報道発表資料

平成10年8月7日 この記事を印刷

野生生物のダイオキシン類汚染調査マニュアルについて

環境庁では、「野生生物のダイオキシン類汚染状況調査研究班」を設置し、野生生物(鳥類、陸上哺乳類及び海棲哺乳類)のダイオキシン類汚染状況を調査するための標準的な手法の検討を進めてきたところであるが、今般、「野生生物のダイオキシン類汚染状況調査マニュアル」として取りまとめた。
環境庁としては、本マニュアルに基づき平成10年度から、野生生物汚染実態調査に着手することとしている。また、今後のダイオキシン対策を進める上で、各般において幅広く有効に活用されることを期待している。

1 経緯

ダイオキシン類による野生生物の汚染状況調査は、ダイオキシン汚染の地域的広がりの程度、食物連鎖を通じた生物濃縮の状況の把握や、体内の蓄積量と影響発現との関係を明らかにする上で極めて重要である。また、人体の汚染と影響との関係を推定する上でも重要な手がかりを与えるものであるとされている。

こうした観点から、環境庁が昨年8月に策定したダイオキシン対策に関する5カ年計画 においても、野生生物の汚染状況調査を重要な項目として位置づけてきたところである。

一方、野生生物の汚染状況を把握するに当たっては、採取する生物種の選定、捕獲後の解剖所見で注意すべき項目、採取試料の取扱い及び保存法等を標準化し、ダイオキシン類の蓄積及びその影響発現等を評価するのに際し留意すべき事項を整理しておく必要があることから、環境庁では、「野生生物のダイオキシン類汚染状況調査研究班(座長:大井玄 国立環境研究所長)」を設置し、調査方法に係るマニュアル作成作業を進めてきたところであるが、今般、それが取りまとめられたので公表する。

2 マニュアルの概要

(1)調査対象の動物種について
 ダイオキシン類は、生態系の高位に位置する野生生物に蓄積しやすいことが指摘されて いることから、鳥類、陸上哺乳類及び海棲哺乳類に対象を絞り、かつ全生活史にわたる生活領域が明瞭なこと、同年・同時期に同地点で年齢や性別のそろった標本が安定して入手 できること、などの諸条件を考慮し、次の動物種を選定した。また、その動物種において観察すべき異常の例も併せて示した。

(表)対象種と病理解剖上の着目点
動物種 種 名 ダイオキシン類の暴露により発現の可能性が報告
されている異常の例
鳥類 ウミネコ、ドバト、
カラス類、トビ
野外の調査で、甲状腺腫、奇形(嘴、脚等)、
卵殻の異常、繁殖率の低下等が報告されている。
陸上
哺乳類
アカネズミ、タヌキ、
ニホンザル、
ニホンジカ、クマ類
腫瘍(肝がん等)、精子減少、奇形(水腎症、口蓋
裂等)がラットを用いた動物実験で確認されている
子宮内膜症がアカゲザルを用いた実験動物で観察
されている。
海棲
哺乳類
イルカ、アザラシ 形、腫瘍、易感染性

(注)・実験動物で観察されている異常については、野生生物で観察される可能性もあるとの観点からまとめたものである。野外の調査で観察されている異常については、ダイオキシン類暴露との因果関係は不明。
   ・代表的な動物種の詳細は別紙参照。

(2)試料の採取について 
 野生生物の調査体制、試料採取、試料の取扱い等に関する留意事項は次のとおりである。以下の事項を考慮し、将来的には総合モニタリングシステムに発展するよう検討する必要がある。

  1. 調査体制について
    • 個体群への影響を最小限とするため、限られた数の標本を効率的に利用することで最大限の効果を上げることを目指すこと。
    • 鳥類や陸上哺乳類では、駆除された個体を活用、海棲哺乳類では、海岸等に打ち上げられたストランディング個体等を極力活用する。
      (ストランディング:海に棲息する動物が海岸線をこえて陸に揚がってしまうこと)
    • 行政部局においては、鳥獣保護・環境・衛生・水産部局などの関係機関で連絡調整を密にし、有機的に連携しつつ調査計画を策定する。
  2. 採取に際して考慮すべき点
    • 哺乳類では、ダイオキシン類は母乳を介して母親から子供に移行することから、雄と雌の蓄積量を比較すると、一般に雄の方が高いことが知られている。従って、採取個体の性別を把握する必要がある。
    • 繁殖周期のある生物などでは、体脂肪量が季節的に変化する場合があるので、採取時期に注意するとともに、体脂肪蓄積量を評価する必要がある。
    • ダイオキシン類は生物の体内に長く残留することから、蓄積量は加齢に伴って増大する。
      従って、年齢査定を正確に行う必要がある。
  3. ダイオキシン類分析試料について
    • ダイオキシン類は脂溶性が高く、野生生物の体内では主としては脂肪組織に蓄積するため、試料には脂肪組織(皮下脂肪、肝臓等)を選択することが望ましい。
    • ダイオキシン類の分析には、50〜100グラム程度の試料が必要である。
    • 小型の動物では十分な量の試料の確保が難しいので、複数の個体を用いて分析する。
  4. 試料の前処理・輸送・保存について
    イ.ダイオキシン分析用試料
    • ダイオキシン分析用の試料は2次汚染を避けるためにポリエチレン袋に入れ、冷凍保存で分析機関に送付する。
    • ホルマリンを使用するとダイオキシン類が溶出するので、使用しないこと。
    • 調整後の試料は分析時までマイナス20Cで保存する。

    ロ.病理標本作成用試料

    • 個体は外部計測等を行った後解剖し、必要な臓器をホルマリン液につけて保存する。
    • 病理組織標本作成用の試料は冷凍せずに、冷蔵状態で検査機関に送付する。

(3)その他
 本マニュアルでは、対象生物の分布・生態や採取方法、分析方法や精度管理について詳説している他、参考資料としてダイオキシンの動物に対する影響例、関連法令や関係機関の連絡先等を添付し、利用者の便を図っている。

3 今後の予定

環境庁では、本マニュアルに基づき平成10年度から、ダイオキシン類の野生生物汚染実態調査等に着手することとしている。なお、本マニュアルは、ダイオキシンのほか、生物蓄積性の高い有害な化学物質による汚染状況調査にも共通して適応しうる部分を含んでおり、例えば、環境庁が実施する、内分泌攪乱作用が疑われる化学物質に関連した野生生
物調査でも活用していくことととする。
 環境庁としては、本マニュアルが各般において幅広く有効に活用されることを期待している。

参 考

野生生物のダイオキシン類汚染調査に関する研究班班員名簿

氏名 所属
井口 泰泉 横浜市立大学理学部教授
伊藤 裕康 国立環境研究所化学環境部主任研究員
大井  玄 国立環境研究所所長(座長)
大島 康行 (財)自然環境研究センター理事長
杉森 文夫 (財)山階鳥類研究所広報室長
田辺 信介 愛媛大学農学部教授
羽山 伸一 日本獣医畜産大学野生動物学講師
藤瀬 良弘 (財)日本鯨類研究所研究部長
皆川 康雄 神奈川野生動物救護研究会代表
森  千里 京都大学大学院医学研究科助教授
安野 正之 滋賀県立大学教授
山田  格 国立科学博物館動物第一研究室長

野生生物のダイオキシン類汚染状況調査研究班会議の開催状況

第1回 平成 9年12月25日 研究班発足
第2回 平成10年 1月14日 マニュアルの骨子についての検討
第3回 平成10年 4月13日 マニュアルの内容についての検討
第4回 平成10年 5月26日 マニュアルの取りまとめについての検討

添付資料

連絡先
環境庁企画調整局環境保健部環境安全課
課 長 :吉田 徳久(内6350)
 専門官 :椎葉 茂樹(内6352)
 主 査 :小林 秀幸(内6352)

Adobe Readerのダウンロード

PDF形式のファイルをご覧いただくためには、Adobe Readerが必要です。Adobe Reader(無償)をダウンロードしてご利用ください。

ページ先頭へ