環境省水・土壌・地盤環境の保全地下水・地盤対策関係

地中熱利用にあたってのガイドライン改訂版(平成30年3月)


1.経緯

 地中熱は、再生可能エネルギーの中でも、天候や地域に左右されず安定している、大気中へ排熱を出さない、省エネルギーでCO2の排出量を削減できるなどのメリットを有し、ヒートアイランド現象の緩和や地球温暖化対策への効果が期待されています。

 このため、環境省では、平成27年4月に「地中熱利用にあたってのガイドライン 改訂版」を公表し、地中熱利用の認知度向上と普及促進を図っています。

 今般、地下水・地盤環境の保全に留意しつつ、地中熱利用の一層の普及・拡大を図るため、地中熱利用に伴う地盤への熱影響や地下微生物への影響について新たに得られた知見を追加しました。また、環境省の補助事業等を通じて得られた地中熱ヒートポンプの稼働状況のモニタリングデータ等から、地中熱利用による環境負荷の低減効果を示すとともに、様々な場所・用途での地中熱利用の稼働事例を拡充し、改訂増補版として取りまとめました。

2.主な改訂内容

(1)地盤への熱影響

 地中熱ヒートポンプを設置した場所でのモニタリングデータの分析結果から、通常の稼働状況では問題になることはほとんどないものの、過剰な採熱を行うと地中熱ヒートポンプの効率が低下する場合があるため、利用する熱負荷を適切に想定した設備を施設導入時に設計すること、計画の想定を上回るような稼働をしないようにすること等の留意事項を示しました。

 また、長期稼働による地盤への熱影響をシミュレーションモデルによって解析した結果、戸建住宅で通常利用される小規模な地中熱設備では、地盤環境への熱影響は非常に小さく地中熱交換井周辺に限られ、長期的な温度変化は僅かであり、地盤環境の影響に関するモニタリング設備は必ずしも必要ではないと評価されました。

(2)地下微生物への影響

 屋外の実証フィールドにおいて地中熱利用の試験を行い、地中熱を交換するために地中に設置したパイプの周辺土壌を採取し、土壌中に存在する微生物群の変化を解析しました。この結果、地中熱利用箇所と非加熱箇所(バックグラウンドエリア)とで地下微生物群の構成に有意な違いは見られず、実証試験においては、地中熱利用による地下微生物への影響は確認されませんでした。

3.今後の予定

 地中熱ヒートポンプシステムは、省エネルギー性に優れること、CO2排出量の削減効果が大きいことなどから、環境負荷の低減を図る上で非常に有用な技術と言えます。

 

 本ガイドライン改訂増補版を通じて、地中熱利用の認知度向上を図るとともに、地下水・地盤環境の保全に留意しつつ、地中熱利用の普及に努めることとします。

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