環境省水・土壌・地盤環境の保全土壌関係中央環境審議会等における検討中環審答申及び検討会土壌環境保全対策の制度の在り方に関する検討会

土壌環境保全対策の制度の在り方に関する検討会(第7回)会議録


1.日時

平成13年8月9日(木)14:00~16:30

2.場所

中央合同庁舎5号館 2F 共用第6会議室

3.議題

(1)土壌環境保全対策の制度の在り方について
(2)その他

4.出席者

(委員)
大塚  直 委員 河内  哲 委員 嶌田 道夫 委員
高橋  滋 委員 谷川 義夫 委員 中杉 修身 委員
野口 基一 委員 林  裕造 委員 細見 正明 委員
松村 弓彦 委員 吉田 文和 委員
(事務局)
石原 一郎 水環境部長
福井 雅輝 水環境部企画課長
伊藤  洋 水環境部土壌環境課長
内藤 克彦 水環境部土壌環境課農薬環境管理室長
小柳 秀明 水環境部土壌環境課地下水・地盤環境室長 他

5.配付資料

資料7-1 土壌環境保全対策の制度の在り方に関する検討会委員名簿
資料7-2 主な検討課題について
参考資料7-1 土壌の含有量リスク評価検討会報告書「土壌の直接摂取によるリスクの評価等について」

6.議事

【事務局】
 ただ今から第7回土壌環境保全対策の制度の在り方に関する検討会を開催する。
 まず、本日の配付資料の確認を行う。(資料の確認)
 本日は、座長が急用のため欠席との御連絡をいただいている。そのため開催要領に基づき、座長よりあらかじめ指名をいただいている、座長代理に議事運営をお願いしたい。

【座長代理】 
 それでは、まずスキームのイメージについて事務局から説明をお願いする。

【事務局】
(スキームのイメージについて説明)

【座長代理】 
 各委員から御意見を述べていただきたい。

【B委員】
 どこまでの浄化をするかという浄化の程度の問題がある。例えば汚染原因者が特定できる場合は、徹底的に浄化せよというイメージにつながる。利害でかなり難しい問題が出てくるように思うのだが、どういう整理の仕方、イメージなのか。

【事務局】
 リスク管理措置の内容については、大きく二つのリスクの観点で整理できる。一つ目が溶出の部分。一定の基準を超える汚染土壌については、周辺の地下水への汚染を未然に防止するための必要最低限の措置として、地下水のモニタリングの実施を義務づけることを一つイメージとしてとらえればよいのではないか。
 また、汚染土壌により地下水の汚染が生じるおそれが著しい場合、周辺の地下水の利用状況等を勘案して、必要と認められるときには、都道府県が一定の基準値まで浄化、または封じ込め措置を命じることとしてはどうか。
 さらに、リスク低減を図るために、浄化または封じ込めの措置の実施を促進するということで、義務というよりも何か促進できるような措置を考えてはどうか。
 一方で直接摂取についても、一定の基準を超えるような表層の汚染土壌については、人の健康への影響を防止するため、例えば必要最低限の措置として、汚染されていない土砂等による覆土あるいはアスファルト等による舗装を義務づけるとしてはどうか。
 さらに、それ以上の措置について、実施を促進することを考えてはどうか。例えば浄化までしようという場合には、必要最低限の措置ではなく、それ以上の望ましいレベルとして何か促進する手法を考えてはどうかというイメージ。
 いずれにしても、特に表層土壌で含有量が一定基準を超えるような場合については、直ちに応急的対策として、立入禁止、飛散・流出がないようにシートによる被覆といった措置が必要ではないかととらえており、その辺をイメージして御議論いただきたい。

【A委員】
 一つの考え方として、第一次的には状態責任を有する土地管理者をリスク管理措置の実施主体とするとしているが、これは、汚染原因者が特定できる場合には、土地管理者ではなくて、汚染原因者がリスク管理計画を策定するシステムになっているので、第一次的には状態責任を有する土地管理者をということでは必ずしもないのではないか。基本的には土地管理者と原因者を同レベルに置いている考えとも言える。あるいは原因者の方が多少優先していると見ることすらできるのではないか。その点について御検討いただきたい。
 それから、似た案として、土地管理者と汚染原因者が両方合わさって、リスク管理計画をつくる方法もあり得るのかもしれないことを申し上げておきたい。汚染原因者が複数いる場合もあるので、土地管理者と汚染原因者が両方でリスク管理計画を策定することもあり得るのではないか。責任関係が不明確になるという問題もあるが、汚染原因者が複数の場合もあるし、両方が同じような責任を負うのであれば、両方で計画を策定する方法もあるのではないか。

【事務局】
 まず、先生の御意見だが、ここでは、一次的に土地管理者を実施主体としてまとめていたつもり。
 一方、土地管理者の責任と汚染原因者の責任は同じ程度なのではないか、むしろ汚染原因者が特定できる場合は、汚染原因者を優先させるべきではないかという意見だったが、それについて、何か御教示いただきたい。

【A委員】
 汚染原因者が特定でき、土地管理者ではなく汚染原因者がリスク管理計画を策定するスキームは結果的に汚染原因者を優先していることになり、第一次的には土地管理者をということとは、必ずしも一致していないのではないか。

【水環境部長】 
 原則をどうするかということだと思う。

【A委員】
 汚染原因者を特定している場合に、汚染原因者を優先しているように思える。

【水環境部長】
 何かを原則に置いて、そうでない場合にということ。一次的に土地管理者というものでの整理としてお考えいただきたい。

【A委員】
 汚染原因者を特定した場合に、土地管理者は出てこないのか。

【水環境部長】
 そういう意味では、汚染原因者を優先と御理解されるのであれば、そういうことになる。汚染原因者の部分をどう考えるかは、リスク管理措置の実施主体のところで御議論をしていただければと思う。
 いわばこれは、二つの考え方の一体構造のものとしているわけだが、その場合のものの考え方というのは、多分違う考え方に立っているので、そこのところの御意見を伺いたい。

【C委員】
 結局、表現の問題だと思う。事務局の意見としては、要するに、多くの場合責任を取るのは、結果として、土地管理者になるということ。
 ただ、原因者がはっきりした場合については、原因者にという考えなのだと思うが、A委員の話は非常に理論的な整理の話で、要するに現状の責任者と、以前の状態の責任者が二者いたときに、どちらが先かという点で、それは基本的には行為責任者の方にいくという話なのではないか。表現を変えれば、全然問題がないのでないか。

【H委員】
 お二人の議論と全く同じことだが、この考え方の理解をはっきりさせておいた方がいい。これを考える場合に、汚染原因者が仮に特定された場合に、そこから二つの考え方がある。所有者に対しても、原因者に対してもいける選択的な方法と、それから、汚染原因者がわかった場合には、負担できない場合は別として、原因者にいく考え方と二つあるわけだが、この考え方は、後者をとっているということなのか。

【事務局】
 この考え方は、汚染原因者が特定できる場合には、汚染原因者に計画の策定、措置の実施を求めることにしている。

【座長代理】
 今、H委員が言われた前者は連帯責任的な感じなのか。

【H委員】
 そういうことになる。最終的な負担は当事者同士で解決するにしても、どちらに対してもいける連帯責任的な考え方は前者。

【座長代理】
 事務方は、連帯責任ではなくて、汚染原因者がはっきりしたときには、汚染原因者にいくということで、そうすると、先ほどA委員が言われたように、別の考え方になるということにもならないのか。

【水環境部長】
 汚染原因者がわかったときに、汚染原因者を優先するというのはこの考え方である。

【A委員】
 表現の問題だと思うが、それほど重要な話ではないとみる余地もあるので、この辺にしておきたい。

【座長代理】
 この辺は少し議論してもいいと思う。ほかに何か御意見は。

【E委員】
 汚染原因者を特定できる場合ということで、本当にできるのかということを少し考える必要がある。何をもって特定するのか。非常に難しい問題で、土地管理者と汚染原因者とが協議する考え方の場合に、協議の前に汚染原因者の特定が入るかなと思ったのだが、ここは入らなくてもいいと思い始めたのは、逆に、そこできっちり特定するかしないかではなくて、ここでは土地管理者と汚染原因者との間で、ある程度協議が成り立てばいいと思う。
 汚染原因者を特定できる条件をどこまで考えるかによるのだが、本当に特定できるかどうか、非常に難しい可能性がある。地下水の浄化措置命令にしても、求められているのは、費用配分の割合を決めないとできないという話になっていて、それをやるのは、実質的には非常に難しい作業であろう。法律的にはよくわからないが、サイエンス的にやっていくと、非常に難しい問題である。汚染原因者の特定とは、どこまで求めたら特定できるのかということを少し考えておかないと、制度を作ったはいいが、机上の空論になりかねない。
 そういう意味でいくと、お互いの協議の間で、それを汚染原因者でやるという形でやれば、そのあたりが少しあいまいになったままで、ことが進んでいくという感じから、考え方によっては、一番実効性があるという感じする。

【水環境部長】
 その部分は、行政的に汚染原因者を認定する必要がない仕組みである。そういう意味では協議が調えばという意味合いである。

【I委員】
 これまでの事例調査で、土地管理者と汚染原因者とが一致しないケースが、どのくらいの典型事例として出ているかということも、幾つか調査結果があるので、そういう情報も必要。一致しないケースの場合、どういう典型的なずれがあって、どのぐらいの割合かとか、特定というのは本当に困難だと思うが、汚染原因者と思われる人と土地管理者が一致しない場合が、どの程度の割合であり得るのか、情報を伺いたい。

【事務局】
 平成11年度についてまとめたアンケート調査の事例の結果がございます。
 ここで原因者究明の実施状況というものを毎年まとめているが、原因者究明を行った中、かなりのものが事業者と特定、または推定されている。事業者以外で特定されたのは、全体の累積で3ということになっている。一方で、特定できなかった事例も1割強ぐらいあるのが実態である。これ以上の細かい整理はできていないが、全体のイメージは、こんな感じで特定されている。

【C委員】 
 E委員から話のあった考え方は、確かに浄化を進める点では非常に有効だと思うが、この場合には、行政で特定できないものを、結局、土地所有者に求償を要求するという点では、非常に土地所有者に酷なことを要求している結果にならないのかという点が若干不安になる。これが第一点の疑問。
 第二点としては、それを前提にしても、例えば被覆程度であれば、状態責任として最低限度土地所有者に要求しても、社会的には合理的かという気もするが、地下水汚染で浄化まで命ずることになった場合に、果たして状態責任者という形で、本当に最終的には自分の責任でやりなさいと言えるか、どこまで義務づけられるのか考えなければいけない。
 その関連で、土地の管理者に対して被覆の責任を負わせることが考えられるということだが、周辺の地下水汚染との関係で、浄化措置命令が必要な場合には、だれにもかかっていかないという話になりそうな気がする。そうすると、都道府県が出てくるスキームになるのか。

【事務局】
 まず一つ目の考え方について、汚染原因者が不明であるとき、どうするかということだが、表層部分の汚染土壌については、直接摂取による健康被害が想定されるということで、最低限の措置として、土地の管理者に被覆等の措置を求めても良いと思う。ただ、地下水へ溶出する部分の土壌汚染については、土地管理者にそこまで求めていないので、行政なりの対応になると思う。
 それと二つ目の考え方について、被覆程度の措置であれば、社会的に合理的だと言えるのではないか。ただ、浄化までやらせることについて、どこまでできるかということだが、そこのところは、まさに御意見をいただきたいところである。
 土地管理者に対する状態責任をどこまで求めることができるのか。一方、汚染原因者がいた場合に、その汚染の原因となった行為をした責任があるということだが、そういった行為責任というものと、どのように重みを考えるべきか、状態責任があれば、浄化までやらせる場合があると考えていいのかどうかも含めて御意見いただきたい。

【C委員】
 二つ目の考え方のスキームだと、結局のところ土地所有者が浄化責任を負うスキームになったときにどうかなという話をしたつもり。
 そういう意味では、行政も行為者を特定できないのに私人の努力で、誰かしらに浄化まですべて責任を負わせる制度がいいのかどうかという話である。行政が行為者を特定できない場合に、最終的にどう責任を求めるかというスキームの話とはちょっと違うと思う。

【水環境部長】
 先ほどの土地管理者との関係だが、C委員から、最初の土地管理者に対し、立入制限、汚染土壌の被覆等ということで、これは、こちらのリスク管理措置の内容をどう考えるかという部分との関係になるが、溶出の方については最低限モニタリングと、こういう話をどう考えるかという形で提示させていただいている。
 それから、先ほどの地下水の汚染そのものの浄化措置というパターンについては、地下水との関係をどう考えるかというのがあるが、基本的に地下水については、現行の地下水の浄化措置命令制度の世界ではないか。
 また、直接摂取というのは被覆なり立入制限なりで解決する。ある意味では最低限のリスク管理は可能である。
 溶出の場合のリスク管理で残るのは、モニタリングをしつつ、地下水に出なければいいが、今にも出かねないものについてはどうするのかということがある。そういう意味で、二つ目の考え方はいかにも漏れんとする場合というのは、基本的に土地管理者の世界ということ。ただ、その場合に、浄化が要るのかというのは疑問だと思っている。浄化というのは選択肢の一つ。封じ込めという形での選択肢もあろうかと思う。
 そういうところとのリスクの兼ね合いになろうかと思うが、漏れんとする行為を止める行為は、二つ目の考え方は土地の管理者という整理である。
 その前に、土地管理者との関係で、無資力の場合にどうするかということについて御議論をいただきたい。

【A委員】 
 いろいろな問題があるのだが、土地所有者の責任を中心にしていく考え方だと、浄化に関してはかなり消極的な方向に進むことが予想される。つまり、被覆とか、封じ込めとか、とりあえずの措置をとることを第一次的に考えていくような方向に進むだろう。それが良いのか悪いのかというのはいろいろな問題があると思う。
 それからもう一つは、土地所有者の責任を特に強調していく考え方をとった場合に、諸外国で問題となっている善意の購入者について、どう考えるかという問題とか、あるいは、法律施行前に土地を、やはり善意で取得した土地の管理者についてはどう考えるのか。これは諸外国でも、むしろ犠牲者だという位置づけもなされている。
 それと、特定の件だが、先ほどのE委員のお話だと、原因者が複数ある場合に、汚染の割合を特定するまでを含めて特定というお考えのように思える。非常に科学的な特定をお考えのようだが、原因者が複数の場合に、その割合を特定するところまでを含めて特定とお考えになっているのかお伺いしたい。公害防止事業費事業者負担法程度の法的な判断ができればいいと、法律の方からは考えられるわけだが、それはそういうことでいいのではないか。

【E委員】
 複数の原因者というのは、地下水の浄化の方はそのようになっていると申し上げたので、土壌の話について申し上げたわけではない。

【A委員】
 土壌の場合も複数の原因者がありえる。

【E委員】
 もちろんだが、地下水については、もっと難しい。それは、複数それぞれについて、何割浄化をする責任があるかというのを特定しないと措置命令をかけられないからである。
 土壌について、そういうことを申し上げたつもりではない。

【A委員】
 その特定が、そこまで入っているかということである。

【土壌環境課長】
 三点ほどご質問をいただいたが、まず、最初の第一点の、浄化措置が限定されるということだが、それは浄化が必要かどうか、全体的にどうなのか、リスクの方からどう考えるかということ。
 そこのあたりは、土地管理者又は、汚染原因者にやらせるかで、そう大差はないと思う。
 土地管理者が、自分の土地をどうすべきかという場合。リスク低減はどこまでと義務づけているわけではないが、浄化についても土地管理者が望めば、浄化が進むということがあるので、必ずしも遅れるということはないと思う。そのあたりは、むしろ原理原則のところのリスクの方から考えるべきではないか。
 それから、二つ目。善意の購入者が全く情報を知らないで調査した結果、汚染が発見され、土地管理者がという面は確かにある。
 しかし、その土地は、管理者が今後も所有していくわけで、逆に汚染された土地で対策をやれば、その土地自体も大いに利活用できるということになる。そういった面もあわせれば、結局責任を取ってやっていくのは土地管理者であると思う。他の方がいろいろ入って汚染についてどうだこうだというのでは、必ずしもできない状況もあるので、やはり土地管理者が責任をとるのが一番いいのではないか。

【水環境部長】
 三つ目の特定の件だが、公害防止事業費事業者負担法とは、多分レベルが違うのだろう。
 公害防止事業費事業者負担法は、公が出ていって、ネゴシエーションの世界で費用分担をする構造になるが、こちらの場合の汚染原因者の特定は、ネゴシエーションの世界ではない特定の仕方が要るのではないか。そういう意味では、やってしまった後の金の分担という世界ではない、特定の仕方のレベルになろう。

【A委員】
 リスクの方からどのぐらいのことをするか決めるべきだというのは正論だと思うが、土地管理者についての状態責任ということで、善意で買った人などを含めてやるとすれば、非常に限定的なことしかやってもらうわけにはいかないのではないか。

【E委員】
 特定が難しいという点について補足すると、科学的にきっちり詰めるのは非常に難しいので、特定というレベルを一律の範囲で決めるのは非常に難しく、例えば、法律で縛って一律にがっちり進めていくというのもなかなか難しい話である。それこそ資力がない原因者はどうするのかというものもあり、当然その間に、例えば公的な費用を導入してきれいにするという話も入ってくる。その場合に、どこまでやるかを明確に線が引けるわけではないだろうと思う。そういうことを考えていくと、実際には、少しあいまいな形であるが、当然その当事者ごとに、例えば大企業はもう土地を持っていて、責任者はわからないから、それはやらないとかという話に必ずしもならないと思う。非常に小さなところが、原因者がわからない、あなたのところで除去作業をやりなさいという話ではないのではないか。そこら辺はあいまいではいけないのだが、実効的に動いていくというのは、そういうことではないか。

【B委員】
 やはり資力がないようなところにどういう支援を考えるか、それから、公的な費用はどうするのか。例えば行政の指導で、昔そういうことをやったものもある。そういう場合でも、汚染原因者として扱い、責任を負わせるのか。それから、土地管理者が汚染を知っていて購入をしたような場合はどう扱うのか。土地管理者と汚染原因者という、単にそういう枠組み以外に検討すべき課題はたくさんあると思う。
 それから、一体いつまで遡って、どこまで責任を取るのか。全体の中でどういう考え方をするのかということも、前提として考えていく必要がある。

【C委員】
 法律を考える場合、社会的な公平とか、いろいろ考えて制度を仕組むことが必要だと思う。法律の制度の中に、多少特定に難しい面があっても、原因者を捕まえない制度は、社会的な公平からいって、納得されない制度なのではないか。
 確かに土地の管理者は状態責任という話があるが、警察法上の状態責任というのは大体危険物、ガソリンスタンドみたいに、だれが見ても危険物だということがわかって、ガソリンタンクの所有者もそれを覚悟の上で使っているから、いろいろと責任が問われても、受忍するという話になる。他方、伝染病予防で汚染された建物を除却するというときには、建物を除却することを受忍するだけの責任を負うと、こういう話になる。
 それと、もともときれいな土地が汚されて、それをどうするかというときに、地下までは通常の土地の所有者の支配権は及ばない。こういったときに状態責任という話でどこまで追及できるか、非常に難しい。しかし、管理者のある程度の責任は認める方向で、土地所有者が責任者に入るという昔の懇談会のときの経緯もある。
 そういう経緯を考えると、やはり原因者を捕まえられる場合には、きちんと原因者を捕まえて浄化を命ずるという制度を残しておくべき。それを当事者のいわゆる交渉の世界に流してしまうというのは、社会的公平の見地からどうか。
 そういう制度を仕組んだ上で、実際上の法律の運用というのは、そういう中で自主的な当事者の話し合いによって浄化が進むという制度になっていくのではないか。

【I委員】
 二つ申し上げたいのだが、一つは、現行の水濁法で措置命令の規定があるが、実際にその命令が行われた事例は知らない。これはその行為自体の特定が非常に難しいということと、地下水として利用しているという条件が入っているためだが、これが現実にどういう機能を果たしているかというと、基本的に地下水としても使っていない、あるいは使わないのだからいいではないかという形で、地下水が汚染されても、水道転換して地下水が放棄される一つの根拠になっており、今の水濁法の規定が、必ずしもうまく機能していないのではないか。よって、この点についても検討の余地があるのではないか。
 もう一つは、いわゆる状態責任が、日本の法律の中でどの程度まで一般化されているのか、法律の専門家の方から教えていただきたい。原因行為者が特定できる場合は、基本的にやってもらうという筋は通さないといけないのではないか。
 神奈川県の秦野市には条例があるが、100幾つの事業所を全部調査して、土地所有と原因行為者のずれという問題は余りなく浄化を行った。ただ、汚染割合がわからないから、それの追及はせず、残りは全体として行政の方も特別な措置を使って、公的負担も一部入れるという形で、かなり浄化が進んだ。このような先進事例の状況を調べていただきたい。幾つかのパターンがあると思う。重金属汚染の場合はまた別だろうし、そういう典型事例などを御検討いただきたい。

【土壌環境課長】
 水濁法の浄化措置命令の関係だが、現段階で発令した件はない。その原因は、今、I委員が御指摘になった点が多々あったと思う。ただし、法により、地下水の汚染がある現場において、どういう原因、形でもって、汚染されたかという因果関係が証明されている例が必ずしも多くないというのがまず一つ。
 もう一つは、実際に汚染事例があったとき、直ちに飲用指導を行い、当座をしのぐ。なおかつ、簡易上水道として利用されている場合においては、実際に上水道を引くことによって、危機を回避する対策をしている。そういった意味での要件がなくなるということで、これまで浄化措置命令の発令はない。
 ただし、具体的な地下水の対策は、平成八年の浄化措置命令の導入後、現場での自主的な対策も含めて、各地で進んでいる。これは地域によって差はあるが、土壌ガスの吸引であるとか、バリアを設けてやるといった形での対策は相当進んでいる。ここ一、二年、特に大手の企業を中心に自主的な対策は相当進んでいて、改善も図られている。制度としては、自主的な措置を促進するという意味でも機能を果たしている。

【座長代理】
 状態責任をとっている制度というのは、どのようなものがあるかという御質問かと思う。

【C委員】
 状態責任について、全部の法律を調べたわけではないが、例えば消防法では、危険物について安全な状態に保持するということが、所有者にかけられている。それから急傾斜地防止法で、急傾斜地の所有者に、がけ崩れ等の危険があった場合に措置命令がかけられている事例がある。また感染症予防法で、汚染された建物等の浄化とか除却命令とか、そういうものが代表的な状態責任の立法例だと言われている。

【A委員】
 二つ目の考え方は、土地の管理者が実施をして、その後、原因者はやるのもやらないのも自由だと。協議ということになると、非常に不公平になってしまうので、残念ながら法律的には通りにくい。
 状態責任を考えることは不可能ではないが、行為責任も一方である。それは両方考えるとすることでいいと思うが、状態責任の方ばかりが強調されると、原因者が一方でいるのに土地の管理者が責任を負って、後はどうしようもない。これは訴訟を誘発する可能性があって、我が国の場合、それほど訴訟が好きな国民ではないが、スーパーファンド法などが米国でできたときに、できるだけ多くの人を責任当事者にしようとして、不公平感を与えたことが訴訟の乱発につながったということもある。実効性のことを考えるのは大事だが、訴訟が誘発されて、その費用でお金がかかるような社会的なシステムというのは望ましくない。

【H委員】
 私も三つ目の考え方が三つの中では公平と思うが、E委員に伺いたいのだが、二つ目の案がよかろうということだが、原因者がわかりにくい、証明しにくいというのは、確かにそのとおりだが、科学的に100%証明する必要はなく、法的な範囲で、責任原因者と認められる程度であればいいという考え方になろうかと思うが、原因者が判明した場合でも、やはり二つ目の考え方がいいとお考えか。

【E委員】
 原因者が特定できるというのは、どういう条件をそろえて言えるのかということで、機械的に詰められると、ほとんど三つ目の考え方は機能しないという意味で、二つ目の考え方かと思う。
 ある工場がずっとその上で操業していて、明らかにその物質を使っている。この場合は科学的にある程度証明できる。数値が100%だと言われると、そこら辺はどこら辺まで言われるかという話になる。
 法律の社会通念上、どの程度のことで汚染原因者が特定できると判断できるかというのはわからないので、それでもできるということであれば、あえて二つ目の考え方にする必要は必ずしもない。
 三つ目の考え方の場合、その辺がかなり科学的に、綿密に求められるのであれば、立法上ほとんど動かないのではないか。せっかく汚染原因者を設けても、それをぎりぎりやっては、社会的に証明することは、ほとんど不可能であろう。
 そういう観点から見ると、二つ目の考え方というのはかなり実効的である。ただ、先ほど土壌環境課長から話があったが、そういうものを作ったことによって動くといった効果まで含めて考えるという意味で、三つ目の考え方というのも一つある。大体通念上、どこまで証明できれば汚染原因者と特定できるか、これを逆に教えていただきたい。

【H委員】
 あくまで法的判断になるので、科学的な証明等まで求めるものではないと、はっきりしておいた方がいい。
 裁判の世界になると、証明の度合いが低いものでも認めてしまうので、これは相当幅がある。お金を払う場合と、命令をかける場合とで差が出ることも考えられる。
 しかし、E委員がおっしゃっているものよりは、相当ゆるいものがいいのではないかという認識を持っている。そういう前提に立って、その難しさというのは二つ目の考え方でも同じ問題が出てくる。だから二つ目の考え方では、原因者の確定を所有者に任せてしまうおうと。逆にいえば、所有者に証明できないことのリスクを負担させることになる。
 その場合、三つ目の考え方の方が公平だろう。外国の立法例を見ても、原因者を法律上の義務者にしないで、所有者だけを義務者にするという立法例は知らない。
 先ほどから申し上げているような例等の証明というものがあった場合に、原因者に義務を課さないというのは、はなはだ社会的に公平を欠くのではないか。
 無論、その場合でも、負担能力がない場合はどうするかとか、あるいは所有者が善意の場合に、どういう運用をするか、細目で考えていかないといけない。それから、遡及の問題もどうするか、細かな規定に入っていくときには考えなければいけないが、基本的には三つ目の考え方が、公平ではないか。

【座長代理】
 スキームの実施主体のことで、議論していただいたが、骨格として、調査、登録、リスク管理措置の実施もある。これらの議論で、実施主体の話もまた変わってくる。
 本日のところは、実施主体については、一つに絞り込まず、これまでの意見を踏まえ、事務局でさらに検討を進めてもらうことにしたい。
 スキームとの絡みで、フレームの問題について、何か御意見をいただきたい。

【G委員】
 三つ目の考え方では、原因の特定に行政が少し出てくる。その場合、公害防止事業費事業者負担法で行政がその原因を特定するのに近いようなイメージか。今までの汚染土壌に対してやってきたのと、比較的似ていると思うが。

【水環境部長】
 私が申し上げた汚染原因者の特定というのは、公害防止事業費事業者負担法の特定とは違うレベルが要求される。そういう意味で、三つ目の考え方というのは、違うレベルでの特定が要求される考え方である。
 スキームで御議論いただくときに、汚染原因者にかけようとするのは、やはり最低限のリスクの管理ではなく、原因者として特別に浄化まで求めるというイメージで議論するのか。汚染原因者ということになると、多くの議論の中身というのは、汚した以上、汚した者が、という議論になりやすいが、一定の私有財産が他人に危害を及ぼすために抑えるという観点からいくと、それもまた違うのではないか。リスクの内容等も含めての御議論の際には、その点も含めていただきたい。
 制度としての何かをというときには、だれかのときには特別きつく、だれかのときはゆるくとかという構造ではないと思う。公上必要なレベルというのはここだという構造になるのではないか。

【A委員】
 事業者が行う調査について、信頼性を確保するための国、都道府県の登録を受けた機関、あるいは第三者機関による認証の仕組みをぜひ設けていただきたい。
 自分にとって不利益になることを明らかにすることは、そんなにできることではない。それは、この仕組みを考える上で非常に重要である。

【E委員】
 先ほど申し上げた都道府県の立入検査があるが、ここは非常に危惧している。特に行政に、事業者がやる調査に対して、的確に判断できるだけの体制が整えられているのか。そういうものをどう整備するかというのも一つの重要なポイントである。
 普通の環境問題と違って、土壌、地下水というのは非常に特殊なことがあって、経験がないと、テキストにのっとっていけばできる話でもない。そういうところの手当を何か考えておく必要がある。
 環境影響の範囲について、二つの暴露経路にするという考え方なのか。そうした場合、基準の見直し等を行ったときに、ほかの環境媒体の場合には、単に排出規制の項目を加えればいい話だが、浄化措置というのは、一回浄化措置をやるともう一回浄化措置をやらなければいけないという話になりかねないので、そこのところをどう手当するか、どう考えるかというルールを決めておかないと、大変な話になる。
 それから、地下水の利用が想定されない地域といって考えたときに、飲用としての暴露はないので、その分についてはいいだろうという話になるかもしれないが、例えば直接摂取については、当然ないはずで、それ以外のものについて、ここでどう考えるかというのは、また同じような議論として出てくる。
 もう一つ、利用が想定されないという、非常にあいまいな表現になるのもどうかと思うので、具体的な基準みたいなものをつくっておかなければいけない。
 それから、調査について細かい技術的な話になるが、汚染をどう定義するか、土壌ガスについて基準等をどう考えるかという話があるし、土壌ガスで本当にわかるかという議論が一つある。
 それと、汚染管理地の台帳の話だが、地域住民の方が知ることは必要だが、そのリスク情報を正しく理解をしてもらうための仕組みというのは、何かつくっておかないと、かえって過大な負担を必要とする。情報が公開されなくて隠れてしまうようなことになりかねないので、この辺の手当もぜひ入れていただきたい。
 措置の実施主体が不明の場合で、周辺に危害を及ぼすことが想定されるときには、一つの考え方として、土壌汚染という考え方から少し離れてもいい。というのは、人の健康を環境問題から保護するというのは、行政の最大の仕事と役割であり、汚染原因がどうあれ、対応しなければいけない。
 一方で土壌を浄化するという手段があるが、それが機能しない場合にどうするか。これは住民の健康を守るという観点から行政が何をすべきかという判断でやっているときに、一つのオプションとして、今言っている土壌浄化をさせるという制度がある。だがそれが機能しないときに、どういう手段を行政として持つべきかという観点から整理していくべき。土壌汚染の方からの整理というと、汚染原因者がいてもなかなか難しい話になる。
 ただ、こういう手段ではどうしようもないといったとき、行政としては人の健康を守る責務がある。そこで行政として、できない場合のオプションとして、どんなものを考えるのかという考え方も一つあるのではないか。

【事務局】
 御指摘の方は検討させていただきたい。特に調査の方法論については、御指摘のとおり、土壌ガス調査そのものをどうしていくかは、これからの大きな課題と思っている。

【B委員】
 臨海工業地帯のような臨海部の地域の問題は、周りに何も住居がなくて、地下水を飲用水として使わない、かつ、工場の中はそれなりに管理されている。しかも、そもそも工業専用地域というのは、工業の利便を増進するため定めた地域として指定されているわけで、そこに社会的リスクがない場合に、調査対象とする意味があるのかということを、まず検討すべきではないか。この工業専用地帯が何らかの形で都市計画的に別の用途に変わるときは、都道府県からの調査命令等という形で調査に入る仕組みとすべきではないか。ただ、市街地における工場の場合は、この辺の解釈は非常に難しく、周りの状況によるところがある。リスク的に見たら、周りは何もないし、周辺の井戸水も飲用水として使っていないというときには、対象とする必要がないのではないか。対象が事業をやめた後、また工場として使用する場合に調査する必要があるのか。

【E委員】
 対象とする土壌汚染の環境影響の範囲を二つの経路だけとすれば、今のご意見のとおりだが、必ずしもそれだけで土壌汚染が済むのかというのは別な話である。
 例えば、土壌が溶出して海に流れ込むとか、またそれが魚に濃縮するという経路が考えられる。よって、臨海部の工業地帯は大丈夫かというと、単純にそうは言えないし、すぐに危ないという話ではないが、対象外だとも言いにくい。
 そういう意味で、範囲というものがこの二つの経路で本当にいいのか疑問である。

【I委員】
 例えば瀬戸内海の豊島の最初の状態は、ダイオキシンが外に流出している危険性もあった。もう一つ、臨海部での六価クロム汚染で、東京都の江戸川など、井戸水は使っていないのだが、海に流出している可能性等もあり得る。このように、ここの二つの経路には入らないリスクはある。浄化のレベルを考える場合、その後の用途の問題で考えるというやり方があり、リスクとしてそういうのもあるという認識はしておく必要がある。

【C委員】
 法律の目的は、整理としては、健康リスクの低減ということになるかと最終的には思う。
 それとの関連で、汚染の動きの程度から、地下水に出て、飲用が予想されるレベル、また、災害対策用の井戸に出ているレベルにおいて、現行の水濁法で措置命令をかけられるのか。

【事務局】
 現行の水質汚濁防止法の解釈では、飲用井戸、水道水源用井戸、災害用井戸として用いられている地下水において汚染が判明した場合である。

【C委員】
 現に出ていない場合はかけられないということか。

【事務局】
 飲用井戸の地下水に現に出ていない場合について、発動の事例が一件もないということもあるが、解釈としては難しい。

【C委員】
 モニタリングをして、データの確認をしないと措置命令をかけられないというのは、迂遠な気がするが。

【水環境部長】
 浄化措置命令は健康のリスクということで、取水地点に及ばない限り、命令がかからない構造。今回の場合、土壌をどう考えるかということだが、御趣旨のように、地下水に落ちかつ健康被害がない限り、浄化措置命令は発動しない。健康リスクという観点からの整理では、そういうことではないか。今回の場合は、落ちないけれども、落ちないようにモニタリングすると。かつ落ちたから、自動的に浄化措置命令が働くわけではないという隙間が構造上ある。ただ、落ちないようにモニタリングしてかつ非常に危険な場合は、周りの利用状況も勘案してという構造になる。

【C委員】
 水濁法の措置命令でとにかくやって、この法律は、浄化の仕組みはつくらないと読めるのだが。

【水環境部長】
 地下水の浄化についてはそういうことで対応してはどうかと書いている。

【D委員】
 地下水の浄化について、現行の水質汚濁防止法で対処することは結構だと思うが、地下水の浄化を行う場合、土壌の浄化を工場としてやっているので、土壌の浄化基準というのは、土壌汚染防止体系の中で溶出基準として設定される。したがって、地下水の浄化にも役立つ措置命令が、この体系の中で出てくると考えていいのではないか。

【水環境部長】
 リスクの管理の形で考えているので、一定のリスク管理を行う土地の要件はどうかと。浄化まで全部する必要があるのかと言えば、リスクの対応によって、そうではないのではないか。
 ただ、土壌を浄化することによって、地下水の汚染を止める、あるいは改善することをねらっているという意味では同じである。
 一定の基準を設定して、そこまで必ず浄化しろというイメージではない。浄化なり、あるいは一定のモニタリングなり、防止という手段を講じて、その汚染をとめる。あるいは改善することをねらっているという意味においても同じである。

【D委員】
 土壌の浄化の基準はあるということか。

【水環境部長】
 あるが、必ずしもすべての場合に義務づけるものとしてイメージしていない。汚染地の管理から外れてしまうということはあり得る。それは一定の基準をどう考えるかということで提案しているが、例えば環境基準に適合するということであれば、監視の必要がないので、汚染管理地から外れる。それをやりたければ、そこまで浄化する必要がある。ただ、汚染管理地としてのリスク管理を講じるということでよしとする道もあるということである。

【A委員】
 結局、土壌汚染が原因になって地下水汚染に広がるのが多くの場合なわけだが、それを完全に分断したような考え方をとるのが現実的かどうか。地下水が汚染されて飲用水までいくことが将来的に予想される場合、土壌を浄化するのは、ここから出てくるのか。
 それから、人の健康等への影響の、「等」に何が入っているかわからない。生活環境の保全という話も省いてしまうということなのか。
 地下水が汚染されて飲用水までいくことがわかっていて、それが土壌汚染が原因になっているという場合に、放っておくというのは非常にまずい。

【土壌環境課長】
 決して飲用水にいくのを放置しているという意味ではない。そういうおそれがあり、飲用水が利用されているところで、相当程度の汚染土壌の固まりなりがあることがモニタリングの際にわかれば、そこまでやっていただくということ。そういう意味で未然に防ぐような形で土壌の側から措置する。

【A委員】
 生活環境の方はどうか。

【土壌環境課長】
 暴露経路のとらえ方ということで二つほど分け、一つ目が、人の健康の保護の観点であり、この中に、汚染土壌の直接暴露と地下水への溶出基準の観点がある。
 それとは別の観点から、生活環境の保全の観点がある。たとえて言うと、汚染土壌の直接暴露によって不快感を生じる場合や、他の媒体で、例えば地下水等を通じて暴露するということでの飲用水等の油膜といった面についても引き続き検討すべきではないか。
 直ちにどの物質をどうするかということまでは至っていないが、可能性は検討したい。

【A委員】
 健康等の「等」には生活環境の観点が入っているという理解でいいのか。

【土壌環境課長】
 入っている。

【E委員】
 土壌環境基準をクリアしても、土壌環境の対策で土壌の方がきれいになっても、地下水がきれいになるものではない。土壌だけをきれいにするのは簡単だが、まだ地下水は汚れているというのは十分起こり得る。そこは地下水の方で任せますよというこだと解釈してよいのか。

【水環境部長】
 地下水の浄化措置命令の世界で対応する。

【H委員】
 水濁法は先にあるから、技術的な問題としてはわからなくはないが、地下水と土壌を分けるのが現実的かという印象を基本的には持っている。
 土壌汚染があって一定基準があり、それをクリアした汚染が地下水を汚染するおそれがある。そして、その地下水が飲用水として摂取されて、健康影響を及ぼすおそれがある。こういう場合は水濁法ということか。
 そうすると、環境影響の範囲というものは、土壌が汚染されていて、例えば大気中にガスなどが出てきて健康影響を及ぼすとか、生活環境に影響を及ぼすとか、こういう場合を想定しているということか。

【事務局】
 基本的に想定しているのは、地下水そのものを見るのは、水濁法の世界だが、地下水汚染の未然防止を図る観点から、地下水に溶出する以前の土壌をとらえるのがこの制度ということ。
 未然防止の観点といえども、一定の基準は当然必要だが、土壌の汚染から、地下水を汚染するおそれがかなり確実に言える場合に、何らかの措置が必要だろう。それをこの中で何とかしたいという趣旨。ここで土壌の汚染についても何かをできるような仕組みを設けたい。とにかく土壌の調査をして、溶出という観点から、一定の基準を超えるときに何をどこまでさせるのかという議論しなければいけない。まずは最低限、地下水のモニタリングのようなものは義務づけるのがいいのではと考えている。
 あるレベルになったときには、汚染土壌の一定の基準までの浄化、あるいは封じ込め、とにかくある一定の基準を超えるようなものについては何か措置を命じるような場面があるのではないか。それはどういう場面かというのが、水濁法との関連もあり、なかなか難しいが、どのくらいのレベルの汚染であれば、何らかの措置を求めることになり得るのか。
 ただ、あくまでも未然防止なので、飲用までいっているかどうかということではなくて、相当程度のおそれがあってということ。敷地の中で、例えばモニタリングをして、あるレベルを超えたら、何とかしなければいけないのかというところでリスク管理の措置を求められないか。そこの議論を詰めて整理したい。
 そこで何か言えると、少しクリアに答えが出せるのかなと。今はイメージとして、まだ十分にとらえ切れていないが、相当にそういうおそれの蓋然性が高いというか、そういうものを何かとらえきれないだろうかと。そのときには、地下水ということではなく、土壌の側から何か措置を講じられないだろうかということを検討したい。

【H委員】
 土壌自体に何らかの基準を決めるにして、土壌を対象として措置を講じることには、異論があるわけではない。ただ、考え方の問題として、必ずしも地下水を経由して健康に被害を及ぼすおそれがなくてもいいという理解か。

【事務局】
 基本的には地下水を経由して、人の健康というリスクでとらえたい。ただ、それを地下水の方で見るのではなく、土壌の方で見られないだろうか。つまり、地下水の方で見ていくと、飲用の井戸で見ればいいではないかという話になるので、水濁法の世界との整理が微妙だが、土壌の側で何か見ることができないだろうかというところを検討しなければいけない。あくまでもリスクは、例えば地下水の飲用を経由してということで、そういうことで飲用水の方はとらえようとしている。

【F委員】
 リスク管理措置の内容というのは、地下水を経由するものであれ、直接摂取であれ、土地の利用目的によって、かなり変わってくるのではないか。そこで、今対象としている土地の利用目的とは、どういう基準で、だれが判断するのか。もし、土地の利用目的を変えるときには、どういう基準で、だれが判断するかということを教えていただきたい。

【事務局】
 まさに何かしら基準を決めなければいけないところ。
 例えば直接摂取の場合では、事業所の中については、例えば別の観点、労働安全衛生法上の必要な措置が講じられた場合に、そこに対してどうするのか。これは土地の一つ利用の形態になるし、例えば措置の中身として、想定されるのは当然裸地でなければ直接な暴露はない。そういった土地利用を考えながら、どういうリスク管理措置があり得るのか。そこでどういう措置をすべきかというときに、いろいろなことが講じられている場面をどう考えていくのか、今度はリスク管理の中身でまた考えなければいけない。その管理計画みたいなものも、御提示をしていかなければいけない。

【I委員】
 一番の問題は、制度の必要性が、基本的に土壌汚染が放置されて、人の健康に影響を及ぼすおそれがあるためと、非常に限定されているために、例えば生活環境についてどうかとか、経済学的に言うと、直接リスクがなくても土地に汚染が残っていることで経済的な価値が下がるとか、あるいは水資源としての利用可能性が排除されるとか、そういう問題が入ってこない。そういう問題が入れば、利用目的に応じた基準の設定とかが全部入ってくる。

【土壌環境課長】
 そういった意味で、まず土壌汚染が、どういった問題を起こすかという面から整理しなければいけない。人の健康の面とか、生活環境の面とか、その他も含めて、いろいろな経路なり、影響というのを、リスク評価の検討会でもかなり検討した。その結果が、リスク評価検討会の報告書で整理されたような考え方ではないか。
 一方で、ヨーロッパあたり、ドイツとか、オランダで、例えば土壌の多機能性であるとか、生態系への影響で、土壌汚染を考えられないかという議論があるが、他の環境関係の制度と比較して、例えば生態系の話も、将来的な考えとしては、手法的にも確立すれば、入れていくべきと考えている。
 ただし、多機能性に含まれる要素については、尺度なりが必ずしもできていないものが多い。それが可能であれば、やるのはやぶさかではないが。
 土地の値段の話や、水資源の話についても、解析していけば、例えば地下水の影響という点から水資源の問題は整理できるのではないか。そういう形で問題点を整理できれば、要素として入れていきたい。いずれにしても、今回、大枠としてアプローチできるのは、人の健康の面と生活環境の面ということで整理させていただいた。

【C委員】
 土壌懇以前の会議でも、その点は議論して、結局、横並びでいろいろ考えて、健康リスクに焦点を当てざるを得なかった。
 結局、水濁法でいく前の未然防止のところをいろいろな措置で見ようという話だと思う。ただ、やはり地下水が出てしまうと、行政としては代用水源を飲用として別につくらなければいけない義務が出てくる。そうすると、代用水源を開発した途端に、それはいらないではないかという話になるし、土壌をきれいにしても、地下水をきれいにするのは非常に時間がかかって、結局出ていってしまうという点では、未然防止の観点というのは、非常に重要。
 そういう意味では、濃度基準であるとか、そういうことで社会的に画一的な合意ができる未然防止の機能をつくって、きちんとした制度としていただきたい。 

【A委員】
 地下水が土壌汚染によって汚染されて、将来世代が地下水を飲めなくなるということになっては困る。あと地下水が汚染された後、浄化していくというのは非常にお金がかかるので、その前段階として土壌汚染のところで浄化をするということを考えていくべき。

【座長代理】
 予定の時間が迫ったので、この辺で本日のところは閉めたい。
 今日はスキームということで、骨格を決める大事な議論だった。各委員からの御意見はまた事務方で再度整理する。今の論点についても、再度事務方で整理をして、次回ということになろう。それでは、事務局にお返しする。

【事務局】
 次回の日程だが、一週間前には最終的な御連絡をしたいので、よろしくお願いしたい。これをもって、第7回の検討会を終了させていただく。