報道発表資料

平成19年1月12日
保健対策
この記事を印刷

「平成17年度POPsモニタリング調査結果」について

 環境省は、平成14年度から、「残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約」(POPs条約)第16条に基づく同条約の有効性評価に資するため、環境中におけるPCB類、HCB、DDT類その他残留性有機汚染物質(POPs)のモニタリング(POPsモニタリング調査)を実施してきた。
 このたび取りまとめた平成17年度の調査結果の主な内容は次のとおり。

[1]我が国及びその周辺のPOPs濃度レベルは総じて横ばい又は漸減傾向とみなすことができる。
[2]しかしながら、幾つかの地点では、一過性のものと考えられるものの相対的に高濃度を示す事例も観察されている。
[3]血液、臍帯血及び母乳に係る試料についてPOPs濃度を試行的に測定したところ、国内外において報告されている濃度レベルと概ね同様の結果が得られた。
[4]平成17年度調査においても、国内での使用記録のないマイレックスが大気中や沖合魚から検出されたことから、東アジア地域等のレベルでの長距離移動も視野に入れた継続的な監視が引き続き行われることが求められる。

背景

 残留性有機汚染物質(Persistent Organic Pollutants、以下「POPs」という。)による地球規模の汚染を防止するために、平成13年5月22日に、残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約(以下、「POPs条約」という。)が採択され、我が国は平成14年8月30日に同条約を締結した。POPs条約は平成16年5月17日に発効し、平成18年12月1日現在で134カ国が締結している。
 POPs条約では、POPsについて、ヒト及び環境中における存在状況などを明らかにするために国内及び国際的な環境モニタリングを実施すること(第11条)及びモニタリングデータを活用した条約の対策面での有効性の評価を行うこと(第16条)が規定されている。
 そこで環境省では、POPsの環境中の存在状況の監視及び条約の有効性評価に資する基礎データを得るため、平成14年度よりPOPs汚染実態解析調査(以下、「POPsモニタリング調査」という。)を実施している。

1.平成17年度の調査概要

(1)対象物質
 POPs条約は、ポリ塩化ビフェニル(PCB)類、DDT類、ポリ塩化ジベンゾ−パラ−ジオキシン(PCDD)及びポリ塩化ジベンゾフラン(PCDF)等の12物質群を対象としている。
 本調査は、これらPOPs条約対象物質のうち、ダイオキシン類対策特別措置法に基づき常時監視が行われているダイオキシン類を除いた、アルドリン、ディルドリン、エンドリン、クロルデン類、ヘプタクロル類、ヘキサクロロベンゼン(HCB)、マイレックス、トキサフェン類、PCB類(コプラナーポリ塩化ビフェニルを含む。)及びDDT類の10物質群にヘキサクロロシクロヘキサン(HCH)類を加えた11物質群を対象としている。
(2)対象媒体
 一般環境中(排出源と予想される地点以外の都市、郊外、島嶼、山地、河川等)の[1]水質(全国主要河川、主要湖水、港湾等を中心に47地点)、[2]底質(全国主要河川、主要湖水、港湾等を中心に63地点)、[3]大気(おおむね100km四方に区分して全国をほぼカバーする37地点)及び[4]生物(ウサギアイナメ、シロサケ、アイナメ、サンマ、スズキ、ミナミクロダイ、ウグイ、ムラサキイガイ、イガイ、ムラサキインコガイ、ムクドリ又はウミネコのいずれかを対象として合計25地点(そのほか別途入手したカワウ、ハシブトガラス、スナメリ、ニホンザル、タヌキ、クマタカ(卵)及びオオタカに係る試料も対象とした。))を対象として実施した。また、我が国の一般環境における人体中のPOPsの濃度のモニタリング調査を将来実施するに当たり必要な知見を収集するために、平成13年から平成17年までに得られた血液、臍帯血及び母乳に係る試料それぞれ50、70及び95検体についてPOPs濃度を試行的に測定した。
(3)分析手法
 各媒体の試料から、対象物質を抽出、精製後、GC/高分解能MS(高分解能ガスクロマトグラフ質量分析計)により分析を実施した(トキサフェン類については、負イオン化法によるGC/MSで別途分析)。なお、同族体、異性体等が存在する物質群については可能な限り同族体、異性体等ごとに分析を実施した。
(4)その他
 調査の実施に当たり、専門家から構成されるPOPsモニタリング検討実務者会議(事務局:(独)国立環境研究所)において調査手法、結果等の評価等がなされた。

2.平成17年度の調査結果及び評価の概要

媒体別の各物質の検出数、検出範囲の結果の評価概要は以下のとおり。

(1)
GC/高分解能 MSを主体とする分析手法の適用により、平成14年度、15年度及び16年度と同様、8割を超える地点及び試料においてPOPsが定量検出された。POPs条約に係る取組の一環として、我が国における現在の環境濃度レベルを把握することができ、POPs条約の有効性評価に資する基礎データが引き続き得られたものと考えられる。
(2)水質及び底質
 平成14〜17年度のデータの推移をみると、水質及び底質中のPOPs濃度レベルは総じて横ばい又は漸減傾向にあると考えられる。水質及び底質中の濃度の地域分布を見ると、例年どおり、港湾、大都市圏沿岸の準閉鎖系海域など、人間活動の影響を受けやすい地域で相対的に高い傾向を示すものが比較的多く見られた。
 同族体、異性体等類似の物質(以下「同族体等」という。)から構成される物質群については例年に引き続き以下のような傾向がみられた。
ア.
アルドリン、エンドリン及びディルドリンについては、例年どおり、ディルドリンの構成割合が大きい地点がほとんどであるものの、一部においてエンドリンの構成割合が大きい地点がみられた。
イ.
ヘプタクロル類については、cis-ヘプタクロルエポキシドの構成割合が比較的大きかった。
ウ.
クロルデン類については、cis-クロルデン、次いでtrans-クロルデン及びtrans-ノナクロルの順に構成割合が比較的大きかった。
エ.
トキサフェン類は検出されなかった。
オ.
PCB類については、地点により同族体等の構成割合に違いがみられた。
カ.
DDT類については、p,p’-体(特にp,p’-DDE)の構成割合が比較的大きいが、一部においてo,p’-体の構成割合が比較的大きかった。
キ.
HCH類については、β-HCHの構成割合が比較的大きかった。
(3)大気
 平成14〜17年度のデータの推移をみると、大気中のPOPs濃度レベルは総じて横ばい又は漸減傾向にあると考えられる。大気中のPOPs濃度については、前年度と同様に温暖期(9〜10月)及び寒冷期(11〜1月)の2回測定が行われ、いずれの化合物についても、例年どおり、気温の高い温暖期の方が寒冷期よりも全国的に濃度が高くなる傾向が認められた。
 同族体等から構成される物質群については例年に引き続き以下のような傾向がみられたが、DDT類については、p,p’-体の構成割合が比較的大きい傾向は引き続きみられたが、水質及び底質に比してo,p’-DDEの構成割合が比較的大きい例年の傾向は平成17年度においては特にみられなかった。
ア.
アルドリン、エンドリン及びディルドリンについては、ディルドリンの構成割合が比較的大きかった。
イ.
ヘプタクロル類については、水質及び底質における傾向と異なりヘプタクロルの構成割合が比較的大きかった。
ウ.
クロルデン類については、ほぼcis-クロルデン、trans-クロルデン及びtrans-ノナクロルにより構成される傾向がみられた。
エ.
PCB類については、地点により同族体等の構成割合に違いがみられた。
オ.
HCH類については、水質及び底質における傾向と異なりα-HCHの構成割合が比較的大きかった。
 国内で農薬登録実績のないマイレックスについては、前年度同様ごく微量検出された。
(4)生物
 平成14〜17年度のデータの推移をみると、生物中のPOPs濃度レベルは総じて横ばい又は漸減傾向にあると考えられる。昨年度に引き続き、PCB類、DDT類等が人口密集地帯近傍の沿岸域の魚で高めの傾向を示した。
 また、野生生物ではどの化合物についてもスナメリが最も高く、カワウがそれに次ぐ濃度を示した。
(5)人体(試行)
 東北地域の医療機関で実施された調査研究において、平成13〜15年までに得られた母体血、臍帯血及び母乳に係る試料をそれぞれ50、70及び80検体(23〜42歳)、並びに関東甲信越地域の医療機関で実施された調査研究において平成16〜17年までに得られた母乳に係る試料を15検体(24〜44歳)、個人情報を特定できない方法により提供を受け、POPs濃度を試行的に測定したところ、国内外において報告されている濃度レベルと概ね同様の結果が得られた。
(6)
以上の結果を、これまでに得られたデータと比較すると、我が国及びその周辺のPOPs濃度レベルは総じて横ばい又は漸減傾向とみなすことができる。しかしながら、幾つかの地点においては、一過性のものと考えられるものの相対的に高濃度を示す事例も観察されている。
 平成17年度調査においても、国内での使用記録のないマイレックスが大気中及び生物中で検出されたことなどから、東アジア地域等のレベルでの長距離移動も視野に入れた継続的な監視が引き続き行われることが求められる。

3.保存試料を用いた分析結果について

 過去10年余にわたって保存試料として保管されてきた試料を、平成14年度から導入した高感度分析手法を用いて再度分析した。その結果、大阪湾のスズキで確認されている一部化合物の組成比の特徴が、10年以上前からすでに存在していたことが昨年度に引き続き確認され、POPs条約の有効性評価に資する基礎的データがさらに拡充された。

4.その他

 本調査結果は、化学物質環境実態調査結果と併せて平成17年度のモニタリング調査結果として取りまとめ、中央環境審議会化学物質評価専門委員会(平成18年度末に開催予定)において報告等がなされる予定である。

以上

添付資料

連絡先
環境省総合環境政策局環境保健部環境安全課
電話 03-3581-3351(代)
 課長 青木 龍哉(内6350)
 専門官 角井(つのい) 一郎(内6361)
環境リスク評価室
 室長 北窓 隆子
 補佐 長谷川 学

Adobe Readerのダウンロード

PDF形式のファイルをご覧いただくためには、Adobe Readerが必要です。Adobe Reader(無償)をダウンロードしてご利用ください。

ページ先頭へ