記者会見大臣発言要旨 (平成13年5月8日)

 今日は一般案件では、都市再生本部の設置ついて、決定がございました。これは、環境、防災、国際化等の観点から都市の再生を目指す、21世紀型都市再生プロジェクトの推進、土地の有効利用等の、都市の再生に関する施策を推進するというもので、環境大臣も本部のメンバーに入っています。内閣に専属の事務局として、都市再生本部事務局を置きます。環境省関連として、小泉総理の所信表明演説にございました。低公害車の導入推進について総理から指示がございました。昨日の所信表明演説で、政府として率先して環境問題に取り組むために原則として全ての公用車を低公害車に切り替えるというご発言がありました。それを受けて今日の閣議で総理から、原則として全ての一般公用車について14年度以降3年をメドとして低公害車に切り替えること。それについて、各府省はこの方針で取り組むよう指示がありました。13年度においても、交換する公用車は全て低公害車にするようにとの指示がございました。総理のご発言のあとに、この件について私と経済産業大臣から発言しました。私からは、政府が率先して環境に配慮した製品を購入するということは、価格が低下し需要が拡大しますので、更なる供給が出るという好循環が非常に重要であると申し上げました。今日、グリーン購入法を所管している環境省として各府省の会計責任者に対して総理の指示を徹底しますということも申し上げました。もう1つ、廃棄物の減量化が非常に重要ですので、低公害車に切り替える 対象となる公用車については、廃棄処分にするのではなく下取りに出して使っていくということをお願いいたしました。経済産業大臣からは官需の拡大を起爆剤として民需に寄与することが重要だということと、低公害車に対する総合的な普及促進策を作成するとのご発言がございました。
 今日の午後、各府省の会計責任者にお集まりいただき、環境省の担当局から総理の指示について伝えるとともに、今後の取組について協議いたします。また、本日午後2時30分から、私と経済産業大臣が日本自動車工業会の奥田会長に対しまして必要な低公害車の供給が円滑になされるよう協力の要請をいたします。今までは、率先実行計画で低公害車の導入を行ってまいりました。現在はグリーン購入法によって進めていくことになっています。各省庁の平成11年度の低公害車の導入率は平均して3%でした。その後、数字のとりまとめをしておりますが、集まった範囲でもいくつかの省で大きく前進がみられることは良いことだと思います。環境省は平成13年5月7日現在18.2 %です。

(質問)5月2日に諫早に行かれましたが、その印象、ご感想をお聞かせ下さい。
(大臣)私はずっと現場主義と言っておりまして、今回、5月1日に水俣の犠牲者慰霊祭に出席する機会がありましたので、急遽、諫早へ行きました。感想としてはいくつかあります。今まで、予断を持たずに徹底的に調査をすると言ってまいりましたが、現地へ行って、なお確信を持って必要だと思いました。漁獲量がずっと減ってきていることなどから、漁民の方々が海がおかしいとおっしゃっている。その原因をきちんとつきとめることが重要です。この干拓をめぐっては、いろいろな立場の方がいらっしゃって、それぞれいろいろな思いがあります。原因を究明しないと、今後の対策がとれないわけです。そういうことから、予断を持たずに徹底的に調査し原因を究明するということが大事だと思います。もう1つは、今まで、環境の質を考える時は科学的検査をして、水質や大気などがどれくらいきれいか、きれいでないかというようにやってきています。これは大変重要なことです。熊本県の保健環境科学研究所にも伺いましたが、こういう研究をきちんとやって、その結果を皆が共有できることが大事です。同時に、数字を読む時にその背景も読むことが重要です。昔、経済統計を担当したことがあります。旧経済企画庁では経済統計の数字を読む時にタクシーの運転手さんたちのお話を聞くなどして景気の動向を判断するなどしていました。同じようなことが環境にもいえると思います。水質の数字も重要ですが、それに加えて有明の漁民の方々が海がおかしいとおっしゃっていること、感覚で環境がおかしいと感じること、それも含めて環境を考えていくことが大事であろうというのが2番目の印象です。また、諫早の干拓いついて言いますと、これは、長い歴史があり、いろいろな方の思いがあってこういう状況になってきたものです。大変に壮大な潮受け堤防が出来ていますが、人間にとって何が大事であるかというのは時代によって変わっていくものだと思います。昔は食料が足りなかったことなどで、ある一定の技術をもとに潮受け堤防が大事だということだった。それは、今でも諫早の人にとっては大事なのかもしれませんが、今の時点であれだけの工事をやるということになったら、本当に大事なのか、もっと他に方法があるのではないかなど考えると違う結論がでるかもしれないなあという印象は持ちました。
(質問)それは、諫早干拓事業というのは現在のニーズに合わないということですか。
(大臣)この場合、事業は既に始まっているわけで、ここまで出来ているのです。筑波学園都市をこれから作ろうとしたらできないのと同じで、これからスタートすると考えるとああいう形のものができたかどうかということです。今、必要がないと申し上げているわけではありません。その時の技術を基準に治水という観点からできたわけで、治水のニーズがあるということです。それを今やろうとしたら、違う形でやるだろうということです。ある段階の技術において必要があるとの判断だったということです。
 有明海の環境に問題があるだろうと思いますが、その原因が何かということを徹底的に究明する必要があると思います。前よりもより確信を持ってそう思います。数字に加えて、複合的に環境に何かが起こっているととらえることが必要という感想です。具体的に何をするのかという対応策は今の時点では考えておりません。
(質問)時代おくれの事業だということですか。
(大臣)そういうことではありません。全ての公共事業はある程度時間がかかるわけです。ですから、時のアセスというのは重要だと思います。それをきちんとやるのが重要だと思います。
(質問)干拓事業の見直しや中止は必要ないということですか。
(大臣)それはまさに第3者委員会で議論をしていただいているわけで、総合的に予断を持たずに徹底的に調査をする必要があります。そういうことを申し上げているわけです。前よりももっと強くその必要性を感じています。
(質問)ご覧になって大きすぎてびっくりされたのではないですか。
(大臣)非常に気宇壮大なプロジェクトであるということですね。そういうように日本の国土を変えていこうというやり方は、ある時点で日本はそういう発想をしたわけですから、その時代の要請でもあり、できると思ってやったわけです。しかし、今はおそらくそういうことは考えないであろうと思います。例えば河川法が違ってくるなど少しづつ変わってきているわけです。環境保全を全面に押し出した地域開発のあり方や公共事業のあり方など、変わってきていますし、もっと変わるべきだと思います。時のアセスというのは今の目で見ようということですから非常に大事でしっかりやるべきだと思います。
 それから、環境庁時代に、諫早についてレビューをして下さいと申し入れています。それをしっかりやっていただきたいということも現地で言っております。
(質問)水門を一定期間開けるということになると、事業計画も一部変更ということも出てくると思いますが、それは時のアセスとは別の意味での環境アセスメントが必要になってくるのではないでしょうか。
(大臣)時のアセスは農水省でやっていただけると思っています。第3者委員会で、堤防を開けることについては、当分は閉めて調査をするということになっています。その後、どうしていくかは、第3者委員会で具体的に検討していくことになっていますので、それをやっていただくということです。それにつけ加えて水門を将来的に開けるということになれば、その開け方や環境影響については、今のうちにきっちり検討しておく必要があると思います。その開け方はいろいろ方法があると思いますが、開けた時の環境影響についてきちんと検討しておく必要があります。
(質問)今日、水俣病関西訴訟の原告団の方が国に上告をしないでほしいという陳情をするとのことですが、環境省としては上告や今後の対応についてどうお考えでしょうか。
(大臣)水俣に伺った時に同じ質問を受けました。その時とまったく同じですが、私個人としては原告の方が高齢であること、身体をこわしていらっしゃることなどについてお見舞い申し上げたいと思います。裁判上の問題は、法務省と相談中でその結果を待ちたいということです。
(質問)環境省としては受け入れがたい判決というご印象でしょうか。
(大臣)こちらの主張は受け入れられなかった大変厳しい判決だと思っております。
(質問)大臣は、環境修復の公共事業についておっしゃっていますが、具体的に考えられることはどんなことか伺いたいのですが。
(大臣)今、検討してもらっています。考えられることは2つあると思います。1つは、環境を良くするための公共工事、もう1つは現在の公共工事にもっと環境修復の観点を取り入れていくということ、この2つがあると思います。それぞれ、地域の方々の意見をくみ上げていくことが大事です。連携を取っていくことが大事だと思っています。環境省は公共事業の予算が少ないので、自分でやれることは限りがあります。むしろ、工事をなさる事業官庁にそういう考えを反映させてやっていただく。環境省としてできることはモデル事業のようなことです。国や地方公共団体と連携してやっていくことです。広く政府全体でそういう考え方をしていきたいと思います。
(質問)低公害車とはどういうものですか。
(大臣)4つあります。天然ガス自動車、ハイブリッド自動車、電気自動車、メタノール自動車です。
(質問)大臣者は2台ありますが。
(大臣)1つは天然ガス車で、1つはガソリン車です。もっぱら天然ガス車に乗っております。天然ガス車のステッカーを貼って需要拡大のために宣伝しています。

(了)