目次へ戻る 平成14年(2002年)版 「化学物質と環境」
第1部 平成13年度化学物質環境調査結果の概要

[化学物質環境調査(大気系)]

  ◎印は検出された物質
  [1]1,1,1-トリクロロエタン [8] アクリル酸エチル
  [2] 1,1,2-トリクロロエタン [9] アセトニトリル
  [3]塩化エチル(モノクロロエタン) [10] フタル酸ジイソノニル
  [4] 塩化メチル

[11] フタル酸ジイソデシル

  [5] テレフタル酸ジメチル [12] フタル酸ジイソトリデシル
  [6] テレフタル酸ジエチル [13] ポリ臭素化ジフェニルエーテル(1~7臭素化物)
  [7] アクリル酸メチル
 
[化学物質環境調査(水系)]
[参考文献(大気系)一覧]
       
 
 本調査は、大気中に化学物質がどの程度残留しているか把握することを目的として行っている。
 平成13年度の調査結果の概要は、次のとおりである。なお、調査地点としては、特定の排出源の直接的な影響を受けないような地点を選定している。
 本調査における試料採取は、ほとんどが9~11月に行われている。環境試料の分析は、主として調査地域を管轄する地方公共団体の公害等試験研究機関で行っており、検出限界については、化学物質環境調査(水系)と同様、各地点の検出頻度を相互に比較するため、同一化学物質に対しては一つの検出限界(統一検出限界)を設定している。
 今回の調査では、20物質(群)中18物質(群)において検出された(1,1,1-トリクロロエタン、1,1,2-トリクロロエタン、塩化エチル、塩化メチル、テレフタル酸ジメチル、テレフタル酸ジエチル、アクリル酸エチル、アセトニトリル、フタル酸ジイソノニル、フタル酸ジイソデシル、ポリ臭素化ジフェニルエーテル(PBDE, 1-7臭素化物及びその総和))。調査結果に対する評価を物質(群)別に示せば、次のとおりである。
       
[1] 1,1,1-トリクロロエタン
 今回の大気系調査の結果、1,1,1-トリクロロエタンは、16地点中16地点、48検体中48検体で検出され、検出範囲は 170~420ng/mであった。(統一検出限界値:12ng/m
 以上の調査結果によれば、1,1,1-トリクロロエタンは、検出頻度が高い。しかしオゾン層保護の観点から、生産、使用が停止されており、そのフォローアップとして別途環境モニタリングが行われているため、当面、本調査における大気系の環境調査の必要はないと考えられるが、含有製品の廃棄や廃棄物に伴う排出量の推移に注意する必要がある。
 
   ○ 1,1,1-トリクロロエタンの検出状況(大気)
  検出頻度 検出範囲 検出限界
(検体) (地点)
昭和54年度 54% ( 26/48) 59% (10/17)    0.02~0.71 ppb   0.002~0.18 ppb
119~4200 ng/m 12~1100 ng/m
昭和55年度 58% (78/135)     0.01~3.2  ppb   0.002~0.2  ppb
60~19000 ng/m 12~1200 ng/m
昭和58年度 88% (95/108)     0.010~3.4 ppb   0.001~0.03 ppb
60~20000 ng/m 6.0~180 ng/m
平成13年度 100% (48/48) 100% (16/16) 170~420 ng/m 12 ng/m
    注:昭和54~58年度の報告単位はppb
 
  【参考 : 1,1,1-トリクロロエタン】
  製造方法 :
  塩化ビニリデンに塩素ガスを反応させ、精留した後、安定剤を加えて製造
  塩化ビニル法
  用途 : 試薬、合成原料用1)
  生産量・輸入量 : 平成12年(輸出) 16,970,373 kg 1)
  環境への主な放出源 :
   化学工業:大気への排出量7,000 kg/年(取扱量14,461,960 kg/年)2)
 電気機械器具製造業:大気への排出量1,600 kg/年(取扱量1,700 kg/年)2)
 下水道業:公共用水域への排出量878 kg/年(取扱量データなし)2)
 産業廃棄物処分業:公共用水域への排出量0.5 kg未満/年(取扱量データなし)2)
  代謝 :
 
 本物質は肝ミクロソームのチトクローム-p450によって2,2,2-トリクロロエタノールに代謝される3)。本物質の数%は二酸化炭素に代謝されるが、残りは2,2,2-トリクロロエタノールのグルクロン酸抱合体として尿中に排泄される4)。吸入した場合、多くの有機溶剤と同様、数%は代謝されずに呼出される。143 mg/kg の本物質を飲料水として8時間でラットに飲ませると、56時間以内に6%が代謝物として回収され、その37%は尿中に、37%はCO2として呼気中に排泄された5)
本物質のヒトにおける推定生物学的半減期は血管の多い組織では0.8時間、筋肉と皮膚では7時間、脂肪組織では35時間であった6)
フィンランドの郊外に住む女性の母乳中本物質濃度は平均0.008μg/Lであった7)。1987年にツルク(フィンランド)で集めたヒト臓器中本物質濃度は腎臓0.1 μg/kg、肺0.1 μg/kg、筋肉0.4 μg/kgであった8)。デュッセルドルフ(ドイツ)に住む職業的に本物質に曝露していない人の全血中濃度は<0.1~0.4 ppb、中央値0.2 ppb、自動車産業技術者では<0.1~0.2 ppb、精密機器製造者では0.1~15.5 ppb、テトラクロロエチレンを溶剤として使用しているドライクリーニング業者では389.0~2,497.9 ppb、トリクロロフルオロメタンを溶剤として使用しているドライクリーニング作業者では17.6~48.2 ppbであった9)
  毒性 :
 
   LD50(雌マウス、経口) 11,240 mg/kg 10)
 LD50(雌ウサギ、経口) 5,660 mg/kg 10)
 LD50(雄モルモット、経口) 9,470 mg/kg 10)
 LD50(マウス、腹腔) 5,080 mg/kg 11)
 
810と 8,100 mg/m3(150と1,500 ppm)の本物質にラットを一度曝露すると、曝露量は10倍であるのに対して、排泄される代謝物は2~4倍の増加に過ぎず、8,100 mg/m3濃度に16ヶ月間反復曝露しても代謝物の量は変わらなかった。尿中代謝産物は全体の40~70%であった。マウスはラットの約5倍生体内変化が大であった。加齢に従い代謝量が増加する現象はラットもマウスも同じであった5)
麻酔剤として本物質をラット、イヌ、サルに曝露すると、ラットでは肝、腎機能に障害はなく、イヌでは肝臓、心電図に異常はないが、血圧は下がった。サルでは心電図に異常はないが、酸素吸入量が低下した12)
ヒトへの毒性として、長期反復して皮膚に接触すると、皮膚炎、脱脂作用によるひびわれ、感染などを生じる4)
  刺激性 : 不詳
  反復投与毒性 : 不詳
  発がん性 :
ヒトにおいても動物においても発がん性を証明するには不十分である。IARCは本物質をGroup 3に分類している13),3-11)
  胎児への影響 :
 
高濃度の本物質(11,340 mg/m3、2,100 ppm、1日6時間、1週間に5日間)に雌ラットを交尾前の2週間、妊娠後20日間(1日6時間、毎日)、の両方または片方曝露した。妊娠中曝露した群のみで胎児の体重が低かった。妊娠前と妊娠中に曝露した群では骨形成の遅れなどの骨格系と内臓系の異常が観察された。妊娠前と妊娠中に曝露した群の母体への影響は観察されなかった14)
  変異原性 : 不詳
  許容濃度 :
   
  ppm mg/m3 発がん分類  
日本産業衛生学会 ―― ―― ――
 
  アメリカ(ACGIH)
    時間荷重平均値 ―― ―― ――
    短時間暴露限界 ―― ――  
  ドイツ(MAK) 200 1100 ――
  IARC 3
 
EPA Region III RBC Table:吸入暴露量(Reference dose inhaled) 0.63mg/kg/day(EPA-NCEA provisional value)、環境大気許容濃度 2300μg/m3(Noncarcinogenic effects)
  分解性 : 難分解(化審法)(0%分解、BOD)19)
  濃縮性 : 低濃縮(化審法)(BCF:0.7~3.0)19)
  生態影響 :
 
緑藻の一種(Chlorococcales 24 h-EC50(PHY) 320 mg/L 20)
セレナストルム(Slenastrum capricornutum
              (緑藻)
96 h-EC50     >500 mg/L
 (増殖阻害)
21)
 
オオミジンコ(Daphnia magna)  24 h-EC50(行動異常) 2.3 mg/L 22)
24 h-LC50       5.4 mg/L 23)
17 d-NOEC(繁殖阻害) 1.3 mg/L 23)
エビの一種(Americamysis bahia 96 h-LC50       31.2 mg/L 21)
ゼブラフィッシ(Brachydanio rerio 48 h-LC50       79 mg/L 24)
96 h-LC50       59 mg/L 24)
シープヘッドミノー(Cyprinodon variegatus 96 h-LC50       71 mg/L 25)
ファットヘッドミノー(Pimephales promelas 96 h-LC50       42 mg/L 26)
ブルーギル(Lepomis macrochirusc 96 h-LC50       72 mg/L 27)
コイの一種(Leuciscus idus 48 h-LC50       123 mg/L 28)
ニジマス(Oncorhynchus mykiss 24 h-LC50       52 mg/L 29)
PHY;生理的影響
急性毒性値で見る限り、甲殻類、魚類、藻類の順で感受性が高いようであるが、1 mg/L以下の毒性値は見られなかった。
  規制・基準 :
[PRTR]第2条第1種指定化学物質1)
[水質]施行令第2条有害物質1)
水質汚濁防止法施行令33)
水質汚濁防止法施行規則33)
排水基準を定める総理府令33)
環境庁長官が定める排水基準に係る検定方法33)
水質汚濁防止法施行規則第6条の2の規定に基づき環境庁長官が定める検定方法33)
水質汚濁防止法施行規則第9条の4の規定に基づき環境庁長官が定める測定方法33)
[労働安全]施行令別表第6の2有機溶剤(第2種有機溶剤)1)
施行令第18条(名称等を表示すべき有害物)1)
施行令第18条の2〔名称等を通知すべき有害物(MSDS対象物質)〕1)
労働安全衛生法施行令33)
労働安全衛生規則33)
有機溶剤中毒予防規則33)
作業環境測定基準33)
労働安全衛生法第28条第3項の規定に基づく労働大臣が定める化学物質33)
[海洋]施行令別表第1有害液体物質(C類)1)
海洋汚染及び海上災害の防止に関する法律施行令33)
海洋汚染及び海上災害の防止に関する法律施行令第5条第1項に規定する埋立場所等に排出しようとする金属等を含む廃棄物に係る判定基準を定める総理府令33)
船舶の通常の活動に伴い生ずる汚水であって海洋において処分することができるものの水質の基準を定める省令33)
船舶又は海洋施設において焼却することができる油等に係る判定基準を定める総理府令33)
船舶からの有害液体物質の排出に係る事前処理の方法等に関する命令附則第2項第2号の規定に基づく環境庁長官及び運輸大臣が指定する有害液体物質33)
海洋汚染及び海上災害の防止に関する法律施行令第5条第1項に規定する埋立場所等に排出しようとする廃棄物に含まれる金属等の検定方法33)
船舶又は海洋施設において焼却することができる油等に含まれる金属等の検定方法33)
海洋汚染及び海上災害の防止に関する法律施行規則第30条の2の3の物質を定める告示33)
[船舶]危規則第3条危険物等級6.1毒物(正6.1容器等級3)1)
船舶による危険物の運送基準等を定める告示33)
[航空]施行規則第194条危険物毒物(M特級3)1)
航空機による爆発物等の輸送基準等を定める告示33)
[外為]輸出貿易管理令33)
輸入割当てを受けるべき貨物の品目、輸入についての許可を受けるべき貨物の原産地または船積地域その他貨物の輸入について必要な事項の公表33)
[環境]水質汚濁に係る環境基準について33)
土壌の汚染に係る環境基準について33)
環境基本計画33)
地下水の水質汚濁に係る環境基準について33)
[下水道]下水道法施行令33)
下水道法施行規則33)
下水の水質の検定方法に関する省令33)
[工業]工業標準化法施行規則に基づく指定商品の公表ならびにこれらに係る日本工業規格に該当する旨の表示許可(承認)申請書および表示の様式等を指定33)
[水道]水質基準に関する省令33)
給水装置の構造及び材質の基準に関する省令33)
[租税]租税特別措置法施行規則第5条の12第3項等に規定する通商産業大臣の行う証明に関する手続33)
[地方税]地方税法施行規則附則第6条第35項に規定する通商産業大臣の行う証明に関する手続き33)
[オゾン]特定物質の規制等によるオゾン層の保護に関する法律第2条第1項の特定物質
[バーゼル]特定有害廃棄物等の輸出入等の規制に関する法律第2条第1項第1号イに規定する物33)
[廃棄]廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行令33)
廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行規則33)
金属等を含む産業廃棄物に係る判定基準を定める総理府令33)
産業廃棄物に含まれる金属等の検定方法33)
[労働基準]労働基準法施行規則別表第1の年少者労働基準規則第8条第33号の業務に係る使用者が講ずべき個別的措置の基準第5項の有害性が高度な有害物等33)
労働基準法施行規則の規定に基づき労働大臣が指定する単体たる化学物質及び化合物(合金を含む。)並びに労働大臣が定める疾病を指定33)
[2] 1,1,2-トリクロロエタン
 今回の調査の結果、1,1,2-トリクロロエタンは、16地点中3地点、48検体中4検体で検出された。検出範囲は20~27ng/mであった。(統一検出限界値:20ng/m
 以上の調査結果によれば、1,1,2-トリクロロエタンは、検出頻度が低いが、有害性等の関連情報から見て、環境リスク評価を行う化学物質の候補とする必要がある。
 
    ○ 1,1,2-トリクロロエタンの検出状況
  検出頻度 検出範囲 検出限界
(検体) (地点)
平成13年度 8% (4/48) 19% (3/16) 20~27 ng/m 20 ng/m
 
  【参考 : 1,1,2-トリクロロエタン】
  製造方法 : エタンあるいはエチレンを接触塩素化させて製造34)
  用途 : 油脂ワックス、天然樹脂、アルカロイドの溶剤34)
  生産量・輸入量 : 不詳
  環境への主な放出源 :
化学工業:大気への排出量3,100kg/年、公共用水域への排出量20kg/年(取扱量42,570,780 kg/年)2)
下水道業:公共用水域への排出量74kg/年(取扱量データなし)2)
産業廃棄物処分業:公共用水域への排出量0.5 kg未満/年(取扱量データなし)2)
  代謝 :
 
 本物質を0.1~0.2 g/kg当てマウスに腹腔内投与すると3種の代謝物(クロロ酢酸、S-カルボキシメチルシステインおよび硫化アセト酢酸)が尿中に排泄される。少量のグリコール酸、2,2-ジクロロエタノール、2,2,2-トリクロロエタノール、蓚酸およびトリクロロ酢酸も検出される35)。体内でモノ- およびジクロロ酢酸、モノ- およびジ-クロロエタノールを生じる36)。以上のことから本物質の代謝はチトクロームp-450の関与3) とクロロアセトアルデヒドの形成を介すると考えられる。
  毒性 :
 
   LD50(ラット、経口)  100~200 mg/kg 37)
 LD50(ウサギ、吸入4時間) 2,000 ppm 37)
 LD50(ウサギ、経皮) 3.73 ml/kg 38)
 LD50(ラット、経口) 835 mg/kg 39)
 
トリクロロエタンはトリクロロエチレンより毒性は低い。換気、低血圧、心機能モニタリングなど治療法は同じである。5分以内に生じた軽い麻酔作用からの回復は早い40)。呼気又は血液の分析により曝露の診断は可能である41)。高濃度トリクロロエタンに曝露すると眼や局所粘膜の炎症、腱反射喪失、呼吸停止により死亡する42)。動物実験の結果では、急性曝露の毒性は1,1,2-異性体の方が、1,1,1-異性体よりも強い41)
1,1,2-トリクロロエタンの急性吸入実験ではネコに対して中枢神経抑制作用、眼や鼻への炎症作用はクロロホルムより強い。すなわち1,1,2-トリクロロエタン13,600 ppmの24時間曝露で中枢神経系の強い抑制作用に続き、死亡したのに対して、クロロホルムの同程度の作用は30,000~40,000 ppmで生じる39)。イヌをトリクロロエタンで麻酔すると、はじめ非代償性の血管収縮を伴う血圧低下を示し、のちに心拍数、拍出量、心筋収縮性が低下し、血行動態の変化が起こる40)
  刺激性:不詳
  反復投与毒性:不詳
  発がん性、催腫瘍性:
 
雌雄各50匹のラット(7週齢)にコーンオイルに溶かした 1,1,2-トリクロロエタンを高濃度群には100 mg/kg/dayを1週間に5日胃内投与した。14週後に雄の投与量を130 mg/kg/dayに上げ、18週間投与した。それ以後はこの濃度4週と無投与1週を9サイクル45週間続けた。合計78週となる。雌は25週後に濃度を80 mg/kg/dayに下げ、7週間投与し、その後は雄と同様のサイクルで45週間続けた。低濃度群の雄には50 mg/kg/dayを14週間、その後40 mg/ kg/dayを64週間、雌には50 mg/kg/dayを25週間、その後40 mg/kg/dayを53週間与えた。対照群(雌雄が20匹)にはコーンオイルのみを与えた。その後、全動物を32週間、通常の飼育条件下で飼育した。1,1,2-トリクロロエタンの平均投与量は高低群それぞれ雄では108および62 mg/kg/day、雌では76および43 mg/ kg/dayとなる。全動物の98%以上の贓物から摘出した全臓器の組織病理学的検査を行った。腫瘍の頻度は対照群と差がなかった。高濃度群雄の49匹中2匹に肝細胞癌と他の動物の肝に腫瘍結節が見られたが、形成時期の特定は出来なかった43)
上記と類似したラットとマウスを使用した実験結果がある。高低2群への1,1,2-トリクロロエタンの胃内投与量は92と46 mg/kg/day(雌雄ラット)と390と195 mg/kg/day(雌雄マウス)である。1週間に5日、78週間投与後、35週間の観察期間を設けた。この実験結果はOsborne-Mendel rat 雌雄に対して1,1,2-トリクロロエタンの発がん作用は認められなかったが、B6C3F1マウスに対しては肝細胞と副腎にクロム親和性細胞腫を生じた44)
IARCは1,1,2-トリクロロエタンをGroup 3に分類している45)
  変異原性:
Amesテストで1プレート当り20、40、60μMの1,1,2-トリクロロエタンを添加した実験でS9mixの存在、非存在にかかわらず陰性であった35)。同様にAmesテスト陰性データは他にもある46)
  許容濃度:
 
  ppm mg/m3 発がん分類  
日本産業衛生学会 10 55 ――
  アメリカ(ACGIH)      
    時間荷重平均値 10 ―― A3
    短時間暴露限界 ―― ――  
  ドイツ(MAK) 10 55 3B
  IARC     3
  EPA Region III RBC Table:環境大気許容濃度 0.11μg/m(Carcinogenic effects)
  分解性:難分解(化審法)(5%分解、GC)48)
  濃縮性:低濃縮(化審法)(BCF:0.7~2.6)48)
  生態影響:
 
クロレラ(Chlorella pyrenoidosa、緑藻) 96 h-EC50(増殖阻害) 170 mg/L 49)
珪藻の一種(Phaeodactylum tricornutum 96 h-EC50(増殖阻害)  60 mg/L 49)
藻の一種(Dunaliella 96 h-EC50(増殖阻害) 200 mg/L 49)
セネデスムス(Senedesmus subspicatus
緑藻)
96 h-EC50(増殖阻害) 167 mg/L
 
50)
 
オオミジンコ(Daphnia magna 24 h-LC50        70 mg/L 51)
24 h-LC50        19 mg/L 52)
48 h-LC50        43 mg/L 49)
エビの一種(Crangon crangon 7 d-LC50         42 mg/L 49)
アルテミア(Artemia salina 96 h-LC50        40 mg/L 49)
ユスリカの一種(Chironomus thummi 48 h-LC50        147 mg/L 53)
魚の一種(Jordanella floridae 24 h-LC50        64 mg/L 54)
48 h-LC50        54 mg/L 54)
96 h-LC50        50 mg/L 54)
キンギョ(Carassius auratus 24 h-LC50        45 mg/L 54)
ブルーギル(Lepomis macrochirus 24 h-LC50        40 mg/L 27)
他にも無脊椎動物なども含み数多くの水生生物に関する毒性データがあるが、いずれも急性毒性値は、10 mg/L以上であり水生生物に対する毒性は低い。
  規制・基準 :
[PRTR]第2条第1種指定化学物質
[化審]第2条指定化学物質
[労働安全]施行令第18条の2〔名称等を通知すべき有害物(MSDS対象物質)〕1)
[外為]輸出貿易管理令33)
輸入割当てを受けるべき貨物の品目、輸入についての許可を受けるべき貨物の原産地または船積地域その他貨物の輸入について必要な事項の公表33)
[海洋]海洋汚染及び海上災害の防止に関する法律施行令33)
海洋汚染及び海上災害の防止に関する法律施行令第5条第1項に規定する埋立場所等に排出しようとする金属等を含む廃棄物に係る判定基準を定める総理府令33)
船舶の通常の活動に伴い生ずる汚水であって海洋において処分することができるものの水質の基準を定める省令33)
船舶又は海洋施設において焼却することができる油等に係る判定基準を定める総理府令33)
海洋汚染及び海上災害の防止に関する法律施行令第5条第1項に規定する埋立場所等に排出しようとする廃棄物に含まれる金属等の検定方法33)
船舶又は海洋施設において焼却することができる油等に含まれる金属等の検定方法33)
[環境]水質汚濁に係る環境基準について33)
土壌の汚染に係る環境基準について33)
環境基本計画33)
地下水の水質汚濁に係る環境基準について33)
[下水道]下水道法施行令33)
下水道法施行規則33)
下水の水質の検定方法に関する省令33)
[港則]港則法施行規則の危険物の種類を定める告示33)
[水質]水質汚濁防止法施行令33)
水質汚濁防止法施行規則33)
排水基準を定める総理府令33)
環境庁長官が定める排水基準に係る検定方法33)
水質汚濁防止法施行規則第6条の2の規定に基づき環境庁長官が定める検定方法33)
水質汚濁防止法施行規則第9条の4の規定に基づき環境庁長官が定める測定方法33)
[水道]水質基準に関する省令33)
給水装置の構造及び材質の基準に関する省令33)
[船舶]船舶による危険物の運送基準等を定める告示33)
[租税]租税特別措置法施行規則第5条の12第3項等に規定する通商産業大臣の行う証明に関する手続33)
[地方税]地方税法施行規則附則第6条第35項に規定する通商産業大臣の行う証明に関する手続き33)
[バーゼル]特定有害廃棄物等の輸出入等の規制に関する法律第2条第1項第1号イに規定する物33)
[廃棄]廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行令33)
廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行規則33)
金属等を含む産業廃棄物に係る判定基準を定める総理府令33)
産業廃棄物に含まれる金属等の検定方法33)
[労働基準]労働基準法施行規則の規定に基づき労働大臣が指定する単体たる化学物質及び化合物(合金を含む。)並びに労働大臣が定める疾病を指定33)
[3] 塩化エチル(モノクロロエタン)
 今回の調査の結果、塩化エチルは、16地点中16地点、48検体中46検体で検出された。 検出範囲は14~540ng/mであった。(統一検出限界値:6.0ng/m
 以上の調査結果によれば、塩化エチルは、検出頻度が高い。有害性等の関連情報から見て、環境リスク評価を行う化学物質の候補とする必要がある。
  ○ 塩化エチルの検出状況
  検出頻度 検出範囲 検出限界
(検体) (地点)
昭和54年度   17% (8/48)      0.043~20 ppb     0.006~3 ppb
120~58000 ng/m 17~8600 ng/m
昭和55年度 6% (7/117)      0.068~0.6 ppb     0.045~3 ppb
200~1700 ng/m 130~8600 ng/m
昭和58年度 55%(56/102)    0.012~0.776 ppb   0.011~0.05 ppb
35~2200 ng/m 32~140 ng/m
平成13年度 96%(46/48) 100%(16/16) 14~540 ng/m 6.0 ng/m
    (注)昭和54~58年度の報告単位はppb。()内は比較のために換算したもの。
 
  【参考 : 塩化エチル】
  製造方法 : エチレンと塩化水素を無水塩化アルミニウムの存在下で付加させて製造1)
  用途 :
エチルセルロース、冷凍剤、麻酔剤、アルキル化試薬、殺虫剤、チーグラー系触媒の原料1)
  生産量・輸入量 : 不詳
  環境への主な放出源 :
化学工業:大気への排出量8 kg/年(取扱量37,803 kg/年)2)
プラスチック製品製造業:大気への排出量260,000 kg/年(取扱量443,846 kg/年)2)
  代謝 :
蒸気は呼吸に伴って肺から容易に吸収されるが、また未変化のまま再び肺から呼気中に排泄される。55)
  急性毒性 :
最小致死濃度(モルモット、吸入45分)   4,000 ppm
主な毒性は中枢神経抑制作用である。皮フ、眼、粘膜を刺激し、眼に有害である。
ヒトにおける急性中毒症状は13,000 ppm前後から現れ、20,000 ppm(すなわち2%)では、「めまい」・軽い痛覚低下・軽い腹筋痙攣を生じ、3%では30秒曝露で中毒症状が発生する56)
ラットおよびイヌに0、1,600、4,000、10,000 ppmで1日6時間、1週間に5日、2週間曝露した実験では4,000 ppmおよび10,000 ppm群のラットの肝重量が軽度に上昇したほかは、中枢神経抑制作用以外の中毒所見を認め得なかった57)
  刺激性:不詳
  変異原性:不詳
  許容濃度:
 
  ppm mg/m3 発がん分類  
日本産業衛生学会 ―― ―― ――
  アメリカ(ACGIH)      
    時間荷重平均値 100 ―― A3
    短時間暴露限界 ―― ――  
  ドイツ(MAK) ―― ―― ――
  IARC     ――
  IRIS毒性データ:吸入標準容量(Inhalation RfC) 10mg/m
  EPA Region III RBC Table:吸入暴露量(Reference dose inhaled) 29mg/kg/day(IRIS)
              環境大気許容濃度 2.2μg/m(Carcinogenic effects)
  分解性 : 難分解(化審法)(1%分解、BOD(クローズドボトル法))58)
  濃縮性 : 不詳
  生態影響 : 不詳
  規制・基準
 
[PRTR]第2条第1種指定化学物質1)
[化審]第2条指定化学物質1)
[毒劇]第2条別表第2劇物1)
[高圧]第2条(液化ガス)1)
一般高圧ガス保安規則第2条(可燃性ガス)1)
一般高圧ガス保安規則33)
コンビナート等保安規則33)
容器保安規則33)
[労働安全]施行令別表第1危険物(可燃性のガス)1)
施行令第18条の2〔名称等を通知すべき有害物(MSDS対象物質)〕1)
第57条の5変異原性が認められた既存化学物質
[船舶]危規則第3条危険物等級2.1高圧ガス(正2.1)1)
船舶による危険物の運送基準等を定める告示33)
[航空]施行規則第194条危険物高圧ガス(D旅禁)1)
航空機による爆発物等の輸送基準等を定める告示33)
[港則]施行規則第12条危険物(高圧ガス)1)
港則法施行規則の危険物の種類を定める告示33)
[道路]施行令第19条の13(車両の通行の制限)
[労働基準]労働基準法施行規則別表第1の年少者労働基準規則第8条第33号の業務に係る使用者が講ずべき個別的措置の基準第5項の有害性が高度な有害物等33)
[4] 塩化メチル
 今回の調査の結果、塩化メチルは、16地点中16地点、48検体中48検体で検出された。検出範囲は 750~ 16,000ng/mであった。(統一検出限界値:12ng/m
 以上の調査結果によれば、塩化メチルは、検出頻度が高い。有害性等の関連情報から、環境リスク評価を行う化学物質の候補とする必要がある。
 
    ○ 塩化メチルの検出状況
  検出頻度 検出範囲 検出限界
(検体) (地点)
昭和54年度  67% (30/45)      0.28~2.2 ppb    0.02~1.0 ppb
630~5000 ng/m  45~2300 ng/m
昭和55年度  62% (61/99)       0.048~3 ppb     0.014~1 ppb
110~6800 ng/m 32~2300 ng/m
昭和58年度  97%(98/101)      0.077~4.1 ppb   0.005~0.054 ppb
170~9200 ng/m 11~120 ng/m
平成13年度 100%(48/48) 100%(16/16) 750~16000 ng/m 12 ng/m
 
  【参考 : 塩化メチル】
  製造方法1) :
硫酸の存在下でメタノールに塩酸を作用させた後、蒸留により精製して製造
メタンの直接塩素化によって各種の塩化物を生成させた後、これを分留、精製して製造(メタンが安価に得られるときはこの方法の方が有利)
  用途 :
医薬品、農薬、発泡剤、不燃性フィルム、有機合成(ブチルゴム、シリコーン樹脂、メチルセルロース製造用)、その他有機合成用各種メチル化剤、抽出剤または低温用溶剤1)
  生産量 : 平成12年 176,541 t 1)
  環境への主な放出源 :
化学工業:大気への排出量47,013 kg/年(取扱量751,763 kg/年)2)
  代謝 :
実験(ラット,皮下注)によれば、注射後、血中濃度はすみやかに低下し、消失する。呼気中への排出もすみやかで、投与して2時間後には検出できなくなる。この間に投与の約30%は呼気中へ排出される59)。残りの70%は、メチルアルコールなどになると想定されているが、明らかでない。
  急性毒性 :
 対象動物種 投与経路 試験時間 毒性数値種類   毒性数値
   人 経気道  2時間   LCL0 20,000 ppm
   人   経気道  30分   LD50     152,000 mg/m3
  ラット  経気道  6時間   TCL0     1,500 ppm
  ラット  経気道   6時間   TCL0     2,000 ppm
  ラット  経気道   6時間   TCL0     500 ppm
  ラット  経気道   30分   LC50     152,000 mg/m3
  マウス  経気道  7時間   LC50     3,146 ppm
 モルモット 経気道  2時間   LCL0     20,000 ppm
   トリ   経気道  4時間   LCL0     128,700 mg/m3
   トリ   経気道  6時間   LCL0     14,661 ppm
主な作用は、中枢神経系に対する作用であり、運動が円滑でなくなり、酩酊状態となり、さらに痙攣、意識喪失におちいり、死亡する。作業者が塩化メチルの曝露を受けた場合の問題は、酩酊状態になることであり、運動が不確かになり、判断力が低下するため、事故の原因となりやすい。
動物実験の成績から、急性毒性は下記のように要約される60)
 
曝露濃度(ppm)症    状
  500~ 1,000
  7,000~
 20,000~ 40,000
150,000~300,000
8時間以内では重篤な症状なし。
60分以内では重篤な症状なし。
30~60分で生命の危険がある。
短時間で殆どの動物が死亡する。
イヌの実験では、4~6ヶ月の曝露(1日6時間、1週間に6日)で強直性の痙攣と運動失調があらわれたが、サルの実験では、しだいに衰弱し死亡した。このような症状は、300 ppm以下の曝露ではみられなかった61)
  催腫瘍性:NCI選択物質
  催奇形性:不詳
  発がん性 : 不詳
  変異原性 :
 
  試験種類  実験生物  結果
 姉妹染色分体交換試験   ヒト(in vitro)   陽性
 体細胞突然変異試験    ヒト(in vitro)   陽性
 不定期DNA合成試験   ラット(in vitro)  陽性
 優性致死試験       ラット(in vivo)  陽性
 腫瘍遺伝子転換試験    ハムスター(in vitro) 陽性
  許容濃度 :
 
  ppm mg/m3 発がん分類  
日本産業衛生学会 ―― ―― ――
  アメリカ(ACGIH)      
    時間荷重平均値 50 ―― A4
    短時間暴露限界 100 ――  
  ドイツ(MAK) 50 100 3B
  IARC     3
  EPA Region III RBC Table:吸入暴露量(Reference dose inhaled) 0.026mg/kg/day(IRIS)
                  環境大気許容濃度 1.8μg/m3
  分解性:難分解(化審法)(0~1%分解、BOD(OECDクローズドボトル法))65)
  濃縮性:低濃縮(log Pow値から推定)65)
  生態影響:
ブルーギル(Lepomis macrochirus 96 h-LC50     550 mg/L 66)
イワシの一種(Menidia macrochirus 96 h-LC50     270 mg/L 66)
他にScenedesmus(緑藻)などに対する毒性値67) もあるが、いずれも毒性は魚と同様低い。
  規制・基準
 
[PRTR]第2条第1種指定化学物質1)
[化審]第2条指定化学物質1)
[消防]第9条の2貯蔵等の届出を要する物質政令別表第2クロルメチル(200kg)1)
政令第2条クロルメチルを含有する製剤(容量300mL以下の容器に収められた殺虫剤であって、クロルメチル50%以下を含有するものを除く)(200kg)1)
危険物の規制に関する政令33)
危険物の規制に関する政令別表第一及び同令別表第二の自治省令で定める物質及び数量を指定する省令33)
[毒劇]第2条別表第2劇物(製剤を含む、ただし容量300mL以下の容器に収められた殺虫剤でクロルメチル50%以下のものを除く)1)
毒物及び劇物取締法33)
毒物及び劇物取締法施行令33)
毒物及び劇物取締法施行規則33)
[高圧]第2条(液化ガス)1)
一般高圧ガス保安規則第2条(可燃性ガス、毒性ガス)1)
一般高圧ガス保安規則33)
コンビナート等保安規則33)
冷凍保安規則33)
容器保安規則33)
[労働安全]施行令別表第1危険物(可燃性のガス)1)
施行令第18条の2〔名称等を通知すべき有害物(MSDS対象物質)〕1)
第57条の5変異原性が認められた既存化学物質
[薬事]第2条劇薬 1)
[船舶]危規則第3条危険物等級2.1高圧ガス(正2.1)1)
船舶による危険物の運送基準等を定める告示33)
[航空]施行規則第194条危険物高圧ガス(D旅禁)1)
航空機による爆発物等の輸送基準等を定める告示33)
[港則]施行規則第12条危険物(高圧ガス)1)
港則法施行規則の危険物の種類を定める告示33)
[漁船]漁船検査規則33)
[地方税]地方税法施行規則33)
[道路運送]旅客自動車運送事業等運輸規則33)
[道路]日本道路公団・首都高速道路公団・神戸市道路公社・愛知県道路公社公示33)
危険物を積載する車両の水底トンネル及びこれに類するトンネルの通行の禁止又は制限の公示33)
[労働基準]労働基準法施行規則別表第1の年少者労働基準規則第8条第33号の業務に係る使用者が講ずべき個別的措置の基準第5項の有害性が高度な有害物等33)
労働基準法施行規則の規定に基づき労働大臣が指定する単体たる化学物質及び化合物(合金を含む。)並びに労働大臣が定める疾病を指定33)
[5] テレフタル酸ジメチル
 今回の調査の結果、テレフタル酸ジメチルは、13地点中1地点、38検体中3検体で検出された。検出範囲は 0.074~0.093ng/mであった。(統一検出限界値:0.030ng/m
以上の調査結果によれば、テレフタル酸ジメチルは、検出頻度が低いが、有害性等の関連情報が少ないので、その収集に努める必要がある。
    ○ テレフタル酸ジメチルの検出状況
  検出頻度 検出範囲 検出限界
(検体) (地点)
平成13年度  9% (3/38)  8%(1/13) 0.074~0.093 ng/m 0.030 ng/m
 
  【参考 : テレフタル酸ジメチル】
  製造方法1) :
テレフタル酸のメタノールによるエステル化またはp-キシレンの酸化とメチルエステル化を4段で行うウィッテン法により製造
SD法:(例)テレフタル酸 1,000、メタノール 6,690、ZnO 10、Zn 5の混合物を200℃、49~52気圧で4時間処理して製造した場合、粗DMT収量 1,008(DMT89 モル%、モノエチルエステル10 モル%)(Mid-Century, Brit., 801, 567)
高圧無触媒法:(例)テレフタル酸:メタノール=1:4の混合物を300℃、186気圧で管状反応器に通して製造した場合、滞留時間20分で転化率95 モル%、DMT収率85%(99.5%)(ICI, Brit., 844, 237)
ウィッテン法(イムハウゼン法、ハーキュレス法):パラキシレンを酢酸中、165℃、5気圧、酢酸コバルト触媒で酸化、パラトルイル酸とし、次いでメタノールでエステル化して製造(当初は4段で行われていたが、最近は2段法が主流)
  用途 :
ポリエステル系合成繊維およびフィルム(ただし、現在の合成繊維原料としてはテレフタル酸ジメチルより高純度テレフタル酸が主流であり、原料転換もほとんど終了)1)
  生産量・輸入量 :
平成12年生産:291,894 t
輸出: 2,540 t
輸入:81,484 t 1)
  環境への主な放出源 :
化学工業:埋立への排出量77,000 kg/年(取扱量224,910,523 kg/年)2)
  代謝 : 不詳
  毒性 :
眼を刺激する。長期投与によって肺腫瘍を発生させることが知られている。ラットおよびマウス(1群雄・雌各50匹)に本物質を0、2,500、5,000 ppm添加飼料を103週間投与、さらに2週間観察、ラットは105~106週にマウスは104~105週に屠殺検索した。この投与条件は生長・生存に障害を与えなかった。雄雌ラットおよび雌マウスでは投与に対応した腫瘍発生は認められなかったが、雄マウスでは肺胞/細気管支の腺腫/腫瘤の発生率は対照群の1/49(2%)に比して少量群8/49(16%)、大量群13/49(27%)(対照群では一般にこの実験室では18/482、4%)と有意(少量群p=0.015、大量群p=0.001)に上昇していた68)。またラットに対する長期間投与で膀胱結石を生じることが報告されている。本物質を3%添加した飼料を雄の仔ラットに2週間投与すると100%の動物に膀胱結石が検出される。ただし雌の仔ラットでは頻度が低く、また、1.5%添加飼料では雄・雌とも結石をみなかった69)
     急性毒性に関連しては、下記の数値が報告されている。
   LD50(ラット、経口)    4,390 mg/kg
   LD50(ラット、腹腔内)   3,900 mg/kg
 
  対象動物種投与経路試験時間毒性数値種類毒性数値
マウス経口103週 TD 433 g/kg
マウス経口 103週TDL0 216 g/kg
  刺激性:不詳
  変異原性:不詳
  許容濃度:
  ppm mg/m3 発がん分類  
日本産業衛生学会 ―― ―― ――
  アメリカ(ACGIH)      
    時間荷重平均値 ―― ―― ――
    短時間暴露限界 ―― ――  
  ドイツ(MAK) ―― ―― ――
  IARC     ――
  分解性:良分解(化審法)(84%分解、BOD)19)
  濃縮性:不詳
  生態影響 : 不詳
  規制・基準
 
[PRTR]第2条第1種指定化学物質1)
[海洋]環境省告示・査定物質(D類同等の有害液体物質)
[外為]輸出貿易管理令33)
輸入割当てを受けるべき貨物の品目、輸入についての許可を受けるべき貨物の原産地または船積地域その他貨物の輸入について必要な事項の公表33)
[麻薬]麻薬及び向精神薬を指定する政令33)
[6] テレフタル酸ジエチル
 今回の調査の結果、テレフタル酸ジエチルは、13地点中1地点、38検体中3検体で検出された。検出範囲は 0.16~0.22ng/mであった。(統一検出限界値:0.042ng/m
 以上の調査結果によれば、テレフタル酸ジエチルは、検出頻度が低いが、有害性等の関連情報が少ないので、その収集に努める必要がある。
 
    ○ テレフタル酸ジエチルの検出状況
  検出頻度 検出範囲 検出限界
(検体) (地点)
平成13年度 8% (3/38) 8% (1/13) 0.16~0.22 ng/m 0.042 ng/m
  【参考 : テレフタル酸ジエチル】
  製造方法 : 不詳
  用途 : 不詳
  生産量・輸入量 : 不詳
  環境への主な放出源 : 不詳
  代謝 : 不詳
  毒性 : 不詳
  許容濃度 :
 
  ppm mg/m3 発がん分類  
日本産業衛生学会 ―― ―― ――
  アメリカ(ACGIH)      
    時間荷重平均値 ―― ―― ――
    短時間暴露限界 ―― ――  
  ドイツ(MAK) ―― ―― ――
  IARC     ――
  分解性・濃縮性 : 不詳
  生態影響 : 不詳
  規制・基準 : なし
       
[7] アクリル酸メチル
 今回の調査の結果、アクリル酸メチルは、不検出(5地点、15検体)であった(統一検出限界値:0.6ng/m)。
 以上の調査結果によれば、アクリル酸メチルは、不検出であり、今回の調査結果からは特に問題を示唆する結果は得られておらず、当面、本調査における大気系の環境調査の必要はないと考えられる。
 
    ○ アクリル酸メチルの検出状況
  検出頻度 検出範囲 検出限界
(検体) (地点)
平成13年度 0% (0/15) 0% (0/5) 不検出 0.6 ng/m
 
【参考 : アクリル酸メチル】
  製造方法70)
エチレンシアノヒドリン、メタノール、希硫酸より製造
ニッケルあるいはコバルト触媒下でアセチレン、一酸化炭素とメチルアルコールの酸化により製造
  用途:
[アクリル酸エステルとして]
アクリル繊維、繊維加工、塗料、紙加工、接着剤、皮革加工、アクリルゴム1)
  生産量:
[アクリル酸エステルとして]
平成12年生産:253,370 t 1)
輸出:78,278,900 kg 1)
輸入:34,058,831 kg 1)
  環境への主な放出源 :
化学工業:大気への排出量5,105 kg/年、公共用水域への排出量400 kg/年(取扱量55,578,480 kg/年)2)
  代謝 :
アクリル酸メチルは、消化管・肺および皮膚から吸収される。本物質の代謝過程は詳しくはわかってない。
  急性毒性 :
 
 LD50(ラット、経口)     300 mg/kg
 LD50(ウサギ、経口)     200 mg/kg
 LD50(マウス、腹腔)     265 mg/kg
 LD50(ウサギ、経皮)    1,300 mg/kg
 LD50(ラット、吸入4時間)   約1,000 ppm 71)
 LCLO(ウサギ、吸入1時間)    2,522 ppm
アクリル酸メチルは、気中濃度20 ppmで臭うが、この臭いは慣れが起こる。しかし、75 ppmになると、不快臭を放ち、眼、上気道を刺激する。
アクリル酸メチルを飲み込んだ場合、口腔・食道・胃に激しい刺激症状・虚脱・呼吸困難・中枢神経刺激症状が起こる。高濃度曝露では、流涎、激しい眼および呼吸器の刺激症状が起こり、さらに重症では唇蒼白・呼吸困難・痙攣(中枢神経刺激症状)が起こり、肺浮腫が主因で死に至る72)
ウサギに致死量の約1/10(23 mg)を週5日・5週間・経口投与しても、成長の変化も組織変化も認められなかった。急性中毒で死に至った動物の病理学的所見は、肺の充血と出血が特徴的である。また肝・腎・心・脾に中毒変性が認められている。また、急性中毒時には、体温下降とヘマトクリット値の増大が起こる73)3-3)。繰り返し投与により、血中のグロブリン成分の上昇と共にA/G比の低下が報告74)されており、また総α-アミノ酸窒素の減少が認められている75)。また、各組織でのアスコルビン酸の低下76)と、グルタチオンの酸化型の増加77)も認められている。
  催腫瘍性:
ラットを、0、15、45、135 ppmの濃度で、1日6時間、週5日、そして24ヶ月間、吸入曝露させた。そして、終了後6ヶ月間、観察したが、上部気道の嗅細胞に異常がみられた以外には、全身の異常や発がんなど、一切無かった78)
  催奇形性:マウスへの腹腔内投与で小核試験陽性79)
  遺伝子毒性:マウス由来のリンパ球腫瘍細胞株で染色体異常誘起試験陽性80)
  許容濃度:
 
  ppm mg/m3 発がん分類  
日本産業衛生学会 ―― ―― ――
  アメリカ(ACGIH)      
    時間荷重平均値 2 ―― A4
    短時間暴露限界 ―― ――  
  ドイツ(MAK) ―― ―― ――
  IARC     3
  EPA Region III RBC Table:環境大気許容濃度 110μg/m(Noncarcinogenic effects)
  分解性:良分解(化審法)(37%分解、BOD)(100%分解、TOC)19)
  濃縮性:不詳
  生態影響:
緑藻(Chlorococcales 24 h-EC50(PHY)  55 mg/L 20)
セレナストルム(Selenastrum capricornutum 96 h-EC50     18.6 mg/L 81)
コイの一種(Leuciscus idus 48 h-LC50      7.5 mg/L 28)
魚の一種(Osteichthyes、Bony fish) 72 h-LC50       5 mg/L 82)
  (注)PHY;生理的影響
  規制・基準:
 
[PRTR]第2条第1種指定化学物質1)
[消防]第2条危険物第4類第1石油類非水溶性液体(200L)1)
消防法33)
危険物の規制に関する政令33)
[労働安全]施行令別表第1危険物(引火性の物)1)
施行令第18条の2〔名称等を通知すべき有害物(MSDS対象物質)〕1)
[海洋]施行令別表第1有害液体物質(B類)1)
海洋汚染及び海上災害の防止に関する法律施行令33)
[船舶]危規則第3条危険物等級3引火性液体類(正3容器等級2)1)
船舶による危険物の運送基準等を定める告示33)
[航空]施行規則第194条危険物引火性液体(G等級2)1)
[港則]施行規則第12条危険物(引火性液体類)1)
[労働基準]労働基準法施行規則別表第1の年少者労働基準規則第8条第33号の業務に係る使用者が講ずべき個別的措置の基準第5項の有害性が高度な有害物等33)
       
[8] アクリル酸エチル
 今回の調査の結果、アクリル酸エチルは、5地点中1地点、15検体中3検体で検出された。検出範囲は 0.6~1.8ng/mであった。(統一検出限界値:0.5ng/m
 以上の調査結果によれば、アクリル酸エチルは、検出頻度が低いが、有害性等の関連情報から、環境リスク評価を行う化学物質の候補とする必要がある。
 
    ○ アクリル酸エチルの検出状況
  検出頻度 検出範囲 検出限界
(検体) (地点)
平成13年度 20% (3/15) 20% (1/5) 0.6~1.8 ng/m 0.5 ng/m
【参考 : アクリル酸エチル】
  製造方法70)
エチレンシアノヒドリン、エタノール、希硫酸より製造
ニッケルあるいはコバルト触媒下でアセチレン、一酸化炭素とエチルアルコールの酸化により製造
  用途 :
[アクリル酸エステルとして]
アクリル繊維、繊維加工、塗料、紙加工、接着剤、皮革加工、アクリルゴム1)
  生産量・輸入量:
[アクリル酸エステルとして]
平成12年生産:253,370 t 1)
輸出:78,278,900 kg 1)
輸入:34,058,831 kg 1)
  環境への主な放出源 :
化学工業:環境:大気への排出量787 kg/年、公共用水域への排出量77 kg/年(取扱量9,741,895 kg/年)2)
  代謝 :
経皮吸収性がある83)。また腸管、呼吸器からも吸収されるが、体内での代謝は未詳。
  急性毒性 :
 
 LD50(ラット、経口) 1,020 mg/kg
 LCL0(ラット、吸入4時間) 1,000 ppm
 LC50(ラット、経気道4時間) 2,780 ppm
 LCL0(マウス、吸入2時間)  25 mg/m3
 LD50(マウス、腹腔) 648 mg/kg
 LD50(ウサギ、経口) 400 mg/kg
 LCL0(ウサギ、吸入7時間) 1,204 ppm
 LCL0(モルモット、吸入7時間)  1,204 ppm
  刺激性:
1,204 ppm、14-15時間反復曝露によりラットおよびサルの眼に刺戟性を認める。また1,204 ppm、7時間曝露でウサギおよびモルモットの眼に刺激性を認める。ウサギの目に45mgを入れた場合、あるいはウサギの皮膚に10 mg、24時間接触または500 mg塗布(被覆せず)した場合いずれもの刺戟性があった。
ヒトでは極めて軽度の臭気を感じるのが3 ppm、不快感を生じるのが32 ppm、耐えられなくなるので315 ppmである84)
  反復投与毒性:
ラットに62.5、250、500ppmを1日7時間、1週間に5日、30日曝露した実験では250 ppm群および500 ppm群で死亡を認めたが、62.5 ppm群には異常を認めなかった85)3-3)。また、ラット、ウサギ、モルモットに75 ppmを1日7時間、50回曝露しても異常は認められなかったが、ウサギ、モルモットでは275 ppmを1日7時間、10~30回で、また、ラットでは500 ppmの曝露で死亡例が認められた86)
ラットに本物質6~2,000 ppm含む飲水を与えて2年間飼育した実験では2,000 ppm群で明らかな体重減少が認められたが、臓器の体重に対する相対重量、病理組織像には変化を認めなかった87) 。またイヌに300~1,000 ppmを2年間投与した場合にも投与に由来すると思われる所見は認められなかった87)
包装材料より食物へ移行する。
  発がん性:不詳
  変異原性:
 
試験種類 実験生物 結果
 ミクロソーム試験    マウス(in vitro)   陽性
 小核試験      マウス(in vivo)  陽性
 染色体異常試験   マウス(in vitro)  陽性
 染色体異常試験  ハムスター(in vitro)  陽性
 体細胞突然変異試験   マウス(in vitro)   陽性
  催奇形性:
妊娠第6~15日のラットに本物質0、50、150 ppmを1日6時間、反復曝露した実験では150 ppm群の母獣には毒性(体重増加抑制、摂餌減少、飲水増加)が観察され、あわせて奇形の発生がわずかに(しかし有意に)上昇した。50 ppm群では母獣毒性、奇形増加はともに観察されなかった88)
  許容濃度:
 
  ppm mg/m3 発がん分類  
日本産業衛生学会 ―― ―― ――
  アメリカ(ACGIH)      
    時間荷重平均値 5 ―― A4
    短時間暴露限界 15 ――  
  ドイツ(MAK) ―― ―― ――
  IARC     2B
  分解性:良分解(化審法)(52%分解、BOD)(92.6%分解、TOC)48)
  濃縮性:不詳
  生態影響:
 
ブラインシュリンプ(Artemia salina 24 h-LC50      12 mg/L 90)
魚の一種(OsteichthyesBony fish 72 h-LC50      5 mg/L 82)
ファットヘッドミノー(Pimephales promelas 96 h-LC50     2.5 mg/L 91)
  規制・基準:
 
[PRTR]第2条第1種指定化学物質1)
[消防]第2条危険物第4類第1石油類非水溶性液体(200L)1)
消防法33)
危険物の規制に関する政令33)
[労働安全]施行令別表第1危険物(引火性の物)1)
施行令第18条の2〔名称等を通知すべき有害物(MSDS対象物質)〕1)
[海洋]施行令別表第1有害液体物質(A類)1)
海洋汚染及び海上災害の防止に関する法律施行令33)
施行規則第30条の2の3個品運送P
[船舶]危規則第3条危険物等級3引火性液体類(P)(正3容器等級2)1)
船舶による危険物の運送基準等を定める告示33)
[航空]施行規則第194条危険物引火性液体(G等級2)1)
[港則]施行規則第12条危険物(引火性液体類)1)
[労働基準]労働基準法施行規則別表第1の年少者労働基準規則第8条第33号の業務に係る使用者が講ずべき個別的措置の基準第5項の有害性が高度な有害物等33)
労働基準法施行規則の規定に基づき労働大臣が指定する単体たる化学物質及び化合物(合金を含む。)並びに労働大臣が定める疾病を指定33)
[9] アセトニトリル
 今回の調査の結果、アセトニトリルは、7地点中7地点、17検体中17検体で検出された。検出範囲は 93~1200ng/mであった。(統一検出限界値:76ng/m
 以上の調査結果によれば、アセトニトリルは、検出頻度が高いが、今回の調査結果からは特に問題を示唆する結果は得られておらず、当面、本調査における大気系の環境調査の必要はないと考えられる。ただし生産量、使用量が大きいことから、生産量、使用量及び排出量の推移に注意する必要がある。
 
  ○ アセトニトリルの検出状況
  検出頻度 検出範囲 検出限界
(検体) (地点)
昭和62年度 63% (44/70)   210~42000 ng/m 200 ng/m
平成3年度 65% (33/51) 88% (15/17) 200~3700 ng/m 200 ng/m
平成13年度 100% (17/17) 100% (7/7) 93~1200 ng/m 76 ng/m
 
【参考 : アセトニトリル】
  製造方法1)
プロピレンとアンモニアを用いたソハイオ法でアクリロニトリルを製造した際、約3%副生
アセトアミドを五酸化リンで脱水するか、シアン化カリウムにジメチル硫酸を作用させて製造
アセチレンとアンモニアからAl2O3系触媒を使用して製造(反応温度は500~600℃)
  用途 :
ビタミンB1、サルファ剤の製造原料、ブチレン-ブタンの抽出溶剤、合成繊維、その他溶剤、有機合成原料、香料、エキス、変性剤などに利用1)
  生産量:平成12年度 5,000 t 1)
  環境への主な放出源 :
飲料・たばこ・飼料製造業:大気への排出量72 kg/年(取扱量2,279 kg/年)2)
化学工業:大気への排出量3,039 kg/年、公共用水域への排出量782 kg/年(取扱量3,756,411 kg/年)2)
計量証明業:環境への排出量データなし(取扱量1,707 kg/年)2)
自然科学研究所:環境への排出量データなし(取扱量1,768 kg/年)2)
  代謝 :
生体内で一部シアンの遊離があり、これはさらにチオシアンに代謝され、尿中に排出される92)
アカゲザルに0.1 ml/kg静脈注射した場合、尿中に排泄されるチオシアンは、投与量の12%以上であった93)
  急性毒性 :
 TDLo(ヒト、経口)    570 mg/kg
 LD50(ラット、 経口)    3,800 mg/kg
 LD50(モルモット、経口)    17.7 mg/kg
 LCLo(ラット、吸入4時間)   8,000 ppm
 LC50(ラット、吸入4時間)   16,000 ppm 93)3-2)
 LC50(マウス、吸入1時間)    2,693 ppm
アセトニトリルの急性毒性は、高濃度、短時間で死ぬ場合は、アセトニトリル自体の直接作用であり、比較的低濃度で時間を経てから死ぬ場合は、シアンや他の代謝物が作用しているものと考えられている93)
ラットを致死濃度に曝露した場合、意識喪失に続いてけいれん性発作を起こし、死に至る。解剖所見では、肺出血と、胸膜肺うっ血が認められている93)
  刺激性:不詳
  反復投与毒性:
ラットに1日7時間、90日間反復曝露した実験で、166 ppm、330 ppmでは少数の動物の肺胞に間葉性細胞の凝集がみられた。655 ppmでは、一過性の細胞毛細血管の充血や浮腫、さらに気管支の炎症、剥離、粘液の分泌過多、また腎尿細管の混濁腫脹、肝の中心静脈の変化などが、対照群に対し有意に多く認められた。
アカゲザルに660 ppmを1日7時間、1週間に5日反復曝露すると、2週間目より協調運動が悪くなり、23日目と51日目に死亡した。脳の矢状縫合部周囲の硬膜あるいは硬膜下出血、肺気腫や拡張不全、腎尿細管の混濁腫脹が認められた93)
  発がん性:不詳
  催奇形性:
アセトニトリルを0、125、190 mg/kg/dayラットに妊娠第6~19日の間経口投与した実験では催奇形性は認められなかった94)。しかしゴールデン・ハムスターに妊娠第8日目に100~400 mg/kg経口又は腹腔投与、あるいは5,000 ppmを60分曝露した場合には胎仔に骨格異常が認められた95)
  変異原性:
Ames試験ではS9mix添加の有意にかかわらず陰性96)、イーストを用いた試験ではS9mix添加で弱陽性96)、小核試験でも弱陽性96)
  許容濃度:
 
  ppm mg/m3 発がん分類  
日本産業衛生学会 ―― ―― ――
  アメリカ(ACGIH)      
    時間荷重平均値 20 ―― A4
    短時間暴露限界 ―― ――  
  ドイツ(MAK) 20 34 ――
  IARC     ――
  IRIS毒性データ:吸入標準容量(Inhalation RfC) 0.06mg/m
  EPA Region III RBC Table:吸入暴露量(Reference dose inhaled) 0.017mg/kg/day(IRIS)
                環境大気許容濃度 62μg/m(Noncarcinogenic effects)
  分解性65)
良分解(化審法)(34.5%(NO3)及び73.6%(NH4)分解、BOD)(90%分解、TOC)(100%分解、GC)
  濃縮性:不詳
  生態影響:
 
緑藻(Chlorococcales 24 h-EC10(PHY) 320 mg/L 20)
ウキクサ(Lemna minor 96 h-NOEC(増殖阻害) 1,800 mg/L 101)
オオミジンコ(Daphnia magna

 
48 h-LC50     3,600 mg/L 102)
21 d-MATC(繁殖阻害) 230 mg/L 102)
21 d-NOEC(繁殖阻害) 160 mg/L 102)
アルテミア(Artemia salina. 24 h-LC50     400 mg/L 103)
コイの一種(Leuciscus idus 48 h-LC50     3,900 mg/L 28)
メダカ(Oryzias latipes
 
24 h-LC50     1,650 mg/L 104)
96 h-LC50     1,650 mg/L 104)
グッピー(Poecillia reticulata 24 h-LC50     1,000 mg/L 105)
ファットヘッドミノー(Fathead minnow 48 h-LC50     1,000 mg/L 105)
                                  (注)PHY;生理的影響
    水生生物に対する急性毒性値は多いが、いずれも100 mg/L 以上でありその毒性は低い。
  規制・基準:
 
[PRTR]第2条第1種指定化学物質1)
[消防]第2条危険物第4類第1石油類水溶性液体(400L)1)
消防法33)
危険物の規制に関する政令33)
[毒劇]毒物及び劇物指定令第2条劇物(製剤を含む)1)
[水質]施行令第2条有害物質1)
[労働安全]施行令別表1危険物(引火性の物)1)
施行令第18条の2〔名称等を通知すべき有害物(MSDS対象物質)〕1)
[船舶]危規則第3条危険物等級3引火性液体類(正3容器等級2)1)
船舶による危険物の運送基準等を定める告示33)
[航空]施行規則第194条危険物引火性液体(G等級2)1)
航空機による爆発物等の輸送基準等を定める告示33)
[港則]施行規則第12条危険物(引火性液体類)1)
港則法施行規則の危険物の種類を定める告示33)
[道路]施行令第19条の13(車両の通行の制限)
[悪臭]特定悪臭物質の測定の方法33)
[外為]輸出貿易管理令33)
輸入割当てを受けるべき貨物の品目、輸入についての許可を受けるべき貨物の原産地または船積地域その他貨物の輸入について必要な事項の公表33)
[海洋]海洋汚染及び海上災害の防止に関する法律施行令33)
[環境]水質汚濁に係る環境基準について33)
[バーゼル]特定有害廃棄物等の輸出入等の規制に関する法律第2条第1項第1号イに規定する物33)
[10] フタル酸ジイソノニル
 今回の調査の結果、フタル酸ジイソノニルは、7地点中7地点、21検体中20検体で検出された。 検出範囲は0.42~22ng/mであった。(統一検出限界値:0.40ng/m
 以上の調査結果によれば、フタル酸ジイソノニルは、検出頻度が高いが、今回の調査結果からは特に問題を示唆する結果は得られておらず、当面、本調査における大気系の環境調査の必要はないと考えられる。ただし生産量、使用量及び排出量の推移に注意する必要がある。
 
    ○ フタル酸ジイソノニルの検出状況
  検出頻度 検出範囲 検出限界
(検体) (地点)
平成8年度 0% (0/18) 0% (0/6) 不検出 72 ng/m
平成13年度 95% (20/21) 100% (7/7) 0.42~22 ng/m 0.40 ng/m
 
【参考 : フタル酸ジイソノニル】
  製造方法 : イソノニルアルコールと無水フタル酸とのエステル化反応により合成1)
  用途 : 高級レザー、フィルム、シート、電線、高級壁紙、ペーストゾルなど1)
  生産量 : 平成12年 108,358 t 1)
  環境への主な放出源 : 不詳
  代謝 : 不詳
  急性毒性 :
最小中毒量(ラット、経口)    11,256 mg/kg
  発がん性 :
ラットの雄と雌の両方に肝臓がんを、ラットの雄のみに腎臓がんを起こす。前者は、フタル酸ジイソノニルが肝臓のペルオキシダーゼを増殖させることで、後者は、腎においてα-2-マイクログロブリンを誘導することで引き起こされると考えられ、いずれも遺伝子毒性を介さないメカニズムである106)107)。ラット腎でのα-2-マイクログロブリン蓄積は、0.6%含有の餌を、2年間摂食することで起こる108)。一方、サルでは肝臓がんは起こされないし、その肝細胞でもペルオキシダーゼ増殖は見られない109)110)。ラットの肝細胞では、フタル酸ジイソノニルの量に依存してDNA合成、TGFβ1誘導によるアポトーシスの抑制を起こす111)。一方、ヒトの肝細胞ではこの現象は見られない110),111)
  反復投与毒性 : 不詳
  変異原性 : 不詳
  生殖毒性 :
フタル酸ジイソデシルと同じ程度である。即ち、繁殖試験ならびに雄性生殖器発生試験では、NOAELは1,000 mg/kg/dayよりも高い量である112)。しかし、性分化は変える力を持つ111)。母子発育試験では、NOAELは500 mg/kg/ dayであった113)。周産期における胎児毒性試験では、LOAELは1,000 mg/kgであった114)
  許容濃度 :
  ppm mg/m3 発がん分類  
日本産業衛生学会 ―― ―― ――
  アメリカ(ACGIH)      
    時間荷重平均値 ―― ―― ――
    短時間暴露限界 ―― ――  
  ドイツ(MAK) ―― ―― ――
  IARC     ――
  分解性・濃縮性:難分解性ではないと判断される物質(経済産業省公報公表内容、2002.03.26)115),116)
  生態影響
セレナストルム(Selenastrum capricornutum 6 h-EC50      > 1.8 mg/L 117)
オオミジンコ(Daphnia magna)  21 d-LOEC(繁殖) 0.089 mg/L 118)
21 d-MATC(繁殖) 0.055 mg/L 118)
21 d-NOEC(繁殖) 0.034 mg/L 118)
オタマジャクシ(Bufo woodhousei 96 h-LC50 3.0 mg/L 119)
オタマジャクシ(Rana pipiens 96 h-LC50 3.6 mg/L 119)
魚の一種(Lepomis microlophus 96 h-LC50 4.7 mg/L 119)
ナマズ(Ictalurus punctatus 96 h-LC50 0.42 mg/L 119)
ファットヘッドミノー(Fathead minnow 96 h-LC50   > 0.1 mg/L 117)
    (注)MATC =LOEC X NOEC
  規制・基準
 
[消防]第2条危険物第4類第4石油類(6,000L)1)
消防法33)
危険物の規制に関する政令33)
[海洋]施行令別表第1有害液体物質(D類)1)
[外為]輸出貿易管理令33)
輸入割当てを受けるべき貨物の品目、輸入についての許可を受けるべき貨物の原産地または船積地域その他貨物の輸入について必要な事項の公表33)
[バーゼル]特定有害廃棄物等の輸出入等の規制に関する法律第2条第1項第1号イに規定する物33)
[11] フタル酸ジイソデシル
 今回の調査の結果、フタル酸ジイソデシルは、7地点中6地点、21検体中12体で検出された。 検出範囲は0.30~1.3ng/mであった。(統一検出限界値:0.30ng/m
 以上の調査結果によれば、フタル酸ジイソデシルは、検出頻度が高いが、今回の調査結果からは特に問題を示唆する結果は得られておらず、当面、本調査における大気系の環境調査の必要はないと考えられる。ただし生産量、使用量及び排出量の推移に注意する必要がある。
 
    ○ フタル酸ジイソデシルの検出状況
  検出頻度 検出範囲 検出限界
(検体) (地点)
平成13年度 57% (12/21) 86% (6/7) 0.30~1.3 ng/m 0.30 ng/m
【参考 : フタル酸ジイソデシル】
  製造方法: 不詳
  用途 : 高温電線用、農ビ用フィルム、レザー、シート、ペースト用120)
  生産量:平成8年 7,855 t 120)
  環境への主な放出源 : 不詳
  代謝 :
一般に、フタル酸エステルは経口投与によってすみやかに吸収される121)ほか、経皮的にも吸収される(下記の経口および皮膚塗布によるLD50参照)。
  急性毒性
  LD50(ラット、経口)    >64 ml/kg
  催腫瘍性
催腫瘍性については一般に否定的121)122) である。最近フタル酸ジエチルへキシルに催腫瘍性が認められたとする報告があるが、その詳細はなお明らかではない。
  反復投与毒性
  変異原性:マウスでの小核試験は陰性であった106)
  生殖・発生毒性
ラットにおける摂食での第二世代試験で、NOAELは0.06%(約50 mg/kg/day)、繁殖試験では0.8%(約600 mg/kg/day)であった123)。ラットにおける経口母体生殖毒性試験のNOAELは500 mg/kg/dayであった113)。母子発育試験では、NOAELは500 mg/kg/dayであった113)。周産期における胎児毒性試験では、LOAELは1,000 mg/kgであった124)
  許容濃度:
 
  ppm mg/m3 発がん分類  
日本産業衛生学会 ―― ―― ――
  アメリカ(ACGIH)      
    時間荷重平均値 ―― ―― ――
    短時間暴露限界 ―― ――  
  ドイツ(MAK) ―― ―― ――
  IARC     ――
  分解性 : 分解性の良好な物質(通産省公報公表内容、1975.08.27)115)116)
  濃縮性 : 濃縮性が無い、あるいは低いと判断される物質(通産省公報公表内容、1975.08.27)115)116)
  生態影響
 
セレナストルム(Selenastrum capricornutum 96 h-EC50      > 0.8 mg/L 117)
オオミジンコ(Daphnia magna
 
21 d-LOEC(繁殖) 0.14 mg/L 118)
21 d-NOEC(繁殖) 0.06 mg/L 118)
エビの一種(Americamysis bahia 96 h-LC50     > 0.08 mg/L 117)
シープヘッドミノー(Cyprinodon variegatus 96 h-LC50     > 0.47 mg/L 117)
ニジマス(Oncorhynchus mykiss 96 h-LC50     > 0.62 mg/L 117)
  規制・基準
 
[消防]第2条危険物第4類第4石油類(6,000L)1)
消防法33)
危険物の規制に関する政令33)
[海洋]施行令別表第1有害液体物質(D類)1)
[外為]輸出貿易管理令33)
輸入割当てを受けるべき貨物の品目、輸入についての許可を受けるべき貨物の原産地または船積地域その他貨物の輸入について必要な事項の公表33)
[バーゼル]特定有害廃棄物等の輸出入等の規制に関する法律第2条第1項第1号イに規定する物33)
[12] フタル酸ジイソトリデシル
 今回の調査の結果、フタル酸ジイソトリデシルは、不検出(7地点、21検体)であった(統一検出限界値:0.1ng/m
 以上の調査結果によれば、フタル酸ジイソトリデシルは、不検出であるが、有害性等の関連情報が少ないので、その収集に努める必要がある。
 
  ○ フタル酸ジイソトリデシルの検出状況
  検出頻度 検出範囲 検出限界
(検体) (地点)
平成13年度 0% (0/21) 0% (0/7) 不検出 0.1 ng/m
 
【参考 : フタル酸ジイソトリデシル】
  製造方法125) :
プロピレン4量体のイソドデセンを原料としたオキソアルコールであるイソトリデカノールと無水フタル酸とのエステル化反応により製造
  用途 : 塩化ビニル樹脂用可塑剤
  生産量・輸入量 : 不詳
  環境への主な放出源 : 不詳
  代謝 : 不詳
  毒性 : 不詳
  刺激性:不詳
  反復投与毒性 : 不詳
  発がん性 : 不詳
  変異原性 : 不詳
  生殖・発生毒性 : 不詳
  許容濃度 :
 
  ppm mg/m3 発がん分類  
日本産業衛生学会 ―― ―― ――
  アメリカ(ACGIH)      
    時間荷重平均値 ―― ―― ――
    短時間暴露限界 ―― ――  
  ドイツ(MAK) ―― ―― ――
  IARC     ――
  分解性・濃縮性 : 不詳
  生態影響 : 不詳
  規制・基準 : なし
[13] ポリ臭素化ジフェニルエーテル(1~7臭素化物)
 今回の調査の結果、ポリ臭素化ジフェニルエーテル(1~7臭素化物)は、12地点中12地点、36検体中36検体で検出された。検出範囲は0.00007~0.067ng/mであった。(統一検出限界値:0.00005~0.0005ng/m
 以上の調査結果によれば、ポリ臭素化ジフェニルエーテルは、検出頻度が高く、有害性等の関連情報が少ないので、その収集に努める必要がある。なお、本物質は平成14年度の本調査における暴露量調査の対象物質(水質等)である。
 
   ○ ポリ臭素化ジフェニルエーテル(1~7臭素化物)の検出状況
  検出頻度 検出範囲 検出限界
(検体) (地点)
平成13年度 100% (36/36) 100% (12/12) 0.00007~0.067 ng/m 個別に設定
   ○ ブロモジフェニルエーテルの検出状況
  検出頻度 検出範囲 検出限界
(検体) (地点)
平成13年度 19% (7/36) 25% (3/12) 0.0004~0.0020 ng/m 0.0004 ng/m
   ○ ジブロモジフェニルエーテルの検出状況
  検出頻度 検出範囲 検出限界
(検体) (地点)
平成13年度 81% (29/36) 100% (12/12) 0.0002~0.012 ng/m 0.0002 ng/m
   ○ トリブロモジフェニルエーテルの検出状況
  検出頻度 検出範囲 検出限界
(検体) (地点)
平成13年度 100% (36/36) 100% (12/12) 0.00007~0.0079 ng/m 0.00005 ng/m
   ○ テトラブロモジフェニルエーテルの検出状況
  検出頻度 検出範囲 検出限界
(検体) (地点)
平成13年度 75% (27/36) 83% (10/12) 0.0005~0.010 ng/m 0.0005 ng/m
   ○ ペンタブロモジフェニルエーテルの検出状況
  検出頻度 検出範囲 検出限界
(検体) (地点)
平成13年度 89% (32/36) 100% (12/12) 0.00010~0.0093 ng/m 0.00009 ng/m
   ○ ヘキサブロモジフェニルエーテルの検出状況
  検出頻度 検出範囲 検出限界
(検体) (地点)
平成13年度 75% (27/36) 100% (12/12) 0.00011~0.011 ng/m 0.00010 ng/m
   ○ ヘプタブロモジフェニルエーテルの検出状況
  検出頻度 検出範囲 検出限界
(検体) (地点)
平成13年度 56% (20/36) 75% (9/12) 0.00021~0.038 ng/m 0.00020 ng/m
  【参考 : ポリ臭素化ジフェニルエーテル】
  製造方法:不詳
  用途:
[モノ]
合成中間体、熱媒126)
[ジ]
合成中間体、難燃剤126)
[トリ]
溶剤、洗浄剤、難燃剤128)
[テトラ]
難燃剤128)
[ペンタ]
エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル、ポリウレタン、繊維類の添加剤127)
[ヘキサ]
難燃剤128)
[ヘプタ]
不詳
  生産量・輸入量:
[トリ]
1987年  約1,000 t
  環境への主な放出源 : 不詳
  代謝:不詳
  毒性:不詳
  反復投与毒性:不詳
  発がん性:不詳
  変異原性:不詳
  許容濃度:
 
  ppm mg/m3 発がん分類  
日本産業衛生学会 ―― ―― ――
  アメリカ(ACGIH)      
    時間荷重平均値 ―― ―― ――
    短時間暴露限界 ―― ――  
  ドイツ(MAK) ―― ―― ――
  IARC     ――
  分解性・濃縮性 : 不詳
  生態影響 : 不詳
  規制・基準 : なし

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