廃棄物・リサイクル対策

メタンガス化の技術

メタンガス化施設の構成

 メタンガス化施設の設備を分類すると、A.廃棄物処理施設設備とB.資源化物利用施設設備に分類できます。

A.廃棄物処理施設設備
  • 受け入れ・前処理設備(資源化に不要なものを除去する選別施設、破袋・粉砕設備)
  • メタン発酵設備(メタン発酵槽、ガスホルダー、脱硫施設、余剰ガス燃焼設備)
  • 環境保全設備(悪臭により周辺環境への影響を防止する脱臭設備や排水設備)
B.資源化物利用施設設備
  • エネルギー利用設備(電気エネルギーに変える発電設備やボイラなどの熱利用設備、メタンガス精製設備)
  • マテリアル利用設備(発酵残渣の液肥利用・貯留設備、肥料化施設)
メタンガス化施設の構成

メタンガス化施設の処理フローの事例

 導入済みの自治体のメタンガス化施設の処理フローの例を示します。

【分別収集】

(1)長岡市(株式会社長岡バイオキューブ)(外部リンク)

(2)鹿追町(鹿追町環境保全センターバイオガスプラント)(外部リンク)

【混合収集】

(1)防府市(グリーンパーク防府)(外部リンク)

(2)南但広域行政事務組合( 南但クリーンセンター)(外部リンク)

メタンガス化システムの方式

 メタンガス化の処理方式には処理対象物の固形物濃度によって湿式と乾式に、また発酵温度によって、中温発酵方式と高温発酵方式に分類できます。 それぞれの特徴は下記のとおりです。

乾式・湿式メタン発酵槽の比較
  乾式メタン発酵槽 湿式メタン発酵槽
メリット
  • 排水処理量が少ない(湿式と比較)
  • 機械選別を導入することで、生ごみの分別収集を実施していない自治体でも利用可である
  • ガス発生量が多い(湿式と比較)
  • 設備費用が少ない(乾式と比較)
  • 稼動実績が多い
  • 規模・処理量のバリエーションが豊富
    (敷地面接の省スペースが可能、堅型も可能)
  • 残渣が少ない(下水処理場と連携させた場合)
処理量
  • 1槽あたり25~35t/dの処理量
  • 1槽あたり4~40t/dの処理量
建設面積/槽の大きさ
  • 1槽あたり6.4m×32m 程度
  • バリエーション豊富(例)2,210m2(処理能力20t/dの場合)、1,500m2(処理能力130t/dの場合)
乾式メタン発酵(50t/d・発酵槽2層)

乾式メタン発酵(50t/d・発酵槽2層)

(出所)株式会社タクマ ホームーページ
湿式メタン発酵槽(40t/d・発酵槽2層)

湿式メタン発酵槽(40t/d・発酵槽2層)

(出所)富山県 ホームーページ

 メタンガス化システムの導入を決定するにあたっては、既存の施設(例:焼却施設)の活用方法を検討する必要があります。

 具体的には、「メタンガス化システム(単体)」(既存の施設を廃止し、メタンガス化システムを新設する場合)と、「メタンコンバインドシステム」(既存の施設と合わせてメタンガス化システムを新設する場合)に分かれます。

 既存のごみ処理方式と経済性、CO2削減効果等を比較することで、システム変更のメリットを評価することができます。

2つのメタンガス化システム
メタンガス化システム 概要
メタンガス化システム
(単体)
  • メタン発酵槽で発生するメタンガスの有効利用が可能
  • 残渣が発生するが、堆肥(液肥)として利用可能
メタンコンバインドシステム
(「メタンガス化+焼却方式」)
  • メタンガス化施設と、焼却施設や堆肥化施設などの他の資源化施設と併設するシステム
  • 焼却施設と併設する場合は、メタン発酵槽で発生するメタンガスの有効利用が可能
  • 発生する発酵残渣を効率的に焼却可能

メタンガス化施設の導入・運営コスト

 実際にメタンガス化施設を導入する際にイニシャルコストとランニングコストで考慮するべき項目は下記のとおりです。

項目 各項目の概要
イニシャルコスト  
施設整備費(千円) メタンガス化施設の建設費
ランニングコスト  
減価償却費(千円/年) メタンガス化の施設整備費を施設稼働年数(20年)で除して算出
電力費(千円/年) 施設稼働に係る電力会社からの売電費
燃料費(千円/年) 施設稼働に係る燃料(重油、灯油)等の購入費
上水道費(千円/年) 発酵槽投入時の希釈水に係る費用
下水道費(千円/年) 放流水に係る下水道費用
薬品費(千円/年) 排水処理等の薬品に係る費用
最終処分費(千円/年) 発酵残渣の最終処分に係る費用
修繕費(千円/年) 施設稼働期間の修繕に係る費用
年間費用合計(千円/年)  

※処理量の変化によるコストの変化に関しては、『廃棄物処理施設建設工事等の入札・契約の手引き』(平成18年7月、環境省大臣官房廃棄物リサイクル部)の工事費の分類と工事基本価格等の設定に記載している「0.6乗比例に係る経験則法」に基づき試算できます。

メタンガス化システムの関連情報

(1)バイオマス収集方法の検討

 バイオマスの収集方法として、食品廃棄物を市民が分別したものを収集(分別収集)と可燃ごみとして混合して収集し、中間処理施設で選別(混合収集+機械選別)に区別され、分別収集するか他の可燃物と混合収集するかに関しては、メタン発酵の方式と関係することから、地域特性に配慮した方法を選択する必要があります。

組成分類 分別収集 機械選別
メタン発酵方式 湿式、乾式どちらでも可能 メタン発酵不適物が混入する可能性が高いため、要件がゆるい乾式を採用可能
市民の協力性 分別収集への理解と協力を得る必要がある 市民レベルで分別の協力を得る必要がない
収集容器の変更 専用生ごみ袋などを用意する必要がある
ステーションに専用の回収容器などを設置し回収する場合もある
従来通りの収集容器で対応可能
収集頻度の変更 収集回数が増える場合がある 収集回数は変わらない
副生成物の再利用 消化液を液肥化した場合や、発酵残渣を堆肥化することが可能 発酵不適物が比較的多く含まれるため、液肥利用や堆肥の利用は難しい(焼却処理しサーマルリカバリが適切)
発酵残渣 発生量は比較的少ない 発生量は比較的多い
収集運搬費 高くなる傾向にある(一般的に分別に伴う収集回数が増える可能性) 従来と変動なし
必要面積 狭い やや広い(機械選別のための用地が必要)

(2)選別施設の検討

 選別施設は、可燃ごみとして収集されたものをメタンガス化施設への投入可能物に選別するための施設であり、メタンガス化施設の種類(乾式・湿式)や可燃ごみの収集容器、収集区分などに応じて、適切な機械設備の組み合わせを選定します。

1)メタン発酵投入物の選別設備

 バイオマスの分別収集が困難であると判断された場合は、収集後に機械装置による選別を行う必要があります。

 機械選別の方式は,回転式ドラム型,ハンマープレードが装着されたものなどが採用されており,食品廃棄物の98%以上をメタン発酵原料として回収できることが確認されています。

 なお,バイオマスを分別収集した場合であっても,発酵不適物を除去するために,同様の選別施設を設置している事例も多くみられます。

メタン発酵投入物の選別施設の開発事例・再生利用事業者導入事例  【PDF 160KB】
2)選別設備を含めた前処理システムの構成例

 選別設備は、(1)異物を除去する、(2)移送を容易にする、(3)発酵処理を容易にすることを目的に設置するものであり、設備構成を検討するにあたり、下記の点に留意する必要があります。

【留意点】
  • 搬入されるごみに含まれる異物の混入に対応するため、耐久性に優れた構造及び材質を採用することや収集方式や処理方式に適合した形式・規模を選定すること
  • 設備能力を高めるほど、整備コストと消費エネルギーが増大するので受入れるごみの性状と各機器の実績等を考慮し、適切な機器選定を行うこと
前処理(選別設備等)のシステム構成の例 【PDF 77KB】
粉砕分別器スクリーン

京都市提供資料

(3)生成物の利用方法・処理方法

 メタンガス化施設から生成されるバイオガス並びに資源化物の利用方法を示します。

  • メタンガス化によってバイオガスと発酵残渣が生成する

  • 脱水固形物は堆肥等に利用されるか、さらに乾燥により乾燥固形物として焼却施設に回される

  • 発酵残渣は液肥(消毒後)として利用するか、脱水後の脱離液を排水処理することになる

【バイオガスの利用方法】

  • ガスの直接利用

    バイオガスの生成を経て、場内利用(給湯、暖房、発酵槽加湿等)都市ガス原料としての供給、CNG車燃料利用、都市ガス導管への直接注入等の方法があります。

  • 発電

    バイオガスを利用した発電による電力の利用の場合は、場内利用、グリッド(一般電気事業者)への売電、電気事業者として特定地域に売電する方法があります。

バイオガスの利用形態とそれらについての留意事項

【発酵残渣の利用及び排水処理の方法】

 メタンガス化施設の発酵残渣の利用及び排水処理の方法を示します。

  1. 液肥利用
     発酵残渣を殺菌処理するのみで液肥として利用可能です。
     製造した液肥は無償提供されている事例が多く、販売収入は見込めませんが、需要地さえ確保されれば設備費、処理費ともに安価で導入しやすいため、他の方法よりも費用対効果が高くなります。
  2. 脱水固形物の肥料利用
     発酵残渣を脱水(および乾燥)処理した固形物は堆肥原料として利用できます。製造される堆肥は、肥料として販売することができ、一定の収入が見込めます。
     採用事例が最も多い方法です。
  3. 脱水固形物の燃料利用
     発酵残渣を脱水、乾燥処理した固形物は、燃料やセメント原料(助燃剤)として利用されています。製造される乾燥固形物は、販売されていますが、売却先が限定されるため、採用事例は多くありません。
  4. 水処理汚泥の肥料・燃料利用
     発酵残渣を直接排水処理し、処理に伴い発生する汚泥を脱水、乾燥処理して肥料原料や燃料として利用する方法で、排水処理後の処理水は放流されます。
     採用事例は多くありませんが、小規模な施設や近隣で合同処理が可能な場合に採用されています。
  5. 脱水後の排水処理
     脱水後のろ液は排水処理されます。処理水は、近隣に下水道がない場合以外は下水道に放流しています。
     また、排水処理方式は硝化脱窒法に膜処理を付加した方式の採用が多く、特に小規模施設では膜処理が多く採用されています。

発酵残渣の資源化、排水処理の事例【PDF 124KB】

肥料の利活用に関する関連情報(農業集落排水バイオ肥料ハンドブック(案))(リンク)

http://www.jarus.or.jp/villagedrain/06shigenjunkanriyou/handbook.htm

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