報道発表資料

平成10年5月7日 この記事を印刷

外因性内分泌攪乱化学物質問題への環境庁の対応方針について−環境ホルモン戦略計画SPEED'98−

人や野生生物の内分泌作用を攪乱し、生殖機能阻害、悪性腫瘍等を引き起こす可能 性のある外因性内分泌攪乱化学物質(いわゆる環境ホルモン)による環境汚染は、科 学的には未解明は点が多く残されているものの、世代を越えた深刻な影響をもたらす おそれがあることから環境保全上の重要課題である。
 環境庁においては、現時点での内分泌攪乱化学物質問題についての基本的な考え方 、それに基づき今後進めて行くべき具体的な対応方針及び本対応方針を定めるに当た って判断根拠とした科学的知見の概要をとりまとめた。
 環境庁としては、本対応方針に基づき各種の調査・研究を進め、行政的な措置のあ り方について検討していくとともに、国民の本問題への正しい理解を助けるため、今 後得られる新たな科学的知見や情報を適宜・的確に提供していくこととしている。
 また、諸外国及び関係する国際機関に対しては、本方針を「Strategic Programs on Environmental Endocrine Disruptors '98 / Japan Environment Agency」 (SPEED'98/JEA)の名称で提示し、国際的な連携を進める際の基礎とする。

1.経緯

 人や野生生物の内分泌作用を攪乱し、生殖機能阻害、悪性腫瘍等を引き起こす可能性の ある外因性内分泌攪乱化学物質(いわゆる環境ホルモン)について環境庁においては、1 997年3月に「外因性内分泌攪乱化学物質問題に関する研究班」(座長:鈴木継美元国 立環境研究所所長)を設置し、これまでの内外の文献及び我が国における環境モニタリン グ調査の結果等に基づき、現状における科学的な知見を整理するとともに、今後重点的に 進めるべき調査・研究課題などについて検討を行い、同年7月に中間報告書をとりまとめ て公表している。
 環境庁においては、本中間報告書を踏まえ1998年度以降の総合的な調査・研究を進 めるべく検討を進めてきたが、現時点での内分泌攪乱化学物質問題についての基本的な考 え方、それに基づき今後進めて行くべき具体的な対応方針及び本対応方針を定めるに当た って判断根拠とした科学的知見の概要を取りまとめた。

2.内分泌攪乱化学物質問題について

(1)内分泌攪乱化学物質問題
 「外因性内分泌攪乱化学物質(環境ホルモン)」とは、「動物の生体内に取り込まれた 場合に、本来、その生体内で営まれている正常なホルモン作用に影響を与える外因性の物 質」を意味する。
 近年、専門家より環境中に存在するいくつかの化学物質が、動物の体内のホルモン作用 を攪乱することを通じて、生殖機能を阻害したり、悪性腫瘍を引き起こすなどの悪影響を 及ぼしている可能性が指摘されており、環境保全行政上の新たで重要な課題の一つとなっ ている。

(2)科学的な知見の不十分性
 本問題に関しては、人や野生動物への影響を示唆する科学的報告が多くなされているものの、報告された異常と原因物質との因果関係、そうした異常な状況が発生するメカニズ ム等に関してはいまだ十分には明らかにされていない。しかしながら、環境中には、人及び動物のホルモン作用を攪乱しうる化学物質がいくつか存在することはかなり確実である 。
 今後は、

  1. 指摘されている人や野生動物の異常を検証するために報告の例数を増やすこと、統計的な解析を深めること、
  2. 環境汚染状況及び人や野生動物への摂取量の把握、
  3. 影響が発現する作用メカニズムの解明等のための調査・研究を一層深めていくこと、
  4. これまで内分泌攪乱作用が疑われている約70物質を含めてより幅広い範囲の化学物質について内分泌攪乱作用を有するか否か、どの程度の作用力を持つものであるか等を明 らかにすること

が必要である。
 また、そのためのスクリーニング試験方法を国際的に協力しつつ早期に確立していくことが重要となっている。

(3)人や野生動物への影響を検討するに当たって考慮すべき事項
 内分泌攪乱化学物質による人や野生動物への影響の発生可能性及びその防止対策を検討するに当たっては、環境媒体の汚染を通じて人や野生動物が当該化学物質に曝露する可能 性、内分泌攪乱作用の強さを考慮した環境リスク評価を進め、それに基づく的確な環境リスク管理を行うことが重要である。また野生動物への影響を防止すること自体が環境保全 上の重要な目的であるとの観点から本問題への取組を進める必要がある。この場合、本問題の特徴を踏まえ、以下の点に留意することが必要である。

  1. 脊椎動物のホルモン作用の共通性等に留意して、野生生物の影響が人にどの程度当てはまるかを検討すること
  2. 影響が観察されている主な生物は水生生物であることから、水域の汚染状況に着目したリスク評価等を行うこと
  3. 環境中で化学的に変化して内分泌攪乱化学物質になることもあることから、環境中での挙動に留意すること
  4. 内分泌攪乱化学物質の作用のメカニズム、その作用の強さを明らかにする努力を重ねつつ、リスク評価を進めること
  5. ホルモンは体内でかなり低い濃度で作用を及ぼすことから環境中の内分泌攪乱化学物質が難分解性、食物連鎖を通じた蓄積性等の性質を有する場合には、環境リスク管理上特 に留意すること
  6. 胎児や乳幼児への影響等世代を越えた長期的な影響の発生を未然に防止する観点から、リスク評価等のあり方を検討すること

3.本問題に対する環境庁の対応方針について

(1)基本的な考え方
 内分泌攪乱化学物質問題については、科学研究の分野においてはいまだ緒についたばかりであり、科学的には不明な点が多々残されている。しかし、これまでの科学的知見が指 し示すように、人の健康及び生態系に取り返しのつかない重大な影響を及ぼす危険性をはらんだ問題である。
 このため、学際的なフォーラムの下で科学的研究を加速的に推進しつつ、行政部局においては、今後急速に増すであろう新しい科学的知見に基づいて、行政的手段を遅滞なく講 じうる体制を早期に準備することが必要となる。
 本問題の特質を考慮すれば、

  1. 行政機関―学術研究機関―民間団体の連携の下に調査・研究を推進すること、
  2. 国際的な調査研究協力及び情報ネットワークを強化すること、
  3. 化学物質による汚染の防止対策の再点検を進めること、
  4. 関係する行政分野との密接な連携を確保すること、
     が特に重要な考え方となる。

(2)具体的な対応方針

 {1} 環境汚染の状況、野生動物等への影響に係る実態調査の推進
(イ) 内分泌攪乱化学物質による環境汚染の状況と環境への負荷源及び負荷量を把握し、環境を経由して人や野生動物にもたらされる曝露量を推定し、実際的な環境リスクの評価 を行うための基礎的なデータ・情報を整備する。
(ロ) 我が国の野生動物(とりわけ水生生物・水辺の生物)を対象に、生殖機能、生殖行動等に係る異常の発生実態と体内の汚染状況等を全国的に調査し、異常発生と汚染との因 果関係を推定する。
(ハ) いくつかの指標を選定して定期的に観測する「健康影響サーベイランス手法」を用いて、人の健康への影響を継続的に調査する。

 {2}

試験研究及び技術開発の推進
 国立環境研究所において関連研究施設の整備を含めた研究体制の充実を図り、また、環境庁の一括計上研究費等を通じて、試験研究及び技術開発、研究機関の研究活動への支援 を進め、得られた成果を、行政的な取組に活用する。
 {3} 環境リスク評価、環境リスク管理及び情報提供の推進
(イ) 調査・研究の成果を踏まえ、内分泌攪乱作用をもつ物質について、優先順位の高いものから環境リスク評価を実施し、それに基づき環境リスク管理のための必要な対策を推 進する。
(ロ) 地方公共団体の環境部局等と協力し、新たな科学的な知見、環境リスク評価の結果等の情報を広く公表し、国民の正しい理解を助ける。
 {4} 国際的なネットワーク強化のための努力
(イ) 本分野で積極的な取組を進めている国々との共同調査研究、国際シンポジウムの実施等を進め、データの比較評価及び人的交流を深めるとともに、途上国への関連する情報 の提供等にも努める。
(ロ) 8か国環境大臣会合において合意された子供の環境保健に関する宣言を踏まえ、また、OECDで進められつつあるテストガイドラインの作成を積極的に支援するなど国際的な 連携・協力の下に調査研究を進めていく。
(ハ) 残留性有機汚染物質(POPs)に関する国際取り決め文書の採択に努力するほか、地球規模でのモニタリング活動に積極的に貢献する。

4.今後の予定

(1)早急に本方針の実施体制について地方公共団体環境部局と協議・調整を図る。
(2)5月中に環境汚染の状況、野生動物等への影響に係る実態調査等の推進に際して専門的立場から検討、指導をいただくべく「内分泌攪乱化学物質問題検討会(仮称)」を 設置する。
(3)諸外国及び関係する国際機関に対しては、本方針を「StrategicProgramsonEnvironmentalEndocrineDisruptors '98/JapanEnvironmentAgency」(SPEED'98/JEA)の名称で提示し、国際的な連携を進める際の基礎とする。

連絡先
環境庁企画調整局環境保健部環境安全課
課 長  :吉田 徳久(内6350)
 専門官 :椎葉 茂樹(内6352)

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