報道発表資料

平成12年4月12日 この記事を印刷

無脊椎動物(昆虫類、貝類、クモ類、甲殻類等)のレッドリストの見直しについて

環境庁では、平成7年度から専門家による検討会を設置し平成3年版レッドデータブックの見直し作業を進めてきたが、今般、無脊椎動物(昆虫類、貝類、クモ類、甲殻類等)に関する新しいレッドリスト(注)を取りまとめた。 
  今回のレッドリストでは、絶滅のおそれがある種(絶滅危惧I類及びII類)としてヤンバルテナガコガネ、ヒョウモンモドキ、カワシンジュガイ、ニホンザリガニなど計423種が掲げられた。 
  今後、このリストを基に、引き続き、無脊椎動物のレッドデータブックの作成を進めていく。 
 (注)レッドリスト:日本の絶滅のおそれのある野生生物の種のリスト。生物学的観点から個々の種の絶滅の危険度を評価し選定したもので、規制等の法律上の効果を持つものではないが、絶滅のおそれのある野生生物の保護を進めていくための基礎的な資料として広く活用されることを目的とするものである。レッドリストに掲載された種について生息状況等をとりまとめ編さんしたものがレッドデータブック。

1.レッドデータブック見直しの経緯

  環境庁では、平成3年に初めて動物版レッドデータブック(日本の絶滅のおそれのある野生生物の個々の種の生息状況等をまとめたもの)を発行したが、レッドデータブックは野生生物の生息状況や生息環境の変化に対応するため定期的な見直しが必要であり、平成7年度より、哺乳類、鳥類、爬虫類といった分類群ごとに改訂作業に着手した。
  作業は、まず、レッドデータブックに掲載すべき種のリスト(=レッドリスト)を確定し、次に、選定された個々の種について生息状況等の情報を記述した資料集であるレッドデータブックを編さんするという手順で進めており、レッドリストについては、平成9年8月に両生類及び爬虫類、平成10年6月に哺乳類及び鳥類、そして平成  11年2月には汽水・淡水魚類のレッドリストを公表、また、本年3月には両生類及び爬虫類の改訂版レッドデータブックを編さんしたところ。
  今般、昆虫類、陸・淡水産貝類、クモ類、甲殻類等について、レッドリストの取りまとめ作業が終了し、動植物すべての分類群について、レッドリストの改訂作業が完了した。(植物は平成9年8月にレッドリスト公表)

2.見直し作業の体制及び情報源

  レッドデータブックの見直しに当たっては、環境庁自然保護局長の委嘱により、専門家による「絶滅のおそれのある野生生物の選定・評価検討会」を設置し、その下に「レッドデータブック改訂分科会」及び昆虫類、陸・淡水産貝類、クモ類、甲殻類等の分類群ごとの分科会を設置して検討を進めた。(関連する分科会等の委員は別紙1参照)
  また、今回の無脊椎動物の見直しの際の生息状況等に関する情報については、既存の文献・資料や専門家の知見を基本とし、それを補うために必要に応じ若干の現地調査を行った。

3.レッドデータブックのカテゴリー

  レッドリストの見直しに当たっては、1994年(平成6年)にIUCN(国際自然保護連合)が採択した、数値による評価基準による新しいカテゴリーを踏まえつつ、環境庁としての、定性的要件と定量的要件を組み合わせた新しいカテゴリーを策定した。新しいカテゴリーの定義は、下表のとおり。(詳細は別紙2参照)
  なお、無脊椎動物については、現状では数値的な評価のためのデータが得られない種が多いことから、主に定性的要件に基づき評価を行い、絶滅危惧I類はIA類とIB類とに分けなかった。

4.無脊椎動物のレッドリストの選定評価方針

  無脊椎動物についての、レッドリストへの選定評価の対象種及び評価方法等は、以下のとおりとした。

(1) 選定評価対象種
[1]   種又は亜種(分類上亜種に細分される場合は原則として亜種)を評価の対象とした。
  <注>分類学的に未確定のものは原則として対象外。
[2]   移入種は対象外とした。
   <注>ここでの移入種とは、海外又は国内他地域から国内の本来の生息地域外へ人為的(非意図的なものも含む)に移動された種をいう。
[3]   貝類では、陸産・淡水産のみを対象とした。(海産及び汽水産貝類(生活史の大半を汽水域で過ごすもの)は対象外。)
[4]   地域個体群(LP)としての選定評価の対象とする個体群は、絶滅のおそれの高い個体群であって、原則として以下のいずれかに該当するものをリストアップした。
a. 他の個体群と地理的に著しく隔離されているもの
b. その個体群の絶滅がその種の全国的な分布に大きな影響を与えるもの(北限、南限等)
c. 他の個体群とは大きな形質の差異があるもの
d. 研究が進めば将来的に別の種又は亜種となる可能性が高いもの


(2)評価方法等

[1]   無脊椎動物は数値データを把握することが困難な分類群であることを踏まえ、評価は専門家の知見等による定性的評価を基本とし、生息情報の集積がある昆虫の一部(チョウ・トンボ等)についてのみ定量的データを加味しつつ評価を行った。
  なお、定性的評価においては、潜在的な危険性(生息分布の局限、生息環境の限定等)も考慮した。
[2]   無脊椎動物では、絶滅危惧I類をIA類(CR)とIB類(EN)とに分けず、I類(CR+EN)としてまとめて評価した。なお、I類にランクされる種のうち特に絶滅のおそれが大きく特筆すべき種については、必要に応じレッドデータブックの中でその旨を記述することとした。
[3]   国内のみの生息状況に基づいて評価した。
[4]   過去の生息状況との比較は、既知の良好な生息時期を基準とした。
[5]   害虫等の有害性のある種は、原則としてランク外とした。
[6]   単に採集記録の少ないだけの種は、原則としてランク外又は情報不足とした。

5.無脊椎動物のレッドリストの選定評価結果

(1)レッドリスト掲載種
評価の結果、無脊椎動物の新しいレッドリストを別紙3のとおり取りまとめた。
なお、レッドリストに掲げられた種数(亜種を含む)は下表のとおり。


(2)レッドリストの特徴
  無脊椎動物全体では、絶滅のおそれのある種(絶滅危惧I類及び絶滅危惧II類)が、 旧版(平成3年版レッドデータブック)の125種から423種へ増加した。そのうち、 旧ランク外からの新たな選定種は237種。
  分類群毎の主な特徴は以下のとおり。
[1]   昆虫類では、絶滅のおそれのある種が、旧版の38種から139種へ増加。トンボ目(20種)、カメムシ目(22種)、コウチュウ目(47種)及びチョウ目(42種)でその大半を占めた。
  チョウ類では、生息地の減少率等を定量的に評価した結果、旧版の8種から42種へ大幅に増加。ヒョウモンモドキ、チャマダラセセリ等、里山や草原に生息する種が多く選定された。
[2]   陸・淡水産貝類では、絶滅のおそれのある種が旧版の73種から251種へ大幅に増加するとともに、絶滅種が、新たに25種選定された。これは、絶滅のおそれが増大したというよりも、種毎の知見の増加等によるところが大きいものと思われる。島嶼の固有種や生息環境が限定している種などが多く選定された。
[3]   クモ類、甲殻類等では、絶滅のおそれのある種が旧版の14種から33種へ増加。クモ類・多足類としてキムラグモ、シノハラフサヤスデ等が、甲殻類としてニホンザリガニ、ミヤコサワガニ等が、その他カブトガニ等が選定された。トキウモウダニはトキと同じ野生絶滅とされた。

6.今後の保護対策・課題

  レッドリストは、環境庁ホームページへの掲載等により広く普及を図り、国民の絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存への関心や理解を深める。また、関係省庁や地方公共団体等にも配布し、各種計画等における保全配慮の促進を図る。
  また、レッドリスト掲載種の中でも特に保護の優先度の高い種については、さらに生息状況等に関する詳細な調査を実施し、「絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律」に基づく国内希少野生動植物種の指定等の保護措置を検討していく。
  なお、レッドリストの一般入手方法は別記のとおり。

7.レッドデータブックの作成

  レッドデータブック「日本の絶滅のおそれのある野生生物ー無脊椎動物編ー」は、来年を目途に公表する予定。

 

 (別記)無脊椎動物レッドリスト入手方法 
[1] 環境庁野生生物課に直接取りに行く 
[2] インターネットの環境庁ホームページ(http://www.eic.or.jp/eanet/)から入手 
[3] 返送用封筒(A4判;切手200円分を貼り、返送先をあらかじめ記入)を同封の上、 次の宛先に送付 
         宛先:〒100ー8975東京都千代田区霞が関1-2-2 
         環境庁自然保護局野生生物課 無脊椎動物レッドリスト係

 

(別紙1)

●レッドデータブック改訂分科会 
座 長: 上 野 俊 一 国立科学博物館名誉研究員
委 員: 阿 部  永  元北海道大学農学部教授
藤 巻 裕 蔵 帯広畜産大学畜産学部教授
  多 紀 保 彦 東京水産大学名誉教授 
  森 本  桂  九州大学名誉教授 
  奥 谷 喬 司  日本大学生物資源科学部教授 
  青 木 淳 一  横浜国立大学環境科学研究センター教授 
大 野 正 男 東洋大学文学部教授
岩 槻 邦 男 放送大学教授
千 原 光 雄 千葉県立中央博物館館長

●昆虫類分科会
座 長: 森 本  桂 九州大学名誉教授
委 員: 石 井  実  大阪府立大学農学部教授
上 野 俊 一 国立科学博物館名誉研究員
枝  重 夫 松本歯科大学教授
佐 藤 正 孝 名古屋女子大学大学院生活学研究科教授
谷  幸 三 奈良商業高校教諭
多田内  修 九州大学農学部助教授
林  利 彦 国立感染症研究所昆虫医科学部研究員
林  正 美 埼玉大学教育学部教授
山 崎 柄 根 東京都立大学理学部教授

無脊椎動物I(陸・淡水産貝類)分科会
座 長: 奥 谷 喬 司 日本大学生物資源科学部教授
委 員: 稲 葉 明 彦 広島大学名誉教授
上 島  励  東京大学大学院理学系研究科講師
黒 住 耐 二 千葉県立中央博物館学芸研究員
近 藤 高 貴 大阪教育大学教育学部教授
増 田  修 姫路市立水族館学芸員
湊   宏 前和歌山県立日高高等学校長

無脊椎動物II(クモ形類・多足類等)分科会
座 長: 青 木 淳 一 横浜国立大学環境科学研究センター教授
委 員: 佐 藤 英 文 鶴見女子高等学校教諭
高 野 光 男 鶴見女子高等学校教諭
鶴 崎 展 巨 鳥取大学教育学部助教授
西 川  喜 朗 追手門学院大学人間学部教授

●無脊椎動物III(甲殻類等)分科会
座 長: 大 野 正 男 東洋大学文学部教授
委 員: 織 田 秀 実 立教大学名誉教授
川 勝 正 治 元藤女子大学教授
諸喜田 茂 充 琉球大学理学部教授
武 田 正 倫 国立科学博物館動物研究部長
布 村  昇 富山市科学文化センター館長
森 野  浩 茨城大学理学部教授

添付資料

連絡先
環境庁自然保護局野生生物課
課 長 :森 康二郎(6460)
 担 当 :植田、樋口(6465)

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