目次へ戻る平成13年(2001年)版 「化学物質と環境」
第1部 平成12年度化学物質環境調査結果の概要

 
〔参考1〕化学物質環境調査における試料採取にあたっての留意事項

○ 環境調査(水系)
○ 環境調査(大気系)
 
○ 環境調査(水系)
1.試料の採取方法
  (1) 水質
 a)  採水の時期
   採水の時期は、採水日前において比較的晴天が続き、水質が安定している日を選ぶこととする。
 b)  採水部位
 採水部位は、原則として調査地点の流心において表層水(水面下0~50 cm)を採取するものとする。ただし、表面の浮遊ゴミ、浮遊油類を混入しないよう表層1~2 cmを避けて採取する。
 c)  前処理
 ゴミ等を除去した上澄み水を用いる。この際表面水が入らないように心掛ける。ろ過、遠心分離等の処理は行わない。
(2) 底質
 a)  採泥方法
 調査地点において底質の性状を考慮したエクマンバージ型採泥器またはこれに準ずる採泥器によって採取した底質を清浄なバットに移し、小石、貝類、動植物片などの異物を除いた後、孔径1 mm(16メッシュ)のふるいでふるったものを分析に供する。なお、その際、泥分率((ふるいを通過した試料の重量)/(ふるいにかける前の試料の重量))(%)を測定する。また、試料の一部について乾燥重量(105~110 ℃、2時間程度)及び強熱減量(600±25 ℃、2時間程度)を求めるものとする。
 b)  その他
 分析用検体の場合は原則として風乾または加熱乾燥を行わないものを使用し、計算で乾燥重量当りの測定値を算出する。
(3) 生物
 a)  採取試料
 試料は調査地点で再生産される魚類とし、海域にあってはスズキまたはセイゴ(採取できなければハゼ、ボラまたはカレイでも可)、湖沼及び河川にあってはウグイ(採取できなければコイまたはフナでも可)を標準とする。検体としては同一個体を用いることが望ましいが、複数混合しても差し支えない。ただし、小動物にあっては十分洗浄して用いることとする。
 b)  前処理
(ア) 魚類
 魚類については、可食部(筋肉)を検体とする。採取部分は問わないが、約100 g以上を削ぎホモジナイズしたのち、検体として用いる。100 g以下の魚類にあっては、数匹の可食部を削ぎホモジナイズして検体とする。さらに、小魚の場合には、100 g以上になるように魚体全体を何匹かとりホモジナイズしたものを検体とする。
(イ)貝類(魚がいない場合のみ)
 貝類にあっては、所要の重量分の個数の可食部を集め、ホモジナイズしたのち検体とする。この際、貝類中の含有泥質を含めないようにできるだけ取除くこととする。
 c)  その他
 生物試料については、次に示す方法により、脂質重量(%)を算出する。
試料5 gをホモジナイザーカップにとり、クロロホルム20 mL、メタノール40 mLを加えて、2分間ホモジナイズする。さらに20 mLのクロロホルムを加えて、2分間ホモジナイズする。ブフナーロートでろ過し、沈渣は再びクロロホルム・メタノール(1:1)80 mLとともにホモジナイズする。全クロロホルム、メタノール層を分液ロートにとり、60 mLの蒸留水を加えてゆるく振り混ぜる。下層のクロロホルム層を集め無水硫酸ナトリウムで乾燥後、ロータリーエバポレーターで溶媒を留去し、残渣を五酸化リンデシケーター中で乾燥し、ひょう量する。
 
2.試料採取にあたっての留意事項
(1)  本調査は環境中に残留する化学物質を検索し、環境中に異常に存在するかどうかの知見を得ることを第一義とする。したがって、調査対象化学物質が排出されているような地点(例えば当該化学物質の製造または使用事業所等の排水口付近及び交通機関の通過する付近等)及び汚染の直接的影響を受ける地点は試料採取地点としない。
(2)  水質、底質の調査ではおよそ 500 m四方の範囲を一つの地点として、できるだけ分散された状態となるように採取点を選び3検体を採取する。このとき、底質の検体採取にあたっては周囲50 m内の地点で3カ所程度から採取した底質を均質に混合したものを1検体として調製することが望ましい。魚類の調査では該当地点内において3検体採取すればよい(問題があった場合を考え余分に冷凍保存用を配慮しておくことが望ましい)。
 
3.試料に関する調査項目
(1) 水質試料
  水温、肉眼観察による色相及び透明度
(2) 底質試料
  外観、臭気、夾雑物、採取点の水深、含水率、強熱減量及び泥分率
(3) 生物試料
  標準和名、体長(尾部を除く)、体重及び脂質重量
 
4.試料の保管等
 採取した試料は、調査物質等が溶出または吸着しない袋や容器等に入れ、できるだけ速やかに分析に供する。保存する場合には変質しないように冷蔵または冷凍等の方法で保管する。
 
○ 環境調査(大気系)
1.試料の採取方法
a) 採取時期
 9~11月の天候の安定した時期に、連続した3日間において、一日一回、原則午前10時開始、24時間採取を行なう。
b) 採取方法
 試料は樹脂またはガラス繊維ろ紙等への吸着により採取する。
2.試料採取にあたっての留意事項
 試料の採取地点は、その付近における大気の状況を把握し得るような場所とし、特定の発生源からの影響を強く受けたり、直接交通機関等の影響を受けるような場所は避けるものとする。
3.試料採取に関する調査項目
 試料採取時の天候、気温、湿度、風向、風速及び周辺の地形・道路等の状況
4.試料の保管等
 環境調査(水系)の場合の留意事項に準ずる。


目次へ戻る