水・土壌・地盤・海洋環境の保全

導入事例 横浜市役所

横浜市役所全景

8代目市庁舎は災害対応と環境性に重点
市民が憩うアトリウムの空調の熱源に地中熱を導入

横浜市建築局 公共建築部施設整備課
新市庁舎整備担当

【導入概要】

場  所:神奈川県横浜市中区
用  途:横浜市庁舎1階アトリウムの空調等
供用開始:令和2年6月

【導入効果】

■成績係数(COP)

成績係数

※成績係数(COP: Coefficient Of Performance):エネルギー消費効率を表す指標
※従来式システム(COP3.5として算出)との比較
※アトリウムに導入した地中熱利用と排熱活用を合わせた効果

「我慢」が実現していた旧庁舎での省エネ

横浜市は平成24年に環境未来都市、平成30年にはSDGs未来都市や温暖化対策実行計画 Zero Carbon Yokohamaを掲げ、環境に取り組んできました。一方で、1959年から60年間使ってきた旧庁舎自体の空調は、いわば"我慢の空調"で、設備を動かさないという努力によって省エネをしてきました。17時15分になると真夏でもエアコンが切れ、職員は皆一斉に窓を開けて仕事をしていました。
平成25年に策定した「新市庁舎整備基本構想」では、環境に最大限配慮することが基本理念に盛り込まれました。設計・施工の事業者選定は高度技術提案型総合評価落札方式で実施しましたが、技術提案を頂くにあたり、環境に対する要求水準を高く、また評価項目でも耐震に次ぐ二番目の配点を科して、環境に重きを置くという市の意思を示しました。環境性能が優れる技術提案を多岐にわたって頂いたと思っています。

環境コンセプト

新市庁舎の環境コンセプト 地中熱をはじめさまざまな技術を組み合わせる

地中熱は「導入しやすい技術」

新市庁舎は、町をつなぐ結節点というコンセプトがあり、パブリックビューイングやイベントができ、賑わいをつくるスペースとして1階にアトリウムを作りました。その空調の熱源に地中熱を活用しています。もともと地中熱の導入は初めてではなく、区役所で導入を進めていました。泉区で効果を検証し、その経験をもとに南区と金沢区にも導入しています。港南区は地下鉄の湧水を熱源として活用し、各区役所で自然エネルギーを活用してきました。省エネにはさまざまな方法がありますが、地中熱は工事の際に採熱管を地中に埋めてしまえば基本的にはメンテナンスフリーです。

床吹き出し空調アトリウムにある地中熱を熱源とする床吹出空調。その他床輻射冷暖房にも活用し、床の下には冷温水が流れる管が埋まっている。3月でも床を触るとほんのり温かい

採熱管
撮影日は3月。地中から18℃の熱を採熱し、暖房に活用したのち15℃になって地中に戻っていることが分かる

熱源を空気から地中の水に変えるだけなので、関係方面の調整事も多くはありません。複雑化するシステムでもないため、導入後の管理を考えても、導入しやすい技術だと感じています。しかし、完成後は埋まっている設備は見えないのでPRの点では地中熱の難しいところです。今後、いろいろな機会をとらえて発信していきたいと考えています。

展示スペース

市庁舎内の展示スペースでは竣工1年を記念した
新市庁舎展を行い、市民にPR

脱炭素社会に向けて、"環境のショーケース"で技術発信に

その他にも執務室に輻射空調を採用するほか、自然換気のためのパネルを設置しました。外気の条件が整ったら、各執務室にある「自然換気ランプ」を光らすとともに音も鳴らして、職員にパネルを開けることを促し
ます。空調の運転を抑えて省エネをするのです。職員のみなさんの協力に支えられ高い稼働となっています。

自然換気専用パネル

自然換気専用のパネルで、
超高層の建物にも関わらず
外の風を感じることができる

さまざまな技術を組み合わせ、快適でありながら省エネができることをコンセプトに進めてきました。計画値では52%の削減ができ、ZEB ready※1を達成しています。
我慢をすればいくらでも省エネにはなるのですが、それは業務効率の低下につながります。市民の財産として庁舎を整備させていただいているため、業務の効率化につなげ、市民サービスに還元されることを期待しています。環境に取組む横浜市の新市庁舎として「環境技術のショーケース」とすべく整備をしてきました。まさにできることを全て組み合わせたからこそ、ここまで省エネが実現できたのだと思います。脱炭素社会に向けて、この市庁舎が一つの技術発信になればと思っています。

※1 ZEB(※2)を見据えた先進建築物として、外皮の高断熱化及び高効率な省エネルギー設備を備えた建築物
※2 年間の一次エネルギー消費量が正味ゼロまたはマイナスの建築物