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中央環境審議会総合政策・地球環境合同部会
第7回環境税の経済分析等に関する専門委員会議事録


平成17年8月4日(木)

環境省総合環境政策局環境経済課

午前10時03分開会

○鎌形環境経済課長 おはようございます。定刻になりましたので、ただいまから環境税の経済分析等に関する専門委員会の第7回会合を開催させていただきます。
  それでは、神野委員長よろしくお願いいたします。

○神野委員長 暑さが続いておりますけれども、ご参集いただきまして、本当にありがとうございます。
  前回既にご案内申し上げましたように、きょうは前回ご議論をいただいた論点整理をまとめていきたいと考えております。
 まとめるに当たりまして、前回の論点整理でも空白になっておりましたアンケートの調査の結果でございますが、まず最初にそれについて議論をさせていただければと考えております。
 お手元に議事次第があると思いますけれども、最初にアンケート調査の結果についてご議論をいただいた上で、前回の論点整理を今回少しまとめた形で決定したいと考えております。
 それでは、佐和委員のご協力をいただきまして改めて分析をしていただきました。その結果につきまして、事務局の方からご説明をしていただきたいと思います。
 なお、きょうも12時までを予定しておりますので、議事運営についてご協力いただければと存じます。

○鎌形環境経済課長 それでは、資料1に基づきまして、アンケート調査の結果を再度ご報告させていただきます。
  前回、全体でお配りしましたが、今回も全体のをお配りいたしまして、適宜変更をさせていただく部分も含めてご説明をさせていただきます。前回もざっとご説明いたしましたけれども、もう一度最初からおさらいもさせていただきたいと思います。
 今回のアンケートでございますけれども、税が導入された場合のエネルギー消費行動の変化や税率の違いによる変化を明らかにするということを目的として、一般消費者を対象としたものということでございまして、標本には4つのグループに分けたということでございまして、全体で1,600人対象にしてございますけれども、全く税の導入ということがないようなケースでの行動についての質問、それからグループ[ii]は環境税として2%エネルギー価格が上がりるという前提を置いたときにどうしますか、グループ[iii]は環境税という形でエネルギー価格が10%上昇したときどうしますか、グループ[iv]は環境税ということわりを特に入れずにエネルギー価格が2%上がった場合にはどうしますか、といったような4つのグループを設けたということです。全体で400人ずつ、合わせて1,600人ということになります。
 質問項目に関しましては、幾つかの類型に分けまして、1つは心がけの対策ということで、エアコンのフィルター清掃をどのような頻度で行っているかということを中心に6つの項目を挙げております。
 それから、2つ目は2ページにまいりまして機器の選択に関して、エアコンや冷蔵庫など4つの機器を挙げまして、それぞれのグループについて、従来型と省エネ型の2つの商品について、従来型の製品の方が省エネ型製品よりも購入価格が安いというような条件、そして年間の電気代等は逆に省エネ型の方が安い、そして、環境税がかかればさらに従来型と省エネ型のランニングコストに差が出る、というような情報を提示しつつ、どちらの商品を選択するかということを質問したケース。
 3つ目はエネルギー使用の抑制ということで、節約に関することです。ストーブの使用時間とか照明の点灯時間など7種の行動について、いずれもエネルギーの価格が上がると、環境税、あるいはそうでなくても上がるという3つのグループに対してどのような節約するかということの質問です。
 この3つの類型の質問をいたしました。
 調査対象につましては、ここに挙げましたように、20歳以上が1,600人ということでございます。
 分析方法でございますけれども、心がけ対策、機器の選択について、それぞれどのような割合があるかということについて、統計的に有意な差が出るかということの検定を行っておりますが、3ページ目の上から8行目に「なお、」と書いてありますけれども、この検定結果については、また後ほど触れますけれども、この調査では10%の有意水準による両側検定によって、有意差の有無を判断いたしました。
 それから、回答者属性です。
 前回も議論となりましたけれども、まず、男性、女性についてはすべて200人ずつということで均等にやったということでございます。
 次のページにまいりまして、年齢層につきましても、20代、30代、40代、50代、それぞれグループで100人ずつということでございます。
 ここを決めてサンプルを取ったわけでございますけれども、そのほか、ここにございますように、世帯構成、世帯所得、居住地などの属性がございます。
 前回少し議論になりましたのは、5ページ目にございます地球環境問題に対する意識ということで、常に意識する、意識することが多い、意識することは少ないなどの質問をしたところ、ここで言いますと、税10%上昇という質問のグループにつきましては、どうも意識することの少ない人が多いのではないかというようなバイアスがかかっているんではないかというご指摘がございました。これについては、そのバイアスをどう見るかということについて少し分析を評価したということでございます。
 6ページ目、7ページ目に行きまして、まず心がけ対策の実行に対する影響ということで、ここにありますように、質問の内容は、一番下に選択肢があります。エアコンの場合には、2週間に一度フィルターを清掃する、あるいは2週間から2カ月に一度は清掃、2カ月から半年に一度は清掃、ほとんど清掃しない、わからない、そもそもエアコンを持っていないなどという選択肢を設けまして、これにつきまして、一番上に戻りますが、今後、あなたのご家庭では、どうしますか。ii は、日ごろというのは今までということですが、今、あなたの家庭ではどうしていますか、こういう2つの質問をそれぞれのグループについてしたということでございます。
 「今後」というところにつきましては、税のグループには税を2%上がったらとか、あるいは10%上がったらなどの質問になっているということでございます。
 その質問に対する答えの結果は、7ページの一番上の四角でくくったところに掲げてございます。
 税なしのグループであれば、2週間に一度清掃というのが日ごろの行動は40人とか、2週間から2カ月に一度というのは120人などという数字になってございます。
 この結果をどういうふうに分析するかということでございますけれども、結果、真ん中の四角でくくったグラフの部分でございますけれども、その分析の方法について、「算定方法については[参考I]を参照」とございますので、そちらを御覧いただきたいと思います。
 何ページかと申しますと、43ページでございます。43ページに分析方法を書いてございます。
 表がございますけれども、今の質問が、2週間に一度掃除ということと、エアコンをそもそも持っていないという(1)から(6)までというのがございますが、左側には日ごろの行動はどうかという分類、それから横には、今後どうするかということでマトリックスをつくってございます。
 アンケート調査の結果でX11からX66まですべて数字が埋まるわけでございますけれども、この結果をどう見るかということで、日ごろの行動と今後の行動を比較するということで、省エネ行動へのシフト率というものを見ようということでございます。
 今以上に省エネ行動に進むという可能性のあるグループというのは、この四角く黒でくくった部分で表される、こういう考え方でございます。そもそも持っていないというのは、分析の対象から外したということです。
 それから、そもそも日ごろから2週間に一度は清掃、つまり最も行動がすぐれているグループについては、もっといい行動になり得ない、もっと省エネ行動を強めるということは、この調査の結果で出てこないということで、(i)2週間に一度清掃しているというものは除外いたしました。
 そういう意味で、黒枠で囲った部分が、今回の分析の対象ということでございまして、その中で、今の行動よりも将来の行動の方が省エネ行動にシフトしたという部分が網かけでくくった部分でございます。対角線の左下というふうに言ったらよろしいかと思いますけれども、この部分ついてどうかということを見たということでございます。
 ここにございますように、省エネ行動のシフト率という式が書いてあります。分母に省エネ行動へシフトする余地があった人数、これは黒く囲った部分です。それから省エネ行動へシフトした人数、これは分子の部分ですが、これが網かけの部分ということでございます。
 それと、2週間に一度は掃除という一番行動の高い部分にいったものについてもあわせて分析したということでございます。
 こういう分析で、もとにお戻りいただきまして7ページでございますけれども、この真ん中のグラフということでございます。前回はこのグラフについては、今のような省エネ行動の余地があったかなかったかということを分類せずに、全体の割合で示しておりましたけれども、今回は今のような分析を行いました。
 ここでございますように、税なしのグループでも日ごろと今後ということで言うと、省エネ行動へのシフト率は14%出ていまして、税2%上昇の場合には30%、税10%上昇の場合には32%、税と言わずに価格2%上昇というのは28%、このような数字が出ているということでございます。これをそれぞれ有意な差があるというふうに見るかどうかについては、それぞれ検討を行ったということでございます。
 8ページ以下、それぞれ質問が続くということでございます。
 日ごろの行動に関しては17ページまで続きますけれども、機器の選択に関する影響は18ページ以降でございます。ここは、基本的に前回とその分析を変えてございませんけれども、一応念のために再度ご説明させていただきます。
 18ページ、左側に表がございますけれども、それぞれのグループについて、この表にあるような情報を与えました。
 例えば、[B]税2%上昇をごらんいただきますと、エアコンAとエアコンBがありますということで、今後買い替えるとしたらどちらにするかという質問ですが、商品価格はエアコンAは11万円、エアコンBは15万円ということで、Bの方が高いということです。ただ、年間の電気代ということで、ランニングコストにつきましてはBの方が省エネ型ということで安いということです。そのうち環境税は幾らかかっているかというのを明記したということです。こういったことをすべてのグループについて情報提供して、それではAとBどちらを選ぶかという質問をしたということです。
 19ページにはその結果ということでございますけれども、左側から、Aを購入、どちらかと言えばA、わからない、どちらかと言えばB、Bを購入、こういうふうに分けてございまして、それぞれ数字が出ているということでございます。
 分析をするに当たっては、Aを購入とどちらかと言えばAというのをまとめて、それから、右側のどちらかと言えばB、あるいはBを購入というのをまとめておりまして、例えばBを購入する人数という意味でいいますと、税なしの場合には72%、税2%の場合には74%、税10%の場合には79%、単に価格2%上昇については73%、こういう結果であるということでございます。
 これが機器の選択でございまして、これは4つの機種について続きます。
 少し飛んでいただきまして、26ページ以下はエネルギー使用の抑制に対する影響ということでございます。
 これにつきましては、例えば、夏季のエアコンの使用時間や冷房強度をどうするかというような質問を26ページにしております。選択肢としては、かなり控える、控える、少し控える、今と変わらないというような行動の変化を尋ねているということでございます。
 これにつきましても、それぞれの数字が27ページに図として掲げてございます。具体的な答えの数字は、上の四角の中ということでございますが、下の四角の中の分析は、かなり控える、あるいは控える、少し控えるというのをそれぞれ重みづけをして、どれぐらいの使用抑制になるかということを、税2%上昇、10%上昇、あるいは税がなくても2%上昇のケースで数値化して、これを比較していったということでございます。
 これがエネルギー使用の抑制に対する行動についてでございます。
 次に、意識の差によってバイアスがあったのではないかというようなことに関しましては、46ページ以下の表を新しくつけ加えました。
 この表につきましては、結局、実際に意識に関する設問というのは、常に意識しているというようなもので、非常に定性的なものだったので、どういうふうに分類するかということにしたんですけれども、結局のところ、意識ありのケースと意識なしのケースについて、行動がそれぞれどう変化したかクロス集計をした表をここに掲げているということでございます。
 それで、この分析ですけれども、結論から言いますと、意識ありのケースと意識なしのケースで、どちらについて行動を促進する方向あるいは抑制する方向に働くかということで、明確な差というのはなかなか見出せなかったというところでございます。
 この表の見方でございますが、46ページの税なしのところを御覧いただきますと、左側に意識ありのグループの率、右側に意識なしのグループの率が上がってございまして、そのうち網かけをかけた部分が、今の行動から将来の行動にかけて省エネ行動が増すという部分の率を書いてございます。
 例えば、税なしのグループで言いますと、2カ月に一度は掃除というのが2週間に一度掃除するようにするというふうに上がるケース、意識ありの場合は8.5%、意識なしの場合は9.8%、こういう見方になります。
 これについてざっと見ていきますと、例えばでございますけれども、税10%上昇というところを見ますと、2カ月に一度掃除するグループが2週間に一度掃除するという部分は、意識ありの場合18.9、意識なしの場合は26.6です。意識なしの方がこういったシフトが大きくなっていますが、逆に、ほとんど掃除しないというところから2週間に一度掃除するというのは、意識ありの場合には20%、意識なしの場合には3.6%というような形になっています。
 それから、もっと下に行きまして、エアコンのコンセント抜きというところも見ますけれども、税10%上昇のところで、「ときどき実行する」から「必ず実行する」というのが、意識ありの場合は23.5、意識なしの場合は55.1でございまして、あるいは「ほとんど実行しない」というところから「必ず実行する」というところへのシフトは、意識ありの場合は47.2、意識なしの場合は28.4などとなってございまして、なかなか数字がばらついておりまして、どういう傾向があるかというのを現時点で把握するのがなかなか難しいということが言えようかと思います。ただ、全体的にはもちろん意識の高い方が省エネ対策に取り組んでいるということはうかがえたということはもちろん言えるということでございます。
 そういう意味で、こういったような意識の差について、それぞれの結果にどう影響するかというのは、申しわけございませんが、数字を出してみましたけれども、一定の傾向というものを私どもの方ではなかなか見出せないということでございます。
 次に、まとめに入りますけれども、40ページにまとめというものを掲げてございます。
 前回いろいろご指摘がありましたので、少し強引というご指摘もございました。そういうところも含めて見直したものでございます。
 環境税の効果というところでございますけれども、エネルギー価格2%上昇または10%上昇を環境税で行われる、こういうことによって、省エネ行動の選択の変化が有意にあらわれた対策、あらわれなかった対策というのは表2に示してございます。表2というのは42ページでございます。
 心がけ対策の実行、省エネ機器の選択、エネルギー使用の抑制とございまして、それぞれについて、10%の効果が2%の効果より上回ったもの、あるいは10%の効果と2%の効果がほぼ等しかったもの、あるいは課税によって行動の変化が有意にあらわれなかったもの、こういったようなことをしてございます。
 それぞれの具体的な検定につきましては、44ページでは、前回、有意差検定ということで5%、10%の場合に有意差あり、なしという欄を今は右側に掲げてございますが、従来載せていなかったものをここに明確に書いたということでございまして、今回は10%水準で判断したということでございます。
 40ページにまた戻っていただきまして、こういったところにしますと、いわゆる心がけ対策の実行、省エネ機器の選択、エネルギー使用の抑制、すべての分野について環境税が導入された場合には、エネルギー価格2%上昇と10%のいずれのケースにおいても環境税が導入されないという場合に比べて、行動の変化が有意にあらわれた対策が多数存在するということでございます。
 それから、エアコンのフィルター掃除、省エネ型テレビの選択、冬期のエアコン使用抑制など10種の対策については、環境税の課税によるエネルギー価格が2%上昇した。その場合の効果が、課税によってエネルギーが10%上昇した。この2と10の間に統計的に有意な差がないという結果が出ました。この結果から全体を見ますと、エネルギー価格の上昇が2%程度の低率の環境税であっても、省エネ行動を促進させるための十分な原動力を持つことが示唆されたということでございます。
 また、一部の対策については、2%上昇の効果が、10%上昇の場合と統計的に有為な差がないということで、環境税の認識をしてもらうことの効果が大きく働いた可能性もございますが、この点については更なる分析が必要だということでございます。
 (2)エネルギー価格の上昇の原因の差が行動に与える変化ということで、エネルギー価格2%上昇ということで、一方は税を明記、もう一方は何も記載しないということで、環境税である場合とそうでない場合の差異の分析というものを試みましたけれども、結果としては、環境税による税上昇である旨を明記したグループの方が省エネ行動の選択率が有意に高くなる、そういったケースは一部存在いたしました。そして、今度は逆の傾向が有意に高まる。つまり、環境税と明記しない方が、環境税と明記したよりも有意に省エネ行動の選択率が高いというケースはなかったということでございます。
 こういったことからすると、エネルギー価格の上昇の省エネ行動を促進する効果に関しまして、環境税によるエネルギー価格の上昇、そしてその他の原因によるエネルギー価格の上昇とは異なった意味を持つが示唆されたということは言えようかと思います。ただ、この分析では、どういう原因だったか、つまり、環境税によって温暖化対策の必要性が認識されたためなのか、あるいはエネルギー価格の上昇が持続すると認識されたためなのか、このあたりは明らかにはなっていないということは認識する必要があるということでございます。
 先ほど申しましたように、グループ間の意識の差について、これが結果に影響した可能性があることは留保する必要があるということでございますけれども、先ほど申しましたように、明確な差が現段階では分析できませんでしたので、今後どのようにあらわれるかについて引き続き分析を深めることが考えられるということでございます。
 簡単ですが、以上のようなことでございます。

○神野委員長 どうもありがとうございました。
  今発表していただきましたアンケートの調査に関する分析結果につきましては、先ほども申し上げましたが、佐和委員のご尽力によるものでございます。心より御礼を申し上げますが、佐和委員の方から何か補足してご説明していただくとありがたいんですけれども。

○佐和委員 ちょっとお聞きしたいと思います。
  まず、鎌形さんのご説明の中にもあったわけですけれども、確認のために、17ページを御覧いただくと、非常に典型的にあらわれているわけですけれども、いい方向へシフトした人の比率が、税なしならば8%だったのが、単に価格が何らかの理由で2%上昇したら17%、一番いい省エネ行動にシフトする割合が。そして、2%ならば20%で、税率が10%ならば28%ということで、非常にクリアな差が出ているわけです。必ずしもそれが十分に換算されないケースもありますが、少なくとも順序に関しては、税率が2%の場合よりは10%。
 例えば1枚めくっていただきますと、自主選択ですけれども、これが下の二重になっているのは、下の方が、つまり72、74、73、79、70、つまり省電力設計のエアコン、Bを購入するというケースですね、それを購入するという人の割合が、税なしでも72%の人がそれを買うようですが、2%価格が上昇すれば73%、わずかな差であっても74%、そして10%ならば79%ということで、そういうオーダリングはかなりの場合についてはっきり出ている。
 これ実は、前回は税率10%であろうが2%であろうが差がない。これは事務局の方でというか、初歩的な誤りをおかしていて、ですから、要するにパーセントを計算するときに、分母のとり方が間違っていたということがあって、2%であろうが10%であろうがほとんど差がない。それは初歩的な誤りで、私はそれに気づきまして直した結果、こういうふうな結果になった。
 それから、マルチナミアル・ロイドのモデルを推定しようとしたわけですが、考えてみれば、結果論としては当たり前のことで、当たり前のことを最初に気がつかなかったというのは大変恥ずかしいことですが、実は、この場合、説明の方がすべてクオリタティブなデータなんです、男女とか環境意識のある、なしとか、所得階層は4つに分かれたんでしょうかね、4つか5つ。つまり、いずれにしてもクオリタティブである。そういうときには、連続変数がない場合は余りマルチノメダルを使っても意味がないんですよね。
 ですから、そういうことで、いわゆるクロス・クラシフィケーションということで見たところ、環境意識があるかないかということが割と影響──さっきの図だけをご一覧なさっただけではよくわからないかもしれないけれども、意識のある人と意識のない人でかなり差がある。ということは、かねて中央環境部会等で、あるいは施策総合企画小委員会等で桝本さんなんかが盛んにおっしゃっていた環境教育が重要だ。つまり、意識を上げるということで、同じような税制を導入しても、反応の仕方が違うということをサポートするというんです。
 それで、マルチノミナル・ロジットなんですね、高級といいますか、素人にはわかりかねるような難しい手法をこういうときに使うというのは基本的に反対でありまして、ことしの経済財政白書をごらんになると、そここにマルチノミナル・ロジット・モデルを使って公用関数を推計して、できた結論は何かというと、社会保障給付をふやすと、国民の高揚が高まる。公共事業をふやすと、国民の高揚が低下するというような当たり前みたいな、もちろん公共事業をふやせば当然国民の負担率が何%か上がっているということが付記されているわけです。つまり、4つのオールダーナティブな政策を挙げて、そしてそれを、あなたはどれ選択しますかということを聞いて、その結果からマルチノミナル・ロジット・モデルを推計して、そこから公用関数に一気に──高揚は果たして加速的であるかどうかですらわからないにもかかわらず、これはあるアメリカのマクロ経済学者が考えた手法で、そんなものは僕から見ればアドホックな感じなんですが、それをとにかく使って、それで小さな政府が望ましいという結論を導きたいがためにそれをやっているわけですね。私はそれをジャパンタイムスで、要するにバターをのこぎりで切るに等しいというふうに批判していたわけです。バターをのこぎりで切りますと、切れることは切れるけれども、形状ががたがたに崩れてしまうということは、要するに、本来データの持っている情報をかえって失ってしまう、あるいはゆがめてしまうということになるわけで、バターはバターナイフで切るべきであって、のこぎりで切るべきではないということを主張したこともありますが、マルチノミナル・ロジット・モデルをここで使うと、また誤解を招くおそれがあるので、使わずに済んでよかったというふうに思っております。
 いずれにせよ、少なくとも統計的に有意かどうかはともかくとして、かなり納得のいく数値的な結果が得られたんではないかと思っております。

○神野委員長 どうもありがとうございました。
  それでは、今の補足説明を含めて、アンケート結果の分析につきましてご質問あるいはご意見をいただければと思いますが、いかがでしょうか。
 はい、浅野委員。

○浅野委員 今の佐和委員のご説明をお聞きして、このアンケートの使い道がだんだんはっきりしてきたわけですが、恐らくこんなものが出た場合に、必ずまたさまざまな反論が出てきて、このアンケートを逆に利用するという人がいっぱい出てくる可能性があるこことが心配です、私の感じでは、40ページのエネルギー価格の上昇の原因の差が行動に与える変化というところは、まとめの方はこういうまとめになっていて、ちょっと読んでもわかりにくい表現なんですけれども、多分ポイントになる点は、2%価格が上がるというところが、要するに、ずっとこれから環境税で、価格は2%高い価格になってしまうという場合と、それから一時的に上がって、また下がるかもしれないという場合という区別が必ずしも質問を受けた人に明確に伝わっていないので、2%ただ単に価格が上がったというときには、2つのものが混在しているから余り差が出てこなかったというようにも思われるのですが、その辺をはっきり説明していかないと、本文の方を見ていくと、統計的には有為な差とは言いがたいという説明が言葉としてはいっぱいが出てきてしまうものですから、そこだけとらえて、税を導入しようが何しようが余り関係ないじゃないかと言われてしまうと困るという気がいたします。
  ですから、今、佐和委員の追加的なコメントはぜひ今後これを利用するときに重要な要素だと思いますし、それから、この40ページにある認識されたかどうか明らかでないことに留意する必要があるというところについては、少し仮説的にでも、もしそれをもっとはっきりさせた場合は、もっとはっきりした差が出たと思われると言えるかどうか、これは私自信がないんですが、そういうふうに、このところがもし価格がずっと将来とも上がり続けるという場合と、一時的に上がったという場合では多分違うだろうということをコメントの中に入れていいかどうか、お教えいただければと思います。

○佐和委員 多分これは設問の仕方によると思うので、その設問のあり方というのは十分承知しているわけではないので、私が今ここで確答はできませんが、やはり環境税がかかって、エネルギー価格、ガソリン価格が2%上昇いたします。あなたはどうしますかというと、ガソリン価格は別に環境税が導入されてということはなしに価格が2%上昇したという場合も、多分私は、回答者は一時的なものだという印象を持たずに、ずっとこうきたものがこう上がってずっといくというふうに理解しているんじゃないかと思います。
  それから、1つこのアンケート結果からわかったことは、意外なほどに価格に対してセンシティブであるということなんです。環境税が2%上がろうが、あるいはその他の原因、例えば為替レートとか原油価格の高騰等の結果として2%上がろうが、結構似たような行動をするということが……、しかし、とは言いながら、先ほどもご説明申し上げたとおり、環境税が導入されて2%上がったという場合の方が反応は総体的に言えば大きい、全体として見ると大きいということで、価格に対して、例えばさっき環境意識のレベルの高い人と低い人といいますか、危機のない人とある人ということで仕分けしてテーブルをつくっていましたけれども、あれを見ても、環境意識のない人も結構価格に対しては敏感であるという結果が得られたのではないかと思います。

○神野委員長 ほかに。

○金本委員 まとめの(1)のところですが、これをよく見ると、かなりクリアなのが、2%で有意に行動変化していないというのは、省エネ機器の選択のところで、金めが明確にあるものですね、高いお金を払わなければいけないものについては有意ではない。そのほかの心がけ対策とエネルギー使用の抑制というのは、お金ではない、若干の心がけということのコストをどう見るかということで、2%でもプラスの回答があったということだと思います。
  これで、2%程度でも省エネ行動を促進させるための十分な原動力を持つと言えるか、これはちょっと言い過ぎかなという気がします。ちょっとした心がけで改善できるものについて改善すると言っているんですが、それが十分な原動力かというと、私自身の行動を見ていても、こういうのを見たときにはやるよと思うんだけれども、すぐに忘れてしまうといったことがございますので、ここの言い方はちょっと言い過ぎかなという気がいたします。
 もう少し客観的に心がけ対策とエネルギー使用の抑制については、2%でもある程度の効果があることが、このアンケート結果では示唆されるということだというふうに思います。
 (2)のところですが、この言い方は非常に気になるところでありまして、通常、何か主張するときには、統計的に有意なものをもって主張するんですね。統計的に有意でないけれどもプラス、有意だけれどもマイナス、有意でマイナスがない。有意なところのプラス、有意でないところのマイナスというものがかなり出過ぎているのかなという気はします。主張するとすれば、有意に出ているもの、それから有意に出ていないもの、そういったことで主張を組み立てる方が普通かなという気がいたします。
 有意性からも見ていると、やはり心がけ対策とか使用の抑制で、余り消費者としてはコストを感じないもの、こういうのがどうも有意に出ているといった場合で、非常にナチュラルで、こういうアンケート結果は往々にして期待と違うことが出てくるんですが、非常に自然な回答が出ているなという気がいたします。
 基本的に私が書くとすると、ここの有意に出ているものといったところをとらえて書くのかなという気がいたします。
 本当にできるかどうかはわかりませんが、佐和先生にやっていただいたグループごとのものは、もともとの問題意識は、グループが結果にバイアスをもたらすような格好で入っているというかもしれないという問題意識で、そのバイアスがあるかどうかの検定みたいなのができるといいのかなというふうに思います。これは統計的にそんなに簡単な問題ではないので、できればということです。

○神野委員長 どうもありがとうございました。
  はい、どうぞ。

○佐和委員 まず最初のご指摘に関しては、まとめのところの42ページの表2と表3を御覧いただければ、ここにテーブルのようなのがございますが、まず表2に関してご説明申し上げると、10%課税したときの効果が2%課税したときの効果よりも有意に大きいという対策といいますか行動がここに列挙されているわけです。
  そして、その下の段で10%効果のイコール約2%の効果というのは、10%の効果と2%の効果が等しいというキモカ説、ナノハイポセシスが棄却できなかったというわけですね。これは数字の上では10%の効果の方が2%の効果よりも大きいんだけれども、実はその差というのが有意にジグニフィカントではなかったというケースです。
 一番下にあるのが、課税によって行動の変化が有意に現れなかった対策、つまり税をかけよう、行動に大きな差がないというか、差がないというわけではなくて、差がないというキモカ説が棄却できなかった、リジェクトできなかったというケースはこの2つのケースしかないということで、統計学の話になるわけですけれども、10%の効果が2%の効果と差がない、等しいというキモカ説を棄却できなかったということは、証拠不十分で釈放するというような感じなんですね。だから、要するにデータがそこまできっちりしたことを言えなかったというだけであって、ですから、400、400というサンプルでやっているわけですから、今回400というサンプルから言えなかったというだけなんですね。
 下は、ここでも環境税の明記によって行動の変化が有意に現れた対策というのは、ある意味では非常に率で少ないわけですが、しかし、統計的に有意であるということは、実際問題、とりあえずパーセンテージで計算すれば、確かに環境税と明記した場合の方が、環境税によって2%価格が上昇したというケースと、それから単に為替レートの変動というようなことで2%価格が上昇したという場合と比べて、要するに、その効果の差が有意であったというのが3ケースで、有意でなかった、これは実は環境税を明記した場合の方が高かったんだけれども、その差は必ずしも統計的にジグニフィカントでなかったというのが真ん中のグループなんですね。
 ここの一番下に書いているのは、実は少なくとも数値的には環境税と明記しないで、単に物価が2%上がりましたよというときの方が、かえって大きかった、つまり数値的には効果が大きかった。ところが、それは実は統計的には有意な差ではなかったということなんです。
 だから、最後におっしゃったのは何でしたっけ、金本さん。

○金本委員 統計的なグループの状況。

○佐和委員 グループで、それはそれぞれグループごとにサンプルとしてはインディペンデントですから、統計的検定をやることは可能だと思います。まだやっていないだけで。

○神野委員長 どうもありがとうございました。
  天野先生。

○天野委員 全体的に非常にわかりやすいまとめ方になっていると思うんですが、有意性の判定は5%、10%としてあるんですが、後ろの表を見ましたら、5%でほとんど言えているので、10%という遠慮をしないで5%と書かれてもよいのではないかと。

○佐和委員 これは僕だけじゃなくて、だれもがやります。
  以前は有利水準と書いて、そこに60何%か、だけど、これは要するに統計学のA、B、Cに間違っていますよということで、おっしゃるとおり、5%に書いていけば、強い結論になると思います。

○金本委員 今の検定の話ですが、差が統計的に有意でないということで、基本的に佐和先生の言うことは統計的には間違いではないんですが、私自身は、そういう言い方をするよりは、どちらかというと、説明するときは信頼域をつくって説明した方が説明しやすいという気がしています。95%で差があるかどうかという検定というよりは、95%と90%の信頼域はどの区間にあるか、それが非常に重なっていると棄却できないということになるんですね。
  統計的な検定をして何かを言おうというときは、やはり有意であるというところをベースに言うべきであって、非常に重なっていてよくわからないというところでちょっとあるかもしれないねというところを取り上げて主張するというのは余り望ましくないと思います。
 要するに、表3のケースですと、環境税を明記しない方が省エネ行動の設定が高まるということは、普通の感じからいくと考えられないですね。こういうふうになっているケースがかなりあるということは、環境税の方が省エネ行動を高めるという主張の統計的に有意でないところについて、何かデータとして変じゃないかというふうな感じを抱くこともあり得るわけです。これは何かを言えること、言えることで統計的に出てきた結果だけですが、そのことについてどういう主張をするかというときに、こういうのが並んでいるときに、そっちだけ統計的に有意でないところを取り上げるというのは余り難しくないんじゃないかという気がしているということです。

○佐和委員 おっしゃる点は、結局、こういうアンケート調査の──こういうアンケート調査というのは、実際に頭の中で考えて、架空の想定のもとで、自分はどう行動するだろうということで、実際に環境税が導入されて、それで行動が変わった。変わる、変わらないかということじゃなくて、いわば想定上の問題なので、それを質問しているわけですから、矛盾した答えというのは随分あるんですね、それはデータをつぶさに検討すると、ものすごく矛盾した結果で、環境税がかかったら、かえって悪い方向といいますか、本来期待される方向、少なくともいい方向に行くはずなのに悪い方向に行っている後退が少なからずあるということもあります。
  それから、最初の視点で、検定に関しては、一応44ページに有意である、有意でないかという一覧表がございまして、天野先生からさっき、5%と10%でほとんど差がないんだから、5%だけ挙げておけばいいじゃないかというのはおっしゃるとおりなんですが、金本さんがおっしゃったのは、ここのビーチというのをもっときちんと明記。とりあえず明記はしてあるんですよね。だけど、例えば20%、いわゆるここで出てきている検討統計量の値が、例えば真ん中あたり1.28というのがあります。それの場合は20%だとか24%。これはとりあえず一応は明記してあるわけです。ということでいかがでしょうか。

○金本委員 最後の点はそうですね。この場合、信頼域は余り意味がないですね、それはおっしゃるとおりです。
  私も若干混乱していますが、こういう行動が変わって、その結果、省エネの成果がどれくらい。その数字について、信頼域を計算するというふうなのをやれば、十分な原動力を持つかどうかということはわかるんだろうと思います。
 この省エネでも促進させるとだけ書いてありますので、微々たる省エネ行動でも促進させる十分な原動力があるということに、間違いではないんだということですが、普通に読んだ人は多分そういうふうに思わないという気がしています。
 あと、こういうアンケート調査でかなりいろいろな答えが返ってくるというのが事実でして、だからこそこういうもので、どういう言い方をすればとか気をつける必要があるということかと思います。それで、十分な原動力というのは気になったということです。

○和気委員 1点だけ。統計の議論は余り専門じゃないので参加いたしませんけれども、認識の差をどう行動に影響が出るかということをどう解釈するかで、最後のまとめでなおがきで書かれています。そういう点も随分この場で議論、ご指摘もされていたし、私も意識と行動の差の議論もコメントさせていただいたんですが、実はこの意識というのは、自分は地球温暖化問題に対して意識があるか、なしかという、極めて主観的なわけですね。したがって、環境教育という議論をするきに、意識を高めるということを目的関数にしますと、意識が高くても必ずしも行動に結びつかないというのは、実は環境問題の最大の、ある意味ではネックでもあるし、したがって、意識の部分で議論を持ってきますと、なかなか政策効果というところを評価する場合に難しいという意味で、むしろこの結果は極めて合理的で、そもそも意識の差が行動にあらわれないというのが非常に現実をあらわしているかなと、私はむしろそのように見て、むしろこれから環境教育の議論をするときに、どの時点で評価軸を置くかという場合に、意識調査だけではちょっと不十分かな、そんな示唆もある。ちょっと言い過ぎかもしれませんが、やはりどこまで客観的な行動として結びつくかという、この種の前半の各行動に政策措置がどういう影響を与えるかというところまで踏み込んでアンケート調査を含めたりしていかないといけないんじゃないかというようなことを感じています。

○佐和委員 そのご指摘は全くおっしゃるとおりですが、念のために49ページをごらんいただくと、機器選択ですね、購入するときに、意識のある人と意識のない人でどうなんだろうかというときに、このテーブルの縦軸には、是正に税なし、税2%上昇、税10%上昇、価格2%上昇ですね。これは4つのグループでそれぞれ400ずつのサンプルがある。サンプルサイズが400
です。その中には意識のある人と意識のない人がほぼ半々。購入時にそういうことを意識しますかという質問に対して、「はい」とか「まあまあ意識します」という人が「意識あり」になっているわけです。それで見ると、Bという機器が非常に環境に優しいというか、省エネ機器なんです。Aがそうじゃない、安いけれども余りよろしくない。
  そういうのを見ると、例えばBという機器を選択する比率というのは、例えば、税なしでも39.8%、約40%の人がそういう選択をするというのに対して、意識のない人は26%だということで、これは明らかに統計的に有意な差ですね。それから、冷蔵庫に関しても、Bでずっと縦に見ていただくと、58に対して46とか61に対して35というふうに差がある。テレビに関しても、46に対して33、56に対して29というふうにかなりの差がある。しかも、Bを選択する確率というのは、税の上昇とともに、わずかながらも、冷蔵庫の場合だったら3%、エアコンの場合は7%、テレビの場合は約10%というふうに上昇しているということで、それに対して意識のない人は、余り税に対してもピンとこないということがあって、乗用車は典型的です。ほとんど20%台で、10%価格が上がれば、しようがないからBを買おうかなというような人がかなり増えますけれども、傾向としては、意識のある、なしで購入時のBで差が出ているということはこの4つのテーブルをご理解いただけるかと思います。

○飯野委員 今の機器の選択の話ですが、このアンケートの表を見ますと、要するに、非常に効率のいい機器を買うと、そういう機器は大体非常に高いものですから、毎年の省エネの効果によって元を取り返すには10年かかるようなモデルになっているんですね、全部。テレビにしても自動車にしても、大体10年たって、ちょうどその機器の高さをカバーできるようなモデルになっているということを考えると、大体そういう機器が10年で買い替えられるということを考えると、もともとこのアンケートは、環境意識の違いだけを聞くようなアンケートになっているんではないかというふうに考えるわけで、普通、我々が経済学でいう合理的な人間というのは、機器の高さと省エネによる支払い、エネルギー代の安さとを比較して、それでどちらにするかというのを決めるというふうにしているわけですけれども、これですと10年使わないと価格の高さをカバーできないようなモデルになっているわけで、10年使うとすれば、それでも新しい機器を選ぶというふうに丸をつけたというのは、環境意識なのか、新しい製品に何らかの別の付加価値がついているのか、あるいは例えば自動車でいうと、自動車税が安くなるというようなものがあるとか、あるいは自動車税の効果を入れたとしても、実は自動車税が安くなるというのは、実際の価格から見ると非常に小さいものですから、やはりそういうもので人間が動かされるとしたら錯覚なのか、それとも環境意識なのかというふうにしか考えられないし、あるいはこのアンケートに答えた人が、エネルギー価格の上昇がまた将来続くだろうと思うか、あるいは税金はずっと続くから、10年はかからないだろうと思って買うのかよくわかりませんけれども、少なくともここに出ているモデルだけを見る限りにおいては、省エネによるもうけというものは10年たたないと、機器の高さの元が取れませんから、合理的行動からいうと、10年使うとして、新しいものに買い替えるとしたら、やはり環境意識だけしかないんじゃないかという気がするんですけれども。

○佐和委員 ここの説明を見ると、すべて価格は安いが、省エネ性能が低いとか、商品価格は高いが、省エネ性能が高いから電気代はたくさんかかりませんよということで、必ずしも数字はきっちり書いていないわけです。ですから、そろばんをはじけるような質問にはなっていないわけですね。つまり……。

○飯野委員 18ページか19ページに、エアコンA、エアコンBというのが載っていて、例えば商品価格がエアコンAですと、エアコンBに比べると4万円安いわけですね。だけども、年間電気代が4,000円高いので、10年たつと4万円の元が取れるという仕組みに。

○佐和委員 どうも失礼しました。上の質問だけ見ていました。
  ですから、確かにおっしゃるとおりに、そろばんをはじけば、どう考えてもエアコンAの方が得だ。にもかかわらず、あえてBを選択する人がいるというのは、単に環境意識のあるなしの問題だけじゃないかということですけれども、しかし、今これはエアコンですけれども、さっきの49ページでいっていただくと、環境意識の低い人も結構ミホンシセツ(?)の間で……。

○天野委員 きょうはアンケート調査の話でしたので、私、他の研究もしたらということで、言おうかな、どうしようかなと思っていたんですが、自動車とかエアコンとかルームクーラーとか、こういうのは非常に多くの無属性があって、消費者は属性を全部判断して決めているんですね、どれを選ぶか。そういう調査を実際やっているのがありまして、エアコンというのは余り機能に差はないんですが、例えば冷蔵庫がどれぐらい大きいか、野菜を入れる場所があるのか、アイスボックスが別にあるのか、いろいろな属性があって、それにプラスして、買うときの費用ですね、これはキャピタルコストですが、それから省エネをやっている冷蔵庫ですと、ずっと続けることによって電気代が安くなる。それは割引して合計して、最初に投下した資本額にあわせて、それ全体が消費者の負担になるんです。その負担の金額と、さっき言った属性をたくさん並べて、実際に消費者がどういう選択をしているかというデータを集めて調べて、その中でキャピタルコストプラスエネルギーの経常的な使用料、それに対して消費者にどういう反応をするかということから、トータルで安い冷蔵庫が選択されているかどうかという調査をして、価格帯なんかを計算するというのがあるわけです。これは自動車についてもやられていますし、ほかの機器についてやることも可能ですから、このアンケート調査はアンケート調査として、そういったデータを集めて、どこかでそれを調査してみたら、現にどう選んでいるかというデータが出てくるんじゃないかという気がします。
  先ほど飯野先生がおっしゃったように、アンケート調査ではそういうキャピタルコストプラスエネルギーの経常費の合計が幾らですよというのは書いてあるわけですから、しかも、そこは余り差がないように元々作っているので、それだけで選ばないとしたら、選ぶ原因というのは、意識だとか環境だとかしかないんじゃないかというのが指摘だと思うので、これはやはりアンケート調査からわざわざ人為的なデータをつくっているので、そういう問題が出ているんだろうと思うのです。ですから、こういうアンケート調査でいろいろな意識調査をすることも重要だと思いますが、実際に客観的には消費者の選好がどうなっているかというのを見ようとすれば、今私が言っていたようないろいろな研究をもとにして、同じような調査を行っていく。私もちょっとやりかけたんですけれども、データを集めるのは大変なんですね、特に個々の商品の値段というのはみんなマーケットで決まるようなものですが、そういうデータを集めるのは大変なので諦めちゃったんですけれども、しかし、そういうデータを集めることができれば、客観的な調査ができるということだけ申し上げて、こういうものを補完する調査としてそういうことをやる意義はあるかなというふうには思います。

○神野委員長 どうもありがとうございました。
  既に議論の前提として意識されていたのかもしれませんが、この40ページと41ページのまとめのところは、後でご説明いただきます。つまりこれまでの審議の整理の中に入ってくるところでございます。ご議論していただいた印象では、そう大きく筋を変えろという話ではないと思いますので、今のご議論を踏まえた上で、表現ぶりを少し考えさせていただくということにさせていただければと思います。
 その際、わかりやすさとか筋などを──筋がわかりやすいということが重要だというふうに言った方がいいかもしれませんが、それがポイントになるかと思いますので、もちろん正確を期さなければなりませんから、本文のここを見れば正確な意味がわかるというようなことがちゃんと示唆されているような形で、筋が混乱しないような形でさせていただければと思っています。
 もう一度戻っていただいても構いませんので、もう一度というのは、次の議題の中の一部に取り込まれていく文章でございますので、そのときにご議論していただいて構いませんので、次の議題に移らせていただければと思います。
 2番目の議題でございます。環境税の経済分析等に関するこれまでの審議の整理について、事務局の方からご説明いただければと思います。

○鎌形環境経済課長 それでは、資料2でございます。前回はメモとして提出させていただきまして、ご議論いただきました。その後、そのときの審議でのご意見、あるいはその後いただきましたご意見も含めまして整理し直したものでございます。
  資料2、1ページ目をおめくりいただきまして、一応全体の整理という体裁を整える上で、こちらの委員会の名簿を入れさせていただきました。
 次のページ、4ページに、「はじめに」というところを加えさせていただいています。
 基本的には、地球温暖化問題の重要性、あるいは中央環境審議会でのこれまでの専門委員会なり政策小委員会での議論、それから昨年の温暖化対策の評価見直しの議論、ことしの3月の答申などを踏まえた京都議定書目標達成計画、こういった経過を掲げてございます。
 4ページ目の下から3分の1ぐらいのところですが、これまでの議論の過程で、さまざまな指摘がなされた。環境税の効果や経済への影響についての指摘がなされたということを踏まえて検討を深めていくという必要性から、この専門委員会で議論しましたということの経過を書かせていただいています。
 その際、今回7回やったわけですけれども、この専門委員会の特定の案にとらわれることなく検討を行うということ、これは当初からそういうことでお願いしてまいりました。それで、今回の整理は、これまでの議論の成果をできる限りわかりやすい形で中間的に整理したと、こういう位置づけを書かせていただきました。
 5ページ目は、1回目から本日7回目までの議題の経過ということでございます。
 6ページ、環境税の位置づけというところでございました。
 前回いただいたご意見の中で、この環境税の位置付けというところは、前回は環境負荷への価格付けとしての環境税、それから汚染者負担の原則の関係、この2点をまず掲げて、一番下にあります税制のグリーン化など税制全体の中で位置付けられる環境税、この部分は現実に諸外国で導入されている議論という意味も含めて、最近の議論ということで、一番後ろの方に乗せておきましたけれども、一応位置づけの議論の初めで、どういう考え方があるかということで、一覧性をもって全部当初に示した方がいいというご意見がございましたので、この3つ、ここにまず出させていただきました。ですから、6ページの下の○が追加した部分ということでございます。
 スウェーデンやドイツなどでは、社会保険料の財源問題などと一緒に議論されて、環境税の導入が議論されたということで、必要な公共サービスを提供するための収入を得る、こういう税本来の目的、こういったものを重視しつつ、税制全体の中で環境負荷に着目した税の位置付けが高まる、こういったことを強く意識して環境税を議論する考え方もある、こういう整理をさせていただきました。
 上に戻りまして恐縮でございます。汚染者負担の原則の関係の議論ですけれども、当初、前回は汚染者負担の原則を実現するための手段としての環境税ということでございましたが、汚染者負担の原則を実現していく手段は、別に環境税だけではないというご指摘もありました。そういうことで、その2段目のパラグラフでは、汚染者負担原則手段としては、規制とかその他行政において対策を講じた後、その費用負担を求めている、そういったような手法がいろいろあるということだけは書き加えさせていただきまして、いろいろな手法の一つとして、この費用負担ルールとして環境税というのは位置付けられるケースだというふうに位置付けし直しました。
 7ページ目でございます。
 日本に置ける経済的手法についての紹介でございますが、その中で、自動車のグリーン税制についての記述ぶりが少しバイアスがかかっているようなご指摘もございました。そこで書き換えたわけでございますけれども、基本的に事実関係、それから、いろいろな見方があるということの公平な紹介ということにさせていただきました。
 まず、自動車のグリーン税制は、導入後、税制優遇対象者の登録台数や対象者数の増加が見られず、その数字自体は事実ということでございます。
 次に解釈の方でございますけれども、実際の優遇税額の対象者の販売台数の経年変化などを見ると、グリーン税制の導入で価格差はまだ残っていても、なお税制優遇の対象者が選考されると、そういうものが高くなる。これも事実でございまして、これがグリーン税制を導入すること自体が一定のインセンティブ効果を及ぼしているということについて、こういう見方があるということでまとめさせていただきました。一方で、逆に他の要因があるということで、グリーン化だけの効果を実証できているわけではない、こういう指摘もあるということで、両方書かせていただきました。
 [2]ごみの有料化の部分でございますけれども、1つはリバウンド効果というものについて前回記述がなかったわけですけれども、そういったものを考慮すべきというようなご意見がございました。
 そこで、前回、既存の研究レビューということでございますが、その中でも、一応これはリバウンド効果を考慮しての数字であったということでございますので、その旨を書かせていただきました。
 それから、リバウンド効果については、その意味するところは、下に注で書き加えさせております。
 それから、ごみ収集のところの「ただし」でございますけれども、ごみの有料化の効果についての分析がおおむね2割前後の減量というのがございますが、ただ、その際、ごみの有料化だけではなくて、同じ時期に有価物回収無料などのポリシーミックスの効果についても十分考慮する必要がある。こういうご指摘をいただきましたので、このように書かせていただきました。
 8ページ、9ページにまいりますけれども、諸外国の位置づけの事例でございます。
 従前、8ページの部分だけでございましたけれども、若干表現は変えておりますが趣旨は8ページは変えてございません。
 9ページ、10ページと諸外国の導入の背景と制度上の特徴的な点につきまして、これは従前に御審議いただいたときに、私どもから資料として提出させていただいたもの、並びに飯野先生からご報告いただいたスウェーデンのケースにつきまして書き込んで表の形にまとめたというものでございます。
 11ページ目でございますが、四角で囲った部分は、従前、資料として提出させていただいたもので、近年いろいろな議論があるということの紹介という形でございますけれども、これについては中身的にはそれほど変えておりませんけれども、近年の紹介ということを明確にして四角でくくっているということでございます。
 12ページ目でございますけれども、環境税の効果というところでございます。
 これにつきましては、価格弾力性についてどう見るかというところでございますけれども、いろいろな論文のレビューをしたことについて、これは価格弾力性の推計値であるということを明示すべきだということでございましたので、その辺を明確にするとともに、価格弾力性分析をすることが、環境税の議論をする際にどういう意味があるのかということを、上から3つ目の○で書き加えさせていただいております。
 価格弾力性の分析という小見出しをつけたところでございますが、環境税によるエネルギーの価格上昇の効果がエネルギーの消費に与える影響、これを見たいということでございますが、そのためには過去のエネルギー価格と消費量との関係を分析することが重要、そして、エネルギー消費の価格弾力性の推計値も、ここは推計値ということを明確にいたしましたが、推計値は所得の変動、当該エネルギー消費に与える影響を考慮した上で、過去にエネルギー価格が1%変化したときに、エネルギー消費が何%変化するか、こういうことを示すということを解説した上で、将来は環境税により、こういったことの分析することの意味は、将来、環境税によりエネルギー価格が上昇したときに、エネルギー消費がどのぐらい変化するかというのを推測する上で重要な示唆を与える。弾力性分析の意義付けをここに書かせていただきました。
 それから、12ページの下の部分、これは天野先生に提出いただいた資料についてのことでございますけれども、ここでは時間的な要因を考慮に入れたということについて明確に書かせていただきました。
 13ページ目でございますけれども、上から2つ目の○につきましては、従来の価格弾力性という形をいわゆる推計値という位置づけで明確にさせていただいております。
 それから、下から2番目の○、これは新しく書き加えたことでございます。前回、道路と価格弾力性の推計値をめぐって、価格効果をどのように見るべきかいろいろご議論いただきました。それをトレースして書いたものでございますが、議論の中身といたしましては、1つ目のポツでございます。需要の価格弾力性の推計値は、価格が技術の開発や普及に及ぼす効果も含めて、価格が需要に与える影響を分析したものであるから、価格の影響だというふうに考えてよいのではないか、こういったご指摘。あるいは逆に、価格が一定でも、技術の開発や普及による省エネ化が進展する傾向があるんだ。分析方法については、省エネが進展する傾向が排除されていないので、長期の価格の消費に対する弾力性は、必ずしも価格の変動に起因するものだけではないのではないか、こういった御意見をそれぞれ書かせていただきました。
 一番最後の○でございますけれども、この議論の過程で、天野先生からご紹介があったわけですけれども、自動車の燃費効率について、いわゆるタイムトレンドを、例えば時間がたてば技術が進展するという意味で、タイムトレンドを考慮して分析したところ、ガソリン価格の上下が車種や使用される技術の選択に重要な要因を与えて、自動車の燃費効率に影響を及ぼしているという試算をされたというご紹介がありましたので、ここについて書き加えさせていただきました。
 それに伴いまして、参考資料でその部分をつけ加えてございます。
 参考資料は分厚く置いてございますが、参考資料の76ページに、天野先生から新しく資料をご提出いただきましたので、乗用車の燃費効率につきましての新たな分析をご提出いただきました。このエッセンスは、真ん中あたりに、「わが国で新車の燃費効率の説明要因として遅れをもったガソリン価格と1次のタイム・トレンドを含む対数線形の推定式を推定した」ということでございまして、弾力性は短期で0.01、長期で0.42と、こういうような分析ということでございます。これはご提出いただいたものを加えまして、本文にもかき加えさせていただきました。
 さらに本文に戻らせていただきまして、14ページ目でございます。
 経済モデルによる分析でございますけれども、それぞれいわゆるAIMモデルとGAMESモデルをここで記述させていただいたわけでございますけれども、このモデルのシミュレーションに関して、この限界とかについてのご指摘がございました。そういう意味で、このモデルを用いた分析をすることの意義と留意すべき点について、14ページの1つ目の○を丸々書き加えさせていただいたものでございます。
 モデルを用いたシミュレーションは、環境税の導入による効果や影響を事前に定量的に推計する上で有効かつ一般的に用いられる手法です。この専門委員会では、まずAIMのエンドユースモデル、すなわち詳細な技術進歩データベースをもとに費用最小化という経済理論に基づいてエネルギー消費機器を選択する。次はGAMESということで、複数の部門に対して統計的に有意な弾力性を生産関数に組み込んでエネルギー需給均衡をシミュレートする、こういったもので環境税の効果を検討したということでございます。
 しかし、「なお」というところで留意点を示してございます。個々のモデルは、一定の理論や仮定に基づいて構築されている。例えば、AIMのエンドユースモデルは、機器選択において費用のみに着目したモデルだということで、機器の選択行動におけるすべての面を実証的に再現したモデルではない、こういうことをご指摘を踏まえて入れさせていただいています。そのため、こういったモデルの試算結果については、各モデルの構造や前提などを踏まえて評価する必要があるということでございます。
 14ページの下の部分は、AIMモデルの解説、紹介でございますけれども、これにつきまして、一番最後、従来、効果が「検証されている」という表現がございましたが、「示唆している」ということで表現を変えさせていただきました。
 次の変更点は16ページにまいります。アナウンスメント効果のところでございます。
 アナウンスメント効果の中で、上から3つ目の○で、事前告知の効果をもってのアナウンスメント効果を解説している部分でございますが、その中で最後の文章を1つつけ加えさせていただきました。「さらに」以下でございます。事前告知によって、例えば環境税の場合、化石燃料の消費者にとって対策を講じる時間的余裕が生じ、二酸化炭素の排出削減効果を得つつ、その経済的な負担を抑えるという効果もあるということで、事前告知の効果というのは、対策を講じる時間的余裕を持たせるという効果もあるということを書き加えてございます。
 次に、17ページでございます。アナウンスメント効果についての事例の紹介ということでございますが、一番上の行、「調査研究事例」とさせていただいています。従前、ただの「事例」とありましたが、ここにあるのは調査研究の事例ということで正確を期させていただきました。
 下の方の○でございますが、ここにも、これらの調査研究の妥当性については、十分な検討が必要である、これもご指摘を踏まえて書き加えさせていただいています。
 18ページにまいります。環境税の技術、産業構造に与える影響ということで、環境税のプラスの影響を論じた部分でございますが、1点は、4つ目の○でございます。イギリスの気候変動税につきまして、国際競争力を保護し、高めるという意味合いもあったということのご指摘がありました。その後、私どもで資料を調べさせていただきまして、イギリスの気候変動プログラムの中で、このプログラムは英国の国際競争力を保護し、高めることも目的としているということが書かれてございました。
 これは参考資料に新たにつけ加えさせていただきましたが、参考資料の105ページでございます。
 英国における経済的手法に対する考え方ということでございまして、[1]英国気候変動プログラム、2001年11月のものでございますが、そこで日本語の部分、上から2つのポツでございますが、「政府は英国の競争力を保護し、高めるためにこのプログラムを策定することを明確にする。」というふうに書かれてございます。原文は下に用意してございますが、105ページの今の部分は、10と書いてある部分がそれに相当するということでございます。
 それではまた本文に戻ります。18ページでございますが、今度は下から2つ目でございます。いわゆる経済的措置の部分についてのことではございませんが、いわゆる環境規制に関するポーター仮説についてのご指摘がございました。そういう意味で、技術革新などに与える影響という意味で、環境規制について適切に設計された場合には技術革新を刺激する、こういったようなポーター仮説について紹介させていただきました。ただし、この仮説の妥当性については、なお議論が国際的に行われているということもございますので、そこの点も留意する必要があるとあわせて記載させていただいております。
 20ページでございます。環境税額の転嫁の部分でございます。この部分につきましては、前々回資料を提出してご議論をいただきましたけれども、その分析につきまして、さらに、原油価格の変動がそれぞれの石油製品の小売価格にどういう影響を与えているかという分析をしたところ、分布ラグを使った分析もさらにすべきだというようなご指摘も受けましたので、その分析を行いました。これにつきましては、参考資料の119ページ以下にその資料をつけてございます。
 新たな分析ということでございますけれども、原油価格とエネルギー製品価格につきまして、そのラグを考慮して、ここでは4カ月、6カ月、8カ月、12カ月などの考慮したものをやったわけでございますけれども、結論的にモデルの当てはまりの程度がよかったものにつきまして、ここに紹介させていただいているということでございます。
 それで、本文にエッセンスを書きましたので、そちらでやらせていただきますけれども、20ページの○の2つ目のパラグラフです。ガソリン、軽油、C重油については、4カ月の時差を見た試算で、原油価格の変動との間にかなりの相関があることが示唆されたということでございます。ということでございまして、ただ、ガソリンや軽油については、転嫁の額が、分析の結果、20%から30%というようなものであったということでございます。それから、電力や灯油などには転嫁されているとは分析できなかった。これは前回、前々回の分析と同じような結果でございます。季節変動の問題、あるいは電力の場合には発電に用いるエネルギーが多様にあるというような問題は従前から指摘させていただいております。
 次に、21ページでございます。マクロ経済及び産業に与える影響ということでモデル分析でございますけれども、前回の記述につきまして、GDPが年率何%とか、ちょっと記述が混乱している部分がございましたので、例えばAIMモデルでいきますと、2006年から2010年までの間においてGDPの成長率を毎年の平均で0.03%ずつ低下させるというようなことで表現を整理させていただきました。部分均衡モデル、GAMESについても同様に整理させていただいています。
 もう1点、後藤先生から、GAMESのメッセージというのは、マクロの影響と業種ごとの影響があるという、その業種ごとにはエネルギー集約産業に大きく負担が出てくる、こういったことがメッセージなんだということのご指摘がございました。そういう意味で、そこの点を明確に書かせていただくために、部分均衡モデルの○の部分と「また」以下でございます。業種ごとに見ると多くの業種では若干の生産減少にとどまるが、特に鉄鋼業の生産額が大きく減少するなど、エネルギー集約産業の負担が大きくあらわれている。このことが、マクロ的に費用効果的な対応にはエネルギー多消費産業の貢献が不可欠であるが、こうした不均一な経済的影響を緩和するため、エネルギー多消費産業に何らかの政策的配慮の検討の必要性が示唆されるということを書き加えさせていただきました。
 22ページ以下、業種別影響のところでございますが、基本的な分析の紹介は、内容的な変更はしておりませんが、23ページの下から2つ目の○です。経済的影響を緩和するため、政策的対応を十分に検討する必要性が示唆されるという部分でございますが、この中で、こういった緩和するような政策的対応をすれば、逆に言うと、環境税の効果というものに、軽減をすれば効果が減ずるんではないか、そういうことも考慮すべしと、こういうような御指摘もございました。そういう意味で、ここで環境上の目標を達成しつつ、他方で経済的影響を緩和するため、政策的対応を十分に検討する必要性が示唆されるということで、「環境上の目標を達成しつつ」という部分を記述として加えさせていただきました。
 最後に25ページでございます。国際競争力の関連でございますが、国境税調整のところで、現実には、WTOの場合はいろいろな議論がなされていないので、さらにこういう議論が進めていくべきだというようなご指摘もございました。というところで、一番下の○、「このため」の後、「WTO等の場での国際的な議論の進展が待たれる一方で」の部分を挿入させていただいたということでございます。
 以上、前回からの変更分の説明でございます。
 以上です。

○神野委員長 どうもありがとうございました。
  それでは、全体につきましてご意見、ご質問をいただければと思いますが、いかがでございましょうか。
 横山委員、全体としてごらんいただいて。

○横山委員 前回出席できなかったのですが、全体的に見て非常にバランスよくまとめられていると思います。とりわけ、転嫁の部分と産業別へのインパクトが明確な形で示されていることで、次のステップに行けるんではないかというような印象を受けました。価格転嫁が難しい電力等については、中環審の方から出ておりますアイデアのハイブリッド型の環境税のあり方への示唆が得られているのではないか。ただ、金本先生が言われておりますように、エネルギー多消費型のところに軽課すると効果がどうか。ここについては、後藤先生のモデルでシミュレーションをできたらという要望を出していたんですけれども、その辺がどうなのかなという気がしました。それは次なのかなという印象を持ちました。

○神野委員長 どうもありがとうございました。
  後藤委員、この間の問題点を含めて何かございますか。この表でいく対応の仕方でよろしいでしょうか。

○後藤委員 私のモデルの結果については、つけ加えさせていただきましたけれども、これで結構だと思います。
  それから、今、横山先生が御指摘の点ですが、やることは簡単ですが、ここにも書きましたように、エネルギー多消費産業の貢献が不可欠である、そこを税を取ってしまいますと、共同シナリオを満たすのに恐らく相当高い税率をかけて、ほかにしわ寄せがいくというところまでやらなければならんのですよね。ですから、いかに多消費産業の税効果を生かしながら還流という形でというので、私は筋を立てていて、今の横山先生御摘のシミュレーションをやっておもしろい結果が出るかなと思って、今、私の頭の中でできていないので、いつかやってみたいとは思いますが、ちょっとお待ちください。

○横山委員 課税をしないということではなくて、ヨーロッパで導入されているヘビープロセスに対する措置というんですか、デンマークでも税を入れるための激変緩和がなされているわけですよね。そこがかなり重要で、実際に環境税を導入するときに一番強い反論が出ているところですよね。そういうところについて、しっかりとした分析をしておく必要があるのではないか。今すぐではないにしても、その辺のところがどうも必要なのではないと思います。ただそれだけです。

○神野委員長 どうもありがとうございました。
  藤井委員、どうぞ。

○藤井委員 報告書自体については、いろいろなところを随分修正していただいたので、私はこれで結構だと思います。ただ1点、素人ながら気になる点は、ここに専門家の方もおいでなのかもしれませんが、ごみの有料化のところでも議論があって、そこが一番重要ではないかと考えるのですけれども、経済的手段を導入した際の環境のガバナンスといった制度の役割の問題が抜けているような気がします。日本ではなかなかそういう姿が見えないわけですが、環境税が導入されることによって、より有効にその効果が作用するといった社会的枠組みのことをどなたかが一言でも書いてくださるとうれしいなという気がしてしようがありません。経済的手段の一つの有効な議論として、今回も一生懸命分析しましたけれども、消費者が反応したり変わっていったり、行動となって現れるのを助けるような仕組みが出てこざるを得ないと思うんですけれども、そういうのは明確な形で出てくるような効果というのもあるんだということを定性的になると思いますが、どこかに一言書いていただけると、環境税導入の効果というものの意味というのがもっと浮かび上がるんじゃないか。税率の方は効率的であるとか、効果があるという話だけではなくて、仕組みの話は次のステップになるかと思いますが、それに向けての経済側からのコメントを書いていただけると大変ありがたいという気がしました。

○神野委員長 ありがとうございます。
  経済分析等の中に大きな意識変化とか……。

○藤井委員 次のステップへ入ると思いますが。

○神野委員長 どうぞ。

○天野委員 先ほどの横山委員のご意見とも関係すると思うんですが、税が高ければ特定の産業に非常に負荷がかかるので、その負荷を緩和しようとすれば、税率を下げなければいけないという話ですが、私は税というのは一つの手段であって、必ずしも全部を税でやらなければいけないということはないわけです。ですから、おっしゃっておられるような激変緩和等でも、ヨーロッパでもポリシーミックスというのは重要であって、特に炭素税の場合には、税収そのものを取るために税をかけているわけじゃないので、税収をどういうふうに使うかということが非常に重要だと思っています。ですから、そういうものを含めた政策パッケージを考えることで、必ずしも減税とか免税という手段だけではなくて、それ以外の緩和措置を講じることで問題は解決できるだろうという話がありますので、今回、必ずしもそういう政策パッケージ全体についてここで議論するということではありませんけれども、そこへ向けての議論として、それを今後考える必要があるということが非常に重要であろうというふうに私は思います。

○神野委員長 どうもありがとうございました。

○増井委員 先ほどの藤井先生の話とも絡んでくるかと思うんですけれども、この検討会は税ということが中心だったんですけれども、技術革新をいかに促すかという仕組みも一つ書いておいてもいいんではないかと思います。これから途上国を初め経済活動が例えば倍になる、そういった状況で、例えばCOを半分に減らさないといけないとなりますと、効率を4倍上げないといけないという話もできてくるわけで、こういう税、社会全体の仕組みを変えるということともに、技術革新というものをいかに組み合わせるか、先ほど天野先生がおっしやいましたけれども、技術という面においても、そういうことが言えるんじゃないかというふうに思います。
  報告書の中で1点だけ非常に細かいところなんですけれども、21ページのマクロ経済及び産業に与える影響のAIMモデルを用いた試算ではと書かれているんですけれども、誤解のないように説明しておきますと、ここでのAIMモデルは、その前に与えられております技術選択モデルとは違う経済モデルですので、AIMにおける経済モデルと明記していただいた方がいいと思います。

○後藤委員 先ほどのアンケートのところに戻っていったときに少しやりましたので、そこで質問ですが、幾つかのアンケート結果で、2%からと10%からで余り有意な差がないというところがどうも気になるんですけれども、それで、何となく見てみると、比較的、合理的に経済計算ができるような質問に対しては10%の方が大きいという結果が出ている。私もよくわかりませんけれども、エアフィルターの掃除をししたり、シャワー回数を減らしてどのくらい浮くのか、こういうのにはフィーリングで答えているような気がするんですね。それで有意性がでない。可能ならば、意識調査ですからこれで終わりというより、意識のもとになる、この意識は何を理由にしているのか。そういうことがあれば、アンケートに答えた人が一応それなりに、今エアコンプラグを抜いたり、そういうことをやった結果、幾ら幾らの金になって、そのまま自分にとって対策すべきだ、そういう市場の目利きの結果なのか、何となくフィーリングで、税がかかるとこういうことをやると環境にいいんだというので選んでいるのか、そのことも調査できるとおもしろいなという気がするものですから。ちょっと意見まで。

○神野委員長 何かコメント。よろしいですか。
  ほかに何かございますか。

○中上委員 今の後藤さんのご意見と近いんですけれども、どうもアンケート調査が補足的にやられたような感じがしますので、これは補足的なものではなくて、本格的に取り組むだけの価値があるんじゃないかと思います。ほかの先生もどうもそういうことをおっしゃるのではないかと思いますので、ぜひ、そうしていただきたいと思います。
  前回申し上げたかもしれませんが、主婦の意識行動と男性とは全く違うということです。女性と男性が半々であることが、必ずしもこの場合本当によかったのかどうかという気もいたします。もし、家庭に問いかけたいとするならば、主婦向けに、もう少しわかりやすくかみ砕いた形で、あるいは彼らの行動に直接訴えかけるようなテーマをもって精査されると、もっとおもしろい結果が出るんではないかと思います。
 私は思いつきで税と税以外の2つをやってみたらどうかと言って作業をふやしたかもしれませんが、それでもやや有意な結果が見えそうになってきていますから、せっかくですので、これで終わらせないで、本格的にやってごらんになると、もっと説得力のあるデータが取れるんじゃないかと思いました。ぜひトライしてみてください。

○神野委員長 和気委員。

○和気委員 今の議論で、今、家計調査でパネルデータを日本でかなり充実させる動きがあちこちでございまして、いわば定点観測で、もちろん教育水準とか所得水準とか、意識も全部含めて。その中に環境指標を含めたデータのアンケートの項目の中に入れていきますと、例えば意識の背後に何があるかとか、年齢だけではなくて、子供の数とか、今現在、職を失っているとかいないとか、さまざまな指標が、使えるものもあると思うんですね。したがって、環境問題だけの統計データではなくて、もうちょっと家計パネルの中の調査項目の中に入れ込むということもこれからの展開ではないかというふうに思います。

○神野委員長 どうぞ、藤井委員。

○藤井委員 先ほどガバナンスの話もちょっとしたんですが、このアンケートでも、私が知る限りは、省エネ法で特にプランナー規制が始まってから、対象機器になっているアンケートのエアコンも冷蔵庫も猛烈な勢いで省エネルギーが始まっていまして、ですから、初めは割と格差があったにもかかわらず、今、メーカー別には余り格差がなくなっちゃっているんですよね。だから、比較をされているデータも、現実のデータに基づいてある程度やられていると思うんですが、余り比較の差がなくなってしまった。それも昔分析した効果からも、メーカー間の比較よりも、むしろ買い替え効果というんでしょうかね、10年前のエアコンをまだ使っていらっしゃる方が新しいエアコンを使ってくださる効果の方が効率が上がっている際には非常に有効だというところがあって、消費者の行動も、そういうところの要素、つまりメーカー間の比較とか、効率と価格の選択だけではなくて、過去のデータとの買い替えのような効果が技術革新には大きい場合が上がっているということが非常に重要だと思っています。その意味で、消費者の選択が、例えば環境税のようなものを導入したときに、メーカー間の生産者側の行動をどうプロモートするかという効果はすごく大きな効果だと思っているので、そこについての分析を今後もしやられる可能性があればやっていただくと、環境税導入によってさらにメーカー間の競争なり省エネルギーの効果が高まるんだというところが示せればすごく大きなポイントになるんではないかと思います。

○浅野委員 報告書としては、分野外の者が見ても、結構丁寧に読んでいけばわかりやすい報告ができたと思いますので、小委員会に持ち込んで、妙な誤解を与えるような議論は出てこないことを大いに期待したいと思います。
  そういう意味では、アンケート調査のところは既にさんざん議論が行われているわけですけれども、これだけで決定打みたいなことにはなっていないことをはっきり表示していおた方が余計な難癖をつけられなくて済むと思いますし、この中で示唆されることはここまでは示唆できるんだということはきちっと書いておいて、なお、今、中上委員や多くの委員がご指摘になったように、ちゃんと調整をすればもっとちゃんとした結論が出るはずだということを記しておいても、これは仮説を述べるだけで、だれも文句言えないので、そういうような整理をしておいた方が賢明ではないかと思います。
 例えば、随所に気になる点があって、これはどうしたらよいかわからない面もあるんですが、特定の税のモデルを念頭に置いて検討しているわけではないと言いつつも、例えば20ページの価格の転嫁というのは、明らかに上流課税の場合に主に問題になることで、最初にはそう書いてあるわけですが、2番目の○のところでは、これは上流課税の場合は十分な価格転嫁と、上を見ればわかることではあるんですけれども、そういう前提のところで出てきてしまうし、それから21ページが総論的にまとめているエネルギー多消費産業に何らかの政策的な配慮というのは、これは当然税を導入した場合ということになるわけなんですけれども、ここら辺のところは表現ぶりは多少工夫をした方がいいのではないか。
 それから、天野委員がご指摘になった点については、これはなかなかよく事務局も考えて書いていると思ったんですが、21ページが政策的配慮の検討と書いてありますし、業種別影響のところも政策的対応が必要と書いてありますし、他方、国境税調整のところは明瞭に税率の権限というふうに書いてありますから、やらなければ、税の枠内でやらなければいけないことと、それをもっと超えたところでやらなければいけないというニュアンスは出そうとしているわけですね。しかし、もうちょっと何か丁寧に説明的に書いておいた方がわかりやすいのであれば、表現ぶりは少し工夫をした方がいいのではないかと思います。しかし総じて、この報告書が出ることによって、ますます混乱が混乱を深めるということにはならないと、私も確信をしたいと思います。どうもありがとうございます。

○神野委員長 はい、佐和先生。

○佐和委員 単なるコメントなんですけれども、まず13ページのところで、価格弾力性の推計値が有意にマイナスに出たということに対して、両論併記の格好で、要するに、価格は変わらなくても技術の開発で省エネ化が進展するということがあるんだからというふうに書いていますけれども、しかし、オイルショックまでは、自動車の燃費効率というのはむしろ悪い方向を向いているわけです。より早く、より大きく、より強くという技術革新の座標軸が極めてモタニズム的な方法だった。それが、オイルショックの後、より燃費効率のいいとか、あるいはより小電力の方向に技術革新の座標軸が備わったというか、その方向へ向けて技術確信が進み始めた。それがさらに、いわゆるCO問題ということで、さらにその傾向が加速されたというべきであって、ここに表現を見ると、技術の開発者がほうっておいても省エネの方向に向かうかのような印象を与えるというのはよくないと思います。
  それともう一つ、さっき藤井さんがおっしゃったことと関係するんだけれども、やはり市場経済というのは、よく消費者主権というふうに言われますが、つまり、消費者が何を欲しがっているか、つまり、自動車を買うときに、一体何を考えて自動車を買うのか、どういう自動車を欲しがっているのかというのを見て一生懸命生産者の側は理解するわけですね。そうすると、今だと同じ排気量の車を買うときにでも、燃費効率のいい車の方を消費者がプリファレンスする。それを見た上で生産者はその方向へ向けて技術開発をするということですから、いずれにせよ、こういうことはいろいろあるわけですけれども、とりあえず簡単な式で推定すれば、弾力性がマイナスで出た。じゃ、マイナスが出るかということの説明の一つのインタプリテーションだというふうに思うんですね、今申し上げたようなことが。
 もう一つは、環境税の狭い意味でのアナウンスメント効果といいますか、事前に1年後に導入されますよというようなアナウンスメント効果があったときに、消費税を3%、例えば5%から10%に上げますよということを1年前に事前通告されれば、当然買い急ぎますよね。買い急ぎで景気は一緒によくなる。しかし、必ず導入された後には揺り戻しでリバウンドする。これも明らかなんです。それを3%から5%に引き上げられたときもそういう減少が顕著にあったわけです。
 環境税の場合どうなんだろうというふうに考えると、環境税が1年後に導入されますよ、ということがアナウンスされたら、まず、たまたまそのときに車を買い替えようと思っていた人は、燃費効率のいい小型車に買い替える傾向が強まる。それから、実際にガソリンを先物買い──先物買いでもない、家で買ってどこかに置いておくというわけにいきませんから、事前通告という意味でのアナウンスメント効果というのはプラスでもマイナスでもないというか、別に特段のものはないんじゃないかという気がいたします。

○神野委員長 ありがとうございました。

○天野委員 消費者のように、対応期間が非常に短い。司会(?)に対しては先生おっしゃるとおりだと思うんです。
  アナウンスメント効果というのは政策主体が実施をするときに、例えば、将来実施することが明らかになった時点で1年くらい先にアナウンスするかしないかというのは当時から決められるわけです。あえてそれをするというのは、対象になって主体の調整期間が非常に長く必要になる。だから、あらかじめ調整を始めなさいということを言うためにアナウンスするという決定をする場合が多いですね。英国の例がここで報告されて、明らかにそれを意識して、1年前に約束した。それが本来のアナウンスメント効果ですから、消費税を前もってアナウンスというのは間違った意図というか、下手なアナウンスをしたということになると思います。ですから、ここで考えられている環境では非常に長期の調整が必要ですから、1年では短すぎるんですけれども、それ以上するというのはちょっと無理ですので、そういう判断をしたということだと思います。

○神野委員長 飯野委員。

○飯野委員 まとめの6ページの一番最後のパラグラフですけれども、前回の財源調達の手段としての環境税という露骨な言い方がなくなったのは非常にいいと思うんですけれども、そこの下から3行目に書いてある、「必要な公共サービスを提供するための収入を得るという税の目的」という書き方は非常に誤解を招く書き方ではないかという気がしているわけで、必要な公共サービスを提供するための収入を得るという税の目的から言えば、消費税でもいいし、所得税でもいいわけです。やっぱり環境税が国民から支持を得られる理由は、そういう単なる赤字補てんのための税源でないんだというところに非常に国民の支持があるわけですから、こういう書き方、あるいは上の文章のつながりでいうと、スウェーデンやドイツでは社会保険料の財源問題とともに議論されたというのは、要するに、そういう税源の代替財源として考えられた、あるいは税制のグリーン化をしながら税収を図ったという目的を重視したわけですから、ただ単にこういうものを調達するために環境税を導入するという言い方は非常に誤解を招くんではないかという気がいたします。

○金本委員 ちょっと別の観点から同じようなことを申し上げようかと思ったんですが、90年代から世界の経済学者の間で、二重の配当についての研究がかなり数多く出ていまして、そういったことを全く取り上げないというのは、先日見ていて奇異に思ったという感じで、今の飯野先生のご議論はそれと関連するんですが、要するに何かというと、環境税で税収が上がりますと、ほかの税金を軽くできる。ほかの税金のかなりのものというのはいろいろな弊害をもたらしている。経済学ではデッド・ウェイト・ロスとか死重損失とかよく言われていますが、大体アメリカでの推計ですと、税金を1ドル余計に取るために、そういうもろもろのロスが30セントとか40セントぐらいあるというふうなことが言われていまして、日本でも推計はあるんですが、日本での推計例は余りなくて、かなり低い推計値になっているケースを2つほど見たことがあります。
  基本的にそれがどれぐらいかというのはなかなか難しい問題ですが、ほかの税金を安くできる。そのことによって、当初の環境を良くするということに加えて、二重の配当がありますということで、これがどれぐらいかということについてたくさん研究がございます。これは今回入れるかどうかは別として、配慮しておく必要があるのと、やはりこれだけ研究が出ているものが全く取り上げられていないというのは何か妙な感じだなという気がいたします。
 ちょっとだけ申し上げますと、基本的にほかの税を安くできるという便益があるということについては、論争になっているわけではなくて、論文があって論争になっているのは、そのことによって環境税の水準をピグー税、そういう問題を考慮しない最適な水準よりも、上げるべきなのか、そうでないのか。ノードハウスがピグー税の水準よりもぐんと上げた方がいいというふうなシミュレーション結果を出して、それ以後話題になったようでありまして、いろいろやってみると、必ずしもそうではない。ピグー税よりも若干低目になることもあるといったふうなことが書いてあります。
 ただ、いずれにせよ、環境税を入れることが、ほかの税金を安くできることによって、社会的な便益が発生するということは事実だということだと言えます。

○神野委員長 二重配当論を含めて、環境税の課税目的の整理の仕方については、いま一度整理しておきます。

○鎌形環境経済課長 文献なども当たってみたいと思います。場合によっては参考資料をつけます。

○天野委員 二重配当論は今おっしゃったような内容で、環境税、エネルギー税は物価を上げる効果があるんですね。そうすると、既にほかのところで税がかかっている歪みをかえって大きくしてしまうというので、プラスの影響とマイナスの影響と両方ありますけれども、そういう議論があります。必ずしもいつもプラスになるというわけではないので、そのことを考えると、何のために二重配当論を入れるかという趣旨が非常にわかりにくくなると思います。二重の配当という根拠があるので環境税が望ましいんですという言い方をすると、ばっと反論が出てくる可能性があるというふうに私は思います。
  それから、私も6ページの下の部分は以前から申し上げているんですけれども、新しい税収を上げる手段になるんですよという議論は、環境税の本来の目的ではないので、これはしない方がいいという先生のご意見に私も賛成です。そういうふうにとられないような言い方、つまり、環境税というのは、環境保全目的のために導入するわけですから、本来そういう趣旨の税であるということを主張するのがいいんではないかというふうには思っております。

○神野委員長 いずれにしても、二重配当論その他は紹介するような形にとどめざるを得ないと思いますし、それから課税目的その他については、あまり作用だけを重視すると、場合によっては税ではないと言われる可能性があるので、そこら辺の表現をうまく考えながら、課税目的の書きぶりを事務局と調整させていただきながらご意見を伺いたいと思います。
  ほかにございますか。
 それでは、特にアンケートの結果などについては多くのアドバイスをいただきましたし、全体の書きぶりについてはほぼご了解いただいているかと思いますけれども、表現の仕方についてはなお事務局と相談しながら、特に次のステップにつなげるような表現ぶりを考えていきたいと考えております。また、多くの点で、今後、環境行政として考えていかなくちゃいけない課題もいただいたと思いますので、それはこれとは別に切り離して事務局の方で対応していただければと思います。
 それでは、取りまとめにつきましては事務局と私の方にご一任いただき、もう一回委員の方に投げ返す時間的な余裕はございますか。

○鎌形環境経済課長 一応委員長のところでまとめさせていただきたいと思いますけれども、特にご意見いただいて気になる点につきましては、個別のご相談をすることもあり得ると受けとめていただければと思います。

○神野委員長 それでは、今のような対応をさせていただくということでよろしいですか。
  では、ありがとうございました。本日の委員会はこれにて終了したいと思います。
 どうもお暑い中、熱心にご討議いただきましたことを御礼申し上げます。
 今後の予定については、別途ご連絡させていただくことになりますので、その際にもご協力いただければと思います。よろしくお願いいたします。
 どうもありがとうございました。

午後 1時01分閉会