記者会見大臣発言要旨 (平成13年4月26日専門紙共同記者会見)

(質問)引き続いて環境大臣ご就任ということになりますが、小泉内閣のなかで環境問題がどのような位置づけになるかまず聞かせてください。小泉首相から何かご指示があったのではないかということを踏まえてお聞かせいただきたいのですが。
(大臣)お話をいただいたときには自然との共生、循環型社会の構築というものが大事であるということでした。地球環境問題が、重要なので積極的に取り組んでほしいということでした。またCOP6再開会合では、日本が国際的リーダーシップを充分に発揮してほしいとの話もありました。それから、廃棄物行政が環境省に1元化されたということを十分に踏まえて、各省と協調してやってほしいという話をいただきました。それぞれについて私も共感いたしており、またそれが重要なことだと思っておりますので、きちんとした話をいただいて大変うれしく思っております。 
(質問)環境関連の外交問題で、COP6再開会合、またPOPsもございますし、タイトな状態であります。その中で田中議員が外務大臣に就任なさいました。外務大臣とは連携をとってやっていくことになると思いますが、田中大臣との接点は今までございましたか。
(大臣)今までは特にございません。時々お話しをさせていただいたという程度です。
(質問)人物評価等としてはどうでしょうか。
(大臣)とても明るい方で、物事の本質をきちんと捉えている方だと思っております。今までの人生の中で深い経験をなさっていらっしゃる方だとも思いました。
(質問)これからは接点をお持ちなることも多いと思いますが。
(大臣)いろいろと勉強させていただきたいと思っております。
(質問)環境省がスタートして4カ月ですが、発足当初にいろいろと目的等、環境省のめざす姿を発表されたと思うのですが、今現在どのような状態にあるとお考えですか。
 (大臣)職員一同が一丸となって、いい方向で、求心性をもって仕事をしているのではないかと思います。
(質問)今国会で環境省設置法が成立しまして、これから自動車NOx法改正法、PCB法環境事業団法が審議になるということですが、本日週刊誌に載っておりましたが環境事業団の仕事は無駄ではないかという指摘があります。PCB処理を企業の延命のためにやっているのではないかという話もありますが、国会の審議の中で明らかになったように昔の建設譲渡事業で多額の不良債権があるようです。環境事業団の改革という意味では、重い宿題を持っているわけですが、この件についてどのようにお考えですか。
(大臣)週刊誌の記事で、読んでおりませんので、これについてコメントできません。今内閣は改革断行内閣ということで、民間でできることは民間に、地方にできることは地方に任せるという原則に照らして、特殊法人や公益法人の改革、地方分権の推進などの徹底した行革改革に取り組むことが総理の公約です。これは常に、特殊法人の仕事、公益法人の仕事またはわれわれ自身の仕事についても改革の方向でやっていかなければならないと言う点で私もそう思っております。環境事業団についても同じだと思います。PCB法の話では、PCBの処理は過去30年間できないでいました。その理由として、民間が強い不信感を持っていたということがあげられます。いま非常に重要なことはPCBの処理をするということでして、それをするために、環境事業団がかかわる形で、施設を造ってこれを処理していくということは必然だと私は思っております。その過程て、効率的でないということがないようにしていかなければならないと思っております。しかし安全と安心を確保するということは非常に重要だと思っております
(質問)産業界と協力しあっていけるような政策を組むと、産業を保護するような政策になってしまうという懸念もあると思うのですが、そういうことにならないための新しい構想はございますでしょうか。
(大臣)産業界は環境に対して非常に高い意識をもっていると思っております。私は米国でも、米国政府、米国そして上院議員にも述べたのですか、温暖化問題を例にとりましても、経団連を中心として自主的な取り組みを行っています。経団連に所属しているのは34業種でして、温暖化ガスの中でCO2だけですが、産業界の76%のシェアを持っています。そして90年に比べて99年は0.1%減ったというニュースがあります。日本全体では、98年の数字で5%増えているという数字があります。ということは経団連とは別のところで増えているということですから、産業界が環境に対して前向きでないということはないと思います。問題なのは、産業界も含め、環境に関心を持っている人々とそうでない人々の2つに分かれているということだと思います。その点は大変難しい問題でして、環境教育、モデル事業などの啓蒙活動という手段のような、遠回りに見えますが、その方が近道だというような方法をとることもあるのではないかと思っております。
(質問)京都議定書の米国の対応について、地球温暖化防止のためにどのように進めたいと思われますか。
(大臣)考え方の基本は環境の保全に何がいいかということです。京都議定書はいま国際的に唯一存在する枠組みでして、日本は米国に対してそこに戻ってほしいということをずっと言い続けている訳です。環境十全性の観点からいって米国は、世界の排出量の約25%を排出している訳ですから、米国が加わるということは非常に大事です。そのうえで、2002年発効を目指して国際的合意に達するということと、国内的にそれを実施することができるだけの政策、手段を持っているということが大事だと思っています。
(質問)今回訪米されまして、米国は日本の主張を理解したというコメントがありました。しかし、楽観視できない部分もあると思うのですが、別の選択肢、例えば米国抜きでの早期発効ですとか、米国を入れるため別の枠組みで行くというようなことは考えていないのでしょうか。
(大臣)環境十全性という意味から少なくとも米国の排出量である25%が抜けてしまうというのは、非常に大きなことです。また、今米国は閣僚レベルで政策を考えているということで、私は一生懸命に考えているという感想を持っていますし、筋道を立てて考えているという印象も受けております。いま米国がそういうことを考えていまして米国が加わることが重要であるということなので、米国の検討ができるだけ早期に終わるよう米国に対し申し上げました。米国が経済的コストの点を言うものですから、短期の直接的な問題、直接に経済に影響があるかということだけではなくて、環境の問題というのは経済的な手段をとれば米国の産業にとっても機会であるということを考慮に入れてほしいということも申し上げました。また環境へのコストというのもありまして、対策をとるのが遅れれば遅れる程、そのコストが大きくなるということも考慮してほしいということも申し上げました。
(質問)そのようなことは京都議定書という枠組みが前提ということでしょうか。25%が抜けるということを避けるために、別の枠組み等を考えるということはないのでしょうか。
(大臣)京都議定書は今存在する唯一の国際的な枠組みです。また現在、京都議定書の運用ルールを考えているわけでして、それも含めてEUに対してはもっと柔軟になる必要があるだろうということも同時に申し上げています。
(質問)アンブレラグループの中で、日本に1番近い国というのはどこになるでしょうか。
(大臣)プロンクペーパーについてはアンブレラグループの中で議論したことがあまりないのですが、それほど差はないのではないかと思っています。一般論的に言うと、アイスランドやノルウェーは欧州の国ですから、EUに近いかなと思った時もありました。5月の終わりにストックホルムで非公式閣僚会合がありまして、その場でプロンクペーパーについて話し合いがなされると思います。その後では、今の質問に対する答えが見えてくるのではないかと思います。
(質問)総理からCOP再開会合でリーダーシップを発揮してほしいと言われたということですが、リーダーシップの具体的な内容というのは、どのようなものでしょうか。
(大臣)国際会議でリーダーシップを発揮するというのは、最終的に物事が前に進むように議長を助けることだと思っておりまして、日本は今までいろいろな場でその役割を果たしてきました。一番最近ですと国連大学を会場として、排出量取引のシンポジウムを2日にわたってやりました。この場では排出量取引の現場の声が反映されるようにいたしました。しかし、ボン会議にむけて具体的に何かと言いますと、米国に京都議定書に戻ってくるよう働きかけることかもしれません。米国の主張が、途上国不参加は不平等ということだったのですが、先日の日中韓の合同会合をやって意見を聞いておりますと、中国は温暖化防止に向けて前向きに取り組んでいるということでした。そこで中国に会議の場で、そのことを発表したらどうかという話も日本はしております。これから先どういうことがあるかということについては、その時の状況にあわせて行っていかなければならないと思います。
(質問)自民党から議員立法でフロンガス法が出されるということですが、それについてはどのようにお考えですか。
(大臣)温室効果ガスとしてフロンは非常に大きいわけですが、それをできるだけ早く処理をするということは大事なことで、日本は先進国の中で遅れていたわけです。私は詳しい話は聞いていないのですが、非常に結構なことだと思っております。当法案ができるだけ早く成立することを期待しています。
(質問)自動車NOx法改正案を提出した意義をお聞かせください。
(大臣)大都市圏を中心とした大気の汚染の問題は非常に大きな問題でして、とくにPMについては、環境基準を達成していないところがあるわけです。また名古屋地区は今まで自動車NOx法の対象地域に入っていないということで、いままでやらなければならないところでやったいなかった場所について取り組めるという意義があると思います。大気汚染問題に対処するという意味でも意義があると思います。
(質問)東京都をはじめとした大都市に独自の条例化の動きもありますが、そういったものと国の対策との関係はどのようにお考えですか。
(大臣)一定のルールという国の政策と各地方の状況に合わせたルールである条例が同時に存在することは意味があると思います。
(質問)憲法改正の論議が国会の調査会の方でも続けられておりますが、環境保全というものを憲法上明確に位置づけるという議論もありますが、その点につきましてどのようにお考えですか。
(大臣)じっくり考えたいと思っております。
(質問)COP6再開会合に向けての外交方針は今までと変わりませんか。
(大臣)COP6再開会合の問題は、環境問題であり、経済問題であり、外交問題であり、貿易問題であり、そういう総合的ば問題でして、ボン会議以降もずっと続くわけですが、これからみなさんの知恵が出て、交渉のダイナミックスが動いて、日本がこう考えるということと国際社会がこういうふうに考えるということが、全部つながった形で状況が動いていくわけですから、それぞれのひとつひとつの要素はその中で変わりうるだろうと思います。その中で、2002年の発効を目指して、国内的にも国際的にも努力するという今の日本の基本的な方針は、全く変わっていません。

(了)