報道発表資料概要

2.平成15年度の調査結果について(概要)

 対象試料の分析は、各分析機関に対して推奨した方法(注1)により行った。
 参加申込機関は、地方公共団体及び民間の分析機関を併せて排ガス吸収液試料1,2(SOx、NOx)がともに321機関、模擬大気試料(揮発性有機化合物)が123機関、底質試料(フタル酸ジエチルヘキシル)が144機関、土壌試料1(鉛)が432機関、土壌試料2,3(ダイオキシン類及びコプラナーPCB)がともに175機関あり、このうち回答のあった機関は各々432機関、172機関、103機関、157機関であった(表1)。
 まず、SOx等(2項目)、揮発性有機化合物(4項目)、内分泌攪乱作用が疑われる物質(フタル酸ジエチルヘキシル)、重金属(鉛)及び2種類のダイオキシン類(TEQ)の代表的なヒストグラムを図1〜5に示す。また、外れ値等を棄却(注2)後、基本的な統計量(平均値、室間精度(CV:注3))、最小値、最大値等)を算出した(表2)。
 平成15年度は、昨年度に引き続き統計処理手法を導入した高度解析を模擬大気試料(揮発性有機化合物4項目)について実施した。高度解析の結果は、「平成15年度環境測定分析統一精度管理調査結果」に記載している。
 なお、詳細な結果については、環境測定分析統一精度管理調査ホームページ(http://www.seidokanri.jp/)に掲載する。
 各試料についての結果概要を以下に示す。

(1)模擬排ガス吸収液試料(SOx等)
 外れ値等により棄却される回答は、SOxが5.0%、NOxが17.7%であった。また、棄却後のCVはカドミウムがSOx4.7%、NOx9.2%であり、ヒストグラムは左右対象であり、特にSOxは良好で あった。NOxで外れ値等が多かった原因については、試料量が少ない又は測定感度が小さいこと、単純な計算間違いや換算間違い等と考えられる。また、この試料では3回の分析依頼を実施したところ、室内精度(注3)はSOx1.4%、NOx2.9%と良好であった。
(2)模擬大気試料(揮発性有機化合物)
 昨年度に引き続いてキャニスターを用いて大気試料として調査を実施した。昨年度の試料は環境基準値程度の濃度とした窒素ベースのガスで、一般大気濃度レベルと比較して高濃度であり、全項目ともに棄却後のCVは20〜30%であった。
 今年度は、一般大気濃度レベルの濃度とした人工空気ベースのガスとした。外れ値等により棄却される回答は0〜0.9%とほとんどなく、また、全項目ともに棄却後のCVは10〜20%であり、ほぼ左右対称なヒストグラムを示しており、昨年度よりも良好な結果が得られた。この原因については、試料中濃度が一般大気濃度レベルであり、この濃度は各機関が日常に分析している濃度程度であること、試料の希釈操作が必要ない濃度レベルであったこと等が考えられる。
(3)底質試料(内分泌攪乱作用が疑われる物質)
 従来の内分泌攪乱作用が疑われる物質に関する調査は模擬水質試料を対象としていたが、今年度初めて底質試料中のフタル酸ジエチルヘキシルを対象とした。
 外れ値等により棄却される回答は3.4%であったが、棄却後のCVは40.2%と大きな値で、ヒストグラムはやっと山が確認できる程度であり、昨年度までの模擬水質試料と比較して良くない精度であった。この原因については、底質試料であるために夾雑物が含まれており、試料からの抽出操作、クリーンアップ操作、サロゲートの添加等の操作が煩雑になったためと考えられる。
(4)土壌試料(重金属)
 従来の土壌中の重金属に関する調査は「底質調査方法」に基づく含有量を測定するものが主であったが、最近「土壌汚染対策法」が制定されて「土壌含有量に係る測定方法」が規定されたため、今年度初めてこの「土壌含有量に係る測定方法」を取り上げ、鉛を対象とした調査を行った。
 外れ値等により棄却される回答は4.6%、棄却後のCVは17.1%であり、ほぼ左右対称なヒストグラムを示し、比較的良好な結果が得られた。「土壌含有量に係る測定方法」は1mol/l塩酸を溶媒とした溶出操作により試験溶液を調製するが、この溶出操作と精度の関連は見出せず、溶出後の定量操作に違いがみられた。試験溶液中の共存物の影響等のために電気加熱原子吸光法やICP発光分析法は精度がやや劣り、フレーム原子吸光法はこの土壌中の鉛濃度がある程度高いためか精度が良かった。
(5)土壌試料(ダイオキシン類及びコプラナーPCB)
 A〜Dの4種類の試料の中で、外れ値等により棄却される回答は、ダイオキシン類異性体、同族体、コプラナーPCB異性体及びTEQにおいて、ほとんどの項目では数%程度であった。棄却後のCVは、ダイオキシン類異性体、同族体、コプラナーPCB異性体及びTEQで10〜30%程度であり、ヒストグラムはほぼ左右対称な形状を示し、昨年度のばいじん試料と比較して良好な結果であった。この原因については、今回の試料が土壌としては比較的高濃度であったためと考えられる。なお、過去の結果との比較から、分析技術の向上をうかがわせたが、試料の配布方法を変えた(濃度の異なる4種類の土壌試料から2種類をランダムに配布した)ことの影響はあまりみられなかった。

 (注1)分析方法
[1]SOx等(SOx及びNOx)
 「排ガス中の硫黄酸化物分析方法(JIS K 0103)」及び「排ガス中の窒素酸化物分析方法(JIS K 0104)」に定める方法
[2]揮発性有機化合物(ベンゼン,トリクロロエチレン,テトラクロロエチレン及びジクロロメタン)
 「ベンゼン等による大気の汚染に係る環境基準について」(平成9年環境庁告示第4号)に定める「容器(キャニスター)採取-ガスクロマトグラフ質量分析法」に定める方法等
[3]内分泌攪乱作用が疑われる物質(フタル酸ジエチルヘキシル)
 「外因性内分泌攪乱化学物質調査暫定マニュアル(水質、底質、水生生物)」(平成10年環境庁水質保全局水質管理課)に定める方法
[4]重金属(鉛)
 「土壌汚染対策法施行規則第5条第4項第2号の環境大臣が定める土壌含有調査に係る測定方法」(平成15年環境省告示第19号)に定める方法
[5]ダイオキシン類(ダイオキシン類及びコプラナーPCB)
 「ダイオキシン類による大気の汚染、水質の汚濁(水底の底質の汚染を含む。)及び土壌の汚染に係る環境基準について」(平成10年環境庁告示第68号)に定める方法

 (注2)外れ値等の棄却
 分析結果については、次のように外れ値を棄却した((イ)を除いた後、(ロ)を除き、あわせて「外れ値等」とした)。
(イ)「ND」、「○○以下」又は「0」で示されているもの
(ロ)Grubbsの方法により、両側確率5%で棄却されるもの
 ※数値的な外れ値の検定方法であり、JIS K 8402及びISO 5725に規定されている一般的な方法である。

 (注3)室間精度(CV)、室内精度(CV)
 室間精度は同一試料の測定において、異なる試験室おける測定値の精度をいう。一方、室内精度は同じ試験室における測定値の精度をいう。精度は、測定値のばらつきの程度であり、通常は標準偏差(SD)及び変動係数(相対標準偏差、CV)で表す。なお、過去の調査事例等を考慮し、室間精度(CV)が20%台までの場合は「良好な結果」であると考えられる。

 (注4)毒性当量(TEQ)
 ダイオキシン類等の量をダイオキシン類の中で最強の毒性を有する2,3,7,8-四塩化ジベンゾ-パラ-ジオキシン(2,3,7,8-TeCDD)の量に換算した量として表していることを示す記号。





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