報道発表資料

平成18年10月18日
保健対策
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化学物質の環境リスク初期評価(第5次とりまとめ)の結果について

環境省は、化学物質による環境汚染を通じて人の健康や生態系へ好ましくない影響を与えることを未然に防止するため環境リスク初期評価(第5次とりまとめ)を実施し、その結果について、中央環境審議会環境保健部会化学物質評価専門委員会の審議を経てとりまとめた。その結果、健康リスク初期評価では2物質が、生態リスク初期評価では3物質が、それぞれ「詳細な評価を行う候補」とされた。
 「詳細な評価を行う候補」とされた物質については、関係部局との連携と分担の下で、詳細な評価の実施を含めた対応を図ることとしている。

1.趣旨・目的

 世界で約10万種、我が国で約5万種流通していると言われる化学物質の中には、人の健康及び生態系に対する有害性を持つものが多数存在しており、これらは環境汚染を通じて人の健康や生態系に好ましくない影響を与えるおそれがある。
 こうした影響を未然に防止するためには、「潜在的に人の健康や生態系に有害な影響を及ぼす可能性のある化学物質が、大気、水質、土壌等の環境媒体を経由して環境の保全上の支障を生じさせるおそれ」(環境リスク)について定量的な評価を行い、その結果に基づき適切な環境リスクの低減対策を進めていく必要がある。
 このため、環境省では、平成9年度より化学物質の環境リスク初期評価に着手し、その結果を4次にわたりとりまとめ、「化学物質の環境リスク評価」(第1巻〜第4巻)として公表してきたところである。この中で「詳細な評価を行う候補」とされた物質については、関係部局との連携のもとに必要に応じ行政的対応を図ってきたところである。

2.環境リスク初期評価の内容

(1) 環境リスク初期評価の概要

 化学物質の環境リスク評価とは、評価対象とする化学物質について、
[1]
人の健康及び生態系に対する有害性を特定し、用量(濃度)−反応(影響)関係を整理する「有害性評価」、
[2]
人及び生態系に対する化学物質の環境経由のばく露量を見積もる「ばく露評価」を行い、
[3]
両者の結果を考慮することによってリスクの程度を判定するものである。
 ここでは、環境リスク管理のための施策を念頭に置きつつ、多数の化学物質の中から相対的に環境リスクが高そうな物質をスクリーニングするための初期評価として、健康リスク及び生態リスクにわたる「環境リスク初期評価」を実施している。初期評価では環境にとって高いリスクがある物質を誤って見過ごしてしまう危険性を可能な限り小さくするため、有害性評価ではより感受性(sensitivity)の高い知見を利用したり、ばく露評価では検出最大濃度を利用するなどにより、安全サイドにたったリスク評価を行っている。

(2) 評価対象物質

 環境リスク初期評価の目的にかんがみ、未だリスク評価及びリスク管理が行われていない物質の中から、優先度が高いと考えられる新たな化学物質を評価対象物質として、PRTR対象物質、化学物質審査規制法の指定化学物質(現在は第二種監視化学物質)等の中から選定している。また、過去に環境リスク初期評価又は生態リスク初期評価を実施した物質のうち、その後に得られた情報、知見等を踏まえて再評価が必要となったものを、生態リスク初期評価の対象として選定している。

(3) 評価実施物質数

 環境リスク初期評価の効果的かつ体系的な実施の観点から、以下の評価を実施した。
  • 健康リスク及び生態リスクに係る環境リスク初期評価(23物質)
  • 追加的に実施した生態リスク初期評価(6物質)

(4) 評価の方法

 今回の環境リスク初期評価の実施に当たり、「化学物質の環境リスク初期評価ガイドライン」のうち以下の点を充実させている。
  • 評価対象物質の物理化学的性状等の体系的なデータをモデル予測やリスク評価に活用
  • ばく露評価における環境媒体間の分配割合の予測方法を改善
  • 生態リスク初期評価における知見の信頼性や利用可能性の確認

(5) 留意事項

 本初期評価はスクリーニングを目的として、限られた情報に基づきリスクの判定を行い、詳細な評価を行う候補物質を抽出するものであり、今回の結果を受け直ちに環境リスクの低減対策等が必要であると判断すべきものではない。

3.環境リスク初期評価等の結果

(1) 環境リスク初期評価の結果

環境リスク初期評価を実施した23物質の評価結果は以下のとおりである。

健康リスク初期評価生態リスク初期評価
A. 相対的にリスクが高い可能性があり「詳細な評価を行う候補」 【2物質】
クロトンアルデヒド
ベンゾ[a]ピレン
【3物質】
p-クロロアニリン
ジフェニルアミン
ベンゾ[a]ピレン
B. リスクはAより低いと考えられるが「関連情報の収集が必要」 【0物質】 【2物質】
2-アミノエタノール
2,6-ジニトロトルエン
C. 相対的にリスクは低いと考えられ「更なる作業を必要としない」 【13物質】
2-アミノエタノール、2,4-キシレノール、2,6-キシレノール、2,3-ジニトロトルエン、2,4-ジニトロトルエン、2,5-ジニトロトルエン、3,4-ジニトロトルエン、3,5-ジニトロトルエン、ジフェニルアミン、m-トルイジン、p-トルイジン、ヒドロキノン、ポリ塩化ターフェニル
【9物質】
2,4-キシレノール、2,6-キシレノール、o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール、2,4-ジニトロトルエン、1,1,2-トリクロロエタン、m-トルイジン、p-トルイジン
D. 得られた情報では「リスクの判定ができない」 【8物質】
アントラセン、グルタルアルデヒド、o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール、p-クロロアニリン、2,6-ジニトロトルエン、1,1,2-トリクロロエタン
【9物質】
アントラセン、グルタルアルデヒド、クロトンアルデヒド、2,3-ジニトロトルエン、2,5-ジニトロトルエン、3,4-ジニトロトルエン、3,5-ジニトロトルエン、ヒドロキノン、ポリ塩化ターフェニル

(2) 追加的に実施した生態リスク初期評価の結果

 環境リスク初期評価を実施した23物質のほかに、6物質を対象として追加的に生態リスク初期評価を行った。ここで実施した生態リスク初期評価の方法は、上記環境リスク初期評価の中で実施したものと同じである。
 判定を行うことのできた3物質の評価結果は以下のとおりである。

A. 相対的にリスクが高い可能性があり「詳細な評価を行う候補」 【0物質】
B. リスクはAより低いと考えられるが「関連情報の収集が必要」 【1物質】
シス-1,2-ジクロロエチレン
C. 相対的にリスクは低いと考えられ 「更なる作業を必要としない」 【2物質】
1-オクタノール
オクタブロモジフェニルエーテル

4.今後の対応

(1) 評価結果の情報提供

 評価結果は、「化学物質の環境リスク評価 第5巻」としてとりまとめるとともに、物質ごとに評価文書の概要を要約したプロファイルを作成し、インターネットを活用して広く公表する。

(2) 詳細評価等の実施

 環境リスクの判定の結果、「詳細な評価を行う候補」とされた物質については、関係部局との連携と分担の下で詳細な評価の実施を含めた対応を図る。また、化管法の対象とされていない物質については、現在検討が進められているPRTR制度の見直しの一環で、製造量・輸入量、排出量・移動量等を適切に把握できるよう、対象物質として追加することを検討する。

[1]健康リスク初期評価により詳細な評価を行う候補とされた2物質
 クロトンアルデヒドについては、室内空気の吸入ばく露によるリスクが高い可能性があるため、本評価結果を関係機関に連絡し、その対応を見守ることとする。なお、一般環境大気からの吸入ばく露については、関係部局との連携の下で引き続き情報収集を進めることとする。
 ベンゾ[a]ピレンについては、一般環境大気からの吸入ばく露及び地下水・食物からの経口ばく露について詳細な評価を行う候補とされている。一般環境大気からの吸入ばく露については、当該物質は大気汚染防止法に基づく有害大気汚染物質対策において優先取組物質と位置づけられていることから、今後とも一般環境大気中におけるモニタリングを継続するとともに、健康リスク初期評価により得られた知見を関係部局による有害大気汚染物質に係る取組の検討等に活用していくこととする。地下水・食物からの経口ばく露については、食物からのばく露によるリスクが考えられ、生物濃縮性が一定程度認められることからも、食物からのばく露の可能性に関する情報を中心に引き続き情報収集を行うこととする。
[2]生態リスク初期評価により詳細な評価を行う候補とされた3物質
 生態毒性に関する知見や、生態リスク初期評価では十分には明らかになっていない発生源に関する知見等を充実させつつ、生態リスクの詳細な評価を優先的に進めることを検討することとする。具体的には、生態リスク初期評価により得られた知見を、関係部局による水生生物の保全のための水質目標の設定の必要性の検討に反映させていくこととする。
 また、p-クロロアニリン及びジフェニルアミンについては、化学物質審査規制法の第三種監視化学物質(高濃縮性は有さないものの、難分解性を有し、かつ生態毒性を有する物質)として指定されている。同法に基づき毎年の製造・輸入量を監視するとともに、必要に応じ事業者に対する有害性調査指示等の対応を図っていくこととする。

(3) 情報の収集

 環境リスクの判定の結果、情報の収集が必要とされた物質や、リスクの判定ができなかった物質については、関連情報を収集の上、その情報に応じて今後必要な初期評価を行う。

(4) 環境リスク評価の計画的な実施と幅広い活用

[1]
化学物質の環境リスク管理に関連する施策及び調査との緊密な連携を図りつつ、環境リスク初期評価を計画的に実施していく。
[2]
環境リスク初期評価の過程で収集整理された幅広い科学的知見については、PRTR対象物質の中から化学物質管理に優先的に取り組む必要のある物質の選定、既存化学物質点検、化学品の分類及び表示に関する世界調和システム(GHS)の我が国への導入等を含む様々な場面で活用を図る。

(5) 今後の課題

[1]
環境リスク初期評価に必要となる物性情報の集積を進めるとともに、PRTRデータの活用等によるばく露評価の高度化を図る。
[2]
OECD等における試験法及び評価手法に関する検討状況を適切に把握し、新たな知見等を環境リスク初期評価に速やかに反映させる。既に環境リスク初期評価を行った物質であっても、その後内外で評価手法の見直し等が行われたものについては、速やかに再評価を実施する。生態リスク初期評価については、国内外におけるリスク評価の動向を踏まえて評価手法の更なる改善を図る。

添付資料

連絡先
環境省総合環境政策局環境保健部環境安全課環境リスク評価室
直通 03−5521−8263 
 室長 北窓 隆子(内線6340)
 室長補佐 中村 邦彦(内線6344)
 室長補佐 塚田源一郎(内線6341)
 室長補佐 長谷川 学(内線6343)

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