(1)COD総量規制の推進

  1. 水質総量規制制度は、人口、産業等が集中し、汚濁の著しい広域的な閉鎖性海域について、水質環境基準を確保することを目的として、当該海域への汚濁負荷量を全体的に削減しようとする制度であり、昭和53年に「水質汚濁防止法」及び「瀬戸内海環境保全臨時措置法」を改正し導入された。

  2. これに基づき、東京湾、伊勢湾及び瀬戸内海の3水域を対象に、化学的酸素要求量(COD)について、昭和54年以来4次にわたり、生活排水、産業排水などすべての汚濁発生源について削減対策を総合的に講じてきており、これまで着実にCODの削減を図ってきた。

(2)富栄養化防止対策の実施

 閉鎖性海域は、赤潮の発生など富栄養化に伴う問題も生じており、平成5年から、窒素・燐の環境基準を設定し、各水域の環境基準の類型指定を図るとともに、窒素・燐についての排水規制を実施するなど着実に対策を講じてきているところである。

(3)窒素・燐を含めた総量規制の実施

  1. このように種々の対策を講じているものの、閉鎖性海域の水質汚濁の現状を見ると、依然としてCODの環境基準の達成率は満足できる状況になく、また、赤潮、貧酸素水塊といった富栄養化に伴う障害が発生している。

  2. このような状況において、平成11年1月19日、瀬戸内海環境保全審議会より、「人間活動に起因する負荷の低減を図るため、今後もCOD汚濁発生負荷量の削減を進めるとともに、CODの内部生産や赤潮の原因となるプランクトンの増殖に影響を与える窒素、燐の負荷量削減を総合的に進めることが重要であり、そのための枠組みについて早急に検討し、対応することが必要である。」と答申された。また、平成12年2月8日、中央環境審議会より東京湾等の閉鎖性海域の水質改善のため、COD汚濁負荷量の削減と併せ、窒素及び燐の負荷量削減を総合的に進めることとする「第五次水質総量規制の在り方について」答申がなされた。

  3. これらを踏まえ、平成16年度を目標年度とする第5次総量規制においては、CODの一層の削減を図るとともに、新たに窒素及び燐を対象とした総合的な汚濁負荷削減対策を推進しているところである。(第5次の総量削減基本方針を平成13年12月に策定。またこれに基づき、関係都府県において、総量削減計画を平成14年7月に策定。)

  4. また関係地方公共団体にあっては、第5次総量規制の実施に伴いCODのみならず窒素・燐も含めて「発生負荷量管理等調査」及び「広域総合水質調査」を引き続き実施していくこととしている。

  5. 更に「第6次水質総量規制の在り方について」平成17年5月16日に答甲がなされ、窒素・燐については、大阪湾において引き続き削減が必要であるが、それ以外の瀬戸内海では現在の水質を維持することが適切とされた。

瀬戸内海の総合的水質保全対策の進展状況
COD対策
富栄養化対策
 
1973年
10月
瀬戸内海環境保全臨時措置法の成立
(産業排水に係るCOD汚濁負荷量を3か年で72年当時の1/2に削減する目標)


80年3月
第一次COD総量規制
(基準年度79、目標年度84


87年4月
第二次COD総量規制
(基準年度84、目標年度89) 


91年3月
第三次COD総量規制
(基準年度89、目標年度94)
 

 




95年8月
「第四次総量規制に当たっての基本的考え方について」 (中央環境審議会水質部会総量規制専門委員会報告)



96年9月
第四次COD総量規制
(基準年度94、目標年度99) 
 





19
79年

第一次燐削減指導方針の策定指示
(基準年度79、目標年度84) 

 
85年12月
第二次燐削減指導方針の策定指示
(基準年度84、目標年度89) 


90年12月
第三次燐削減指導方針の策定指示
(基準年度89、目標年度94) 
 

93年

海域の窒素・燐の環境基準の設定「海域の富栄養化対策の総合的推進について」(関係省庁決定)

93年10月
海域の窒素・燐の環境基準の設定「海域の富栄養化対策の総合的推進について」(関係省庁決定)




96年

第四次窒素・燐削減指導方針の策定指示
(基準年度94、目標年度99) 


20
00年2月 「第五次水質総量規制の在り方について」(中央環境審議会答申)
20
02年7月 第五次COD、窒素、燐総量規制(基準年度99、目標年度04)
20
05年5月 「第六次水質総量規制の在り方について」(中央環境審議会答申)
20
06年11月 第六次COD、窒素、燐総量規制(基準年度04、目標年度09)

 


総量規制制度の仕組

総量規制制度の仕組


富栄養化と有機汚濁

富栄養化と有機汚濁


窒素・燐排水規制実施状況図

窒素・燐排水規制実施状況図

窒素・燐排水基準に係る海域
番号 県名 海域名 番号 県名 海域名 番号 県名 海域名
1 北海道 函館湾 31 新潟 加茂湖 61 佐賀+長崎 伊万里湾
2 北海道 噴火湾 32 新潟 真野湾 62 佐賀 仮屋湾
3 北海道 能取湖 33 石川 七尾湾 63 長崎 長崎湾
4 北海道 コムケ湖 34 福井 敦賀湾 64 長崎 大村湾
5 北海道 風蓮湖 35 福井 矢代湾 65 長崎 佐世保湾
6 北海道 サロマ湖 36 福井 世久見湾 66 長崎 橘湾
7 北海道 厚岸湾 37 福井 小浜湾 67 長崎 志々伎湾
8 北海道 厚岸湖 38 福井 内浦湾 68 長崎 郷ノ浦
9 北海道 野付湾 39 静岡 浜名湖 69 長崎 半城湾
10 青森 陸奥湾 40 愛知 等 伊勢湾 70 長崎 内海
11 岩手 宮古湾 41 三重 尾鷲湾 71 長崎 三浦湾
12 岩手 大船渡湾 42 三重 賀田湾 72 長崎 浅茅湾
13 岩手+宮城 広田湾 43 三重 新鹿湾 73 熊本+鹿児島 八代海
14 岩手 釜石湾 44 三重 五ケ所湾 74 熊本 羊角湾
15 岩手 大槌湾 45 三重 神前湾 75 大分 入津
16 岩手 越喜来湾 46 三重 贄湾 76 宮崎 尾末湾
17 岩手 船越湾 47 三重 英虞湾 77 鹿児島 鹿児島湾
18 岩手 山田湾 48 京都 舞鶴湾 78 鹿児島 名瀬湾
19 宮城 万石浦 49 京都 阿蘇海及び宮津湾 79 鹿児島 中甑湾
20 宮城 松島湾 50 京都 久美浜湾 80 鹿児島 焼内湾
21 宮城 気仙沼湾 51 大阪 等 瀬戸内海 81 鹿児島 久慈湾及び篠川湾
22 宮城 雄勝湾 52 和歌山 田辺湾 82 鹿児島 薩川湾
23 宮城 女川湾 53 山口 仙崎湾 83 鹿児島 諸鈍湾
24 宮城 鮫ノ浦湾 54 山口 深川湾 84 鹿児島 三浦湾
25 宮城 志津川湾 55 山口 油谷湾 85 鹿児島 笠利湾
26 福島 小名浜湾 56 高知 浦戸湾 86 沖縄 金武湾
27 福島 松川浦 57 高知 浦ノ内湾 87 沖縄 与那覇湾
28 茨城 鹿島港 58 福岡 博多湾 88 沖縄 羽地内海
29 千葉 等 東京湾 59 福岡 等 有明海及び島原湾      
30 新潟 両津港 60 佐賀+福岡 唐津湾      


海域に係る窒素・燐排水規制の制度的仕組み

海域に係る窒素・燐排水規制の制度的仕組み


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