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中央環境審議会 総合政策・地球環境合同部会
第14回地球温暖化対策税制専門委員会



<日時> 
 平成15年8月27日(水)13:34~14:40

 
<議事>

午後 1時34分 開会

○飯野委員長 それでは、定刻となりましたので、ただいまから地球温暖化対策税制専門委員会第14回会合を開催したいと思います。
 さて、本日は専門委員会としての報告の取りまとめに向けた議論を行いたいと思っております。
 前回、報告素案に対しましてさまざまなご意見をいただきましたので、それを踏まえて修正した報告案を用意しております。本日はこれについて委員の皆様にご意見をいただきたいと考えております。
 また、報告についてのご議論の後、環境省における今後の検討についてご説明いただきたいと考えております。
 本日の会合は15時までの予定でございますので、よろしくお願いをいたします。
 また、本日は途中から鈴木環境大臣もお見えになるとのことでございます。
 それでは、事務局の方から資料の確認をお願いいたします。

○事務局(西村) それでは資料の確認をさせていただきます。いつものように黒いクリップを外してご確認いただければと思います。
 表紙をおめくりただきますと、議事次第、資料一覧でございます。
 次に、資料1 温暖化対策税制の具体的な制度の案でございます。次に、同じく資料1でございますが、説明用の参考といたしまして、前回の会合からの修正点を見え消しにした資料を配付させていただいております。会場の方々にはこちらの見え消し版のみ配付させていただいております。次に、専門委員会報告別添資料でございます。次に、専門委員会報告別添資料の修正箇所(下線部)という2枚紙がございます。
 次に、資料2といたしまして、温暖化対策税に関する意見募集についてでございます。
 つぎに、資料3といたしまして、温暖化対策税に関する国民的な議論の展開に向けた当面の取組でございます。
 次に、参考資料といたしまして、国民皆が参加して支える、新たな環境政策の提案、飯野委員長のペーパーでございます。
 最後に、前回ご欠席でありました桝井委員の方からご提出いただきました意見につきまして配付をさせていただいております。
 以上です。

○飯野委員長 それでは、資料の不足等ございますでしょうか。なければ議事を進めさせていただきます。
 さて、お手元の資料1が、前回のさまざまなご意見を踏まえて修正した報告案でございます。前回からの修正箇所を中心に事務局から説明をお願いいたします。

○小林審議官 それでは、事務局の方から資料の1の、お手元にございます「説明用の参考」という方に従いましてご説明をさせていただきます。
 資料の説明用の参考でございますが、目次、委員名簿を省略をさせていただきます。検討経緯につきましても、前回置いてあった場所とは違っておりますが、内容は変わってございません。
 3ページからが本文でございます。下線で修正箇所を表示しておりますが、文書整理等、例えば文章を短くしたようなところは省略をさせていただきます。まず3ページの一番下の○でございます。
 ここにつきましては、寺西委員、横山委員からご意見を賜ったところでございますけれども、地球温暖化の問題が非常に切迫した重大な問題であるということをもっと丁寧に書くべきではないかということでございます。そういうことでございますので、委員長のご指導を受けまして、地球温暖化問題というのは最も重要な環境問題の1つであるということを冒頭書きまして、その後、具体的な国民生活あるいは社会に対する悪影響を例示をするようにしております。従前は、太平洋の島国における国土の水没ということを書いてございましたが、さらに我が国にも直接間接に大きな影響を与えるということで、災害の防止、新たな感染症への対処、食料生産の維持といったような国内的な対応はもとより、世界の穀物生産量の変動・価格の変動、各国の社会不安などで貿易を通じたリスクもありますというようなことが書いてございます。
 それから4ページでございますけれども、3つ目の○でございます。「我が国が議長を担い国際合意に至った、」というようなことを書き加えました上、この「京都議定書の早期発効が期待されている」ということで、こういったタイムスケジュールの方も切迫をしているということがここにも書いてございます。いずれも先ほどの寺西先生あるいは横山先生のご意見を踏まえたものでございます。
 それから、同じページでございますが、(注2)が新設をされておりまして、浅野委員の方からご指摘ございましたけれども、税以外のこともいろいろ検討をしているということで、そういうことについてのご関心もあるわけでございますので、他の検討事項をここに書いてございます。
 また5ページには、地球温暖化対策推進大綱のうち、この専門委員会報告が主に対象としておりますエネルギー起源CO2についてどのような対策そして施策が書かれているかというのを1つの表にまとめたものが掲げられております。これも地球温暖化対策推進大綱といっても何のことだかわからないという方もいらっしゃると思いますので、既存の施策、既存の対策はこういうものだというものが煎じ詰めて書かれております。これらの施策で十分でないということになりました際に、税といったようなことも可能性があるということになってくるわけでございますが、その出発点が書かれております。
 それから6ページでございますが、一番最初に柱書きとしてアンダーラインが入ってございます。これは入念的な文章の追加であります。横山委員の方からご指摘ございましたように、実は代替案についてだけ意見を聞かしてくださいというふうに明示的に書いてありました。事務局といたしましてはもちろん全体について意見を聞かしてくださいということだったわけでありますが、この1番から6番という提案の具体的な中身についてのご意見を聞くところが明示的には確かになかったということでございますので、この6点に対するご意見いついてお寄せいただきたいということが柱書きとして新たに書かれております。
 それから8ページでございますけれども、8ページの真ん中に、化石燃料を環境上の理由から割高にする施策を採用するということは、規制による場合と異なって、技術開発なんかについてもそれを息長く進める上でよい動機づけとなるということが書かれてございます。これは竹内委員がおっしゃっていたことでございまして、それに類する意見は他の先生からもございましたけれども、税制が変わるということは、直接の価格効果以外にいろいろな効果がある。なかんずく研究開発上の効果というふうなことをきっちり書くべきだ、こういうことでございます。
 それから次のポツですが、直した部分は少ないのでございますけれども、丁寧に言いますと、「温暖化対策税の導入により、まず、上記のような課税による価格インセンティブ効果」と言って、その価格インセンティブ効果の中身を説明している部分でございます。ここを変えたということですが、「以前より割高となった物への支出を抑えるため、設備の導入などの対策を行うことにより、その物の使用を減らそう、との動機を高める効果」というふうに書き換えてございます。従前、節約効果だけを述べているのではないか、設備の導入促進といったような効果が大事なのではないか、ほかの部分はちゃんと書けているけれども、ここは変だよねというご意見がございまして、天野委員、佐和委員、植田委員からそういったご指摘を受けた部分でございます。
 9ページでございますが、「税制は、いわば市場のルールであって」ということで始まる文章がございます。国民の経済行動に対して陰に陽に大きな影響を与えている、それを環境保全の観点から手直しをし、上記のような効果、これは1番から6番まで書いてあるところでございますが、そういうものを発揮し得るよう改善することに伴って、国民が行う地球環境を守るための労力は一層報われるものとなる。このことを通じ、我が国の経済社会が地球環境と共生し得る新しい型の経済社会へとみずからの力でダイナミックに脱皮していくこと期待される。こういった、税制そのものの変更に伴う意義というものをきちっと書きなさいというお話が寺西委員、竹内委員、植田委員からございましたが、これを記述したものでございます。
 それから10ページに移らせていただきますが、(2)ということで見出しを変えてございますが、これは、後でご紹介いたします天野委員、それから佐和委員からのご議論を踏まえまして、それはどういうことかといいますと、天野委員からもともとお話がありましたのは、4万5,000円炭素トン当たりの課税というものが、補助金と併用した場合のトン3,400円の課税と同等の効果があるということをわかりやすく説明した方がいいのじゃないかというご意見がございました。そういうことを踏まえまして、そうしますと見出しは、課税することと排出が削減されるということとの関係という形になりますとちょっと狭くなりますので、ここは「排出が削減される仕組み」というふうに表題を広く整理させていただいた上で、今のご指摘を賜ったような意見に文章の中で対応させていただいたわけであります。
 まず、「温暖化対策税は、」ということで、冒頭のアンダーラインでございますが、「以前より割高にして省エネ設備や新エネ設備の経済的な魅力を高め、」ということでございまして、これは、「割高にして」という言い方の方がいいだろうということでご指摘をいただいたところでございます。生産要素の相対価格が変わるのだという趣旨が出ているわけであります。
 それからさらに、冒頭の見出しを変えた話と違う話をするようで恐縮でございますけれども、10ページの一番下のポツでございますが、これは佐和委員からご指摘を賜ったところでございますけれども、佐和委員以外に植田委員もご指摘があったかと思います。対策が1兆円も使っていて削減ができていないとなると、その1兆円使っている意味がない、あるいはさらに増やしても意味がないという議論と誤解されかねないというご指摘がございました。そういうことを踏まえまして、そういった政府支出によりまして、「対策がない場合に比べて実際の排出量を相当に抑制しているものと推計をされる。しかしながら、」それでも高どまりをしているのですという丁寧な書き方に変えてございます。ちなみに、地球温暖化対策推進大綱の策定時点でも、その政策がなければ、BAUケースでは例えば20%温暖化ガスの排出が増えてしまう、それを京都目標に抑え込むのだ、こういうことで書かれておりまして、既存の対策というものの削減効果、これは外には見えないものでありますが、あるというふうに推定をされております。
 それから11ページの見出しを変えたことに伴う部分でございまして、特に見え消しですが、直された後の形で読ませていただきますと、「このような場合には、」つまり規制や自主的取組を一生懸命やってもなかなか進まないような場合に、「経済的手法を用いることにより、施策の実効を上げることが期待される。すなわち、化石燃料の価格を割高にし、あるいは対策技術の導入のための初期投資額を割安にすることによって、省エネなどの対策をした場合とそうでない場合との間の経済的な利益の差を拡げ、省エネのための製品や設備などの経済的な魅力を高め、エネルギーを今以上に大切にするよう、広く、かつ自然に促すことが一つの有効な方法となろう。こうした機能を持つ施策が、温暖化防止に着目した税、あるいは税と併せて活用する助成措置といった経済的手法である。」前回の文章では税と助成措置が裸で並んでおりましたけれども、ここは税と併せて活用する助成措置というふうに書かせていただきました。
 それから11ページ(注)でございますが、大塚委員からのご指摘を踏まえて、先ほどの1兆、正確に言いますと1兆3,000億円の支出の内訳が書かれております
 13ページでございますけれども、少し上の方、最初のポツの下に修正がございます。これは文意の明確化でございます。天野委員から、又はがずっと続いている文章でございましたので、読みにくいということのご指摘がございましたため、読みやすく直したものでございます。
 それから14ページにまいらせていただきます。これは植田委員そして寺西委員からのご指摘に対応したものでございますが、一番下のポツであります。注の上でございますが、「地球温暖化対策は、税によるにせよ、よらないにせよ、新しい型の経済への変革を促すものである。しかし、このような低率の税を採用することにより、現在の産業構造など、今ある経済の姿を踏まえながら、着実に変革を進める施策とすることができるのではないか」ということでございまして、実はご意見の趣旨は、経済を変えなきゃいけないというのに、この専門委員会の報告の原案におきましては、今ある経済の姿を余り変えない施策ができると、こう書いてありまして、向いている向きが少し矛盾するのではないか、経済を変えていく中で、その経済の変え方が、穏便なもの、そういうのが趣旨なんだろうけれども、その趣旨が見えてこない、矛盾したふうに聞こえるというご指摘がありました。それに対応する修正でございます。
 それから15ページの注2につきましては、諸富委員から、一般の人が読むときに、源泉徴収義務者、特別徴収義務者等々、用語が難しいのじゃないかというご指摘があったわけでございます。
 16ページは文章の整理だけでございます。
 17ページの一番下でございますけれども、読みますと、「仮に税収を温暖化対策に活用することとした場合、その際の具体的な仕組みについては、例えば、目的税や特定財源とし特別会計に繰り入れるということも考えられる一方、一般財源として一般会計に繰り入れた上、」と始まりまして、その後に続く文章を直した後で読みますと、「温暖化対策のために、これを補助金や他の税の減税財源として活用するということでも同様の効果を発揮し得ると考えられる。」これは大塚委員が、前回原案のままですと、これは一般財源に繰り入れて温暖化対策以外のために使うことも読めるけれども、それでいいのだろうかというご指摘があったところでございますが、そういったケースにつきましてはむしろ代替案の方で記述をしておりますので、ここではそういうケースではないということが明らかになるように書き換えたものでございます。
 それから18ページの方で、最初のポツ、「いずれの仕組みによるにしても、」ということで、「世の中の納得が得られる透明な使い方とすべきである。」文章が長くなりますので切りましたが、「また、」ということで、「補助金や他の税の減免措置などの助成に係る施策が適切に行われるような仕組みを整備し、」これは大塚委員、それから天野委員からこういった、効率的にあるいは効果的に配分する仕組みというものの整備が必要であるというご指摘を受けたものでございます。
 それから18ページの真ん中でございますが、温暖化対策のイメージとして、従前は全体の一覧表のようなものを20ページに掲げていたわけでございますけれども、これでは一般家庭にとっても意味がよくわからないというご指摘がありまして、もっと国民に意味が分かっていただく具体的な例 を書くべきであるというご指摘が寺西委員、そしてご欠席でいらっしゃいましたけれども、桝井委員からも書面で追加意見が提出されております。その根っこになる文章をここに起こした上で、後でご説明いたします新しい図を、ご指摘に沿いまして作成をしてございます。それを後でご説明いたします。
 それから、次の「しかしながら」の後の文章でアンダーラインが入ってございますけれども、この税収の使途の中で、製品等の開発あるいは技術の開発、こういうことが第1だということでありますけれども、これが書いてないというご指摘が竹内委員からございました。ワーキンググループ報告には実は書いてあるのでございまして、ワーキンググループ報告からこちらに来るときになくなっていましたので、これはワーキンググループ報告の方と同じようにしました。
 それから18ページ一番下のポツでございますけれども、地方公共団体のかかわりが、レビューも前のことでございますから、仮定に仮定を重ねたような書き方で、持って回った書き方をしてございましたが、それはそうではないのじゃないか。やはり地方公共団体の果たすべき役割はある、大いに期待される、そういう前提で書くべきじゃないかというご意見を横山委員、植田委員からいただきました。そのとおりだということになりましたので、ここに書いてございますけれども、「温暖化対策については、国との連携の下、地方公共団体においても積極的に実施されることが期待される。」そして、これは横山委員からのご指摘でございますが、最後の2行のところですが、「温暖化対策税の一部を地方税としたり、地方譲与税の仕組みを活用するという方法により、税収の一部を地方の財源とする」これはワーキンググループに書いてありましたが、専門委員会報告の素案では省略をしていたわけですが、ご懸念というかご疑念がありましたので、ワーキンググループ報告と同じでございますが、書き起こしたということでございます。
 それから19ページ、大変長いアンダーラインの部分がございますが、これは先ほどちょっとご紹介させていただきましたが、4万5,000円という税率の排出削減効果と補助金を併用した場合の3,400円という相対的に低率の課税の効果が同じとなるとの理由を入念的に書き起こしたものでございます。書いてみますとなかなか難しいなと思いましたが、一応読ませていただきます。
 第2パラからですが、「家庭や企業が、温暖化対策を行うかどうか、あるいは、どの程度の対策を行うかを決める際には、経済面では、「温暖化対策のための設備投資や機器購入にかかる費用(初期投資の必要額)」と「省エネルギーにより浮かせることができるエネルギー費用」」これは年々出てくるランニングコストの軽減額ですが、これらを「比較して判断すると考えられる。」 「課税によって、エネルギーの価格が高まるほど、省エネルギーにより軽減できる額は大きくなる。一方、温暖化対策のための設備や機器への補助は、「初期投資の必要額」を引き下げる。」こういうふうなことを考えますと、「施策によって対策実施を後押しする場合は、省エネルギーによる費用軽減額、又は、初期投資の軽減額を大きくして、対策を実施した場合と実施しない場合との経済的利益の差を大きくする」、言いかえますと、「対策を実施した場合の不利を埋めまして、さらには対策をした場合を相対的に有利にする」といったことが重要である。
 そういうことで比べてみますと、「したがって」ということでございますが、炭素1トン当たり3,400円の課税の案は、エネルギー費用の軽減額に関しては、確かに炭素1トン当たり4万5,000円の課税よりも小さいわけでございますけれども、課税と同時に補助を行うことにより、初期投資の必要額を引き下げることとしているわけでございまして、このため、その合計の効果は、最後で言いますと「両案ともに、家庭や企業の温暖化対策を促す上で同程度の効果を持つことになる。」と、丁寧に書いてみました。やや冗長だったかもしれません。
 20ページでございますが、絵の中で見にくいのですが、矢印で下からいろいろ支えております上の欄に※印で、「この他、バイオマス」といって始まるところがございますが、その後ろの方にアンダーラインが追加されておりまして、「新規の技術開発や環境起業の支援など」ということで、これは竹内委員のご指摘に沿ったものでありますが、ワーキンググループ報告の中にこれがありましたので、追加をさせていただきました。
 21ページは先ほどご説明させていただきました寺西委員の意見、そして桝井委員の意見に沿いまして作った全く新しい図でございます。
 ちなみに、中を説明させていただきますと、まず現状といたしましては、平均的なご家庭、マイカーを持っているご家庭につきましては、CO2で年間約5.9トンのCO2を排出している。仮にここに温暖化対策税が導入され、その税率が相対的に低率ということでAIMモデルで計算しました炭素トン当たり3,400円の税率の場合ということでございます。ちょっとCO2と、ここで炭素トンになったり、ややこしくて申しわけございませんが、計算しますと直ちに出ますが、1世帯当たりの税負担額は年間約5,500円、月間にしますと約460円、電気、ガス、ガソリンなどの平均的なご家庭の光熱費の2%に当たります。こう言った税負担が生じます。
 この税負担をきっかけに環境対策をしようということになって、矢印の下にございますように、例えば燃料消費が従前の車よりも2分の1になる低燃費車に買いかえますと、CO2は15%削減になる。あるいはエアコン、冷蔵庫、テレビを現時点でのトップランナー製品へかえる、また照明を白熱電灯から電球型の蛍光ランプに切りかえるというようなことでCO2の排出量のこれは6%削減が可能となる。あるいはこういうことを思い切ってされる方もいらっしゃると思いますが、よく家に入りますのは3キロワットの太陽光発電です。これは大体1キロワット能力当たり年間1,000キロワットアワーの発電をするのが通例でございます。3,000キロワットアワー出るわけでございまして、これはCO2の23%の削減が可能となります。こういった対策をしていただきたいわけでありますが、税負担の増に比べますと、逆にこの対策をするための動機づけとしては投資額が大きくてつらい、こういうことがあるわけでございまして、そこを補う上で、温暖化対策税で得られた財源でこうした追加的な省エネ・新エネ対策を支援をしていこうということであります。これはどういう政策手段でどの程度やるかということは、また来年のレビューを待たなければいけないわけでありますけれども、現状でも、例えば太陽光発電の設置に対する助成、補助金として行われ、また屋上緑化に対する固定資産税の軽減といった既存税の軽減も行われている。あるいは住宅ローンにおける優遇といったようなことも行なわれているということで、こういったものを必要とあらば拡張し、強化をし、対策を支えていくということになろうかと思います。
 ちなみに、対策もしたくない、だけど税負担も困るという方は、大変申し訳ないですが、2%の節約をしていただくとこの税負担額を回避していくことができることになります。
 22ページでございますけれども、これは奥野委員のご意見で変えた部分が2ヵ所でございます。現在の税というものが化石燃料中の炭素分に着目したものではないじゃないか、それを直していくという意味もあるではないかというご指摘があったもので、そういった論点も確かにあるということで、その分をそれぞれ追加をして書かせていただいたものでございます。
 それから24ページでございますが、先ほども少し関連の意見への対応として修正いたしました箇所がございました。低税率の案についての説明の仕方としても少しご議論があったところでございますが、6番につきましては、そもそもその書き方が後ろ向きではないか、新しい経済を作っていくのだ、そういう気持ちで書いてくれないと困る、こういうご意見が寺西委員、植田委員、あるいは一部横山委員等からもあったわけであります。そうなりますと、見出しも「大丈夫か」というのもちょっと後ろ向きかなということで、「経済はどうなるのか」といことで見出しを変えさせていただきまして、その中で、御意見へ対応させていただきました。
 その論点に直接かかわりませんが、24ページにはGDPの伸びの絶対値の落ち込み方なのか、成長率の落ち込み方なのかが原案では不分明ではないかというご意見がございましたので、誤解のないように、例えば真ん中の辺ですが、GDPは、何も対策を行わなかった場合には、今から15.2%増える、これが15.0%の増加にとどまる、こういうことだということで、将来時点のGDPの比較であることを明らかにしまして、「また、」以下でも同じようにそう書いてございますが、念のためここでは成長率換算もここだけはしてみまして、低率課税の場合の成長率換算では年々約0.01%成長率低下というのに相当するということが書かれております。
 それから25ページでございますけれども、これは横山委員、安原委員からもご指摘がありましたが、マイナス6%という京都目標と今回のシミュレーションしておりますエネルギー起源CO2のマイナス2%というところの関係、エネルギー起源CO2マイナス2%を達成すれば、6%の京都目標というのは達成される、こういうことになる関係を丁寧に書くべきではないかというご意見がございまして、それを丁寧に書かせていただいたものでございます。
 それから26ページにまいりますけれども、横山委員の方から、地球益を強調してほしい、何か国益で日本としてもうかるからやるのだ、こうふうに読める。そうじゃなくて、もっと地球益を高めるためにも頑張るということをはっきり書いた方が良い。寺西委員からもこういったご意見があったと思います。そういうことで、化石燃料への依存の少ない経済の構築ということは、いわば地球益を高めるものであろうということで、日本も人類の経済の歩む方向を先取りするように、先んじて方向転換を行って、人類全体の経済のあり方をリードすべきではないだろうかということで、まず地球益の方を先にし、ちょっと中に混じっておりました国益的なことはやめまして、後段をむしろ国益の話として整理をさせていただいたということでございます。
 それから26ページなお書きでございますけれども、先ほど冒頭この6番について申し上げましたように、そもそも温暖化対策税によろうとよるまいと、温暖化対策を通じて新しい経済をつくるのだということでありますので、何も対策をしないケースのGDPと温暖化対策をした場合のGDPを比較して、温暖化対策の経済影響というふうに見ていくことは消極的過ぎるのではないだろうかということが書かれております。
 それから、ずっと飛びますけれども、29ページのところでアンダーラインが真ん中のポツにございます。これは先ほど植田委員等ご指摘がありまして14ページを変えたことのはね返りといいますか、同じ表現を使っているわけでございます。
 31ページに飛びますが、「おわりに」ということで、政府に対する注文でございますけれども、最初の○の修正につきましては天野委員から、今後の作業の工程をなるべく明らかにすべきであるということに対応した修正であります。
 そして3つ目の○が浅野委員からのご指摘でございますが、こういった各種の施策を組み合わせて全体として必要な効果を確保するというようなポリシーミックスのもう少し前振りを置くべく、さっきも冒頭で注をつけましたが、ここでもそうさせていただいたわけであります。
 4つ目の○が、竹内委員からご意見がありましたが、産業界、業界団体、あるいは消費者というのはステークホルダーになるので、打ち合わせをよく、ネゴシエーションするようにということでございましたが、それを、今までは国民各界各層とくくっておりましたので、産業界、消費者団体、環境団体などの国民各界各層ということで明示をさせていただきました。
 それから最後の○につきましては、寺西委員、植田委員から、単に税制改革だけでなくて、財政支出の見直しも含めた改革じゃないかということがございました。そういうことで、財政支出の見直しも含めた税制・財政改革の一環ということを書かせていただいたところでございます。
 それから、引き続きまして横長3ページの紙、ワーキンググループ報告の修正箇所についても一括してご説明を申し上げます。紙2枚を綴じたもので横長ですが、14ページというのと28ページ、29ページでございます。
 まず、14ページは横山委員のご意見に従いまして、発電過程でCO2を排出していないものの例示を原子力、水力、風力と挙げまして、これは今回の温暖化対策税が炭素に着目したものであれば課税をされないということになるわけでありますけれども、それ以外の、温暖化対策以外の対策の観点からは、やはりそれはそれで別途の政策的対応を要することでありますということ、それをそれぞれ具体的な例示を入れて書かせていただきました。
 それから28ページにつきましては、竹内委員のご指摘に従いまして、ワーキンググループと同じように、「新規の技術開発や環境起業支援」、これはワーキンググループ報告の別の箇所に入っておりまして、ここには入ってなかったので、明示的に書いたということでございます。
 それから、同じそのはね返りといたしまして、29ページ、これは専門委員会報告と全く同じ絵でございますが、29ページの一番下のところに「新規の技術開発や環境起業の支援」というものを書かせていただいたわけでございます。
 以上のとおりで、ちょうだいいたしました意見はすべて対応させていただいた、こういうふうに考えております。
 以上でございます。

○飯野委員長 審議に入ります前に、もう1点申し上げたいことがございます。
 前回、報告の取りまとめに当たりまして、私としましては、国民に向けたよりわかりやすい談話を発表したいと申し上げました。これにつきまして参考資料として添付させていただきましたので、こちらも事務局から読み上げていただきたいと思います。

○事務局(永見) それではお読みいたします。

     国民皆が参加して支える、新たな環境政策の提案
             平成15年8月27日
             中央環境審議会総合政策・地球環境合同部会
             地球温暖化対策税制専門委員会
                       委員長  飯野 靖四

   異常気象、海面上昇や地球生態系の激変などを招く地球温暖化は、人類生存の基盤を脅かす意味で、最も重大な環境問題です。温暖化してしまうと、誰もその悪影響から逃れられないでしょう。将来に予測される広汎で深刻な悪影響のすべては十分に解明されてはいませんが、地球の環境を壊す実験をしてみるわけにはいきません。一方で、今日も、温暖化の原因となる二酸化炭素などが空気中に溜まり続けています
 子や孫への責任、先進国に暮らす者の責任を考えると、私たちは、今のうちから、しっかりとした取組を行っていかなければなりません。いずれ、世界のすべての国やそこに住む人々を巻き込んで、地球と人類とが共存関係を築けるよう、一世紀も続く人類社会の改造事業が始められましょう。
 このような人類規模の努力の最初の一歩が、日本がホスト国の役割を果たして決められた「京都議定書」です。
 けれども、この一歩すらなかなか達成できないのです。
 日本の国内では二酸化炭素を余り出さないようにする製品、設備、技術などは相当に開発されてきましたが、そうした製品などをいきわたらせる政策がまだ力足らずです。実際に対策を担っている人や企業はまだまだ少数で、京都の約束を果たすためには、現在の排出量を十数%も減らさないとなりません。二酸化炭素は社会のいたる所から出されますので、大幅に減らすためには、工場などはもとより、私たちの家庭も対策の現場とならざるを得ません。とはいえ、国民がこぞって対策に参加するようになる政策の仕組みはまだありません。
 環境大臣の要請を受けて、私たちは検討を始めました。その結果、一つの提案をすることにしました。
 それは、税の仕組みを作り変えることです。
 税は、国民の生活や事業活動の基礎となる社会ルールで、国民皆のいろいろな活動のあり方に対して陰に陽に大きな影響を与えています。
 社会の基盤にあって税が果たすこのような重要な働きに着目し、石油など、燃えると温暖化の原因となる炭素を含む燃料については、税金を増やし、そうした燃料を今より割高にします。このことにより、省エネルギーを進めたり、新エネルギーを活用したりすることに伴う経済的な利益を今より高めよう、と考えました。そうなると、例えば省エネ型の自動車や家電製品、エコハウスなどが、国民誰にとっても今よりずっと魅力的なものとなります。自然に誰でもが自分なりの判断で温暖化対策に取り組むようになります。省エネ型の製品などを作る企業は、更に優れた製品などを開発し、売り出すでしょう。そうして、日本の社会は市場経済がその原理として持っているダイナミックな調節作用により自ずと二酸化炭素を余り出さない、新しい経済へと脱皮していくものと期待できます。これまでの対策が、一部の熱心な大企業や政府、自治体、環境意識の特に高い人々といった、国民の一部だけに担われていたことに比べると、担い手を国民全体に広げるような大きな政策の改革になります。
 新しい経済への脱皮を、と訴えると、低迷する経済情勢の中ですから不安を感じる方もいらっしゃるでしょう。しかし、地球と共存できる経済を築くことは人類の歩みの大きな流れです。もともと石油などが乏しい日本は、このような新しい形の経済に到達する上で最も近い位置にいるとも言えます。そして、世界に望まれる製品やサービスを海外の方々にも提供することにより、日本人の暮らしを営み、発展させていく。こうした道も、考えてはみませんか。もちろん、現在の産業構造など、今ある経済を踏まえながら、着実に経済を新しい形へと脱皮させていく工夫もできます。市場原理をただ信頼するだけでなく、そうした政策的な工夫や配慮を加えた実際的な税制の案を、私たちの報告書では提案しています。
 それは、税金で燃料を割高にする程度は控え目にして、他方、対策を担う人々に対しては新たな補助金を差し上げたり、あるいは他の税の負担を今より軽くしたりといった支援を行うなど、他の施策も同時に行う方法です。これらの政策全体として、二酸化炭素は必要なだけ減らされていきます。この方法は、控え目な税金で皆に対策を行うよう促した上で、対策が十分にはできない人などが負担した税金を、支援を受ければ十二分な対策を行える人に回し、控え目な税で生まれる貴重な限られた資金を有効に活用するものです。
 肝心なことは、地球に住まわせてもらっている私たちそれぞれが、地球を壊さないための対策を行う形で地球の使用料を払うにせよ、あるいは、他の人が行う対策を支援するように税金を支払うにせよ、皆が、対策に参加することです。国民が力を合わせることによってのみ、地球の破局的な温暖化を防ぐための日本の役割が果たせると考えます。
 これらのほか、温暖化対策税制専門委員会の報告書では、いろいろな事を検討し、提案しています。是非一度、これをお読みいただき、御意見を中央環境審議会にお寄せ下さい。
 中央環境審議会では、地球温暖化対策のあり方に関し、明平成16年に行われる予定の国の対策全体の見直し作業に備えて、今、多方面にわたる審議、検討を行っています。税は、仮に、この見直し作業の結果、今はない新しい施策が必要と判断された時に、直ぐに具体的な提案に結びつくように検討している施策の一つです。国民各界各層の皆様からお寄せいただいた貴重な御意見は、この検討に反映させていただききます。政策の立案の段階から国民の皆様が御参加されますよう、お願いいたします。

以上です。

○飯野委員長 ありがとうございました。
 それではまず、審議官からご説明いただいた報告案につきましてご意見、ご質問等があればお願いしたいと思います。
 既に前回の報告素案につきましてもおおむね委員の意見は一致しておりましたし、その後、委員長として、前回いただいたご意見をほとんど取り入れて修正したつもりでございますので、きょうはそれほど大きな異論はないものと考えております。したがって、本日これからいただくご意見を踏まえた修正につきましてはご一任いただきたいと考えております。
 それと比べまして、きょう初めて皆様にご披露いたしました委員長談話の方は、まだ文章が完全にでき上がっているとは言い切れないところもございますので、そちらの方ももし修正がございましたら、今発言していただくとありがたいのですけれども、それではご議論をお願いいたします。どうぞ、浅野先生。

○浅野委員 前回の専門委員会で大体議論としては大枠で素案が了承され、幾つか重要なご指摘についてきょう修正のお話を承ったわけです。これをお聞きして、おおむねこれまでの議論の経過がよく踏まえられておりますし、前回のご指摘のあった点については、かなり丁寧に一つ一つそれをとり入れる形で反映されておりますので、今大きな変更はないだろうと委員長おっしゃいましたけれども、私はこの報告案を基本的には了承したいと思います。
 あとは、修正をしろということではございませんので、こういう発言を、しっかり議事録にとどめておいていただければいいということで発言を申し上げたいわけでありますが、最後の部分の「今後の検討に当たっての留意点」の部分で、「各種の施策を組み合わせて全体として必要な効果を確保することが重要」であるとして、ポリシーミックスの細目についての検討も深めるべきであると書いてあるわけです。これは前回私が、申し上げたことを書いていただいたということで、大変ありがたいことだと思います。
 ただ、実はこの議論は既にもう過去にも何遍もしてきたことでありまして、何も今から急に始めるわけではない。むしろこの議論は安原委員を座長にこれまでさんざん進めてきた経過があるということはここで改めて申し上げておかないといけないと思ったものですからあえて発言したいということです。
 それからもう1つ、ここでさまざまな施策の組み合わせという話をしているわけですが、ちょっとうっかりしますと、最初の4ページの注の2のところに出てくる中央環境審議会や環境省においては、税の検討のほか、こういうようなことを検討しているという具合に書いてありまして、これは非常に正直ベースで今やっていることだけが並んでいます、やっていますと、これを検討しています、「など」と、こう書いてあるわけで、「など」が実は大変大事な点で、過去にさんざん議論したことについては全部「など」でくくられてしまっているわけですね。
 環境基本計画の改訂バージョンを出すときに、政策手法についてかなり丁寧に書き込んで、その中で、例えば自主的取組というようなことに関しては、はっきりと位置づけをし、それを社会システムとして評価するということを指摘してきているわけです。そのことをもう一度確認しておかないと、何か税ばかりをおまえら考えているのではないかと言われるのは甚だ心外であります。自主的取組について環境基本計画では、社会システム化されたものを政策実現手法として位置づけると言っているわけです。経団連がやっておられる自主行動計画は、私どもの環境基本計画の考え方によれば、ある種の社会システム化されたものという位置づけができるだろうと思っています。
 といいますのは、それが単なる自主行動ではなくて、きちんと審議会で報告され、そこでレビューが行われるという仕組みが一応できていますし、そのレビューも毎年精緻なものになっていることは事実でありますから、そういうシステムを伴う自主的取組を我々は評価したというつもりでいます。
 それと並んで、基本計画の中では、例えば協定のようなものとか、幾つか挙げていて、こういうものが社会システム化できるものだというのを指摘しているわけですから、そこで挙げているものについては、今後温暖化対策で使えるものは幾つもあるはずだと確信をしています。しかしそれをどう使うかという検討はまだ十分ではありませんし、実際にそれをやろうという動きもにぶいようでもありますが、萌芽的に起こっているさまざまな動きの中から、環境基本計画の中に挙げた、例えば、自主的取組という形で挙げている社会システムにかなり近いものが既にあるのだということを検討する必要があると私は考えていますし、それから自主的取組以外に、もっと大事なものとして、枠組み規制やそのほかいろいろな手法を並べましたので、これらについても結構使えるものがあるということを考えていて、それやこれやと、それから経済的措置と言われるものとの適切な組み合わせを考えるのがベストミックスだと考えるわけです。
 ですから、JIだのCDMだのというのと税とをぱっと結びつけて、それだけをベストミックスと考えているのだと言われては困るのものですから、これは修正をしろと言うつもりじゃないけれども、皆さんも聞いておられますから、そういうことを考えてここでさまざまな手法の組み合わせという議論をしているのだということを確認的に申し上げておきたいと思った次第です。ちょっと時間を取りました。
 どうも失礼しました。

○飯野委員長 ありがとうございました。

○和気委員 最後のところで余り議論参加の責任を果たしてないのでちょっと心苦しいのですが、地球温暖化対策についてはしばらくいろいろ議論させていただいてきておりますので、その経験も踏まえて、きょうの報告案について基本的にはもう随分丁寧に書かれているし、議論のたたき台としては大変いいと基本的には評価しております。
 1つだけ、エネルギー起源のCO2の排出との関係で、今エネルギー基本法のもとでエネルギー基本計画というのが策定中でありまして、それにたまたまかかわっている関係上、そのエネルギー基本計画がどういう趣旨なのかも踏まえて、ちょっとこの地球温暖化対策税との関係で、もし追加的に書けるものであれば加えてほしいという点があります。
 それはどういうことかといいますと、エネルギー基本計画の基本は安定供給が第一優先課題ですが、それプラス2つの環境保全という目的と市場原理をできるだけ活用するというのがエネルギー基本法もしくはエネルギー基本計画の最大の眼目になっております。したがって、基本的にはエネルギーのいろんなリソース間の競争が市場でかなりの程度これから起こってくる。したがって今の化石燃料との間のさまざまな競争がマーケットでは起こってくる。それが競争的なエネルギー市場を形成するというのが今の政府の方針でありますし、その方向でエネルギー基本計画は動いております。そういう意味で、税制というのはそういう市場のルールを使って、余りゆがみを持たさずに、より地球にやさしいエネルギーが使用あるいは供給され、そうでないものがフェードアウトしていくという仕組みの中に入れるには、1つとてもいい有効な政策措置であるというふうに私は思っております。従来からそういう意味で地球温暖化税制についてはある意味では積極的にかかわってまいりました。
 その意味で、現在の政府の方針でありますエネルギー政策との折り合いの中で、この税制をもう少しプラスの意味で位置づけてはいかがかなというふうに思っております。
 それから、エネルギー基本計画は10年のスパンで今のところ議論しております。したがって環境保全の最大の眼目は地球温暖化対策になっております。そういう意味で、今現在エネルギー政策の大きな質的転換の中では、地球温暖化問題と市場のルールを使った政策措置というのがやはり非常に整合的だということも踏まえますと、政府全体の枠組みの中でもある種の整合性をとっていける議論を今やっているのだという意味づけをしてはいかがかなというふうに思います。

○飯野委員長 どうもありがとうございました。
 そのほか何かございますでしょうか。

○大塚委員 17ページの最後のところで、これはちょっと審議官のお話の中で気がついてしまったので、全くお伺いするだけで大変恐縮ですが、他の税の減税財源として活用するというところが、「温暖化対策のために、」というのは、「他の税の減税財源として活用する」というところにもかかるわけですね。それで、他の税の減税財源としてというのが温暖化対策のためにということになるかどうかというのはちょっと気になるので、この辺非常に重要なところですので、後で指摘されると困りますので、私は今ここで新しい意見を申し上げるつもりは全くないのですが、ちょっとご説明をいただければ大変ありがたいのですが。

○飯野委員長 小林審議官。

○小林審議官 趣旨からいいますと、例えば先ほどの21ページの絵でいいますと、これは既存例でありますが、21ページの一番下に屋上緑化に対する固定資産税の軽減みたいなのがございますが、これは固定資産税という別目的の税の租税特別措置として環境上の配慮をする、その財源に、この場合は何が使われているかよくわかりませんが、今回温暖化対策税の税収をあてるということがある。それをなるべく、例えば他の税もそういったことで活用できるかなということで、ここでは温暖化対策のために他の税の減税財源として使うということを書いたもので、ご指摘のとおり、「温暖化対策のために、」は全部にかかっているという趣旨でございます。

○大塚委員 もうちょっとよろしいですか。
 ここは大事なところなのでぜひ確認をさせていただきたいのですが、その場合、18ページの1行目にあるように「同様の効果」ということが書いてあるのですけれども、これは一般的な意味では同様の効果でいいと思うのですけれども、19ページに書いてある炭素1トン当たり3,400円で、この場合も全く同じ効果が出てくるかはやや疑問もあると思いますが、同様と書いてしまっていいかというあたりの問題が多少出てくるかもしれませんけれども、その辺はいかがでしょうか。

○小林審議官 厳密な意味では、当然のことですがもちろん違うだろうと思います。ただ、恐らく一番大きな違いは、AIMモデルの場合には、補助金は一番合理的に、モデルが要請する上で、例えば限界削減費用が一番安いところから充当していくということになっていますから、人間のつくる制度はそのとおりにはいかない。逆にモデルはインプットされている技術モデルが古いものですから、そういう間違いもあると思いますが、いずれにしても、モデルが正しいとすれば、人間のやることというのは多少のゆがみがあると思います。ですが、補助金で直に対策を支援することでも、もう少し間接的ですが、減税財源として今あります例えば省エネ設備に対する租税特別措置を拡充するということでも、実務上は多少の差があると思いますものの、理屈上は同じような効果ではないかな、そういう趣旨で、少し広めに「同様の効果」としたもので、このように読んでいただければと思っております。

○飯野委員長 天野先生どうぞ。

○天野委員 前回植田委員もおっしゃっていましたけれども、助成金は、できれば効率的に削減ができるような使い方で使わないと高い温暖化対策税と同等の効果が出ないという点がありますので、何でもいいから温暖化対策に貢献する案件に助成金を出せば同じ効果が出るというふうに理解されると、それはちょっと困ると思いますので、その辺を大塚委員はご心配になっておられるのだろうと私は理解しています。

○飯野委員長 よろしいでしょうか。そのほか。
 すみません、委員長談話の方、ちょっと自信がないのですけれども、わかりやすく書くということはものすごく難しい。皆様のご趣旨を反映するということとやさしく書くということと、矛盾なく書くということはえらい難しいことで、余り自信がないのですけれども、よろしいでしょうか。
 大体趣旨は、なぜ税が必要かということと、なぜ安い税でいいかということを説明したつもりなんですけれども。はい、浅野先生。

○浅野委員 委員長の談話ということでありますから、委員会には責任がないと思ったので、余りコメントする必要もないというのが私の考えでありますけれども、この報告の解説本としてはこれでいいのではないか。つまり報告書全体が言おうとしていることをさらにかいつまんで適切にまとめていただいたと思います。
 ただ、まず税を徴収することを考えてこの議論をやっているわけではないという、そのあたりのところはむしろ役所の方でしっかり説明していただくことが必要だろうと思いますが、これは委員長の責任ではない部分だと思います。全体としての環境省、国の温暖化対策の政策の中でこういうような提案はどういう位置づけになるのかということははっきりしておかないと、税を取ればすべて問題は解決するのだというようなつもりでこの専門委員会報告書を書いているわけではありません。そのことははっきり申し上げておかなきゃいけない。
 しかし、それは既に私申し上げ、この報告書の中に最初のところにも後の方にも書いていただいていますから、経過のわかる方はわかってくださるだろうと思いますし、今回は大綱全体がしっかりこの報告の中に入っていますから、これもなおわかりにくいといえばわかりにくいのですけれども、一応そういうものであるということがわかるようになっていますので、その中では税についての専門委員会が言おうとしていることについて飯野委員長のこの談話はわかりやすい談話ではないかと思います。

○飯野委員長 ありがとうございました。
 どうぞ天野先生。

○天野委員 委員長おっしゃったようにわかりやすく書くというのは非常に難しいのですけれども、私はここで皆さんにご議論いただいた部分が漏れなくわかりやすく書いてあると思います。
 私、特に肝心な点が2つあると思っていたのですけれども、それがちゃんと書いてありまして、1つは、今まで割合技術的な対策であるとか、あるいは直接的な規制であるとか、産業部門とか大企業とかあるいはエネルギー関連、そのあたりを集中的に対象にしてきたのですけれども、今後はそれではとてもやりきれなくて、国民各層全体が動き出すような、そういう仕組みが必要である。仕組みをつくることによって各層が動けるように動機づけをして、時間をかけてダイナミックに社会が変わっていくような仕組みをこれから始めようとしているということが非常にわかりやすく書いてございまして、この点が1つ。
 それからもう1つ、そういう変換をする際に、非常に大きな負担とか税を強いて、それで社会を変えていくというのではなくて、少ない負担を効果的に使って大きな効果が出るような仕組みを私たちは考えました。
 この2つが非常にわかりやすく書いてありますので、そういう点では随分ご苦労いただいたと思いますけれども、私は非常にいい委員長談話になっているのではないかというふうに評価したいと思います。

○飯野委員長 ありがとうございます。
 よろしいでしょうか。それでは、ご意見も出尽くしたようですので、きょうご議論いただいた部分につきましては私に一任させていただきたいと思います。私の責任で速やかに細部の修正を行って、最終版を作成し、近日中に公表したいというふうに考えております。
 さて、次に、前回申し上げましたとおり、今後の温暖化対策税についての国民各界各層への説明と議論につきまして、環境省からご説明をお願いいたします。

○小林審議官 資料の3でございます。「温暖化対策税に関する国民的な議論の展開に向けた当面の取組」ということでございます。
 もちろん専門委員会報告をたくさん印刷いたしまして配布いたしますが、それだけではいけないわけでありまして、来年に予定をされます対策全体の見直しの中で政策選択について国民各界各層の議論が行われ、そして一番早い場合には来年の冬に、税が必要となればそのような形での導入の決定ということも考えられるわけでございますが、それから逆算いたしますと、まずもってこの温暖化対策税についての専門委員会の制度的な提案につきまして、まず今年の間からきちっとその周知徹底をし、そしてご意見を伺う。こういう点問題があるというならこういう点問題があるとか、こう直したらいいというようなご意見も集める、こういうことがこの秋から来年までの課題かなというふうに考えておりまして、そうしたタイムスパンでできることが書いてございます。
 1つの柱が、国民各界各層との直接のお話し合いということで、温暖化対策税に関する懇談会、これはそれぞれ地元の方が、自治体、民間団体等々がご主催になるということも当然あろうと思いますので、別にこの名前に限ることではございませんが、こういったものを全国各地で開催をし、主催をし、またそういった開催をしてくださるところに積極的に参加をし、ご説明に参上する。また、国民の客観的なご意見の把握ということでございますと、世論調査等も活用をしたいというふうに考えてございます。
 それから、型どおりではございますけれども、この専門委員会報告に関しましてパブリックコメントを実施したいというふうに考えてございます。通常のパブリックコメントに比べまして大変長い期間、本年11月末ぐらいまでをとって意見募集をし、そしてそれを分析いたしまして、来年の中央環境審議会に、先ほど申し上げました1番にありますような各地での懇談会、説明会、対話集会みたいなもののご意見とともに報告をさせていただきたいというふうに考えてございます。
 また、総本山たる中央環境審議会におきまして、公開の席で検討をしていただく、こういうことになろうかと思います。
 まずは、この専門委員会報告につきましては、9月に予定をされております、これは複数回予定をされておりますが、総合政策部会、それから地球環境部会に対しまして報告申し上げ、そしてご意見を伺うというプロセスを持ちたいと思っておりますし、またさらに、今後のことを考えますと、本専門委員会は、税制度の専門委員会とされ、間口が少し狭かったので、もう少し幅広く、温暖化対策税制とこれに関連する施策等を総合的に検討ができるような場として、これは部会長、そして中央環境審議会会長にもご相談をしなければ当然いけないわけでありますが、そういったご相談を踏まえて、よろしければ「税制総合企画小委員会」といったような雰囲気の、少しご参加の方も広げ、そして今までの検討の範囲よりもう少し広い範囲を検討する、そういった場を設けたらいかがかというふうに考えてございます。そうした場におきまして、年内はまず各界各層の意見を聞き、そしてそれがどういうものなのか整理・集約等々を行って、来年の調整過程に備えていったらどうかというふうに考えてございます。
 以上でございます。

○飯野委員長 ありがとうございました。
 ただいまの説明につきましてご質問等があればお願いいたします。よろしいでしょうか。
 それでは、ちょっと時間が早いのですけれども、この辺で議論を終えたいと思います。
 本専門委員会が設置されてから約2年間、また、鈴木大臣の要請を受けて具体的な制度案の取りまとめに入ってからほぼ半年間、非常に密度の濃い議論を重ねていただき、何とか国民に問うことのできる温暖化対策税の具体的な制度の案をまとめることができました。委員の皆様に深く感謝したいと思います。
 今後の温暖化対策税の検討は、先ほど環境省からご説明があったとおり、より幅広い関係方面と積極的に対話を行っていくという段階に入るわけでございます。環境省からも説明があったとおり、中央環境審議会における今後の検討や、あるいは環境省が行う国民との懇談会といった場におきまして、この専門委員会の委員の皆様には、もちろん私もでございますけれども、温暖化対策税についての伝導を行う役割をぜひ果たしていただきたいと考えております。ある意味ではこれから本格的な議論が始まるとも言えるのではないかと思いますので、今後とも委員の皆様の積極的なご参加をお願いいたしたいと思います。
 最後に、ご臨席を賜りました鈴木大臣からご発言がございます。

○鈴木環境大臣 私から皆様方にお礼のご挨拶を申し上げたいと思います。
 税制専門委員会できょう報告書をまとめる最後の委員会ということで、私の希望できょうは出席をさせていただいたところであります。一昨年の10月に地球温暖化対策税制専門委員会が設置されて以来、委員の皆様には熱心なご審議をいただき、心から感謝を申し上げたいと思います。
 また、本年2月に、今年の夏を目途といたしまして、従来温暖化対策税、それぞれの方がそれぞれのイメージを持って、温暖化対策税として1つの明確なイメージがなかったわけでありますが、これについて具体案を取りまとめて、そして国民的な議論に供する、その具体案づくりのお願いを皆様方に申し上げたわけでありますけれども、この間、半年間でありますが、まことに熱心な、濃密的なご議論を賜りましたことに、重ねて心から感謝を申し上げたいと思います。
 本専門委員会の設置以前は、温暖化対策税について、経済学による発想はあったかと思いますけれども、しかし我が国の実情に即した制度面の検討というものは、今までほぼ手つかずであった、そういうふうにも思うわけでありまして、ここでのご議論はまことに貴重なご議論だったと思っているわけであります。
 振り返ってみますと、13年の12月にまず論点整理をしていただきました。それから14年の6月に、我が国が京都議定書締結という状況を受けまして、地球温暖化推進大綱のステップ・バイ・ステップの取組に沿って、税制におきましてのその進め方を中間報告として取りまとめていただいたところであります。すなわち、まず第1ステップにおきましては、既存の税制のグリーン化を推進すべきだ。そして2004年の評価・見直しにおいて、必要とあれば2004年以降の早い段階で温暖化対策税を導入すべきである、第2ステップ以降の早い段階で温暖化対策税を導入すべきである、そのような方針をいただいたわけであります。
 このうちの第1ステップにおきます既存税制のグリーン化につきましても、おかげさまで進展を見ることができました。平成15年度の税制改正、また予算編成におきまして、エネルギー特会のグリーン化というものがなされまして、それによって省エネ・代エネ対策がとられることになっております。また、道路特定財源、これにつきましても、暫定税率を維持するとともに、その使途を多様化をいたしまして、道路整備と密接にかかわる環境対策事業も行うこととなったわけであります。本専門委員会の先生方から出していただきました中間報告の提言に沿った形で第1ステップの税制における取組が着実に進んでいると認識をしているところでございます。
 また、第2ステップで必要とされた場合に備えては、今年初めよりワーキンググループあるいは専門委員会で温暖化対策税の具体的な案について非常に精力的なご審議をいただき、今般報告をまとめていただいたところであります。温暖化対策税が他の手法に比べてどういう点ですぐれた施策手法なのか、具体的な仕組みはどうあるべきかということを非常にわかりやすくおまとめをいただいたと感謝をしているところであります。
 地球温暖化の問題、これは人類の生存基盤にかかわる極めて重要な環境問題であると思っておりまして、その取組の第一歩といたしまして、京都議定書の6%削減約束、これを達成していかなければならない。そのために2004年の評価・見直しにおいては、6%削減約束の確実な達成を目指して、温暖化防止のための施策の再検討に全力を注いで、そして取組の強化もしていかなければならないと思っております。
 その一環として、温暖化対策税につきましては、このほどおまとめをいただきました報告をたたき台として、国民各界各層との幅広い議論を行ってまいりたいと思っております。
 具体的には、全国各地で環境省自らが主催をいたしましたり、あるいは地方自治体、その他に主催をお願いをして、専門委員会報告の説明と参加者との意見交換を行うことなどを予定をいたしておりますけれども、まずその皮切りといたしまして、9月16日に東京で温暖化対策税について環境大臣と語る会を開く予定でありまして、これには私も出席をいたしまして、私から温暖化対策税の検討を国民の皆様方に呼びかけてまいりたいと考えているところであります。
 飯野委員長からもご発言がございましたが、今後ともこの温暖化対策税の国民的議論を進めるに当たりまして、先生方のご指導、ご協力をお願いを申し上げたいと思います。
 また、本日は、浅野地球環境部会長を初め、関係の先生方もおいででございますが、ここで私からもう1つお願いを申し上げたいと思います。それは、いよいよ来年は大綱の評価・見直しを行う2004年でございます。中環審におかれましては、現時点から評価・見直しの準備作業をひとつ始めていただきたいと思います。そして、来年初頭からは第2ステップの対策の検討作業を本格的に開始していただきたい、このことをお願いを申し上げるところであります。
 最後に重ねて、この2年間、先生方には大変にご熱心なご論議を賜りましたことを心から御礼を申し上げまして、そしてまた、今後とも、こうした国民的な議論を深めるに当たりましても、先生方の一層のご指導とご協力を賜りますように、心からお願いを申し上げまして、私のご挨拶にかえさせていただきたいと思います。
 長い間本当にありがとうございました。

○飯野委員長 大変ありがとうございました。
 それではこれで会議を終えたいと思います。長い間のご検討、どうもありがとうございました。
 なお、取材のご希望があれば、私がこの後、この場でお受けしたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
 それではどうもありがとうございました。


午後 2時40分 閉会