報道発表資料

平成9年8月28日 この記事を印刷

植物版レッドリストの作成について

環境庁は、今般、植物に関するレッドリスト(日本の絶滅のおそれのある野生生物の種のリスト)を取りまとめた。レッドリストは、レッドデータブック(絶滅のおそれのある野生生物の個々の種の生育状況等をまとめたもの)の基礎となるものであり、これ自体が法的規制等の強制力を伴うものではなく、絶滅のおそれのある野生生物に関する理解を広めることを目的としたものである。 環境庁では、絶滅のおそれのある植物の現状を動植物統一のカテゴリーにより把握するため、専門家による検討会を設置し、日本植物分類学会の全面的な協力の下、植物版レッドデータブックの作成作業を進めてきたところである。
 今回取りまとめたレッドリストでは、絶滅のおそれがある種(絶滅危惧I類及びII類)の数は合計1,726種としている。その内訳は、維管束植物(種子植物、シダ植物)ではコゴメキノエラン、サギソウなど1,399種、維管束植物以外の植物(蘚苔類、藻類、地衣類、菌類)ではカクレゴケ、マリモなど327種である。また、既に絶滅した種(絶滅及び野生絶滅)としては合計68種が掲載されている。
 今後、環境庁では、このレッドリストを基に、植物版レッドデータブックを作成することとしている。
 なお、動物のレッドデータブックについては、現在見直しの作業中である。
1.植物版レッドデータブックの作成について
 (1) 目的・経緯
 野生生物を人為的に絶滅させないためには、絶滅のおそれのある種を的確に把握し、一般への理解を広める必要がある。このため、環境庁では、動物については「日本の絶滅のおそれのある野生生物」(動物版レッドデータブック)を平成3年に取りまとめた。
 植物(維管束植物)については、平成元年に(財)日本自然保護協会と(財)世界自然保護基金日本委員会により「我が国における保護上重要な植物種の現状」が発行されているが、その後、「絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律」が平成4年に制定されるなど、絶滅のおそれのある植物種の保存を図る上で、その現状を把握する必要性が高まったため、環境庁としても、最新の情報・知見を基に絶滅のおそれのある植物種をリストアップし、植物版レッドデータブックを作成することとしたものである。
 なお、動物版レッドデータブックについては、現在、見直しの作業中である。
 
(2) 調査方法と調査体制
 植物版レッドデータブックの作成に当たって、環境庁自然保護局長の委嘱により「絶滅のおそれのある野生生物の選定・評価検討会」を、その下に「レッドデータブック改訂分科会」、「植物[1]分科会(維管束植物:種子植物及びシダ植物)」、「植物[2]分科会(蘚苔類、藻類、地衣類、菌類)」を設置し、動植物統一のカテゴリー、調査の進め方、評価方法、評価結果等について検討を行った(関連する検討会等の委員は別紙1参照)。
 調査作業は、平成5年度より日本植物分類学会に情報の収集、評価等を依頼した。日本植物分類学会では、維管束植物については「絶滅危惧植物問題検討第一専門委員会」、維管束植物以外の植物については「絶滅危惧植物問題検討第二専門委員会」を設置し作業を進めた。
 維管束植物については、全国の調査協力者約 400名に調査を依頼し、調査協力者所有の既存データ等も活用しつつ、各種ごとに全国における生育個体数及び減少率をメッシュ情報として収集・整理し、そのデータを基に、絶滅確率等による数値基準を用いた方法による評価を行った。これは、全国レベルで数量解析に基づく評価を行った世界でも初めてのケースである。
 維管束植物以外の植物については、分類、生態等不明な点も多く、維管束植物ほど情報がないことから、まず候補種の選定を行い、それぞれの種について文献調査や標本調査等により分布等に関する既存知見をとりまとめるとともに、全国約50名の調査者の協力を得て、各地の生育状態に関する情報を収集し、その結果を基に評価を行った。

2.レッドデータブックのカテゴリーについて
 今回の植物版レッドデータブックの作成に当たっては、1994年(平成6年)にIUCN(国際自然保護連合)が採択した、減少率等の数値による客観的な評価基準に基づく新しいカテゴリーに従うこととしたが、我が国では数値的に評価が可能となるようなデータが得られない種も多いこと等の理由から、定性的要件と定量的要件を組み合わせたカテゴリーを策定した。新たなカテゴリーの概要は次のとおりであり、動物版レッドデータブックもこのカテゴリーにより順次見直しているところである(カテゴリーの詳細は別紙2参照)。

【新たなカテゴリー】 参考;
現行日本自然保護協会等版
カテゴリー
 ●「絶滅(EX)」
   ー我が国ではすでに絶滅したと考えられる種
 ●「野生絶滅(EW)」
   ー飼育・栽培下でのみ存続している種
●「絶滅危惧」
 ○「絶滅危惧[1]類(CR+EN)」
   ー絶滅の危機に瀕している種
    「絶滅危惧[1]A類(CR)」
    「絶滅危惧[1]B類(EN)」
 ○「絶滅危惧[2]類(VU)」
   ー絶滅の危険が増大している種

●「準絶滅危惧(NT)」
  ー現時点では絶滅危険度は小さいが、生息条件の変化
   によっては「絶滅危惧」に移行する可能性のある種
●「情報不足(DD)」
  ー評価するだけの情報が不足している種
□付属資料「地域個体群(LP)」
   ー地域的に孤立しており、地域レベルでの絶滅のおそ
    れが高い個体群     

絶滅種(Ex)
 

 
 
絶滅危惧種(E)
 
 
 
危急種(V)
 
 
 

 
 
現状不明種(U)
 

 
 


3.植物版レッドリスト
   植物版レッドリストは別紙3のとおりである。なお、レッドリストに掲げられた種数は、以下のとおり。

   植物I
維管束植物
(種子植物、シダ植物)
植物II
維管束植物以外の植物
合  計
蘚苔類 藻類 地衣類 菌類 小 計
絶滅 Ex (35)
17
0 5 3 28 36 53
野生絶滅
   Ew
12 0 2 0 1 3 15
絶滅危惧類
I種
IA類
 CR
471 (146)
881
(824)
1399
110 34 22 51 217 327 1098 1726
IB類
 EN
410
絶滅危惧
II類
 VU
(678)
518
70 6 23 11 110 628
準絶滅危惧
 NT
108 4 24 17 0 45 153
情報不足
 DD
(36)
365
54  0 17 0 71 436
1901 238 71 82 91 482 2383

 注1)( )は日本自然保護協会等発行の現行レッドデータブックにおける種数。ただし、今回カテゴリーの定義を変更しているため、あくまでも参考数値。
 注2)維管束植物の「情報不足」には現段階で評価を留保しているものを含んでおり、レッドデータブックの作成までに可能な限りの評価を行う予定。


4.今後の保護対策
 植物版レッドリストについては、広く普及を図り、絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存への理解を求めるとともに、関係省庁や地方公共団体等にも配布し、各種計画等における配慮を求める。一般の方のレッドリストの入手方法は別記のとおり。
 また、レッドリスト掲載種の中でも特に絶滅のおそれの高い種について、さらに生育状況等に関する詳細な調査を実施し、「絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律」に基づく国内希少野生動植物種の指定を検討していく。


5.レッドデータブックの作成
 今後、レッドリスト掲載種について個々の種の特徴の概要や評価の根拠等について記載した植物版レッドデータブック「日本の絶滅のおそれのある野生生物−植物編−」の作成作業を行い、来年度以降公表する予定。

(別記)植物版レッドリスト入手方法
      植物版レッドリストは、以下のいずれかの方法で入手することが可能。
      {1} 環境庁自然保護局野生生物課に直接取りに行く
      {2} インターネットの環境庁ホームページ
(http://www.eic.or.jp/eanet/)から入手
      {3} 返送用封筒(A4判の用紙の入る大きさの封筒に、切手270円分を貼り、返送先の住所、氏名を記入したもの)を同封の上、次の宛先に送付
  宛先:〒100東京都千代田区霞が関1-2-2
  環境庁自然保護局野生生物課植物版レッドリスト係

*別紙1,2,3については、添付ファイル参照。

添付資料

連絡先
環境庁自然保護局野生生物課
課長:小林 光 (6460)
 担当:植田、長田(6465)

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