに生じないようにすることと、現に絶滅の危機に瀕した種の維持・回復。二つ目として、世代を超えて、国土や自然資源の持続可能な利用を行うこと。三つ目が、生物多様性の保全と持続可能な利用を、地球規模から市民生活のレベルまでの社会経済活動の中に組み込んでいくことです。一つ目と二つ目は、現行戦略で掲げた三つの目標を二つに統合・集約したものですが、三つ目の社会経済活動への組み込みは、今回、新たに打ち出したものでございます。
 続きまして、2010年目標と我が国の生物多様性総合評価では、現行戦略の策定直後の2002年に多様性条約で採択された「2010年までに生物多様性の損失速度を顕著に減少させる」という2010年目標に触れ、我が国も先ほどの三つの目標の達成に向けて成果を上げることを通じて、2010年目標の達成に貢献すべきことを書いております。そのためにも我が国の生物多様性がどういう状況にあり、施策を講じることで、それがどう変化するのかというのを把握することが不可欠なことから、多様性のわかりやすい指標を開発しつつ、ミレニアム生態系評価なども参考に、我が国の生物多様性の総合評価を行うことを盛り込んでおります。その中では、危機の状況を具体的に地図化することや、多様性保全上、重要な地域をホットスポットとして選定することなどを、あわせて記述しております。さらに、その総合評価の過程を通じて、2010年以降の国際的な目標のあり方を検討し、2010年のCOP10の日本開催を視野に入れて、その設定に向けた国際的な議論をリードすると述べております。
 続きまして、第3章の2節の多様性から見た国土のグランドデザインでは、多様性の保全と持続可能な利用が両立する自然共生社会の実現のためには、自然生態系の回復に要する時間を踏まえ、少なくとも100年という歳月で考えることが重要と記した上で、国のほか、地方や民間など、多様な主体が長期的視点に立って取り組みを進められるように、多様性から見た国土のグランドデザインを100年先を見通した共通のビジョンとして示しております。まず、100年先を見通す上での基本的な姿勢を「100年計画」として掲げておりまして、それは一つ目は、過去100年に破壊してきた国土の生態系を100年かけて回復するということ。二つ目として、地域資源の活用、地域固有の自然・文化に根差した個性的な地域づくりを目指すこと。三つ目として、国土利用の再編が進む中で、国土管理に必要な投資の重点化・効率化や、自然との共生を重視したエコロジカルな国土管理を進めること。4番目として、国土全体の自然の質の向上を目指すこと。その際、さまざまな取り組みの効果の発現には長期間を要することから、順応的な態度、段階的な姿勢が欠かせないこと。5点目として、100年の間の科学的データの集積、生物多様性保全に関する意識や行動様式、制度的枠組みの進展も考慮すべきことを掲げております。グランドデザインにつきましては、本文の46ページ以降に示しておりますが、まず、国土全体の姿として、[1]で国土全体を通じて、しっかりと生態系ネットワークが形成されている。[2]国土全体では、種の絶滅リスクが低下、外来種による新たなリスクの拡大はない。[3]農林水産業や企業の原材料調達が持続可能な方法で行われ、生物多様性の保全と両立する形で国内の自然資源の有効活用が進んでいる。[4]渡り鳥が飛来する湿地あるいはサンゴ礁など、国境を越えた生態系ネットワークが形成され、海外の自然資源への依存度が下がるなど、我が国が地球規模の生物多様性に与える負の影響が低下している。[5]生物多様性の保全と持続可能な利用が社会の仕組みに組み込まれ、保全活動への参加、生物多様性保全に配慮した商品の購入など、市民の新たなライフスタイルが確立するといった姿を示しております。それとともに国土の特性に応じた地域区分として、陸域を奥山自然地域、それから、人工林が優占する地域も含めて里地里山・田園地域、それから都市地域、河川・湿原地域の四つの区分し、海域の方を干潟・藻場・サンゴ礁を含む沿岸域と、それを取り巻く海洋域、それから、沿岸域と海洋域の双方にある島嶼地域の三つ、合計七つに分けまして、47ページの下の方から、それぞれの地域の現状、目指す方向、100年後の望ましいイメージを書いております。このうち、各地域の100年後の望ましいイメージのところをかいつまんで見てみますと、奥山自然地域につきましては、48ページですけれども、国土の生態系ネットワークの中核的地域として、自然優先の管理を基本とする地域となっている。自然の遷移にゆだねることで二次林から自然林に移行した森林を含め、大型哺乳類の主な生息域として地方ごとにまとまりを持って保全されている。高山は外来種の排除や脆弱な地域への立ち入り認定など、温暖化以外には人為的な影響を受けないよう保全されている。
 2番目として、里地里山・田園地域については、49ページから50ページにかけてでございますが、農地を中心として地域では、生物多様性保全をより重視した農業が行われ、先進的な地域ではコウノトリやトキがえさをついばむなど、農地にさまざまな生き物がいる。積極的に維持管理された二次林では、オオムラサキやカブトムシが普通に見られ、管理から出る木材はバイオマス資源として利用されている。人工林は間伐のおくれも解消し、材の有効利用が進み、広葉樹林化などで生物多様性保全の機能が高まっている。二次林・人工林・農地などが一体となった里地里山では、さまざまなタイプの生態系が混在する状態が復活し、エコツーリズムも浸透し、地域が生き生きとしている。農地や人里と森との境界部分では、見通しのよい緩衝帯の設置、放置された果樹の除去といった対策により、クマ・シカ・イノシシ・サルなどが出没しにくくなっている。
 都市地域は、51ページになりますが、都市の中や臨海部には、低未利用地を活用して、森と呼べる大規模な緑地が造成され、身近に生き物と触れ合える小さな空間が市街地内のあちこちに生まれている。保全、再生、創出された樹林地や水辺地が都市内でネットワーク化され、生物多様性の回復が進み、その状態は市民が主体となったモニタリングが行われている。都市住民が近郊の谷津田の共同管理に参加したり、持続可能な形で生産された食べ物や木材を選択するなど、生物多様性保全を重視したライフスタイルがふえている。
 53ページの河川・湿原地域のイメージとしましては、自然河岸や河川周辺の氾濫原としての湿地帯や河畔林などの保全が進み、自然再生の取り組みや洪水による攪乱などを通じて、多様な河川空間が形成されている。河川と周辺の湿原や農地などの間では、ナマズやギンブナなど、河川と水田の間を行き来する生き物が多く見られ、河川の上流から河口、沿岸域の間の連続性も改善されて、アユやハゼの遡上が回復するなど、豊かな水域の生態系が保たれている。湖沼や湿原、冬も水が張られた水田や河口部の干潟には、アジア太平洋地域からの渡り鳥が訪れるなど、国内外を通じた渡り鳥の飛来地のネットワークが確保されている。都市部における雨水の浸透などにより、身近な水路や湧水が再生されるとともに、豊かな生態系と歴史・文化、生活が調和した日本らしい川の風景が復活している。
 54ページの沿岸域のイメージですが、保全や再生の取り組みにより干潟・藻場・サンゴ礁の沿岸域生態系が、台風など自然の攪乱も受けながら豊かに確保されている。漁業者をはじめ、関係者の協力で上流の森林が維持され、沿岸域では豊かな漁場が保全されている。北の海ではアザラシが、南の海ではジュゴンが泳ぐ姿が見られる。砂浜は山からの連続性が確保された河川からの土砂供給を受けて維持され、ウミガメの上陸やコアジサシの繁殖が見られるなど、豊かな生物多様性が回復している。
 55ページの海洋域ですが、移動・回遊をする海洋動物の保全活動がアジア太平洋諸国と協力して進み、ホエールウォッチングなどエコツアーと漁業の共存により地域が活性化している。豊かな生物多様性を保全する取り組みと水産資源などの現存量の科学的・客観的な把握が進み、ルールにのっとった持続可能な漁業が盛んに行われている。国際的な連携により、生態系に影響を与える漂流・漂着ごみや有害な化学物質、油の流出による海洋汚染を防止・除去する取り組みが進んでいる。
 島嶼地域は56ページですが、ツシマヤマネコ、アマミノクロウサギ、ムニンノボタンなど固有の動植物が安定して生息・生育し、水際では、島外からの外来種の侵入がないようチェックされ、独特の生態系がかけがえのない資産として広く認識されている。環境に細心の注意を払ったエコツアーが盛んに行われ、独自の自然と島の文化を紡ぐ豊かな地域づくりが進んでいる。アホウドリ、ウミガラスなど海鳥類、アザラシなど、海棲哺乳類の繁殖地・生息地は、生物多様性の保全上、重要な地域として人が過度に干渉することなく保存されている。
 といったことを、それぞれの地域におきまして将来、目指すべきイメージとして掲げているところでございます。
 続く第4章の基本方針では、まず第1節で、今後、施策を展開していく上で不可欠な共通の基本的視点を五つ掲げております。1点目は、科学的認識と予防的順応的態度。これは科学的データを基礎とすべきこと、締約国会議で合意されたエコシステムアプローチの考え方を踏まえ、科学的証拠が完全でないからといって対策を先送りしない予防的な態度や、自然資源の管理と利用をモニタリングにより柔軟に見直していくという順応的な態度が必要なこと。2点目の地域重視と広域的な認識では、地域固有の自然を対象とした地域活動を重視すべきこと、現場で活動している人材や、そこから生まれる知恵が大事なこと、流域全体や国際的な視点が不可欠なことを書いております。3点目の連携と協働は、国の各省間の連携だけでなくて、国、地方、企業、NGOや専門家など、多様な主体間の連携・協働、さらには一般の人と専門家の間をつなぐコーディネーターの関与と情報公開も重要なこと。4点目、社会経済的な仕組みは持続可能な漁業や森林経営の認証制度、エコツーリズムなど、社会経済的な仕組みの中で大きな負担なく継続できる仕組みづくりが重要なことや、生物多様性を含む森林の機能を、森林の保全・管理に還元する地方の森林環境税のように生物多様性の恵みを社会経済的な仕組みの中に組み込んでいくことが必要だという視点。五つ目は、統合的な考え方と長期的な観点です。これは多様性の3つの危機や自然共生社会、低炭素社会、循環型社会という持続可能な社会の三つの側面は、いずれもばらばらに存在するのではなく、相互に密接に関係しており、それらは統合的に考える必要があること。多様性から得られる恵みは、今の世代で消費し尽くすのではなく、将来世代に引き継いでいく責務があるといったことを書いております。
 続く第2節の基本戦略では、100年先を見通した上で、今後5年間程度の間に重点的に取り組むべき施策の大きな方向性として、一つ目は、生物多様性を社会に浸透させる。[2]として、地域における人と自然の関係を再構築する。三つ目として、森・里・川・海のつながりを確保する。四つ目として、地球規模の視野を持って行動する。この四つを示しております。これは61ページからになりますけども、四つの柱のもとに、今後5年間の取り組み方向を幅広く取り上げております。ここでは盛り込まれた施策をざっと見るだけになりますが、まず、生物多様性を社会に浸透させるでは、次の62ページの方へ行きまして、最初のところで、国家戦略を地域での活動につなげるための地方版戦略を自治体が策定する上での手引づくり。二つ目の段落、「最近」で始まる企業の関係の記述の最後の部分ですが、企業がその活動の中で生物多様性の保全と持続可能な利用を進める上でのガイドラインを作成すること。それから、62ページの一番下の行から63ページにかけては、地域の専門家やNGOが核となった市民参加型モニタリングを盛り込んでおります。その下の教育・学習の関係の部分の上から3行目から5行目、小委員会で浜本委員からいただいたご意見を踏まえまして、地形・地質という言葉や、学校教育における環境教育の例として、生物や地学という言葉を新たに特出しをしております。そのほか、63ページの真ん中あたりには、子供たちが自然を「五感で感じる」原体験のための空間づくり、それから、それに続く「また」以下のところでは、生物多様性に配慮した食品や木材の購入など、ライフスタイルの転換について提案していくということなどを盛り込んでおります。
 2の地域における人と自然の関係を再構築する、のところでは、64ページになりますが、里地里山の保全や野生鳥獣との共存のところの、「しかし、過去に」というところから始まる2段落目の後段で、未来に引き継ぎたい重要里地里山の選定、それから、その次の段落では、都市住民や企業など、多様な主体が里地里山を共有の資源(コモンズ)として管理していく仕組みづくりを掲げ、続きまして、65ページの上から7行目、「地域における人と自然の関係」で始まるパラグラフのところでは、緩衝帯づくりなど、人と鳥獣がすみ分けられる地域づくりと担い手の育成。それから、その下では、生物多様性の保全に貢献する農林水産業の推進を記述しております。
 それから、66ページに参りまして、下の方ですけれども、野生生物をはぐくむ空間づくりでは、コウノトリやトキなど、希少な野生動植物の生息できる空間づくり。
 それから、67ページの上の方では、国内移動や資材、生物に付着して意図せずに持ち込まれるものを含めた外来種の防除対策の一層の推進などを盛り込んでおります。
 それから、3の森・里・川・海のつながりを確保するでは、67ページの下の生態系ネットワークのところですが、さまざまな空間レベルでの生態系ネットワーク計画の策定に向けた条件整備や広域圏レベルでの図化を記述し、68ページにかけて、国土の生態系ネットワークの中核をなす国立・国定公園の総点検と、「照葉樹林」「里地里山」「海域」などの積極的な評価。
 それから、68ページの「陸域だけでなく」というところから始まる段落では、広域的観点からの自然再生や民有地での自然再生活動の支援のあり方についての検討を行うこと。同じ68ページの後段から69ページ、さらには70ページにかけては、多様な森づくりと都市内の水や緑や河川・湿原・水田など、水域のネットワーク化。
 それから、沿岸・海洋域では、70ページの真ん中あたりになりますけれども、海洋の生物多様性のデータの充実を掲げ、その下の方から71ページにかけましては、浅海域での保護地域指定の充実と、漁業など多様な利用と両立する自主的な自然管理や海域保護区のあり方の検討などを示しております。
 4の地球規模の視野を持って行動するでは、次の72ページですけれども、自然共生のモデルとしてのローマ字の「SATOYAMAイニシアティブ」の世界への発信。
 それから、72ページから73ページにかけましては、我が国の生物多様性総合評価とその実施を踏まえたアジア太平洋諸国への技術支援、それから、総合評価の基礎となる自然環境データの充実と即応性の向上、温暖化影響を含む生態系総合監視システムの構築といったことを盛り込んでおります。
 それから、73ページの下の方の多様性の観点からの温暖化の緩和施策の推進と、温暖化に対し、適応力が高い生態系ネットワークのあり方など、適応策を検討することとして、先ほど申し上げましたけれども、温暖化と多様性のところで触れました緩和と適応策を掲げているところでございます。
 以上が第1部でございまして、第2部は、本体は資料の5になりますけれども、全体構成の資料2を見ていただきたいと思います。具体的施策を体系的に網羅して記述するとともに、実施主体を明記し、可能な範囲で数値目標を盛り込むことで国家戦略の実施への道筋を示すという位置づけにしております。そうした趣旨は、第2部の冒頭に前書きを新たに設けて簡単に記述をしております。その前書きの中では、第2部に記載された具体的施策がおよそ650あり、それぞれの施策の実施に当たって、各省間の連携の強化、地方や民間による自主的な取り組みの促進、国際的なリーダーシップの発揮といった点に留意して取り組むことや、今後5年の間にも国内外の状況変化や施策の進捗状況を踏まえ、必要に応じて施策の拡充・強化を図ることも書き込んでおります。
 A3の資料2で全体的な構成を見ていただきますと、2部の第1章、国土空間的施策、これは土地に張りついた施策というイメージですが、全国的・広域的な取り組みを広域連携施策としまして、生態系ネットワーク、重要地域の保全、自然再生、農林水産業の4節、それから、それぞれの地域特性に応じた取り組みを、その右側の地域空間施策として森林から沿岸・海洋までの5節設けております。それから、第2章、横断的・基盤的施策は、横断的あるいはソフト的な施策ですが、野生生物の保護と管理や普及と実践、国際的取組、地球温暖化関係などの7節ということで、第2部全体で16節にわたって整理をしております。このうち、第2章の地球温暖化関係の節は、9月の第6回小委員会でのご指摘を踏まえ、ほかの節に散らばっていた温暖化関係の施策を再掲する形ではありますけれども、一つにまとめて1節起こしております。それぞれの節は右の四角にありますように、節ごとに基本的考え方を示した上で施策の概要を書き、項目ごとに現状と課題を記述した上で、実施主体を明記した具体的施策を並べる形で全体的な統一を図っております。数値目標がその下に書いてありますけれども、数値目標を盛り込んだ具体的施策というのは、環境省、農水省の取り組みを中心に35ほどあります。国交省関係は今年度、19年度までの社会資本整備重点計画の見直し時期とちょうど重なってしまったこともあって盛り込まれておりませんが、20年度から新たにその重点計画はスタートしますから、そこに盛り込まれることになる数値目標を踏まえて、毎年の国家戦略の点検は行っていきたいというふうに思っております。数値目標の例としては、ここでは幾つか挙げておりますけれども、我が国のラムサール登録湿地を2011年に開催されるラムサール条約のCOP11までに現状の33カ所から43カ所へと10カ所ふやすこと。それから、自然再生推進法に基づく協議会の数を現状の19から29へと10カ所ふやすこと。エコファーマーというのは、堆肥などによる土づくりを基本として化学肥料、化学農薬の使用を低減する生産方式ですが、その認定件数を現状の11万件から21年度末には20万件とすること。それから、種の保存法に基づく国内希少野生動植物種の指定の数を現在の73種から15種程度ふやすこと。野生復帰の関係では、佐渡において20年度にもトキの試験放鳥に着手し、27年ごろには60羽程度の定着を目指すという、これは農水・国交・環境3省の連携の取り組みとして入れております。それから、鳥獣保護法に基づく特定鳥獣保護管理計画につきましては、現在の89計画をほぼ倍増の170計画とすること。それから、広報の推進として、「生物多様性」という言葉を聞いたことがあるという人まで含めた認知度を、平成16年の30%という数字から二人に一人という意味で50%以上目指すこと。それから、小学生が農産漁村に1週間程度滞在して行う体験活動を推進し、5年後には全国2万3,000校の1学年120万人、全員の参加を目指して受け入れ体制を整備するという総務・文科・農水・環境の4省連携の取り組みにも数字を入れております。今、申し上げたうちの再生協議会の数と、ここの資料には入っておりませんけれども、重要地域の関係で、国立・国定公園の総点検に関して、すべての国立・国定公園について、指定状況を5年をめどに見直しを行うということ。それともう一つは、里地里山の関係で、重要里地里山の数を300カ所程度選定することというのを入れておりまして、この三つにつきましては、第6回の小委員会以降、新たに追加をした数値目標でございます。
 なお、第6回の小委員会で森戸委員から第2部の具体的施策のめり張りをつけるため、シンボルとなる、いわば目玉事業を5本とか10本とか抜き出してはどうかというご意見をいただきました。その方向で作業を始めたのでありますが、一つの戦略の中で、各省がそれぞれ、今後、予算要求もして、順次実施に移していこうという650件を記載する一方で、今の時点で5本なり10本だけを特別なものとして抜き出すというのはなかなか調整が難しいという面がありました。ただ、シンボル的なものを打ち出していくというのは大変重要なことだと考えておりますので、ご指摘いただいた点は戦略本体の中というより、でき上がった戦略をわかりやすく世の中にアピールしていく際に、できるだけPR効果の高い形で打ち出す方法を考えていきたいというふうに思っております。
 以上が、駆け足でしたが、第三次国家戦略の大まかな内容でございます。
 続いて、パブコメの結果概要と、その対応についても簡単に説明をしたいと思います。パブコメ結果につきましては、資料6、7という分厚い冊子になっているものに結果をまとめております。それの頭の方に資料6という1枚紙がございます。これが結果の概要で、9月14日から10月14日までの1カ月間行ったパブコメの結果、いただいた意見は、およそ200の個人・団体からで、それを分野別というか場所別に分けた延べ意見数が約1,100件になります。下の表で項目ごとに区分をしておりますけれども、2番の意見等の分類の感想・その他64件となっているものは、全般的な感想のような形でいただいているものが中心です。その中では生物多様性の意味と意義がわかりやすく解説され、構成的にも読みやすくなっている。グランドデザイン、温暖化の危機、海に関する記述、企業の役割などが充実し、現行戦略から大きく前進した。各省間の施策の総合化への試みも感じられるといった評価をいただく一方で、全体として多様性が失われていることへの危機感が伝わってこない、大規模公共事業への反省や見直しの方向性が明示されていない、盛り込まれた施策の実施の順番や、それぞれの実施に向けた手順が明確ではない、海に関する具体的施策は陸域に比べると不十分、といったご批判もいただきました。その下の3のところでは、具体的な意見の分野別件数を区分しておりますが、幅広くご意見をいただいております。中では、新しく盛り込んだ沿岸・海洋の関係と、野生生物鳥獣保護管理、外来種を合わせた野生生物関係、その中でも鳥獣の保護管理関係の件数が多くなっております。そのほか、グランドデザインにも多くの意見をいただいております。1,100件のご意見の一覧は、その後に続きます資料7のとおりで大変分厚くなっておりますけれども、ほとんどはメールでいただいておりますので、意見の欄は基本的にいただいたご意見をそのままコピーをして載せております。この1,100件のご意見のうち、案文の修正という形で反映をしたものは、細かいところも含めてでございますが、およそ270件です。資料7の中では、少し見にくくて恐縮ですけれども、対応の欄のところ、網がけをしたところがありますが、それが修正をしたところでございます。同じ箇所に複数の意見をいただいているというところもあるので、実際の修正箇所はこれより少ないのですが、1,100を分母とすると270ということになります。それから、修正を行わなかったものについても感想的なものは別としまして、それぞれに事務局としての考え方を対応案の欄にできるだけ丁寧に書き込みました。この資料は本日の合同部会の資料ですから、ホームページでも公開されます。
 主な修正箇所のうち、ここでは比較的大きく加筆修正したところだけ幾つか抜き出してご紹介をしたいと思います。まず、第1部の方は、先ほどの資料の4をちょっと開いていただきたいと思いますが、まず14ページ、自然に守られる暮らしの中の「また」以下のところですけれども、農業の関係です。「多様な生きものも生み出す活動であるという視点に立ち」に続く部分ですけれども、パブコメにかけたときは「必要に応じて農薬や化学肥料など、適切に使用して」という記述でございました。これに対しまして、農薬や化学肥料の使用を推奨しているようで問題である。農薬や化学肥料の不適切な使用が多様性の保全や食べ物の安全性の確保を妨げていることを明確に記述すべきといったご指摘をいただきました。それを受けまして、ここにあるように「不適切な農薬の使用や化学肥料に過度に依存した農業を改め、環境に配慮した農薬・肥料などの適正使用を進める」と、はっきりした形で修正をいたしました。
 それから、16ページ、理念の関係ですけれども、ここに対しては、理念がまだ少し弱い、多様性が形成されてきた歴史も含め、その内在的な固有の価値について、最後にまとめとしてでも書き加えるべきというご趣旨の意見がございました。それを踏まえて四つの理念を書いた後に、そのまとめとして、16ページの一番下ですけれども、生物多様性が生命誕生以来の長い歴史の中でつくられたかけがえのないものであるということ、そうした歴史性のある生物多様性はそれ自体に価値があること、また、人の生活と文化の基礎となっていることを書き加えました。
 続いて、18ページ、上の方ですけれども、第1の危機の最後のところです。開発などへの対応として、残された原生的自然をこれ以上破壊しないことを明確にすべきというご意見があり、これを踏まえて、影響の回避・低減の後に、原生的な自然の保全を強化すること、自然生態系を改変する行為が本当に必要かどうか十分検討することが重要というくだりを加えました。
 続いて、21ページ、1、地球温暖化による生物多様性への影響のところですが、真ん中あたり、「日本においても」から始まるところで、ソメイヨシノ、コムクドリの後にマガン、ヒシクイなど、大陸から渡ってくるガン類が日本で越冬する場所がだんだん北上している事例を追加しました。これは温暖化影響を把握するための継続的なモニタリングに当たっては、温暖化影響が行動や分布の変化にあらわれやすい重点モニタリング種を選ぶことが重要というご指摘とともに、ガン類の越冬地の変化について、具体的事例をお寄せいただいたので、それを踏まえて加筆いたしました。
 続いて、41ページになりますが、企業の取り組みに関する記述ですけれども、企業に期待することをより具体的にという趣旨のご意見があり、それを踏まえまして、41ページの上から6行目、「個別企業による取組でも」から始まる部分で、環境報告ガイドラインに追加された多様性の保全と持続可能な利用の状況の具体的な内容として、その中では以下の原材料調達における生態系や野生生物への影響と評価を環境報告書に記載すべき情報として書くとともに、製造段階の企業が原材料調達段階のことも気にすべきというご意見もありまして、多様性に与える影響を取り除くことについて、原材料段階から製造段階、さらには流通や販売までの一連の流れを含めた、より広い範囲で配慮すべきことという記述を追加しております。それから、同じ41ページの下の方、5のNGOなどにより取組のすぐ上の行ですけれども、企業関係の最後の段落のところで、多様性条約の民間参画の決議の内容をできるだけ具体的に書いた方が企業にとってわかりやすいし、イメージもわきやすいというご指摘を受けて、[1]から[3]まで決議の内容を具体的に書き足しております。
 それから、47ページからの各地域のグランドデザインのところでは、それぞれにご意見を踏まえまして、具体的な種の名前を追加するなど、全体的によりイメージがわきやすい形で記述を充実をしております。
 それから、基本戦略、62ページですけれども、「社会に浸透させる」のうち、企業の関係ですけれども、62ページの下の方にあります企業活動ガイドラインに関しては、経団連から企業活動というのは実質的に消費者の理解に支えられている。その意味で、企業の取り組みだけでなく、市民の行動が一体的に進められることが必要というご意見をいただきました。これを踏まえて、真ん中よりちょっと下、括弧書きで(CSR)と書いてあるところがありますが、その手前のところで「企業の活動は、消費者の意識に支えられており、国民ひとりひとりの消費行動と密接なつながりがあります。」という一文を追加するとともに、63ページの下の方、2の人と自然の関係の再構築のすぐ上の行のところで、国民のライフスタイルの転換を提案していくに当たって、「生物多様性企業活動ガイドラインの作成と連動させつつ」という表現を書き加えたところでございます。
 以上が第1部の修正箇所で、第2部の修正につきましては、資料の5を見ていただきたいと思いますが、幾つかご紹介いたしますと23ページ、重要地域の保全のところに10番としてUNESCOの人間と生物圏計画、いわゆるMAB計画の柱である生物圏保存地域というのを追加しました。MABについては、2章4節の国際的取組のところに少し記述があるが、代表的な生態系の国際的ネットワークとして重要地域の保全でも取り上げるべきとのご意見に対応するものです。23ページの施策の概要では、生物圏保存地域が厳正な保護地域を核とし、周辺に人間活動が営まれている地域を包含している点で、人間と自然との共生のモデルの提示を目指していることを書き、次の24ページの具体的施策では、日本で指定されている屋久島、大台ケ原・大峰山、白山、志賀高原の4地域でのモニタリングの継続とその成果の公表、新規の指定候補地の選定を含む新たな施策の検討を文科省、環境省で連携して取り組むことを掲げております。
 続いて、26ページ、自然再生のところですが、1.1、自然再生の着実な実施及び技術的知見の蓄積のところでは、自然再生は自然の復元力にゆだねることを原則とすべきというご意見、それから、自然再生事業の効果の定量的な把握、そのための指標の設定をすべきというご意見、また、学術会議からの再生に当たっての人為的な関与は生態系劣化の原因に立ち返って考えるべきというご意見があり、これらを踏まえまして、次の27ページですが、具体的施策の手前のところ、「また」以下で、自然再生事業の実施に当たっての留意点として、第一から第三までの三つを新たに追加しました。1点目は、自然再生の目標設定について常に人為的な働きかけが必要ということの内容にという趣旨で、自然の復元力やサイクルを踏まえた持続可能性を考慮した目標設定が重要という点。2点目として、残された自然の保全を優先するとともに、劣化の根本的な要因を取り除くことが重要という点。3点目は、再生事業実施後のモニタリングと、その分析を通じて事業評価を適切に行うべきことでございます。また、具体的施策の三つ目に、再生事業の評価のあり方の検討と手法の整備を環境省が行うことを追加しました。
 少し飛びますが、80ページ、1章8節、河川・湿原の1.6、山地から海岸まで一貫した総合的な土砂管理のところです。河川からの土砂の供給は、干潟や砂浜の形成に関係するわけですが、ご意見として、上流から下流への土砂移動の分断が河床や海岸線を大きく変化させているという現状と課題の記述に対して、何をするかが具体的に書かれていない。ダム建設による土砂の流れの変動などの影響を調査すべき。土砂移動のモニタリング、小規模な出水時には土砂流出を許容すること。ダムが土砂の流れを分断することを防ぐ技術開発などが必要といった意見がありました。これを受けまして、81ページの上の方ですが、具体的施策の二つ目の○として、土砂を下流に流すことのできる砂防ダムの設置、ダムの排砂管や排砂ゲートの設置など、各種対策の組み合わせを通じて、下流への土砂供給を確保すること。三つ目の○として、土砂移動の状況のモニタリングと分析、モデルを用いた土砂の流れの将来予測、より有効な技術の検討などを国交、農水省が行うことを書き加えております。
 続いて、152ページに参ります。普及と実践の1.1、普及広報と国民的参画の推進のところですが、現状と課題の最後のところに、以下に示す施策を「いきものにぎわいプロジェクト」として進めるとあるが、もう少し説明が必要というご意見を受けまして、そのページの一番上の方ですけれども、「一方」で始まる二つの段落を新たに設けまして、生物多様性の恵みがもたらす「暮らしのにぎわい」や、人と生き物は生き生きと暮らす「地域のにぎわい」という意味も込めて、にぎやかな前向きのイメージを出しつつ、社会に浸透させる取り組みを展開するという「いきものにぎわいプロジェクト」の趣旨を書き足しております。
 続いて、169ページ、こちらは国際的取組です。1.3の里地里山イニシアティブについても同じようにわかりやすい説明が必要という指摘を踏まえまして、現状と課題のところでは、世界には短期的な生産性を重視する余り、生態系の劣化・喪失が進んでいる地域も見られること。我が国の里地里山での自然を単に利用するだけでなく、うまく利用しながら守り育てていく知恵と伝統を現代において再興し、世界各地の自然共生社会づくりに活用すること。その際、国連大学が検討を進めている里山・里海グローバル・アセスメントとの連携を図ることなど、記述内容を充実するとともに、170ページの具体的施策の内容も自然共生社会づくりの共通原則をまとめることや、それを世界各地で活用していくことをローマ字の「SATOYAMAイニシアティブ」と名づけて発信し、各国の参加を呼びかけることなど、より具体的な書きぶりにいたしました。
 最後に、196ページでございますが、2章5節、情報整備・技術開発の中の2.5、生物多様性情報に係る拠点整備・体制の構築というところで、国家戦略の推進と進捗状況の管理のためには、生物多様性情報や事業の進捗状況のデータセンターといった機能を備えた拠点が必要であり、環境省の生物多様性センターがその役割を担うべく具体的施策の中で「機能強化」と書いてあるが、その内容が具体的に示されていないというご指摘がありました。これを受けまして、現状と課題の後段のところで、種や生態系の評価に必要な情報の整備、多様な主体が持つデータの相互利用や共有化のためのネットワークの構築、アジア太平洋地域など諸外国の関係機関との連携強化などが必要なことを書き足した上で、具体的施策の一つ目の○の「特に」以下では、自然環境保全基礎調査に加えて温暖化影響も含めた国土の生態系総合監視システムを推進すること、データ共有化のためにセンターが核となってネットワークの構築を進めること、国際的プロジェクトへの貢献、さらにはそのために必要な体制の拡充強化など、記述の充実を図ったところでございます。
 以上、駆け足でございましたけれども、パブコメ結果の概要と、ごく一部ですが、ご意見を踏まえた修正箇所についての説明をいたしました。長くなりましたけれども、私からの説明は以上でございます。

【熊谷部会長】 ありがとうございました。今、説明のありました第三次国家戦略の答申案につきましては、小委員会でまとめたものから大きな構成は変わってはおりません。それを基本にパブコメの意見で取り入れられるものはできるだけ取り入れて、よりよいものになったのではないかというふうに思っております。
 それでは、これより委員の方々からご意見等をいただきたいと思いますが、本日は答申案を最終的に詰めたいと思いますので、修正の場合は、できるだけ具体的にご指摘いただきたいというふうに思います。また、議論は幾つかに区切って進めようかというふうに考えておりますので、よろしくお願いをいたします。
 まず初めに、前文及び第1部についてご議論をいただきまして、次に第2部、行動計画についてご議論いただき、最後にもう一度、全体を振り返ってご議論いただきたいというふうに思っております。
 まず、前文及び第1部の戦略につきましては、長くても40~50分ぐらいでお願いをしたいと思っております。パブリックコメントの内容やその対応については、第1部または第2部の議論の中でご発言をしていただければというふうに思います。
 それでは、まず初めに前文及び第1部について、ご意見等をお願いしたいと思いますが、大変大勢の委員の方がいらっしゃいますので、ご発言に対して、その都度、事務局なり何なりでお答えすると大変時間的にも厳しいものがございますので、まず、委員の方々からご質問なりご意見をいただいて、まとめて事務局の方からお答えできる範囲でお答えしたいというふうに考えておりますので、大変恐縮ですが、ご発言のある方は例によりまして、お手元のテーブルの前にありますネームプレートを立てていただきたいというふうに思います。どうぞご自由に、どなたからでも結構ですので、ご発言をいただけたらと思いますので、よろしくお願いをいたします。
 いかがでしょうか。それでは、まず田中委員からご発言をお願いしたいと思います。

【田中委員】 筑波大の田中です。全体としては非常によく取りまとめられているというように思います。一つ、環境基本法との関連、それから、それに絡めまして、ここに書いてある理念というのが少しわかりにくくなっているのではないかと思います。ここに書いてあるのは循環とか共生というような言葉が入ってきていますけれども、これは環境基本計画の中の四つの理念の中に、循環・共生・参加・国際的取組というのがもう既に掲げられているわけです。それとの関係で生物多様性の保全というのをこれからどうしていったらいいのかという形で、理念をもう少しわかりやすくまとめてもらえればというのが私の要望でございます。

【熊谷部会長】 ありがとうございました。ご要望として承っておきたいと思いますので、どうぞご発言をお願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。特に小委員会で実際に議論をしていただいた今までの経緯をご存じの委員の方からも積極的にご発言をいただけたらと思いますので、よろしくお願いをしたいと思いますが。土屋委員、お願いをいたします。

【土屋委員】 形式的なことで恐縮です。幾つかの単語にアルファベットで説明がつけられています。ちょっとすぐ例が出てこなくて恐縮ですが、例えばミレニアム生態系評価は、ご説明にもありましたようにMAと省略する。なぜこれがMAかというと、最初の方には出てこなくて、後の方でミレニアムエコシステムアセスメントというようなご説明があるのですね。出すなら最初がいいと思いますし、一番最後に、こういう単語の説明をまとめるというのも一つの方法かと思います。

【熊谷部会長】 ありがとうございました。ご意見に従って整理をさせていただけたらと思いますので、よろしくお願いをいたします。いかがでしょうか。
 それでは、また後で1部、前文にも戻ってご意見をいただきたいと思いますので、とりあえず第2部の行動計画についてもご議論をしていただきたいと思いますので、ご発言をお願いしたいと思います。よろしくお願いをいたします。いかがでしょうか。ご質問でも結構でございますので、よろしくお願いをしたいと思います。では、加藤委員、お願いをいたします。

【加藤委員】 ご発言少ないようですので、ちょっと元へ戻りますけど、感想ですけれども、前にいただいたドラフトで、私は理念のところが弱いかなと思っておりましたのですけれども、きょう、お話を伺って修正が加わって、前に比べてずっと理念ということの真のところが伝わるようになったと思って、よかったなと思いました。
 それから、ほかのところなんですけれども、行動計画になるのか基本理念になるのか、ちょっとわからないんですけれども、普及啓発の部分です。本当は具体的にご意見を言わなきゃいけないんでしょうけど、ちょっと具体的でなくて恐縮なんですけれども、やっぱり広報ということを考えますと、メディアを上手に使うということが大事かなということを思いまして、紙媒体ではなくて視覚に訴える媒体、例えばビデオみたいなもの、日本の生物の多様性とか、生物多様性に関連した、いろいろなビデオを準備して、そういうものを学校の教育現場に提供できるような仕組みとか、それから昔を思い出しますと、私世代ですと、ディズニーの「砂漠は生きている」というカラーの映画がありまして、私自身はそれを見て大変感動して、自然の営みのすばらしさというのに、子供として非常に感動した記憶がありまして、何かやっぱりそういうようなものが世の中に出ていく、いわゆる学校ではなくても、出ていくことによって子供たちが自然、生き物というものに感動して興味を持つということがあるかと思うんですね。ですから、資金的にとか施策的にどうなるかわかりませんけれども、例えばそういうものがつくれるような状況とか、あるいは自然と子供の触れ合いに関するビデオのコンテストですとか、いろいろなやり方があるかと思うんですけど、そういう視覚的なものに訴えるような普及啓発の機会というのを考えられてはどうかなというふうに思いました。
 以上です。

【熊谷部会長】 ありがとうございました。今のご意見に関連した。

【篠原委員】 いえ、違います。

【熊谷部会長】 ちょっとよろしいですか。もし、今の加藤委員のご発言に事務局でお答えできるようでしたら、ちょっとお答えをしていただけたらと思いますので、よろしくお願いいたします。では、計画課長、お願いいたします。

【渡邉自然環境計画課長】 ありがとうございます。今、加藤委員から普及啓発の進め方ということで、ご意見をいただきました。今回の戦略で四つの柱の一つに社会に浸透させるというのを1番目に掲げたところでありまして、ぜひ、この面について力を入れていきたいなと思っております。メディアへの発信の仕方あるいはビデオ映像を整備していく、そういった面で、先ほど説明の中で「いきものにぎわいプロジェクト」というのを、この戦略を受けて展開をしていきたいというお話をしたんですけれども、その中でも行政だけではなくて、民間レベルのいろいろな立場の人たちに参画をしてもらって、どんな形で発信していくことで社会に普及・浸透させていけるかというのをアイデアも募集し、いろいろな柔軟なアイデアも出していただきながら、効果的な普及戦略をぜひ展開していきたいなと思っています。よろしくお願いいたします。

【熊谷部会長】 それでは、篠原委員、そして、引き続いて齋藤委員からご発言をお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。

【篠原委員】 すみません、今までの審議過程を見たら最近ちょっとさぼっているみたいだし、きょうも遅刻してきたんで、ちょっとピント外れな話があるかもしれませんけど、一つは、100年計画というのがどこかに書いてありましたよね。100年というのが総論の方にも書いてあったし、2部の方にも書いてあって、どうして100年なんですかというのは、もう前に議論したのかもしれませんけれど、もう一度ご説明願いたい。何でかというと、確かに明治維新以来百何十年で、近代化で随分壊してきたんだと思いますけど、やっぱり顕著に自然が壊れたり、私の専門の景観の方もそうなんですけど、壊れたのはやっぱり戦後の高度成長以来だと思うので、100年というと随分先で、それはそれで壮大な計画でいいと思うんだけど、もうちょっと早くできないんですかという気もするので、何で50年じゃないのかなと思ったんです。非常に単純な話ですけど、それが一つです。
 それから、ぱらぱらと見ただけで、ちゃんと書いてあるのかもわかりませんけど、やっぱり物事をやるには総合施策が大事で、このごろ地域の、地方の市町村の人とかとつき合っていると、環境省の仕事はこういうのを振ってきて、国交省の仕事はこういうのを振ってきてと、ものすごくいろいろ降ってくるわけですね。降ってくるというと、ちょっと言い方は悪いですけど、こなさなきゃいけないということで。それぞれがばらばらだと大変なんですよね。前にもちょっと申し上げたかもしれませんけど、文化的景観というのが始まって、これも市町村がかなり頑張ってやっています。それから、景観法もできてやっています。さっき見たら重要文化的景観選定2件と書いてあったけど、もう4件になっていると思うので間違いだと思うんですけど、そういうのともうちょっとリンクできないですかね。つまり国交省の都市の景観のやつと文化庁のやつと環境省のやつと、何かなるべく一緒の仕事で片づけられる、片づけられると言うと変だけど、多分、市町村の職員の方はそういう意識が強いと思うんですよ。だから、あれもこれも別々にまた書類つくって何とかというのではなくて、なるべく1本の調査とか計画でやれて、この部分は環境省に出す、この部分は何とかと、そうふうに考えると、ちょっとその連携のところが弱いんじゃないかなと思うんですよね。それは僕の感想なんですけど、多分、地方の自治体とかNPOの職員の方は恐らくそう感じているんじゃないかなと思って、多少代弁ですけど。
 3番目は、これも代弁ですけど、じゃあ一体全体どういうことをやったらいいのかというのが、なかなか難しいですよね。これを読んでもよくわからない。こういうのはいいんだよというのがあるとわかりやすいんじゃないかと思うんですよ。こういう取り組みがいいんだよと、そういう例示みたいというのはあるんですかね。どこか本文なり参考文献なり、あるいは例示集みたいな形で。例えば、前にもちょっと申し上げましたけど、海岸事業で、非常にハードでコンクリートで固めてあったのを壊して、石に戻して保全するというのをやっているのもありますし、それから、豊田の方だったか、普通の都市公園だったのを全部やりかえて、せせらぎとか池を復活させて、生物多様性と彼らは言っていませんけど、もっとワイルドな都市公園にしましたというような事業もあって、何かそういうのが例として紹介があって、これは生物多様性とか、あるいは自然再生とか、あるいは何とかの観点からこういういい点があるとか、悪い点があるとか、そういうものを具体的な例として例示してやると、ああこういうことをやればいいんだな、それが全部100点だとは思いませんけど、でも、こういうことをやっていけばいいんだなというのがわかりやすいんじゃないかと思うので、そういう部分があるんでしょうかという、その3点です。

【熊谷部会長】 ありがとうございました。それでは、齋藤委員、お願いをいたします。

【齋藤委員】 大変細かいことで恐縮なんですが、実はこれを読んでいただくときに、サルの名前なんですが、31ページにはヤクシマザルとホンドザルと書いてございまして、32ページにはニホンザルというような書き方をなさっているんですね。わかる人はわかるだろうと思うんですが、広く一般の方が読むときに、日本には3種類もサルがいたのかと、ちょっと戸惑う方もいらっしゃるかもしれないので、この辺をちょっと工夫をしていただけたらなという気はするんです。やっぱり動物の名前というのは、いろいろ呼び方もありますので、その辺をちょっと統一といいましょうか、やっていただければ、読む人が紛らわないんじゃないかという気がいたしました。

【熊谷部会長】 ありがとうございました。ほかにございますでしょうか。それでは、田中委員、お願いをいたします。

【田中委員】 第1部第4章第2節、63ページですけれども、私もこうした事業を進めていくには、教育というのが非常に重要だと思います。63ページの教育・学習のところで、ただ単に生物だけじゃなくて、地学も含めて教育していくことが重要だということが記されておりまして、非常に結構なことだと思いますが、上から3行目のところに、「地形・地質についての教育・学習を進めることにより」というように、地形・地質だけが特記されています。これは大きく言えば、自然環境の教育をするということだと思います。ここで地形・地質という用語だけ出されますと、では水の循環は教育しなくていいのかとか、大気の循環はどうするのかということが出てくると思います。ですから、この表現は自然環境全体を含めるような表現に変えた方がよいのではないかというように思います。

【熊谷部会長】 ありがとうございました。ほかにございますでしょうか。
 それでは、今までのところでお出しいただいている篠原委員、齋藤委員、それから田中委員のご質問・ご意見に対して、事務局の方から。では、計画課長、お願いをいたします。

【渡邉自然環境計画課長】 まず、篠原委員からのご意見です。100年計画、これは小委員会の中で議論、意見を大分いただきました。その議論の中で、事務局からの説明といたしましては、もちろん行動としては5年、10年、30年、50年という節目節目で行動を進めていく必要があるわけですけれども、例えば明治神宮の森を100年前に100年後を見通して設計をし、森づくりに着手をした。自然が回復するのに要する時間、自然のタイプによっても違うわけですけれども、森林というようなタイプで考えれば、復元するための時間としては100年ぐらいの時間がかかる。あるいは国土の利用の形が、今後、大きく人口減少が進む中で変わっていく。そういうのに呼応しながら自然の回復というのを考えていくというようなことも踏まえて、100年先を見通して今からスタートしようという形で、グランドデザインのところは100年という時間軸を入れ込んだところであります。100年だからゆっくりしていていいという意味では全くなくて、100年先を見通して、基本戦略で掲げたこの5年、こういうところに力を入れて、今からもう行動を進めていかなければ回復というのが実現できないんだ、そういうところをしっかり強調しようということで意見を受けて、手直しをして構成とかに反映させてきたところであります。
 それから、2点目の文化的景観、景観法、そういったいろいろな各省の施策との連携というのは、まさに今回の戦略で実施の面で重視をしなければいけない点だと思っています。文化的景観に関しては、非常にかかわりの深いものとして里地里山の取り組みというのが出てきます。今回の戦略で基本戦略の二つ目の戦略の中で、里地里山の保全や利活用の再構築というのを挙げていますけれども、そういった取り組みについても文化的景観という面で文化庁とも連携をして取り組んでいこうということで、第2部の里山の記述のところでは、国交省、農水省、そして文化庁を含む文部科学省と環境省の連携で里山の取り組みをしていく。その中には文化的景観の取り組みも、そういうところで連携をしていこうというような趣旨でございます。実施の面で、さらに各省の施策、各省の持っている法律と、ここで言う生物多様性の取り組みというのが一体的に、特に現場レベル、市町村、都道府県という現場レベルで、それがより重要だと思いますけれども、一体的な取り組みになるようにしていきたいというふうに思います。
 それから、具体的なモデル施策例示というのが重要ではないかというのが3点目だったかと思います。今回の戦略の中でも幾つか、滋賀県の水に関するネットワークづくりの事例ですとか、知床の川の魚が遡上する範囲を拡大していこうという取り組みでありますとか、やはり同じ知床の海の持続的な漁業と生態系保全を両立させるための計画づくりといったようなことで幾つか例示を挙げています。戦略の中では限りがあるわけですけれども、例えば、この戦略の中で地方版の生物多様性戦略づくりを進める。そのために、地方とも一緒になって地方版戦略づくりの手引をつくっていくというのも提案として挙げてございます。例えばそういった中で、こういう取り組みをやると多様性にとって非常に効果があるのだということを例示として挙げていくようなことも工夫していければなと考えております。
 それから、齋藤委員から動物の種名の表記、これはちょっと場所によっていろいろな表記の違いがあって、できるだけこういう使い方をするときはこの表記でという整理を試みてはいるんですけれど、まだまだうまく整理ができていないところもあろうかと思いますので、最終答申までにそこは精査をして、わかりやすい表記に努めたいなと思います。
 それから、田中委員からの学校教育のところで、生物、地形・地質ということだけではなくて、自然環境全般がカバーできるような表現の配慮が必要じゃないかというご指摘でしたので、この点については関係省庁とも相談をして、表現の上でカバーできるような表現を工夫してみたいと思います。

【熊谷部会長】 では、篠原委員、お願いします。その次に原委員、よろしくお願いをいたします。

【篠原委員】 100年、50年というスパンのとり方は考え方の違いだから、それはそれで説明聞いて、それでも別にそんな不満はありませんけど、でも事実問題として、明治神宮を担った折下さんは100年計画だと書いてありましたっけ。そこのところだけはちょっと確かめてほしいと。明治神宮事業史か造営史に書いてあったかどうかというのは、ちょっと僕も不明なので。
 それから、この根本的な問題ですけど、生物多様性国家戦略に従って、県なり市町村がプランをつくったり、保護計画をつくるというのは、法定計画で義務づけられているのでしたか。

【熊谷部会長】 じゃあ計画課長、お願いいたします。

【渡邉自然環境計画課長】 明治神宮は、当時の計画の中で100年後の姿をスケッチとして出して、それに向けて輪郭的な視点で設計をしているというような計画でございました。
 それから、地方が戦略をつくるということについては、法定、法律に従ってそれを義務づけているという関係ではありません。今回の国家戦略の中で地方版の戦略をつくる必要性・重要性について記述することで地方自治体の取り組みを後押ししていきたいと思いますし、それを後押しするためにも、その先進的な自治体の例も出しながら、自治体と一緒に地方版の戦略をつくる上での手引というのをまとめることで、そういった取り組みが加速化されるように後押しをしていきたいと思います。

【篠原委員】 わかりました。しかし、僕は地方の市町村の代表で言っているわけじゃないんだけど、実際、人材もいないし、お金もないんで、やっぱりそういうのは法定でやらなきゃいけないというのに比べると後回しになるんですよね、どうしても。なので、せっかく景観法とか文化的景観とか、国立公園の中は自然公園法があるからいいんだけど、やっぱりある程度そういうのに引っかけて、これをやってくださいというのを義務づけるというと難しいかもしれないけど、例えば文化庁とか国交省だから難しいかもしれないけど、なるべくそれを盛り込んでおけば、これはやらなきゃいけない仕事だというふうに思ってやると思うんですよ。だから、それをもう一段努力した方がいいんじゃないかと思うんですよね。ともかくお金がない、人がいないというのが実情ですから。

【熊谷部会長】 ありがとうございました。では、原委員、お願いをいたします。

【原委員】 僕は里地里山のところについて、ちょっとご質問というか、意見を述べさせてもらいたいんですけれども、24ページのところでは里地里山における人口減少と自然資源の利用の変化ということで分析して、64ページのところで4割を示す里地里山を残そうという話なんですけれども、この里地里山のベースというか、今、文化的景観というお話がありましたけれども、僕は基本的には里地里山というのは、そこに生活集落がないと無理だと思うんですよね。その辺のところをどういう認識で取り組んでいるのかという話と、そのことは今言われている限界集落とか、そういうような問題とも兼ね合ってくるし、さらに、僕はこのレポートは基本的にはよく書き込んであるし、現場の現象もよくとらえていると思うんですけれども、ここ5年とか10年とかで考えると、東京の問題がこれでいいのかどうかとか、例えば札幌と北海道の関係とかという、人口の配置とか、そういうようなこととの自然環境とか生物多様性とかの関係が、僕はちょっと弱いんじゃないかという感じがするんですね、前半のところの書き込みとか。そういうところは恐らく議論はされた上でこういうものになったんだろうとは推察しますけれども、そのことに対してどういう認識を持っているかというのを、もうちょっと書き込んでおかないと、こういうものが世の中に出たときに物すごく弱いんじゃないかということを非常に懸念しますね。特に里地里山と、大都市圏とか地方の中心都市への人口集中とかという問題に切り込んでいかないと、その環境の問題とか、100年後に人口が半分ぐらいになっちゃえば、また全く違う問題だと思うんですけれども、ここ10年ぐらいの間では、そういうことに対してきちんと、この委員会というか、プロジェクトの立ち位置というのをはっきりさせないと、言っていることとか、やっていることというのが物すごく足場が弱くなっちゃうというようなのを感じます。その辺のところについて、少し何かお考えが聞ければ。

【熊谷部会長】 ありがとうございました。ほかにございますでしょうか。いかがでしょうか。では、山岸委員、よろしくお願いいたします。

【山岸委員】 意見じゃないんですが、質問なんですが、ここに日本学術会議からの提案というのが添えられて、いただいてあるんですが、これはパブコメの中に入っているものなのかどうなのか。この提案がどのように生かされたのかどうかを、事務局に質問です。

【熊谷部会長】 ありがとうございました。それでは、石坂委員、お立てになっていますでしょうか。よろしくお願いをいたします。

【石坂委員】 質問というわけじゃないんで、先生のがお済みになってからでもいいんですけれども。

【熊谷部会長】 どうぞご発言ください。

【石坂委員】 私は、この見直しの懇談会から参加をしておりますので、懇談会、それから小委員会含めて、審議に参加をさせていただいてきました。きょうでき上がった文書、パブリックコメントも入れまして、なかなかできのいい水準のものができ上がったなという感じがいたします。この第1部の中で一番私が大事だと思っておりますのは、第1章の重要性と理念というところでありまして、それともう一つは、第4章のところだと思っておりますが、第1章のところで、生物多様性という言葉の認知度が低いという前提から、こうしたきちんとした記述をしてもらって、生物多様性とはいかなることであり、どうして重要なのかということをかなり事細かく書いてもらっております。その上で、この理念というものを整理してもらっておりまして、これはこの前の戦略に比べますと進歩をしていると私は思います。
 それから、この基本方針でありますけれども、基本的視点、基本戦略、これもかなりうまく書けているなと思っております。問題は、これをいかに実行していくかということが大事なわけですけれども、それが行動計画ということなんですが、この行動計画のところは、第1章、第2章とかの立て分け方、書き方というのは、前回の記述よりは随分進歩していることは認めますけれども、内容的にそれでは格段の進歩をしているかというと、私は必ずしもそうは言えないのではないかというふうに思います。一つは、これから十分に心してやっていかなければならないと思いますのは、先ほどどなたかの委員もおっしゃっておられましたけれども、各省がいろいろな施策を出しているんですけれども、それはそれぞれ役所の役割が違いますから、取り上げている面は違うんですが、やろうとする、実行する人間が同じだという話がたくさんあるんですね。そういう意味で、各省との連携、事業のつくり上げる、実行する、そういうサイドにおける各省との連携を深めて、実行のある政策、行動がとれるようにしてもらう必要があるなということを今さらながら感じております。
 もう一つは、こうして新しい計画として整理をしたわけでありますから、これを踏まえて、今の行動計画にはまだ書いていない、新しい事業をどんどん企画して、これを実行していってほしいと思います。それがこれからの5年間、毎年フォローアップをしていくときに、こういうものも、これを踏まえて新しい行動として出てきたという形で、それは別に政府だけには限らないわけでありまして、あらゆる面を含めてですけれども、予算もあれば、法律もあれば、地方公共団体もあれば、あるいはボランティアもあれば、いろいろなものがあるわけですから、そうしたものを、そういう理念でもってフォローアップ、それから新しい企画を進めていっていただきたいと思います。
 それからもう一つは、これの広報の問題ですけれども、私は前回も申し上げましたけれども、前回のパンフレットは大変よくできていると思っているんです。この表紙、伊藤若仲の絵で始まっている表紙もよくできていますし、中もきれいな写真を多数使っています。文章はまだまだ練れていないところがありますから、これはもう少し工夫をしてもらう必要があると思うんですけれども、こういう写真入りのパンフレット、しかもこの写真がすごくいいんですね。これを持っているだけじゃだめなので、大いに使ってもらわなければいけないわけで、これをどうやって使っていくかということを十分に考えていっていただきたいと思いますし、いいものをつくっていただかなければならないのはもちろんですけれども。それから、先ほどどなたかが言っておられましたけれども、パンフレットだけじゃなくて、ビデオとか、あるいは学校の教材とか、そうしたものに、こうした多様性国家戦略の中身をどう反映させていくか。ビデオもこのパンフレットに劣らないいいものをつくって、いろいろなところで使ってもらうということを、ぜひしてもらいたいと思います。

【熊谷部会長】ありがとうございました。それでは、中静委員、お願いをいたします。

【中静委員】 私も全体としては非常によいというか、網羅的なものができたなというふうに思います。一つだけ意見といいますか、前もちょっと言ったことがあるんですが、例えば1部の方の地球規模の視野を持って行動するというところですと、「我が国は自然資源の多くを輸入しており」と、さらっとした書き方があるんですが、例えば第2部の国際的な部分を見ると、東南アジアを中心として途上国の持続的な利用技術を推進するというような書き方になっていて、やはりワシントン条約的な希少種の取引というだけではなくて、我が国が輸入している資源とか、お互いに取引している資源のやりとりで失われていく生物多様性というのが守れない、地球規模で生物多様性は守れないという視点というのが、ちょっと弱いかなと思うんですね。その部分を、難しい問題だとは思いますが、例えばワシントン条約だけではなくて、そういう取引の中で持続的なもの以外を取引しないような仕組みとか、それはまだ検討段階だと思うんですけれど、そういうものに対する検討も深めていくというような記述も入れていただくといいのではないかなと思いました。

【熊谷部会長】 ありがとうございました。それでは、ご発言をいただいたので、まとめて事務局でお答えできる範囲で、原委員から中静委員まで、中に山岸委員からご質問もありましたが、よろしくお願いいたします。では、計画課長、お願いいたします。

【渡邉自然環境計画課長】 最初に、原委員から里地里山と人口の今後の動向の関係ということに関してのご意見でありました。25ページに里地里山に関連した人口減少の動向というのがありまして、25ページの一番下の方に、3番、経済・社会のグローバル化というところの上の段落3行ほどに、今後の一層の過疎化の進展、地域によっては集落そのものが存亡の危機に立つと考えられること、そういった地域のあり方、これからの人の住まい方、国土の使い方、そういったこと等を里地里山の取り組みと関連づけて考えていかなければいけないということを、まず基本的な考え方として挙げています。その上で、基本戦略の2のところ、64ページにこれからの里山の取り組みの考え方、里地里山の保全、野生鳥獣との共存というところで掲げています。大きな基本的な考え方として、国土の4割程度を占める里地里山をそのままの形ですべてを積極的に維持管理して、二次的な自然環境として存続させることは困難であるという考え方を最初の方に述べています。里地里山のところの5行目ほどでございます。「しかし」と始まっていますが、人口の減少と高齢化が進む中で、すべての里地里山を人手をかけて、かつてのように維持管理していくことは現実的ではないと。奥山に比較的近いところ、そして、手入れをしなくても自然林に移行するようなところでは、地域の実情にもよるけれども、自然の遷移にゆだねることで自然林に推移させていくという考え方が適当だということをまず述べています。その上で、人の生活域に近い、そして、生物多様性や景観、文化、資源利用、そういったいろいろな観点から将来にわたって維持すべき地域というのを選定し、そういったところではいろいろな取り組みを重ねることで里地里山として維持をしていく。その維持をしていく際に、やはり新しい資源価値を生み出していくということがとても重要であって、バイオマス資源としての利用であるとか、地産地消としての利用であるとか、あるいはエコツーリズム、環境教育の場としての利用といった新しい資源の利活用方策を加えていくことで、従来からの農林業に加えて新しい利活用方策を加えることで、里地里山の地域が自立的に維持管理していけるような取り組みにつなげていくことが必要だと。その際に、そこに住んでいる地域住民はもちろんなんですけれども、それだけではなくて、都市の住人あるいは企業、NGO、そういった幅広い参画を得て、社会全体でそういう維持すべき里地里山の維持管理をしていく仕組みを見出していくというようなことを今後の大きな方針として挙げています。原委員のご指摘のとおり、人口の配置の問題、大都市への集中の問題、これからの国土の住まい方の問題、そういった問題の動きと、工夫をしながら里地里山の政策というのを、今後、しっかり考えていく必要があるかなというふうに思います。
 それから、山岸委員の学術会議の取り扱いは、後ほど亀澤室長からご紹介したいと思います。
 石坂委員からいただいた、行動計画の実施の面が極めて重要であって、今後、その事業をつくり上げる段階で各省との連携という意味で実行が上がるような政策展開、新しい提案も含めて打ち出していくことが重要だということ。それから、広報の面、パンフの面、非常に私たちも力を入れていきたい点であります。その辺、実施の面でこの戦略策定を受けて、ぜひ力を入れていきたいと思っています。
 それから、中静委員からの輸入の問題、今回の戦略の中で、ちょっとまとまった形で出ていないんですけれども、例えば基本戦略の中で企業の取り組みというところで、原材料調達における配慮を深めていくようなことですとか、あるいは消費者の側で多様性への影響に配慮した製品を選択していくライフスタイルを確立していくような提案をしていくとか、そういった意味で、それぞれのところで日本が地球全体の生物多様性という資源に依存している。だからこそ、地球全体の生物多様性への配慮というのを日本の社会経済活動の中に組み込んでいくことが重要だということを、この戦略の中で触れられるところで触れるような形で書いてきたところです。なお、記述の上で強化できるような工夫がないかどうかというのを検討してみたいと思います。
 それからもう一点、学術会議の反映について。

【亀澤生物多様性地球戦略企画室長】 学術会議から提案書をいただいておりますけれども、小委員会の中で鷲谷先生からご紹介がありましたので、今回、冊子としてお配りをしているわけですが、まとまったものは、この日付にもありますようにパブコメの期間中にいただきました。それも踏まえてパブコメの整理表の中にも入れております。この分厚い資料で言いますと、301ページの1079番から314ページの1105番ぐらいまでが学術会議からいただいた提案の部分で、大変大部にわたるものですから、全文ではなくて、意見にかかる部分というのを抽出する形で、それぞれ意見部分のみ抽出という形にさせていただいておりますけれども、大変たくさんありまして、それぞれ右側に、対応案の中で網かけをした部分は、先ほど触れました自然再生事業の関係ですとか、総合的な土砂管理の関係ですとか、今回の修正に反映している部分もあります。それから、修正に反映していない部分でも、提案書をまとめていただく段階で意見交換をさせていただく機会もありましたので、それまでの段階で入っているものもあるということでございます。

【熊谷部会長】 それでは、浜本委員、そして中道委員にご意見をいただきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。

【浜本委員】 風邪を引きまして、ちょっと声が出ないものですから、お聞き苦しいと思いますが。1点、とても細かいことなんですが、パブリックコメントにも出てきておりまして、やはりちょっとおかしいかなと思っている点が一つと、全体的なところを述べさせていただきます。
 一つは、RACという、川に学ぶ体験活動協議会の例が市民団体の河川を利用した自然体験活動の推進というところですね、第2部の90ページ、1章8節のところに書いてあるんですけれども、市民団体の全国的組織であるからというふうに対応案のところには書いてあるんですが、であれば、ほかの体験学習だとか自然保護活動だとか、いろいろな活動をしている市民活動の全国組織、国際組織というものも実例として名前が挙がってくれば不自然はないんですが、この団体ぐらいなんですね、具体的な名前。その後の国土交通省との具体的施策のところにも具体的な名前が出てきていて、パブリックコメントの中にも、その団体に参加していなくてもすぐれた活動をしている者はたくさんいるので、特定の例は出さないでくれと書いてある。出すのだったらほかの例も出していただきたかった。出さないんだったら、できればRACも引っ込めた方がいいのではないだろうかとちょっと感じました。
 もう一点は、先ほど篠原委員の方からもございましたが、私も小委員会の方でさまざまにかかわらせていただきましたけれども、いろいろ細かいところまでかなり網羅されていて、バランスもとれて大分いい感じになってきているなと思ってもう一度見直してみると、ほかのところの、各省庁間の中での生物多様性に関するさまざまな施策がとても具体的に出てきている中で、地方公共団体がそれぞれの地域の中で、地方の中での生物多様性の特性に合わせて戦略をつくるというところが、たった一つ、基本戦略の中の1カ所で、企業や市民の参画と並んだところでしか出てこないというのは、やはり全国的にこれを展開していって、100年計画で国土のグランドデザインをというときにも、取り組みがすごく手薄になってしまうんではないだろうかと、すごく感じました。もう1カ所、地方公共団体の役割が出てくるところ、保護区に関するところで、都道府県立の自然公園だとか、そういうところの役割の中では改めて出てくるんですが、私の知っている各県のトップの方でも、生物多様性の条約が国家戦略であることをご存じない方もまだいらっしゃるんですよ。そういうような段階において、国民的にたくさんの方たちがかかわっていく活動として、もしくは国家戦略として位置づけるのであれば、もう少し地方公共団体がこれに関与することの意義だとか必要性をもう少し強く強調して出してもいいのではないか。先ほど、予算のこととか施策とかいろいろありましたけれども、ほかの省庁とのバランスから考えると弱い感じをすごく受けましたので、そのあたりをちょっと検討していただけたらと思います。

【熊谷部会長】 それでは、中道委員、お願いいたします。続いて、岩熊委員、お願いをいたします。さらに服部委員、その順でお願いいたします。

【中道委員】 前回の新戦略のときにはどうだったかわかりませんけど、この資料6、7の印刷を見て、私、大変驚いております。相当たくさんの意見が来ておりますし、それも前向きな意見だろうと思うんですね。1,000余りのうち、270については修正を加えたわけですから、本当に前向きな意見ではないかと思います。私もちょっと関係するところをぱらぱら見ましたけど、非常にまじめに読んでいただいたという感じがいたしております。また、それに事務局でよく対応されて、整理されているのを本当に感心いたしております。この第三次が国民にどれだけ理解できるかということについて、今から相当努力されるんだろうと思いますけれど、ぜひ今後の広報の参考になるように、これは大事に使われたらいかがかと思いますし、先ほど石坂委員が話されましたけど、2部について、各省の対応が、今後5年間する場合についても非常にいい参考資料になるんではないかという感じがいたします。そこでちょっとお願いですけど、このパブリックコメントをいずれまた印刷物にされるとすれば、ぜひ部・章・節単位にまとめられると非常に読みやすくなるんではないかという感じがいたします。
 以上です。

【熊谷部会長】 ありがとうございました。それでは、岩熊委員、お願いをいたします。

【岩熊委員】 私、一番最初の会議にちょっと出られなかったものもありまして、1部と2部の比較をしていて気がついたんですけれども、1部の第2節の基本戦略の中にいろいろな戦略があるんですけれども、その戦略に対応した具体的な行動計画がどこに対応しているのかというのが対応がつきにくいということで、こういう意見はパブリックコメントにあったのではないかなという気はちょっとしたんです。例えば生物多様性を社会に浸透させるというのが第1部の61ページなんですけれども、これは多分、第2部では2章3節の普及と実践とかだろうというのはすぐわかるんですけれども、その次あたりになってくると、具体的に基本戦略に沿って行動していくときに、どれが対応しているのかというのはわかりにくいので、そういうような対応を少しつけていただけると、一般の人にはわかりやすいんじゃないかなと思います。相当議論を深めていれば、一般の方々にはわかりやすいかなと思うのですけれども、特にこれだけ膨大な第2部の行動計画に対して、それを全体を見通せるような形で少し整理できたらなと、これは要望でございます。

【熊谷部会長】 それでは、服部委員、お願いをいたします。

【服部委員】 ありがとうございます。何人の委員からか発言がありましたことに、それぞれ関連することになると思いますけど、私は、直接的には原委員が言われた里地里山についてのお願いというのか、意見を言わせてもらいたいと思うんですけれども、実は公共団体で里地里山に関しては、ほかの委員の方と相反するかもわかりませんけれども、具体的に市町村で非常に興味というか関心を持っていまして、これで里地里山の保全ができるという、生物多様性で随分推進できるという期待を持っている人が多い。ところが、第1部のところで、国土の4割を占めているんだけれども、全部がかつてのように身近にしていくことは現実的でないと書いてある。でも、4割のうち、どこがどうなるのかということについてよくわからないものですから、具体的な市町村は、うちの里山あたりはいいんじゃないか、あれを国家戦略に基づいて、かつてのようないい里山にしていこうじゃないかという意気込みがある。ところが、県は県全体で見て、そこを指定するような気持ちはほとんどない。市町村と県の間でギャップになって、市町村は空回りするということが出ておりまして、それをどうしたらいいかというのを第2部の具体的施策で見てみますと、62ページに里地里山の具体的施策というのが書いてありますが、これについてはどのぐらいやるか、どこをだれがどのぐらいやるかということについては何も書いていなくて、何かそれをやろうとする活動団体とかボランティアについて支援をしますよということしか書いていない。受けて立つ方の地方公共団体はどうしたらいいのかというのは、これだけじゃ読めないので、そのあたりもう少し何とかならないのかな。ついては、冒頭に篠原委員が言われたように法制化するとか、法制義務化するとか、そんなところまでこの段階で踏み込むのはちょっと難しいかもわからないけれども、ないと、結局、どこも何もできなかったというふうな結果にならないのかなという懸念を持っておりまして、それに対する対応をこの際、62ページのところで何か突っ込んでやっていただけないかな。それが公共団体で相談を受けているときに、私が対応と考え方を示せる根拠になるんじゃないか、根拠になればありがたいなというふうな気がしております。
 以上です。

【熊谷部会長】 それでは、中川委員、そして隈委員、お願いをしたいと思いますので、よろしくお願いをいたします。

【中川委員】 篠原委員、それから浜本委員の発言と関連をいたしますが、地方公共団体の役割に関してでございます。この1部の方の各主体の役割のところにございますように、この計画は国が実施するだけでなく、地方公共団体、企業、NGO、国民などのさまざまな主体が自主的かつ連携して取り組むことが重要と明記されておりました。まさにこのとおりだと思うわけでございます。ただ、2部の行動計画そのものを見ますと、最初に行動計画とは何か、どういう内容を含んでいるのかという部分がございますが、ここに650の具体的施策を記載しているわけですが、それぞれの記載の末尾には括弧して各省の名前が記載されておりまして、これだけを見ますと、この行動計画の性格にも実はかかわるのかもしれませんが、この行動計画、国が専ら実施をする責任を負っているということを明記しているような感じに受けとめられるのではないか。また地方の側からは、自分たちが地域の特性に応じた独自の施策をこれからやっていかなきゃいけない、あるいはやりたいと思っているにもかかわらず、国の行動計画、国の戦略の中では明確な位置づけがない、こういうふうに思うところもあるのかもしれないと思います。これは、ただ計画の全体の構成なり、あるいは書きぶりそのものにかかわる話ですから、大幅な修正になるのかもしれませんが、例えば2部の最初の説明のところに、そのあたりの考え方を明確にして、これは括弧で各省の役割と各省の施策というように明記されているけれども、地方の独自の取り組みを積極的に取り上げていく、その呼び水のようなものにしたいということも書いていただくとか、あるいは先ほどちょっと説明がございました地域版の戦略づくりについて、行動計画の中で特に触れて、それを積極的にアピールするということも一つの考えではなかろうかと思います。今、地方公共団体についてのみ申し上げましたが、企業、NGOについても、やはり同じような考え方で対応していくことが、幅広い生物多様性の戦略を実効性のあるものにするのではないかと思います。

【熊谷部会長】 ありがとうございました。それでは、隈委員、お待たせいたしました。よろしくお願いいたします。

【隈委員】 私、全体としては非常によくまとまって、骨子としてはこういうのでいいと思うのですが、今後、これを広報していくとか、いろいろなところの参考にしていくという点で見ると、このパンフレットのようなものになったときに、何となく自然のきれいな写真があって気持ちがいいけれども、本当に何か役に立つ情報があるのかなということが気になるんですね。そのためにはもう少し、ポジティブなものだけではなくてネガティブなものですとか、そういう事例も入れていって、単なるロマンチックなパンフレットではない実践的なものではないと、地方で参考にするというよりは、これが山積みされていて終わってしまうというような感じがするものですから、広報、それから、今後の具体的な行動指針としては、ネガティブな具体的なものに少し焦点を当てていっていただいた方が役立つのではないかというふうに感じるんです。

【熊谷部会長】 ありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。それでは、佐藤委員、お願いをいたします。お待たせしました。

【佐藤委員】 今の隈委員のご意見とよく似ているんですけど、まだ人ごとの生物多様性という感じがしていて、市民レベルといったら、例えばお母さんたちがこれをどう読むかとか、地域でどう使っていくかというところまでブレークダウンしていくというか、そこの接点をもう少しつくっていく必要があるんじゃないかと思うんです。中身にはライフスタイルの変換とか、すごくたくさん書いてあって、すばらしいことがいっぱいあるんですけれども、それが浮き上がってきて人に訴えかけているかというと、まだそこまで行かなくて、やはり国民一人一人が、自分が何をすればいいのかということまである程度提示していかないと手が出ないところがあるので、自分の問題であるということを認識するための何かツールというのでしょうか、その接着剤というか、そういうものがまだちょっとここには欠けているのではないかという気がいたします。その辺を少し補強していけば、多分50%という認知率になる。そこをやらなければ、今までと余り変わらないところで推移してしまうのではないかという危惧を持っております。

【熊谷部会長】 ありがとうございました。中道委員はまだご発言ございますか。よろしゅうございますか。それでは、事務局の方から。では、篠原委員、お願いします。

【篠原委員】 もう一言だけ、さっき大分言いましたので。二つのことが重要で、これは国のレベルで決めているんですけど、最近は大分世の中も変わってきて、地方分権一括法ができた影響もあると思うんですけど、かなり地方でもやる気のある人がいっぱい出てきています。それで、地域の自主性をどう尊重するかというのがかなりポイントになるんじゃないかと思うんです。それは自治体の職員だったり、NPOの人だったり、いろいろあるんですけど。それが一つ。
 それからもう一つは、今度のこれは第三次になるわけですけど、どういう人が引っ張っていく戦略なのか、環境省のレンジャーが引っ張るのか、都道府県の自然担当の人に引っ張ってもらうつもりなのか、NPOの人に頑張ってもらうのか、それぞれそれはみんな頑張ってもらうという話が一番模範解答だろうと思うんですけど、そうじゃなくて、どこを重点的に頑張ってもらうという、そこら辺をもうちょっと、つまり人間の話をもうちょっと出した方がいいんじゃないかと思うんです。ここには出せないけど、具体的な施策ではこう展開するという話でも結構なんですけどね。

【熊谷部会長】 ありがとうございました。よろしゅうございますか。では、服部委員、お願いをいたします。

【服部委員】 今の篠原委員の話はおかしいんで、地方、地方によってケース・バイ・ケースなんですよ。国のこういうもので、だれがリードオフマンだとか引っ張るとかというのを書いちゃうと、それしかだめだというふうに解釈する地方公共団体が多いから、その地域によって個別にNPOが引っ張るところがあったり、あるいは市町村が引っ張るところがあったり、県がやったり、あるいは国が直轄して入っていくものがあったりするので、それは余りよくないんじゃないかなと私は思います。

【篠原委員】 いや、わざとそう言ったので、服部さんと僕、意見は違わないです。そういう自主的な動きが出てきたときに、だれがサポートするんですかという話が重要だと思っているんです。地方に行くと、これほど情報化社会だといっても、だれに聞いたらよくわかるのかとか、そういう情報って案外ないんですよね。だから、どういうふうにお考えになっているか知りませんけど、もちろん環境省のホームページとか、いろいろあるんでしょうけど、そうじゃなくて、北海道地方だったらこういう人がいますよとリストがあって、その人に聞きましょうとか、何かそういう地方の自主性をバックアップするようなシステムはどういうふうにお考えになっていますか。それはレンジャーがやるんですというなら、それはそれでも構わないし、都道府県の人を徹底的に教育して、そのためには研修をやる必要がありますけど、その人たちにやってもらうんだという話もありますし、その辺のことを聞きたかったんです。だから、服部さんと意見が違うわけじゃないんです。

【熊谷部会長】 よろしゅうございますか。ほかに何かございますか。それでは、大分時間を経過しておりますので、一応、ご意見・ご発言を賜ったということで、今までのご発言に対して、事務局からまとめて回答なり、あるいは情報をいろいろお持ちでしょうから、それをご披露いただけたらと思いますので、よろしくお願いいたします。では、渡邉計画課長、お願いをいたします。

【渡邉自然環境計画課長】 浜本委員からありましたRACの話については、各省とも相談をして、どんな扱いにするかというのを考えてみたいと思います。
 それから、浜本委員からもありましたし、中川委員からもありました地方自治体の施策の取り上げ方ということで、中川委員のご指摘にもありました2部の行動計画の中では、各省の施策ということで実施主体も含めて書いていて、そのときに自治体の施策なり、企業の施策、NGOの施策との関係、その自治体や企業の行動計画はどう位置づけられるのだということを、2部の初めに前文として挙げたところでうまく書いていくようなことも含めて、ちょっと工夫ができないか考えてみたいと思います。
 岩熊委員からあった1部と2部の対応、もう少しつなげられるようにということも、その2部の初めのところで少し書き足せないかどうか、なお検討してみたいと思います。
 中道委員からありましたパブコメはいろいろな形で、ぜひ整理をしていきたいなと思っておりまして、部単位、章単位に成立するようなことも工夫できれば考えてみたいと思います。
 それから、服部委員からありました里山4割あって、自然に推移させるところと積極的に維持管理をしていくところ、そういう方針をもう少し具体的に出せないかというようなことだと思います。一つは、この戦略の中でも書きました、積極的に将来に維持していきたい、残していきたい里山の選定というのを第2部の中でも300カ所程度選定していくと挙げています。この作業に当たっては、自治体の意向も地域の意向も把握しながらそういった作業をして、積極的に維持していくべき里山を浮かび上がらせるような、そんな作業もしていきたいと思いますし、ほかのところで生態系ネットワークを広域レベルで地図化する、具現化するという取り組みを挙げています。そういった取り組みを、当然これは広域的に関係する自治体と一緒に作業していきますけれども、そういった中で自然林に推移させるべき場所、積極的に実施させるべき場所というのもデータに基づきながら、議論をしながら描いていくというような関係にもなろうかなと思っております。
 パンフレットなり、普及啓発のところで、隈委員や佐藤委員からご指摘を受けました。ぜひここのところは、先ほども「いきものにぎわいプロジェクト」ということで、役所の知恵だけじゃなくて、民間レベルのいろいろな立場の人に参加をしてもらって、いかに社会全体にこの取り組みが浸透し、みんなが立ち上がるような形につながるかということで、いろいろな立場の人からアイデアをいただいて、効果的な実施につなげていきたいというふうに思っています。
 最後、篠原委員からありました、だれが引っ張っていくのかということで、今回、戦略をつくる中で、事務局として重視しなきゃいけない点として、やっぱり各省間の連携を第二次の戦略以上に強化することが政府レベルでは大事な点かなと思いましたし、第二次の戦略をつくって、毎年点検をして、その中で指摘を受けてきた自治体、NGO、企業、そういった政府以外のいろいろな主体が参画をしてくる動きをどう高めるかというのが大事だという指摘を受けてきて、今回の三次の戦略では、基本戦略の第1に社会に浸透させると挙げたように、政府だけじゃなくて、地域、NGO、企業がそれぞれの立場で立ち上がる、そういううねりを第三次の戦略に向けて高めていくことが重要という認識でつくってきました。その際に、それらをつなぐコーディネーターというか、あるいは専門家というのでしょうか、そういう人たちが相談したいときに、だれに相談するんだというお話もありましたけれども、地域が立ち上がるときに専門家の関与、あるいは専門家と地域の人をつなぐコーディネーターとしての人材の育成も非常に大事かなと思って、そんな点も基本戦略の中にちょっと書き加えたところでございます。
 以上です。

【熊谷部会長】 ありがとうございました。予定をした時間に迫ってまいりましたけれども、ご発言のなかった委員でぜひご発言をいただけたらと思いますので、いかがでしょうか。それでは、桜井委員、そして土野委員、よろしくお願いいたします。

【桜井委員】 今回、第三次の中では海の方が大分入ってきたんです。特にパブリックコメントでは多いということで、多少前よりは進んだかなという感じはしております。ちょっと気になったのは、2部の104ページで、今回、海域の区分で沿岸と海洋ということで区分してきたんですけれども、ちょっと気になったのが、2の里海・海洋で、ここだけ里海になっているんですね。これはむしろ沿岸と海洋ということで、ずっといろいろ議論されてきて、大きくくくるということで来ているので、ここで突然、里海が出るのはちょっとまずいかなと。沿岸のこういうところを里海と呼ぶのはいいんですけれども、即、里海をここに題名として使うのは、まだ早い気がするんですね。里地里山里海という概念の中で生まれてきた言葉であって、海から出てきた発想ではないと思うんですね。ですから、これはできれば沿岸に戻していただければと思います。
 それから、あと温暖化の部分で、先週までちょっと国際会議に行っていたのですが、いわゆる海も陸もそうですけれども、気温・水温の温度の上昇という言葉と同時に、もう一個、酸性化について非常に今、危機感を持って議論されております。特に海の酸性化が起きると、いわゆるカルシウムを持った生物に非常に危機的な状況になるということがかなり出ていますので、温度だけの上昇だけでなくて、かなりそういう議論がされていますので、温暖化の部分の書き込みはもう少し、100年後を見越すとすれば、なおさら温度だけではなくて、いわゆる炭酸ガスによる酸性化という問題が起きますので、その辺の書き込みは、将来を予測するとすれば書き込むべきではないかというふうに思います。
 以上です。

【熊谷部会長】 ありがとうございました。お待たせしました、土野委員、お願いをいたします。

【土野委員】 先ほど来、市町村の役割もいろいろとご議論があったところでございますけれども、現実の問題として、今、市町村で本当に困っているのは、山林の荒廃に対する対応をどうするかとか、それから、現実の問題として農地・農業に対する獣害がかなりひどくなっているので、それをどうしたらいいかということに手いっぱいというのが現状でございまして、生物多様性ということから言えば、地方の市町村はまだまだ都会地域と違って相当豊かな地域だとも言えるわけでございます。そういう中で、今回、これらのことが決められて、市町村がどう対応するかということになりますと、先ほど篠原先生がおっしゃっていましたけど、これまでに各省から縦割りでいろいろなことがどんどんおりてきて、その対応に追われているという状況が一方では確実にあるわけでありまして、そういうことではなくて、やはり地域特性に応じた生物多様性に対する対応を、省庁間、横の連携をとっていただいて総合的な指導をしていただく、あるいはそれに見合った適切な支援をしていただくと。財政的なことも含めてですね。やはりそういうことをしていただかないと、なかなかこの仕事といいますか、対応は難しいのではないかなと考えております。私ども市町村としても非常に重要な課題でありますので、このことに対しては積極的にかかわるべきだというふうに認識しておりますけれども、人的なもの、物的な面、あるいは財政的な面を含めて、適切な支援・指導ということを特にお願いを申し上げておきたいと思います。

【熊谷部会長】 ありがとうございました。それでは、森戸委員、そして、土屋委員の順でお願いしたいと思います。

【森戸委員】 発言を促されたので、実は書き込むべきような発言でもないかなと思っているんです。以前、小委員会ではいろいろ発言しましたので、今は感想的な話で恐縮ですけども、今回の国家戦略は、事務局が大変苦労されて、前よりもかなり水準の上がったものにまとめられたんですが、かなりのエネルギーはやっぱり省庁間の連携に費やされたのかなと。ですから、委員の方々が指摘された話までちょっと余力がなかったのではないかというふうに推察しています。例えば630の事業が羅列されてというのも親切と言えば親切ですけれども、全体はなかなかとらえにくい。各省庁の方々も、これは何とか優先順位をつけたり、総論ではいろいろめり張りをつけた方がいいとは思っているんでしょうけれども。でも各論になれば、自分のところが目玉にならない限りは省としての立場がないということで、結局、今回は並列になったのだろうと思います。それから、先ほど言っていた法定計画に持っていくというのは、これは非常に実行力が伴って、すばらしいことだと思うんですけれども、法定にするための調整というのは大変だろうということで、今回はちょっとまだ無理なのかなという印象を持っています。
 それから、普及啓発に関しては、先ほどから出ておられるように、PRのような資料とか媒体とか、そういうものを充実させるということも大事ですけれども、一般的に普及、あるいはそれが問題点として把握されるというのは、ある種の節目といいますか、事件という表現はあれですけど、イベントといいますか、そういうインパクトの中で普及というものが進むと思うんですね。定着といいますか、論争といいますか。ですから、例えば来年、洞爺湖サミットがあります。これは恐らく環境問題が大きなテーマになりますが、どちらかといえば地球温暖化関係が主力になるんでしょうけども、生物多様性に関しても何らかの芽出しといいますか、予告みたいなものが出ないだろうかと。そうすれば、2010年のCOP開催のある種の予告編になって、そういうものをインパクトにしながら、生物多様性という問題がかなり論点として世界的に出てくるのかなと、そういう期待を持っています。
 以上です。

【熊谷部会長】 ありがとうございました。それでは、土屋委員、お願いをいたします。

【土屋委員】 ありがとうございます。今回、1部の最初のところで生物多様性の重要性について明記していただきました。その最後のところに、生物多様性というのは私たちの地球を守るためのキーワードであるということを明確にしていただいたことは、このプロジェクトは大変意味を持ったものになったと思っております。生物多様性の重要性を強調すべきだと言ってきた一人としては、もっと力説してもいいのではないかというふうにも思っているくらいです。それに関連しまして、今回は地球レベルのことを取り上げていただいております。地球の温暖化に関して私たちがどうすべきかということを、2部では行動計画としまして緩和策、あるいはモニタリング適応策という非常に厄介で困難な問題をたくさん整理していただきました。それは今後、取り組むべき策として努力していかなければいけませんが、その根拠となる1部の記載にちょっと気になるところを見つけてしまいましたので発言をさせていただきます。1部の21ページ、第2節として地球温暖化と生物多様性、3ページほどにわたって記されております。ここの内容を見せていただきますと、必ずしも生物多様性に関する内容になっていないという感じを受けます。つまり、いろいろな生物が地球温暖化の影響を受けて数が減った、あるいは分布範囲が変化したということは記されていますけれども、生物多様性にどういう影響が出たか、あるいは生物多様性の変化から見ると、この地球温暖化はどう問題なのかという記述にはなっていないような気がしますので、ぜひご一考いただければと思います。
 以上です。

【熊谷部会長】 ありがとうございました。それでは、鹿野委員、お願いをいたします。

【鹿野委員】 全体として、すごく私はわかりやすくなってきたなという感じは思っています。一言ちょっと言いたかったのは、各省庁の連携、それから、企業ですとか、NGO、NPOとの連携等々についてですが、ここではかなり前向きな、事業を進める側の連携がうたわれているんですが、実際には、NPO、NGOの各種の取り組み、その保全の活動が始まっているんです。そこで各省庁、むしろ出先なんですが、事業を支援する立場というよりは許認可みたいな立場でかかわることが結構あるわけなんですが、ぜひそこのところも、関係するところの連携をしっかりやっていただきたいと思うんですね。場合によっては省庁によって言うことが違って、せっかくの行動の足を引っ張ったり、水をかけたりということが見受けられます。全体の中で、一生懸命見ていたんですけど、どこへどう書くというのはわからないんですが、ぜひNGOですとか、企業ですとか、そういった方々の生物多様性保全の各種活動を支援するという中で、むしろ各省庁の予算だとか、制度とか、かかわらない中で、むしろ許認可みたいなところでかかわるときに、やはり十分に配慮して、連携して、それを後押しするような、そういう動きをしていただきたいと思います。どこでそれを触れていいのか、急いで見たんですが、見つけられませんでした。よろしくどうぞ。

【熊谷部会長】 それでは、川名委員、お願いをいたします。

【川名委員】 非常によくできて、私のちょっとした意見も入れていただいてありがたいと思っております。一つ、感想なんですけれども、二次のときからずっと思っていたんですけれども、第1部の1章、2章、3章、4章とありまして、1章はいいんですけれども、2章の現状と課題、それから3章の目標、4章の基本方針、この三つがどうもうまく流れていない。現状と課題、それから目標をとっているのかと思うと、私の読み込みが足りないのかもしれませんけど。でも、課題と目標と基本方針が何か独立しちゃっているような感じがして、もしかしたら私の読み込みが足りないのかもしれませんけど、感想ですので。
 以上です。

【熊谷部会長】 ありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。よろしゅうございますでしょうか。
 長時間にわたり、ありがとうございました。まだいろいろご意見があるかとは思いますが、限られた時間でございますので、このあたりで本日の議論を終了させていただきます。最後にいただいたご意見に対して、もし事務局でまとめてお答えできる部分があれば、発言をしていただきたいと思いますが、よろしくお願いいたします。それでは、渡邉計画課長、お願いをいたします。

【渡邉自然環境計画課長】 今、いただいた意見も各省とも相談して、反映できるところは反映できないか、いま一度検討してみたいと思います。温暖化、酸性化の影響という桜井委員のお話がありました。1部の温暖化について記述しているところでは、海の酸性化についても触れて、記述をしているところです。2部でそれを受けた記述ができるかどうかという目で、もう一度見てみたいなと思います。
 それから、土野委員からありました地域レベルでの取り組みにつなげるときに、各省がばらばらではなくて、横断的に支援ということで里山の施策なり、自然再生の施策、そういったところで、ぜひ省庁を横断的に地域と協働で地域への支援というのを考えていければと思っています。
 森戸委員からありました今後の展開の中で、来年G8サミットが日本でございます。洞爺湖サミットの前に先立って、神戸で環境大臣会合が来年の5月にありますけれども、そこでは温暖化と多様性と循環型社会、3Rという三つをテーマにすることになっております。そういったことでG8サミット、洞爺湖サミットでも多様性について環境大臣会合を受けて目出しがしていければと思いますし、2010年のCOP10、日本開催に向けて、この戦略の実施盛り上げというところで、そういった国際的な動きともうまく合わせながら展開していければなと思っています。
 鹿野委員にありました現地事務所レベル、許認可レベルでの企業やNGOの活動の後押しといったようなことも、実施の面で工夫、配慮をしていければと思っています。
 そのほかいただいた意見についても、各省とも相談して、最終案で工夫できないかどうか改めて検討してみたいと思います。
 以上です。

【熊谷部会長】 ありがとうございました。本日は本当に貴重な、いろいろなご意見をいただきまして、ありがとうございました。本日の議論を踏まえまして、さらに加筆修正が必要な部分があろうかと思いますが、それは事務局の環境省と私、部会長に一任していただきたいと思いますが、いかがでしょうか。よろしゅうございますでしょうか。
(異議なし)

【熊谷部会長】 ありがとうございます。それでは、そういう形で整理し、次回、14日の部会で答申という運びにしたいと思います。
 なお、中央環境審議会の運営方針に基づきまして、本日配付の資料、議事録は公開することになっておりますので、ご承知おきをお願いしたいと思います。
 それでは、以上をもちまして、自然環境・野生生物合同部会を閉会といたします。本日はありがとうございました。
 事務局にお返ししますので、もし連絡事項等ございましたら、よろしくお願いをいたします。

【司会】 本日は、長時間のご議論ありがとうございました。次回の合同部会は、11月14日水曜日の午前10時30分から12時まで、場所は本日と同じく、こちらフロラシオン青山2階、芙蓉で行いますので、ご出席をよろしくお願いいたします。
 なお、本日配付の資料につきまして、郵送をご希望の委員におかれましては封筒にお名前をお書きの上、机に置いてください。事務局から郵送させていただきます。
 本日はどうもありがとうございました。