熊本県 熊本平野


1.概 要

(1) 地盤沈下等の概要
熊本平野は、阿蘇山西麓にひろがる広大な火山性台地の末端にあり、古くから良質な地下水の豊富な地域として知られ、随所に自噴帯が見られていたが、近年の地下水採取量の増大等により自噴帯の後退、地下水位の低下、地盤沈下等が生じている。このうち地盤沈下は国土地理院が昭和44年度、国道3号沿いに実施した一等水準測量により認められ、その後、建設省九州地方建設局が、昭和49年度から平成8年度にかけて熊本平野(白川下流域)で実施した一級水準測量によれば22年間に最大30.82pの沈下が認められた。
熊本市では、昭和51年3月に全国初の「地下水保全都市宣言」を行うとともに、昭和52年9月1日熊本市地下水保全条例を制定公布して、地下水の保全対策を推進するとともに、昭和53年12月20日県でも広域的地下水管理の必要性から熊本県地下水条例(平成2年10月2日「熊本県地下水の採取に関する条例」に題名改正。以下同じ)を制定・公布している。
(2) 地形、地質の概要
熊本平野は阿蘇火山の西麓にあたり、洪積層(砂礫層)中に阿蘇火山の噴火岩類(火山角礫岩、一部で熔岩)の分布が知られている。山麓から市街地にかけては表層部に厚い礫層が分布し、市街地より海側の沖積平野には30〜40mの軟弱な沖積層(有明粘土層)が分布している。
地下水(被圧)は、市内の地下では火山噴出岩瀬(砥川熔岩)中に大量に賦存し、利用されている。

2.地下水採取の状況

熊本市の地下水採取量は、熊本市地下水保全条例に基づく報告によると、平成8年度は約129.0百万立方メートル/年で、そのうち上水道用が約89.7百万立方メートル/年で全体の69.5%、工業・建築物用が約22.6百万立方メートル/年で同17.5%、農業水産用が約16.6百万立方メートル/年で同12.9%を占めている。(地区別、用途別、井戸本数及び地下水揚水量経年変化)

地区別、用途別、井戸本数及び地下水揚水量経年変化
地下水揚水量等の調査の内容
工業用、上水道用地下水利用量
規制地域内地下水揚水量
特定用途の地下水揚水量経年変化

3.地盤沈下等の状況

建設省九州地方建設局が昭和49年度から熊本平野(白川下流域測量延長67.6q、47地点)で実施した1級水準測量によれば、22年間の累積沈下量は最大30.82pであり、一方、平成8年度の最大沈下は、建設省九州地方建設局が実施した地点において2.04pが認められた。(主な水準点の経年沈下量)

主な水準点の経年沈下量
沈下地域面積及び沈下体積の経年変化
代表的な観測井における地下水位の経年変化

熊本平野地域地盤沈下地域等の範囲及び位置図
熊本平野地域地盤沈下累積等量線図(H53〜H8)
熊本平野地域地盤沈下累積等量線図(S63〜H8)
熊本平野地域地盤沈下地域等量線図(H7〜H8)

4.被 害

局地的ではあるが井戸・橋梁の抜け上がり等が生じており、また、海岸部では地下水の塩水化が生じている。
地盤沈下による被害の状況
被害状況写真 熊本市

5.対 策

(1) 監視測定
水準測量は、昭和49年度以降建設省によって行われ、県でも昭和53年度(17.4ku、22.5q、18地点)から、熊本市でも昭和54年度(4.5ku、15.5q、9地点)からそれぞれ水準測量を実施している。昭和63年度から熊本県熊本市合同で実施(28.9ku、65.1q、48地点)していたが、平成5年度からは熊本県は、熊本市に隣接する宇土市及び富合町のみで水準測量を実施(8.3ku、37.2q、18地点)している。また、地下水位観測は建設省、農林水産省、熊本県及び熊本市により90ヶ所132井で実施している。さらに、県では地盤沈下の機構解明のために簡易地盤沈下計を昭和61年度から計7ヶ所(10井)設置している。
地下水塩水化については、県で海岸部の既設井戸について昭和50年度から昭和62年度まで調査を行っている。(地盤沈下監視体制の整備)
水準測量
観測井による地下水位、沈下量の観測
(2) 地下水の採取規制
昭和52年9月1日に熊本市地下水保全条例が公布施行され、地下水採取の届出及び採取状況の報告がなされるとともに、県でも昭和53年12月20日に熊本県地下水の採取に関する条例を制定公布した。(規制の種類 規制の経緯 規制の内容)

規制の種類
規制の経緯
規制の内容
地下水利用の合理化等施策
地盤沈下対策の組織
地盤環境に係る情報開示の状況



関 連 デ ー タ

地下水の利用状況

【表】地区別、用途別、井戸本数及び地下水揚水量経年変化
地域名 用 途 平 成 4 年 平 成 5 年 平 成 6 年
井戸本数 揚 水 量 井戸本数 揚 水 量 井戸本数 揚 水 量
熊本市 千立方
メートル/日
百万立方
メートル/年
千立方
メートル/日
百万立方
メートル/年
千立方
メートル/日
百万立方
メートル/年
工業・建築・家庭・
その他用
1,202 73.5 26.8 1,190 70.0 25.6 1,271 70.0 25.5
上水道用 95 243.0 88.6 94 242.7 88.6 94 244.9 89.5
農業・水産養殖用 1,564 71.4 26.0 1,560 66.7 24.3 1,555 68.9 25.2
合 計 2,861 387.9 141.5 2,844 379.4 138.5 2,920 383.8 140.1
(備考) 各調査記号
地域名 用 途 平 成 7 年 平 成 8 年
井戸本数 揚 水 量 井戸本数 揚 水 量
熊本市 千立方
メートル/日
百万立方
メートル/年
千立方
メートル/日
百万立方
メートル/年
工業・建築・家庭・
その他用
1,266 65.9 24.1 1,266 62.0 22.6
上水道用 94 241.5 88.4 86 245.9 89.7
農業・水産養殖用 1,530 61.9 22.7 1,445 45.5 16.6
合 計 2,890 369.3 135.2 2,797 353.3 129.0
(備考) 各調査記号
(備考)各調査名;イ.熊本市地下水保全条例に基づく地下水採取量(推定値)

【表】地下水揚水量等の調査の内容
記号 調査名及び実施機関 地区 対象井戸 用途の定義 調査の方法
熊本市
地下水保全条例
(熊本市環境保全局
環境保全部
地下水保全課)
熊本市
全域
地下水を採取
する設備であ
ってポンプの
吐出口の断面
積が6cu以
上のもの.た
だし自噴井に
ついては、断
面積が19cu
以上のもの 
a.農業用;水田灌漑用、畑地灌漑用、畜産用等 条例に基づく
届出の集計 
b.水産養殖用;水産養殖業の用に供するもの
c.工業用;ボイラー用、原料用、製品処理及び
 洗浄用、冷却水、温調用等        
d.建築物用;冷暖房用、水洗トイレ用、洗車用
 公衆浴場用、プール用、飲用雑用等     
e.水道用;水道用水供給事業に係わるもの 
f.家庭用                
g.その他                

【表】工業用、上水道用地下水利用量 単位:千立方メートル/日
用 途 対象地域 昭和
57
58 59 60 61 62 63 平成
工 業 用 熊本市 36.9 38.2 45.8 41.0 40.0 40.4 39.4 37.0 37.1 33.3 34.7 33.5 35.0 32.9 31.5
上水道用 熊本市 209.3 220.7 223.0 222.5 224.6 225.4 231.2 227.4 241.3 239.9 239.9 242.7 244.9 241.5 245.9

【表】規制地域内地下水揚水量
(熊本市地下水保全条例関係)
規制地域 地域区分 面積(ku) 平成8年
井戸本数・揚水量
規制当初の目標年における
転換及び削減量と率(%)
昭和62年の
削減実績量と率(%)
熊本市 全域地区 226.25 2,797本
128,967千立方メートル/日

(熊本県地下水条例関係)
規制地域 地域区分 面積(ku) 平成8年
井戸本数・揚水量
規制当初の目標年における
転換及び削減量と率(%)
昭和62年の
削減実績量と率(%)
熊本市 熊 本 市 226.25 2,642本
110,237千立方メートル/日

【表】特定用途の地下水揚水量経年変化
(温泉水の採取状況) 単位:千立方メートル/日
年 次 熊本平野地区  摘 要 
井戸本数 揚水量
平成8年度 23 6.19 (注)熊本市全域
(備考)1.地区区分説明;熊本市内(8温泉地分)
    2.数値の根拠(調査名);熊本県衛生部調査

地盤沈下等の状況

地盤沈下の状況
【表】主な水準点の経年沈下量 単位:p(▲は隆起)
地 区 名 熊本平野地区
水準点の種類 累計最大沈下 年間最大沈下 最近5年間の
累計最大沈下
そ の 他
水準点番号 熊本県BM 距離標1K 同 左 熊本県BM-8
水準点所在地 熊本市
沖新町字2
熊本市
沖新町甲北
同 左 熊本市
奥古閑町
所轄機関 熊 本 県 建 設 省 同 左 熊 本 市
観測開始年月 S49年12月 S57年12月 同 左 S53年12月
観測開始
〜S61
22.30 2.05 同左 17.52
62 0.98 0.65 0.85
63 0.91 0.51 1.07
H元 0.38 0.16 0.89
2.25 0.74 1.15
1.10 0.22 1.44
0.25 0.86 0.57
1.13 0.82 0.37
0.59 2.21 1.27
0.74 1.78 0.16
0.19 2.04 0.77
累 計 量 30.82 12.04 26.06
(備考)1.仮不動点の水準点番号及び所在地;
    2.測量の基準日;12月31日

【表】沈下地域面積及び沈下体積の経年変化
 (過去〜現在までに累積1p以上の沈下が認められた地域の面積は59ku)
地 区 名 年度
沈下量
平成8年度
沈下面積
人口
(昭和60年現在)
熊本平野地区   ku 72 千人
(熊本市)
1p以上 1
沈下体積 1.5万立方メートル

地下水位の状況
【表】代表的な観測井における地下水位の経年変化 単位:m
地区名 熊本平野地区
観測井名称 天明1号 天明2号 天明3号
観測井所在地 熊 本 市 同 左 同 左
観測井標高(T.P.m) 2.26 同 左 同 左
ストレーナー位置
(管頭下深さ)
90〜105 50〜60 5〜10
所轄機関 九州地方建設局 同 左 同 左
地下水の類別
年次
被圧地下水 同 左 自由地下水
(設 置) S51 S51 S51
(既往最低水位) S53 -0.27 S53 -0.70 S55 1.00
S62 0.64 0.34 1.09
63 0.52 0.23 1.03
H元 0.45 0.18 1.06
0.41 0.12 1.06
0.52 0.24 1.06
0.45 0.20 1.07
0.64 0.42 0.99
0.44 0.14 0.91
0.60 0.34 0.94
0.69 0.40 0.94
(備考)地下水位の定義;水位は24時間毎時測定の値の平均値、水位はT.P.(東京湾中等潮位)

被 害

【表】地盤沈下による被害の状況
直接被害 間接被害 地下水の
塩水化
(参考)
被害額
百万円
一般施設 公共施設 洪水、高
潮の危険
性大
排水不良
建築物の
破損また
は脆弱化
井戸等の
抜け上り
港湾、海
岸施設の
沈下
護岸、堤
防等の沈
道路、橋
梁等の沈
下、破損
農業用水
路の沈下
破損
埋設物の
破損





種 別 不 明
被害の
具体的
内 容
沿岸部に
みられる
が被害戸
数は不明
沿岸部に
みられる
が抜け上
り本数は
不明  
一部で道
路の沈下
及び橋梁
基礎にク
ラックあ
り   
沿岸部の
一部に塩
素イオン
濃度の高
い井戸が
みられる
(備考)●;対策済であり、現在はほとんど問題がないもの
    ○;一部対策が施されているものを含めて、現在なお被害が認められるもの

対 策

地盤沈下監視体制の整備
【表】水準測量
年度 平成9年度 将来計画
(平成10年度)
対象面積(ku) 84
実施機関 九州地方建設局 同 左
熊本県
熊本市
測量延長(q) 81.7 81.7
37.2 37.2
49.9 45.7
水準点数(点) 55 55
18 18
40 33
基準日 平成9年12月31日 平成10年12月31日

【表】観測井による地下水位、沈下量の観測
年度
実施機関
平成9年度 将来計画
(平成10年度)
ヶ所 ヶ所
熊本県 10 13( 3) 10 13( 3)
九州地方建設局 15 25( 25) 15 25( 25)
九州農政局 6 6( 2) 6 6( 2)
熊本市 59 88( 84) 58 87( 83)
90 132(114) 89 131(113)
(備考)内書( )は水位計のみ

地下水採取規制の状況
【表】規制の種類
種 類 名 称
条 例 熊本県地下水の採取に関する条例
熊本市地下水保全条例     

【表】規制の経緯
年 月 日 規制の内容 効 果
S52. 9. 1 熊本市地下水保全条例公布施行   既設、新設井戸等の届出
地下水採取量の報告
S53. 4. 1 熊本市地下水保全条例施行規制施行
S54. 8. 1 熊本市地下水保全条例一部改正  
H 3.10. 1 熊本市地下水保全条例一部改正  
年 月 日 規制の内容  効 果 
S53. 2.20 熊本県地下水条例公布              同 上
S54. 3.20 熊本県地下水条例施行規則公布         
S54. 3.23 熊本県地下水条例及び施行規則施行       
S54. 8. 9 熊本県地下水条例の地域の指定         
H 2.10. 2 熊本県地下水条例一部改正(題名改正)      
H 3. 3.31 熊本県地下水条例の地域の指定改正(指定地域追加)
H 3. 4. 1 熊本県地下水条例施行             

【表】規制の内容
名 称 熊本市地下水保全条例(S52.9.1公布 S53.4.1施行) 熊本県地下水の採取に関する条例
(S53.12.20公布 S54.3.23施行)
経 過
規制地域 熊本市全域 1.熊本周辺地域(21市町村)
2.八代地域(7市町)   
3.玉名有明地域(8市町) 
4.天草地域(2市町)   



適用業種 全 用 途 全 用 途
届出基準 揚水機吐出口の断面積が6cu以上
(自噴井については19cu以上)
揚水機吐出口の断面積が6cu以上(自噴井を除く)
許可基準等
既設の 
経過措置
その他 毎年1回揚水量の報告、事前協議、再生利用設備の設
置義務、地下水利用管理者の選任         
毎年1回揚水量の報告

地下水使用の合理化
【表】地下水利用の合理化等施策
対象用途 当初使用量 計画(実施)期間 削減目標 合理化・削減推進の方法
削減割合 削 減 量
千立方
メートル/日
千立方
メートル/日
工業用 84.4 S63〜H9 約17 8.4 熊本地域の工業用水使用合理化指導事業(一次、二次)

地盤沈下対策の組織
【表】地盤沈下対策の組織
組織の名称 構成委員・団体名 設置の目的等 事務局
熊本平野   
地盤沈下検討会
学識経験者     
建設省九州地方建設局
農林水産省九州農政局
熊本県、熊本市   
熊本平野で各々の機関が行っている
地盤沈下に係る調査結果を合理的に
活用することにより地盤沈下の原因
究明やその対策の検討を行う   
熊本県環境保全課

その他

地盤環境に係る情報の整備
【表】地盤環境に係る情報開示の状況
情報の種類(データ項目) 開示の可否 開示に必要な手続き 備考
地下水位 県環境白書により公表
地盤沈下量
地下水質
地下水揚水量 一部可 個別の揚水量は不可
地形・地質 調査結果を冊子にとりまとめて公表

地下水採取規制に関する条例 熊本県へ

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