報道発表資料

平成17年1月19日
保健対策
この記事を印刷

「平成15年度POPsモニタリング調査結果(暫定)」について

環境省は、「残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約」(POPs条約)に定められたPCB類、HCB、DDT類等の化学物質に関する環境中の存在状況の監視及び国内実施計画の策定のための基礎資料を作成することを目的として、平成14年度からPOPsモニタリング調査を開始したところである。
 今般、平成15年度調査結果を取りまとめたので公表する。
 主な内容としては、「我が国周辺のPOPs濃度レベルは、全体的には横ばい或いは低減傾向とみなすことができ、特段の増加傾向は認められない。しかしながら、いくつかの地点で相対的に高濃度を示す事例が観察されている。また、国内での使用記録のないトキサフェン類、マイレックスが大気中に微量検出されたことなどから、引き続き、東アジア地域、地球レベルの長距離移動も視野に入れた継続的な監視、解析が求められる。」などである。
  1. 背景

     残留性有機汚染物質(Persistent Organic Pollutants、以下「POPs」という。)による地球規模の汚染を防止するために、平成13年5月22日に、残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約(以下、「POPs条約」という。)が採択され、我が国は平成14年8月30日に同条約に加入し、平成16年5月17日に同条約が発効された。平成17年1月18日現在で89ヶ国が締結している。
     この条約では、POPsについて、ヒト及び環境中における存在状況などを明らかにするために国内及び国際的な環境モニタリングを実施すること(第11条)及びモニタリングデータを活用した条約の対策面での有効性の評価を行うこと(第16条)が規定されている。
    そこで環境省では、POPsの環境中の存在状況の監視及び国内実施計画を策定するための基礎資料を作成することを目的に、平成14年度よりPOPs汚染実態解析調査(以下、「POPsモニタリング調査」という。)を開始した。

     
  2. 調査概要

    (1) 対象物質
       POPs条約は、PCB、DDT、ダイオキシン類(ダイオキシン及びジベンゾフラン)等の12物質を対象にしているが、本調査では、別途、ダイオキシン類対策特別措置法に基づく常時監視を実施しているダイオキシン類を除く、PCB類、HCB、DDT類、アルドリン、ディルドリン、エンドリン、クロルデン類、ヘプタクロル類、マイレックス及びトキサフェン類の10物質を対象とした。
    (2) 対象媒体
       一般環境中(排出源と予想される地点以外の都市、郊外、島嶼、山地、河川等)の水質(全国主要河川、主要湖水、港湾等を中心に38地点)、底質(全国主要河川、主要湖水、港湾等を中心に62地点)、大気(100km四方に区分して全国をカバーする35地点)、生物(ウサギアイナメ、アイナメ、サンマ、スズキ、ミナミクロダイ、ウグイ、ムラサキイガイ、イガイ、ムクドリ、ウミネコのいずれかを対象として合計21地点)において実施した。(図1〜4)
    (3) 分析手法
       各媒体の試料から、対象物質を抽出、精製後、GC/高分解能MSにより分析を実施した。なお、異性体がある物質は可能な限り異性体別に分析を実施した。この分析手法により、従来と比較して1000倍程度高感度の分析が可能となった。なお、トキサフェン類については、負イオン化法によるGC/MSで別途分析を行った。
    (4) その他
       調査の実施にあたり、専門家によるPOPsモニタリング検討作業部会(座長:田辺信介 愛媛大学教授)を設置して、調査手法及び結果等の検討を行った。

     
  3. 調査結果及び評価の概要

     媒体別の各物質の検出数、検出範囲(表1)の結果の評価の概要は以下のとおりである。
    (1) GC/高分解能 MSを主体とする新しい分析手法の適用により、全地点の8割を超える地点及び試料においてPOPsが定量検出された。POPs条約に対する取組の一環として、日本及びその周辺における現在の環境濃度レベルを把握することができ、条約に求められる有効性評価のための基準となる基礎データが、昨年に引き続き得られたと考えられる。
    (2) 生物試料中濃度の推移を見ると、化学物質環境実態調査*において、すでに測定値の得られていた試料については新手法への切替えに伴う特段のデータの断絶の傾向は認められなかった。全体的に横ばい或いはさらなる低下傾向とみなすことができ、特に上昇傾向と判断される化合物は見当たらなかった。
    *化学物質環境実態調査(以下、「黒本調査」という。)において、HCB、DDT類、クロルデン類等を対象として、昭和53年度より生物モニタリング、昭和61年度より底質モニタリングをGC/ECDあるいはGC/MSを用いた分析法により実施してきた。
    (3) 水質、底質濃度の地域分布を見ると、大都市圏沿岸の準閉鎖系海域で相対的に高めの傾向を示すものが比較的多く見られた。また、特定の地域で相対的に高い濃度を示す化合物も複数あった。地域ごとの濃度の傾向や異性体の割合は異なっている場合があり、今後は、それらの考察も必要であると考えられる。
    (4) 大気中POPs濃度について、平成15年度は晩夏と初冬の2回測定を行った。その結果、気温の高い晩夏の方が全国的に濃度が高くなる傾向が認められた。地域ごとの濃度分布は平成15年度の晩夏と初冬で、また平成14年度のデータとも類似する点が多く見受けられた。
    (5) 平成15年度から新たに分析の始まったマイレックス及びトキサフェン類の2物質については、いずれも大気中にごく微量検出された。また、水質、底質については、その一部試料に微量のマイレックスがそれぞれ、検出下限値 0.09pg/L,0.4pg/g-dryにおいて検出された。トキサフェン類は検出下限値が水質、底質それぞれparlar26では20pg/L,30pg/g-dry、parlar50については30pg/L,50pg/g-dry、parlar62については90pg/L,2000pg/g-dryにおいて、すべての地点で検出されなかった。生物試料については比較的低濃度で2つの物質とも検出された。このうちトキサフェン類は沿岸魚より沖合魚の方が高く、また魚食性鳥類で高めの濃度で確認されるなどの特徴が認められた。
    (6) 以上の結果から、我が国周辺のPOPs濃度レベルは、全体的には横ばい或いは低減傾向とみなすことができ、特段の増加傾向は認められない。しかしながら、いくつかの地点で相対的に高濃度を示す事例が観察されている。また、国内での使用記録のないトキサフェン類、マイレックスが大気中に微量検出されたことなどから、引き続き、東アジア地域、地球レベルの長距離移動も視野に入れた継続的な監視、解析が求められる。

     
  4. その他

     本調査結果は、黒本調査結果と併せて平成15年度のモニタリング調査結果として取りまとめ、中央環境審議会化学物質評価専門委員会(3月上旬開催予定)において審議予定。

添付資料

連絡先
環境省総合環境政策局環境保健部環境安全課課長   :上家 和子
専門官  :吉田 佳督(6361)
 調査係長:川村 太郎(6355)

ページ先頭へ