報道発表資料

平成25年7月11日
自然環境
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特定外来生物アルゼンチンアリの防除手法開発及びその成果について(お知らせ)

特定外来生物※1であるアルゼンチンアリ※2(南米原産)は、平成5年に広島県廿日市市において国内初の定着個体群が確認されて以降、平成25年5月現在までに1都2府9県において、定着が確認されています。

今回、平成22年にアルゼンチンアリの定着が確認された東京都大田区内において、環境省、独立行政法人国立環境研究所及びフマキラー株式会社が連携して地域根絶に向けた防除試験を実施し、99%以上の防除効率※3を達成するに至りました。これまで世界的にも、外来種としての本種の根絶に成功した事例はほとんどなく、今回の試験により、根絶に向けた防除手法が確立される可能性が示されました。現在も試験は継続中ですが、これまでの成果をふまえ、環境省で作成している「アルゼンチンアリ防除の手引き」を改訂しましたので、防除試験事例とあわせてお知らせします。

I.東京都大田区内における防除試験

1.防除試験の概要

東京都大田区の大井埠頭、城南島は、昭和40〜50年代に造成された港湾地域で、国内有数の海上運輸の物流拠点となっています。環境省では平成22年より主要港湾地域での外来種モニタリング実施しており、平成22年10月に同エリアでアルゼンチンアリを初確認しました。

このため、同エリアにおいてのアルゼンチンアリ個体群根絶を目標とし、環境省、独立行政法人国立環境研究所及び、フマキラー株式会社が連携して、根絶目標達成のための防除手法の開発試験を平成23年4月から開始しました。

その結果、同エリアにおいて、99%以上の防除効率を示す手法を確立しました。

2.防除試験の手法

[1] 目標の設定

目視によるモニタリング調査により、大田区大井埠頭、城南島においては生息範囲がそれぞれ約8.5ha、16ha以内の範囲であることを確認し、定着エリアからのアルゼンチンアリ個体群の根絶を目標として設定しました。

[2] 防除計画区域の設定

アルゼンチンアリの分散を想定して、生息が確認されたエリアを包囲するかたちで防除計画区域を設定しました。

[3] 防除期間の設定

防除開始時より3年間を防除期間と定め、個体群の抑制効果を判定しつつ根絶達成に向けた対策を順応的に検討することとしました。

[4] 薬剤による防除方法

 室内レベルの薬効試験および文献データに基づき、殺虫剤フィプロニルがアルゼンチンアリに対して高い効果を示すことが明らかであったことから、フィプロニルを主成分とするベイト剤及び液剤を用いた化学的防除を採用しました。

フィプロニルは、昆虫の神経系に作用して殺虫効果を示す殺虫剤です。遅効的(すぐに殺虫効果を示すのではなく、ゆっくりと効く)で、餌に混ぜて働きアリに巣に持ち帰らせることにより、巣内の他の成虫や幼虫にフィプロニルが浸透して、巣内の個体を死滅させる効果があります。

防除計画区域内の道路沿いおよび建物沿いにベイト剤(フィプロニル含量0.005%)を、間隔をおいて設置し、ベイト剤は月おきに交換しました。薬量と防除効果の関係をみるために、試験区を分割して、標準的な薬量を投下する高薬量設置区(5m間隔で設置)、その半分の薬量を投下する低薬量設置区(10m間隔で設置)、及び無処理区(設置無し)を設定しました。試験期間中、下記の個体群動態モニタリング調査の結果をみながら、ベイト剤の設置数を調整しました。具体的には、夏期に個体群密度がピークを迎えた時は、薬量を増やし、冬期に個体群密度が低下したときには薬量を減らしました。

さらに、試験期間中、アルゼンチンアリのコロニーが発見された場合は、液剤(フィプロニル含量0.005%)を直接散布して巣ごと防除しました。

なお、ベイト剤及び液剤の処理量から、フィプロニルの環境中予測濃度を計算して、環境基準値以下であることを確認しています。

[5] 個体群モニタリング調査

大井埠頭、城南島では目視踏査による個体観察法と調査用粘着トラップを用いた個体群動態モニタリング調査を行いました。城南島では、試験区のデータに基づき、防除効率を計算しました。

3.防除試験による効果

城南島においては、防除実施前は広範囲でアルゼンチンアリの個体が確認されていましたが、防除を継続することにより、平成25年5月13日の調査時では個体が確認された箇所は僅かに点在するのみであり、本調査からも防除の効果を確認することができます(別添1)。

城南島において、粘着トラップ1個あたりのアルゼンチンアリ捕獲数(図1)から、試験開始時の2011年度4月から防除実施後の8月にかけてのアルゼンチンアリの密度の変化率を計算した結果、無処理区では84.61倍となり、それに対して、低薬量設置区及び高薬量設置区では、いずれも0.21倍になりました。これらの数値より低薬量設置区及び高薬量設置区の初年度の4月から8月の防除効率は、いずれも99.75%であり、低薬量でも十分に高い効果があることが示されました。また2年目以降も個体数は極めて低い状態を維持しています。

粘着トラップ1個あたりのアルゼンチンアリ捕獲数(2011年)

図.1 粘着トラップ1個あたりのアルゼンチンアリ捕獲数(2011年)

4.防除コストの計算

城南島における1年目の薬剤コストは高薬量設置区で約13万4,000円/ha/年及び低薬量設置区で約6万6,000円/ha/年、2年目では、発生状況に合わせて薬剤を減量したため、それぞれ約6万8,000円/ha/年、及び約5万3,000円/ha/年になりました。

5.試験結果からの考察

以上の結果より、毎月定期的にベイト剤を設置することにより、確実にアルゼンチンアリ個体群を抑制して、根絶に近づけることができることが明らかとなりました。また、防除にかかるコストも、ベイト剤の設置を的確に行うことにより、年度を経るごとに少なくすることができることも示されました。今回の防除手法を標準として、他の地域における防除にも適用して、その効果を検証するとともに、防除効率や生態影響に関するデータを収集して、さらに確実にアルゼンチンアリを根絶に導く手引き作成へと結びつけていきたいと考えています。

II.アルゼンチンアリ防除の手引き改訂

環境省では、平成18年度から全国数か所で実施してきたアルゼンチンアリ防除モデル事業の成果及びその他の国内外の防除事例を踏まえ、平成21年3月に「アルゼンチンアリ防除の手引き」を作成し、環境省のホームページにおいて公表する等、普及啓発に努めてきました。このたび、東京都大田区の防除事例や国内各地での防除事例を踏まえ、「アルゼンチンアリ防除の手引き」を改訂しました。今回の改訂では、東京都大田区の防除事例を踏まえた経費試算と効果について具体的に紹介するとともに、最新の情報をもとに防除の事例を更新しました。

別添2:
東京都大田区での防除概要(アルゼンチンアリ防除の手引きより抜粋)
別添3:
アルゼンチンアリ防除の手引き

III.今後の展望

今後は、今回改訂された「アルゼンチンアリ防除の手引き」を基に、全国各地で確認されているアルゼンチンアリ侵入個体群の防除が実施され、防除効果に係るデータを収集して、さらに効果的な防除手法の確立にフィードバックすることが重要です。また、根絶確認についても、効果的な誘因トラップを開発するなど、確実な手法の開発が、今後の課題となります

参考

1 特定外来生物について

「特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律」に基づき、生態系、人の生命若しくは身体、農林水産業に係る被害を及ぼし、又は及ぼすおそれがあるものを指定していいます。これら特定外来生物の飼養や移動及び輸入等には同法の許可が必要です。平成25年4月1日現在、105種を指定しています。

2 アルゼンチンアリについて

アルゼンチンアリは南米中部のブラジル南部からウルグアイ、パラグアイ、アルゼンチン北部にかけてのパラナ川流域が原産で、人間の活動に随伴して分布を拡大する放浪種です。
 世界的に侵入・分布拡大を続けており、競争力・攻撃性が非常に高く、侵入地では競合により在来のアリの種数を著しく減少させます。ハワイ、オーストラリア、ヨーロッパおよび我が国における侵入地域ではごく一部の種を除きほぼ全ての在来アリが駆逐されたことが報告されています。このように在来アリ類の多様性を減少させ、生態系に悪影響を及ぼすことから、平成17年6月に本種は「特定外来生物」に指定されました。また、IUCN(国際自然保護連合)の「世界の侵略的外来種ワースト100」にも選定されています。
 また、人間への被害として、同種は地面など巣穴を造るといった固定化したコロニーをもたず、住居空間でも大量に侵入し、そこに留まり食べ物に群がったり、徘徊するなどの不快を与えたりします。また、農作物の芽や蕾、果実を食害したり、農業害虫であるアブラムシ類やカイガラムシ類などを外敵昆虫から保護することで、被害を助長したりするなどの農業被害事例も世界的に報告されており、アルゼンチンアリを見つけた場合は早急な防除を行う事が重要です。

アルゼンチンアリ

写真提供:一般財団法人自然環境研究センター

注:無断転用禁じる。

3 防除効率

4月から8月にかけての個体数増加率を処理区と無処理区で比較して算出した値です。

[1 - (Cb × Ta) / (Tb × Ca)] × 100

Cb:無処理区の4月の密度
Ta:薬量投下区の8月の密度
Tb:薬量投下区の4月の密度
Ca:無処理区の8月の密度

添付資料

連絡先
環境省自然環境局野生生物課外来生物対策室
(代表:03-3581-3351)
         (直通:03-5521-8344)
 室長   :関根 達郎(内:6680)
 室長補佐:東岡 礼治(内:6681)
 担当   :水崎 進介(内:6683)
関東地方環境事務所 野生生物課
         (直通:048(600)0817)
 課長   :徳田 裕之
 担当   :戸田 博史
独立行政法人国立環境研究所
生物・生態系環境研究センター
         (直通:029(850)2480
 主席研究員:五箇 公一
 特別研究員:井上 真紀、坂本 佳子

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