平成11年(1999年)版 「化学物質と環境」 |
第3編 化学物質対策の国際的動向 |
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3.国連環境計画(UNEP) |
1) UNEPにおける化学物質対策の推進 |
2) PIC(Prior Informed Consent:事前通報同意) |
3) POPs(Persistent Organic Pollutants:残留性有機汚染物質) |
1) UNEPにおける化学物質対策の推進 | ||||
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UNEP(国連環境計画:United Nations Environment Programme)においては、(1)化学物質の人及び環境への影響に関する既存の情報を国際的に収集、蓄積する、(2)化学物質の各国の規制に係る諸情報を提供する、等の目的で、国際有害化学物質登録制度(IRPTC)が実施されている。 IRPTCによる情報の収集、蓄積活動の主な成果は、データプロファイルであり、これまでに数種のデータプロファイルが刊行されている。情報提供活動の主たるものは、質問・回答サービスとIRPTC Bulletinの発行である。質問・回答サービスについては、各国からの照会に対し、ナショナルコレスポンデントにおいて取りまとめの上、回答が行われている。 現在、IRPTCは「UNEP Chemicals」と改称され、OECD、WHOなど他の国際機関とも連携しつつ、地球的規模の化学物質汚染問題に取り組んでいる。 |
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2) PIC(Prior Informed Consent:事前通報同意) | ||||
PIC手続きとは、化学品や農薬の国際貿易において、あらかじめ輸入国の輸入に係る同意を確認した上で取引を進めるための手続きであり、先進国で使用が禁止または厳しく制限されている有害な化学物質や農薬が、発展途上国にむやみに輸出されることを防ぐためのものである。従来、PIC手続きは、化学品については「ロンドンガイドライン」において、農薬についてはFAOの「コード・オブ・コンタクト」において、ボランタリーベースで進められていたが、1995年の第18回UNEP管理理事会において、PICの条約化のための検討を進めるよう決定された。 その後、5回に亘る条約化交渉を経て、1998年9月にロッテルダムに於いて「国際貿易における有害化学品及び農薬の事前通報・合意手続き条約」が採択された。 |
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<主な経緯> | ||||
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1987年6月、UNEPにおいて、有害化学物質事前通報を内容とする「国際貿易における化学物質の情報交換に関するロンドンガイドライン」が採択された後、1989年5月、UNEPにおいて、輸出事前通報・承認制度(PIC)の実施等を規定する改正ロンドンガイドラインが採択された。 当面の措置として、10カ国以上で禁止あるいは厳重に規制されている物質について、IRPTCは、これら禁止事項を加盟国に通告し、各国は、当該化学物質の輸入を禁止するか、今後とも許可するかを決定し、IRPTCがこれを輸出国に伝えることとされた。 |
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(2) | 1991年5月の第16回UNEP管理理事会において、改正ロンドンガイドラインの法的基盤の強化等の緊急課題に取り組むための専門家会合の召集が執行部に要請された。 | |||
(3) | 1992年6月にはアジェンダ21第19章において、2000年までに法的拘束力のある文書を通じたPIC手続きへの参加と実施の達成が目標として掲げられ、我が国においては、1992年7月の輸出貿易管理令の改正により、ロンドンガイドライン対応体制が整備された。 | |||
(4) | 1995年5月には、第18回UNEP管理理事会で勧告がなされ、PIC条約化のための条約交渉会合を1997年早期に開催することが事務局に要請された。これを受け、1996年3月にブリュッセルで第1回条約交渉会合、同年9月にナイロビで第2回条約交渉会合が開催されるなど、PIC条約化に向けての議論が行われた。さらに、その後3回の条約化交渉会議を経て大筋の条約案がまとまり、1998年9月にオランダ・ロッテルダムで開催された外交官会議において、条約が採択された。 | |||
(5) | 我が国は、1999年8月31日(日本時間9月1日)にこの条約に署名し、現在、批推に向けて検討しているところである。 | |||
<条約の内容> | ||||
(1) | 締結国は、附属書に掲載されている化学物質、農薬及び農薬製剤(当面の措置が必要な物質:PCB、DDTなど27物質)の輸入に同意するかどうかを事前に事務局に通報しておく。この情報を、事務局はすべての締結国に伝え、輸出締約国は管轄の関係者に伝える。 | |||
(2) | 締約国は、ある化学物質や農薬について、国内で使用を禁止または厳しく制限した場合、その旨を事務局に通報する。事務局は、複数の地域から上記の通報を受け取った場合には、審査委員会において附属書に掲載するかどうかを決定する。 | |||
(3) | 締結国である発展途上国で危険な農薬製剤によって問題が起きた場合は、附属書への記載を事務局に提案する。事務局はこの情報を全ての締約国に伝えるとともに、審査委員会において附属書に掲載するかどうか決定する。 | |||
(4) | 締約国は、自国において使用を禁止または厳しく制限している化学物質や農薬を輸出しようとする場合は、毎年、輸入国に必要な情報を添付した輸出通知を行う。 | |||
(5) | 附属書に掲載されていたり、自国で使用を禁止または厳しく制限されている化学物質・農薬等を輸出する場合、人の健康や環境への有害性・危険性に関するラベルや安全性データシートの添付が求められる。 | |||
(6) | その他、化学物質の有害性等に関する情報交換、技術援助などを進める。 | |||
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3)POPs (Persistent Organic Pollutants:残留性有機汚染物質) | ||||
<経緯> | ||||
アジェンダ21を受けて1995年にUNEPが開催した政府間会合において、「陸上活動からの海洋環境の保護に関する世界行動計画」(以下「世界行動計画」という。)が採択された。この世界行動計画により、残留性有機汚染物質(POPs:Persistent Organic Pollutants)の12物質(PCBs、DDT等)について、国際的に排出・流出の低減等を図るため、法的拘束力のある文書(条約・協定等)の策定を行うことが求められ、UNEP管理理事会において2000年までに行うことが望ましいとされた。 | ||||
<POPs12物質(今後、追加される可能性あり)> | ||||
・ | 工業用化学製品:PCB | |||
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・ | 非意図的生成物:ダイオキシン類、フラン類 | |||
<条約化交渉> | ||||
POPsに関する政府間交渉については、98年6月(第1回:モントリオール)、99年1月(第2回:ナイロビ)の2回の条約化政府間交渉会議を経て条文の第一次案が提示された。99年9月には第3回会議がジュネーブにて開催され、第一次案を踏まえたテキストベースでの条文逐条の交渉が開始された。この第3回会議では、これまでに製造・使用等を規制することが合意されている10種類の意図的製造POPs及び2種類の非意図的生成POPsの規制の方法、他のPOPsを新規に本条約の規制対象とする場合の手続き等につき、議論がなされた。 今後、さらに2回の条約化政府間交渉会議を行い、2000年秋にはPOPsに関する条約等の法的枠組みについて署名を行う予定で交渉が進められているところである。 |
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