環境省水・土壌・地盤環境の保全土壌関係中央環境審議会等における検討中環審答申及び検討会土壌環境保全対策の制度の在り方に関する検討会

土壌環境保全対策の制度の在り方に関する検討会(第9回)会議録


1.日時

平成13年9月21日(金) 9:00~10:40

2.場所

経済産業省別館 825号会議室

3.議題

(1)「土壌環境保全対策の制度の在り方について」(中間取りまとめ)について
(2)その他

4.出席者

(委員)
大塚 直 委員 河内   哲 委員 嶌田 道夫 委員
高橋 滋 委員 谷川 義夫 委員 中杉 修身 委員
野口 基一 委員 (岸川 神奈川県環境農政部大気水質課課長代理 代理出席)
原田 尚彦 委員 林 裕造 委員 細見 正明 委員
松村 弓彦 委員 吉田 文和 委員
(事務局)
石原 一郎 水環境部長
福井 雅輝 水環境部企画課長
伊藤 洋 水環境部土壌環境課長
小柳 秀明 水環境部土壌環境課地下水・地盤環境室長
内藤 克彦 水環境部土壌環境課農薬環境管理室長 他

5.配付資料

資料9-1土壌環境保全対策の制度の在り方に関する検討会委員名簿
資料9-2土壌環境保全対策の制度の在り方について(中間取りまとめ)(目次案)
委員限り資料土壌環境保全対策の制度の在り方について(中間取りまとめ)(案)

6.議事

【事務局】
 第9回土壌環境保全対策の制度の在り方に関する検討会を開催する。
 まず、本日の資料の確認を行う。(資料の確認)
 本日は、神奈川県の野口委員の代理として、岸川課長代理に御出席をいただいている。
 また、第6回の会議録をお手元に配布しているが、修正等があれば今月末までに御連絡をいただきたい。第7回、第8回の会議録は、事務局で準備でき次第お送りし、御確認をいただければと思う。
 では、座長、議事進行の方をよろしくお願いする。

【座長】
 前回、前々回と2回にわたり欠席し、大変失礼した。その間、座長代理には議事進行をつとめていただき、皆様方にもお詫びと御礼とを申し上げる。
 それでは、議事次第に従って議事を進めるが、本日の議題は、これまでの御議論等を踏まえて整理された土壌環境保全対策の制度の在り方に関する中間取りまとめについてである。最初に事務局から説明を願いたい。

【事務局】
 (土壌環境保全対策の制度の在り方について(中間取りまとめ)(案)について説明)

【座長】
 それでは、全体について審議を進めていく。土壌汚染をめぐる現状及び課題について、修正及び反対などの御意見があれば、お願いしたい。特になければ、制度の在り方についても含め、御意見をいただきたい。

【A委員】
 措置基準については、今回、リスク管理地か否かについて一律の基準で判断することとされているが、リスク低減措置については、周辺の地下水の利用等を考慮した客観的な基準を設けて行うと理解している。流れとしては、一律の水準まで必ず浄化させるということからかなり変わってきており、そういう意味では理解できるのだが、一方、産業界では、環境リスク管理を図るべき土地の基準として一律に土壌環境基準を適用するということに対して、かなり反対の意見もある。土地の利用形態や地下水の利用状況を踏まえた複数の措置基準を設けて、この基準を満たさない場合のみリスク低減措置を求められる形にしてほしいという意見がかなり強い。
 最終的な措置の形は、技術的基準で行うということで、最後の姿は比較的似ていると思うが、入り口の議論で少し入り方が違っている。調査の費用対効果というものが、どちらが本当に実効性があってよいのか議論する必要があることから、両論併記の形にしていただきたい。

【座長】
 事務局に御説明いただきたいのだが、私の感じでは、今の御意見と該当部分の内容とは一致していると思う。何か表現の仕方がちょっと不適切ということで、具合が悪いということだが、その辺がよくわからないので、内容と表現の仕方について、区別して御説明いただきたい。

【事務局】
 A委員からの御指摘に関連して、中間取りまとめの中の趣旨をもう少し明確に説明させていただくと、ここでは、環境リスクの管理を図るべき土地としての基準に該当する土地ということで、「リスク管理地」という概念で土地をとらえるという整理をしているが、その際、環境リスクとしては二つの側面を考えている。一つは「汚染土壌の直接摂取又は地下水等への溶出に係る環境リスクを低減する」、いわゆる何らかのリスク低減措置が必要ということで、今まででいう措置基準であるとか対策の発動の基準のイメージに該当する。
 二つ目としては、「リスク管理地の改変等に伴う新たな環境リスクの発生を防止する」ということで、一番端的な話をすると、そこの土地から汚染された土壌が持ち出されることによって、持ち出された先で新たなリスクが発生するというところでとらえることになる。この二つをとらえているということで、別のものとして整理した方がよいと考えており、むしろ、この二つ目の土壌の搬出みたいなものを想定して、リスク管理地というものをとらえるということでまずスタートして、御理解いただいた方がわかりやすいと思う。
 その際の考え方として、例えば、地下水への溶出の観点であれば、現行の土壌環境基準みたいなもので一律に考えて、例えば、持ち出す先が水源であるかどうか、あるいは地下水に接するような場所であるかどうか、これはケース・バイ・ケースで相当変わり得ると思うので、歯どめとしては土壌環境基準みたいなものでとらえてはどうかと整理している。
 ただ、一方で、リスクを低減するという、例えば、浄化であるとか封じ込めであるとかいった措置に関しては、土壌の環境基準でもって直ちに何か措置を講じていただくということではなく、ここでの考え方は、地下水への溶出の環境リスクの考え方から申し上げると、例えば、土壌で土壌環境基準を超えるような場所があった場合でも、その土地で地下水がまだ汚染されていない状況であれば、ここはモニタリングをしていただいて、仮にあるとき土壌中の有害物質が地下水を汚染する状態にまで達するときに、初めて、例えば封じ込めであったりあるいは浄化であったりという措置をしていただく。この際も、地下水を汚染するという状態については、周辺の地下水の利用の状況等も考慮して考えるべきであり、例えば、周辺で地下水が全く飲用に利用されていないような土地であれば、地下水が汚染されているという状態をみるのが地下水の環境基準か、あるいは、それよりも緩い数字でよいのかといったところを考慮して検討すべきではないかということである。具体的な数字については、提示できる状態ではないが、考え方としては、周辺の地下水の利用状況で、例えば、飲用に利用されているような土地であれば、地下水の環境基準を超えたときに何らかの措置をとるべきだが、一方で地下水の利用がない、例えば、飲用に全く利用されていない場合には数字を緩和するような方向で検討してはどうかと。つまり、土壌環境基準を超えたら直ちにリスクの低減措置を行っていただくというようなことではない。
 また、リスクとしては二つあって、直接摂取に関しては、先般まとめられた要措置レベルのような数字を基にして、それを超えた場合に、土壌の持ち出しの制限をかけるような数字とするとともに、直接摂取の場合は地下水経由と違い、直接リスクが生じる場合があるので、この場合には、措置として、例えば、立ち入り制限であるとか、あるいはシートをかけて飛散流出を防止するといった措置でも大丈夫ということを明確にしており、リスク低減措置そのものの負担を非常に軽減できるよう選択していただくことでどうかというのが全体の流れである。リスクとしては、一番厳しい数字かもしれないが、土壌の持ち出しなどのリスクを考えて、リスク管理地として登録するという線を引いているが、措置をとるレベルに関しては、柔軟に検討できるような仕組みを考えている。

【A委員】
 それは十分わかっているが、要は地下水汚染で環境基準を超えた場合に、そこからリスクが始まってリスク低減措置に入っていくかどうかという流れと、実際に地下水汚染があったときに、周りの状況、用途等から考えて、この土地ならば、ある措置基準以下だったらリスクがないと判断することもあり得る。要措置基準を下回るならリスク管理に入らない、それを超えている場合は当然リスク管理に入るとしてはどうかと申し上げている。土壌を持ち出すことは、確かに措置基準以下であっても実際はある程度汚染されたものがあるわけで、それを持ち出すときには確かに管理が必要で、持ち出す時点で管理をするというのも一つの考え方ではないか。調査にかかる手間暇、それから実際にそういうことを管理していく意識とか、土地のそういう管理状況を全部履歴を調査しても実際に持ち出すときにそういうものを抜けなく管理ができるかどうか、そういうことを加味して、どういう利害、よい面と悪い面があるのか、検討する余地があるのではないか。今考えられている一つの流れは、一つの処理方法だと思うが、もう一つ今申し上げたような処理の仕方もあると思うので、それについて、より具体的な事例をベースに、どちらがよいのか、もう少し検討してはどうかと思っている。

【B委員】
 この議論はやはり売買の土地の移転のことも考えなければいけない。そういう意味で、確かに現状の部分では対策が必要なくても、やはり将来土地利用が変わったり所有者が変わったりして大規模な開発をしようとするときに、そういう情報が明確になっていない、つまり、リスク管理がされていなければ、土地の転々売買に非常に大きな影響があるので、やはりリスク管理については、きちんとした明確な基準で管理措置を要求することが必要だと思う。
 やはり土地というのは将来に向かって、しかも相互の土地利用の中で周りに影響があるので、なるべく次世代に負担がいかないように考えてきたが、いろいろな考え方があってこういうところに落ちついたと思うので、最低限将来の世代のことを考えれば、やはり現にあるリスクを現世代できちんと管理することは、最低限の措置としては要るのではないかと思う。

【A委員】
 誤解されているようだが、リスク管理をしないという議論をしているのではなくて、入り口のところでそういうリスク管理の措置基準を設けて入っていくということを申し上げているのである。結局、同じようなリスク管理の結果どこまで措置すればいいかということを技術的基準で決めようとされているが、その入り口でリスク評価を行い、それが措置が必要な土地なのかどうかということを判断して入っていけばよいと言っている。

【C委員】
 リスク管理地のこの登録制度と、それから、実際の対策をやる上で、中で分けるかというのは、セットで考える話だと思う。一方でそういう措置をするレベル、管理するレベルを何段階かに分けて考えましょうということにほかならない。B委員が言われたように、土地を売買するときにリスク管理地でないことを知らないで買う人がいるとする。そのときは何も起こらない。そうすると、後でその土地を買った人が外へ持ち出そうとするときは、当然、今度は先ほどA委員が言われた話でいくと、そのための規制がかかってしまうという話になりかねない。両論併記と言われるが、私自身はリスク管理地の登録という制度をつくったこと自体が、その土地に実際に過大な負担をかけないためであって、それとセットで、いろいろ措置の段階を変えていると思っている。
 それからもう一つ、事務局の説明で、リスク管理地について、汚染地ではなくてリスク管理地という言葉に変えられたことについてだが、実態的には、いつまでも「汚染」という言葉が怖いということではよくない。地下水汚染でも、環境基準を超えないと汚染しているとは言わないと、環境省は言っているが、通常の状態より濃度が高ければ、それは汚染していると本来は言うべきで、それを汚染していないと言っていること自体、いつまでもこの部分に固執すること自体が、先ほどA委員が言われたようなジレンマから抜け出せないことになっている。リスクコミュニケーションを進めなければいけないと言っているときに、いまだにそういうことを言われるのは非常に残念である。そこから進んでいかないと、いつまでもこの時代が続いてしまう。産業界の方も積極的にそういう方向で努力されておられると私は認識しているので、そういう意味では、この負担というのは、先ほどA委員も、低減措置の部分については手をお貸しいただいたように、全体としては非常にバランスのとれた案ではないかと思う。

【座長】
 もう少し議論を進めたいと思うが、何かあるか。

【D委員】
 私も今のC委員の御意見に賛成で、リスク管理地という表現にしたことを少し懸念している。制度については、細かい点では意見があるが、C委員の御主張に賛成したい。

【A委員】
 汚染という言葉がどうのこうのではなくて、環境基準、要は、人の健康に被害を与える状態かどうかということをベースに、本当に汚染という言葉を使ったらいいのか、リスクの管理が必要な土地なのかということを考えればいいわけで、例えば地下水の環境基準というのは、一生飲み続けてそれで問題だという数値である。それを少し超えていたらもう汚染されている土地だという、これは表現としてはいかがなものか。環境基準そのものについてもリスク評価をして、ハザード、暴露の結果に基づき、数値を決めているわけで、その望ましい基準である環境基準をもって、非常に汚染された土地だと決めつけるのは、表現上も非常におかしい。

【C委員】
 汚染というのは、汚染しているから危ないかということではないと思う。例えば、自然由来の汚染は、自然由来の汚染というのがあるのかどうかは非常に疑問があるが、これを汚染と言わなくてもリスク管理が必要な土地というのはあるわけで、汚染というのは、通常の状態から人為的なことが加わって濃度が高くなっていると解釈をして、汚染したからすぐ危ないという、そういう考え方を解消することが必要だと申し上げた。

【A委員】
 リスクを管理する必要がある場合ということが、的確にその土地の状態を表していると思っているが。

【座長】
 その点は事務局が知恵を絞って、汚染と言うと、専門家は別として、俗語としては少し悪い感じがすることから、リスク管理地とされたところである。随分、産業界を考慮して書いてきたなという印象があるかもしれないが、知恵を絞られた結果であろう。

【C委員】
 表現として、リスク管理地というのをだめだと言っているわけではない。

【座長】
 制度のシステムとしては、C委員、B委員、D委員もおっしゃるように、まずリスク管理地として注目しておいて、具体的状況に応じて処置しなさいというのが全体の構造であり、そこについてどのような懸念を持っておられるのかお伺いしたい。

【A委員】
 重金属等は別として、例えば、地下水汚染というのは、その敷地から外へ出て、それが実際に環境基準を超えているような状態で、都道府県が調査をしなさいという命令等から入っていくわけである。そうすると、そのときにその中を当然調べて、周りの地下水の利用状況とか、その土地の用途等から考えて、このぐらいの基準以下だったらリスクはありませんよという、そういう基準を考えてはどうか。それは技術的基準と同じような意味である。そうすると、その状態以下だったら、一応リスク管理地ではないという判断をしてよいのではないか。超えていれば、当然それはリスクを今後とも継続して管理していく必要があるだろう。さらに、別の用途にこの土が運ばれて使われたら、それはまた問題なので、それに対しては、持ち出しのところで歯どめをかければよいのではないか、そういう仕組みもあるということを言っている。

【座長】
 お立場としてはそういうこともあり得るかと思うが、別の立場として、取り締まりに当たっている地方公共団体の方の御意見もお聞きしたい。そこまで引き下がってもよいのなら、それはそれで正しいのだが。

【事務局】
 今の話に関して多少の工夫が今回の中間取りまとめに入っているので、説明する。
 A委員から御指摘のところに関しては、今回追加をしている。まず、リスクの低減が必要な場合と、あるいは新たなリスクの発生の防止が必要だということで、何らかの基準を超えた場合に、例えば、「リスク管理地」という形でスタートをすると、その後、当然のことながら、必要な状態になっていれば、何らかのリスク低減措置をやっていただくことになる。その場合、環境リスクの低減措置がとられた場所についても、まだ引き続きリスク管理地ということで、リスク低減措置が何らとられていない土地と同じような状態で、例えば、同じ台帳の中に入っているということはどうかという御指摘かと思う。
 要するに、一般の方から見れば、リスク低減措置がとられた場所もとられていない場所と同じリスク管理地として一緒にとられ、まだ何か問題がありそうな土地なのかということになる。例えば、既にリスク低減措置を行ったのであれば、基本的にはリスクはないということだと思うが、事務局が考えているリスクは、土の持ち出しによって、新たな場所でリスクが発生する可能性があるというような部分が残っていることがあるのではないかということである。ここは、環境リスクの低減措置がとられたリスク管理地と、まだ低減措置の途中であるとか、これから措置する管理地とは区別して管理することは考えられるということを盛り込んでいる。
 また、土壌汚染の把握について、現行の土壌環境基準を人の健康等に対するリスクの管理が必要と考えられる濃度レベルとすることが適当であるとだけ言い切ってしまうことで、盛り込んだ部分がわかりにくいということであれば、リスク低減措置の実施に関して、例えば、周辺の地下水の利用状況などを考慮するというようなことの意味するところを少し記載することで、今のことを含む形で技術的基準なり、あるいは登録の考え方を少し工夫できないかと考えている。その辺を踏まえて、御意見をいただければありがたい。

【C委員】
 今、登録がなされていて、リスク低減措置については、地下水に達する条件になっていないということで浄化等の措置は講じられていないというような状況の場合という話があった。確かに現状は達していないが、絶対に大丈夫なのかということになる。いろいろな紛争が起こっているところの住民の方々との対話で毎回出てくるのは、100%大丈夫かという話である。100%大丈夫というのは絶対にあり得ないので、我々は絶対保証はできない。そういうときにどうするかというと、そういうものを知っている、あるいはモニタリングする、把握しているということが非常に重要なのである。今回も、例えば、リスク低減措置をして100%大丈夫と言えない部分については、やはりそのような管理をしていく。逆に100%を求められると、全部一律に浄化対策をして基準まで低減しなさいというふうになる。今の形が、例えば溶出についてはそう簡単にできなくても、実際の運用はどうかはともかくとして、制度の流れとして、それを何とかしたいというのが、このリスク管理地という登録の制度だと私は解釈をしている。

【E委員】
 今の議論にかかわるが、実態としては、神奈川県の場合、土壌汚染が見つかった、環境基準を超えた場合には、一つは、地下水が汚染されていれば、水質汚濁防止法では飲用に供する場合についてのみの適用だが、条例でしっかり基準まで低減していただくという措置をとっている。土壌汚染が環境基準を超えた場合については、C委員が言われたように住民の方は非常に心配するので、土壌環境基準にまで浄化するよう指導しているが、当然それはすぐにやれというのは難しい場面もあるので、例えば、土壌を外に持ち出す際とか、いろいろな計画の中で、指導としてやっている現状がある。したがって、今回の取りまとめで、そういったところが担保できるのかなと考えている。

【A委員】
 二つの考え方があるので、私はもう少し議論をする必要があると思っている。処理方法としては二つの考え方があると思っている。善し悪しは、現実に処理するいろいろなケースを考えて、それを実際に当てはめてみて、どちらがよいのかを見て判断すればよいと思っているので、二つの考え方を今後検討すればよいのではと申し上げている。

【座長】
 座長が個人的意見を言ってはいけないのだが、私の感じを率直に申し上げると、今までは、土壌の環境基準に違反していれば、すぐ指導をして直させようとするようなことが、いささか通念になっている。それが行き過ぎかもしれないというムードがあって、この事務局案だと、土壌の環境基準を超えているものはこれからずっと健康診断をしていくような状態に置こうと。健康体ではあるが、健康診断を普通の人と違ってやっていって、それで、見つかったら手術でも入院でもやろうという2段構えになっている。それでもちょっと行き過ぎだとA委員は言われるが、どうも通念からすると一歩後退、新聞記者的センスからすると一歩後退であって、この案の最大の目玉がここにあって、恐らくプレス発表をすると、環境省は大いに後退したという大きい活字が飛び出してくるのではないかと実は心配している。環境基準を超えていてもすぐやらなくてよい、モニタリングでもよい、浄化以外の易しいのでもよいというようなことを比較的はっきり整理したところが非常に有益であると同時に、新聞記者あたりからは大いにたたく材料になるのではないかとむしろ心配しており、もう一歩後退するというのは、かなりのものだという気がするが、他の委員の方はいかがか。

【A委員】
 現実にきちっとリスク評価をした結果から入りましょうということ、この措置基準から入ろうというのはそういうことで、厳密なリスク管理をきちっとして、判断してから、あとのこういう制度にのせましょうということなので、入り口で健康かどうかを診断して、体力との兼ね合いでどうかという懸念があるので、ちょっと精密検査に行きましょうというのを、最初はこの人の体力だったら、このぐらいはいいですよと判断するかどうかという感じだと思うのだが。

【C委員】
 少し誤解されているかなと思うのは、厳密なリスク評価をするというのは、非常に大変なことである。そのためのコストというのは物すごく膨大になる。今、地下水の話で私どもは勉強会を一つやっていて、地下水の浄化を自然の浄化機能にゆだねることを考えている。これは米国の考え方から出てきていて、日本ではどういう条件でやればよいか、どういう条件がそろえば自然浄化機能にゆだねてよいかという浄化の検討をしようと、勉強会でやっているところである。実際にやってみると、簡単な調査でお金が安く上がるかなと思っていたが、これをはっきりさせるための調査には大変な費用がかかりそうで、そうなると、本当にその制度というのが機能するだろうかということになる。今、A委員が言われたように、本当に厳密なリスク評価ということを言われたときに、かえって膨大なコストがかかるのではないかと懸念している。

【F委員】
 今、C委員が言われたように、リスクを評価、アセスメントするという技術に関しては、まだまだ課題が多くて、実際にそれを適用するというのは難しいと思う。座長が言われたように、今回の目玉というか、この土壌の管理については、環境省が今まで、どちらかというと全国一律のベースで基準だとかそういう考え方で来たものを、今回、土壌に関しては大まかなリスクベースでとらえ直そうということで、非常に新しい一歩だと評価すべきではないかと思っている。

【G委員】
 リスク管理地の登録公表制度だが、情報の公開に当たっては、リスクの程度、リスク管理の意義や措置の実施状況等について住民にわかりやすく解説するということだが、これは都道府県としても、ぜひお願いしたいことである。要するに、一律にこの土地は汚染地だという評定をすれば登録しにくくなるし、住民も不安である。そこで汚染の程度とか、広がり、影響というものをきちっと把握することによって、住民にもわかりやすい公表になると思う。ここはやはり十分に工夫をして、情報公開していく必要があるのではないか。

【座長】
 H委員には、今までまとめていただいているが、いかがか。

【H委員】
 実は私も座長と同じように考えており、確かにこれを出したときに、ただ見ていればよいのかというような話が、相当一般の人から言われるのではないかと当初から気にしていたのだが、土壌汚染というのは大変難しい問題であり、そこのところはある意味ではしようがないのかなと思う。それから、K委員が、ただ見ているということが本当の措置かということを言っておられたが、それも確かにかなり議論になるところだろう。A委員の言われたことについて、例え話でいうと、健康体のラグビー選手であれば、一般人が必要とする健康管理の措置についても、ラグビー選手だからそれはもう最初から健康人とみなすというようなことを言われたが、どのようなことか。

【A委員】
 最終的には技術的基準の中で措置基準を決めようとされている。いずれはそういうリスク管理の、こういう土地はここまでの措置基準でよいというようなことを決めなければならないわけだが、それを決めるのだったら、最初、入り口のところからそういうことをきちっとやったらどうかということを言っている。

【座長】
 J委員、I委員はいかがか。

【I委員】
 私も結論は座長と同じ意見で、マスコミがどう言うかはともかくとして、B委員が言われたようにリスク管理地に入れない状態にしておくということは、土地が動く場合に情報が伝わらない危険があるということと、A委員が言われたような状態の場合に、結局その情報はその土地の所有者が内部的に管理するということになると思うが、それが長い時間の中でうまく伝わっていくかという心配がある。そういう観点から、リスク管理地の管理をするという案の形がよろしいのではないか。

【J委員】
 結論的には座長の御意見が現実的な対応であろうと思う。例えば、入り口でもって何かを考えるということ、それも一つだと思うが、現実に入り口でもって区分けする方法がどの程度あるかということは、非常に問題ではないかと考えている。

【K委員】
 私も座長の言われるとおりだと思っているが、多少政治的な話だが、土壌汚染の浄化を持つ制度、つまりリスク回避の法制度をつくるという大きな原動力になっているのが、規制改革会議で言われている土地の取引を円滑に進めるということである。土壌環境基準を超えている土地について、全く放置しておいてリスク管理もしないとなると、そもそも、制度をつくる理由としての土地取引の円滑化ということに残念ながら反してしまうので、措置基準のような話はもちろん別に考えた方がよいと思うが、土壌環境基準を超えた場合には管理をしていくという方向でいくしかないと考えている。

【座長】
 お一方でも御賛同の意見があれば、そういう案もつけていただく方がいいかなという気もしていたが、いないようなのでこのままで押し進めさせていただくが、非常に重要なポイントの御指摘をいただき、感謝している。
 では、ほかの点についても御意見をお願いする。

【I委員】
 土地所有者が措置を行って、要した費用を求償することができるがという形に整理されているが、「求償をすることができるが」という部分は「求償することができることとすることが適当であるが」という表現の方がよいのではないか。現在の法制度のもとでは、民法の考え方では、この求償をできるかどうかは大変問題が多い。

【水環境部長】
 求償の部分はかなり難しいところがある。今回の制度そのものが、環境リスクの管理という部分がメインで、求償の部分、例えば、民事上、不法行為なり不当利得なり、いろいろなものでできるものもあるし、基本的にはそこの費用負担の問題は、そういう世界に任すべきではないかという気はしている。そこに深入りして、環境管理の法律で、費用のところを議論してもいかがなものかという感じがして、「求償をすることができるが」という表現でとどめている。御指摘のような問題があることは事実だが、この部分をあまり議論して、新しく特別に範囲を創設したりというのは、環境リスクの管理という法制度の中での部分としては、メインの課題ではないという意味で、こういう形がよいのではないかと思っている。

【B委員】
 いわゆる状態責任も警察法上あるし、行為責任もあって、この場合は、土地というものの独特性に着目して、まずは土地所有状態責任者というものを捕まえようという制度だが、ある意味で、どちらを捕まえるかというのは、警察法上いろいろな議論があるわけだが、一律にまず状態責任者にいきますよというときに、では複数の原因者がいたときにどのように整理するのかという、必ずその公平の問題が出てくる。ドイツなどは、行政機関が責任を持ってまず一番適当な者を捕まえて、あとはきちんと後の始末をつけましょうという法律になっているわけで、日本はそういう意味では、状態責任者にまず行きましょうという制度になっている。そのときに、やはり捕まえた以上、残りの者についてどうするのかは、きちんとルール化しておかないと、社会的な公平という話が出てくると思う。やはり最低限度のルールづくりで、まず第一にここに行きますよというルールをつくった以上、複数原因者がいたときの後始末についてある程度法律に書いておいた方がよいと思うが、いかがか。

【水環境部長】
 決してそこのところを検討しないということではない。ただ、ここの部分はかなり今後の法制度の形で検討を要すところが大きいところがあり、あらかじめ何が適当であるとかいう形よりは、公平な異論がないような形でできるという表現にしているということである。

【D委員】
 今のB委員の御意見も含めて法学者の御意見を伺いたいのだが、私が懸念するのは、アメリカでは土地所有者と原因者の間の争い、あるいは原因者とみなされる者の間の争いということで、非常に法的な紛争が多発している。そのため、途中でいわゆる購入時に調査したことを証明できれば云々とか、いろいろな限定措置が盛り込んである。それからもう一つは、ドイツの場合の例とかオランダの場合の例とか、やはりそういうことをきちんと検討しているのだから、やはりこのままだと行政が少し後ろに退いて、あとは関係者で勝手にやれというふうにとられかねないのではないか。私は法律の専門家ではないので、ぜひその点をお聞きしたい。

【K委員】
 I委員の御意見のようにした方がよいと思う。そもそもこれが不当利得というふうに構成されるようになるかどうかはわからないし、不法行為ということに限られると原因者の過失の証明が必要だというような話が出てくる可能性もあり、土地所有者が原因者に過失がないと費用を求償できないのかという話も出てくるかもしれないので、できれば、この手の規定は置いていただいた方がよいと思う。いろいろな意見があるし、D委員の言われるたようにスーパーファンド法のもとでこの点の議論がかなり複雑化していることも事実だが、できればI委員の言われたように変えていただく方がよいと思う。

【座長】
 このまま条文でやってしまうと、D委員の言われたとおりである。行政は手を引くから民民であとは勝手にやれということになる。日本の法律制度、鉱山関係の法律や何かでも、いささかそういう傾向のものが多い。役所が割って入って、お金の分担まで考えてやろうというようなものはない。
 この制度のやり方は、例えば、汚染者主義で汚染者にやらせろと、B委員は言われたが、汚染者の認定というのは非常に難しい。そう早急に対応もできない。それから、汚染者にやれと言っても、他人の土地に入ってやるわけにはいかない。そこのところの対応がどのようにドイツでできているか存じないが、その点もはっきりしなくてはいけない難しい問題がある。しかし、それを捨てて所有者主義をとった以上は、あとは民民で終わらすというのも少し問題ではないかという感じはする。民民に任せても、不当利得というより、私は不法行為とか瑕疵担保だと思うが、これはこういう過失もあるし時効もあるし、いろいろなものがあって大抵の場合できなくて、所有者が泣く。今までもそういう例はいろいろある。
 そこで民民の民法的求償ではなくて公的求償制度の創設というようなことも考えられないではないが、現状では極めて困難な問題であり、それを言ったばかりにこの案はつぶれてしまうかもしれないという感じがしている。

【水環境部長】
 求償の場合というのは、求償が整ってしまえば協議で出てくる場合がある。当事者間の世界のことなので、できればこの案でいければと思う。

【I委員】
 私も余りこだわらない。ここは民民でやるんだという趣旨に全面的に反対しているわけでもない。民民に任せるのはよいのだが、表現として「求償することができるが」という、いわば解釈論を述べてしまっている。これは現実に恐らく多くの場合はできないだろうと思う。そこのところが気になっているので、民民でいくのであれば、適切な表現にしておかないと、言葉として不適切ではないかということである。

【座長】
 何かよい表現があれば修正案をお願いしたい。

【I委員】
 確かに認識としては、現行法ではほとんどの場合は求償できないだろうという認識があるもので、うまい表現がないものかと。

【A委員】
 この民民というのは、確かに現実に置きかえると難しい。汚染原因者に求償するという考え方はこれでいいと思うが、方法論は確かに難しくて、その難しい中に現実に我々が抱えている問題としては、過去の法律ベースで実際に認められた行為をして、今回の汚染の状況が起こったという事例もあること。それから、行政が奨励した行為を行って、汚染が生じた場合の汚染の浄化をどうするかということ。あるいは既に自治体との間で、こういう解決方法で処理をしますということで処理済みのものもあること。こういうものについて、その免責事由とか、あるいは時効的な考え方というのを、どこかである程度明確にしておく必要があるのではないかと思うが、いかがか。

【座長】
 汚染者は逃げられるようになるかもしれないが、そうすると、土地所有者が100%かぶってしまうことになってしまって、だれかが出さなくてはいけない。
 この最終負担については、汚染者がいないような場合に備えて、公的負担も長期的には考えなくてはいけないといったことを入れてはどうか。

【水環境部長】
 環境リスクの管理ということでメインに仕組んでいるので、費用負担のところは制度の本質でないという感じがあり、少し考えさせていただきたい。

【K委員】
 先ほどI委員が言われたような表現に変えるということではいかがか。

【水環境部長】
 それでは、そのような表現にさせていただき、また相談させていただく。

【H委員】
 あとは支援措置の方で考えることでよいのではないか。

【座長】
 そういうことにする。ほかに何か御指摘はないか。

【A委員】
 支援措置の中に、「事業者全体で拠出を行い、基金を造成することについて検討することは必要である」ということが入っているが、産業界全体、経団連全体としてこういうことを検討する意思は全くない。因果関係のない第三者に負担をさせるということは、その企業としても、どういう理由でお金を出したのかと問われたときに、答えようがない。したがって、この部分は削除していただきたい。

【土壌環境課長】
 事務方としては、先ほど座長からも御指摘があったとおり、今回の制度の枠組みはリスクベースで、対策を選択しうるよう全体を整えている。それで、これまで諸外国でも、ファンド等により対策を打っているような、汚染原因者が資力がない場合、最後になってどうするんだみたいな話が我が国でも本当に出てくるかどうか。このあたりを見極める必要がある。
 今のA委員の御指摘だが、事務方としては、このいろいろな支援制度の中で融資など考えているが、それと並べて、できる範囲という議論もあるかと思うが、基金という方法も考えている。

【K委員】
 米国のスーパーファンド法というのはまさに基金がスーパーファンドということで、あの基金をつくることは非常に重要になっているし、別に、大手の企業だけから出すとかいうことではなくて、産業界全体で何らか負担するという、税という方法もあるかと思うが、そういうことは諸外国でも行われている。さらに、今回の場合、土地所有者に傾斜した制度になっているので、それが果たして市民にどう見られるかという点も非常に懸念されるので、ここは外せないのではないか。

【C委員】
 事業者全体でという表現は、明確ではないのだが、例えば、今の汚染土地管理者、それから汚染原因者という中に入ってはこないが、汚染に関連している業界がある。汚染物質と言うと言い方が悪いが、そのような物質を販売しているとか、製造して売ったところには今までの制度の中で全く、どこも責任はとらないという部分がある。ここのところを全く削除してしまって、事業者全体とするかどうかは、議論はあるかとは思う。どのようにするかはともかく、基本制度まで進まざるを得ないだろう。もちろん銀行の負債は公的負担をしているわけなので、同じように、公的負担を入れるということは一方で必要だと思うが、全面的にそれでやるわけにはいかないだろう。そういう意味では、この表現ぶりは少しあわないかもしれないが、全面削除というのは、いかがなものか。

【D委員】
 私も同様の意見で、いろいろな基金のつくり方があるわけで、アメリカの場合、基金の中に公的基金も入っており、それから、石油あるいは化学物質関連に税金をかけてそれを基金に繰り入れるとかいうこともあり、取りやすいから取るというような面もある。日本の例であれば、秦野市のように、過去の有機溶剤の使用量というようなことを考慮して任意に拠出していただくとか、いろいろな形がある。基金の造成ということを削除するのは問題であって、そこは譲れないと思う。

【A委員】
 基金はここで出すかどうかを決めるのだろうか。人の健康ということを考えると、やはり公的な資金というのは必要だと思う。低利融資、税制上の措置ということだがそれ以外は出てきていない。そこは少し考える必要があるのではないか。

【座長】
 いかがか。やはり3分の1ぐらいは、という気もするが。

【A委員】
 経団連でいろいろそういう話はある。結局は理屈のつかない金は出せないと言われる。訴訟をされたときに、その説明がつかない。

【K委員】
 広い意味での汚染者負担原則的な理解というのもあるし、最終的には今、D委員が言われた、化学品税とか石油税とか、そういうものから取るという方法もあるとは思うが、これを一般財源から取るというのは、広い意味の汚染者負担原則からすると、少し筋が違うのではないか。

【B委員】
 適正な資源配分ということを考えれば、やはりいろいろな社会の仕組みの中で汚染が出た場合、出る可能性があるときに、どこにその適切な費用負担を求めていけば、いわゆる適切な資源配分ができるのかということを考えれば、やはり汚染者負担になるのではないか。すべて汚染者という話にはなり得ないと思うので、合理的な捕まえ方で応分な負担を、汚染に起因した広い社会的な活動に負担していただかないと、一般財源からやると、これはもう、そういうインセンティブが全然働かない形に制度がなってしまう。「事業者全体」という表現はどうかという気はするが、事業者サイドから何らかの視点でというような形で、とにかく広く薄くというふうなイメージはなかなか難しいと思うが、全体としては残した方がよいと思う。

【座長】
 残した方がいいという見解と、事業者など関係者の間とか、何かちょっとぼかすということだが、私は公的な負担がいくらかはいると思う。それは汚染者負担をあいまいにするという意見もいつも出るのだが、これは長年の負の遺産であり、昔は産めよ殖やせよではないけれども、国を挙げてひっぱたいてやらせていた。そういうこともあるから、事業者だけというのは多少気の毒かなという感じもする。
 予定された時間も参ったようで、御意見の方も、主な論点についてはいろいろ出されて、かなり活発な討論もできたように思う。修正すべき点は二、三あったかと思うが、基本的なところで大方の御承認が得られたようにもお見受けするので、議論はこの辺で打ち切り、修正すべき点が二、三あるとすれば、確認をお願いする。

【事務局】
 御意見のあった低減措置の実施の費用については、「求償できることが適当である」という表現にさせていただく。それから、基金については、「事業者全体で拠出を行い」という表現を「事業者など関係者から拠出を行い」という表現でいかがか。

【座長】
 よろしいか。大変難しい問題であり、新しい問題でもあるので、御不満も多々あろうかと思うが、一応これでまとめさせていただくことにする。
 非常に長期にわたって、御熱心に御議論をいただき、感謝申し上げる。
 修正点については、事務局で直していただき、それで、座長代理にも確認いただいた後、私も見た上で、本検討会の報告とさせていただきたいので、御了承いただきたい。よろしくお願いする。
 それでは、事務局から、今後の予定等について御説明いただきたい。

【事務局】 本日の御意見等を踏まえ、事務局の方で必要な修正を行った後、中間取りまとめの公表をさせていただきたい。あわせて、環境省としてパブリックコメントを求めたいと考えている。このコメントの結果は、土壌環境保全対策の制度の在り方について、今後中央環境審議会等々で御審議をいただく際に、反映させていただくというようなことを考えている。また、中間取りまとめについては、修正等の後、公表日までに委員の先生方に最終版をお届けする。
 最後に、水環境部長からあいさつを申し上げる。

【水環境部長】
 (あいさつ)

【事務局】
 それでは、これで閉会させていただく。