平成13年(2001年)版 「化学物質と環境」
第1編第1部 平成12年度化学物質環境調査結果の概要
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〔参考5〕統一検出限界値の設定
平成12年7月10日

 化学物質環境調査では、極微量分析を必要とすること、また、全国的な汚染状況とその推移を的確に把握する必要があることから、昭和62年3月に「化学物質分析法開発マニュアル(案)」を策定し、分析法の検出限界及び定量限界の算定方法を定め、分析法と環境調査における精度の向上に努めてきた。
 しかし、実際の環境調査では、調査対象試料の性状や利用可能な分析機器が異なることから、各調査担当機関毎に検出限界値が異なる場合があり、統一的な検出限界値(統一検出限界値)の設定が困難になる場合があった。
 検出限界値を統一するためには、分析法開発時に得られた検出限界値と精度を環境調査実施時にも担保する必要があることから、 a) 調査に用いる分析機器の感度の確保、 b) ブランクの低減化、 c) 分析精度の3項目について改善を図ることとした。
 このため、平成10年度の分析法開発調査から、分析法の開発に使用した分析機器の装置検出限界値(IDL)の測定を行い、分析法開発時の検出限界の低減化を図った。更に、平成11年度の環境調査では、調査担当機関に対して、 a) IDL値、 b) 操作ブランク値、 c) 添加回収試験結果の3項目の報告を求め、環境調査時の検出限界値の低減化と精度の向上を図ることとした。
 以上3項目の改善により、各調査担当機関毎の検出限界値のばらつきが低減化されるとともに、環境調査が一定の精度を持って行われていることが再確認された。また、調査担当機関からは、分析法に関する意見が報告されるなど、今後の化学物質環境調査の改善に有用な情報が寄せられた。
 統一検出限界値は、次に示す方法により設定した。

<統一検出限界値の設定方法>
 「統一検出限界値」は、調査対象化学物質の分析法に記載された検出限界値及び装置検出限界評価値(IDL評価値)と各調査担当機関から報告されたIDL値、操作ブランク値及び測定値を基礎に、以下の方法により設定した。
 各測定機関のIDL報告値がIDL評価値と同じかこれを下回り、かつ、操作ブランク試験と添加回収試験の結果が良好な場合は、分析法に設定された検出限界値又は「分析法開発調査結果報告書」に記載しているIDL値から推定した検出限界値を「統一検出限界値」とした。
 なお、水系のジブチルスズ化合物、大気系の1,1,-ジクロロエタン及びメタクリル酸n-ブチルについては、操作ブランク値が大きいなどの報告があったことから、各測定機関のIDL報告値や操作ブランク等を考慮して「統一検出限界値」を決定した。


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