記者会見大臣発言要旨 (平成13年4月26日臨時閣議後会見)

(大臣)今日は内閣総辞職ということですが、最初に私の方から気候変動に関する非公式閣僚会議に出席した報告を致しました。まずニューヨークでの会議についてはハーグ会議以降初めての非公式閣僚会議でありまして、最近の米国の京都議定書不支持の動向を踏まえたうえで各国が冷静に話し合ったということの報告をいたしました。会合に先立って19日の午後から20日にかけて12カ国の国、機関と話をしたということを申し上げました。それからワシントンに22日の日曜日に移動いたしまして、リンゼー大統領経済担当補佐官、アーミテージ国務副長官、ホイットマン環境保護庁長官と会談いたしました。他にクレイグ上院議員、マスコミの関係者とも会談いたしまして働きかけを行いました。日本から申し上げたことは、京都議定書不支持ということを米国が表明したことがこの後の交渉に与える影響を強く懸念をしているということ、米国の参加が大変に重要であるということを申し上げまして、それをブッシュ大統領にお伝えくださいということをお願いいたしました。今米国が行っている閣僚レベルにおける温暖化問題についての政策の検討をできるだけ早期に完了して具体的な提案を行い、COP6再開会合で京都議定書の発効を目指した交渉に積極的に参加してほしいということも申し上げました。米国の政策の検討の終了する時期が非常に重要であるということを申し上げました。京都議定書の交渉に関する今後の動きにつきましては、プロンク議長が5月にストックホルムで非公式の閣僚レベルの会合をオープンエンド(参加国は自由)で行うということでした。日本としては京都議定書の2002年発効を目指して、COP6再開会合の合意に向けた国際交渉と国内措置の構築に全力を尽くしていきたいと考えています。以上が私が申し上げたことです。
 内閣総辞職について、総理大臣の談話がありました。総理大臣から発表があると思いますが、今まで行ってきたことを振り返ってのものです。閣僚懇談会に移った後で総理大臣から話しがありまして、やることはきちんとやったという話と歴史の節目の時期にやることができたという話がありました。また党を代表している方々にこの内閣に集まってもらって、自分を支えてきてくれたことに感謝をしているとおっしゃいました。それを受けて、財務大臣の方から、一同を代表して、ご指導いただきありがとうございましたとの発言がありました。また外務大臣の方から外務省として総理にご迷惑をお掛けしましたが、新生の道筋はできたと思いますという話がありました。

(質問)環境大臣は留任ということが報道されていますが、小泉総裁の方から何か連絡がありましたでしょうか
(大臣)一切ございません。

(質問)米国で会合を重ねられて、事実関係については先ほど報告していただきましたが、大臣が持たれた感触、特に米国の反応、世界の趨勢が変化してきているのかどうか、そのあたりの感触についてお聞かせください。

(大臣)米国で私が1番強く感じたことは、温暖化問題について、米国国内で閣僚レベルで話し合いが持たれているということなのですが、その議論が非常に真剣であるということです。根本的なところに戻って議論をしているということです。温暖化問題に対応する新しい提案が必ず出てくるだろうと思っています。ニューヨークの会議で他国の反応は、米国の参加が重要であって、それを米国に訴えて行こうということです。また米国が対応を考えているという事なので、それを待って、それから議論を深めていこうということです。そしてボンの会合については、とにかく前向きに議論しようということです。再開会合の結果については、あまり良い結果は期待できないのではないかという懸念が、少数国ではありますが重要な国からありました。ただ全体として非常に冷静に、現在の状況をこれまでの10年間の最大の危機ととらえて、柔軟に前向きに、新しく知恵を出し合ってやっていこうという点では全参加国が同意しました。

(質問)これまでの、環境庁から環境省における活動を振り返られて、ご自分の仕事ぶりをどういうふうに自己評価なさいますか

皆さん方には、お知恵をいただいたり、議論をさせていただいたりして、私としては、非常に楽しく仕事をさせていただいたという気持ちがあります。いただいた質問から考えさせられることもあり、アイデアの材料もいただき、私としては非常に建設的なふれ合いの場であったと思っております。ありがとうございました。環境庁が環境省になる時期でもあり、環境の世紀と言われる二十一世紀の始まりの時期に、この仕事をさせていただいたということは、とても光栄にも思いましたし、一生懸命やらせていただいたつもりです。昨日、出張報告で総理大臣の所にうかがいましたが、普通でしたら考えることもできないような機会をいただいて、ご指導もいただき、大変ありがとうございましたと申し上げました。総理からは、環境省の仕事について、様々なご指導もいただきましたし、いろいろな場でサポートして頂いたという実感が私の中にはあります。心強く仕事をさせていただきました。私は21世紀の最初に当たって、わかりやすい環境省、ともに歩む環境省ということをタウンミーティングなどで言わせていただきましたが、透明感があって、やっていることが分かる、開かれた環境省ということが大事だと思っておりましたので、そういう方向でタウンミーティングも行ってきましたし、MOEメールも作りました。タウンミーティングの中では非常にいい企画であるというような評価をいただき、それなりに環境省が何を考えているかということについては理解していただいたのかなと思います。それからいくつかの懸案がありました。COP6はこれから先がむしろ大事だということなのかもしれませんが、今回米国で、今の時点で日本が考えていること、米国が今考えていることについて相互のコミニュケーションができたのではないかというふうに思っております。法案については、6本のうち1つの設置法の改正法を通していただいたということですが、PCB法にしてもそれとの関連のある環境事業団法にしても自動車NOx法にいたしましても、浄化槽法にしても、それぞれ非常に重要な法案ですので、今国会で通していただければと思っております。まだ昨日帰ってきたばかりで詳しく話をうかがっていないんですが、フロン法についてもそれなりの道筋ができつつあるということで、良かったと思います。在任期間が5カ月弱で短かったのですが、昨年の4月からの期間と合わせて、私としては一生懸命に駆け抜けたと思っております。ご協力ありがとうございました。

(質問)ひらかれた環境省の他に、闘う環境省としてのスローガンもありましたが、その観点からいかがでしょうか。

(大臣)三番瀬についても、最終的に決着が見えたというものではありませんので、そういう意味では途中であるということなんですが、今まで例えば万博についてですとか、幾つか意見を申し上げてきておりますし、いろいろな方にお知恵をいただきながら他の省庁や社会全体に働きかけをしてきました。基盤づくりはきちんとできたと思っております。これからそれぞれの案件についてもっともっと、環境省の考えを言っていくということが必要だと思いますけれども、いくつか事例を作り、基盤を作って、今後につなげることができたと思っております。

(質問)地球温暖化交渉についての米国の提案はどのようなものになるという感触をお持ちですか。

(大臣)何も見えてきておりません。断片的な発言から考えますと、根本的に温暖化問題がそもそもどういうような問題であって、それに対応するために中長期的に技術が大事であるということを言っていた人が1人ならずいましたし、基本的に問題をもう1回とらえ直して、どういうことがいいのかということを考えていくということだと思います。例えば科学者ですとか、いろいろな人の話を聞いているということもありまして、米国のこの問題についての知恵がある人たちを、ホワイトハウスの中の閣僚だけではなくて、外部からも知恵を借りながら、相当に急いで作業を進めているということです。

(質問)根本的にというと京都議定書の運用ルールのちょっとした妥協で済むような話ではないということでしょうか

(大臣)共通する部分は割合に多いと思います。マーケットを通じた柔軟性措置が非常に重要だということですとか、吸収源が必要だと言っておりますが、これは京都議定書の中にある話です。ブッシュ政権の環境問題に対する対応は、ダイナミックにとらえていく必要があるのではないかと思います。ワシントン・ポストに、ブッシュ政権の最初の100日についての世論調査の結果が載っておりまして、全体としてブッシュ大統領の評価は、61%の人が、良いという評価をしていますが、この中で環境についての支持というものは、47%で幾分低いということです。ブッシュ大統領は、政治的に現実的な感覚を持っている大統領だというふうに米国では評価されているようでして、その観点からか、私が米国に行く少し前ぐらいから環境についてかなり発言を増やしているという状況であります。ですから環境についての立場としましては、一定の発言に対してにこちらの思考を固定することなく、柔軟に見ていく必要があると思います。しかし、京都議定書の枠内で戻ってくるということにつきましては、楽観視はできないと思っております。

(質問)米国のレビューの終わる時期なんですが、ホイットマン環境保護庁長官は報道等で5月と述べているようですが、具体的にそのような話はありましたでしょうか。

(大臣)人によって受け方が違っているようです。皆さん共通しているのは、大変急いでやっているということです。タイミングが大事で、7月の終わりにCOP6再開会合がありますので、その十分前に友好国には相談するということをやっていただきたいということを私は強調しました。アンブレラ諸国に相談するということを言っておりますし、COP6再開会合に手ぶらで参加するというわけにはいかないと言っております。しかし明確にいつの時点までに議論を終了するということの返事はもらっていません。ブッシュ大統領が最終的な決断もするということでありましょうし、環境保護庁としてはできるだけ早くという意志をほかの官庁よりは強く持っているようです。

(質問)ホイットマン長官はなぜニューヨークにはいけなかったのでしょうか。

(大臣)カナダのケベックでアメリカ大陸の首脳会談および閣僚レベルの会談がありまして、それに出席をしていたということです。

(質問)これまでEUは米国抜きの批准等々発言していましたが、今回の会合ではだいぶトーンダウンして、待ちましょうというふうに変わりましたが、このことはどういうふうにお考えですか。

(大臣)憶測はいくつかしておりますが、直接的にどうしてなのかということをEUには聞いておりませんし、EUというのは15カ国の集まりですから、さまざまな国の意見があると思います。それを、EUトロイカが、欧州委員会のバレストローム委員と、スウェーデンの環境大臣、次の議長であるベルギーの環境大臣が、今のEUの考え方をまとめている段階なんだと思います。中には、さまざまな意見があると思います。皆さんが想像しているようなことを私も想像していますが、確実にこういうようなことだということは、わかりません。

(質問)プロンク議長が日本に対する譲歩を自らの提案の中に含めたような発言もありましたが、議長やEUの閣僚から、そういった話はありましたでしょうか

(大臣)二国間会談の時に、私からは、プロンクペーパーは今後の交渉のベースとしては、問題があるということははっきり申し上げております。それに対してヨーロッパの閣僚から、どういうことが問題なのかということをはっきり言ってほしいということでありました。今回の非公式閣僚会合はプロンクペーパーについて指摘するという時間は、あまりありませんでした。最初の日、午後2時ぐらいまで午前中のセッションがありまして、それは米国の参加問題の評価で終わりましたので、私からは例示的に、市場メカニズムの活用をもっと図るべきとの意見が十分に反映されないようだということを話しました。その他の問題は5月のストックホルムでの非公式閣僚会合で行うということです。その場で、そういう議論はきちんとされるということです。

(質問)向こうから、譲歩の具体的な内容は提示されていないでしょうか。

(大臣)そもそも今回は、交渉する場ではありませんでしたので、具体的なものはまったくありません。

(質問)先程、全体として冷静な話し合いであったという話がありましたが、それは具体的には、米国抜きで発効させようという話がなかったということをおっしゃっているのでしょうか。それとも米国に歩み寄るような雰囲気が醸成されているというようなことでしょうか。

(大臣)1つは、米国抜きでこれはやるべきだということを発言した国がなかったということです。もうひとつは、会議の場に座って、話をしたときに感じる雰囲気と申し上げるしかないです。皆さん、冷静に議論をしようとしておりまして、ここで激しく米国につめよって米国をさらに孤立化させるということは得策ではないという雰囲気でした。米国側が京都議定書不支持を表明していることのひとつの理由として、途上国が入っていないということがありますが、中国は、これだけのことをやっているというようなことを発言しました。

(質問)アンブレラグループの、オーストラリアが米国が批准しなければ自分も批准しないということを表明したのを皮切りに、ノルウェーが慎重な態度をとりまして、カナダもそれに追随するようなことを、記者に語ったという報道があったのですが、アンブレラグループの中で議定書推進の勢いが弱くなってきたような様子は感じられませんでしたか。

(大臣)オーストラリアやカナダ、ノルウェーの発言を私は直接聞いておりませんが、アンブレラの会合では米国の参加が重要だということは、当然でておりました。米国の検討の結果が出たら、アンブレラ諸国にまず相談してほしいという意見も強くでておりました。アンブレラの会合やその全体の会合での発言で、ノルウェーが慎重であったということは、特に記憶にはありません。米国が重要でその参加が大事だということは、皆さん一致しております。またよくコミュニケーションをして行こうということを言っております。アンブレラが連帯感を持って活動していくことが大事だという確認もなされました。確かに国によって差はあると思います。しかしその差が、非常に大きく出るような差であるかというとそういうようなことはないと思います。

(質問)いよいよあと2カ月ぐらいですけれども、今後は結局米国が結論を出すまでは、待つということでしょうか。

(大臣)5月、6月、7月という期間の中で、米国が何を考えているかはっきりしてもらわないと先には進めませんという雰囲気は、EUを含め、あると思います。ですから、それを待ちましょうですとか、できるだけ早く出してくださいということであると思います。それから、プロンク議長は、これから7月下旬までの間で、例えば、OECDの閣僚会議ですとか、ストックホルムの会議ですとか、いろいろな会議がありますからできるだけこれらの機会を利用して、、そういう場を利用して議論を進めてくださいというリクエストをしておりますので、さまざまな動きがありうると思います。それから注意すべきは、発展途上国の動きでして、ハーグの前に、発展途上国問題というのは非常に重要だと私は申し上げたのですが、今回の会議を通しても発展途上国は、彼らの立場からプロンクペーパーには不満であると言っています。発展途上国の立場が充分に反映されていないというのが彼らの言い分でして、発展途上国は発展途上国で集まって、議論をしています。発展途上国というのはもともとバラエティーがある集まりでして、片方で産油国、もう片方で自分の国が沈んでしまう島諸国もあります。G77アンド中国ということでまとまっている国々がどういうふうに動いていくかということが重要だと思います。EUとアンブレラの関係だけを見ていくのではなく、それだけでは話が終わらないということを充分注意していく必要があると思います。

(了)