報道発表資料

平成14年3月5日
大気環境
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「ディーゼル排気微粒子リスク評価検討会平成13年度報告」について

環境省では、平成12年3月に「ディーゼル排気微粒子リスク評価検討会」(座長:横山 榮二国立公衆衛生院顧問)を設置し、ディーゼル排気粒子(DEP)の健康リスク評価について検討してきたが、この度、平成13年度報告が取りまとめられた。
 環境省としては、本報告書を踏まえ、DEPの排出抑制策をさらに推進することとしている。
  1. 背景及び経緯
     
     近年、発がん性等の健康影響が懸念されているディーゼル排気粒子(DEP)の健康リスク評価を行うため、環境庁では平成12年3月に大気保全局長の私的諮問機関として「ディーゼル排気微粒子リスク評価検討会」を設置し、内外の疫学や動物実験等に関する文献調査を実施してきた。
     同検討会は、平成12年9月に中間とりまとめを行い「DEPが人に対して発がん性を有していることを強く示唆している」との定性的な評価を行った。また、残された課題として、わが国における大気中のDEP濃度に関する調査データ等の充実を図ること、リスクの定量的な評価を実施することなどが提言された。
      その後、同検討会では引き続き疫学及び動物実験結果等に基づくリスクの定量的な評価のための作業が進められるとともに、環境省が平成13年度から開始した全国の代表的な地点での大気中のDEP濃度を把握するための調査データの解析が行われ、この度、本報告書がとりまとめられた。
     
  2. 本検討会が採用した健康リスクの評価手法
     
     わが国では、平成8年の中央環境審議会の答申を受けて、リスクの概念を取り入れた手法(リスクアセスメント)を用いて、有害大気汚染物質に対する健康影響評価が行われている。これは、米国環境保護庁(U.S.EPA)やWHOを始め多くの諸外国で採用されている方法である。
     リスクアセスメントは、[1]対象物質に有害性があるか否かを検討する「有害性の同定」、[2]対象物質がどの程度の量でどの程度の健康影響があるかを検討する「用量−反応評価」、[3]対象物質が実際の環境中にどの程度存在しているかを検討する「曝露評価」、[4]「リスクの判定」の4つのステップを行うことが一般的である。
     
     ここで、有害物質による「リスク」とは、それに曝露することによって疾病に罹患又は死亡する確率を将来にわたって予測したものである。公衆に関するリスクを疫学データや動物実験データから推定する場合には、いくつもの仮定が置かれていることに留意する必要がある。例えば高濃度曝露を受けた職業集団に関する結果を低濃度の一般大気環境へ外挿する場合の方法や動物実験結果を人へ外挿する場合の種差、個体差などに関する不確定性がある。
     
  3. 報告書の概要
     
    (1) 有害性の同定
    [1] 発がん影響と遺伝子傷害性
     疫学調査では、ディーゼル排気(DE)の曝露に関連する種々の職業集団において、肺がんとの関連性が多くの研究で報告されており、そのリスクの大きさについても類似した数値を示している。また、肺がん以外では膀胱がんとの関連を示すいくつかの報告もある。このため、疫学調査からは、DEが人に発がん性を有していることを強く示唆していると考えられる。
     動物実験でもDEの曝露によってラットに肺腫瘍を引き起こし、その主要な原因はDEPであることが証明されている。この結果は、ラット以外の動物種では認められていないなどの問題はあるが、人の疫学調査の結果と矛盾するものではない。
     なお、DEPには動物実験等において遺伝子傷害性があると考えられ、いき値のない発がん性物質と判断される。
     
    [2] 非発がん影響
     疫学調査では、DEの慢性曝露に関連する職業集団において、咳や痰などの呼吸器症状が高率であることが多くの研究で報告されているが、呼吸機能の低下や呼吸器疾患による死亡率の比較研究では一貫した傾向は見られなかった。
     動物実験ではアレルギー性関連病変の発現、炎症の初期反応に当たる肺胞マクロファージの変化が認められており、人の疫学調査で観察されている知見がDEやDEPと関連していることを示唆している。
     
    (2) 用量−反応評価
    [1] 発がん影響
     疫学データからDEPの肺がんリスクの定量的評価を行うには、DEPの曝露量の推定の不確実性(※1)があまりにも大きく、定量的な評価は困難と判断される。
     しかし、このような制約を承知した上で、いくつかの観点からDEPの肺がんリスクの大まかな見積もりを行うことは可能と考え、ユニットリスク(※2)の大きさの大まかな目安として、10−5〜10−3/μg/m3オーダーの範囲(※3)としている。
     動物実験のデータからDEPの肺がんリスクの定量的評価を行うには、ラットのみにしか肺腫瘍の発生が確認されず、その曝露量が実際の人の曝露量よりはるかに多い量で肺腫瘍の発生が起こっており、粒子の過剰負荷(※4)によって引き起こされているのではないかという疑問が残ることなどから、動物実験データからDEPの発がんリスクを人に外挿することは困難と判断される。
     
    [2] 非発がん影響
     疫学データからDEPの非発がんリスクの定量的評価を行うには、いずれの研究報告も曝露評価が不十分であり、定量的評価は困難と判断される。
     今後、DEないしはDEPの健康リスク評価に資する疫学データを得るため、適切なデザイン、特に適切な曝露評価のもとで、DEないしはDEP以外の環境因子をも包含した疫学研究を実施すべきことを提案。
     動物実験のデータからはDEが喘息や鼻アレルギーなどのアレルギー関連疾患を比較的低い濃度で増悪する可能性が示唆されたが、DEPの非発がんリスクの定量的評価を行うには、不確実性が大きい(※5)ため、現時点では動物実験データからDEPの非発がんリスクを人に外挿することは困難と判断される。
     
    (3) 曝露評価
     2001年春季から環境省により環境大気中のDEP濃度の測定が開始された。また、同年春季に大都市域の沿道を対象としたDEP濃度の測定が行われた。
     米国のDEP濃度の推測例(市街地や郊外地域で1.2〜3.6μg/m3)と比較すると、日本の大都市域の一般環境における濃度(概ね1〜3μg/m3程度)は、米国と比較してほぼ同程度の地点が多いが、一部の地域ではさらに高濃度の地点もみられた。
     なお、今回の調査結果と比較すると、これまでのわが国の推定例では、元素状炭素の過大評価(※6)のために、特に非沿道地点のDEP濃度の推定がかなり過大評価されていると推測される。また、全国規模でのDEP濃度を推定するには、今回の調査の継続によるさらなるデータの蓄積や発生源粒子のプロファイルの充実が必要である。
     
    (4) 今後の課題
     定量的な評価に資するための調査研究を推進するとともに、曝露評価の充実を図り、新たな知見が得られた場合は速やかに検討を行うべきことを提案。
     
     
  4. 今後の対応
     
     環境省としては、この報告を受けて、リスク評価の不確実性を踏まえつつも、予防原則の観点から、環境大気中のDEP汚染の低減を図るべく、自動車単体規制の一層の強化および自動車NOx・PM法の着実な施行を行うとともに、引き続き健康リスク評価のための調査研究を進めることとしている。

ディーゼル排気微粒子リスク評価検討会平成13年度報告

添付資料

連絡先
環境省環境管理局総務課
課   長:吉田徳久(6510)
 課長補佐:高橋  司(6514)

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