報道発表資料

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1997年07月14日

ダイヤモンドグレース号油流出事故に関する緊急調査結果について (大気環境関係)

環境庁は、ダイヤモンドグレース号油流出事故に関し、流出原油による大気環境への影響を調査するために、平成9年7月2日(事故当日)に千葉県浦安市の2地点、船橋市の1地点及び神奈川県横浜市の2地点の計5地点において、大気中の炭化水素濃度の測定を行った。
 その結果、炭素数の多い直鎖脂肪族飽和炭化水素について高濃度の地点が見られた。
 また、芳香族炭化水素については、千葉県が船橋市(市役所)において事故直後に行った測定結果では、ベンゼンが相当高濃度を示したが、環境庁が近傍(海浜公園前)において約8時間後に行った測定結果では、ベンゼン濃度は約100分の1に低下していた。
 なお、測定地点近傍の一般環境大気測定局の非メタン炭化水素濃度(速報値)は一時的に高い値を示したが、夕方には通常のレベル近くまで低下していたことから、非メタン炭化水素の中に含まれる直鎖脂肪族飽和炭化水素の濃度も同様に低下したと考えられる。
 以上の結果及び流出原油の回収が完了していることから、今後大気汚染による健康影響が問題となることはないものと考えられる。

1.調査目的
 タンカー ダイヤモンドグレース号からの油流出事故に関し、流出原油中の炭化水素による大気汚染が懸念されたため、現地の大気の測定を行い、流出原油による大気環境への影響を把握する。

2.調査方法
 調査は、平成9年7月2日に行った。サンプリング地点は、千葉県浦安市の2地点、千葉県船橋市の1地点及び神奈川県横浜市の2地点の計5地点である。
 調査対象物質は、原油中に含有されることが知られている物質として直鎖脂肪族飽和炭化水素及び芳香族炭化水素を選定した。
 測定(サンプリング及び分析)方法は、以下のとおり。
・サンプリング方法 : 容器捕集法
・分析方法      : ガスクロマトグラフ/質量分析法

3.調査結果 (別紙1~2参照)
 (1)直鎖脂肪族飽和炭化水素 直鎖脂肪族飽和炭化水素のうち炭素数4から12までの9物質(n-ブタン、n-ペンタン、n-ヘキサン、n-ヘプタン、n-オクタン、n-ノナン、n-デカン、n-ウンデカン及びn-ドデカン)の測定を行った。その結果、9物質すべてが全地点で検出され、また浦安市の2測定地点においては、n-デカン、n-ウンデカン及びn-ドデカンが他の地点に比較して高い値を示した。
 検出されたもので最大の濃度を示したのは、浦安市浦安墓地公園前地点の n-ウンデカンで186μg/m3であった。

 (2)芳香族炭化水素
 ベンゼン、トルエン、キシレン類及びエチルベンゼンの測定を行った。その結果、これら4物質が全地点で検出された。
 ベンゼン濃度の最大値は、横浜市本牧観測局地点の2.5μg/m3であった。

(参考)
 測定地点近傍の一般環境大気測定局の非メタン炭化水素濃度の推移(千葉県、横浜市が測定)を検討したところ、2日正午時点において非メタン炭化水素濃度の上昇が見られたが、2日夕方には通常のレベル近くまで低下していた。

4.調査結果の評価
 上記結果のとおり、ダイヤモンドグレース号油流出事故による大気への影響として、流出原油の揮発成分によると思われる大気中炭化水素濃度が一時的に高い値を示した。千葉県が事故直後に行った船橋市(市役所)での測定結果と、比較が可能と思われる近傍の船橋市(海浜公園前)の測定結果の比較をベンゼンについて行ったところ、事故発生直後(11:45)の市役所での測定値は59μg/m3であったのに対して、約8時間後(19:47)の海浜公園前の測定値は0.63μg/m3であり、ベンゼン濃度は100分の1に低下していた。また、測定地点近傍の一般環境大気測定局の非メタン炭化水素濃度(速報値)については、事故発生直後に一時的に高い値を示したが、夕方には通常のレベル近くまで低下していた。
このことより、非メタン炭化水素の中に含まれる直鎖脂肪族飽和炭化水素の濃度も同様に低下したと考えられる。
 以上の結果及び流出原油の回収が完了していることから、今後大気汚染による健康影響が問題となることはないものと考えられる。

(語句説明)
「直鎖脂肪族飽和炭化水素」 - 炭素が直線上に結合した、炭素と水素からなる化合物。
「芳香族炭化水素」 - ベンゼン環を骨格に持つ炭素と水素からなる化合物。

連絡先
環境庁大気保全局大気規制課
課長 飯島 孝 (6530)
 担当 宮崎正信 (6537)