プロジェクト
Water Style

Japan Water Style ミーティング

イオン株式会社インタビュー

イオン株式会社 グループ環境・社会貢献部部長 金丸治子氏

「持続可能(サステナブル)な社会の実現」に向けて、お客様やお取引さまなど様々なステークホルダーへの説明責任や各種活動の推進に向けた双方向コミュニケーションを展開するイオン株式会社。今回は、グループ環境・社会貢献部部長 金丸治子氏に、イオン株式会社が考える水リスクやその取組などについてお話を伺いました。

流通最大手であられる御社において、事業活動と「水」との関わり方や考え方などについて、具体的な取り組みなどがございましたら併せてお聞かせください

弊社では、2020年に向けた「持続可能(サステナブル)な社会の実現」への取り組みとして、「イオンサステナビリティ基本方針」を定め、この中で「低炭素社会の実現」、「生物多様性の保全」、「資源の有効利用」、「社会的課題への対応」という4つの重点課題を定めて活動しておりますが、水環境については、全ての重点課題に関わるテーマとして捉えています。

インタビューのようす1 事業での関わりとしては、まず店舗として、節水対策などの水利用や、食品加工室や飲食店等での毎日の厨房グリストラップ清掃の義務づけなど、様々な排水対策があります。また、商品では弊社プライベートブランド「トップバリュ」をはじめ、商品の調達・製造に係る水の利用・使用があるかと思います。

具体的な取り組みでは、弊社は地球温暖化、自然破壊や資源の枯渇など地球環境のリスクに対して、2012年9月から従来の環境負荷の少ない店舗づくりに加えて、エネルギーの効率的な利用などに地域と協働で取り組む、次世代エコストア「スマートイオン」というショッピングセンターを展開しています。スマートイオンでは、スマートエネルギーや生物多様性など5つの基準を策定していますが、イオンモールなどの施設での取り組みとして、雨水を浸透・浄化することができる「雨の庭」の設置や敷地内の雨水を全て地中に浸透させる取り組み、緊急時の対応としての貯水などを行っています。

また、新しい店舗がオープンする際に、お客様とともに敷地内に植樹をする「イオンふるさとの森づくり」という活動を1991年からおこなっております。植樹活動は、弊社の理念を具現化する活動として大切にしている取り組みなのですが、この活動を通じて形成されていく森も地域の水循環を支える役割を果たしていくのではないかと考えています。

また、お客様との関わりでは、店舗を通じて様々な商品をご提供することで、お客様のライフサイクル、ライフシーンで「水」と関わっていると考えており、今後、ウォータープロジェクトの中で、弊社がお客様とともに様々な水との関わりや水への配慮を行っていくため、考え、行動していきたいと思っています。

御社の事業の今後の継続と、海外進出などの展開に向けた「水」に対する考えや課題などがおありでしたら教えてください

インタビューのようす2 今回、環境省が「Water Style」を展開するにあたって、節水など厳しい面ばかりに限らず、水を贈る、贈られるなど、豊かな水を積極的に生活に取り入れながら啓発していくという路線を取られましたが、確かに日本では今すぐに水不足など、水環境に危機が訪れるとはイメージしにくいと思います。

弊社では中国やASEAN(アセアン)などを中心に事業を展開しておりますが、特に中国ではエリアによって深刻な砂漠化や水質汚染などがあり、水不足が事業の存続そのものに影響を与える可能性があると考えています。そのため、気候変動等による水資源の確保や水リスクへの対応を、弊社は重要な課題と認識しております。こうした課題にどのように取り組んでいくかについては、検討しながら進めているところです。

先ほど、ご紹介した国内の店舗における取り組みや、緊急時に向けた貯水なども、海外での店舗づくりにおいても検討されており、国内同様に実施していく予定です。また、弊社のプライベートブランド「トップバリュ」において、企画・設計段階から製造委託先の選定、販売に至るまで、お客様の視点や環境に配慮した商品づくりに取り組んでいます。

さらに、「トップバリュ」に関わるサプライヤー様との関係として、2003年から、適切な商取引や環境への取り組みなどの社会的責任を果たしていく「イオンサプライヤー COC」に取り組んでおり、13の要求事項の遵守の要請、監査・改善活動の継続など、サプライヤー様とともに引き続き取り組んでまいりたいと考えています。

様々な商品を取り扱う御社にとって、資源調達、バリューチェーン、サプライヤー、そして、多くのお客様という多様なステークホルダーがいらっしゃいますが、今後、持続可能な水循環のために、御社が最も重要と考えておられるステークホルダーと、そのリレーションシップのお考えなどについて、お聞かせください

弊社としては、水循環に限らず、最も重要なステークホルダーは「お客様」です。これは、「お客様を原点に平和を追求し、人間を尊重し、地域社会に貢献する」という弊社の基本理念にも基づいておりまして、他の企業様と大きく違う点かもしれません。

インタビューのようす3 リレーションシップの考えですが、まず、お客様に対して信頼できる商品を提供していくことが重要だと考えております。また、「Water Style」に賛同しているメーカーの商品などを店頭で積極的に販売したり、この商品がメーカーのどのような取り組みや、どういったライフスタイルの提案に結びついた商品であるかをお客様に知っていただくために、積極的に紹介していくことも流通を担う弊社の役割として重要だと考えています。

事業活動以外でのリレーションシップとしては、社会活動などにおけるお客様との様々な活動がございます。例えば、先ほどご紹介した「イオンふるさとの森づくり」は、20年以上をかけて積み重ねてきまして、2013年には植樹した木の本数が1000万本を超え、参加いただいたお客様も100万人を超えました。また、1991年4月29日「みどりの日」から始めた「クリーン&グリーン」キャンペーンは、グループ企業の社会貢献活動を社員のボランティア活動に発展させたもので、河川敷や公園などの公共施設・公共用地の清掃などに取り組んでおり、現在は毎月11日の「イオン・デー」に合わせて全国の店舗で活動を継続しています。さらにお客様と地域活動とのリレーションシップとして、「イオン幸せの黄色いレシートキャンペーン」を2001年から実施しています。これは毎月11日「イオン・デー」に発行している黄色いレシートを受け取ったお客様が、地域のボランティア団体名が書かれた専用ボックスに投函していただくことで、レシート合計の1%の品物を弊社が各団体へ寄贈する取り組みです。2014年は1572店舗で実施し、約23600団体に2億9435万円相当の品物を寄贈しましたが、団体の中に水環境などの取り組みをされている団体もございました。

このように、多様な社会貢献活動を実施しておりますが、お客様とのリレーションシップという面のほかに、多様な商品を扱う流通業としての責任、さらにお客様を通じて様々な情報を発信し、お客様のご理解や参加を促す力を持つ企業として社会的責任は大きいと認識しておりますので、継続して取り組んでいくことが重要だと考えております。また、水環境への取り組みとしても、地球温暖化対策や生物多様性など、様々な分野と密接に結びついておりますので、こうした事業活動や社会貢献活動などと連携しながら、複合的に取り組んでいくこときたいと考えています。

お客様が大切なステークホルダーだということでしたが、お客様も含めた私たち国民一人ひとりもまた、水循環を支える重要なステークホルダーであり、水循環に対する知識や意識を持っていただく必要があると思いますが、御社では、お客様などに対して、どのような働きかけを重視されていますか?取組なども含めて聞かせください

インタビューのようす4 まず、今の日本の水環境は、お客様にとって、今そこにある危機感というものが感じにくい環境なのではないかと思います。こうしたお客様の意識や世論を喚起・醸成するためには、少し工夫した仕掛けが必要だと思います。例えば、富山和子さんの「川は生きている」という本があります。この本は川と社会の関係性をテーマに、わたしたちが川とどのようにつきあっていくかを考える内容でして、サンケイ児童文学賞を受賞した本なのですが、内容的には小学生にも読めるものです。この作品に限りませんが、こうした図書を対象にした読書感想文コンクールをウォータープロジェクトで開催するというのはいかがでしょうか?そうすることで、まず読書によって水環境や水循環に対する知識や認識が広がりますし、読書感想文を書くこと、コンクールに参加することによって、知らなかった人たちにも広く伝わっていくのでないでしょうか。

弊社では、小学1年生から中学3年生までの子どもたちが環境に関する様々な活動を行う「イオンチアーズクラブ」という活動を行っておりまして、現在全国で約430クラブ、7,300人ほどの子どもたちが参加しておりますので、ご協力していくことが出来ると思います。

また、「Water Style」賛同メーカーなどと連携して進める働きかけとして、賛同メーカーの対象商品をご購入されたお客様が、弊社の応募シートなどを活用してご応募する、親子などで参加する源流体験ツアーなどのキャンペーンを展開するのはいかがでしょうか?子どもたちを中心にご家族や親子で、水環境について知っていただいたり、関心を持っていただくきっかけ、そして企業間連携のきっかけとして面白いのではないかと思います。

最後に、プロジェクトに参加している企業の皆さんに向けて一言お願いします

インタビューのようす5 水循環や環境への取り組みは多くの課題を抱えているとともに、幅広い分野に及びますので、弊社だけの取り組みで全て出来るものではありません。こうした取り組みは、多くの賛同企業や自治体、地方公共団体などの皆様の協力を得ながら、大きな輪となって広げていくことが大切だと思います。弊社も、皆さまと一緒に積極的に参加していきたいと考えておりますし、弊社ショッピングセンターや店舗などをご活用していただくことも大切なことだと考えております。

是非、一緒に情報共有などをしていきながら、ウォータープロジェクトの取り組みを前に進めていけるよう取り組んでいきましょう。

<企業インタビュー>

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