航空防除農薬に係る気中濃度評価値
〔目次〕
1.はじめに
2.安全性評価の基本的考え方
3.気中濃度評価値の設定
4.個別農薬の気中濃度の評価
5.農薬の気中濃度の測定方法について
6.今後の検討課題
7.おわりに
航空防除農薬環境影響評価検討会委員名簿 略
航空防除農薬環境影響評価検討会開催状況 略
参考資料 略
(別添) 農薬の分析方法
(1)ダイアジノン
(2)ピリダフェンチオン
(3)フェニトロチオン(MEP)
(4)マラチオン
(5)フェノブカルブ(BPMC)
(6)トリシクラゾール
(7)フサライド
(8)ブプロフェジン
(9)フルトラニル
(10)メプロニル
1.はじめに
(1)本検討会の目的
散布農薬が人の健康に与える影響については、これまで主として食品・水経由の摂取を考慮して評価がなされており、大気を経由した農薬曝露の影響については必ずしも十分に評価されてこなかった。その一方で、近年、航空防除後に大気中から農薬が検出される事例が報告され、航空防除による健康影響について、散布地周辺の住民の関心が高まっている。このため、環境庁では昭和63年度より平成5年度までの6年間に「農薬環境動態・影響調査研究事業(大気中への拡散等に関する調査)」として農薬散布時の気中濃度の情報、農薬の吸入曝露による健康影響を評価するための関連情報を収集し、平成3年度にはその一部をとりまとめて公表している。さらに平成6年度からは、これらの知見を踏まえ、航空防除における農薬の気中濃度のモニタリング調査を実施してきたところである。
本報告書は、これらの調査等を通じて得られた知見を踏まえ、航空防除による散布地周辺住民の健康への影響について、現時点における評価をとりまとめたものである。
(2)我が国の航空防除の現状
@ 航空防除の実施時期及び回数
我が国の航空防除は主に水稲病害虫及び松くい虫等の防除を目的として実施されており、その実施時期は、水稲で7、8月、松くい虫等で6、7月に集中しており、それぞれ全体の9割以上を占めている(表1)。また、散布回数は水稲で年間2〜3回が最も多い(表2)。
表1 実施時期(平成8年度)1) (単位:%)
|
5月 |
6月 |
7月 |
8月 |
9月 |
計 |
水稲 |
1.5 |
5.7 |
47.5 |
44.9 |
0.4 |
100 |
松くい虫2) |
4.4 |
79.8 |
15.8 |
― |
― |
100 |
表2 散布回数別頻度(水稲)(平成8年度)1) (単位:%)
1回 |
2回 |
3回 |
4回 |
5回 |
計 |
10.9 |
39.8 |
38.9 |
8.7 |
1.7 |
100 |
注1):平成8年度農林水産航空事業関係資料(農林水産省)より抜粋
2):民有林
A 航空防除の実施地域
a.地域の特徴
平成7、8年度における航空防除実施面積の実績一覧表を巻末に付した(参考資料1)。散布区域は、平坦地のまとまった水田から山間地の細長い水田や山林等まで地形条件によって様々であり、また都市化の進んだ地域では数ヶ所に分散していることもある。
b.散布区域周辺等における人の活動
散布区域においては、散布中は人々の活動は想定されないが、散布後には農林業従事者や一般住民等の立入りが考えられる。一方、周辺区域では混住化の進展や生活スタイルの多様化等により、防除が行われる早朝であっても人々の活動が見込まれる。
B 航空防除に使用される農薬の特徴
C 大気中における農薬の挙動
我が国の航空防除では、ヘリコプターの利用に加え、ブーム・ノズルの改良、剤型の工夫、上昇気流の少ない早朝の実施等の理由から、ドリフトによる農薬の飛散は少なく、粒径100μm以上の農薬粒子は速やかに散布区域内に落下するが、細かい粒子及びガス状の農薬の一部は風等により散布区域外へも飛散することがある(図)。
農薬の気中濃度は、散布開始とともに上昇し、散布中又は散布直後にピークを示した後、徐々に希釈減衰するパターンを示す。また、蒸気圧の高い農薬では日中にも揮発による濃度のピークが認められるほか、上空に逆転層が形成される場合など農薬の上昇・拡散が阻害される気象条件下では、夜間にピークが現れることがある。なお、降雨があると農薬がウォッシュアウトされるため、気中濃度が急激に低下し、それ以降検出されないことが多い。
図 風速と粒径及び飛散距離の関係
D 航空防除農薬散布時の気中濃度
航空防除農薬のうち主なものを対象として、これまで環境庁、都道府県、(社)農林水産航空協会等によって実施された航空防除農薬の気中濃度の実態調査結果を収集し、一覧表にとりまとめたものを巻末に付した(参考資料3)。
2.安全性評価の基本的考え方
(1)担保すべき健康の範囲について
航空防除農薬による散布地周辺の地域住民への健康影響評価に当たり、担保すべき「健康」の範囲を明らかにしておく必要があると考えられる。
そのためには、昭和53年3月に中央公害対策審議会大気部会二酸化窒素に係る判定条件等専門委員会が示した、環境大気中の二酸化窒素による人の健康影響についての考え方が参考になると思われる。同専門委員会では、大気汚染の健康への影響の程度の概念を6段階に分類整理し、そのうちの第3段階である「観察された影響の可逆性が明らかでないか、あるいは生体の恒常性の保持の破綻、疾病への発展について明らかでない段階」を健康状態からの偏りと位置づけた上で、このような偏りが見いだされない状態を担保すべき健康と定義している(参考資料4)。
航空防除農薬の健康影響評価に当たっても、基本的にはこの中央公害対策審議会専門委員会の考え方が準用できると考えられる。
(2)想定すべき健康影響の評価について
1.(2)でも述べたように、航空防除は限定した地域で平均年2〜3回、多い場合で年5回(主として6〜8月)程度行われ、気中濃度の実態調査結果にみられるように、散布後長い場合でも数日(おおむね5日以内)で検出されなくなる。航空防除のこのような実施実態及び曝露期間を考慮すると、基本的に亜急性の影響として評価すべきであると考えられる。
(3)農薬の一日摂取許容量(ADI)との関係について
農薬の一日摂取許容量(ADI)とは、人が生涯にわたって当該農薬を摂取したとしても安全性に問題がないと認められる1日当たりの農薬摂取量であり、作物残留及び水質汚濁に係る登録保留基準はこのADIを考慮して決められている。一方、航空防除農薬による健康影響は、2.(2)でも述べたように、亜急性的なものであり、慢性的な健康影響を評価したADIとは性質を異にすると考えられることから、例えば、水質汚濁に係る登録保留基準を設定する場合のようにADIの配分を予め設定する手法は、必ずしも妥当でないと考えられる。
(4)感受性の高い人々への影響について
一般の人々の健康には影響が出ない濃度であっても、感受性の高い人々に対して何らかの影響が生じる可能性が指摘されている。
近年、特に環境汚染による子供の健康への影響について関心が高まっており、子供に特有の曝露や感受性に配慮したリスク評価や試験方法、基準等の開発の必要性が指摘されている(参考資料5)が、この問題に関する現在までの科学的知見は十分とは言えない。
また、感受性の高い人々には、いわゆる化学物質過敏症と呼ばれる人々が含まれる。化学物質過敏症については、従来の毒性学では説明がつかず、現在までの研究で得られている科学的知見も十分でないことから、現時点における評価は困難だが、その存在を否定することはできないと考えられる(参考資料6)。
これらの問題については、今後の研究の進展を待たなければならないと考えられる。
(5)内分泌攪乱作用等の新たな毒性について
近年、世界各地で報告されている野生生物の生殖・発生障害等が、ある種の化学物質が野生生物の内分泌系を攪乱することによって引き起こされたものである可能性があり、人にも同様の影響が生じるおそれがあるとする、いわゆる内分泌攪乱作用等、新たなタイプの毒性が国際的に注目を集めている。
現在、我が国では、農薬取締法に基づく農薬登録の際に、人の健康を保護する観点から、種々の毒性試験成績に基づき厳密な安全性評価が行われているが、これらの新たな毒性については、世界的にも研究が始まったばかりであり、これまでに得られている科学的知見が十分でないことから、新たな毒性指標として直ちに評価の対象とすることは困難である。今後、国際的な動向も踏まえて、これらの毒性についての評価が必要かどうかを検討していかなければならないと考えられる。
(6)吸入曝露による影響を経口毒性試験結果からどのように評価するかについて
農薬については、農薬取締法に基づく農薬登録の際に、毒性に関する種々の試験成績の提出が義務づけられており、農薬の安全性に関する情報は他の化学物質に比べて多いと考えられる。
しかし、その多くは経口曝露に係る毒性試験成績であり、吸入曝露による毒性試験についてみると、ほぼすべての農薬で急性吸入毒性試験が要求されているものの、亜急性吸入毒性試験は必須ではなく、急性吸入毒性以外の情報は限られていることから、多くの場合、経口毒性試験の結果から吸入曝露による影響の評価を行わなければならない。
海外で労働環境以外の一般環境における農薬の吸入曝露に対する安全性評価指針を定めた例は、我々の調査した範囲ではなかった。一方、我が国でこのような評価を行ったものとしては、「農薬環境動態影響調査(大気)検討会―平成3年度とりまとめ―」(環境庁水質保全局、平成4年3月)及び(社)農林水産航空協会が医学、農薬学等の専門家に委嘱し、日本産業衛生学会の許容濃度を基に設定した「航空散布地区周辺地域の生活環境における大気中の農薬の安全性についての評価に関する指針」(平成3年3月)(参考資料7)がある。そこで、これらにおいて示された指針値も参考にしつつ、以下の問題について検討を行った。
@ 経口毒性試験成績から吸入毒性を推定する際の問題点
a.経口毒性試験成績をもとに吸入毒性を評価する際の問題点として、@腸管と肺における農薬の吸収率の差、A腸管吸収の場合の肝初回通過効果の検討を行った。
@に関しては、標識化合物を用いた動物代謝試験において求められた尿中排泄率(尿中の標識体量/投与した標識体量)を腸管吸収率として用いることも検討したが、本来、吸収率は尿中排泄、胆汁排泄、呼気中排泄の総和としてとらえられるべきものであり、そのうちの尿中排泄率のみをとりあげて、これを腸管からの吸収率とみなすことには限界があると考えられる。肺吸収率についても、現時点では、評価のために十分な知見が得られているとは言い難い。
また、Aに関しても裏付けとなるデータがなく、これを定量的に評価することは難しいと考えられる。
b.一方、フェニトロチオン(MEP)についてはラットを用いた亜急性吸入毒性試験の最大無作用量が確認されていることから、肺吸収と腸管吸収の差及び肝初回通過効果については、MEPで求められた吸入曝露による最大無作用量と経口曝露による最大無作用量の比(1/4)を用いることにより一定の評価を行うことができると考えられる。
なお、MEP以外の農薬については、当該農薬の尿中排泄率とMEPの尿中排泄率の比を用いて、上記最大無作用量の比をさらに補正することにより、農薬ごとの性質をある程度反映した評価が可能になると考えられる。
A 吸入以外の曝露経路について
航空防除農薬の一般環境における曝露経路として、経皮吸収は呼吸器経由の曝露に比べてわずかであると考えられるので、主として吸入による影響を対象に評価することが可能と考えられる。
B 混合製剤の毒性について
現在、農薬については登録申請の際に「農薬の登録申請に係る毒性試験成績の取扱いについて」(昭和60年1月28日付59農蚕第4200号農林水産省農蚕園芸局長通知)の別添「農薬の安全性評価に関する基準」の別表に基づき、原体についての急性毒性、亜急性毒性、慢性毒性、発がん性、繁殖、催奇形性、変異原性等に係る試験成績の他、製剤について急性経口毒性、急性経皮毒性、急性吸入毒性、眼一次刺激性、皮膚一次刺激性及び皮膚感作性の各試験成績が提出され、安全性評価が行われている(参考資料8)。
当該通知は混合製剤にも適用されるが、混合製剤については評価の結果、複数の有効成分の投与による相乗作用が示唆された場合には、さらに追加の毒性試験等の実施が求められることとされている。
しかしながら、混合製剤でこれまで実際に相乗作用が示唆されて追加試験を行った例はないこと、及び航空防除で曝露する程度の低濃度では相乗作用は問題にならないと推定されることから、混合製剤については相加作用のみを考慮すれば十分であると考えられる。
相加作用については、次式によりその毒性を評価することとし、Iの値が1を超える場合に、気中濃度評価値(「3.気中濃度評価値の設定」を参照)を超える曝露と判断することが適当であると考えられる。
C 一般環境中における変化物の毒性について
一般環境中で有機リン系農薬のオキソン体が微量生成しても速やかに分解すると考えられており、その影響は小さいと考えられるが、同じ有機リン系農薬の一般環境中における変化物であるチオールオキソン体については比較的安定で、オキソン体と酵素阻害活性が同程度であると言われている。いずれの変化物も、その一般環境中での生成についてこれまで必ずしも十分な知見が集積されておらず、また、両物質が眼表面から直接吸収された場合に何らかの影響が生じる可能性も指摘されていることから、これらの一般環境中における変化物の気中での動態も視野に入れた調査が、今後検討されるべきであろう。
3.気中濃度評価値の設定
2.(2)で検討したように亜急性経口毒性試験の最大無作用量(NOEL)(ヒトでの試験と動物での試験とがある場合には、ヒトでの試験における最大無作用量を優先)を用い、以下の考え方1又は2の式により、航空防除農薬の気中濃度評価値を求めることとした。
ただし、亜急性経口毒性試験と慢性経口毒性試験との間で最大無作用量に10倍以上の差が見られた農薬(フサライド、ブプロフェジン及びフルトラニル)については、両試験間の投与量の設定の差がその原因として考えられるが、それを考慮してもなお明らかでない部分が残っており、より安全側に立った判断を行うため、さらに1/10の安全係数を乗じることとした。
また、考え方1、2には2.(6)で述べたような問題点があることから、考え方1及び2式の計算により得られた値のうちの小さい方を採り、それを気中濃度評価値とした。
個々の農薬の気中濃度評価値については、参考資料9を参照のこと。
気中濃度評価値は、人の健康を保護する観点から、航空防除農薬による人の健康への影響を評価する際の目安として、毒性試験成績等を基に適切な安全幅を見込んで設定したものである。一般に気中濃度評価値以下の濃度であれば、人の健康に好ましくない影響が起きることはないと考えられる。気中濃度評価値は、安全と危険との明らかな境界を示すものではなく、航空防除農薬の気中濃度が短時間わずかにこの値を超えることがあっても、直ちに人の健康に影響があるというものではない。
(考え方1)
亜急性経口NOEL×体重50kg(×種差1/10)×個体差1/10×MEPの経口・吸入毒性差1/4/1日呼吸量15m3(亜急性NOELが慢性NOELの10倍より大きい場合は、さらに1/10を乗じる)
(考え方2)
亜急性経口NOEL×体重50kg(×種差1/10)×個体差1/10×MEPの経口・吸入毒性差1/4×当該農薬の尿中排泄率(%)/MEPの尿中排泄率(%)/1日呼吸量15m3(亜急性NOELが慢性NOELの10倍より大きい場合は、さらに1/10を乗じる)
4.個別農薬の気中濃度の評価
航空防除農薬のうち、使用量が多く、かつ、評価のための知見の集積が比較的十分と考えられる以下の10農薬について、気中濃度の評価を行った。
これまでの調査の結果、大気中の農薬はおおむね5日以内に検出されなくなると考えられることから、各農薬の散布後5日間の散布区域内及び散布区域外それぞれの平均気中濃度を求め(参考資料10)、それと気中濃度評価値とを比較することにより評価した。なお、これまでに収集された気中濃度の実測値(散布区域内については散布中の値を除く)と気中濃度評価値との比較も併せて行い、気中濃度評価値を超えているものがある場合には、その旨を記載した。
その結果、いずれの農薬についても散布後5日間の平均気中濃度は気中濃度評価値を下回っており、現在までに得られている知見に照らして特段問題となるような状況は発生していないと考えられる。
散布区域外では気中濃度評価値を超える濃度が検出された事例はながったが、散布区域内では、ダイアジノン、フェニトロチオン(MEP)及びフェノブカルブ(BPMC)で散布直後に気中濃度評価値を超える濃度が検出された事例が各1件報告されている(参考資料11)。しかし、いずれも気中濃度評価値を短時間わずかに超過しただけであり、この間の各農薬の吸入量を1日呼吸量(15m3)で除して得られる濃度は気中濃度評価値に比較して十分低いレベルにとどまっていることから、特に問題となるようなものではないと考えられる。
ただし、気中濃度評価値を超える濃度が検出されたものや、測定事例の少ないものについては、今後さらに測定事例の集積に努める必要がある。また、今回本報告書で取り上げなかった航空防除農薬についても、さらに気中濃度等の知見の集積に努め、十分な知見が集まった段階で評価を行うこととする。
(1)ダイアジノン
散布区域内の散布後5日間の平均気中濃度は0.25μg/m3であり、気中濃度評価値(1μg/m3)の25%であった。1件だけ散布区域内で散布直後(午前7時30分)に気中濃度評価値を超える濃度(1.08μg/m3)が検出された事例があるが、2時間30分後の当日午前10時には気中濃度評価値以下の0.24μg/m3、散布翌日以降は検出限界(0.08μg/m3)未満まで低下している。
散布区域外の散布後5日間の平均気中濃度は0.22μg/m3であり、気中濃度評価値の22%であった。
(2)ピリダフェンチオン
散布区域内の散布後5日間の平均気中濃度は0.046μg/m3であり、気中濃度評価値(2μg/m3)の2.3%であった。
散布区域外の散布後5日間の平均気中濃度は0.36μg/m3であり、気中濃度評価値の18%であった。
(3)フェニトロチオン(MEP)
散布区域内の散布後5日間の平均気中濃度は65μg/mm3であり、気中濃度評価値(10μg/m3)の65%であった。1件だけ散布区域内て散布直後(午前9時)に気中濃度評価値を超える濃度(22μg/m3)が検出された事例があるが、当日午前10時に12μg/m3、4時間後の同午後1時には気中濃度評価値以下の4.5μg/m3まで低下している。
散布区域外の散布後5日間の平均気中濃度は1.9μg/m3であり、気中濃度評価値の19%であった。
(4)マラチオン
散布区域内の散布後5日間の平均気中濃度は0.51μg/m3であり、気中濃度評価値(20μg/m3)の2.6%であった。
散布区域外の散布後5日間の平均気中濃度は0.47μg/m3であり、気中濃度評価値の2.4%であった。
(5)フェノブカルブ(BPMC)
散布区域内の散布後5日間の平均気中濃度は12μg/m3であり、気中濃度評価値(30μg/m3)の40%であった。1件だけ散布区域内で散布直後(午前7時30分)に気中濃度評価値を超える濃度(58μg/m3)が検出された事例があるが、2時間30分後の当日午前10時には気中濃度評価値以下の10μg/m3、散布翌日以降は検出限界(2μg/m3)未満まで低下している。
散布区域外の散布後5日間の平均気中濃度は3.6μg/m3であり、気中濃度評価値の12%であった。
(6)トリシクラゾール
散布区域内の散布後5日間の平均気中濃度は0.47μg/m3であり、気中濃度評価値(30μg/m3)の1.6%であった。
散布区域外の散布後5日間の平均気中濃度は1.1μg/m3であり、気中濃度評価値の3.7%であった。
(7)フサライド
散布区域内の散布後5日間の平均気中濃度は0.88μg/m3であり、気中濃度評価値(200μg/m3)の0.4%であった。
散布区域外の散布後5日間の平均気中濃度は1.6μg/m3であり、気中濃度評価値の0.8%であった。
(8)ブプロフェジン
散布区域内の散布後5日間の平均気中濃度は0.15μg/m3であり、気中濃度評価値(7μg/m3)の2.1%であった。
散布区域外の散布後5日間の平均気中濃度は0.16μg/m3であり、気中濃度評価値の2.3%であった。
(9)フルトラニル
散布区域内の散布後5日間の平均気中濃度は0.04μg/m3であり、気中濃度評価値(100μg/m3)の0.04%であった。
散布区域外の散布後5日間の気中濃度はすべて検出限界(0.05μg/m3)未満であった。
(10)メプロニル
散布区域内の散布後5日間の平均気中濃度は4.8μg/m3であり、気中濃度評価値(70μg/m3)の6.9%であった。
散布区域外の散布後5日間の平均気中濃度は10μg/m3であり、気中濃度評価値の14%であった。
5.農薬の気中濃度の測定方法について
(1)測定の基本的考え方
1.(2)で述べた航空防除の実施時期の特徴や、非散布時期には大気中から農薬が検出されることはほとんどないことなどを考慮すると、年間を通じてではなく、時期を特定して集中的な測定を行うことが適当である。また、航空防除時の農薬の気中濃度について人の健康への影響の観点から評価する場合、散布区域内及び区域外の亜急性の影響が評価可能なデータが得られるよう測定を行う必要があると考えられる。
また、これまでの測定結果をみると、気中濃度評価値を大きく下回るケースがほとんどであることから、気中濃度のピークを把握することに重点を置いた測定方法とすべきであると考えられる。なお、個々の測定が地域の状況に応じて適切に行われるよう、巻末に付した測定方法(参考資料12)が、地域における測定計画策定の際の参考として活用されることが望まれる。
(2)測定地域等
測定地域には、農林業従事者や一般住民の活動が見込まれる散布中の散布区域周辺地域や散布後の散布区域内・区域外が該当する。
また、人口密集地、学校、病院、浄水場、水源などの保全対象施設等については、測定地点の設定に当たり、当該区域の安全性を確認できるよう配慮が必要であると考えられる。
なお、散布中の散布区域内は通常人が活動していない地域であり、本来、作業環境として評価すべきものであることから、気中濃度の測定は、散布中の散布区域内を除いて行うことが適当であろう。
(3)測定地点及び測定期間・頻度
農薬の気中濃度が時間や場所によって変化しやすいことを考慮すると、できるだけ多くの測定地点を設けることが望ましい反面、測定に必要な人員、測定機器、費用等は増加する。このような状況下では、地形条件や人家等の位置、散布時の風向等との関係も勘案しつつ、適切な測定地点を選定することが適当である。
例えば、実施地域の風向が複雑で一様ではない場合は風向の変化に対応できるよう、測定地点は散布区域を囲むように設定し、測定時の風向が一定方向に卓越することが予め想定される場合には、南北又は東西のいずれか2方位及び必要に応じて風下方向に測定地点を設置する。
通常、気中濃度のピークが見られるのは、散布当日又は1日後までであることから、測定期間は原則として散布前日から散布2日後までは毎日とし、その後1日おいて散布4日後に測定する。
測定時間が短ければ瞬間的な濃度を、長ければ平均的な濃度を把握できるので、散布中又は散布直後のように気中濃度が高い時間帯には1回当たり30分間測定することとし、それ以外は気中濃度が高い状態になると見込まれる時間帯に1回当たり1時間測定する。
(4)捕集方法
捕集対象となる農薬は微小な粒子状又はガス状の形態で存在していることから、吸引法等、両方の形態の農薬が同時に測定できるような捕集方法を選択することが適当である。
捕集装置としては、自動大気捕集装置が実用化されているので、これを用いることが望ましい。一方、装置を地点間で移動させて測定する場合等には、移動に便利なミニポンプを使用する。なお、気中濃度の測定と併せて、気温、湿度、風向等についても測定を行う。
(5)関連情報の把握
気中濃度の評価に当たっては、散布区域及びその周辺地域における農薬の使用状況、地形条件、気象条件等、農薬の気中濃度に影響すると考えられる事項に関する情報を把握する必要がある。
6.今後の検討課題
航空防除農薬による健康影響評価において今後検討すべき事項として、以下のことが考えられる。
@航空防除農薬の経口曝露及び吸入曝露による無毒性量の比の検討
Aオキソン体等有機リン系農薬の一般環境中における変化物の気中濃度の調査
B気中農薬の挙動と逆転層の関連等を踏まえた気中農薬のより適切な測定方法の検討
C気中濃度の測定事例が少ない農薬についてのモニタリングの充実
D感受性の高い人々、とりわけ子供の感受性(子供と成人の感受性の差や子供のときの曝露が成人後に及ぼす影響等)の検討
E内分泌攪乱作用等の新たな毒性の評価の必要性についての検討
7.おわりに
本検討会では、航空防除農薬のうち評価のための知見が比較的十分と考えられる10農薬について、散布地周辺の地域住民の健康への影響に対する現時点の評価をとりまとめることを目的に、1年余りにわたって検討を重ねてきた。その結果、各農薬の平均気中濃度は、おおむね気中濃度評価値を下回っており、問題となるようなレベルのものではなかった。
なお、今回の気中濃度の評価結果にかかわらず、航空防除の実施に当たっては、特に生活環境や自然環境への影響に配慮するとともに、化学物質に感受性の高い人々が存在する可能性があるとの指摘もあり、これまでの危被害防止対策の一層の徹底を図ることや、あらかじめ保健所、病院等に防除の実施日時、使用薬剤の種類等を連絡するなど、万一被害が発生した場合に的確な対応措置がとれるよう、地域医療機関への周知徹底を図ることが必要であることは言うまでもない。
今回の検討では、一部の農薬で気中濃度の実測データの数が限られていること、航空防除農薬の人の健康への影響について現時点でなお評価が困難な要因が残されていること等、今後の調査・研究が必要な事項があることが明らかになった。今後も引き続き必要な調査・研究が進められ、より実態を反映した気中濃度評価値が設定されるとともに、本報告書が適正な航空防除の実施に資することを希望する。
航空防除農薬環境影響評価検討会委員名簿 略
航空防除農薬環境影響評価検討会開催状況 略
参考資料 略
(別添)
農薬の分析方法
(1)ダイアジノン
ア 装置 アルカリ熱イオン型検出器又は高感度窒素・リン検出器付きガスクロマトグラフ若しくはガスクロマトグラフ質量分析計を用いる。
イ 試薬試液
アセトン アセトン(特級)
エチルエーテル エチルエーテル(特級)
ヘキサン ヘキサン(特級)
フロリジルミニカラム Sep―Pak フロリジルカートリッジ
ダイアジノン標準品 本品は、ダイアジノン98%以上を含み、融点は83〜84℃(0.0002mmHg)である。
ウ 試験溶液の調製
採気した捕集カラムを10ml容の注射筒の先端につけ、アセトン20mlを流し100mlのナス型フラスコ中に溶出する。この溶出液を、すり合わせ減圧濃縮器を用いて40℃以下で溶媒を留去する。次にフロリジルミニカラムを10ml容の注射筒の先端につけヘキサン6mlで洗う。この注射筒に残留物をヘキサン5mlに溶かして移し、さらに容器内をヘキサン5mlで洗って洗液を注射筒に移し流下させる。この流出液は捨てる。次にこの注射筒にヘキサン及びエチルエーテルの混液(7:3)10mlを加え、流下させて溶出液を100mlのナス型フラスコにとり、すり合わせ減圧濃縮器を用いて40℃以下で溶媒を留去する。これにアセトンを加えて溶かし、2mlとして試験溶液とする。
エ ガスクロマトグラフの操作条件
分離管 内径0.5〜0.6mm、長さ15mの溶融シリカ製の管の内面にシリコンを0.5〜1.5μmの厚さで被覆したものを用いる。
分離管温度 160℃
試料気化室温度 250℃
検出器温度 280℃
ガス流量 キャリアーガスとして高純度窒素ガス又はヘリウムガスを用い、ダイアジノンが約3分で流出するように流量を調整するとともに、水素ガス及び空気の流量を至適条件になるように調整する。
記録紙送り速度 5mm/分
感度 ダイアジノンの0.02ngが十分確認できるように感度を調整する。
オ 検量線の作成
ダイアジノン標準品の0.01〜1.0mg/Lアセトン溶液を数点調製し、それぞれを2μlずつガスクロマトグラフに注入し、縦軸にピーク高、横軸に重量を取ってダイアジノンの検量線を作成する。
カ 定量試験
試験溶液から2μlを取り、ガスクロマトグラフに注入し、オの検量線によりダイアジノンの重量を求め、これに基づき、気体試料中のダイアジノンの濃度(μg/m3)を算出する。
(捕集カラムからの回収試験結果)
添加量(μg/m3) |
回収率(実測)(%) |
平均回収率(%) |
0.005 |
101 100 |
100 |
0.5 |
103 102 |
102 |
(注)捕集カラムにダイアジノン0.005μg、0.5μgを添加し、室温にて20分間放置後、前記分析操作に従って回収率を調べた。
(2)ピリダフェンチオン
ア 装置 アルカリ熱イオン型検出器又は高感度窒素・リン検出器付きガスクロマトグラフ若しくはガスクロマトグラフ質量分析計を用いる。
イ 試薬試液
アセトン アセトン(特級)
ピリダフェンチオン標準品 本品は、ピリダフェンチオン99%以上を含み、融点は56
℃である。
ウ 試験溶液の調製
採気した捕集カラムを10ml容の注射筒の先端につけ、アセトン20mlを流し100mlのナス型フラスコ中に溶出する。この溶出液を、すり合わせ減圧濃縮器を用いて40℃以下で溶媒を留去する。この残留物にアセトンを加えて溶かし、2mlとして試験溶液とする。
エ ガスクロマトグラフの操作条件
分離管 内径0.5〜0.6mm、長さ15mの溶融シリカ製の管の内面にシリコンを0.5〜1.5μmの厚さで被覆したものを用いる。
分離管温度 220℃
試料気化室温度 250℃
検出器温度 280℃
ガス流量 キャリアーガスとして高純度窒素ガス又はヘリウムガスを用い、ピリダフェンチオンが約3分で流出するように流量を調整するとともに、水素ガス及び空気の流量を至適条件になるように調整する。
記録紙送り速度 5mm/分
感度 ピリダフェンチオンの0.04ngが十分確認できるように感度を調整する。
オ 検量線の作成
ピリダフェンチオン標準品の0.02〜1.0mg/Lアセトン溶液を数点調製し、それぞれを2μlずつガスクロマトグラフに注入し、縦軸にピーク高、横軸に重量を取ってピリダフェンチオンの検量線を作成する。
カ 定量試験
試験溶液から2μlを取り、ガスクロマトグラフに注入し、オの検量線によりピリダフェンチオンの重量を求め、これに基づき、気体試料中のピリダフェンチオンの濃度(μg/m3)を算出する。
(3)フェニトロチオン(MEP)
ア 装置 アルカリ熱イオン型検出器又は高感度窒素・リン検出器付きガスクロマトグラフ若しくはガスクロマトグラフ質量分析計を用いる。
イ 試薬試液
ウ 試験溶液の調製
採気した捕集カラムを10ml容の注射筒の先端につけ、アセトン20mlを流し100mlのナス型フラスコ中に溶出する。この溶出液を、すり合わせ減圧濃縮器を用いて40℃以下で溶媒を留去する。この残留物にアセトンを加えて溶かし、2mlとして試験溶液とする。
エ ガスクロマトグラフの操作条件
分離管 内径0.5〜0.6mm、長さ15mの溶融シリカ製の管の内面にシリコンを0.5〜1.5μmの厚さで被覆したものを用いる。
分離管 温度 200℃
試料気化室温度 250℃
検出器温度 280℃
ガス流量 キャリアーガスとして高純度窒素ガス又はヘリウムガスを用い、MEPが約3分で流出するように流量を調整するとともに、水素ガス及び空気の流量を至適条件になるように調整する。
記録紙送り速度 5mm/分
感度 MEPの0.02ngが十分確認できるように感度を調整する。
オ 検量線の作成
MEP標準品の0.01〜1.0mg/Lアセトン溶液を数点調製し、それぞれを2μlずつガスクロマトグラフに注入し、縦軸にピーク高、横軸に重量を取ってMEPの検量線を作成する。
カ 定量試験
試験溶液から2μlを取り、ガスクロマトグラフに注入し、オの検量線によりMEPの重量を求め、これに基づき、気体試料中のMEPの濃度(μg/m3)を算出する。
(ガスクロマトグラフ操作実施例)
1.NPD,DB―17 0.53mm×15m,160℃
(捕集カラムからの回収試験結果)
添加量(μg/m3) |
回収率(実測)(%) |
平均回収率(%) |
0.025 |
101 100 |
100 |
(注)捕集カラムにフェニトロチオン(MEP)0.025μg(0.5μg/m3相当)を添加し、前記分析操作に従って回収率を調べた。
(4)マラチオン
ア 装置 アルカリ熱イオン型検出器又は高感度窒素・リン検出器付きガスクロマトグラフ若しくはガスクロマトグラフ質量分析計を用いる。
イ 試薬試液
ウ 試験溶液の調製
採気した捕集カラムを10ml容の注射筒の先端につけ、アセトン20mlを流し100mlのナス型フラスコ中に溶出する。この溶出液を、すり合わせ減圧濃縮器を用いて40℃以下で溶媒を留去する。この残留物にアセトンを加えて溶かし、2mlとして試験溶液とする。
エ ガスクロマトグラフの操作条件
分離管 内径0.5〜0.6mm、長さ15mの溶融シリカ製の管の内面にシリコンを0.5〜1.5μmの厚さで被覆したものを用いる。
分離管温度 180℃
試料気化室温度 250℃
検出器温度 280℃
ガス流量 キャリアーガスとして高純度窒素ガス又はヘリウムガスを用い、マラチオンが約3分で流出するように流量を調整するとともに、水素ガス及び空気の流量を至適条件になるように調整する。
記録紙送り速度 5mm/分
感度 マラチオンの0.05ngが十分確認できるように感度を調整する。
オ 検量線の作成
マラチオン標準品の0.025〜1.0mg/Lアセトン溶液を数点調製し、それぞれを2μlずつガスクロマトグラフに注入し、縦軸にピーク高、横軸に重量を取ってマラチオンの検量線を作成する。
カ 定量試験
試験溶液から2μlを取り、ガスクロマトグラフに注入し、オの検量線によりマラチオンの重量を求め、これに基づき、気体試料中のマラチオンの濃度(μg/m3)を算出する。
(5)フェノブカルブ(BPMC)
ア 装置 アルカリ熱イオン型検出器又は高感度窒素・リン検出器付きガスクロマトグラフ若しくはガスクロマトグラフ質量分析計を用いる。
イ 試薬試液
アセトン アセトン(特級)
ヘキサン ヘキサン(特級)
フロリジルミニカラム Sep―Pakフロリジルカートリッジ
BPMC標準品 本品は、BPMC99%以上を含み、融点は31〜32℃である。
ウ 試験溶液の調製
採気した捕集カラムを10ml容の注射筒の先端につけ、アセトン20mlを流し100mlのナス型フラスコ中に溶出する。この溶出液を、すり合わせ減圧濃縮器を用いて40℃以下で溶媒を留去する。次にフロリジルミニカラムを10ml容の注射筒の先端につけヘキサン6mlで洗う。この注射筒に残留物をヘキサン5mlに溶かして移し、さらに容器内をヘキサン5mlで洗って洗液を注射筒に移し流下させる。この流出液は捨てる。次にこの注射筒にヘキサン及びアセトンの混液(9:1)10mlを加え、流下させて溶出液を100mlのナス型フラスコにとり、すり合わせ減圧濃縮器を用いて40℃以下で溶媒を留去する。これにアセトンを加えて溶かし、2mlとして試験溶液とする。
エ ガスクロマトグラフの操作条件
分離管 内径0.5〜0.6mm、長さ15mの溶融シリカ製の管の内面にシリコンを0.5〜1.5μmの厚さで被覆したものを用いる。
分離管温度 180℃
試料気化室温度 250℃
検出器温度 280℃
ガス流量 キャリアーガスとして高純度窒素ガス又はヘリウムガスを用い、BPMCが約3分で流出するように流量を調整するとともに、水素ガス及び空気の流量を至適条件になるように調整する。
記録紙送り速度 5mm/分
感度 BPMCの0.02ngが十分確認できるように感度を調整する。
オ 検量線の作成
BPMC標準品の0.01〜1.0mg/Lアセトン溶液を数点調製し、それぞれを2μlずつガスクロマトグラフに注入し、縦軸にピーク高、横軸に重量を取ってBPMCの検量線を作成する。
カ 定量試験
試験溶液から2μlを取り、ガスクロマトグラフに注入し、オの検量線によりBPMCの重量を求め、これに基づき、気体試料中のBPMCの濃度(μg/m3)を算出する。
(ガスクロマトグラフ操作実施例)
1.NPD,5% OV―17,160〜180℃
(6)トリシクラゾール
ア 装置 アルカリ熱イオン型検出器又は高感度窒素・リン検出器付きガスクロマトグラフ若しくはガスクロマトグラフ質量分析計を用いる。
イ 試薬試液
ウ 試験溶液の調製
採気した捕集カラムを10ml容の注射筒の先端につけ、アセトン20mlを流し100mlのナス型フラスコ中に溶出する。この溶出液を、すり合わせ減圧濃縮器を用いて40℃以下で溶媒を留去する。この残留物にアセトンを加えて溶かし、5mlとして試験溶液とする。
エ ガスクロマトグラフの操作条件
分離管 内径0.5〜0.6mm、長さ15mの溶融シリカ製の管の内面にシリコンを0.5〜1.5μmの厚さで被覆したものを用いる。
分離管温度 220℃
試料気化室温度 250℃
検出器温度 280℃
ガス流量 キャリアーガスとして高純度窒素ガス又はヘリウムガスを用い、トリシクラゾールが約4分で流出するように流量を調整するとともに、水素ガス及び空気の流量を至適条件になるように調整する。
記録紙送り速度 5mm/分
感度 トリシクラゾールの0.1ngが十分確認できるように感度を調整する。
オ 検量線の作成
トリシクラゾール標準品の0.05〜1.0mg/Lアセトン溶液を数点調製し、それぞれを2μlずつガスクロマトグラフに注入し、縦軸にピーク高、横軸に重量を取ってトリシクラゾールの検量線を作成する。
カ 定量試験
試験溶液から2μlを取り、ガスクロマトグラフに注入し、オの検量線によりトリシクラゾールの重量を求め、これに基づき、気体試料中のトリシクラゾールの濃度(μg/m3)を算出する。
(7)フサライド
ア 装置 電子捕獲型検出器付きガスクロマトグラフ又はガスクロマトグラフ質量分析計を用いる。
イ 試薬試液
ウ 試験溶液の調製
採気した捕集カラムを10ml容の注射筒の先端につけ、アセトン20mlを流し100mlのナス型フラスコ中に溶出する。この溶出液を、すり合わせ減圧濃縮器を用いて40℃以下で溶媒を留去する。この残留物にアセトンを加えて溶かし、5mlとして試験溶液とする。
エ ガスクロマトグラフの操作条件
分離管 内径0.5〜0.6mm、長さ15mの溶融シリカ製の管の内面にシリコンを0.5〜1.5μmの厚さで被覆したものを用いる。
分離管温度 200℃
試料気化室温度 280℃
検出器温度 電子捕獲型検出器の場合は至適電圧を与え、280〜300℃で操作する。
ガス流量 キャリアーガスとして高純度窒素ガスを用い、フサライドが約3分で流出するように流量を調整する。
記録紙送り速度 5mm/分
感度 フサライドの0.002ngが十分確認できるように感度を調整する。
オ 検量線の作成
フサライド標準品の0.001〜0.02mg/Lアセトン溶液を数点調製し、それぞれを2μlずつガスクロマトグラフに注入し、縦軸にピーク高、横軸に重量を取ってフサライドの検量線を作成する。
カ 定量試験
試験溶液から2μlを取り、ガスクロマトグラフに注入し、オの検量線によりフサライドの重量を求め、これに基づき、気体試料中のフサライドの濃度(μg/m3)を算出する。
(8)ブプロフェジン
ア 装置 アルカリ熱イオン型検出器又は高感度窒素・リン検出器付きガスクロマトグラフ若しくはガスクロマトグラフ質量分析計を用いる。
イ 試薬試液
アセトン アセトン(特級)
エチルエーテル エチルエーテル(特級)
ヘキサン ヘキサン(特級)
フロリジルミニカラム Sep―Pak フロリジルカートリッジ
ブプロフェジン標準品 本品は、ブプロフェジン99%以上を含み、融点は106℃である。
ウ 試験溶液の調製
採気した捕集カラムを10ml容の注射筒の先端につけ、アセトン20mlを流し100mlのナス型フラスコ中に溶出する。この溶出液を、すり合わせ減圧濃縮器を用いて40℃以下で溶媒を留去する。次にフロリジルミニカラムを10ml容の注射筒の先端につけヘキサン6mlで洗う、この注射筒に残留物をヘキサン及びエチルエーテルの混液(95:5)5mlに溶かして移し、さらに容器内を同混液5mlで洗って洗液を注射筒に移し流下させる。この流出液は捨てる。次にこの注射筒にヘキサン及びエチルエーテルの混液(7:3)10mlを加え、流下させて溶出液を100mlのナス型フラスコにとり、すり合わせ減圧濃縮器を用いて40℃以下で溶媒を留去する。これにアセトンを加えて溶かし、2mlとして試験溶液とする。
エ ガスクロマトグラフの操作条件
分離管 内径0.5〜0.6mm、長さ15mの溶融シリカ製の管の内面にシリコンを0.5〜1.5μmの厚さで被覆したものを用いる。
分離管温度 210℃
試料気化室温度 250℃
検出器温度 280℃
ガス流量 キャリアーガスとして高純度窒素ガス又はヘリウムガスを用い、ブプロフェジンが約3分で流出するように流量を調整するとともに、水素ガス及び空気の流量を至適条件になるように調整する。
記録紙送り速度 5mm/分
感度 ブプロフェジンの0.04ngが十分確認できるように感度を調整する。
オ 検量線の作成
ブプロフェジン標準品の0.02〜1.0mg/Lアセトン溶液を数点調製し、それぞれを2μlずつガスクロマトグラフに注入し、縦軸にピーク高、横軸に重量を取ってブプロフェジンの検量線を作成する。
カ 定量試験
試験溶液から2μlを取り、ガスクロマトグラフに注入し、オの検量線によりブプロフェジンの重量を求め、これに基づき、気体試料中のブプロフェジンの濃度(μg/m3)を算出する。
(9)フルトラニル
ア 装置 アルカリ熱イオン型検出器又は高感度窒素・リン検出器付きガスクロマトグラフ若しくはガスクロマトグラフ質量分析計を用いる。
イ 試薬試液
アセトン アセトン(特級)
ヘキサン ヘキサン(特級)
フロリジルミニカラム Sep―Pakフロリジルカートリッジ
フルトラニル標準品 本品は、フルトラニル99%以上を含み、融点は102〜103℃である。
ウ 試験溶液の調製
採気した捕集カラムを10ml容の注射筒の先端につけ、アセトン20mlを流し100mlのナス型フラスコ中に溶出する。この溶出液を、すり合わせ減圧濃縮器を用いて40℃以下で溶媒を留去する。次にフロリジルミニカラムを10ml容の注射筒の先端につけヘキサン6mlで洗う。この注射筒に残留物をヘキサン5mlに溶かして移し、さらに容器内をヘキサン5mlで洗って洗液を注射筒に移し流下させる。この流出液は捨てる。次にこの注射筒にヘキサン及びアセトンの混液(95:5)10mlを加え、流下させて溶出液は捨てる。次にヘキサン及びアセトンの混液(85:15)20mlを流下させて溶出液を100mlのナス型フラスコにとり、すり合わせ減圧濃縮器を用いて40℃以下で溶媒を留去する。これにアセトンを加えて溶かし、2mlとして試験溶液とする。
エ ガスクロマトグラフの操作条件
分離管 内径0.5〜0.6mm、長さ15mの溶融シリカ製の管の内面にシリコンを0.5〜1.5μmの厚さで被覆したものを用いる。
分離管温度 210℃
試料気化室温度 250℃
検出器温度 280℃
ガス流量 キャリアーガスとして高純度窒素ガス又はヘリウムガスを用い、フルトラニルが約3分で流出するように流量を調整するとともに、水素ガス及び空気の流量を至適条件になるように調整する。
記録紙送り速度 5mm/分
感度 フルトラニルの0.04ngが十分確認できるように感度を調整する。
オ 検量線の作成
フルトラニル標準品の0.02〜1.0mg/Lアセトン溶液を数点調製し、それぞれを2μlずつガスクロマトグラフに注入し、縦軸にピーク高、横軸に重量を取ってフルトラニルの検量線を作成する。
カ 定量試験
試験溶液から2μlを取り、ガスクロマトグラフに注入し、オの検量線によりフルトラニルの重量を求め、これに基づき、気体試料中のフルトラニルの濃度(μg/m3)を算出する。
(捕集カラムからの回収試験結果)
添加量(μg/m3) |
回収率(実測)(%) |
平均回収率(%) |
10 |
84.7 81.7 |
83.2 |
(注)捕集カラムにフルトラニル10μgを添加し、前記分析操作に従って回収率を調べた。
(10)メプロニル
ア 装置 アルカリ熱イオン型検出器又は高感度窒素・リン検出器付きガスクロマトグラフ若しくはガスクロマトグラフ質量分析計を用いる。
イ 試薬試液
ウ 試験溶液の調製
採気した捕集カラムを10ml容の注射筒の先端につけ、アセトン20mlを流し100mlのナス型フラスコ中に溶出する。この溶出液を、すり合わせ減圧濃縮器を用いて40℃以下で溶媒を留去する。この残留物にアセトンを加えて溶かし、2mlとして試験溶液とする。
エ ガスクロマトグラフの操作条件
分離管 内径0.5〜0.6mm、長さ15mの溶融シリカ製の管の内面にシリコンを0.5〜1.5μmの厚さで被覆したものを用いる。
分離管温度 210℃
試料気化室温度 250℃
検出器温度 280℃
ガス流量 キャリアーガスとして高純度窒素ガス又はヘリウムガスを用い、メプロニルが約4分で流出するように流量を調整するとともに、水素ガス及び空気の流量を至適条件になるよう一に調整する。
記録紙送り速度 5mm/分
感度 メプロニルの0.04ngが十分確認できるように感度を調整する。
オ 検量線の作成
メプロニル標準品の0.02〜1.0mg/Lアセトン溶液を数点調製し、それぞれを2μlずつガスクロマトグラフに注入し、縦軸にピーク高、横軸に重量を取ってメプロニルの検量線を作成する。
カ 定量試験
試験溶液から2μlを取り、ガスクロマトグラフに注入し、オの検量線によりメプロニルの重量を求め、これに基づき、気体試料中のメプロニルの濃度(μg/m3)を算出する。