環境省水・土壌・地盤環境の保全土壌関係中央環境審議会等における検討中環審答申及び検討会土壌環境保全対策の制度の在り方に関する検討会

土壌環境保全対策の制度の在り方に関する検討会(第5回)会議録


1.日時

平成13年3月29日(火)14:00~17:00

2.場所

合同庁舎第5号館別館共用第13会議室(7F)

3.議題

(1)関係者からのヒアリング
(2)検討課題の再整理
(3)その他(次回以降の予定等)

4.出席者

(委員)
大塚  直 委員 嶌田 道夫 委員 高橋  滋 委員
谷川 義夫 委員 中杉 修身 委員 原田 尚彦 委員
野口 基一 委員(岸川 神奈川県環境農政部大気水質課課長代理 代理出席)
細見 正明 委員 松村 弓彦 委員 吉田 文和 委員
(河内  哲 委員、林  裕造 委員は欠席)
(事務局)
石原 一郎 水環境部長
福井 雅輝 水環境部企画課長
伊藤 洋 水環境部土壌環境課長
内藤 克彦 水環境部土壌環境課農薬環境管理室長
小柳 秀明 水環境部土壌環境課地下水・地盤環境室長 他
(ヒアリング対象者)
米澤  勉 三菱地所株式会社企画本部社会環境推進室長
古屋 雅弘 (社)不動産協会常任参与

5.配付資料

資料5-1土壌環境保全対策の制度の在り方に関する検討会委員名簿
資料5-2関係者からのヒアリング資料
資料5-3主な検討課題
資料5-4汚染の環境リスクのとらえ方
参考資料5-1土壌の汚染に係る環境基準について

6.議事

【事務局】ただ今から土壌環境保全対策の制度の在り方に関する検討会の第5回を開催する。まず、本日の配付資料の確認を行う。(資料の確認)
本日は、河内委員、野口委員及び林委員より欠席との御連絡をいただいている。野口委員の代理として、同じく神奈川県の大気水質課の岸川課長代理に御出席をいただいている。また、高橋委員、それから細見委員から、30分かないしは1時間ぐらい遅れるという御連絡をいただいている。
それから、第3回の会議録の件については、案としてお手元にお配りしているが、修正等があれば4月11日までに事務局の方まで御連絡をいただきたい。会議録の取扱いについては、これまでのとおり先生方の御確認をいただいた後、氏名を伏せて公開資料とさせていただく。
では、座長、進行の方をお願いする。

【座長】それでは、本日は不動産所有者の立場から、三菱地所の米澤社会環境推進室長及び不動産協会の古屋参与においでいただいているので、早速お話を伺いたい。説明は大体30分程度でお願いし、その後、20分程度の質疑を行いたい。それでは、よろしくお願いする。

【三菱地所・米澤氏】資料5-2を御説明させていただく。その前に、私ども不動産協会には環境自主行動計画検討小委員会があり、6社が集まり環境に関するいろいろな検討をしているが、今回の土壌環境保全対策については、会員すべての御意見を賜ったわけではないので、取り急ぎ不動産協会の方でまとめた。
3頁目の典型的なケースだが、工場跡地等をディベロッパーが取得してマンション開発し、一般顧客に販売する場合がある。問題になるのは以下のような場合である。
まず、土地取得に当たって土壌調査を行い、その結果汚染度が高いため売買契約解除になる場合、瑕疵か否かの判断の問題になるということ、これは工場等の跡地を取得して土地の売買契約を行った場合に、こういう問題が発生するという場合がある。
次に、土地取得に当たって土壌調査を行い、汚染度が高いとの調査結果であったが、汚染者が取引相手の土地所有者ではないことが判明したときに、浄化責任の所在はどうなるのかということ。
3点目は、土地取得に当たって土壌調査を行い、調査の結果判断の微妙な汚染度であった場合。これは汚染されているか、されていないかという基準値の問題がある。
4点目は、土地取得に当たって土壌調査を行い、問題ない汚染度との調査結果があったが、調査に信用がおけない場合の調査主体の問題。だれが、汚染の有無、あるいは安全性の判定をするのかという問題。
最後に、土地取得時には土壌汚染のおそれがないとして取得したが、開発時あるいは開発後に汚染が発覚する問題。これは調査すべき土地か否かの情報開示及び浄化責任の所在の問題。以上5点ぐらいが、最近のマンション開発についての特徴である。
それで、資料5-2の頭に戻るが、まず、土地の土壌汚染問題に対する現状認識について、(1)は、私ども総合ディベロッパーあるいは不動産業者という立場から土壌汚染問題を見ると、基本的には土壌汚染の原因者ではなく、むしろ、土壌が汚染された土地を取得したがためにトラブルに巻き込まれる可能性が非常に強いと認識している。
(2)は、行政側の都市計画や再開発を含めて土地利用をしていくわけだが、都心あるいは周辺部に工場跡地等が点在しており、それをいわゆる都市計画でいう用途地域地区指定上の住宅地にしたい、あるいは業務地にしたい、商業地にしたいというような状況下において、土壌汚染問題がクローズアップされてくると、良好なまちづくり、土地利用が阻害されるのではないかという心配もディベロッパーとしては持っている。
(3)は、健康とか財産、あるいは自然環境の保全といった観点から都市の中の貴重な土地資源というものを有効に利用させようとしても、土壌汚染問題が今後阻害要因になってくるだろうと認識している。
(4)は、東京都が本年の4月から施行する都民の健康と安全を確保する環境に関する条例について、開発を契機として該当する土地の調査・浄化を求めているが、国土の保全という大局的な観点からいって果たして東京都のような条例でよろしいのかどうかという疑問も出てくる。
(5)は、私どもの立場上、開発時に当該土地を開発者の責任と負担において調査・浄化することにこだわられると、経済的な問題、あるいは住民及び消費者等とのトラブルを含めて適切に事業を推進していくことができなくなってしまうというような心配を持っている。
(6)は、都条例のように開発者に何らかの調査・対策義務を課して、そのコストを汚染者と開発者との間での私的な交渉に委ねられると、極めて限られた関係者の中だけのリスクになる。国土の保全、土地の有効利用、あるいは公共の利益の増進というのは、当事者間云々という議論に終始するのはよろしくないのではないかと認識している。
次に要望事項だが、(1)は調査・処理対策の発動要件という表題をつけた。調査・処理対策の発動終了要件は、有害物質の絶対的な危険性だけで一律に定めるのではなく、土地の用途、特性等も加味して、現実的、実効性のあるルールを定める必要がある。
(2)は、調査・処理対策の契機・主体であり、調査を行うべき土地の特定は、開発の有無にかかわらず汚染の可能性のある土地をできる限り公的にリストアップした上で、原則として汚染者に調査・処理対策の責務を負わせる方向で検討する必要がある。
これら責務の負担を当事者間の私的な話合いや努力に委ねた場合は、調整等が難航し、対策が遅延するおそれがある。したがって、調査・処理対策のコストについて、当事者間の明確な負担・求償ルールを設けるとともに、資金の融通、助成等の支援策を講ずることを検討する必要がある。
(3)は、汚染者負担の徹底が困難な場合、すなわち汚染原因者が不明であった場合、あるいは汚染原因者に負担能力が無い場合が考えられるが、次善の策として所有者又は占有者に調査・対策義務を課することも考えられるが、その場合でも土地の公共性に鑑みて、調査・処理対策を公的機関が直接行い、又はその費用を実施者に立て替えて別途当事者に必要な求償を行うことや、法的な保険制度の構築を検討することなど、関係者に過大な負担が生じない措置を検討する必要がある。
最後の(4)は、土壌汚染のおそれのある土地、あるいは調査すべき土地について国・地方自治体等による情報収集、整備、開示の実施について検討する必要がある。それから、処理対策が終了した場合、あるいは汚染のおそれがない場合の国・地方自治体等による証明・情報開示の実施について検討する必要がある。
以上よろしく御検討の程お願いしたい。

【座長】それでは自由に御質問、御意見を述べていただきたい。
要望事項の(2)のところに、汚染者に調査・処理をやらせるべきというような御趣旨のことが書いてあるが、汚染者が土地を他に譲ってしまってどこかへ行ってしまっているときに、過去のことで、汚染者に対して調査して汚染が判明したら処理をしろと言っても、それに汚染者が応ずる現実性というものが考えられるのか。
それから、売却され新しい所有者なり管理者が管理している土地について、以前の所有者がその土地の調査を実施することが現実的に可能なのか。

【三菱地所・米澤氏】最初の御指摘について、汚染者が不明な場合、あるいは現存しない場合等いろいろな場合が考えられるが、どうしても浄化する当事者がいない場合は、何らかの救済措置がなければうまくいかないのではないか。
2点目だが、最近、工場を操業している法人が、工場用地を土地利用転換する、あるいはほかに譲渡する意思がないにもかかわらず、工場操業をしたままで土地の浄化を自主的にやっているケースが非常に多くなってきていると聞いている。しかし、過去に瑕疵をしょった土地をどういうふうにしていくのか、総量としてどのくらいあるのか分からないし、将来に向けて方策を立てながら、過去の負のものに対して行政を含めて何とか善処できるような方法、方策が見つからないだろうか。都条例のように、開発をしようとしたときにだけ当事者間で何とか解決しろというところに議論が持っていかれると、なかなか解決の方法が見つからない場合には、その土地が都市計画上は非常に有益な位置を占めていたり、あるいはそういうロケーションであったとしても、だれも開発もできなくなってしまう。

【A委員】私の質問は、最初は座長の御質問に対して、例えばマンションとして開発している途中で土地の汚染が判明したり、その場合原因者もはっきりしているという場合に、現在はディベロッパー所有の土地を、原因者であり占有者でない者に浄化費用を負わせるという方法と、その土地の管理者に浄化費用を負わせるという方法と二つの選択肢があると思うが、現実的には現在の土地所有者、管理者が作業を実施して費用は原因者から取るという方法の方が合理的、実際的ではないかという感じもある。その辺を実際に開発なさっていてどういう印象を持っておられるか。
それから要望事項の(3)に関するものだが、ここで公的な保険制度というものを提案されているが、これは民間ベースの保険では足りないと、あるいは難しいと、こういう御判断があるのか。

【三菱地所・米澤氏】最初の点については私から御説明申し上げ、保険の件については不動産協会の方から御説明をさせていただく。
先生のお話のとおり、開発中なので、土地の所有者である開発者が実際は浄化に向けた努力をし、それにかかる費用を土壌汚染の原因者に負担をお願いするという方法がよろしいのだと思う。問題なのは、今年の2月13日の読売の夕刊にあった、住友商事がマンション敷地の土壌汚染に気づいて建設を中断したケース。マンションの場合、通常開発に着手するときには、モデルハウス等を作って手付金を頂戴して売買契約を済ませてしまうことが非常に多いのだが、この場合もそのような手順で即日完売をしたのだと思う。ところが土壌汚染が発覚したため、住友商事は、まず手付金を全額返還して契約を解除し、その売買契約金額の10%の補償金を支払った。契約者から入居可能日や浄化後の優先販売について問い合わせがあったようだが、現実問題として、金をかけても土壌汚染がきれいに浄化されるものかどうか、疑問を持つ方が非常に多い。また、周辺の方々と大体はトラブルになる。それは戸建住宅の住人が、視界が妨げられる、日照時間が狭められるなど、いろいろなことで多くのディベロッパーが住民との話合いに大変苦労していると思うが、土壌汚染情報を入手すると、浄化するしないではなく、そういう土地を取得して開発する企業の姿勢を問われ、反対運動に更に拍車のかかる場合がある。
先生御指摘のとおり、費用の負担等、解決の仕方についてはそのとおりかと思うのだが、住宅地の土壌が汚染されているということになると、感情論になってしまいなかなか大変である。特に、今紹介した住友商事の例のように、当事者間の紛争が土地を売った方、買った住友商事との間ですぐに事が解決しない。というのは、土地の売却価格の設定の仕方というのは、売手の都合や国土法もあるが、いろいろな方法で算定される。当事者間の紛争は、売買契約が結ばれて代金が支払われた後の話なので、売手に浄化費用の負担を要求しても簡単にはいかない。
したがって、先ほどの住友商事の場合も購入者との契約を解除したわけだが、恐らくかなり長期化するだろう。売買契約をしたときの事業説明事項等からも、すべて契約条項が満足のいくような復旧の仕方はできないだろうと考えて、新聞の記事に書いてあるような行動に出られたのだと思うが、紛争になれば手付金をすべて返しただけではなくて、補償金を売値の10%支払うことから、原因者に対してその費用の負担の扱いも含めて相当の長期間の紛争になるのではないかと想像される。
2点目の公的保険制度については不動産協会の方から御説明する。

【不動産協会・古屋氏】保険制度については、私ども専門的な知見を持って研究したわけではないが、こういう保険商品への取組が出てきているとも聞いている。三井住友海上が土壌汚染リスク補償の商品を組んでいるようだが、この場合であっても例えば3万m2ぐらいの土地で、売買後3年以内に土壌汚染が発覚したときに10億円を限度とした浄化費用の保証とした場合、保険料は4,000万~2億5,000万円となるという報告がある。また、民間の保険会社だと、非常にリスクの高い汚染地は補償の対象にならないと考えられるのではないか。
それから、ある土壌汚染関係のコンサルタントの方の記事だが、国内で浄化の必要なサイトは44万か所ぐらいある。社団法人土壌環境センターの試算では、調査・浄化対策費用は13兆3,000億円に達する。また、米国ではスーパーファンド法によって浄化対策を進めているようだが、一つのサイトの浄化に要するコストは3,000万ドル、期間は平均10年とのこと。3,000万ドルというと約30億円で、非常に膨大な費用がかかる。そういうものだからこそ私的な保険でカバーすべきということなのかもしれないが、非常に膨大かつどれくらいの量の保険対象土地が出てくるか分からないことを考えると、保険料あるいは私的な保険の機能を補完する意味で多少公的な支援をつぎ込んだ保険制度というものが可能性として考えられてもいいのではないだろうか。
それから、先ほど座長及びもう一人の委員の方の御質問で、例えば過去の汚染者に追及できるのか、責任を負わせられるのか、あるいは所有者が違うのに第三者の土地に汚染者が入っていって浄化ができるのか、現実的かというお尋ねだが、まず過去の者に追及できるかということについては、外国の立法例などを見ても、米国のように無限に遡及していくものもあれば、ドイツやオランダのようにやはり一定期間のところで止めるところもあるが、遡及していくという立法例はあると承知している。
2点目に、第三者の土地に汚染者が乗り込んで調査をやらせるのかということ、現実的かどうかは別にして、そういう仕組みの方もなきにしもあらずではないかと感じる。ただ、ここで私どもがペーパーで一番言いたかったことは、汚染者・原因者負担という大原則を、大原則として立てていただきたいということ。しかし、実際無理な場合もあるし、そのときには所有者なり占有者という者がその責務を負っていくこともあるかもしれない。しかし、それが逆立ちしていたのではいかがなものかということを一番申し上げたかった。

【B委員】原因者負担を柱として立てたい、立ててほしい、無理なら所有者・占有者ということで、このペーパーの1頁に書いてあるところがかなり明確になってきたかと思うが、特にお伺いしておきたいのは、所有者・占有者にもし浄化の義務をかけることを認めるのであれば、開発者も占有者であることはかなりの場合あるし、開発者も土地については何かの権限は持っていることが多く、所有者、占有者の中にも入ってくる可能性は高いと思うが、それでもいいという趣旨かお答えいただきたい。
それから、開発者が浄化をして原因者に負担をさせるのがいいとお考えだということだが、東京都の条例でも開発者は浄化の義務を何らかの形でかけられているが、もちろん最終的に原因者の方に求償をしていくということは前提にしてつくられていると思う。東京都の条例については随分厳しい批判があったようだが、その辺はどういうふうに御理解されているのかを伺いたい。
結局、お気持ちとしては開発者にだけどうして集中的に義務を負わせるのだということに対する抵抗というか、御懸念があるのではないかという感じする。確かにそれはよく分かるのだが、土地所有者とか占有者、あるいは土地について何らかの権限を持っている人の中で、特に応能負担的な観点から能力のあるところに浄化をしてもらおうという趣旨で東京都の条例はつくられているのだろう。
それから、別の問題として44万か所というのは廃棄物処分場の跡地やガソリンスタンドとかそういうものを数えた数であり、それほど我が国の全体の中で浄化すべき土地が広がるかどうかはまだ分からないので、一つの数字としては重要だと思うが、あくまで仮定の数字だということも申し上げておく。

【不動産協会・古屋氏】 私どもが次善の策として所有者や占有者に調査責任を負わされることはやむを得ないだろうと申し上げているが、ディベロッパーが取得した土地の所有者として一定の責務を負うということも次善の策としてはやむを得ない。
一番言いたかったことは、都の条例のように開発を契機としてこの土壌汚染問題をとらえられてしまうと、一部の土地について対策を講ずるというスキームになってしまうし、私ども都市の再生などの末端を担っている者としては、これだけ土地流動化や都市再生、再開発、街の土地利用の保護といったようなことが経済的にもあるいは社会的にも求められているときに、開発を契機としてだけこの問題がとらえられてしまうと、汚染のおそれがある土地での開発を避けざるを得ない。グリーンゾーンに流れていくことで、都市の土地利用にゆがみが生じるおそれがある。米国のスーパーファンド法については、向こうでも見直しの機運があると聞いているが、一つにやはりグリーンゾーンの方に開発が流れてしまい、本当に高度に利用しなければならない土地というものに手がつけられないといった傾向が見受けられるという指摘もあった。私どももそういったことを一番危惧している。
それから、保険のくだりで申し上げた44万サイト、私もこれは記事でしか見ていないが、ここで言いたかったことは公的な保険であるか私的な保険であるかは問わず、何らかの費用のリスクヘッジという仕組みがあってもいいのではないかということ。実際に制度の詳細を詰めていく過程でどうしても民間の保険制度ではリスクヘッジできない部分が生じたときには、公的な御支援といったようなものも必要なのではないかということを申し上げたかった。

【C委員】このペーパーの現状認識は、まずすべての土地についてやることであって、一定部分だけをやるべきではないが、段階論としてまずそこからやっていくというようなことならば良いということか。

【不動産協会・古屋氏】その辺が確かに難しい御指摘で、何ともお答えしようがない。放っておくよりは、開発という限られた局面のときに対策を講ずる姿勢から現実的にスタートさせるべきではないかというお考えも当然あり得ると思うが、行政がいろいろな契機をつかまえて過去の土地利用についての情報を把握して、調査すべき箇所というものをリストアップできるような台帳整理をすることを目指してこの制度を組んでいかなければならない。

【D委員】開発に際してというお話があるが、私は東京都の条例に必ずしも全面的に支持するわけではないが、開発がなぜ最初に出てきているかというのは、これは非常に意味がある。というのは、先ほどから御議論があるように、過去の汚染の責任が問えるかという議論があるが、開発行為というのは土壌を汚染している場合に、新たな汚染の拡散を生み出すおそれがある。だから、未然防止のために開発前に調査をするべきであるという考え方である。東京都の人にも確認したが、例えば、そこの土地を所有しているだけ、あるいはその上又は下をいじらないで駐車場に使うようなときには調査義務はない。それは新たな汚染の拡散を起こすことはないからという論理である。土壌地下汚染の一つの特徴なのだが、そのままにしておく分にはそれほどリスクはないが、開発するときに周辺に汚染を起こす可能性があるし、また、それで掘削した土壌を知らずにほかのところへ持っていって汚染を起こしてしまう。それは当然調べておくべきであるというのは一つの論理だと思う。
それからもう一つ、要望の最後のところで、国・地方自治体の証明と言われているが、汚染のおそれがない、処理対策が終了したというのは、どの程度の汚染レベルまで浄化すれば言えるのか。先ほど住民の方がそんなに汚染があるところを何回やっても、という話があったが、その不安をぬぐい去るのは非常に難しいのではないか。今、環境問題は残念ながら、行政がオーケーと言えば住民の方がすぐ納得するという話でも必ずしもないのだろうと思う。このところをどういうふうなお考えを持っているのか、少しお聞きしたい。

【三菱地所・米澤氏】先生の1点目のお話は、確かに開発行為に該当した場合には拡散する可能性があるので、拡散させないということと同時に土壌をあるレベルにまで浄化していくということは、それは必要だと思う。決して不動産業界の各社が土壌汚染に対応したくないと言っているわけではなくて、基本的に莫大な費用がかかる。さらに、非常に長期間時間がかかる場合もあり、経済的に破綻を来す可能性が十分あるので、保険のことあるいは行政の補助であるとか、いろいろな救済措置を含めて、汚染された土壌を浄化していくということはやぶさかではないのだけれども、例えば利益を圧迫する程度ならまだいいが、完全な赤字になってしまったとか、あるいは土壌浄化にかかる費用をマンションを購入する方に転嫁せざるを得なくなってしまうということになると、単に開発時点において土壌汚染をクローズアップさせて問題にするというのはいかがなものか。
2点目の件は、目で見てわからないような現象なものだから、人体に対する影響を含めて、それが住宅であれ業務用地であれ、大変心配される方が多いと思う。したがって、より広範の人たちがもう人体に何ら支障がないのだと、影響がないのだというようなことが確認できるように第三者機関が証明をするような仕組みを期待して、この(4)の2項を作成した。

【D委員】2番目の話は、リスクコミュニケーションをするときに専門家が立ち会って第三者的に話をしてくれということであれば理解できるが、単純にここは汚染がないという証明書を出すだけのものではないと感じている。
それから、最初の話は、ディベロッパーの方が新たな汚染者にならないために、こういう制度を作っているというふうにお考えいただいた方がいいと思う。調査もしないで結果として他を汚染したということになると、その前の汚染者に汚染を問えなくなる。ディベロップした行為、占用して掘削して移動したという行為自体が汚染を新たに起こしたという責任になる。そういう意味では、それを防ぐために調査をするというふうな意味合いがあるのだろうと私は解釈している。

【E委員】今のに関連して現状認識の(5)に、開発時に限って、開発者が調査することは外国においてもとられていないという御指摘があるが、先ほどから出ているスーパーファンドの場合、いわゆる善意の購入者の抗弁というか、そういう規定があって、土地所有者が責任を負わないためにはちゃんとした調査をしておけば責任をある程度逃れるという制度もある。そういうことで米国の場合には、土地購入時には徹底した調査をやるということで地質会社がよりもうかるというようなことが一時あったが、その点についてはどうお考えか。

【不動産協会・古屋氏】多分、私どもの会員会社も、危ない土地を購入するような場合には、ディベロッパー自身が調査をして、できるだけ環境を悪化させるようなことがないようにしているということは聞いている。
それで、御質問の趣旨がちょっと分からなかったのだが、外国においてもとられていないというふうに書かせていただいたのは、これは全く素人勉強で間違えていたら申し訳ないが、スーパーファンド法にせよ、ドイツ・オランダの制度にせよ、開発者に一義的に責任と負担を負わせるという手法はとっていないのではないかと理解している。土地の所有者、占有者、あるいは汚染者、それから過去の汚染者、それから有害物質を運んだ輸送者、こういったものが連帯して責任をとるというような構成になっていると理解しているので、このように書かせていただいた。

【座長】一つだけ聞かせていただく。汚染者負担、PPPというのは鉄則だが、例外的、補足的に公的負担に持っていかざるを得ないこともあり得る。私も事業者負担法、公害健康被害補償法、その他経産省の鉱業関係の法の時に公的負担を出せということを言った。そうしたら、その理論的根拠は何かと追及された。いろいろなことを言ってみたが、財務省(当時大蔵省)を通るわけないのだというようなことを言われて苦い経験をした覚えがある。今回もそういうことをやれればやりたいとは思っているが、そのときに財務省側にどういうことを言ったらよろしいか、御意見を聞かせていただきたい。このペーパーにある「土地の公共性にかんがみ、」のように漠然としたものでは難しい。何かもう少し具体性のある知恵をつけていただきたい。

【不動産協会・古屋氏】あえて申し上げたかったのは「公共の利益」と一言で言っているが、1頁目の(3)にあるように、土壌汚染対策の効果というのは、環境対策であると同時に都市という公共空間を非常に有効に利用させるという二つの公共目的のために実施される、あるいは制度が設定される、ということである。
それで、そんな大枠なことで財務省からお金がとれるのかということかもしれないが、例えば、環境事業団みたいなものを通じた環境対策、あるいは私的な土地についての環境浄化事業が行われている。あるいは汚染された土壌の直接暴露、汚染地下水になって隣の土地への溶出といったようなこと等も含まれると、公的な負担、国民全体でリスクを分担するというような考え方も十分あり得るのではないか。そうしていただければ、私どもも大変説明がやりやすくなる。

【A委員】2頁目の要望事項(1)の確認だが、「土地の用途、特性等をも加味して、」という部分があるが、特性というのは具体的にどういうことを考えておられるのか。

【不動産協会・古屋氏】詳細に用途は何で特性が何かということを逐一積み上げて議論をさせていただいたわけではないが、土壌の性質や、汚染物質がどの程度の深さにあるのか、地下水の水面から距離といったような、土地の物理的な状態、それから、土地利用の状態及び変更の可能性があるのかといったような点を加味して、ダブルスタンダードかもしれないが、基準づくりにそういったことを加味していただきたいということである。

【座長】それでは予定された時間もあるので、第一議題はこの辺で終わらせていただく。
(三菱地所・米澤氏、不動産協会・古屋氏退席)

【座長】では、引き続き第二議題、主な検討課題に入る。ところで、誠に勝手であるが、後半は座長代理にリリーフしていただく。

【座長代理】では、暫時やらせていただく。事務方から資料の説明をお願いする。

【事務局】(資料5-3の説明)

【事務局】(資料5-4の説明)

【座長代理】課題全体について何か補足すべきもの、又はこのような角度から見た方がいいのではないかというような御意見はあるか。

【B委員】資料の5-4についてお伺いしたいのだが、2の(2)で生態系影響というのが入っている。これは、諸外国でもこういうものを土壌汚染の中で考えていくべきだという議論はかなり広がってきているので、非常に重要な問題だと思うが、「生活環境の保全」という言葉は、従来の環境基準ではこういうものを含めてはいないように思う。もし、入れていくのであれば生活環境の保全上、あるいは少し別な枠組みも入れざるを得ないのかという感じもするが、その点について伺っておきたい。

【事務局】生活環境の保全というのは今の土壌環境基準の目的にそういう二つの柱があるということで、取りあえずそこに入れている。これが果たしてうまく整理されているのかどうかというのは先生御指摘のとおりである。ここでは一応生態系をこのように整理したということである。ただ、どういう形で整理するのかというのは、先生の御指摘のような形で別だということであれば、そういう形で将来的には整理していかなればいけないと考えている。

【D委員】今のB委員の意見に絡んでだが、水の観点で言えば事務局が答えたように健康項目と生活環境項目と二つの分け方しか今のところはないというので、多分生態系の基準というのは生活環境項目的な中で整理をしておられるのだと思う。保健部の方で化学物質の環境リスクの整理をしている中では、人の健康リスクと生態系のリスクと、それともう一つ生活環境のリスクと、たしか三つに分けていたように思う。そこをどういうふうにするかは全体の中で調整をして考えていく話だろう。
資料5-3の(1)の対象のところで、3番目の土砂というのは農業資材、建築資材という、掘り出したものというのは正にそのとおりだと思うのだが、逆に言うとこれは残土処理という見方で考えるというのも一つある。先ほどの開発云々の話で汚染の拡散というような意味合いでの整理の仕方をしていくと、こういうのを分けて議論するというのも一つの考え方ではないか。
土壌に関しては、いろいろな機能がある。農業地の土壌汚染も生活環境の保全と言えるかどうかというのは、これは正に生産が生活活動であるかないかという話である。そこら辺を整理した中でもう一回考え直していくのだろうが、それをどこまで踏み込むかという議論になってくるのではないか。どこまでこの中で仕切るかというのはまた別な考え方だと思う。
(3)の暴露経路だが、資料5-3と資料5-4は若干ずれがあって、資料5-4のところではもう少し資料5-3のほかにも幾つかの経路が加えられていて、例えば1の(3)のところで健康でも含有量基準2-2ということで流出とか揮散というような形の経路が出ている。これは最後の流れを見ていただくといいのだが、ダイオキシンを例に見ると、土壌そのものに今のところ直接摂取のところに基準が設定されているわけだが、ダイオキシンは水産物等からの経口摂取というのが一番多くて、それを遡っていくと表流水、更にそれを遡って表面流出という話がある。ここら辺のところもダイオキシンの暴露ということを考えると無視できないところであり、ダイオキシンの環境基準の設定のときも課題になった。この検討の中ですべてを検討するという話ではないと思うので、この三つが考えられる。
汚染リスクの考え方のところで、一応、全部溶出基準、含有量基準、そういうような形の整理の仕方をしてあるのだが、実は土壌の中は非常に3次元的な汚染の広がりがあるのと、それから多様性があるので、含有量がそっくりそのままリスク評価に結びつくかどうかということがある。それでいくと、基準というのは非常にいろいろな形で考えなければいけない。ただ、大気への揮散であれば、土壌中濃度がどのぐらいでという話で、そのガスの濃度を測って、どういうふうなもので評価するかということと、その評価するものがどのぐらい測りやすいかということ。基本的にはどこかの基準で考えればほかのものはすべてクリアできるということが分かれば、あえて幾つも重ねてやる必要はない。今のところ大気への揮散というのは、トリクロロエチレン等なのだが、大気の基準がかなり緩いので、トリクロロエチレン等について見ると、大気への揮散というのは一見ありそうだが、実際現場で測ってみるとそれほど高い濃度にはならないようである。必ずしもこれ全部をやる必要はなく、どこかの基準で縛っておけばほかは全部大丈夫というふうな判断がつけばそれはそれでいける。特に、VOCというのは、主に考えられるのが地下水、飲料水、経口、それから大気吸入という話で、下の経路は基準がかかっているので、それでオーケーであれば上の経路は考えなくてもいいというふうな感じになる。そこら辺のところはもう少し知見を具体的にそろえなければいけないのだが、今の私の感覚的なことをいうと、意外と要らないのかもしれない。
それから、暴露経路ごとの対象物質は、基本的には資料5-4のところに書いてある三つが中心だろう。環境汚染全体で、環境リスク全体が今懸念されているのはVOC、重金属とそれとPOPsの三つを中心に考えていけば取りあえずいいのだろう。

【F委員】神奈川県でも土壌汚染の問題がいろいろ発生しているが、土壌汚染が起こった場合については、最近は土壌だけではなくて、地下水あるいは底質まで分析をしている。底質の場合は、基準がないということでいろいろ調査した結果を過去の県内の調査結果、あるいは全国的なこのような調査結果に比較をして出しているという状況である。底質について基準的なものが設けられればいいと思っているが、先ほどの生態系への影響との関係でなかなか難しいのかなと思っている。ダイオキシンではそろそろ底質のところについても検討が進んでいるということであるが、D委員、そのあたりはいかがか。

【D委員】底質というのは、直接口に入れる機会が土壌以上に少なく、魚、水等他のものに移行してからなので、似たような考え方を適用できるのかもしれない。ただ、土壌と底質層の基準が同じになるとはとても思えない。別な考え方、類似な思考をすればいいのかもしれないが、別に分けてやらざるを得ない。

【G委員】2点お教えいただきたい。
一つは土壌というものを対象しようとする場合にリスクの性格をどう見るのかという話で、土壌中に残存することによって将来発生するであろう潜在的リスクというのをどう見るのかというのが土壌の論点としては重要な話ではないかと思う。いわゆる土壌の中の状態が把握しにくい場合、直接摂取という点での含有量基準という意味と同時に、潜在的リスクという点での含有量基準という考え方もあり得るのではないか。
それから第2点は、(2)の保護法益の話だが、これも土壌そのものを浄化しない限り永久に残っていくという点で、土地流通を極めて妨げているということがいろいろなヒアリングでも出てきた。いわゆるそういう環境とか人の保護というものと並んで、土地の円滑な流通というのを土壌の汚染そのものが妨げているということをきちんととらまえて、もし立法化するならば、例えば6.のところの話をもうちょっと全面的に押し出した形で立法の中に組み込んでいくというような考え方もあり得るのではないか。

【事務局】前半の地下水の場合は、地下水への溶出という視点で見た土壌の汚染といったものは一体どこまで改善措置がさせられるのか、汚染源としてそこに汚染された土壌があって、まだ地下水は汚染されていないけれども、それを一体どう扱っていけばいいのか、その辺をこれから御議論いただきたい。次回以降、非常に大きな課題として御議論いただきたい。

【土壌環境課長】冒頭資料5-4で御説明させていただいたときに、ここでは地下水に関連しては溶出基準という形で位置づけている。なぜ今ここで使われているかというと、諸外国は確かに含有量で表しているものが多いが、含有量の場合だと例えば同じ重金属が同じような量入っていても、その際に地下水への汚染のおそれという観点で見ると、水と混ぜて溶かしたときに出てくるという意味での溶出基準の方がより適当なのではないか。今後地下水の関係でまた整理していく場合、現行の土壌環境基準をそのまま持っていくかどうか、含有量でいくかということになると、まだ含有量ではなかなか難しいのではないかと私どもは考えている。まだその辺は詰めが必要である。D委員からのコメントもいただきたい。

【D委員】土壌の種類、汚染の形態、いろいろ考えるとものすごく幅がある。含有量の場合は安全サイドを見るという考え方をする。そうすると、今以上に過剰になってくる可能性があり、やはり溶出というのを見ていく必要がある。将来的にどうなるか分からないが、溶出というのは土壌の性質に依存するが、酸性雨等で土壌の性質に変化が生じても、土壌環境基準を1回クリアしたからといって未来永劫そこは大丈夫だという話ではないと解釈している。ある時点で環境基準をクリアしてもまた何十年後には汚染物質が入っているかもしれないし、入っていなくてもそこが何らかの理由で溶け出しやすくなっていれば何かの対策をやっていかなければいけない。そういう考え方をせざるを得ないのではないか。
規制項目がどんどん増加するという話も、溶出しやすさという観点で見ざるを得ないのかと思う。こういう性質の土壌で、このぐらいの含有量であればこうなるというところがきれいに出せれば、含有量も有効な指標となる。基準をつくるというのも一つの考え方だが、規制基準ではないが、判断材料として含有量参考値とすることも考えられる。

【座長代理】土壌のリスクについてお話いただいたが、これはまた次回のときの検討課題だとして、事務局で整理されると思う。
G委員の2点目の保護法益の話について事務局又は委員から御意見あるか。

【E委員】外国の事例の中に、生態系保全というのをどうするかというのがある。日本ではこれまで人の健康第一主義でやってきたということで、生態系等に対する配慮が足りないという批判がよく出てくるが、これをどうするかということと、土壌の多機能性について日本の場合どういうふうに考えるのか。そういう話はもう無視するのか、あるいは一部取り入れるのか、そういう問題も検討項目として入ってくるのではないか。
それからもう一つは、土壌とか、地下水とか、土砂とか、底質とか残滓と、いろいろな問題があるのだが、包括する概念で、いわゆる地質環境保全という立場で問題を整理した場合に対して、どういうふうな対応をするかということも検討項目に一部入るのではないか。

【土壌環境課長】保護法益について、例として私どもはこの2点を入れさせていただいたが、先ほどのリスクの方のペーパーでもいろいろな観点が考えられる。それから、先ほどE委員から御意見いただいた、いわゆる土壌の多機能性という話は確かにヨーロッパではそのあたり相当議論されてきて、それも今の制度の中に入ってきているという実態を勉強し始めているところである。ただし、今までお聞きしている限りでは、相当難しい局面があるというような形でも聞いている。これは、次回あたりのリスクのときに整理したものもお出ししたいと思っているが、私どもの感じでは生態系まではなかなか一朝一夕にいかないというような感じを持っている。確かに環境省の内部でもそこも含めて相当いろいろな議論もあるが、例えばどの生物を標的にしなければいけないのか、それとも、単一の生物ではなくて、生態系のミクロコズム的なところを標的にするか、その辺の手法論がまだこれからという状態である。いずれにしても、生態系の観点、それから先ほどの土地の流通の観点と、そういうことも含めて頭の整理をしながら議論していただきたい。

【H委員】大変初歩的な質問だが、土壌の定義について、土壌というのは固形物であり、水分を含まないものと理解しているが、土壌の環境というのは必ずしも土だけではなくてやはり水も含んでおり、そのあたりを整理していただきたい。

【土壌環境課長】これまでは土壌汚染という言葉を分かったように使ってきているわけだが、面的な広がりを持ったような土地というような形での汚染で出てきているもの、いわゆる物としての土壌、今御指摘のあった水との関係等、実際はいろいろな局面がある。普段は場合によって使い分けているように思うが、本当に分けているのかはっきりしないところもある。言葉の使い方、ここでの対象とするところの整理をこの検討会で御議論いただいて、私どもの方で整理させていただきたい。

【D委員】地質学の世界では、土壌というのは植物の根が生えるところまでをいうのだが、ここではそれよりも深いところも対象としている。これは地質学的にいわゆる地下環境にすべきとの意見もあるが、実際問題として非常に難しいのは、何を対象として基準を決めるかである。大気や水のように単位容積当たりの汚染物質の量であることが望ましいが、土壌の場合には、水、間隙のガス、土壌粒子で構成され、土壌の濃度、含有量を用いて土壌の汚染を議論するときには、粒子の部分だけを取り出しているわけではない。普通は間隙ガス、水は別に評価しており、水、間隙ガスの量についてあまり極端な話で詰めると何を見ているのかよく分からなくなりかねない。一番望ましいのは土壌空間1m3当たりの汚染が幾らという数字が出せれば良いが、現時点では残念ながら曖昧な部分が出てしまっていることを念頭に置いて議論をしていただきたい。

【I委員】土壌のリスクを検討する際には、ケース・バイ・ケースというのが非常に多い。土壌環境センターや不動産関係者の話を聞くと、実際の浄化対策では、汚染土壌の状態等によって、浄化の目標値に対する現実的な対策をフレキシブルにしていく必要があるのではないかと感じている。
今回のヒアリングも含め、事業者からいろいろ訴えがあったのは、汚染土壌を自ら浄化をしようとした場合に、どうもかなりバッシング的な取扱いを受けてきて、それが怖いがためになかなか改善措置等がなかなかうまくいっていない、あるいは進まないということがあるので、自主的な改善措置といったときに、単なる税の優遇だけでなく、何かもう少し自主的な取組を積極的に促すような何らかの措置を検討する必要がある。

【事務局】今の御指摘については、5.の汚染に係る改善措置の内容というところで少し御検討いただきたい。先ほどのケースのようにいろいろなケースがあるので、事務局で素材を提供して御議論させていただきたい。
二つ目は、土壌のリスクというものをきちっと一般の方に理解できるように働きかけるのが先なのか、そういう環境づくりをしながら更に企業の自主的な取組を促すのが先か、何を先にすべきか、この検討の中で是非ともお知恵を拝借したい。

【D委員】先ほども申し上げたが、汚染の拡散の防止が必要となると思う。それは改めて項を立てて議論することではないが、事務局の方で忘れずに注意していただきたい。

【事務局】例えば6の(2)の中で、例えば何らかの形で汚染地、あるいは潜在的に汚染地と分かった際に、そこの土地、そこの土砂をどこかに持っていくという場合に何らかの取扱いがいるのではないかということを入れており、今の御指摘は他のところでも御議論できるが、一つはそこで取り上げたい。

【D委員】確かにそれはそうなのだが、浄化業者の人から聞く話では、実際に除去した汚染土の管理が非常に曖昧で、きちんと管理しないと汚染を拡散することになるという批判があるので、除去してきた汚染土の管理についても何とかしてほしいという話を随分聞いている。前に指針を作った時にも少し議論はしているが、他の法律で縛れないのであれば何らかの形で押さえていく必要がある。

【事務局】今の御指摘は重々承知している。5.の改善措置の検討の中で、例えばきちっとした計画を立てて、最後の処理をするまで追えるような仕組みについて御議論いただきたい。

【B委員】今日は内容についてまだそれほど詳しく議論する段階ではないと思うので、疑問点を申し上げる。
土砂との観点については、確かに浄化していく上で汚染土が土砂として出てくることがあるので重要な問題なのだが、残土については御承知のように特に関東近辺では条例ができているので、それとの関係をどうするかという問題がある。それから、汚泥との関係について、どう整理するか非常に重要になる。

【A委員】一つは検討課題の4.について、当然この中に含まれているのだろうが、いわゆる概況調査的なもの、詳細調査的なもの、あるいは計画を実際に実施していく段階での調査というものも念頭に置いているのか。
2番目に、先ほどB委員、G委員の発言にあった保護法益の問題について、先ほどの説明ではこれは生活環境の中に一応入れてあるとのことであったが、最終的にどこに落ち着くかは別として、検討をする過程では、独立の生活環境よりはもう少し広い土壌の機能とか、あるいは生態系というものの中に含むべき保護法益等を考えるときに、保護法益について最初に共通認識を持った上で各論に入っていった方が効率的ではないか。

【F委員】今回の土壌の検討の対象項目について、1の(4)だが、これは恐らく有害物質が中心となろうと思うのだが、神奈川県では、環境ホルモン物質が何トンというオーダーで土の中に染み込んだという土壌汚染の事例がある。これは工場外まで汚染が広がっていないので公表はしていないが、そういった未規制の物質についてどう取り扱っていくのか検討が必要である。

【事務局】今の御指摘については、これまでほとんど手がつけられていない分野であるが、その辺の部分も制度の検討の中で議論すべきと考えている。これまでと違い、直接摂取のように暴露経路の違うものも対象となるため、もう少し広く物質をとらえ、そこから優先的に何か基準をつくるもの、水や大気と同じように何か検討をしなければいけないものという整理をしなければいけない時期にきているという認識も持っているので、多少時間はかかるかもしれないが検討は進めていきたい。

【座長代理】特に、この検討課題の全体のフレームとして何か追加すべきものはあるか。

【E委員】それぞれの項目の中に入っているかもしれないが、費用負担の問題について、いわゆる公的負担する場合には、根拠とかあるいは今ある法律との関係について検討することは避けて通れない。防止と浄化回復と拡散の防止というのは確かにセットなのだが、それをどうプライオリティーをつけてとらえるか、全体のフレームワークをどうするかはっきりさせておく必要があるのが1点。
法律のことを考えた場合には、遡及の問題とか、既に汚染された過去の地質環境の汚染の浄化や回復をどうするかというのがこの問題の一つの大きな柱になっている。それから原因者が不明の場合の所有者。占有者の責任、不在地処理をどうするかとか、そういう問題も当然入ってくる。

【土壌環境課長】費用負担の問題、それから公的な関与についても、検討課題5.あるいは7.あたりに入れており、後で個別の検討の時に議論していただきたい。
それから、フレームワークについては、検討課題の3、4、5、6、それに7.が関連するが、これについては個別に課題を書いていくよりも、全体の流れを書かないとなかなか議論が難しいのではないかと認識している。先ほどI委員から指摘のあったケース・バイ・ケースということについても、いろいろなケースが想定されるので、これまでの経験しているケースをある程度イメージに入れながら議論ができればと考えているので、その辺をよろしくお願いしたい。
それから、遡及の話も当然のことながらケース・バイ・ケースで考えなければいけない。
最後の御指摘の点は、ここでは表現として「実施すべき者」等と書いているが、当然そこは項目として念頭に置いている。

【D委員】今のE委員の意見に絡み、基本的には公的資金を投入するときに必要なのは社会的な合意をどう得ていくかという話で、例えば豊島の浄化について、香川県の県議会では、なぜ豊島の住民のために県の金をつぎ込むのだという議論が当然出てくる。一方で、汚染者がいても、実際には負担できない。そのようなケースについて、どのように社会的な合意をしていくか。先ほど、対策に必要な額は14兆円とあったが、そこまではかからなくても、相当な額になることは確かなので、そこら辺のところの論理構成をどうしていくか。それから、それをいかにして社会的な合意を得るか、戦略みたいなものも重要なポイントではないか。

【座長代理】では、ここで本来の座長にお返しする。

【座長】今いろいろ御意見を承って、私なりにこのフレームについて申し上げたいことがあるのだが、座長という立場上、あまり早い段階で意見を言うことはできない。フレームについては、事務局に何か言うかもしれないし、整理案に多少影響力を行使するかもしれないので御了解いただきたい。
基本的に、技術系の方が非常に真摯な気持ちで綿密な議論を展開されるということは非常に重要である。しかし、法学者である私などは法的な社会制度をどう作るかという観点が先に立ってしまう。だから、綿密な科学的な問題としてどんどん押していって論理必然的に制度に持っていくというのがよろしいのだが、現実論として取り組む場合には土壌汚染対策として何ができるか、どんなことまでできるかも頭に描いて、法律、経済的な成果と技術的な成果との調整ということも考えなければいけない。また、法律的側面だけから見ると、費用負担、監視、責任の所在等の難しい問題があるが、ただ並列的にそういうものを論じ始めるとどうにもならないので、基本となる制度枠組みの落としどころをある程度はっきりさせて、その上で個別的な諸問題を議論することも必要である。この前も事務局に申し上げたのだが、トンネルを掘り始めた、技術系がまじめに東側から堀り始めたが、法律系はある程度結論を見越して西側から掘っていって、いわゆる千葉と川崎と両方から掘っていって、海ほたるあたりで何とか調整して合体するというような作業をしないと、非常に科学的には厳密だけれどもやや無駄な議論に陥るかもしれない。今日出た1、2あたりの問題をしっかり理科系の方にやっていただくと同時に、社会系は3.とか5.あたりの基本構造の議論を詰めておいて、時系列にこだわらずにだんだんと詰めて、あまり後ろ指を指されないようなものに持っていきたい。社会系の方はまた社会系の方で、どしどしシステム論を展開していただきたい。
今後の日程等、事務局から最後にその他として御説明いただきたい。

【事務局】次回以降は適宜検討課題をどういう形でお出しするか、座長を含めて御相談をしながら考えていきたい。
それから、検討会の来年度からの日程について、日程表の紙を置かせていただいているので、来週中ぐらいに事務局の方にファクス等で御連絡をいただけるとありがたい。
また、次回以降は年度が変わる関係もあり、先生方御自身の所属等にもし変更があれば併せて御連絡をいただきたい。次回以降、来年度になるが引き続きよろしくお願いしたい。