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■議事録一覧■

中央環境審議会総合政策・地球環境合同部会
第5回グリーン税制とその経済分析等に関する専門委員会議事録


午前9時31分 開会

○環境経済課長 おはようございます。
 定刻となりましたので、ただいまからグリーン税制とその経済分析等に関する専門委員会第5回会合を開催したいと思います。
 本日は8名の委員のうち、7名の方にご参加いただく予定になってございます。横山委員は間もなくご到着になると思います。それから、植田委員は30分ほどおくれて到着するというご連絡をいただいております。また、事務局側でございますが、総合環境政策局長と大臣官房審議官、実は、中央環境審議会の総合政策部会が本日開催されておりますので、少し遅れて到着して参りますので、ご容赦願いたいと思います。
 それでは、以降の進行を神野委員長にお願いいたします。

○神野委員長 それでは、第5回目になりますが、委員会を開催したいと思います。
 委員の皆様方にはお忙しいところお集まりいただきまして、本当にありがとうございます。心より御礼申し上げます。
 お手元に議事次第がいっているかと思いますが、本日は大きく2つの議題がございまして、1つは、地球温暖化対策全体の中での具体的な位置付けについて、これは事務局から発表していただいた後、議論をさせていただきます。
 次に、第2番目の議題でございますが、原油価格の高騰等の経済状況の下での課税の効果、これに関しましては、増井委員と天野委員にご発表いただいて、その後に議論をさせていただくということになっております。
 本日の会合は11時半まででございますので、議事の運営につきまして、ご協力をいただければと存じます。
 それでは、第1番目の議題、地球温暖化対策全体の中での具体的な位置付けについて、事務局からご説明をお願いいたしたいと思います。
 資料1、2について、25分程度でお願いできればと思います。よろしくお願いいたします。

○温暖化対策課長 地球環境局地球温暖化対策課長の徳田でございます。資料1をご用意いただきたいと思います。
 前回の会合で、ポリシーミックスの議論が若干出ておりましたので、今地球温暖化対策として、どのような施策が講じられているのか、整理した表をご用意いたしました。まず、一番上の四角囲みの中でございますけれども、これは、今年の3月に改定をいたしました京都議定書目標達成計画に書いてあるポリシーミックスについての記述でございます。
 効果的かつ効率的に温室効果ガスの排出削減を進めるとともに、我が国全体の費用負担を公平性に配慮しつつ極力軽減し、環境保全と経済発展といった複数の政策目的を同時に達成するため、自主的手法、規制的手法、経済的手法、情報的手法などあらゆる政策手法を総動員し、それらの特徴を活かしつつ、有機的に組み合わせるというポリシーミックスの考え方を活用する、その最適な在り方については、本計画の対策・施策の進捗状況を見ながら、速やかに総合的検討を行うと、こういうふうに記述されているところでございます。
 具体的にどのような手法で、どのような対策を講じていくのかということが下の表でございますけれども、自主的手法、規制的手法、情報的手法、経済的手法、それぞれについて、産業部門、エネルギー転換部門、業務部門、運輸部門、家庭部門で、どういう対策をとっていこうとしているのかということが書いてあるわけであります。
 例えば、産業部門では、自主的手法として、温対法、特に前回の国会で温対法が改正されまして、排出抑制等指針をつくっていくということが掲げられているわけでございますけれども、そういったものに従って、自主的に企業が取組んでいく。それから、自主行動計画、また排出量取引について、自主参加型排出量取引というものを進めてきておりますけれども、これも自主的な手法でございます。
 それから、カーボンオフセット、これは情報的手法にも位置付けることができようかと思いますけれども、一応、ここでは自主的手法として位置付けております。
 同様に、エネルギー転換部門、業務部門、運輸部門、家庭部門でも自主的手法として温対法、省エネ法、自主行動計画等々があるところでございます。
 それから、産業部門の規制的手法でございますけれども、省エネ法で中長期計画の策定・定期報告義務、それからトップランナー基準の達成義務といったようなことがございます。
 エネルギー転換部門ですと、RPS法がございますし、業務部門ですと、やはり省エネ法で中長期計画の策定等々がございます。大規模建築物の新改築時における省エネ措置の届出義務といったようなこともございます。
 また、運輸部門でも、省エネ法で中長期計画の策定等のほか、自動車等のトップランナー基準達成義務、また道路運送車両法といったものもございます。
 情報的手法のほうでは、産業部門では、算定報告公表制度といったものが温対法でございますし、また、これは排出抑制指針の中に一部含まれますけれども、COの排出量の見える化というものもございます。
 エネルギー転換部門、業務部門、運輸部門も同様でございます。
 家庭部門については、これらに加えまして、省エネ法で一般消費者への情報提供の努力義務というものもございますし、また国民運動といったこともあるわけでございます。
 そして、一番右のほうでございますけれども、経済的手法として、排出量取引制度、環境税、税制措置、補助金、低利融資と掲げられておりますけれども、このうち、税制措置、補助金、低利融資、これらについては、既に様々な措置が講じられているところでございます。
 排出量取引制度につきましては、まず自主参加型の排出量取引については、一番左の自主的手法のところにあるわけでございますが、それ以外につきましては、どのように仕組んでいくかというところがございますが、今10月21日から試行が始められているというところでございます。後ほど担当室長から詳しくご説明を申し上げます。
 環境税については、まさにここでご議論をいただいているということでございます。
 こういった様々な施策と申しましょうか、手法は、それぞれ関係があるわけでございまして、例えばカーボンセットは見える化と関係をしているとか、あるいはトップランナー基準は国民運動で、よりよい製品を買っていただくという運動をしていくというところで関係があるとか、相互に様々な関係があるわけでございますけれども、その有機的な組み合わせを最適にしていくということについては、この目達計画の対策、施策の進捗状況を見ながら、速やかに検討を行うというふうにされているというところでございます。
 それでは、引き続いて、資料2を使って、排出量取引制度について、ご説明をいたします。

○市場メカニズム室長 市場メカニズム室長の高橋でございます。
 資料2に基づきまして、10月21日から開始をしております排出量取引の国内統合市場の試行的実施について、ご報告をさせていただきます。
 排出量取引制度につきましては、今年の前半に総理の直属の懇談会を初め、環境省、経済産業省の検討会等で活発な議論が行われてまいりましたけれども、そういう議論も踏まえまして、6月に福田前総理が低炭素社会・日本というビジョンの中で、この排出量取引制度につきまして、いつまでも問題点の洗い出しに時間を費やすのではなくて、具体的なルールを提案すべきだということで、秋からできるだけ多くの業種企業の参加のもとにも、排出量取引の国内統合市場の試行的実施を開始するということを表明されたわけでございます。
 それを受けまして、7月29日に閣議決定されました低炭素社会づくり行動計画の中に、この試行というのは位置付けられました。
 総理の演説にもございましたけれども、この試行の実施に当たっては、ここにございますように、自主的な削減努力につながるような実効性のあるルール、マネーゲームの排除をしていく。それから、この試行によって得られた経験を活かしまして、排出量取引を本格導入する場合に必要となる条件、制度設計上の課題などを明らかにすると。技術・モノ作りが中心の日本の産業に合った制度のあり方を考え、また、国際的なルールづくりの場でも、リーダーシップを発揮していくと、こういうことを趣旨として試行実施するということになりました。
 10月まで、政府部内、内閣官房を中心に環境省、経済産業省がコアになりまして、加えて、国土交通省、農林水産省、金融庁、外務省というところが参加しました検討チームにおきまして、この試行のやり方について、議論してまいりました。10月21日の地球温暖化対策推進本部で決定されまして、同日から参加企業の募集を始めたところでございます。
 中身でございますけれども、2に概要とございます。これにつきましては、一番最後のポンチ絵で全体の構造をご説明をしたいと思います。
 参考資料1というのが最後についているかと思います。横長のポンチ絵でございます。ここに全体の姿が書いてございますが、今回の試行のまず一つ中核部分は、[1]試行排出量取引スキームという部分でございます。これにつきましては、各企業が事業所単位、企業単位、あるいはグループ企業単位というようなことを想定しておりますが、自主的に削減目標を設定をして、参加をしていただくと。その目標を達成するために、削減をするとともに、排出枠・クレジットの取引によって、この目標を達成することが可能であるという仕組みでございます。今回の目標の設定でございますけれども、今回は、あくまでも自主的なものである、また既に第一約束期間が始まりまして、産業界は基本的に自主行動計画に基づいていろいろ施策を進めているということで、自主行動計画と整合的な目標を今回設定をしていただこうと。ただ、自主行動計画は、基本的に業種単位で目標を定めておりますので、参加に当たっては、個別企業に目標をブレークダウンして参加をしていただくということでございます。したがいまして、自主行動計画にございますように、目標としては排出総量の場合もあれば、原単位の場合もございます。そこは、現状に応じて選択はできるということで、できるだけ幅広い企業が参加できるようにということで、今回はルールを設定しております。
 この目標の妥当性という議論がございますけれども、この左の吹き出しにございますけれども、自主行動計画と整合的な目標ということでございますが、妥当性については、政府で一定の審査を行い、またその結果については、関係審議会等で評価を行うということでございます。この審査の視点でございますけれども、自主行動計画の目標と整合をとった場合でも、業種によっては、例えば既に自主行動計画の目標を達成してしまっているというような場合に、そのままその目標で参加をされますと、何ら削減努力をしなくても、排出枠が売れてしまうと。安易に排出枠が売れてしまうということになりますので、少なくとも各企業の現状の排出量よりも緩くないような目標にしていただくとか、業種の目標に比べても、緩くない目標にしていただくというようなことで、その辺のチェックをした上で参加をしていただくということを考えてございます。
 また、この排出量の妥当性について、算定・報告、検証等が実施されることは重要でございます。特に、この場合、A社、B社ございますけれども、B社のように、余った排出枠を売るというような場合には、特にしっかりした第三者検証を受けていただくということにしてございます。
 それから、ちなみに、環境省のほうで実施してきております自主参加型の排出量取引制度、これにつきましても、基本的には自主的に目標を設定して、参加するということでございますので、この[1]の試行排出量取引スキームの一部として実施をしていきたいというふうに思っております。
 次に、もう一つのパーツとして、右側に国内クレジット、あるいは京都クレジットというのがございます。京都クレジットについては、既にもう現在CDMのクレジット等を企業が買って、自主行動計画の目標達成に使っておりますので、その部分については、これまでどおりでございます。新たなスキームとして、[2]の国内クレジットというものが今回新しく始められることになっております。これは、[1]に参加しているような大企業等が目標を設定していないような中小企業等、自主行動計画に参加していないような企業を想定しておりますけれども、そういう中小企業等に対して、技術・資金などを提供いたしまして、これまで対策の進んでいない中小企業等における排出削減を進めるということをした場合に、追加的に削減された部分を国内クレジットという形で認証いたしまして、これをこの[1]に参加している大企業等が目標達成に使えるという仕組みを新たにつくることにしてございます。
 これが今回の国内統合市場の全体像ということでございます。
 それで、資料の3ページ目に戻っていただきまして、2ページ目までのことを絵の中で説明いたしましたけれども、フォローアップというのがございます。試行でございますので、その状況を逐次評価をして、必要な見直し等をやっていくことが必要でございます。この試行の目的に照らして、どういう項目で評価をしていくかということが、3ページ目の上に挙げてございます。[1]でございますけれども、削減努力・技術開発につながるようなインセンティブ効果があったかどうか。それから、市場が適切に機能したのかと。当然、円滑な取引が行われる。あるいはそれによって、価格指標が出てくると、そういう機能が市場に期待されたわけでございますけれども、そういう機能が適正に働いたのかどうか。他方で、よく言われますマネーゲームというようなことが弊害は起こらなかったかどうか、そういうことを見ていくということでございます。
 3番目に、大企業同士の排出枠の取引、あるいは国内クレジットという新しい制度がございますので、そういうものに絡んで、クレジットの発行・管理、あるいはその目標の達成の確認システム、そういうものが円滑に機能したかどうかというようなことでございます。
 それから、今回の試行の参加者にとってのコストがどうであったか。取引のコスト、あるいは排出量のモニタリング、検証、こういうことについてのコストはどの程度かかったのかどうか。
 最後に、最初の趣旨にもございました国際的なルールづくりに貢献できる知見ということとしてどういうものが得られたのかと、こういう視点で、フォローアップ、評価をしていきたいと思っております。
 評価のスケジュールといたしましては、その下にございますように、現段階では、当面2段階のことを考えてございまして、まず[1]の中間レビューといたしまして、年明け早々、1月から3月の間に一度フォローアップをしたい。この時点では、申しおくれましたが、今回の募集としては、10月21日に始めましたけれども、とりあえず、2008年度から参加される企業については、12月中旬までに応募してくださいということをお願いしてございます。したがいまして、来年の年明けの時点では、一応、初年度の参加者がでそろってくるということで、その参加の状況、あるいは先ほど申しました各社の排出目標の設定がうまくいっているかどうか、こういうようなことについて、フォローアップをいたしまして、いろいろ初期段階の制度上の細かいふぐあいもあるかと思います。その辺を含めて、見直しをして、次の仕組みに反映をしていくということを考えております。
 それから、[2]のフォローアップ(第1回)とございますけれども、来年の秋ごろには、第1段階、2008年度に参加した企業については、来年の8月末ぐらいまでに2008年度の排出量が確定をいたしまして、実際にどれだけ排出枠が余ったかどうか、足りないかということがはっきりしてまいります。それで、取引も行われるということで、秋ぐらいまでには、それぞれ枠の取引を終えて、目標達成をしていくということでございますので、そのワンサイクル終わった段階で、一度きちんとしたフォローアップをしていきたいというふうに考えております。このときには、ちょうど京都議定書の目標達成計画の評価・見直しというものが行われておりますので、そういうものとも連携をして、この試行の中身だけではなくて、この排出量取引制度の位置付け等についても含めて評価が行われるんだろうというふうに思っております。
 この実施の体制でございますけれども、非常に幅広い業種の企業が参加をされることが期待をされております。一義的にそういう申し込みでございますとか、手続につきましては、所管省庁の関連部局が一義的には対応するということにしてございますけれども、この試行全体の円滑な運営という意味では、ここにございます運営事務局というのを設置しております。内閣官房、経済産業省、環境省がこの運営事務局ということで、いろいろな問い合わせへの対応も含めて、全体の円滑な運営ということを見ていきたいというふうに考えてございます。
 簡単ではございますが、概略は以上でございます。

○神野委員長 どうもありがとうございました。それでは、委員の皆様方からご議論をいただければと思います。
 天野委員、どうぞ。

○天野委員 まず、資料1について、お聞きしたいことがあります。
 ポリシーミックスというのは、こういうふうなたくさんな政策手法を組み合わせるということだけではなくて、一番上にも書いてありますように、最適なあり方と。この最適なあり方を何で評価するのかということがポリシーミックスの一つの非常に重要なポイントなんです。
 私の考えているところでは、環境効果に対して、どれだけ有効であるかという点が1つです。ですから、自主的手法、規制的手法、情報的手法、それぞれに環境に与える効果、特に今回ですと、排出ガスがどれぐらい有効に削減できるのかという効果、これが1つ。それからもう一つは、そういう手法を実施するために、どれだけのコストがかかるかと。このコストというのは2つありまして、政策を実施する政策実施主体にとってのコスト、それからもう一つは排出主体が負担するコスト、この両方があると思いますけれども、そういったコストがどれぐらい少なくて済むか。これをずっと見ていますけれども、これだけたくさんの政策手法がありますが、それぞれの環境効果であるとか、様々な費用、それをどうやってはかり出して、最適であるかどうかの判断をするのか。そのあたりはどうお考えなのか、私はちょっとわかりにくいので、ご説明いただければと思います。
 それから、もう一つだけ質問。
 参考資料の1を拝見しておりまして、自主参加型というふうに書いてありますが、自主参加型というのは、参加をするか、しないかということが主体の自由に任されているということだと思いますが、目標達成についても義務化するものと、自主的にそれを評価するものと2つに分かれると思うんです。ですから、参加の面で自主的か義務的か。それからもう一つは、目標達成に関して、義務的か、自主的か。例えば、アメリカの自主的な取組の中で、一たん目標を決めたら、それは完全に義務化されて、それを守らなければ、ペナルティーがかかるというふうな自主的な取組があるわけです。その辺がここではよくわからないんです。参加が自主的だというのはわかるんですけれども、目標達成まで自主的なのか、目標達成には義務があるのかと。そのあたりをご説明いただけたらと。

○温暖化対策課長 最初のほうは、私のほうからお答えをしたいと思います。
 目標達成計画に掲げられている様々な対策、ここにいろいろあるわけでございますが、現時点では、これらをすべて着実に実施して、やっと何とか目標が達成できると、6%の削減ができるということでございまして、その上で、今後、さらにまたいろいろな対策が出てくれば、どれとどれを組み合わせると、よりコストが低減化するとかといったような議論もあり得るかと思いますけれども、現時点では、とにかく、ありとあらゆる対策をコストにかかわりなく、とにかくやるんだと。それでやっと達成できると、こういう状況であるわけでございます。
 ご指摘のようなことは、中央環境審議会と産業構造審議会の合同審議会でも、一部議論がされたところでございまして、その過程で、ここに掲げられている対策は、どれぐらいコストがかかるんだと。コストを出してみろというようなお話がございました。私ども各省にお願いをして、コストを出していただくようにお願いをしたわけでございますけれども、出てきたものはごく一部でございまして、やはりコストを出すというのは非常に難しいと、困難があるというのが現状でございます。そういう中で、現時点では、繰り返しになりますけれども、ありとあらゆる対策を講じていくんだということになっていまして、最後の1行に書いてございます最適なあり方について、速やかに総合的検討を行うというのは、今後行っていく。どういうふうに、検討を行っていくかというところも含めて、今後考えていきたいというところでございます。

○市場メカニズム室長 天野先生の2つ目の質問でございますけれども、今回の試行につきましては、参加についても、もちろん自主的でございますし、できるだけ幅広い企業に参加をしていただくという観点も含めて、目標達成についても何かペナルティーがあるというようなことではございません。特段、法的な措置もしておりませんので、そういうペナルティーがあるということではございません。
 ただ、資料の5ページ目に、今後の引き続き議論が必要な事項というのは4ページ目から書いてございます。いずれにしても、今回の定めました試行のルールにつきましても、まだまだ詰めるべき点も残っておりますし、幾つか今後検討をしていく課題があるかと思っておりまして、この5ページ目の3にございますけれども、3の試行の状況を見ながら決定していくという事項の2番目に不適切な行為、過剰売却とか虚偽報告、こういうことがあった場合の対応のあり方、これについては、今後引き続き検討をしていく必要があるという認識でございます。ただ、基本的には、何かペナルティーがあるというような制度ではないということでご理解をいただければと思います。

○天野委員 私、お二人のお答え、どちらも満足しておりません。といいますのは、1つは、できる限り、最大限の努力をしてやるとおっしゃるんですけれども、最大限の努力を払ったというのが測れなければ、できたところまでしかやらないと、こういうことになっちゃうわけです。ですから、ここに羅列してありますけれども、それぞれやっていると。だけど、これ以上はどうしてもやりたくてもできないという状態までやりますと言えば、これはもう明らかにできるところまでしかしないということと、同じ形になると思うんです。ですから、ある意味で、強度、それぞれの手法がどれぐらいの強度で実施されるかということをどこかできちんと評価しないと。ただ、並んでいるだけでは本当に効果が出ないんじゃないかという気がいたします。
 それから、その後のほうのご説明でも、全部自主的で最後までいくんだということです。それだと、自主的な制度を最終目標にしているんであればそれでいいんですけれども、少しでもどちらかの方向、参加ないしは目標達成について、どちらかの面で義務的なものが入るようなシステムを念頭に置かれていらっしゃるんであれば、これ以上は評価のしようがないんじゃないか、こういうふうに思います。

○中里委員 コストにかかわりなくというのが、私は余り、ちょっとどうかなと思います。コストにかかわりなく国家が目的を達成しなきゃいけないことって確かにあると思うんですね。例えば人権の保護とか、男女平等とかというのは、ある程度、これはコストを無視してでも、何とかしないと、人間の尊厳にかかわることですから。二酸化炭素の問題もそれに近いようなところは当然ありますけれども、しかし、ここで経済的手法というのをなぜ持ち出してきたかというと、コストにかかわりなくじゃなくて、なるたけコストを削減しながら目的を達成していこうという、そういうことで、天野先生がご心配になっているのは、その意味で、私はとても理解できるということです。
 それが第1点ですが、その次はちょっと天野先生と違うんですが、破っていい約束なら破ってもいいんじゃないでしょうか。というのは、状況によりますから、例えば、私がどこか建物を買うということで手付を打ったと。でも、これは破っていいわけですよね、コストを払えば。手付を放棄すれば。何でもそうですけれども、どうしても、これに縛られて、地獄まで突っ走るというのは、あまり賢いやり方じゃありませんから、状況によるでしょうし、ほかの道連れ度合いがあまりにひどい場合には、目的を放棄するということも一つの手じゃないかと。やれと言っているわけじゃなくて、そういう場合だって、この危機的状況の中であり得るかもしれないということを、これだけ景気が悪くなれば、あまりCOは増えないでしょうけれども、そういうことだと思いますから、もし達成できなかったときに、どんな制裁があるかということ。そのときにコストがどうなるかということも含めて、クールに考えるということが重要だと思います。

○神野委員長 いいですかね、ここで事務局のほうからコメントいただければ。

○温暖化対策課長 コストにかかわりなくというのは誤解を生じたかと思いますけれども、それは幾ら高くても、できるものは全部やるんだと、そういう趣旨で申し上げたわけではもちろんなくて、政府の審議会で、いろいろな対策を見ていくときに、その審議会レベルでコストについては検討が行うだけの情報がなかったということでございまして、審議会にお出しいただく対策、各主体が講じる、あるいは各役所が講じる、そういった対策、それについては、それぞれの主体において、当然、コストも考慮に入れた上で、できるか、できないかというのは判断をして、これはできますといって、審議会にお出しいただいたということでございますから、コストについての検討というのは、各主体において、当然なされているわけだと思います。ただ、それが、どういうふうに行われたのかと。コストがどれぐらい考慮されたのかというところは、つまびらかになっていない。それはお出しいただこうとしたわけですけれども、そこはなかなか難しいというところが出てこなかったということでございまして、コストを全く無視しているというわけではないわけですが、その検討が十分に行われたのかと。審議会レベルで行われたのかというと、そういうことはできなかったと、こういうことでございます。
 それから、環境効果に対して、どれだけ有効であるかというようなお話が最初、天野先生からございましたけれども、それについては、それぞれの対策について、どれだけCOを削減する効果があるのかということは、一つ一つ調べて、その上で、それらを総合計して、やっと目標が達成できるというようなことになったわけです。それぞれ出していただいた対策というのは、それぞれの主体ができると言っているわけでありますから、できると言っている対策をあわせれば6%削減は達成できるわけでありますから、その約束を守らないというようなことを言い出すかどうかという議論にはならないわけであります。

○天野委員 6%ですね、それ以上はいかないんですね。

○温暖化対策課長 正確に言えば、今目標達成計画に掲げてある対策をすべて着実に講ずれば、6%をやや上回る削減が見込まれるという状況でございますが、ただ、それはいろいろな過程を経ておりますので、経済成長率等々、変動要因がありますので、6.何%、正確に申し上げることはできないと思います。

○市場メカニズム室長 天野先生のご指摘でございますが、当然、仮に将来、本格導入をする場合には、今年5月に発表した中間まとめがございましたけれども、当然、何らかの遵守を担保する措置というのは必要になってくるかと思います。ただ、今回については、できるだけ幅広い参加をいただく、また法的な準備もない段階でやりますので、そこについては、何らかのペナルティーを設けるということはできないと思っています。ただ、適切な試行が行われるように、当然、ちょっとご説明しましたような審議会等によるフォローアップも含めて、きちんとフォローアップはしていきたいと思っております。

○諸富委員 試行的実施については、よくぞ、ここまで省庁間で折衝もされて、ルールをつくるのも大変だったと思います。よくここまで来たなというふうに思いますけれども、日本独自のいい面が一方でありながら、他方で、国際的に見て、きっちりとしたキャップ・アンド・トレードから見ると、かなり乖離した制度でもある。そこが、いろいろ欠陥をもたらしてくるであろうことも予見できるわけでして、そういう意味では、フォローアップされるということですので、しっかりと長所とともに、しかし問題点をしっかり明らかにして、そして、ぜひ情報も交換していただいて、アカデミックな世界でも、これをきちんと分析をして、議論できるようにぜひしていただきたいなということと、それから、恐らく来年末に予想される2013年以降の国際枠組みの姿が明らかになってくると、日本の国別削減目標とか、そして中期目標の策定というものも進んでいくでしょうし、それからフォローアップの結果も出てくるということで、来年末から、あるいは再来年初めぐらいにかけて、非常にいいタイミングで国内の対策を新たに2013年以降どうするかという議論をするタイミングが来るかと思いますので、そのときに、本格実施ということへ向けて、議論の準備をぜひ始めていただきたいというふうに思います。試行的実施は、本格実施を前提にしないということで進んでいるわけですけれども、前提が変わる可能性もありますし、ぜひそれに備えて、議論を進めていただきたいというふうに思います。その中で、税とのポリシーミックスも含めて議論を進めることは重要だと思います。
 以上です。

○神野委員長 横山先生、前回も既存税制の炭素税化と同時に、ポリシーミックスとの関連を指摘されていらっしゃいますけれども、何か具体的にもう少し踏み込んで、ご指摘いただければと思いますが。

○横山委員 その段階にはまだなっていないんじゃないかと。アイデアはありますけれども、一歩一歩ということで言うと、今のところ、こうした試行を注視して、日本型と言われているものの限界、今諸富さんがおっしゃられたように限界と、それからよさの両面があると思うので、背中合わせですので、その辺のところをやはりしっかりと勉強していくという段階なのかなという気はいたします。

○神野委員長 それでは、2番目のほうの議題でございますが、原油価格の高騰等の状況下での課税の効果について、まず、増井委員から資料3について、ご説明していただきたいと思いますので。20分程度でお願いします。

○増井委員 それでは、資料3に基づきまして、紹介させていただきます。
 原油高におけるというふうな話なんですけれども、むしろ、私のほうは、昨年度、環境省のほうで出されました環境税の案、資料のほうにも書いてありますけれども、炭素トン当たり2,400円というものを実際導入して、それを財源として、いろいろな温暖化対策に活用するというふうな場合に、どういうような効果、特にCO排出量の削減、あるいは経済的なところにどういうふうな影響が出てくるのかというふうなことを評価した、その結果を今回ご報告させていただくということです。
 また、そこにも書いてありますけれども、今年の5月に総合資源エネルギー調査会需給部会のほうで、長期エネルギー需給見通しと呼ばれるものが改定されて、報告されております。そこでも様々な対策というふうなものが提示されているわけなんですけれども、具体的にそういうふうな提示されている対策に対して、得られた財源を活用していくと、経済的に支援をして、普及を図るというふうなことを対象として分析を行っております。
 その結果から、まず先に申し上げますと、2009年から実際にこういう環境税を導入して、さらにその財源、税収を温暖化対策に使うというふうなことを行いますと、2009年から2012年まで、第一約束期間の間、2008年は除いていますけれども、その間に平均して510万トンCOの二酸化炭素が削減されるということで、2020年、およそ10年後なんですけれども、その効果が10倍程度になるというような結果になっております。これは、税金の使われる税収が蓄積されていて、対策もキャパシティーもふえていくということで、10年後には、初年度といいますか、第一約束期間にはさほど大きな効果は見られないということなんですけれども、年がたつにつれて、その効果というのは大きくなってくるというような結果になっております。また、GDPへの影響というものは、課税を行わない場合に対して、つまり何ら対策を行わない場合、それに対して、2009年から2012年までの平均で0.055%で、それが2020年には0.035%というふうに、経済的な影響というのは、だんだんと軽微して、小さくなっていくというような結果になっております。これは、長期的に省エネルギーの効果というふうなものと、エネルギーの値段が上がっていくというような、そういうふうな影響がミックスされて、たとえ初年度、短期的にはコストがかかるかもしれないけれども、長期的には徐々にコストというのは緩和されていくというような結果になっております。
 今ざっと結果の概要を紹介させていただきましたけれども、この試算に用いましたモデルと前提について、若干補足といいましょうか、説明をさせていただきます。
 従来、この検討会におきましても、環境税の効果等、紹介させていただきましたけれども、これまでの試算では、主に技術選択型といいますか、技術を積み上げて評価するボトムアップタイプのモデル、我々はAIM/Enduseというふうに名前をつけているんですけれども、そのモデルを活用して、実際に温暖化対策税をこれだけ導入すれば、COの削減量がこれだけになるというふうなことを評価してまいりました。
 また、それとともに、そういうような状況下で経済的な影響がどれぐらいになるのかというふうなことは、応用一般均衡型の経済モデルを活用して、あわせて分析を行ってきました。
 今回、先ほども申し上げました長期エネルギー需給見通しとの整合性を図るということで、それをベースに、まずそれを再現するというふうなことを初めに行いまして、それに対しまして、税を課す。さらには、その税収を活用するというふうなことを行っておりますので、今回の試算では、技術選択型のモデルというふうなものは使っておりません。その辺、まず最初にお断りしておきたいと思います。
 その理由なんですけれども、先ほども申し上げましたように、AIM/Enduseモデルというのは費用最小化という最適なモデル、最適型のモデルですので、今回のように、あらかじめ対策のメニューが決まっている場合には、最適化というふうなものが必ずしも行われないということで、結果的に最適化と同じような答えになっている可能性はあるんですけれども、今回は、そういう最適化のモデルは使わずに、経済モデルのほうだけを使っているということです。
 また、本来ですと、2,400円という課税をしますと、そのエネルギーの上昇に応じまして、エネルギー需要の削減というふうなものも当然のことながら起こってくるわけなんですけれども、今回、技術選択型のモデルを使っていないということで、経済モデルを回す際におきましても、直接的な価格効果の部分というのは評価しておりません。この点につきましては、後ほど天野先生のほうからご説明といいましょうか、価格効果の影響につきましては、天野先生のほうから、ご説明があるかと思いますので、その部分は、天野先生にお譲りしたいというふうに思っております。ですから、この部分は、私のほうからの報告につきましては、税収の財源的な効果というふうなところのみを対象といたしているということをまずあらかじめご了解いただきたいというふうに思っております。
 現在の経済的な状況といいますか、原油高が8月あたりにピークを迎え、また急に下がっているですとか、ここ数カ月株価が急に下落して、実態経済に影響をもたらすのではないかということで、非常に経済活動そのものの見通しというふうなものが非常に難しいわけなんですけれども、今回の試算におきましては、今年の1月に経済財政諮問会議に提出されました資料ですとか、あるいは今年7月に内閣府が試算されました経済動向の見通し、こういうふうなものを参考に、また何度も繰り返しになりますけれども、長期エネルギー需給見通しとの整合性を図るということで、2020年までは長期エネルギー需給見通しの想定されている経済成長率を想定するということで、この辺、若干、現状と乖離があるかもしれませんけれども、長期的な分析、可能性の一つであるということで、ご理解いただければと思います。
 次に、2ページ目のほうに移っていただきまして、原油価格、これも先ほど申し上げましたとおり、非常に現在大きく振れているところではあるんですけれども、こちらも基本的には長期エネルギー需給見通しで想定されているものを使っております。ただ、長期エネルギー需給見通しでは、特定の年次、例えば2020年ですとかいう、そういう特定の年次だけしか評価されておりません。具体的な情報というのは提示されておりませんので、今回の試算におきましては、図1のところにありますアメリカのEnergy Information Administrationという機関、これはアメリカのDOE、エネルギー省の一部なんですけれども、そこが報告しておりますアウトルック、将来見通しで使われている原油価格の想定、ここでもローケース、リファレンスケース、ハイケースと3つあるんですけれども、そのうちのリファレンスケースという図1の三角で示しているような経路、この図は2030年までですけれども、そういったような原油価格の想定というふうなものを行っております。
 結果的に、この想定というのは、長期エネルギー需給見通しで想定されているものと、ほぼ同様のものであるというふうなことが言えるかと思います。
 こういう前提条件のもとで、さらに長期エネルギー需給見通しの努力継続ケースという、これも幾つかケースがあるんですけれども、そのうちの中位的な推移を示す努力継続ケースというふうなものをできる限り再現するように、各部門のエネルギーの効率改善というふうなパラメーターを調整いたしております。
 ですから、後ほどリファレンスケースの結果につきましても紹介をいたしますけれども、これはあくまで長期エネルギー需給見通しの前提を再現した場合の結果であるということで、また別の想定、その努力継続ケース以上にさらに努力を行うというふうな場合には、また違った結果が出てくるということはあり得ますので、その点はご了解いただければというふうに思っております。
 環境税の想定につきましては、炭素トン当たり2,400円の課税を2009年から、来年度より導入すると。その税収に見合った範囲内で温暖化対策を行うと。その温暖化対策のメニューとしましては、3ページ目の表2に書いてありますような各技術、乗用車、運輸部門から、家庭部門、業務部門、さらには産業部門と、いろいろ対策があるわけなんですけれども、そのうち、長期エネルギー需給見通しで示されているような対策技術、これらを対象に幾つか価格の補助というふうなものを行っております。
 その補助の仕方なんですけれども、これらすべて、既存の従来型の技術と、その経済競争力を高めるために、必要な財源というのは十分ではありませんので、その価格差の一部、例えば初期投資の増加分の半分ですとか、あるいは実際に投資回収年数というふうなものを想定いたしまして、その増加分に対して、一定の支援を行うというようなことを行っております。
 実際に、どういうような支援策を行ったのかということに関しましては、10ページ目、11ページ目の付録2のところに長期的エネルギー需給見通しにおけるメニューと、それに対応するモデルで想定した対策技術、また経済的な支援の方法というふうなことを明記いたしております。もちろん、これもあくまで想定ですので、こういう対策の導入の量が変わってきますと、当然結果として変わってくるわけなんですけれども、ここでもそういう対策を導入したらというようなことで、試算をしてみたというふうにご理解いただければと思います。
 今回、こういう対策技術、一定の基準に基づきまして、対策技術というふうなものを想定すると。また、こういうふうなものを導入するに当たっての追加費用、実際に政府からこれだけの支援が得られる。また足りない部分につきましては、それぞれの部門が各自負担するというような想定にしておりますけれども、その負担分というのが幾らなのか。また、そういう対策技術を導入することによって、具体的にエネルギーの効率改善がどれだけ進むのかという、そういうふうな情報を経済モデルのほうに持ち込みまして、実際に計算をいたしております。計算期間は2000年の産業連関表をベンチマークとして再現しておりまして、そこから1年置きに、2020年まで計算をいたしております。
 2005年あたりまでは、様々な統計データがございますので、その統計データと突き合わせて、ほぼこれまでの活動というふうなものを再現しているというふうなことは確認をいたしております。
 結果のほうは、もう一度繰り返しになりますけれども、4ページ目のところに示してあります。昨年度の環境省の環境税の提案におきましても、軽減措置というふうなものが幾つか明記されておりますので、その軽減措置も踏まえた試算というふうなものもあわせて行っております。
 表3の中の、BaUケースというのが成り行きケースでございまして、温暖化対策税を導入しない場合、この場合、2009年から2012年までの間には、1990年比、COの排出量を11%増加すると。これは必ずこうなるというのではなくて、何度もいいますけれども、見通しを再現したものであるということで、こういうふうな結果になっていると。それに対して、2020年につきましては、いろいろ努力が継続されているということで、ややCOの排出量が減少すると。それでも基準年であります90年と比べると増加傾向、また増加しているというような結果になっております。
 これに温暖化対策税、環境税2,400円というような税を課しますと、COの排出量がどうなるのかというふうなことが(1)の[2]のところに書いてあります。
 BaUケース比でいきますと、その軽減措置がない場合には、2009年から12年までは510万トンCOの削減が達成できると。2020年にはおよそ10倍の5,000万トンにCOの削減量が拡大すると。
 一方、軽減措置を行ってまいりますと、その分、税収が減ると。税収が減って、その分、対策の導入量が減るというような、そういう前提を置いておりますので、CO削減効果というのは若干少なくなってきております。税収5,200億円の軽減措置ケースAの場合には420万トンCO、税収3,600億円の最も多く軽減した場合には370万トンCOの削減になっていると。2020年におきましても、軽減措置がない場合と比べると、効果というのはやや下がってきていると。これは税収が減るということで、温暖化対策に回るお金が減ってしまうというようなことで、こういう結果になっております。
 一方、GDPのほうにつきましては、BaUケース比、軽減措置がない場合ですけれども、BaU比で0.055%、それが2020年になりますと、0.035%というふうにマイナス分が相殺されてくるという結果になっております。このあたりも、実は将来的なエネルギーの価格の動向によって、大きく変わってくるわけなんですけれども、今回の想定ではこういうふうな結果になっているということです。
 一方、軽減措置を行いますと、その分、COの排出量の削減というのは減る、より少なくなってしまうわけなんですけれども、経済的な影響というようなものも若干小さくなってくるということで、そのあたりが軽減措置の目的であろうかというふうに思っております。
 今回、財源的な効果のみを評価しておりますので、ここでは、価格効果というふうなもの、直接的なエネルギーの消費量の削減というふうなことは、評価しておりません。ですから、これにそういう価格的な効果というふうなものが加わりますと、さらにCOの排出量の削減というのは、幾らか上乗せされるのではないかというふうに思っております。その点は、天野先生の計算結果等を踏まえて、あわせてご確認いただければなというふうに思っております。
 資料のほうは、どういうふうなモデルを使ったのか。これも、これまでの資料の繰り返しになりますけれども、モデルの概要を6ページ目以降、付録1として示しております。
 先ほども申し上げましたように、付録2といたしまして、どういうふうな技術をどういう基準で設定したのかという、その内容も書いておりますので、あわせてご参照いただければと思います。
 以上です。

○神野委員長 どうもありがとうございました。
 それでは、引き続きまして、天野委員から資料4の説明をお願いしたいと思いますので、これも20分程度でお願いいたします。

○天野委員 私のほうは、前回でしたか、前々回でしたか、エネルギー需要の価格弾力性の推計をしまして、その情報をもとにして、炭素税の価格の効果というものは分析できますので、増井さんのお話と、補完的な仕事ができるかなと思いまして、今回は価格効果と、それから税収効果と書いてありますが、これはむしろ増井さんのほうの仕事で出てくる効果、そういうものに対して、片や価格効果というのがあって、トータルの効果はこの両方の合計になりますというふうなお話をさせていただきます。
 最初の部分は、これは炭素の排出に対する価格づけというのが始まれば、当然、それがインセンティブになって、排出削減が進むというわけですけれども、価格に与える与え方が2つありまして、排出に課税をするということと、排出を削減したことに対して補助金を与えるということで、経済学ではどちらも対象的に考えるような施策の仕方がとれるというふうに思います。もちろん、普通は補助金というのは、そういう経済学者が考えているようなものではありませんので、対象ではないんですけれども、そういうふうな使い方がやり方によってはできると。そして、今回は、税収効果と私が呼んでおりますのは、この補助金を使うことによって、削減のインセンティブを与えるというふうな性格を持っておりますので、価格効果と税収効果というふうな言い方をした場合には、課税と補助金を適切に組み合わせて効率的な削減をする、しかも量的な効果をかなり大きなものにすることができるというようなあたりをお話しさせていただきたいと思います。
 その炭素税がエネルギーの需要を通して、炭素の排出に影響するわけですけれども、炭素税がエネルギーの価格にどういう影響を及ぼすかというのは、これはかなり細かい作業をしないとなかなか数量的に把握できないんです。エネルギーというのは、それぞれ違った炭素含有量を持っておりますし、私たちがやっておりましたのは、部門とか、企業とかいいましても、様々なエネルギーの種類を一緒くたに使っているわけですから、単にエネルギーの価格といっても、その中に様々な炭素含有量を持ったものが入っているということですので、厳密に言えば、一つ一つのエネルギー種を選び出して、その炭素含有量に応じて、炭素税が価格にどんな影響を与えるかということまで、きちんと把握をした上で分析をしなきゃいけないということですが、2ページをお開きいただきますと、ここは非常に荒っぽいやり方ですけれども、表の1というのがありまして、これはそれぞれの産業部門等がどういった種類のエネルギーを使っていて、どれぐらいの構成比で使っているかという構成比を書いたものです。
 この中で、例えば石炭なんかは、炭素含有量が非常に多いとかというのがわかりますけれども、あるいは都市ガスというのは小さいというのはわかりますが、電力というと、これは石炭火力もありますし、石油火力もありますし、原子力もあるというので、どれぐらいの炭素含有量があるかというのは直感的にはわかりにくいわけですね。しかし、こういうふうなデータを使う以上は、それぞれのエネルギー種類に応じた炭素含有量に応じて価格が影響をされるというのは違いますので、そういうことをきちんと把握した上で分析をしないと、簡単にすべてのものに対して同じようなエネルギー価格を適用してしまいますと、ちゃんとした反応が把握できないということになります。ここでは、ですから、私は荒っぽいですけれども、そういうふうな差を見られるような形で価格構成をしております。
 3ページをお開きいただきますと、同じような表がありますが、これはそれぞれの産業部門が使っているエネルギーの価格の部分です。例えば産業部門ですと石炭というのがありますが、石炭のエネルギーの価格部分というのは、どれだけになっているかというのが下に書いてあります。その石炭については、それに対して、1トン1万円の炭素税がかかったときに、税負担分は幾らになるかというのが2行目に書いてあります。同じようにして、石油の場合には、エネルギーの価格はこれだけ。その中に含まれている炭素税を負担する税額はこれだけというのはありますので、両者、ずっと加重平均をとって合計いたしますと、右から2つ目の欄で、価格の大きさと税負担分が出てきます。ですから、1トン1万円というふうな炭素税がかかりますと、例えば産業部門では、エネルギー価格が課税によって11.8%高騰する。この割合は、それぞれの部門によって、もちろんエネルギーの種類が違いますので、家庭部門では9.7と割合少ないですね。特に、旅客部門というのは、5.8%しか上がらない。こういう形ですので、同じような1トン1万円という炭素税でも、部門に与える影響というのは相当違うということがわかります。この表の3、その下にありますが、これは別に分析に使うんではなくて、注にありますエネルギー研究所のデータを割り算をして、それぞれの部門の炭素排出係数がどう動いているか。これが非常に上がったり、下がったり、特徴的な動きをしますと、一々分析をしなきゃいけませんが、業務部門は、少しそういう傾向があるんですけれども、全般的に見て、かなりの長期間にわたって、それほど大きな変動がなかったということですので、大まかな分析をする場合には、エネルギー需要の変動率と炭素排出率とが大体合致するというふうな考え方でいいんじゃないかというだけの根拠として書いたものです。
 先ほど増井委員のほうから、将来の期間にわたるいろいろな推計がされましたけれども、前回の帰りに増井委員からそういうことをちらっとお話を伺っておりまして、それに見合った価格面を含めた分析を私のほうで分業で持つというふうな相談ができましたので、そのときに伺いました情報をもとにして、なるべく増井さんのおやりになっているようなところに近い形で将来期間を想定するというふうにしております。
 ですから、炭素税は、2009年に負荷されると。それから、私もモデルというほど大げさではありませんが、使っております方程式の中には、エネルギー需要というのは、実質GNPもしくは鉱工業生産という活動水準を決める変数と、それからエネルギーの相対価格、この相対価格の計算が先ほどのややこしい過剰平均をするわけですが、この2つの要因で専らエネルギーの需要量が決まるというふうな、かなり荒っぽいんですけれども、価格の影響がはっきり把握しやすい形でとっております。
 先ほどのAIMのグループのほうでは、2020年までということですが、外挿値が先ほどの米国のエネルギー省のエネルギー価格を2030年まで出してくれておりますので、ここはえいやという形で2030年まで延ばしております。その理由は、私の推計した価格効果というのは、かなり長い期間、12年とか14年とか続きますので、そこまで見たいということになっているだけであります。
 分析の効果は、5ページの表4というところに出ております。最初に説明しましたような価格に与える炭素税への影響というのをある程度細かく分けて、そういう炭素税の影響が需要関数を通して排出量に影響する。排出量ではありません、ここはエネルギー最終消費量に影響するのは変化率ではかっております。この変化率と申しますのは、BAUといいますか、何もしなかった場合のエネルギー消費量に比べて、炭素1トン当たり1万円の税がかかったときの変化率、もちろんマイナスですけれども、先ほどの増井さんのお話と同じように、当初はそんなに大きな影響がありません。特に1年目というのは非常に小さい影響しか出ませんが、5年目あたりまでいきますと、半分近いような影響が出てくる。10年あたりまでいきますと、相当本格的な影響が出まして、2024年、まだ最終までいっておりませんけれども、2025年までいきますと、このあたりでずっと安定すると。ですから、この最後の2行あたりが、本当の意味の長期の影響ということで、全部合わせますと4%ぐらいの削減ができる。この1トン1万円というのは、これは例示として使ったものですけれども、例えばEUでは、排出取引制度がありまして、今二酸化炭素の値段がついているわけですね。その二酸化炭素の値段を炭素で換算しますと、大体トン3,000円ぐらいなんですね。二酸化炭素で3,000円ぐらいですね。この炭素1トン当たり1万円というのを、今度は二酸化炭素を1トン当たりに直しますと、大体2,700円ぐらい。ですから、こちらのほうが少し今のEUの値段よりは低めのプライスになっているわけですけれども、それでも長期的に見れば、4%ぐらいの削減ができるというわけですから、かなりの価格効果があるということになります。
 こういうふうなことが、炭素の価格化が進みますと、従来はエネルギーを使うときに、エネルギーの価格を見て選択をしていたわけですね。ですから、石油よりは石炭のほうが安ければ石炭を使うほうが経済的な効率は高いということですが、炭素の価格づけが起こりますと、炭素の含有量の価格でエネルギー間の競争が追加される。ですから、エネルギーの値段プラス炭素負担の比較という形で、省炭素化が進むことになるわけですから、そういう意味では、単純な価格競争だけの場合よりは、地球に優しい選択が経済的に行えるようなことになって、その影響が今のような形であらわれるということがおわかりいただけるかと思います。
 次に、この後半部分というのは、先ほど来、委員がおっしゃっておりますように、環境省が従来から想定しております2,400円、これは炭素トン当たり2,400円。二酸化炭素に直しますとますます低くて、650円ぐらいしかならないんですけれども、そういう非常に低い率の炭素税を掛けると。これは価格効果をねらうというよりは、むしろそれで上がる税収を使って、削減助成をするという、そちらに主眼がありますので、そういう炭素税になっているわけですけれども、この炭素税も当然価格効果を持っているはずですから、その価格効果を加味すると、税収を使った税収効果にプラスどれぐらいの追加があるのかというふうなあたりをもう少し計算してみましたのが、次の6ページの表の5であります。
 炭素トン当たり2,400円の炭素税で、価格効果だけを見て、エネルギーの最終消費を何%変化させるかと。ごらんのとおり、産業部門とそれから業務部門、こちらは比較的炭素の多いエネルギーを使っているというようなことがありますので、影響が大きく出ていますけれども、それでも長期の影響として1%減らすだけと。しかし、1%減らすといっても、全体で4%ぐらいしか減らないというわけですから、4%減る分にさらに1%が上乗せされて、5%になるというのは結構そういう意味では低い税率ですけれども、価格効果もあることはあるということがご理解いただけるかと思います。
 実はこういう、一種のポリシーミックスになるわけですけれども、環境省がこういった経済的手法の検討を始めた当初から、AIMグループは低い税率の炭素税で税収を上手に効率的に使って効果を上げるという方法をずっと主張しているわけですね。この考え方は、その後といいますか、実はここには2004年と2005年しか書いてありませんけれども、もっと前からペーパーにして外国にも報告されております。ですから、そういう意味では、こういったたぐいのポリシーミックスというのは、AIMグループが世界に先駆けて出された話だと思いますけれども、実は最近、こういう組み合わせ、環境税、炭素税プラス炭素削減補助金、この2つ、これはある意味でインプット、要するにバッズに課税してグッズに補助金を与えるという組み合わせですね。その2つの価格効果を組み合わせた手法を一塊にして、2パートインストゥルメントという2成分手法というふうな言い方で、学界でも理論化されております。そういう意味では、根拠も非常にはっきりしているというわけですが、実際に使われている具体的な例としては、ご承知のとおり英国がClimate change Levy、気候変更税と訳していますけれども、ひょっとしたら税ではないとおっしゃられるかもしれませんが、Climate change Levyを入れたときに、同時に政府がオークションですね、逆さまのオークションなんですが、排出の削減を政府が買い付けるという、買い付け型のオークションで補助金を配るというやり方を一緒にやっておりますので、そういう意味では、税収効果と価格効果の両方をねらっているというのが実際に大規模に行われたという例もあるわけです。
 それから、これはちょっと追加ですけれども、ここには書いておりませんけれども、IPCCが第4次評価報告書を出しまして、その中で、おもしろいことを言っているんですね。それが、炭素税と合わせてから補助金と両方、これは炭素税だけではなくて、炭素税の前には税収使う、それから排出取引規制の場合には、これはオークションでアローワンスを配るときにオークションの収入がありますので、その収入を同様な形で使う、こういうふうな取組をしたほうが、はるかに低いコストで排出削減が実施できるということが非常に興味深いというようなことを書いております。これも、ですからIPCCのような、一種の科学者、政策当局の集団がそういうことを認知したということになろうかと思いますので、このやり方は、ある意味で日本発の方法ですので、私は価格効果と税収効果と、この2つを合わせて効果的な政策手法を組み上げていっていただけたらというふうに思っているわけであります。
 ただ、補助金の使い方というのは大変工夫が要りまして、補助金というのは漏らしてしまったらそれで終わりというような形の補助金では困りますので、ここで考えているような炭素税に組み合わせされてしかるべき補助金というのは、どういうものかというと、それは低費用での排出削減のところにまずその補助金がいくというあたりを工夫した給付をしないと、期待されているようなことができないということですので、そのあたりの政策策定の妙案というのを、再び日本発でおつくりいただけたらというふうに期待しています。
 以上です。

○神野委員長 どうもありがとうございました。
 では、増井委員、天野委員にご発表いただきました原油価格が高騰のもとでの経済状況にかかわる課税の効果について、ご質問、ご意見をちょうだいしたいと思いますが、いかがでございましょうか。
 口火を、諸富委員から。

○諸富委員 お二人の先生方の報告、大変示唆に富むわかりやすい報告だったと思います。それで大変勉強になったんですが、まず、増井先生のご報告で2点ほど質問があるんですけれども、資料の4ページですね、表3ということで、課税とそれによる対策技術投入の効果により生じる影響ですね。この表をちょっと見させていただきますと、[2]というのが軽減措置なしで均一税率を全セクターに課した場合ですね。[3]というのが、軽減措置Aですから、いわゆる大口排出者に軽減したと。[4]は多分分配影響を考えて、ガソリン、軽油、ジェット燃料とすると、恐らく運輸部門に対する軽減と考えられるわけですね。
 それで、税収をちょっと比較しますと、[2]の7,800億円に対して、[3]だと税収が手計算だと66%に減少するんですね、[4]だと46%に減少しているんですが、排出削減効果で見ると、[2]の場合に比べて[3]は8割程度で進んでいるんですね。[4]だと7割になるんですね。つまり、税収の落ち込みほど削減効果が落ち込まないんですが、これはなぜなのかということが質問なんですね。
 つまり、税収が割り引かれるということは、削減効果が出ないというふうにも見られるんですが、意外に削減効果が落ちてないのはなぜですかと。これは支出効果なのかとも思いますが、その点をお聞かせくださいということと、それから5ページに入りますと、表がこれは4ページの下から続いていますね。2番でGDPに与える影響ですね。これも非常に興味深いんですが、まず減少分は非常に軽微であるということが1つですね。しかし、逆に私はGDPがなぜ下がっているのかなと。上がるケースもあり得るんじゃないのかなと。税収が、支出が例えば環境上非常によい機器とか、いろいろなものを購入するものに使われていくとか、トップランナー型のものに対して補助が与えられていくとか、そういうことは想定されると思うんですが、そういった使われ方をしていくことによって、新しい需要創出が行われていって、環境産業だとか、エネルギー効率的なものをつくっている産業に対して、非常に大きな刺激を与える効果があらわれてくると思うんですが、そういう効果というのは算定されていないんでしょうか。例えば、そういうところで新しい産業が育っていくことで、逆にGDPが上昇していく、新しい雇用が生まれて、新しい産業が創出されるという。ヨーロッパでも、例えば社会保険料ですけれども、引き下げて税収を中立にやることによって、GDPはむしろ増えるという計算も行われたりしているんですが、増井先生の計測ではGDPがそれほど減らないということはよくわかったんですが、逆にふえるケースがあってもおかしくないと思うんですが、その点、2点目が私の質問です。
 以上です。

○神野委員長 よろしいですか。

○増井委員 まず1点目のご質問なんですけれども、ちょっとこの辺は実は部門の影響を細かく見てみないと正確にはお答えできないというところで、あまり計算が終わってから時間がたっていないということもあって、どういうふうな部門でどういうふうな影響が出てくるのかという、そこまできちんと把握できておりませんので、そこはすみません、申しわけないですけれども、宿題とさせていただければなというふうに思っております。
 2番目の点につきましては、想定次第では当然のことながらGDPにプラスの効果をもたらすというふうなこともあり得るかと思います。このモデルの特徴といたしまして、まず想定される経済成長率というのを与えてやりまして、それを達成するように投資というふうなものを決めていくと。今回、温暖化対策でコストがかかるというふうな場合には、その分投資が少し目張りするというそういう想定を置いております。ですから、どうしても温暖化対策をすると、そのGDPのほうにマイナスの影響というのが生じてくるという、これは必然的な想定ですので。
 逆に、そういう追加的な費用分をまたどこか別のところから持ってくるというふうなことをしますと、今諸富先生がご指摘いただきましたように、GDPが増加すると。実際に、これもこれまでの結果では、実際に温暖化対策の技術を供給する部門の活動というのはふえてくるというようなこと。今回の結果も、ちょっとまだきちんとは見ておりませんけれども、恐らくそういうふうなことが言えているかと思います。ですから、そういう結果も想定することはできるんですけれども、実際、そういう追加支出があったときに、どういうようなお金の使い方をするのかというのは、ある意味人の財布をこっちが勝手に決めているわけで、それも諸富先生がおっしゃるような考え方も1つの考え方であろうし、今回、私のほうで想定したやり方も1つのやり方であろうということで、いろいろ幅が出てくるかと思います。本来ですと、そういう幅もお示しするべきところではあるんですけれども、あまりケースをたくさんふやしても、非常にごちゃごちゃしてややこしいということがありますので、今回の試算のメッセージといたしましては、GDPの影響というのは極めて軽微であるということと、長期的に見れば、その影響というのはさらに低減していくんだということ、1つのメッセージとして出しておりますので、ご要望がありましたら、そういう別のケースについても追加で想定して、計算しておきたいなというふうに思っております。
 以上です。

○神野委員長 どうもありがとうございました。

○植田委員 お二人の委員の先生の大変わかりやすい報告を受けて勉強になったのですけれども、炭素税の経済影響という場合には、先ほど増井委員のお話の中にも出たのですけれども、産業部門全体というよりは、個別の産業部門間で影響が随分違うというのが、1つの重要な問題かと思います。増井先生のほうから、そこはまだ十分分析されておられないということなので、わかればということでもあるのですけれども、天野先生にお伺いしたいと思いましたのは、そのことと関連しまして、先ほどの2パーツインストゥルメント、つまり課税と補助金を組み合わせるという方式にするということにすると、産業部門別の影響について、何か違いがあるかということです。その点についてもし何か知見が得られているようでしたら、教えていただきたいと思います。
 以上です。

○天野委員 私が申し上げたのは、補助金の使い方の部分は私のモデルでは計算できませんので、これは増井さんのほうで出てきた効果をそのまま受け取って、それにプラスして、価格効果が加わると全体として4%程度のものが5%までいきますという程度の話ですので、私自身が補助金の分析をしたわけではありません。これはちょっと難しいなというふうには思います。

○植田委員 ということは、逆に言うと補助金の出し方をどうするかで影響が大きく変わる可能性があるのではないかという、そういう理解でよろしいですか。

○天野委員 補助金の給付の仕方が非常に重要であると。

○植田委員 ありがとうございました。

○横山委員 今の植田委員のコメントにも関連するんですけれども、この2成分手法というのが、AIMグループ発だというようなご指摘なんですけれども、ちょっと私、もう1回確認しなくては年数がわからないんですけれども、柴田弘文先生の環境経済学、テキストの中に、まさに補助金と抱き合わせで、環境税で税収を上げて、それを同額補助金に回すような形でやると、かなり低い、削減率に応じてそれだけ低い低税率で同じ効果が上げられるというような部分がありますので、これがAIMグループ発かどうかということについては、少しお調べになっていただいたほうがいいんじゃないかと思います。部分均衡でやっています。
 それから、もう1点、私はこの2成分法、抱き合わせは非常にいいと思うんですけれども、先生も留保されていますように、6ページの下から2行目に書かれている補助金の給付が低能率の企業の産業からの退出を妨げるといった効率性に反する効果があると。この辺を先生ご自身はどういうふうにお考えになっているのか。この2成分手法というような抱き合わせ手法の補助金政策と、それからAIMモデルで今回増井委員が示してくださったようなものとの違いが、やはり同じ補助金政策だと言いながらも、違いがあるような気が私するんですね。というのは、理論的な形での2成分手法というのは、企業自体の先生ご指摘のような動学的のマイナスの誘因性みたいのを与えてしまう部分が残るんだろうと。それに対して、AIMモデルのこの増井委員のほうからのご報告は、むしろそういうふうなことではなくて、積極的に削減をさせるインセンティブを技術的に与えているんじゃないかと、こういうふうに素人ながら思うのでございますが、その辺のところはいかがでしょうか。

○天野委員 私もこの補助金というのは普通の補助金ではなくて、要するに排出削減1単位について給付される補助金。ですから、削減という行為がなければ補助金というのは当然出ないわけですから。ですから、効果というのは環境効果だけをねらっていて、退出すべき企業が補助金をもらって生き延びているというふうなことができない預金にしなきゃいけないということですね。
 ですから、炭素税というのが、排出1単位について課税というのと同じように、補助金は排出削減1単位について幾らという給付の仕方をしなきゃいけない、こういうことを申し上げております。
 それから、柴田先生のほうのお話は、教科書ですから、いつごろおっしゃられたかというのはよくわからないんですが、AIMモデルのほうは、オーストリアの研究所へ戒能さんが出ておられたころから思いつかれたような節がありますので、1990年代の話ですね。ですから、かなり古いことは古いんですね。確認をしてみます。

○神野委員長 ありがとうございました。

○中里委員 税と補助金の問題は一応別々に、炭素税の効果と補助金の効果、両方合わせれば、それは効果は単一の場合よりも多いのは当たり前ですけれども、それぞれ別々に考えていただいて、何も炭素税で上がったから環境目的で使うというのをあらかじめ決めるというような方向には財政の人間としては耐えられないという、ただそれだけの話です。すみません。

○天野委員 別にそうしなきゃいかんということではなく、そういうことも可能性としてはあり得ると。

○神野委員長 それでは、この議題に関連して、先日委員から宿題をいただいておりますので、事務局のほうからそれを提出していただきました。事務局からご説明いただけますか。

○環境経済課課長補佐 資料5、収入階級別の光熱水費等とその収入に占める割合(課税前後)ということでありまして、先回の宿題をいただきまして、課税による効果そのものではありませんで、課税による負担額ではありますが、関連ということで、この際、ご報告させていただきます。
 まず、1の光熱費ですけれども、こちら家計調査年表、平成19年度の実績値でございまして、先回ごらんいただいておりまして、それぞれ1、2、3と。2が税を課した場合の負担増分です。3もさらに高い税率を課した場合の負担増分ということでありまして、実線より上の部分は見ていただいたんですけれども、先回、光熱費に加えまして、ガソリン代も含めた額を出してほしいというご指摘でありましたので、実線の下にガソリンを追加しているというものでございます。
 ガソリン代ですけれども、これは下のほうに定義、家計調査年表のほうの定義が欄外にございまして、こちらレギュラーガソリンですとかと、あとはハイオクタンガソリン、ミックスガソリンと軽油も含んでございます。
 結果ですけれども、まず1の光熱費の年間収入、これは年間収入五分位で分けておりますけれども、光熱費の合計はこちらの第I分位の方で、もともと年間で11万7,800円ということで、この光熱費の収入に占める割合としまして6.6%ということでありましたと。これにつきまして、ガソリン代が年間で4万9,000円ということで、光熱費とガソリン代を足し合わせますと、年間16万7,000円ということで、これら全体の収入に占める割合は9.3%ということになっておりまして、一部だけ説明いたしますが、第III分位、第V分位の方々でも、まず光熱費だけですと収入に占める割合は3.7%で、V分位の方は1.9%で、ガソリン代を含めますと5.4%、2.8%という数字がありましたけれども、2.で税額ということで、炭素トン当たりが2,400円ということでありまして、こちら環境省の直近の環境税の課税対象からガソリン・軽油は執行停止ということでありましたので、それらを除いた光熱費の負担ということで、家計への世帯平均が大体年間で2,000円程度という数字を出していたんですけれども、そういう数字が出ている、光熱費の負担増分計ということで、第III分位の方で2,329円ということで、これが収入に占める割合が3.7%と。こちらにガソリン代も加えますと、年間で3,211円ということでありまして、全体の光熱費とガソリン代の収入に占める割合といたしましては、5.4%ということであります。
 3.でさらに高い税率で、これも過去の試算をした際に設定した税率で、高い税率で、炭素トン当たり3万円の税率で試算をしてみますと、光熱費だけの場合ですと、第III分位の方で課税後の光熱費の収入に対する割合は4.3%でありました。これがガソリン代を含めますと、課税後の光熱費プラスガソリン代の収入に対する割合は6.2%ということで、第1分位を見ていただきますと、収入に占める割合は、一番左下ですけれども10.8%ということでありまして、第V分位の方は一番右下で3.3%という数字が出ております。ですので、総じて、前回光熱費のみで、もとより課税後の光熱費の収入に対する割合は低い分位の方ほど高くなる傾向がありましたが、ガソリン代を加えても、その傾向は同じでありましたという結果が示されてございます。
 以上でございます。

○神野委員長 どうもありがとうございました。
 いかがでしょう、今の事務局でつくっていただいた資料について、何かございますか。
 横山委員でしたか、関係なかったですか。何かありましたら、いずれにしても。

○横山委員 恐らく税の専門家からしますと、環境税の逆進性というのはかなり議論になると思うんですね。そうしたときに、どういうような配慮をしたらいいのかと。ここはやはり相当注意をしてかおかないといけないんじゃないかと思います。今日出していただいた資料を見ますと、やはりそれなりの意味を持っていると思いますので、こうした点の、いわゆる逆進性についてどういうような制度設計で配慮をするのかということは、今後議論をしなくちゃいけない重要な論点なんではないかという印象を受けました。

○神野委員長 ありがとうございました。
 どうぞ。

○諸富委員 私も、これで明らかに逆進性、これは前から言われてきたことですけれども、横山先生言われたとおり、明らかに逆進性あるということが試算として明らかになったということで、私も横山先生と全く同意見で、これはもしこういうことを本格的に環境税の導入を考えるのであれば、産業への影響の負担緩和をかなり重点的に議論してきたんですが、所得に分配に与える影響の考慮ということも考えないといけないと思いますね。いろいろやり方を本格的に諸外国でどうやっているかというのを事務局でもお調べいただく必要があるのかなと。例えば、イギリスだと、Climate change Levyはより産業用のエネルギー使用だけにかけて、家庭のほうは外すという非常に明確な分け方をしていますけれども、そういうのがいいのか、あるいはドイツだとたしか所得税減税と同時実施だったんですけれども、しかしそうすると、課税最低限の人たちに対する影響は緩和できないという問題もありますし、どうしたらいいのかなというのが特にやはり、ここでも課税最低限以下の方々に対する配慮をどうするかは大きい問題だろうというふうに思いました。
 以上です。

○神野委員長 横山さんがいつも別な税などで提案されている還付方式がありますね、間接税。あれはこれに応用できますか。

○横山委員 これにも応用できると思います。と申しますのは、基礎的な例えばエネルギー消費量というんでしょうか、CO換算をしておいて、それに税率をかけて、その部分の負担は全部還付するというようなやり方はあろうかと思うんですけれども、あるいは電気・ガスの段階での基本的な基礎消費に関しては課税しないというような形もあるでしょうし、ただそれは電気・ガスを別の課税の単位として、そこにかけるというような場合はそういうことはできるんでしょうけれども、そうではなくて、川上で掛けて、それでずっと転嫁されてきて、ひいては帰着として料金が上がってしまうような場合の配慮も必要なんだろうと。そうした場合にどうするのか。その辺はまたちょっと工夫が必要なんじゃないかと思っています。

○神野委員長 植田先生も、環境税の逆進性については前から……

○植田委員 横山委員、諸富委員のご指摘されたとおりだと私思うのですけれども、その点で、ですから先ほどちょっと議論があったと思うのですが、ポリシーミックスというふうに考える場合も、この逆進性という問題を配慮すべき柱の一つとしてミックスをどうするかというときの目的に入れるかどうかという問題が重要な問題かと思います。それを先ほどございましたけれども、横山先生がいつもおっしゃっておられるようなやり方で、税の範囲内で逆進性に配慮するというのと、ミックスして、全体で配慮するというのは、少しやり方の違う方式なので、これは大いに検討をしないといけない内容になってくるかなと、そういうことでございます。

○神野委員長 ありがとうございました。
 ほかに何かございますか。

○諸富委員 今の植田先生の示唆でいきますと、例えば排出量取引では廃案になりましたリーバーマン・ワーナー法案では、オークションへかけて、その税収の一部を所得再分配に充てるという、低所得者対策ということですので、そういう議論もあり得るのかなと思っています。

○神野委員長 それでは、よろしければ少しまだ時間に余裕がございますから、前回、私のほうから事務局にお願いをしておきました今までの委員会で行いました議論のまとめをしていただいておりまして、それを参考資料2として配布していただいているはずでございます。これについて、事務局のほうから簡単にご説明いただければと思いますけれども。

○石飛環境経済課長 では、残りの時間をいただきまして、参考資料2、これは前回までに議論していただいた内容、その中で主なご発言、ご議論について要点をまとめたものでございます。したがいまして、まだ論点ごとに整理をしたというものではなくて、各回ごとに議事に沿ってどんな議論があったかという議事要旨的なものとしてまとめたものであるということでご承知おきいただきたいと思います。
 それでは、時間を少しいただいて、この中でも特に主要なご発言についてご紹介、おさらいをしていきたいと思っております。
 第1回の専門委員会では、私どもから最近の動向と、それから論点についてご提案を申し上げて、それについての議論がなされました。特に、1ページの下のほうでありますけれども、新税と既存エネルギー関係諸税の関係についての議論で、その下の

○のところでございますけれども、道路特定財源の一般財源化が決まりまして、化石燃料の税収の使途が必ずしも道路と結びつかなくなります。新税として既存税制に追加的に環境税を導入することの妥当性のほか、既存税制である化石燃料課税のあり方や、環境の観点から見た場合に、暫定税率を含めた税率水準はこれでいいのか、課税ベースを炭素含有量等にする必要はないのか、こういった点も議論すべきというご指摘もありました。
 また、次ですが、新しい炭素税導入の際に揮発油税等と税率を調整するのであれば、新しい炭素税の目的も揮発油税等の目的に引きずられる。環境税は、価格効果を通して環境の影響・排出量を減らすことが目的であり、税収を上げることを目的とした揮発油税とは性格や目的が異なるというご指摘でありました。
 続きまして、まず既存の税制をどのように活用していくかということで考えていく、それとの関連でできること、できないことがあり、必要であれば新税もあり得る、そういう順番で考えるべきではないか。税収を得ることを目的としないものは税でない。既存税制から入って、それで不十分なところは新税を考え、全体としてグリーン化ということになるのではないというご指摘もございました。
 少し飛びまして、2ページの後半のところですけれども、神野委員長からのおまとめということで、環境税の検討は新税創設ももちろん含むが、既存のものの位置付けの検討も含み、関連性を考えながら、今後の専門委員会で考えていくべきだというご指摘をいただきました。
 3ページにまいりまして、第2回の専門委員会でありますけれども、まず天野委員から価格弾力性の再推定の結果をご説明いただきました。その中で、まず最初のポツですが、日本の価格弾力性の値について、2006年まで3年分のデータを増やした。結果は、全部門の推定値で、短期が0.1、長期が0.5。産業部門では、長期の弾力性が他の部門と比べて一番大きく、短期は小さいという計算結果でございましたが、これは何年か先に装置を変えるときに、エネルギー効率の高いものを入れて対応すると、こういう行動パターンが反映されたものであろうということでありました。民生家庭部門では、短期的に対応することがわかりました。運輸・業務部門も長期的にかなりの効果が期待できると。
 その次のポツですが、炭素税はいわば漢方薬のような効き目がある薬であるという、非常にわかりやすいご指摘をいただきました。
 1行飛ばしまして、排出量取引制度は、排出量全体をコントロールする短期的に有効な手段と言え、特定の大きな部門を対象とするものであるが、一方の炭素税は小さなところにも適用が可能であり、2つの政策手法は代替的というよりも補完性が強いというご説明でございました。
 次に、増井委員から、温暖化対策税の効果に関するこれまでの試算についてのご説明をいただきました。下から4行目のところでございますけれども、前回の試算は、税の税収の使途を温暖化対策のための設備投資としたが、他のポリシーミックスはいろいろと考えられる。自動車税のグリーン化等、他の様々な対策を盛り込んで、より低い税率であっても効果を上げる、そういう仕組みは考えられるのではないかというご説明がございました。
 4ページにまいります。
 諸外国の取組の現状等に関しての議論の中でございますが、2つ目の

○のところであります。道路財源を一般財源化したときには、しっかりと環境の側面を納税者に理解していただくような努力が必要。そうしたときに、諸外国との比較をすることはかなり意味があるというご指摘がございました。
 最後の下から2行目の神野委員長のおまとめでありますが、環境税のパターンについて、1つはフィンランドのパターン。液体燃料税の内数として、基本税、付加税、戦略備蓄料があり、1つの税の中で、税率の算定に当たって、基本税の税率に加えて、炭素比例のCO排出量1トン当たりの税率を用いていると。次に、デンマークのパターンがあって、既存税制とは別に新税として二酸化炭素税があります。既存税制の徴税システムをそのまま活用して、それぞれの税率に炭素比例の税率を上乗せして課税している。また、もう1つのパターンは、イギリスのパターンで、既存税制が掛けていなかった課税対象について、炭素比例ではないが新税を導入している。おおむねこれらのパターンに収まるということで、総括をしていただきました。
 次に5ページの下のほうでありますが、諸富委員からこれらに関してのご指摘があったわけでありますが、環境税の導入に当たっては、短期的、中長期的にやるべきことを分けて、2段階で考えてはどうか。1つ飛ばしまして、短期的には石油石炭税を税収を変化させないまま炭素税からCO税に切り替えるという方法が簡単である。同様に、下流のエネルギー税の炭素税化も考えられる。このうち道路特定財源については、一般財源となり受益者の負担の根拠が失われるため、暫定税率分を炭素税化することも1つの方策というコメントをいただきました。
 6ページにまいりまして、最後のコメントでありますが、中長期的には2009年に合意を見ると思われる国際枠組みの目標の達成に貢献できる環境税の設計にすべきである。その際には、排出取引等のポリシーミックスにも留意すべきである。ドイツ、イギリスで実施された環境税制改革も参考にしながら検討していく必要があるというご指摘でございました。
 7ページの第3回専門委員会では、国際競争力や家計に与える影響について、私どものほうからご説明をしてご議論をいただきました。特に、炭素リーケージについても説明をさせていただきました。また、諸外国の取組のところで、中ほどでございますが、諸富委員から環境税の効果について説明をいただきました。
 3つ目のポツですけれども、これはイギリスの気候変動税の導入に関してですけれども、1999年に導入の告知をしたところ、そのアナウンスメント効果が早くも2000年にあらわれたというご紹介をいただきました。また、気候変動税と組み合わせた気候変動協定は、知覚効果を持っている。Ekinsらはその論文で、気候変動協定上の目標がほとんどの産業で達成され、さらに超過達成も見られている理由として、知覚効果の存在を挙げている。政府と協定を結ぶことを通じて、排出削減機会に関する真剣な検討が行われ、一種の学習過程が働き、目標超過達成につながったというご指摘でございました。
 それから、その次に環境税の効果についての議論が行われまして、8ページにまいりまして、上から4行目でありますけれども、環境目的ではない環境関連税制もピュアな炭素税もどちらも炭素削減の特徴を持っており、ピュアな炭素税を入れなくても、既存の環境関連税制を引き上げて減らすことは十分に可能。しかし、既存の税制は炭素税というように名前を変えた上で増税するということであればわかる。
 次の

○でございますが、石油石炭税をかなり上げるということでも効果的で、オプションはいろいろあり、ピュアな炭素税を入れることだけが問題ではない。
 続きまして、アナウンスメント効果に近い効果が期待できるのは、その炭素の価格が目に見えるためである。炭素税という形で導入すれば炭素1トンについて幾らというのが目に見えるため、様々な経済主体は、それが現在の値だけでなく、将来どうなるかということを見通し動く。今後長期のことを考えれば、炭素価格の見える化というような制度をつくることが必要。さらに、理念型としてはピュアな炭素税がやっぱりベストなんだということを共有していく必要がありますと。既存税の税率の上げ下げだけでは、メッセージとして余り明確でなく、グリーン化のために効果を出すにはどうしたらいいのかということを考える必要がある。しかし、現実にそれをいきなり導入するわけにはいかないとき、既存税をどうリフォームしてそういう理念型に近づけていくかという問題意識から様々なオプションが出てきて、幅広く議論していく必要がある。
 1つ飛ばしまして、炭素税は、特に民生対策として、消費者がどういうものを買えば、あるいはどういう行動をすれば、より低炭素社会に近づけていけるのかということを考えさせる契機であるということでございました。
 続いて、OECDの環境統計において環境関連税制とされている我が国の既存税制について説明をいたし、また、植田委員からのコメントを紹介しておりますが、ポツの3行目の後半ですけれども、エネルギー税制は課税自体は環境税に似た効果を持つ可能性があるが、その使途はむしろ開発を促進し、結果的に温室効果ガスの排出量を増加させることになりかねない。その意味で、エネルギー税制を環境に配慮したものに転換していくことが考慮されるべきであるということでございました。
 それから、9ページにまいりまして、上から8行目ぐらいのポツでありますが、揮発油税の税率が下がればガソリンの消費を刺激することになるので、次善の環境税としての温室効果ガスや汚染物質の排出抑制効果は弱くなる。さらに、少し飛ばしまして、税収の使途を道路建設だけでなく、環境保全にまで拡張することも考えられてよいというご指摘でございました。
 また、既存のエネルギー関係諸税との関係についての議論の中では、2つ目の

○でございますが、排出量取引は、ECで決定できるが―これはEUの排出量取引制度でありますが、各国の税をEUで統一することについて、ECが決めるということはできない。そのため、排出量取引制度を世界に先駆けて導入した経緯がある。炭素の価格が目に見えるようになっており、将来の効果が期待できる。炭素税も炭素1トンについて幾らというのが目に見えるので、将来どうなるかということを見通して、経済主体が動く。今後長期的なことを考えれば、炭素価格の見える化に貢献する制度にすることが必要。イギリスは、炭素税、排出量取引制度、協定、補助金があり、非常にきれいなポリシーミックスをつくって、多くの経済主体に炭素の値段が将来必ず上がることを示した。これは大いに学ばなければいけないというご指摘がございました。
 それから、10ページにまいりまして、神野委員長のおまとめのところでございますが、最初の

○、実際の排出量を課税標準とすることは困難だが、エネルギーがどれだけ二酸化炭素を排出するかということを根拠にしながら、従量で課税するということでよいのではないかという1つのご指摘をいただきました。
 第4回の専門委員会、11ページでございます。
 この回は、植田委員から既存エネルギー関係諸税と環境税についてご説明をいただいた回でございます。
 3つ目のポツでありますが、既存のエネルギー関係諸税に、一種の次善の環境税という性質があるという点も重要であり、既存エネルギー関係諸税を温暖化防止、低炭素化に寄与する方向に改革することも考えられるべき。石油税から石油石炭税の改正の際には、電源開発促進税の減税とセットでエネルギー関係諸税の中で改革を行った。対象の税目、税収の使途も含めて見直す範囲を広げるということになれば、選択肢は拡大する。
 1つ飛ばしまして、石油石炭税はすべての化石燃料に課税されるという点で注目すべき。この税率をCO排出量基準に組み替えれば、COの排出削減効果が得られると考えられる。さらにその次のポツですが、低炭素社会への移行という観点から、税収の使途の側面を検討するということが重要。道路特定財源に係る揮発油税に関し、自動車走行に伴う広い意味での環境損害をなくす、あるいは減少させていくような用途に支出することは、正当化される課税根拠になり得るというご指摘がありました。
 また、横山委員から、既存の諸税の活用を含めた税の検討についてご説明をいただきました。2つ目のポツですが、道路特定財源が一般財源化され、今までの暫定税率の課税根拠の正当化が求められている。環境保全に軸足を移すということも示唆されるのではないかというご指摘がございました。
 それから、12ページにまいりまして、和気委員、今回ご欠席ではございますが、前回、和気委員からいただいたコメントを事務局から紹介をさせていただきました。
 最初のところですが、資源エネルギー問題と環境問題をどう統合していくかが大きな課題であり、エネルギー対策と地球温暖化対策が一体的に解決すべき問題。それから、最後のポツですが、炭素リーケージをもたらすと言われる海外への生産移転については、為替レート、賃金、その他様々な要因に依存し、とりわけ、これまでの海外直接投資動向を見ると、労働コスト要因が大きい。課税によるエネルギーコストの上昇が、一般的な企業行動に大きな影響を与えるとは考えにくいというコメントをいただきました。
 それから、13ページにまいりまして、諸富委員から排出量取引とポリシーミックスについてご説明をいただきました。
 その中で、2つ目のポツですが、産業部門等については、下流型排出量取引制度を実施し、環境税の税率は例えば75%を軽減し、運輸、民生、中小企業については、(100%税率の)環境税を導入すると。
 産業部門については、政府と協定を締結したり、排出量取引制度の対象となった場合でも、非課税ではなく割引とすべき。理由は、課税対象者のみ過度な負担となる可能性があり、公平性の問題があることと、割引対象とすることにより、協定等を遵守しなければ割引を解除、といった仕組みで、協定等の実効性を高めることができるという内容の制度案をご紹介いただいたところでございます。
 それから、13ページの後段でございますけれども、既存のエネルギー関係諸税との関係についての議論の中で、下から2つ目の

○ですが、税収中立か増税か、今の経済情勢のもとで本当に増税ができるのかどうかはわからない。また、ピュアな炭素税であっても、本当に効果があるのか。既存税の税率をそれなりの環境効果が上がるような形で維持し、ある程度不均等な税制だとしても、環境への効果があるということも1つの政策判断になってくる。
 その次ですが、現行のガソリンの税率を下げるというような形はヨーロッパではなかなか取り入れられていない。暫定税率が廃止された場合、二酸化炭素の排出量の増大が見込まれると試算されているが、これをへこますだけのほかの油種に対する税率アップが同時になされれば環境についての負荷はニュートラルになるが、税率を一度下げてしまうと、再び上げることは今の政治の力では難しいのではないか。
 納税者の納得や公平という観点から、石油石炭税を、上げざるを得ないかもしれない。それは、ピュアな炭素税の性格を用いるのではないか。その導入に当たっては、排出取引制度や協定とどのようなポリシーミックスにするのかという議論が必要になってくるのではないかという議論がございました。
 最後に、14ページの下のほうでございますが、神野委員長からのおまとめでございます。
 既存のエネルギー税の税率を炭素の単位当たりの負担に固定化して、税収中立にすることにした場合、あるところは減税になり、あるところは増税になるが、負担を後退させるべきではない、との意見があり、既存のエネルギー税とは別に新税として炭素税をつくった場合でも、既存の税制で炭素の少ないものを減税するということがあり得るという議論もあるが、税率をそれなりの環境効果が上がるような形で維持するという意見に基づけば、ないということになるというようなご発言をいただいたところでございます。
 以上は、冒頭申しましたように、各委員のご発言を少し要約したような形での紹介でございますので、本日のご議論も含めて、次回にはこれまでの議論を論点ごとに整理いたしまして、もちろんそれぞれの論点について、すべてが統一された意見にはなっていないんですけれども、集約した形で紹介し、またそれについてご議論をいただければと思っております。
 以上でございます。

○神野委員長 どうもありがとうございます。
 何かございますか。自分の意見が適切にまとめられないという点でも構いませんが、何かございましたら。何か追加して補足して、横山さん、名称とか何かあるかしら、既存の。何か問題提起はありますか。

○横山委員 名称については、いろいろな、天野先生のほうからも名称については、やはり考えたほうがいいのではないかというご意見等があった、ここにも盛り込まれているんですけれども、やはり納税者の納得といったときに、今のまま暫定税率を維持するにしても、そのまま従来型の揮発油税等の名前のままでいいのかどうかというのは、やはり納税者の気持ちからすると納得いかない部分があるのかもしれないと。だから、その辺のところはやはりいろいろなご意見があって、それを環境税というような形の名前にしていくというのも一つの工夫なのかもしれませんし、それからヨーロッパを見ていますと、既存のエネルギー諸税を不均一にかけながら、名前だけは環境税とか、それから地球温暖化対策税とか、炭素税とか、いろいろなことを言って、環境について配慮していることを形ではなくて外見から名称変更する、そういうしたたかさがあるのかなと。そうすると、同じような、潜在的な炭素税と言われているものも、もし環境目的ということがしっかりと課税根拠としてうたわれるのであるならば、今回の暫定税率を維持するということであれば、やはり何らかの形で環境に資するということが課税目的の第一義的な、今回のこの部分についてはそういうような目的で課税したんだということをどこかで明確に示せるようなことも必要なのかなというふうな気がします。
 以上です。

○神野委員長 どうもありがとうございました。
 それでは、そろそろ予定の時間をオーバーしておりますので、この辺で本日の議論を終えたいと思います。次回は、さらに議論をしていない論点を洗うとともに、これまでの議論の整理なども少し手をつけていければというふうに考えております。
 先ほどもご説明ありましたが、参考資料2につきましては、今回の議論を踏まえてさらにブラッシュアップしたものを次回に提出していただければというふうに思っております。
 最後に、事務局から連絡事項がございましたら、よろしくお願いいたします。

○石飛環境経済課長 今、委員長からご指示のありました資料を次回用意して、ご議論いただきたいと思います。
 次回は、11月の中ごろを予定しております。場所など詳細は別途ご連絡を差し上げますので、引き続きご出席をよろしくお願いいたします。
 本日も参考資料として机の上にファイルを置かせていただきましたけれども、次回もそのような形で用意をいたしますので、そのまま置いていただきたいと思っております。
 以上でございます。

○神野委員長 それでは、本日の委員会はこれで終了したいと思います。どうもありがとうございました。

午前11時32分 閉会