指定化学物質等検討調査
調査結果の考察 (1) トリクロロエチレン及びテトラクロロエチレン (2) 四塩化炭素 (3) クロロホルム (4) 1,2-ジクロロエタン及び1,2-ジクロロプロパン (5) 1,4-ジオキサン (6) 3,3'-ジクロロベンジジン (7) 4,4'-ジアミノジフェニルメタン (8) 4,4'-ジアミノ-3,3'-ジクロロジフェニルメタン
[調査結果の考察]の先頭へ (1) トリクロロエチレン及びテトラクロロエチレン (ア)トリクロロエチレンは金属脱脂洗浄剤、溶剤等として、また、テトラクロロエチレ ンはドライクリーニング溶剤、金属脱脂洗浄剤等として用いられている。これら2物 質は、昭和62年5月に指定化学物質に指定され、その後、平成元年4月に第二種特定 化学物質に指定された。また、平成元年10月から水質汚濁防止法に基づいて排水規制 及び地下水浸透規制が行われ、平成5年3月には水質環境基準項目に追加された。他 方、大気に関しては、平成5年4月に大気環境指針(暫定値)が定められ、暫定対策 ガイドラインが取りまとめられた。 これら2物質については、昭和63年度から水質、底質及び大気について調査を開始 し、平成元年度からは昭和63年度に検出頻度及び濃度の低かった水質及び底質を調査 対象から外し、大気についてのみ調査を継続している。また、平成2年度からは暴露 経路調査も併せて行っている。 平成7年度においても、大気について調査を実施するとともに暴露経路調査を実施 した。 (イ)(トリクロロエチレンの調査結果) 大気からの検出範囲はnd(検出されなかったことを示す、以下同じ)~7.4μg/m3 (平成6年度 nd~8.3μg/m3、以下( )内は特記しない限り平成6年度の結果を示 す)、検出頻度(検出検体/総検体、以下同じ)は91/108(88/110)、幾何平均値 (地点内データの算術平均値を地点間で幾何平均した値、以下同じ)は0.37μg/m3 (0.39μg/m3)であった。地点別検出頻度は25/28(25/28)であった。 暴露経路調査においては、一般大気又は室内空気からの暴露の範囲は1.4~67μg/人日 (0.84~143μg/人日)、食事からの暴露の範囲はnd(nd~1.1μg/人日)であった。 暴露量に関して地点差はあるものの、いずれの地点も一般大気及び室内空気由来によ る暴露であった。 また、室内空気と一般大気には顕著な差はみられなかった。 これまでの調査結果と比較すると、残留状況及び暴露状況に大きな変化は認められ なかった。 (テトラクロロエチレンの調査結果) 大気からの検出範囲はnd~4.1μg/m3(nd~5.8μg/m3)、検出頻度は110/111(109 /114)、幾何平均値は0.33μg/m3(0.36μg/m3)であった。地点別検出頻度は29/29 (28/29)であった。 暴露経路調査においては、一般大気又は室内空気からの暴露の範囲は1.4~85μg/人日 (1.5~76μg/人日)、食事からの暴露の範囲はnd~0.99μg/人日(nd~2.1μg/人日) であった。暴露量に関して地点差はあるものの、いずれの地点もほとんどが一般大気 及び室内空気由来による暴露であった。 また、室内空気と一般大気には顕著な差はみられなかった。 これまでの調査結果と比較すると、残留状況及び暴露状況に大きな変化は認められ なかった。 (ウ)トリクロロエチレン及びテトラクロロエチレンについては、環境中に広範囲に残留 していることから、環境汚染の状況を監視するため、今後とも引続き調査を実施して いくことが必要である。
[調査結果の考察]の先頭へ (2) 四塩化炭素 (ア)四塩化炭素は化学工業原料等として用いられている。昭和62年7月に指定化学物質 に指定され、その後、平成元年4月、第二種特定化学物質に指定された。また、平成 5年3月には 水質環境基準項目に追加された。なお、我が国では、モントリオール 議定書に基づき、平成7年末で製造が全廃されている。 四塩化炭素については、昭和63年度から水質、底質及び大気について調査を開始し、 平成元年度からは昭和63年度に検出頻度及び濃度の低かった水質及び底質を調査対象 から外し、大気についてのみ調査を継続している。また、平成2年度から暴露経路調 査も併せて行っている。 平成7年度においても、大気について調査を実施するとともに暴露経路調査を実施 した。 (イ)大気からの検出範囲は0.037~1.48μg/m3(0.042~1.4μg/m3)、検出頻度は111/ 111(111/111)、幾何平均値は0.45μg/m3(0.59μg/m3)であった。地点別検出頻度 は 29/29(28/28)であった。 暴露経路調査においては、一般大気又は室内空気からの暴露の範囲は1.4~60μg/人日 (1.2~14μg/人日)、食事からの暴露の範囲はnd~0.62μg/人日(nd~0.25μg/人日) であった。暴露量に関して地点差はあるものの、いずれの地点もほとんどが一般大気 及び室内空気由来による暴露であった。 また、室内空気と一般大気には顕著な差はみられなかった。 これまでの調査結果と比較すると、残留状況及び暴露状況に大きな変化は認められな かった。 (ウ)四塩化炭素については、環境中に比較的高い濃度で広範囲に残留していることから、 環境汚染の状況を注意深く監視するため、今後とも引続き調査を実施していくことが 必要である。
[調査結果の考察]の先頭へ (3) クロロホルム (ア)クロロホルムは合成樹脂の原料、溶剤等として用いられている。昭和62年7月に指 定化学物質に指定された。また、平成5年3月には、水質要監視項目に指定された。 クロロホルムについては、昭和63年度から水質、底質及び大気について調査を開始 し、平成元年度からは昭和63年度に検出頻度及び濃度の低かった水質及び底質を調査 対象から外し、大気についてのみ調査を継続している。また、平成3年度から暴露経 路調査も併せて行っている。 平成7年度においても、大気について調査を実施するとともに暴露経路調査を実施した。 (イ)大気からの検出範囲はnd~7.7μg/m3(nd~2.8μg/m3)、検出頻度は98/113(104 /113)、幾何平均値は0.24μg/m3(0.28μg/m3)であった。地点別検出頻度は27/29 (28/29)であった。 暴露経路調査においては、一般大気又は室内空気からの暴露の範囲は1.7~75μg/人日 (nd~34μg/人日)、食事からの暴露の範囲はnd~25μg/人日(tr(統一検出限界以 下で検出されたことを示す)~23μg/人日)であった。 暴露量に関して地点差はあるものの、いずれの地点も一般大気、室内空気、食事各 媒体に由来する暴露であった。 また、室内空気と一般大気には顕著な差はみられなかった。 これまでの調査結果と比較すると、残留状況及び暴露状況に大きな変化は認められな かった。 (ウ)クロロホルムについては、環境中に比較的高い濃度で広範囲に残留していることか ら、今後とも引続き調査を実施していくことが必要である。
[調査結果の考察]の先頭へ (4) 1,2-ジクロロエタン及び1,2-ジクロロプロパン (ア)1,2-ジクロロエタンは塩ビモノマー原料、合成樹脂原料等として、また、1,2-ジク ロロプロパンは油脂・アスファルト溶剤、金属脱脂洗浄剤等として用いられている。 1,2-ジクロロエタンは昭和62年7月に、1,2-ジクロロプロパンは昭和63年3月に指 定化学物質に指定された。さらに、平成5年3月には、1,2-ジクロロエタンは水質環 境基準項目に追加され、1,2-ジクロロプロパンは水質要監視項目に指定された。 これら2物質については、平成元年度から水質、底質及び大気について調査を開始 した。 1,2-ジクロロエタンについては、水質環境基準項目に追加され水質汚濁の状況が常 時監視されることとなったこと及び平成4年度に検出頻度及び濃度の低かったことか ら、水質及び底質に関しては調査対象から外して、平成5年度から大気についてのみ の調査とした。 他方、1,2-ジクロロプロパンについては、平成2年度に検出頻度及び濃度の低かっ た水質及び底質を調査対象から外し、平成3年度からは大気についてのみ調査を実施 してきた。 両物質については、大気からの検出頻度が高い傾向がみられたため、平成6年度か らは暴露経路調査を開始した。 平成7年度においても、大気について調査を実施するとともに暴露経路調査を実施 した。 (イ)(1,2-ジクロロエタンの調査結果) 大気からの検出範囲はnd~1.8μg/m3(nd~1.1μg/m3)、検出頻度は66/79(73/ 80)、幾何平均値は0.05μg/m3(0.06μg/m3)であった。地点別検出頻度は24/28 (25/26)であった。 暴露経路調査においては、一般大気又は室内空気からの暴露の範囲は0.2~18μg/人日 (0.16~5.3μg/人日)、食事からの暴露は平成6年度に続き検出されなかった。 暴露量に関して地点差はあるものの、いずれの地点も一般大気及び室内空気由来に よる暴露であった。 また、室内空気と一般大気には顕著な差はみられなかった。 これまでの調査結果と比較すると、残留状況及び暴露状況に大きな変化は認められ なかった。 (1,2-ジクロロプロパンの調査結果) 大気からの検出範囲はnd~0.93μg/m3(nd~0.79μg/m3)、検出頻度は59/77(57 /77)、幾何平均値は0.016μg/m3(0.02μg/m3)であった。地点別検出頻度は22/28 (21/25)であった。 暴露経路調査においては、一般大気又は室内空気からの暴露の範囲は0.17~3.4μg /人日(0.075~8.5μg/人日)、食事からの暴露は平成6年度に続き検出されなかっ た。 暴露量に関して地点差はあるものの、いずれの地点も一般大気及び室内空気由来に よる暴露であった。 また、室内空気と一般大気には顕著な差はみられなかった。 これまでの調査結果と比較すると、残留状況及び暴露状況に大きな変化は認められ なかった。 (ウ)1,2-ジクロロエタン及び1,2-ジクロロプロパンについては、環境中に広範囲に残留 していることから、環境汚染の状況を監視するため、今後とも引続き調査を実施して いくことが必要である。
[調査結果の考察]の先頭へ (5) 1,4-ジオキサン (ア)1,4-ジオキサンは各種工業用溶剤として用いられている。昭和62年10月に指定化学 物質に指定された。1,4-ジオキサンについては、平成元年度から調査対象とし、水質 及び底質について調査を継続している。 平成7年度においても、水質及び底質について調査を実施した。 (イ)水質からの検出範囲はnd~7.6ppb(nd~15ppb)、検出頻度は64/105(60/96)、 幾何平均値は0.24ppb(0.31ppb)であり、地点別検出頻度は22/35(22/32)であっ た。 底質からの検出範囲はnd~74ppb(nd~7.6ppb)、検出頻度は9/102(13/90)、 幾何平均値は1.6ppb(1.37ppb)であり、地点別検出頻度は4/34(7/30)であった。 水質、底質ともこれまでの調査結果と比較すると、残留状況に大きな変化は認めら れなかった。 (ウ)1,4-ジオキサンについては、環境中に広範囲に残留していることから、環境汚染の 状況を監視するため、今後とも引続き調査を実施して行くことが必要である。
[調査結果の考察]の先頭へ (6) 3,3'-ジクロロベンジジン (ア)3,3'-ジクロロベンジジンは、有機黄色顔料の中間体として用いられている。 昭和62年10月に指定化学物質に指定された。平成元年度に初めて水質及び底質につ いて調査されたが、いずれの媒体からも僅少での検出であった。平成7年度は平成元 年度以来の調査であり、水質及び底質について調査を行った。 (イ)水質及び底質からの検出頻度は、いずれも0/69(平成元年度は水質・底質とも2 /78 ただし、現在とデータ処理の方法が異なるため単純には比較できない、以下、 本部において 同じ)で検出されなかった。 (ウ)3,3'-ジクロロベンジジンについては、現時点では水質・底質とも検出されなかった ことから、今後の製造・輸入量等の動向を見つつ、一定期間をおいて調査の実施を検 討すること が適当であると考えられる。
[調査結果の考察]の先頭へ (7) 4,4'-ジアミノジフェニルメタン (ア)4,4'-ジアミノジフェニルメタンは、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI) の合成原料として用いられるほか、エポキシ樹脂の硬化剤、ポリウレタンの共重合物 などに用い られている。 平成元年3月に指定化学物質に指定された。平成元年度に初めて水質及び底質につ いて調査されたが、いずれの媒体からも僅少での検出であった。平成7年度は平成元 年度以来の調査であり、水質及び底質について調査を行った。 (イ)水質からの検出頻度は0/69(平成元年度2/72)であった。底質からの検出頻度 は14/69(平成元年度1/72)、検出範囲はnd~880ppb(平成元年度 nd~0.2ppb)、 幾何平均値は12ppbであり、地点別検出頻度は6/23であった。 (ウ)4,4'-ジアミノジフェニルメタンについては、現時点では水質からは検出されなかっ たが、底質からは平成元年度調査時に比べ検出頻度が高くなっている。これは平成7 年度調査では分析における検出限界が、平成元年度調査時より下がったことによるも のと推察される。検出された濃度レベルは特に問題を示唆しているとは考えられない が、検出頻度が上昇したこ とでもあるため、今後の製造・輸入量等の動向を見つつ、 一定期間をおいて調査を実施することが適当であると考えられる。
[調査結果の考察]の先頭へ (8) 4,4'-ジアミノ-3,3'-ジクロロジフェニルメタン (ア)4,4'-ジアミノ-3,3'-ジクロロジフェニルメタンは、ポリウレタンエストラマー用硬 化剤、エポキシ樹脂及びエポキシウレタン樹脂用硬化剤として用いられている。 昭和62年10月に指定化学物質に指定された。平成元年度に初めて水質及び底質につ いて調査されたが、いずれの媒体からも検出されなかった。平成7年度は平成元年度 以来の調査であり、水質及び底質について調査を行った。 (イ)水質からの検出頻度は0/69であった。底質からの検出頻度は2/69、検出範囲は nd~110ppb、幾何平均は7.2ppbであり、地点別検出頻度は1/23であった。 (ウ)4,4'-ジアミノ-3,3'-ジクロロジフェニルメタンについては、現時点では水質からは 検出されなかったが、底質からは平成元年度調査時では検出されなかったのに対し検 出された。これは平成7年度調査では分析における検出限界が、平成元年度調査時よ り下がったことによるものと推察される。検出された濃度レベルは特に問題を示唆し ているとは考えられないが、新たに検出されたことでもあるため、今後の製造・輸入 量等の動向を見つつ、一定期間をおいて調査を実施することが適当であると考えられ る。