報道発表資料

平成10年3月30日 この記事を印刷

光害対策ガイドラインの策定について

環境庁は、不適切な照明による天体観測、動植物の生育などへの影響を防止し、良好な照明環境(望ましい光の環境)の実現を図り、地球温暖化防止にも資するような「光害対策ガイドライン」を策定した。
 ガイドラインでは、まず、これまで明確に定義されてこなかった「光害(ひかりがい)」の概念を明確にするとともに、自然公園、郊外、都市中心部など地域特性に応じた4つの照明環境の類型を設定している。地方自治体に対して、これらの類型を踏まえて、例えば「天の川が観察できること」などの広域的な目標を設けるとともに、より小さい規模の地域について、短中期的な達成目標を含んだ「地域照明環境計画」を策定するよう提案している。その上で、照明機器メーカー、施設整備者、広告物設置者などの関係者が照明環境の類型に即して適切な対応をとっていく上で活用されるよう、「街路照明器具のガイド」、「屋外照明等設置チェックリスト」、「広告物等のガイド」の3つの詳細な屋外照明のガイドラインを提示した。
 光害については、天文観測への障害に関して国際的なガイドラインが設定され、国内でも光害防止条例を制定している町があるが、この度策定されたような光害に関する総合的なガイドラインをとりまとめているところは、世界に例を見ない。
1.策定の背景及び検討の経緯
(1)背景
 都市化、交通網の発達等による屋外照明の増加、照明の過剰な使用等により、夜空の明るさが増大し、天体観測等への障害となることが「光害(ひかりがい)」として指摘されて久しい。また、照明の不適切又は過剰な使用によって眩しさといった不快感、信号等の重要情報の認知力の低下、農作物や動植物への悪影響等が報告されており、適切な対策を求める声が多くなっている。
 平成6年度に環境庁が行った光害に関する環境モニター・アンケートでは、回答者の約4分の3が、光害について何らかの形で認知しており、また、同じく環境庁が昭和63年度より実施している「全国星空継続観察(スターウオッチング・ネットワーク)」の参加者が年々増加していることから、夜空の明るさに大きな関心が集まっていることがうかがわれる。
 さらに、地球温暖化を防止するため、光害抑制のための照明システムを作成し、二酸化炭素排出を抑制することや、光害への取組を通じ国民一人ひとりのライフスタイルの改善を図ることも必要となっている。
 れらの状況を踏まえ、環境基本計画にも取り上げられている光害問題について、良好な大気生活環境保全上の観点から捉え直すとともに、CIE(国際照明委員会)及びIAU(国際天文学連合)による「夜空の明るさの抑制ガイドライン」、「障害光抑制のガイドライン」策定の動きに対し、国際的整合を図ることも考慮しつつ、人工光の使用に伴い必要となる環境配慮のあり方について、光害対策ガイドラインとして取りまとめることとした。

(2)検討の経緯
 本ガイドラインは、環境庁大気保全局の委託のもとに、(財)日本環境協会が設置した「光害対策検討会」において、検討・策定されたものである。
 当該検討会は、平成8年9月に第1回会合を開催し、平成8年度には基礎的な情報収集及び問題整理、平成9年度には各種指針の内容について検討を行い、「光害対策ガイドライン」として、検討結果を取りまとめたものである。

2.ガイドライン策定の目的と構成
 本ガイドラインは、屋外照明等にかかわる大気生活環境保全上の問題に対して、
  {1}良好な「照明環境」実現のための取組
  {2}温暖化対策の推進
  {3}上記{1}及び{2}に関する啓発
の観点から、行政、製品の供給者、照明設計者、照明設置者、照明使用者並びに地域住民が取り組むべき課題を抽出するとともに、対策のあり方を提案するものである。
 ガイドラインでは、まず、光害問題の定義や夜空の明るさの問題を概説し、続いて地域における照明環境の考え方や、関係者のガイドラインへの関わり方を述べ、最後に屋外照明等についての具体的な各種ガイドをまとめた「屋外照明等ガイドライン」を示している。

3.光害対策ガイドラインの概要
(1)光害の定義
 屋外照明が周辺環境へ及ぼす影響を整理すると、動植物への影響として、野生動植物、農産物・家畜等への影響が、人体への諸活動への影響として、天体観測への影響、居住者への影響、歩行者への影響、交通機関への影響等が考えられるが、未解明な部分も多く存在する。
 光害とは、狭義には障害光による悪影響を指すこともあるが、こうした各種影響を踏まえ、本ガイドラインでは、光害を「良好な照明環境の形成が、漏れ光によって阻害されている状況又はそれによる悪影響」と定義する。
※1漏れ光:照明機器から照射される光で、その目的とする照明範囲外に照射される光
※2障害光:漏れ光のうち、光の量若しくはその方向又はその両者によって、人の活動や生物等に悪影響を及ぼす光

(2)「夜空の明るさ」問題について
 これまで、星が見えにくくなる要因ということで光害という用語が多く用いられてきている。この場合、星が見えにくくなるという問題は、夜空の明るさ(地上から大気を通して星を観察する際の背景の明るさ(輝度))の増大に関する問題、すなわち、夜空の明るさが自然光に対して相対的に大きい状況が地域的に発生しているという問題であるという意味で、環境問題として整理することができる。環境問題としてこの問題を解明していくためには、短中期的には、観察結果の評価モデルの設定と観察手法の確立といったモニタリング手法の確立が急務である。中長期的には、モニタリングの結果を地域における照明環境の一つの指標として捉えることが、個々の対策の達成状況を把握するためにも有効である。

(3)地域特性に応じた照明環境について
 達成されるべき良好な照明環境のイメージとそのために当面必要となる対策の枠組みを示すものとして、4つの照明環境の類型を設定する。それぞれの類型は、対策の緊急性及び場所の包含関係を相対的に示すもので、例えば、照明環境[4]は、照明環境[3]に対し、より緊急性の高い対策が設定され、限定された地区において適用される。
 市町村レベルの自治体では、地域における良好な照明環境を実現するために、広域目標としての照明環境類型(地域全体の長期的な照明環境の類型)と地区照明環境計画(域内のうち対策が急がれる地区について設定した照明環境類型を基に策定される当該地区の計画)によって構成される地域照明計画を策定し、各種対策を実施することが望ましい。地区照明環境計画は、地区における照明環境の向上が見られる場合には、設定地区を縮小したり地区の目標を広域目標としての照明環境類型と同一のものへと移行させるなど、見直していく必要がある。(図参照)
 なお、屋外照明等ガイドライン(後述)は、それぞれの照明環境類型にふさわしい照明機器の基準値や屋外照明のあり方等を示したものである。

(4)照明環境の関係者
 光害が小さく効率的な照明は、適切な照明目的の設定、適切な照明機器の設置並びに適切な運用に対する一連の配慮がなされることによって実現する。
 欧米においては、このような観点から、「照明環境設計」の重要性が認識されており、照明に関する組織的な教育体制の確立がなされているとともに、照明を設計する専門の技術者としての「照明環境設計者」の地位が確保されている。
 光害に対する環境配慮を推進するためには、我が国においても「照明環境設計者」地位の確立とそのための資格・教育制度の確立が急がれる。

(5)「屋外照明等ガイドライン」(主な内容は別添1〜3を参照)
{1}街路照明器具のガイド
 漏れ光の抑制、さらに効率的な照明の実現の観点から、街路照明器具単体として配慮すべき事項を示す。例えば、光源が発する光のうちで照明器具から上空に漏れる光りの割合を規定すること、総合的な効率の向上に関する配慮等が示されている。
{2}屋外照明等設置チェックリスト
 施設等において整備される照明設備の設置目的を明確にし、施設管理者、施設整備者などが周辺環境に配慮しつつ、適切な照明機器の設置・運用を行う過程における基本的なチェック手法が示される。例えば、「漏れ光」及び「障害光」について照明環境の類型に応じた配慮とその確認の手法が示されるとともに、施設単位での総合的な照明の効率化に関する基本的な考え方が示されている。
{3}広告物等のガイド
 広告物に付帯する照明機器についての「漏れ光」に対する配慮、光の性質及び省エネルギーに関する配慮事項が示される。例えば、商業的にサーチライトを使用する広告行為について、「漏れ光」に対する配慮から許容されないとしている。

4.今後の展開
(1)地方自治体等への普及
 今後、環境庁では、地方自治体等に対し、ガイドラインの積極的な普及を図るものとする。地方自治体においては、環境保全関係部署だけではなく関連部署とも連携をとりつつ、総合的な観点から光害対策に取り組むことが期待されるところであり、環境庁としても積極的働きかけを行うものである。
 特に、各自治体における既存の照明設備整備・管理基準等の積極的な見直し(率先実行)がなされることが期待される。

(2)事業者等への普及
 ガイドラインは、照明等を使用する全ての事業者等の参考となるものである。また、照明による安全確保や「たのしみ」を享受するとともに影響を受ける可能性がある全ての人が参考とできるものである。
 環境庁としては、事業者等に対し、各種ガイドの効果的活用の普及に向けて、取り組んでいくこととする。

(3)ガイドラインの見直し等
 ガイドラインの内容は、照明関連技術の向上等に基づき見直されるべきものである。
 各種学会・業界等との協力体制を確立しつつ、専門的な検討を行い、逐次ガイドラインを見直し、その充実を図っていくこととする。

添付資料

連絡先
環境庁大気保全局企画課大気生活環境室
室    長 :竹内 恒夫(内線6540)
 室長補佐 :宍戸 政憲(内線6541)
 担    当 :西尾 達司(内線6545)

ページ先頭へ