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平成15年度振動規制法施行状況調査について

平成16年12月21日(火)
環境省環境管理局大気生活環境室
 室長  瀬川 俊郎(内線6540)
 補佐  由衛 純一(内線6543)
 担当  齋藤,平野(内線6546)


 環境省は,全国の都道府県等の報告に基づき,平成15年度における振動苦情の状況及び振動規制法の施行状況を取りまとめた。その概要は次のとおりである。

(1)振動苦情の状況
 振動苦情の件数は,平成15年度は2,608件(前年度2,614件)で,前年度に比べ6件(約0.2%)減少した。
 苦情の主な発生源別内訳を見ると,建設作業が最も多く1,492件(全体の約57.2%),工場・事業場が672件(約25.8%),道路交通が293件(約11.2%)等であった。
 前年度と比較すると,建設作業に係る苦情が69件減少したが,工場・事業場に係る苦情が21件,道路交通に係る苦情が36件増加した。

(2)振動規制法の施行状況
 振動規制法に基づく規制地域を有する市区町村は,平成15年度末現在,全国の市区町村の約52.9%に当たる1,699市区町村(6市4町5村増加)であった。
 同法に基づき届出された規制対象の工場・事業場(特定工場等)の総数は平成15年度末現在で全国121,947件(前年度120,916件)となっている。特定工場等に対する法に基づく立入検査は163件(前年度129件)行われた。この他,行政指導が146件(前年度136件)行われた。
 また,同法に基づき届出された建設作業(特定建設作業)の総数は30,317件(前年度28,139件)となっている。特定建設作業に対して法に基づく立入検査は422件(前年度457件)行われた。この他,行政指導が455件(前年度495件)行われた。

1.目的

 環境省では,振動防止行政の一層の推進を図るため,毎年度,全国の都道府県,指定都市,中核市,特例市及び特別区を通じ,振動に係る苦情の状況,振動規制法に基づく各種措置の施行状況等について調査を行い,その結果を取りまとめている。

2.調査結果

(1)振動苦情の状況
① 平成15年度に全国の地方公共団体が受理した振動に係る苦情の件数は2,608件であった。これは,平成14年度(2,614件)と比べて6件,約0.2%の減少となる。(図1参照)


                    図1 振動苦情件数の推移

② 苦情件数を都道府県別に見ると,東京都の736件が最も多く,次いで神奈川県が332件,大阪府が260件となっている。振動苦情件数の上位5都府県における合計件数が全体の約67%に達するなど,大都市を有する地区における苦情が大きな割合を占めた。(表1参照)

③ 苦情件数を発生源別に見ると,建設作業が1,492件(約57.2%)で最も多く,次いで工場・事業場672件(約25.8%),道路交通293件(約11.2%),鉄道59件(約2.3%)の順となっている。(図2・図3参照)
 また,平成14年度と比較すると建設作業に係る苦情が69件減少したが,工場・事業場に係る苦情が21件,道路交通に係る苦情が36件増加した。

表1 都道府県別苦情件数(上位5都道府県)

苦情件数
人口100万対件数
 都道府県 件数 都道府県 件数





東京都
神奈川県
大阪府
愛知県
埼玉県
736
332
260
226
204





東京都
神奈川県
愛知県
大阪府
埼玉県
60.9
38.6
32.2
30.1
29.2
全国 2,608 全国平均 20.6
※人口は平成16年3月31日現在の住民基本台帳人口による

 
表2 苦情件数の都道府県別対前年度増減状況
都道府県名 H14 H15 増減 都道府県名 H14 H15 増減
北海道 76 58 △18 滋賀県 14 5 △9
青森県 22 22 0 京都府 32 32 0
岩手県 3 9 6 大阪府 270 260 △10
宮城県 14 15 1 兵庫県 112 63 △49
秋田県 11 8 △3 奈良県 9 12 3
山形県 7 8 1 和歌山県 7 8 1
福島県 4 17 13 鳥取県 4 4 0
茨城県 39 39 0 島根県 3 0 △3
栃木県 10 11 1 岡山県 37 36 △1
群馬県 22 23 1 広島県 33 26 △7
埼玉県 199 204 5 山口県 10 9 △1
千葉県 113 134 21 徳島県 6 5 △1
東京都 730 736 6 香川県 4 4 0
神奈川県 323 332 9 愛媛県 10 13 3
新潟県 39 46 7 高知県 2 1 △1
富山県 7 5 △2 福岡県 44 38 △6
石川県 13 9 △4 佐賀県 4 7 3
福井県 10 4 △6 長崎県 2 7 5
山梨県 4 4 0 熊本県 10 7 △3
長野県 15 20 5 大分県 17 11 △6
岐阜県 16 25 9 宮崎県 22 11 △11
静岡県 32 52 20 鹿児島県 15 13 △2
愛知県 205 226 21 沖縄県 5 9 4
三重県 28 20 △8 合計 2,614 2,608 △6
△は減を示す  


図2 振動に係る苦情の内訳


図3 過去3か年の苦情件数の発生源別内訳

④ 規制対象とそれ以外の苦情件数との比較
 工場・事業場に対する苦情総数672件のうち,法の規制対象となる指定地域内の特定工場等に対するものは,約28.3%の190件であった。また,建設作業に対する苦情総数1,492件のうち,同指定地域内の特定建設作業に対する苦情は約33.2%の496件となっている。(表3参照)

 
表3 規制対象・非対象別苦情件数
発生源
の種類
工場・事業場 建設作業 道路交通 鉄道


特定工場等 左記以外 特定建設作業 左記以外








年度 指定
地域内
指定
地域外
指定
地域内
指定
地域外
指定
地域内
指定
地域外
指定
地域内
指定
地域外
平成14年度 件数 162 14 433 42 651 543 3 982 33 1,561 22 235 257 11 34 45 100 2,614
6.2% 0.5% 16.6% 1.6% 24.9% 20.8% 0.1% 37.6% 1.3% 59.7% 0.8% 9.0% 9.8% 0.4% 1.3% 1.7% 3.8% 100.0%
平成15年度 件数 190 15 427 40 672 496 10 962 24 1,492 23 270 293 23 36 59 92 2,608
7.3% 0.6% 16.4% 1.5% 25.8% 19.0% 0.4% 36.9% 0.9% 57.2% 0.9% 10.4% 11.2% 0.9% 1.4% 2.3% 3.5% 100.0%

(2)地域指定の状況
 振動規制法に基づき地域指定が行われている市区町村数は平成15年度末現在1,699で,全国の市区町村数の約53.9%に相当する。(表4参照)
 

表4 地域指定の状況(平成15年度末現在)
 
全市区町村数 689 23 1,903 540 3,155
指定市区町村数 670 23 905 101 1,699
割合(%) 97.2% 100.0% 47.6% 18.7% 53.9%

表5 特定工場等数及び特定建設作業件数の最近の推移
  平成13年度 平成14年度 平成15年度
特定工場等総数 122,078 120,916 121,947
対前年度 646 △1,162 1,031
(増加率) 0.53% △0.95% 0.85%
特定建設作業件数 27,270 28,139 30,317
対前年度 312 869 2,178
(増加率) 1.16% 3.19% 7.74%
△は減を示す     

(3)規制の状況
 (3)-1工場・事業場に対する規制の状況

① 特定工場等及び特定施設の届出数
 振動規制法に基づき届出された特定工場等の総数は,平成15年度末現在121,947(平成14年度末現在120,916)で,前年度より1,031件増加している。(表5参照)
 また,特定施設の総数は878,308(同873,738)となっている。
 特定工場等の内訳を見ると,金属加工機械を設置しているものが約33.5%と最も多く,次いで,圧縮機を設置しているものが約28.0%,織機を設置しているものが約16.5%の順となっている。
 特定施設の内訳を見ると,織機が約33.2%,金属加工機械が約33.1%とそれぞれ全体の約3分の1を占め,次いで,圧縮機が約18.8%の順となっている。(表6参照)
 
表6 法に基づく届出件数(平成15年度末現在)

6-1 特定工場等総数

 

6-2 特定施設総数

設置特定施設 総数 (%) 特定施設 総数 (%)
金属加工機械
圧縮機
土石用破砕機等
織機
コンクリートブロックマシン等
木材加工機械
印刷機械
ロール機
合成樹脂用射出成形機
鋳型造型機
40,809
34,198
3,666
20,150
855
2,575
11,070
729
6,904
991
33.5%
28.0%
3.0%
16.5%
0.7%
2.1%
9.1%
0.6%
5.7%
0.8%
金属加工機械
圧縮機
土石用破砕機等
織機
コンクリートブロックマシン等
木材加工機械
印刷機械
ロール機
合成樹脂用射出成形機
鋳型造型機
290,783
164,838
19,064
291,204
3,004
4,587
37,750
3,854
57,116
6,108
33.1%
18.8%
2.2%
33.2%
0.3%
0.5%
4.3%
0.4%
6.5%
0.7%
121,947 100.0% 878,308 100.0%
注)特定工場等とは,特定施設を有し,法の規制対象となる工場・事業場をいう。

② 法に基づく措置等の状況
 指定地域内の特定工場等に係る苦情190件(平成14年度162件)に対して,平成15年度中に行われた振動規制法に基づく措置の件数は,報告の徴収38件(同29件),立入検査163件(同129件),振動の測定84件(同83件)であった。振動測定の結果,規制基準を超えていたものは21件(同22件)であった。なお,改善勧告,改善命令は行われていない(同1件,0件)。
 また,振動防止に関する行政指導が146件(同136件)行われた。(表7参照)

表7 指定地域内の特定工場等振動に係る措置等の状況

苦情

190





報告の徴収
立入検査
測定
 うち基準超
改善勧告
改善命令
38
163
84
21
0
0
行政指導 146

  (3)-2特定建設作業に対する規制の状況

① 特定建設作業の実施届出件数
 平成15年度中の特定建設作業実施届出件数は30,317件(平成14年度28,139件)であり,その内訳を見ると,ブレーカーを使用する作業21,933件(同20,043件),くい打機等を使用する作業が7,234件(同7,153件)の順となっており,これらが多くを占めている。(表5・表8参照)
 
表8 特定建設作業の届出件数
特定建設作業 届出件数
くい打機等を使用する作業
鋼球を使用して破壊する作業
舗装版破砕機を使用する作業
ブレーカーを使用する作業
7,234
150
1000
21,933
23.9%
0.5%
3.3%
72.3%

30,317 100.0%

② 法に基づく措置等の状況
 指定地域内の特定建設作業に対する苦情496件(平成14年度543件)に対して,平成15年度に行われた振動規制法に基づく措置の件数は,報告の徴収84件(同110件),立入検査422件(同457件),振動の測定108件(同123件)であった。振動測定の結果,基準を超えていたものは8件(同7件)であった。改善勧告及び改善命令は行われていない(同0件)。
 なお,振動防止に関する行政指導が455件(同495件)行われた。(表9参照)

表9 指定地域内の特定建設作業振動に係る苦情件数及び措置等の状況

苦情件数

496

行政措置等

くい打機等を使用する作業
鋼球を使用して破壊する作業
舗装版破砕機を使用する作業
ブレーカーを使用する作業
54
1
6
435
報告の徴収
立入検査
測定
 うち基準超
改善勧告
改善命令
84
422
108
8
0
0
行政指導 455

(4)道路交通振動に対する措置の状況
 指定地域内の道路交通振動の苦情282件(平成14年度240件)に対して,振動の測定は163件(同140件)行われており,要請限度を超えていたものは2件(同2件)であった。また,道路管理者に対する要請及び都道府県公安委員会に対する要請は行われていない(同0件)。
 なお,これらの振動規制法に基づく措置のほか,道路管理者に対する協力依頼等の措置が101件(同92件),都道府県公安委員会に対する同様の措置が2件(同10件)行われた。(表10参照)

表10 指定地域内の道路交通振動に係る措置等の状況

苦情

282




測定
  うち要請限度超
    道路管理者へ要請
    公安委員会へ要請
163
2
0
0
要請以外の道路管理者への措置依頼
要請以外の公安委員会への措置依頼
101
2

3.おわりに

 平成15年度の振動苦情件数は前年度に比べて微減であるにもかかわらず,工場・事業場に係る苦情が21件と大きく増加した。苦情が依然として都市圏に集中していることや,特定建設作業である「ブレーカーを使用する作業」の届出が増加していることを考えると,都市圏における解体・建設作業の増加が苦情増加の原因と推察される。今後,人口が密集している地域における建設作業のより一層の振動低減を誘導する施策の在り方について検討する必要がある。

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