環境省大臣記者会見・談話等


環境大臣談話 「祈りの言葉」(平成19年5月1日)

 水俣病犠牲者慰霊式に臨み、水俣病によって、かけがえのない命を失われた犠牲者の皆様に、心から哀悼の意を表します。

 改めて申すまでもなく、水俣病問題は、深刻な健康被害をもたらしたばかりでなく、地域住民の絆が損なわれるなど広範かつ甚大な影響を地域社会に及ぼしました。 長きにわたる大変な苦悩の中でお亡くなりになられた方々がいらっしゃいます。胎児性患者の方々など今なお被害に苦しまれている方々もいらっしゃいます。
  こうした方々、また、地域に生じた軋轢に苦しまれた地域住民の皆様に対し、水俣病の拡大を防げなかったことを、政府を代表して、衷心よりお詫び申し上げます。

 水俣病が昭和31年に公式に確認されて以来、高度経済成長の過程で、その被害は取り返しのつかない大きなものとなってしまいました。この水俣病の多くの犠牲の上に、今日の社会の繁栄と暮らしの豊かさは成り立っていると言っても過言ではありません。
  我が国のこのような経験は、国全体、国民全体に、現在の社会や行政のあり方に対し重い問いかけを発しています。水俣病を学ぶことにより、その経験の重さを改めて認識したいと思います。

 一昨年、患者団体など関係団体、水俣市など地元自治体、環境省等が協力して、水俣病公式確認50年事業実行委員会が設立されました。そして、公式確認から50年を迎えた昨年、関係する多くの皆様のご尽力により、水俣病慰霊の碑の建立、50年誌の編纂、写真展の開催、地域の福祉を考えるシンポジウムの開催や地域の再生・融和に向けた人材育成など様々な取組が行われました。

 これらの50年事業実行委員会の取組、成果も活かし、水俣病被害者の方々の高齢化やそれに伴う不安に応えるための医療・福祉対策や地域の再生・融和などを一層推進していくことが私たちの責務であると考えます。

 今日、長い歴史と経緯を経てなお、水俣病問題は大きな課題となっております。今後、平成7年の政治解決や平成16年の最高裁判決も踏まえ、すべての被害者の方々が地域社会の中で安心して暮らしていけるよう、地元自治体と協力して、全力で取り組んでまいる決意であります。

 また、水俣病の悲劇を二度と繰り返さないよう、その経験を内外に伝えていくとともに、環境を守り安心して暮らせる持続可能な社会の実現に政府を挙げて取り組んでまいります。

  最後に、改めて、水俣病の犠牲となり亡くなられた方々の御冥福をお祈りし、私の「祈りの言葉」とさせていただきます。
 

  

平成19年5月1日  環境大臣 若林 正俊