記者会見大臣発言要旨 (平成13年4月3日)

 本日は、閣議の案件は少なく、環境省の関連はありませんでした。多少関係があるとすれば、「大深度地下の公共的使用に関する基本方針について」が閣議決定されまして、その中で環境保全についての項目があります。閣僚懇談会では、「特殊法人等の事業見直しについての論点整理」について橋本行革担当大臣からお話がありました。他には芸予地震についての政府現地調査についての話がありました。

 閣議が終わったあとで温暖化問題について、外務大臣、経済産業大臣、農林水産大臣、COP3の時の総理大臣だった橋本行革担当大臣と環境大臣の関係5大臣が集まりまして、温暖化問題についての対応を話し合いました。政府一体として米国に働きかけることと、各閣僚がそれぞれ自分のカウンターパート、経済産業大臣でしたら商務長官、農林水産大臣でしたら農務長官に働きかけることを確認しました。私は既に、何日か前に米国の環境保護長官に手紙を出しました。以上です。


(質 問)その話し合いの中では、米国の真意についてはどのような受け取り方をされましたでしょうか?
(大 臣)米国は今、温暖化対策の検討をしているということなので、皆さん、その検討の結果を見守りたいということでございました。その過程で、京都議定書が大事だということを米国に働きかけていこうということでした。

(質 問)10日にEUの方々がみえるようですが、EUと日本では立場が違うとはいえ、米国に対して何か協調するような方向にいくということはいかがですか?
(大 臣)EUと一緒に米国に働きかけようということになると思いますし、昨日もオランダの大臣(ベンスホップ外務担当大臣)と話をしましたが、やはり、一緒に米国に働きかけようということで合意しています。その働きかけをする時に、EUから直接に働きかける、あるいは日本を含むアンブレラの国から直接にということもありますが、それ以外に発展途上国も非常に関係があるので、それらの発展途上国の首脳にもお願いして、ハイレベルで働きかけることが大事であろうとお話をしましたし、そういうことになると思います。それから、EUの訪問の日程は9日ないし10日でまだはっきり決まっておりません。

(質 問)米国ぬきの批准の可能性についてEUに問われた場合、日本の立場としてはどんなふうに答えられますか。
(大 臣)今大事なのは、EUも日本も一緒に米国に働きかけていくことだと思います。先程言い忘れましたが、米国は京都議定書の枠外に出ると言っているわけではないんです。国際的なプロセスを通じて温暖化問題が大変重要な問題である、市場を通づるインセンティブですとか、技術開発ですとか、そういうことを通じて取り組んでいきたいと言っている訳です。それから、4月21日の地球温暖化非公式閣僚会合にも出席すると言っていますし、ボンでのCOP6の再開会合にも出席すると言っていますので、今、米国が枠外に出てしまっているとは、私は理解していません。それはEUも同じ理解です。ですから、EUと日本と他のアンブレラの国と一緒になって、米国に対しこれまでのプロセスを大事にして議論を進めていくように働きかけるということです。昨日もそういうお話をいたしました。

(質 問)先日、米国のラーセン国務次官が、在米の柳井大使に対して「国際的に新たな形の協力をしていきたい」とおっしゃっいましたが、議定書と違う新たなものを考えているということでしょうか。
(大 臣)その点について米国がふれたのはこれが初めてですが、米国は今温暖化対策のレビューをしているとのことですし、4月21日の地球温暖化非公式閣僚会合にも出席するとのことですから、そういう機会に米国の話をきいてみたいと思っています。市場のメカニズムを使うようなインセンティブというと、たとえば、排出量取引とか、京都メカニズムが京都議定書にあるわけですから、それ以外にどういうことをお考えになられるのか聞いてみないとわからないですね。

(質 問)閣議後の話し合いの中では、EUとの協調であるとか、途上国と協力などについて話合いになったのでしょうか。
(大 臣)いろいろな場で、たとえば、今、コスタリカの大統領がみえているようですが、外務大臣が働きかけるなど、それぞれの閣僚が自分でできるだけできるこことをめいっぱい働きかけて行こうと合意をしたわけです。それから、私もアンブレラの閣僚とは、電話で話をしていて、米国に対して働きかけるのが大事だということで一致しています。

(質 問)アンブレラの国々の中で米国に同調しようという動きはないでしょうか。
(大 臣)皆さん、米国に働きかけることが大事だとおっしゃっていますね。それから米国の政権が生まれたばかりの政権で、1月20日に発足して2ヶ月強ということですから、米国が今までの国際的なプロセスはなんであったかを理解し、それをベースに検討が進むためには少し時間を与えないといけないのではないかということで一致をしています。それから、新しい動きが出るまでは、今のプロセスを大事にしてやっていくということをおっしゃる閣僚の方もいらっしゃいました。

(質 問)先週末の段階では、米国の真意がわからないということだったんですが、それから少し事態があきらかになってきて、改めてアメリカが離脱を表明したことについて、米国の真意、戦略的なねらいについて大臣はどういうように考えておられますか。
(大 臣)まず、離脱をするかどうかはわからないということです。京都議定書を支持しないとは言っていますが、繰り返しになりますが、国際的なプロセスや京都議定書に盛り込まれている要素については言及をしています。米国が閣僚のレベルで議論を始めたということでして、第1回を先週やったということを聞いていますが、これからどういう話になっていくのかは、何分、過去の経緯についての勉強もこれからという状況でしょうから、そういう意味では、今の段階では、米国の真意についても明快ではないということだと思います。報道で聞いただけですが、米国政府も国際的な反響の大きさに「予想外である」と言っているとの話もありますし、これから、勉強していくということだと思います。その状況を見守っていきたいと思っていますし、その過程で米国に対して、過去の状況はこうであると話し、京都議定書は重要性についてお話をし、米国の議論の過程で日本が何かお手伝いできることがあればお手伝いもしたいと思っております。

(質 問)米国が京都議定書不支持ということを鮮明にしたことで、これまで、日本はアンブレラグループで米国と協調してやってきたのですが、不支持の国とこれからも同じように国際交渉をしていくことはできないと思いますがどうお考えですか。
(大 臣)不支持と言っても、その中味が何かということが今の段階ではよく判っていないわけです。米国に働きかけをしながら米国の検討の結果を待ちたいということです。先程も言いましたが、国連の会議にもボンの会議にも出てくると言ってますので、これはまさに京都の議論の継続になるわけです。

(質 問)大統領が発言しているわけですから、もっと、大臣として、信じられない、腹立たしいなどの強いお言葉はありませんか。
(大 臣)米国の政権のやり方は、それぞれの政権でいろいろやり方があるということは判っていますが、国際的な今までの積み上げがあって、温暖化防止が大事だという合意があり、京都議定書ができたわけですから、大統領が他のアンブレラの国に相談もなく、本当に突然不支持をいうということは、通常あまりあるやり方ではないだろうと思います。交渉をずっと重ねてきて、もっと速く合意しなければいけなかったプロセスがさらに遅れることになれば、遺憾以外にことばは無いですね。心の底から残念です。

(質 問)米国のレビューの結論はいつ頃になるとお考えですか。
(大 臣)米国側に聞いていますが、分かりません。米国自体も分かっていないのではないかと思います。閣僚しかいなく、中間のポリティカルに任命された人がほとんどいない状況ですから、早い時期に結論が出るとは思っていません。少し時間が掛かるかもしれません。

(質 問)5,6月まで掛かると言うことでしょうか。
(大 臣)4月に行われるCSD(国連持続可能な開発委員会)の際に開催される非公式閣僚会合に米国側も出てくるわけですが、その会合の場までに最終的な形の結論が出ることに対しては、楽観視していません。ただ、米国も会合に参加する以上、今現在何をしているのかについての説明がその折りに行われると考えています。

(質 問)米国への働きかけというのは、議定書を支持するように働きかけるということでよろしいですか。
(大 臣)議定書の支持についても働きかけていきますが、今、交渉している点は、議定書の運用ルールについてです。その議論の中に今までの積み重ねがあり、その積み重ねをベースにした議論に積極的に参加してもらえるよう働きかけていくということです。

(質 問)米国は、非公式閣僚会合に環境大臣が出席するのでしょうか。
(大 臣)まだ分かりません。

(質 問)大統領が出てくる可能性はあるのでしょうか。
(大 臣)大臣レベルの会合です。今までは国務省が出席していましたが、新政権の枠組において、どこの省庁がイニシアティブをとって国際会議に出席するのかを米国が今後決定していくと思われます。

(質 問)米国の京都議定書不支持に対しての各国大臣の見解が中心議題になっていくのでしょうか。
(大 臣)議題は、まだ出てきておりません。オランダのプロンク議長が召集している会議で、プロンクがどのように会議を進めていきたいかによると思います。COP6の再開会合でどう議論を進めるのかについても議題になるでしょうし、米国の真意についても議題になると思います。

(質 問)丁々発止な議論になるのでしょうか。
(大 臣)この会議は約40ヶ国程度の国の参加で過去数回行われています。各国、出席者の数を少なくしできるだけフランクな話し合いがもてるようにしているため、活発な議論が行われています。

(質 問)ホワイトハウス側が予想外の反響に驚いているという情報がありますが、このことは米国の狙いとして、アドバルーン的(観測気球的)に議定書不支持をほのめかすという見解も可能だと思うのですが。
(大 臣)分かりません。

(質 問)アンブレラ諸国の話の中で、米国は新政権が誕生したばかりで議定書に対して理解が進んでいないのではないかとの見方もあるとのことですが、米国側がもう少し時間をかけて、過去の積み重ねを認識していく中で、軌道修正を行うという希望的観測を持っておられますか。
(大 臣)もちろん、持っております。その件について考える上で、米国国内の議会がどのような反応をしていくかも見ていかなければなりません。1997年に、超党派で反対するという決議がありました。その点の構図は基本的には変わっていないと思います。民主党は反発しているという情報を聞いておりますし、共和党につきましても様々な意見が内部にはあるだろうと推測しています。このあたりの動きも重要なのではないかと考えています。

(質 問)反発というのは、ブッシュ新政権による今の施政についてということですか。
(大 臣)そうです。京都議定書は、ゴア副大統領が、京都においてイニシアティブをとりまとめた議定書です。直接民主党議員と話をしたわけではありませんが、前民主党政権は途上国の問題についても現共和党政権の意見とあまり変わらない見解だったわけですから、レビューをやり直すということについては残念に思っているのではないかと思います。

(了)