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ノリ

Porphyra yezoensis Ueda

紅色植物門 紅藻綱 ウシケノリ目 ウシケノリ科 アマノリ属

1.海苔といういきもの

海藻の名前には"ノリ"と付く種類が多く、ふりかけの原料となるアオノリ、お刺身のつまに使われるオゴノリ、トサカノリなどがあります。

おにぎりやお寿司に使われている "ノリ"は、養殖(栽培)されたスサビノリという種類から作られるものがほとんどです。このスサビノリは、分類上、紅色植物門-紅藻綱-ウシケノリ目-ウシケノリ科-アマノリ属に属します。

アサクサノリ(浅草海苔)という名前を聞いたことがあるのではないでしょうか?かつて江戸時代に浅草あたりで作られていたことに由来するようですが、このアサクサノリの野生種(Pyropia tenera)は、現在ほとんど姿を消し、環境省のレッドリストでは絶滅危惧Ⅰ類に指定されています。日本でアサクサノリの野生種が確認されている場所は数か所しかありません。

写真  ノリ(スサビノリ Porphyra yezoensis Ueda)

写真:ノリ

2.ノリの一生

ノリの一生(生活史)については、1949年(昭和24年)にイギリスのドリュー博士が海岸に生えているノリの胞子から糸状体(しじょうたい)ができることを発見し、その後1952年(昭和27年)に黒木宗尚博士によりノリの生活史が解明されました。

ノリの生活史は、性のある世代(有性世代)と性のない世代(無性世代)があり、ノリ製品となるのは有性世代のものです。葉状体は生長すると精子と卵を作り、それが受精した後、接合胞子が放出されます。接合胞子は発芽して糸状体となりこの状態で貝殻などにもぐりこんで夏を越します。

水温が下がり始めると、糸状体に殻胞子嚢(かくほうしのう)が形成され殻胞子が放出されます。殻胞子は発芽、成長して葉状体となります。

図:アマノリ類の世代交代

図  ノリの一生(生活史)

3.分布

スサビノリを含むアマノリ属は種類により違いますが、潮が引いたときに干上がる潮間帯(ちょうかんたい)の上部から干上がらない潮下帯(ちょうかたい)に生育しています。また、川の河口といったほとんど塩分のないような場所に生育している種類もあります。潮が引いたときは乾燥しますし、必要な栄養を吸収することもできません。こういった意味では過酷な環境でも生育できる種類と言っていいでしょう。

また、アマノリ属は、北半球の温帯域から寒帯域にかけて比較的多くの種類が知られていますが、中国南部、フィリピン、ベトナム、インド、オーストラリア北部、カメルーン、ブラジルといった熱帯に生育する種類もあります。スサビノリについては、北海道沿岸から九州、朝鮮半島に分布しています。

4.ノリ養殖

ノリ養殖は、徳川四代将軍家綱の時代に当時は海だった現在の東京都港区、大田区辺りで開始されたといわれています。第二次世界大戦後、さまざまな技術開発が進み、全国至る所の湾内で養殖されるようになりました。

現在のノリ養殖に使われる種類は、アサクサノリ系とスサビノリ系に分かれますが、病害に強く、色艶が良いということから95%~99%スサビノリが使われているといわれています。

写真 ノリ網で養殖されるノリ

写真:ノリ網で養殖されるノリ

5.おいしいノリ

ノリのおいしさは、うまみ成分だけでなく、口に入れたときの舌触りや散り方などにより生まれてきます。

現在、スーパーなどで売られているノリは、焼ノリ、味付けノリが多いですが、焼く前のノリ(黒ノリ)を自分で焼いてあぶって食べるのが、香りもよく、最高だといわれています。黒ノリを焼く場合には、2枚を合わせてその両面を交互に焼くことがコツで、そうすることにより海苔から出る揮発性の香りを逃しにくくできます。ただし、あまり焼きすぎると味も香りも悪くなりノリの風味もなくなってしまいます。

写真 板ノリ(焼ノリ)

写真:板ノリ(焼ノリ)

6.外国のノリ

ノリの仲間は世界中に分布し、多くの国で食べられていますが、ノリ養殖を本格的に行っているのは日本のほかは韓国と中国だけです。韓国ノリを最近食べたことがある人もいらっしゃるのではないでしょうか?

韓国では、岩ノリ(スサビノリとは別種でオニアマノリ、マルバアマノリ、ツクシアマノリなど)にエゴマ(シソの仲間)の油を塗った味付けノリが好まれています。

報道によると、2025年までに韓国産の輸入量割り当てを2015年の約2倍以上となる年間27億枚まで段階的に拡大することになりました。

7.瀬戸内海とノリ養殖

瀬戸内海でのノリ養殖は、兵庫県、香川県での生産量が大きく、約35億枚が生産されています。これは、全国生産量の約35%にあたります。この内、瀬戸内海で最も生産量が多い兵庫県では約17億枚が生産され、有明海を擁する佐賀県とトップ争いをする有力な生産地です。

2000年に有明海でのノリの色落ちが問題となりましたが、兵庫県においても近年、栄養塩不足による色落ちが問題となっています。ノリの色は、本来、全体に黒っぽい紫色から褐色にやや紫色を混ぜたような色をしていますが、ノリの生育に必要な栄養塩(窒素やリンなど)が不足することによりノリは黄色くなり、製品の価値がなくなってしまいます。

栄養塩不足の原因としては、珪藻などの植物プランクトンが増加し海水中の栄養塩を使ってしまうことのほか、河川から海への栄養塩の供給量が減少していることなどが考えられています。

これに対しては被害軽減対策が検討されています。また、瀬戸内海全域を対象としたノリの色落ちについての調査・検討が始められています。

【参考文献】

  1. 能登谷 正浩:海苔の生物学.成山堂書店,東京,172(2000).
  2. 大房 剛 編著:図説 海苔産業の現状と将来.成山堂書店,東京,223(2001).
  3. 能登谷 正浩:海苔という生き物.成山堂書店,東京,175(2002).
  4. 鷲尾 圭司・島本 信夫・堀 豊・岡本 繁好・上田 孝敏:兵庫県における栄養塩環境とノリ養殖漁業の盛衰.海洋と生物,158,27(3),238-245(2005).

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