環境省お知らせ記者会見大臣発言要旨

記者会見大臣発言要旨(平成14年11月05日)

(大臣)本日の閣議では、一般案件が1件、法律案が3件、人事案件が1件ありました。環境省関係の案件はありませんでした。
私からは、COP8のご報告を致しました。
 COP8についてですが、30日、31日に閣僚級円卓会合に出席して参りました。冒頭で何カ国かのリードスピーカーによる演説がありました。私もその一人として、日本の立場をお話ししました。円卓会合での発言の趣旨は3つありまして、一つは京都議定書の早期発効。二つ目は、地球温暖化防止については地球規模で取り組まなければいけない問題ということで、全世界の参加の必要性。三つ目は、第1約束期間の後、2013年以降の新たな行動について議論の道筋を開くべきであること、この3点について発言しました。
 円卓会合の他に、二国間でのバイ会談もしました。バイ会談を行ったのは、インドのバールー環境森林大臣、円卓会合の共同議長をされましたイギリスのベケット環境・食糧・農村大臣、アメリカのドブリアンスキー国務次官、ニュージーランド、オーストラリアの大臣と会談をしました。ここでは二国間の問題の他、アメリカ、オーストラリアについては京都議定書の早期参加を申し上げました。また、それぞれ閣僚級円卓会合で私が発言した趣旨が、デリー宣言に盛り込まれるよう、ご理解とご協力をお願いしました。
いろいろな経過がありましたが、結果的に11月1日にデリー宣言が採択されました。その中では、京都議定書未締結国への働きかけ、途上国を含めた地球規模での温室効果ガス削減の重要性、排出削減のための行動に関する情報交換の推進など、日本の主張したことを含めた前向きなメッセージが盛り込めたと思っています。
 私の印象ですが、国際的な問題に一致団結して取り組むということの難しさを感じましたし、その重要性というのも改めて感じました。COP8において、今までのCOPでもそうだったかもしれませんが、途上国と先進国間の信頼感が欠如しているという状況で、例えば2013年以降の問題について、そろそろ議論を始めたいという先進国側に対して、途上国側は、先進国の資金面、技術面などの果たすべき約束を果たしていない、ということの不信感があり、デリー宣言のとりまとめに対しても苦労があったという印象を持っています。これからも途上国との信頼を築くことが重要だと思っていますので、日本としてもこれに取り組んでいくことが大切だと思います。
 デリー宣言以外で、技術的な部門でも日本の前進がありました。例えば、京都議定書に基づく報告審査のガイドラインが完成しましたし、途上国にも先進国同様に義務がある国別報告書作成のためのガイドラインが改定されました。クリーン開発メカニズムに関する手続きの進展など、技術的部分での成果もありました。
 今後日本としては、国内においても温室効果ガスの削減が進むように、また途上国を含めた地球規模の温室効果ガスの削減が進むよう、さらに努力していかなければならないと思っています。

(質問)COP8についてですが、先進国と途上国の信頼関係を取り戻すこととして、これから先、どのような取り組みをしていかなければならないと思いますか。
(大臣)約束したことを確実に実施していくということだと思います。途上国と先進国の対立ということですが、途上国も必ずしも一枚岩ではないし、アメリカは参加しないという立場ですので、先進国も一枚岩ではありません。まとまって何かやるということではなく、日本ができることをきちんとやっていくということが信頼感を取り戻すことの大切な第一歩だと思います。従前から言っています技術移転、技術協力というものを進めていかなければなりませんし、資金面での協力なども、きちっと一つ一つやっていくことが大切だと思います。

(質問)日本がやるべきこととして、京都議定書の目標達成は難しいという見方がありますが、大臣としてはどう考えていますか。
(大臣)確かに温室効果ガスの6%削減というのは容易なことでないということを率直に思っています。国内対策としては大綱を定め、ステップごとに期限を区切って着実に進めていこうということですので、とにかく今はそれに向けて全力を尽くすということです。途上国との関係で言えば、削減幅が実施できないのではないかということが不信感の元というよりも、途上国にいろいろな義務を課する前に、先進国の技術面、資金面などのやるべきことをやってくれということが途上国の見方だと思っています。
 削減幅も約束しましたので、厳しいですが何とか実現できるように最大限努力していかなければならないと思っています。

(質問)途上国側の技術面、資金面の要求に対してですが、先進国はどう受け止めているのですか。
(大臣)先進国も一つの立場にまとまっているという状況ではありませんが、例えばイギリスの大臣とお会いした時も、EUの立場として、途上国の不信感に対して心配していました。不信感があるということは、先進国側も共通の認識として持っています。日本が入っているアンブレラグループの会議でもそうした発言がありました。そのために何をしていくのかということがありますし、先進国がどのような対応をしていくのかということもありますが、やはり技術面、資金面の協力を先進国が着実にやっていくことが不信感を除く大前提だと思います。

(質問)技術面、資金面の協力で新たなものや追加的なものは議論されましたか。
(大臣)着実に進めていくということです。

(質問)技術協力は、クリーン開発メカニズムが中心になりますか。
(大臣)日本としては、それに乗った形で技術協力をすれば、日本の温室効果ガス削減にカウントされると思いますので、望ましい形だと思います。

(質問)2013年以降の話はまだできないということを途上国が言っているようですが、アメリカが参加しないということが大きく働いているのでしょうか。
(大臣)いろいろなことを言っていますが、新たな約束につながることは困るということだと思います。その中で、「先進国でも国別報告書を出していないところがあるではないか」とか「先進国でも京都議定書に参加しない国もあるではないか」などの発言もありました。

(質問)国内対策の問題について、温室効果ガス6%削減は厳しい状況にあると思いますが、改めてこの状況の中で、環境税のあり方について大臣はどのようにお考えですか。
(大臣)基本原則は、第1ステップが終わった段階でいろいろな状況を見直し、第2ステップをどう考えるかということです。環境税、地球温暖化対策税は、温室効果ガス削減に対して有効な手段だと思っていますので、今検討を進めています。
 経済産業省からのエネルギー特会のグリーン化の話もありますが、環境省としては第1ステップにおいて、特別会計のグリーン化を、歳出・歳入共にしていくという主張をしています。経済産業省が今言っているのは、第1ステップにおけるそういったもののグリーン化ということです。第2ステップにおいて我々が考えている環境税、地球温暖化対策税は、別途でしっかり考える必要があると思っています。まだ導入をするという段階ではありませんが、研究を進めています。

(質問)グリーン化という観点では、経済産業省の案には賛成しているということですか。
(大臣)決して否定的にとらえているということではありません。

(質問)その後、経済産業省から詳しい説明はありましたか。
(大臣)事務方にはあったようです。今事務レベルで話をしているということですが、まだ私には報告がありません。

(質問)税率等々についての話はありますか。
(大臣)いろいろな話のやりとりはあると思いますが、まだ固まったものはありません。

(質問)環境省として第2ステップに取り組んでいくようですが、今、経済産業省が提示しているものとは別途に、新たなものを考えていくということですか。
(大臣)位置づけとしては、今の経済産業省の考えは、第1ステップにおける特定財源等のグリーン化の一環だという認識をしています。

(質問)東京大気汚染公害判決ですが、どう受け止められましたか。未認定患者の救済についてはどうお考えですか。
(大臣)判決が出まして、2週間以内に国としての対応を決めなければならないという状況ですので、今後、関係省庁とも十分な連絡をしながら対応していかなければなりません。私なりに中身を見てみますと、国の責任の中で、例えば大気汚染を防止するための基準を作る権限、いわゆる環境省の権限については、原告の主張は認められず、道路の設置管理者についての責任が指摘されたということだと思っています。大気環境の状況と健康被害の因果関係については、従来の国の考え方と今回の裁判の結果が異なっていますので、環境省としてもそこについては問題があるのではないかということを思っています。国全体で対応しなければなりませんので、関係省庁とも十分連絡を取っていきたいと思います。裁判の結果として、環境省としては、大都市、東京23区において、二酸化窒素や浮遊粒子状物質などが環境基準に達成していないという地区がまだありますので、大気環境保全のための努力を今後一層強くしてやらなければならないということを、私も痛感しました。

(質問)未認定患者について、裁判で一人認められたことを受けて、もう一度新しい救済制度を作ってくれという要望が高まっているようですが、それについてはどうですか。
(大臣)新たな救済制度という話ですが、ぜん息で大変苦しんでいる方に対して、本当にお気の毒だという思いは強く持っていますが、国として制度を仕組むということになると、大気汚染状況とぜん息が発病するという健康被害の因果関係が、科学的にきちっと証明されなければなりません。今やっている段階ではそこが明確に結びえないので、環境省としては、そこの調査、研究をさらにしっかり進め、そこに因果関係があるのかないのかということについて進めていくということが肝心だと思っています。

          (了)