第3章目次に戻る平成16年度(2004年度)版 「化学物質と環境」
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[1]PCB類 【平成15年度調査媒体:水質、底質、生物、大気】
 
調査の経緯及び実施状況
 

 PCB類(ポリ塩化ビフェニル)は、難分解性で、生物に蓄積しやすくかつ慢性毒性を有するため、昭和 49年6月に化学物質審査規制法に基づく第1種特定化学物質に指定されており、環境中の濃度レベルを追跡することは、種々の観点から重要と考えられる。
 過去の本件調査においては、「生物モニタリング」で昭和53年度から平成13年度の全期間に亘って生物媒体(貝類、魚類、鳥類)について調査しており、また、「非意図的生成化学物質汚染実態追跡調査(昭和60年度~平成13年度)」で平成8、9年度に底質・生物(魚類)、平成12、13年度に水質・底質・生物(魚類)・大気の調査を実施している。平成14、15年度は本調査において水質・底質・生物(貝類、魚類、鳥類)・大気の調査を実施した。

 
 

 環境省内の他調査としては、「環境ホルモン戦略計画SPEED’98」(1998年5月。2000年11月改訂)に基づいた「内分泌撹乱化学物質に係る環境実態調査」2) において平成10年度以降調査を実施しているほか、「海洋環境モニタリング調査」(地球環境局環境保全対策課) 3) において沿岸200海里以内の水質、底質、水生生物(貝類、魚類)の調査を平成7年度以降実施している。

 
  環境省内の他調査の結果
 
調査結果

 平成15年度のモニタリング調査において、PCB類は全ての環境媒体から検出された。
 PCB類の測定結果は、水質で 230~3,100 pg/L(幾何平均値 530 pg/L)、底質で 39~5,600,000 pg/g-dry(同 8,200 pg/g-dry)、貝類で 1,000~130,000 pg/g-wet(同 11,000 pg/g-wet)、魚類で 870~150,000 pg/g-wet(同 11,000 pg/g-wet)、鳥類で 6,800~42,000 pg/g-wet(同 18,000 pg/g-wet)、大気で温暖期 36~2,600 pg/m3(同 260 pg/m3)、寒冷期 17~630 pg/m3(同 110 pg/m3)であった。

 
評価

 PCB類は、昭和47年度までに製造、輸入及び開放系用途の使用が中止され、平成4年7月に「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」に基づく特別管理産業廃棄物に指定されているが、なお全媒体・全地点から検出されている。

 水質は、直近4年間の調査結果があり、幾何平均値で平成12、13、14、15年度がそれぞれ 560 pg/L、440 pg/L、460 pg/L、530 pg/Lとなっている。残留状況は横ばい傾向であり、4年とも全地点・全検体から検出されており、依然として広範な地点で残留が認められる。

PCB(総量) 実施
年度
幾何
平均値
中央値 最大値 最小値 定量[検出]
下限値
  検出頻度
検体 地点
水質
(pg/L)
14 460 330 11,000 60 0.18~0.90
[0.06~0.30]
  114/114 38/38
15 530 450 3,100 230 0.3~6
[0.07~2]
36/36 36/36
 注)定量[検出]下限値の欄には同族体ごと及びコプラナーPCBの定量[検出]下限値の範囲を記載した。
 

 底質は、直近4年間の調査結果があり、幾何平均値で平成12、13、14、15年度がそれぞれ 15,000 pg/g-dry、15,000 pg/g-dry、9,200 pg/g-dry、8,200 pg/g-dryとなっている。平成14、15年度とやや低いものの、4年とも全地点・全検体から検出されており、依然として広範な地点で残留が認められる。

PCB(総量) 実施
年度
幾何
平均値
中央値 最大値 最小値 定量[検出]
下限値
  検出頻度
検体 地点
底質
(pg/g-dry)
14 9,200 11,000 630,000 39 0.21~1.5
[0.07~0.5]
  189/189 63/63
15 8,200 9,500 5,600,000 39 0.4~6
[0.2~2]
186/186 62/62
 注)定量[検出]下限値の欄には同族体ごと及びコプラナーPCBの定量[検出]下限値の範囲を記載した。
 

 貝類は、調査開始当初の残留状況は減少傾向にあり、近年は検出下限値(10,000 pg/g-wet)未満の値が多かった。平成15年度は定量下限値 2.1~11 pg/g-wet、検出下限値 0.69~3.7 pg/g-wetにおいて全地点・全検体から検出された。過去の検出下限値が高いため残留状況の傾向の判断は困難であるが、広範な地点で残留が認められる。
魚類は、調査開始当初から近年までの残留状況は減少傾向にあるが、平成14年度、平成15年度とも全地点・全検体から検出されており、依然として広範な地点で残留が認められる。
鳥類は、地点数が2地点と少ないことに加え調査地点の変更もあり、調査開始当初からの残留状況の傾向の判断は困難である。近年の残留状況は横ばい傾向であり、依然として残留が認められる。

PCB(総量) 実施
年度
幾何
平均値
中央値 最大値 最小値 定量[検出]
下限値
  検出頻度
検体 地点
貝類
(pg/g-wet)
14 10,000 28,000 160,000 200 1.2~3
[0.4~1]
  38/38 8/8
15 11,000 9,600 130,000 1,000 2.1~11
0.69~3.7]
30/30 6/6
魚類
(pg/g-wet)
14 14,000 8,100 550,000 1,500 1.2~3
[0.4~1]
70/70 14/14
15 11,000 9,600 150,000 870 2.1~11
[0.69~3.7]
70/70 14/14
鳥類
(pg/g-wet)
14 11,000 14,000 22,000 4,800 1.2~3
[0.4~1]
10/10 2/2
15 18,000 22,000 42,000 6,800 2.1~11
[0.69~3.7]
10/10 2/2
 注)定量[検出]下限値の欄には同族体ごと及びコプラナーPCBの定量[検出]下限値の範囲を記載した。
 

 大気は、直近4年間の調査結果があり、幾何平均値で平成12、13、14年度がそれぞれ 430 pg/m3、280 pg/m3、100 pg/m3と減少した。平成15年度は 110 pg/m3(寒冷期)で、平成14年度と同レベルであった。平成14年度、平成15年度とも全地点・全検体から検出されており、依然として広範な地点で残留が認められる。

PCB(総量) 実施年度 幾何
平均値
中央値 最大値 最小値 定量[検出]
下限値
  検出頻度
検体 地点
大気
(pg/m3)
14 100 100 880 16 0.015~90
[0.005~30]
  102/102 34/34
15寒冷期 110 120 630 17 0.013~3.2
[0.0043~1.1]
34/34 34/34
 注)定量[検出]下限値の欄には同族体ごと及びコプラナーPCBの定量[検出]下限値の範囲を記載した。
 

 PCB類はPOPs条約に掲げられている物質であり、全地球的な汚染監視の観点からも、今後さらにモニタリングを継続し、その消長を追跡する必要がある。また、PCB類の分解処理が始まっており、この効果・影響の監視も視野に入れる必要がある。なお、PCB類については総量に加え、同族体ごと並びにコプラナーPCBの測定も実施していく。

 ○ 平成15年度PCB(総量)の検出状況  経年変化図
媒体
()内は単位
幾何
平均値
中央値 70%値 80%値 90%値 95%値 最大値 定量[検出]
下限値
  検出頻度
検体 地点
水質
(pg/L)
530 450 860 1,000 1,600 1,900 3,100 0.3~6
[0.07~2]
  36/36 36/36
底質
(pg/g-dry)
8,200 9,500 34,000 72,000 180,000 370,000 5,600,000 0.4~6
[0.2~2]
186/186 62/62
生物:貝類
(pg/g-wet)
11,000  9,600 27,000 30,000 110,000 120,000 130,000 2.1~11
[0.69~3.7]
30/30 6/6
生物:魚類
(pg/g-wet)
11,000 9,600 23,000 72,000 110,000 140,000 150,000 2.1~11
[0.69~3.7]
70/70 14/14
生物:鳥類
(pg/g-wet)
18,000 22,000 25,000 31,000 31,000 42,000 42,000 2.1~11
[0.69~3.7]
10/10 2/2
大気
(pg/m3
温暖期 260 340 440 490 730 770 2,600 0.013~3.2
[0.0043~1.1]
35/35 35/35
寒冷期 110 120 160 200 290 430 630 34/34 34/34
注) 定量[検出]下限値の欄には塩素数ごとの定量[検出]下限値の範囲を記載した。
 
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