1.日時
平成19年4月26日(木)10:00~12:25
2.場所
虎ノ門パストラル 1F 葵
3.出席者
- (合同部会長)
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熊谷洋一
- (委員)
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石井信夫、石坂匡身、石原收、磯崎博司、磯部力、磯部雅彦、
市田則孝、大澤雅彦、加藤順子、川名英子、栗田亘、是末準、
近勝、齋藤勝、桜井泰憲、佐藤友美子、鹿野久男、
白幡洋三郎、高橋佳孝、土野守、土屋誠、中川浩明、中静透、
中道宏、中村太士、西岡秀三、野田節男、浜本奈鼓、速水亨、原重一、原田純孝、三浦愼悟、毛利衛、森戸哲、森本幸裕、
山岸哲、山極壽一、和里田義雄 (五十音順、敬称略)
- (事務局)
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環境省:大臣、自然環境局長、大臣官房審議官(自然環境担当)、
自然環境局自然環境計画課長他
農林水産省、国土交通省、文部科学省、経済産業省
4.議事概要
(1)生物多様性国家戦略の見直しについて(諮問)
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- 環境省から、生物多様性国家戦略の見直しを平成19年4月23日付けで環境大臣から中央環境審議会に諮問した旨を報告。
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- 自然環境・野生生物合同部会に、生物多様性国家戦略小委員会を設置することが決定された。
(2)現行の生物多様性国家戦略の第4回点検について
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- 事務局より、第4回点検の1回目の合同部会(平成19年2月26日)の議事要旨について報告。また、環境省、農林水産省より、1回目の合同部会で委員から質問のあった事項について説明。
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- 委員からの主な意見は以下のとおり。
1.国家戦略実施状況の点検の方法について
- 戦略に基づき様々な施策を講じたということは示されているが、その結果、どれだけ効果が出たかを指標を用いて示す必要がある。
- 資料3-4のグラフには、他の社会経済的な要因も入っていると考えられる。生物多様性を総論的に指標化するのは難しい。そのかわりに、生物多様性の3つの危機がどの地域で起こっているのかを地図化してはどうか。そうすることで、住民が3つの危機を身近に感じ、意識改革を図ることができる。
- 生物多様性の指標は難しいが、分解的な指標を作るよりはむしろ、「美しい」等の抽象的ではあるがわかりやすい統合的な指標も考えてはどうか。
- 多様性に関する施策の評価として、地域の現場レベルでの個別的な効果をもっと把握すべきである。
- 環境のとらえ方としては、人間圧力、 OECD の例のようにその影響、それに対するレスポンスという枠で、システム的な把握をしてはどうか。「生物多様性はなぜ大切か」という説明は大切で、ミレニアム生態系評価のように生態系サービス(提供、調節、文化、基盤)に注目した評価・説明も国民の意識を高めるうえで重要。また、経済的な評価も一度は試みていいのではないか。
- 点検は、今後の施策にフィードバックする形で実施する必要があり、すべての施策を網羅的に行うより、重点化することも必要。
- 各省の連携は以前より積極的に行われている。事業の効果については、謙虚に評価・点検する必要がある。
2.今後の施策の方向について
- 経済界や、特に関係の深い省庁など、ターゲットを絞って具体的施策につながるような議論を行うべき。
- 戦略実現のためには、自治体の役割は大きいので、戦略の見直し検討過程で、市町村を含め、モデルとなる自治体の関与も必要である。
里地里山
- 里地里山の保全については、対策を講ずべき対象面積の数値目標を示すことを検討し、今後の方向を考えた上でそれに向けた事業展開をすべき。
- 里山について、点的な対策では不十分であり、面的な動きにつなげるためには森林全体の中での里山の位置づけをしっかりおさえることが必要である。
- 里地里山の問題や生活や生業と関係しており、単に環境面から環境省が追っていくだけでなく、過疎化対策など関係各省との連携が必要である。
干潟・海岸
- 干潟についてはシギ・チドリに加えて貝類なども調査すべき。また干潟は、漁業利用は成り立っていても、遺伝的多様性などは危機的状況ではないか。その保全には、「里海」という観点から漁業者に対して生物多様性に関する理解の向上を図ることが必要。
- 日本の海岸線は地球1周近い長さがある。そもそも日本列島は四方を海に接しているという視点が必要。干潟を含む海岸については、多くの行政機関が関わっているが、人手の入っていない海岸、入っている海岸などに応じて、それらの機関が連携協力してモデル的に生物多様性向上のための対策を検討してはどうか。
教育分野における取組
- 教育基本法にも環境の観点が盛り込まれており、学校、地域における教育や生涯学習を含めた教育分野における具体的取組を進めるため、各省の枠を超えた協力体制を強化すべきである。
実施体制
- 自然環境の観測については、地道に継続していくことが重要であり、そのため十分な体制の確保が必要である。
- 戦略の効果的実施のためには、助成金や民間企業の自主的な取組を含め経済的な視点が重要であり、その点を次の戦略に盛り込み、かつフォローすることが必要。
その他
- 公共事業による生物多様性に対するインパクトを軽減することが必要だが、公共事業の現場の中には生物多様性の観点が十分に浸透していないように見受けられるところもあるため、例えば、工事の計画段階や実行段階において現場で使える生物多様性のチェックリストの作成など具体的な仕組み作りも検討することが必要。
- 新たな施策とは別に、工場立地などの普通の経済活動による生物多様性への影響についての点検も必要である。
- 法律や政策の中に生物多様性の観点を内部化することが必要である。
3.国家戦略の普及啓発について
- 見直しに関する地方説明会は、全国的なものとしては参加者数が1桁足りないのではないか。もっと広報に力をいれるべき。
- 「生物多様性」や「生物多様性国家戦略」が国民に浸透していないので、認知度の向上に努力すべき。
- 「生物多様性」の語は国民に伝わりにくい。戦略についても、平易な言葉で言い換えた通称も必要ではないか。
- 現行戦略のパンフレットは大変できがよい。戦略を見直した際には、これに勝るとも劣らないパンフレットを作ってもらいたい。
- パンフレットの作成部数と配布状況についてもモニタリングすることが必要。また、「モニタリングサイト 1000 」などは、戦略に基づく取組である旨をパンフレットに記載するとよい。
4.その他
- 里地里山モデル事業について、植生タイプごとに1地域というのは少ないのではないか。予算の制約があるのだろうが、普遍性を持った説明のためにはもう少し地域を増やしてはどうか。今回説明のあった秦野の資料はわかりやすいので、他の3地域も同様の資料があればよい。
(以 上)