報道発表資料

平成12年11月14日 この記事を印刷

野生生物のダイオキシン類蓄積状況等調査結果について−平成11年度調査結果−

環境庁では、ダイオキシン類の野生生物への蓄積状況等を把握するため、平成10年度に引き続き、鳥類(トビ、カワウ)、海棲哺乳類(オウギハクジラ、スナメリ)及び陸棲哺乳類(アカネズミ、タヌキ)について、ダイオキシン類の実測調査を行った(カワウは平成11年度から実施)。今般、野生生物のダイオキシン類蓄積状況調査研究班(座長:大井玄国立環境研究所所長)における検討結果を踏まえ、平成11年度調査の結果を以下のとおり公表するものである。

(1)調査結果
[1] 鳥類(トビ、カワウ)は今回調査した他の種に比べて、ダイオキシン類の蓄積量(脂肪1g当たりの量等)が多く、また、海棲哺乳類のクジラ類ではコプラナーPCBの蓄積量が、昨年と同様にダイオキシン類の90%程度を占めていた。
[2] 平成11年度の調査結果を平成10年度と比較すると、トビ、オウギハクジラ、スナメリ及びアカネズミにおいて蓄積量の減少傾向が認められたが、2回の調査のみの結果であることに留意する必要がある。
(2)まとめ
 今回の調査結果では、平成10年度調査結果に比べて蓄積量の減少傾向が認められたものの、経年的な変化を観察するため、引き続き、鳥類、哺乳類等を対象として、ダイオキシン類の蓄積状況を調査するとともに、新たにダイオキシン類等の影響の指標と考えられるバイオマーカーについて鳥類を対象に調査していく予定である。

注1) ここでは、ポリ塩化ジベンゾ−パラ−ジオキシン(以下、「PCDD」という。)及びポリ塩化ジベンゾフラン(以下、「PCDF」という。)にコプラナーポリ塩化ビフェニル(以下、「コプラナーPCB」という。)を含めて「ダイオキシン類」という。
注2) pg-TEQ/gは、検体1g中に含まれる1兆分の1g(10-12g)のダイオキシン類の毒性等量。
注3) バイオマーカーとは、生体に取り込まれた化学物質に反応して、体内に出現する物質であり、化学物質の影響の指標となるものであるが、ここではダイオキシン類の影響の指標と考えられる誘導酵素(CYP1A1)等の測定を行う予定である。

1 経緯

 ダイオキシン類による問題は人の健康に関わる環境保全上の重要な課題であるが、一方、広く生態系の問題として把握するために、野生生物への蓄積が環境汚染の指標の一つとして注目されている。
 環境庁では、平成10年度に「野生生物のダイオキシン類汚染状況等調査研究班」を設置し、環境汚染の指標種の検討も考慮して野生生物へのダイオキシン類の蓄積状況について広く調査を実施した。
 平成11年度調査では平成10年度よりも調査対象種を絞り、生息環境によって区分し、継続的に比較的多数の検体の入手が可能であることなどを考慮して、主に外洋で生活する種としてオウギハクジラ、主に沿岸で生活する種としてスナメリ、主に沿岸から陸上にかけて生活する種としてトビとカワウ、主に陸上で生活する種としてアカネズミとタヌキの合計6種を選定した。
 平成11年度の調査結果が取りまとめられたのでここに報告する。

2 調査結果の概要

(1)トビ
棲息環境
 国内各地の平地から山地で見られ、主に都市部から周辺の農耕地にかけて生息するが、山岳地帯でも水辺のそばに生息する。河川や湖、湿地の近く、港などの開水面に近い場所を好む。通常は餌場周辺で生活しており、移動距離は1〜3km程度であるが、渡りあるいは分散の時期には約10kmまで広がる。
食性
 肉食性で、中・小型哺乳類、鳥類、爬虫類、両生類、魚類、昆虫類、クモ類、ミミズなどを食べる。
[1]個体数:22
[2]採取方法:有害鳥獣駆除等
[3]測定項目
 ダイオキシン類:濃度、毒性等量
[4]算出方法: 湿重量あたりの毒性等価係数(TEF)はWHO-TEF1998(哺乳類)を使用
 定量下限値を下回る異性体については0として算出
 なお、定量下限値を下回る濃度を定量下限値の1/2及び1で換算したTEQ値も参考として別表に表示
[5]分析方法:環境庁の「野生生物のダイオキシン類汚染状況調査マニュアル」(以降、マニュアル)に基づき調査を行った。
[6]調査結果(別添参照)
 ダイオキシン類を毒性等量(鳥類のTEF、括弧内は哺乳類のTEFで算出)で評価すると、
 <筋肉:22検体>
   平均値 40(35)pg-TEQ/g-湿重量、
   中央値 28(24)pg-TEQ/g-湿重量、
   検出範囲 3.8(2.6)〜110(88)pg-TEQ/g-湿重量
 <脂肪:16検体>
   平均値 510(470)pg-TEQ/g-湿重量、
   中央値 410(350)pg-TEQ/g-湿重量、
   検出範囲 56(37)〜1,400(1,400)pg-TEQ/g-湿重量
であった。
 なお、コプラナーPCBの総TEQ値に占める割合は、平均値58(59)%、中央値61(65)%であった。

(2)カワウ
棲息環境
 主に沿岸、河川、湖沼に分布する。季節により採餌場所を変える傾向がある。繁殖は、水辺近くに集まって営巣することが多い。
食性
 海水から淡水の、あまり深くない水辺で主に魚類を採餌する。
[1]個体数:50
[2]採取方法:有害鳥獣駆除
[3]測定項目
 ダイオキシン類:濃度、毒性等量
[4]算出方法: 湿重量あたりの毒性等価係数(TEF)はWHO-TEF1998(哺乳類)を使用
 定量下限値を下回る異性体については0として算出
 なお、定量下限値を下回る濃度を定量下限値の1/2及び1で換算したTEQ値も参考として別表に表示
[5]分析方法(マニュアル参照)
[6]調査結果(別添参照)
 ダイオキシン類を毒性等量(鳥類のTEF、括弧内は哺乳類のTEFで算出)で評価すると、
 <筋肉:50検体>
   平均値 140(130)pg-TEQ/g-湿重量、
   中央値 120(100)pg-TEQ/g-湿重量、
   検出範囲 7.3(5.9)〜370(420)pg-TEQ/g-湿重量
であった。
 なお、コプラナーPCBの総TEQ値に占める割合は、平均値66(68)%、中央値67(68)%であった。

(3)オウギハクジラ
棲息環境
 外洋性であり、斜面上の海域に生息する。
食性
 肉食性で、中層から深層(水深200~600m)で頭足類(イカなど)を採餌する。
[1]個体数:14
[2]採取方法:漂着死体(ストランディング)
[3]測定項目
 ダイオキシン類:濃度、毒性等量
[4]算出方法: 湿重量あたりの毒性等価係数(TEF)はWHO-TEF1998(哺乳類)を使用
 定量下限値を下回る異性体については0として算出
 なお、定量下限値を下回る濃度を定量下限値の1/2及び1で換算したTEQ値も参考として別表に表示
[5]分析方法(マニュアル参照)
[6]調査結果(別添参照)
 ダイオキシン類を毒性等量で評価すると、
 <筋肉:14検体>
   平均値 4.5pg-TEQ/g-湿重量、
   中央値 2.6pg-TEQ/g-湿重量、
   検出範囲 0.68〜16pg-TEQ/g-湿重量
 <脂肪:14検体>
   平均値 99pg-TEQ/g-湿重量、
   中央値 78pg-TEQ/g-湿重量、
   検出範囲 9.6〜260pg-TEQ/g-湿重量
であった。
 なお、コプラナーPCBの総TEQ値に占める割合は、平均値92%、中央値97%であった。

(4)スナメリ
棲息環境
 沿岸性である。
食性
 群集性の小魚、浅海の頭足類を食べる。
[1]個体数:14
[2]採取方法:漂着死体(ストランディング)
[3]測定項目
 ダイオキシン類:濃度、毒性等量
[4]算出方法: 湿重量あたりの毒性等価係数(TEF)はWHO-TEF1998(哺乳類)を使用
 定量下限値を下回る異性体については0として算出
 なお、定量下限値を下回る濃度を定量下限値の1/2及び1で換算したTEQ値も参考として別表に表示
[5]分析方法(マニュアル参照)
[6]調査結果(別添参照)
 ダイオキシン類を毒性等量で評価すると、
 <筋肉:13検体>
   平均値 6.6pg-TEQ/g-湿重量、
   中央値 1.6pg-TEQ/g-湿重量、
   検出範囲 0.48〜62pg-TEQ/g-湿重量
 <脂肪:12検体>
   平均値 65pg-TEQ/g-湿重量、
   中央値65pg-TEQ/g-湿重量、
   検出範囲 24〜110pg-TEQ/g-湿重量
であった。
 なお、コプラナーPCBの総TEQ値に占める割合は、平均値91%、中央値92%であった。

(5)アカネズミ
棲息環境
 低地から高山帯の森林を中心に社寺林、農地周辺の森林、河川敷などに分布する。行動範囲は数haである。
食性
 雑食性で、草本の根茎部、種子や木の実、昆虫類などを食べる。
[1]個体数:37
[2]採取方法:ワナ捕獲
[3]測定項目
 ダイオキシン類:濃度、毒性等量
[4]算出方法: 湿重量あたりの毒性等価係数(TEF)はWHO-TEF1998(哺乳類)を使用
 定量下限値を下回る異性体については0として算出
 なお、定量下限値を下回る濃度を定量下限値の1/2及び1で換算したTEQ値も参考として別表に表示
[5]分析方法(マニュアル参照)
[6]調査結果(別添参照)
 ダイオキシン類を毒性等量で評価すると、
 <全身:37検体>
   平均値 0.68pg-TEQ/g-湿重量、
   中央値 0.36pg-TEQ/g-湿重量、
   検出範囲 0.22〜7.9pg-TEQ/g-湿重量
であった。
 なお、コプラナーPCBの総TEQ値に占める割合は、平均値69%、中央値73%であった。

(6)タヌキ
棲息環境
 平地から亜高山帯までの林や林縁、里山に生息する。郊外の住宅地に現れることもある。
食性
 雑食性で果実、堅果、穀類、昆虫類、ミミズ、甲殻類、へび、カエル、ノネズミ類、鳥類を食べる。甲虫の幼虫やミミズなどの土壌動物の採食量が比較的多い。行動範囲は都市近郊では狭いが山間部では広く、数十ha〜数百ha程度である。
[1]個体数:11
[2]採取方法:救護後死亡個体
[3]測定項目
 ダイオキシン類:濃度、毒性等量
[4]算出方法: 湿重量あたりの毒性等価係数(TEF)はWHO-TEF1998(哺乳類)を使用
 定量下限値を下回る異性体については0として算出
 なお、定量下限値を下回る濃度を定量下限値の1/2及び1で換算したTEQ値も参考として別表に表示
[5]分析方法(マニュアル参照)
[6]調査結果(別添参照)
 ダイオキシン類を毒性等量で評価すると、
<筋肉:10検体>
   平均値 21pg-TEQ/g-湿重量、
   中央値 5.2pg-TEQ/g-湿重量、
   検出範囲1.4〜78pg-TEQ/g-湿重量
<脂肪:10検体>
   平均値 140pg-TEQ/g-湿重量、
   中央値 110pg-TEQ/g-湿重量、
   検出範囲 8.0〜310pg-TEQ/g-湿重量
であった。
 なお、コプラナーPCBの総TEQ値に占める割合は、平均値51%、中央値46%であった。

3 本調査結果に対する研究班としての評価

 本調査結果では、鳥類のトビ及びカワウは、他の種と比べてダイオキシン類の蓄積量(脂肪1g当たりの量等)が多く、また、クジラ類では、コプラナーPCBの蓄積量が特に高かった(ダイオキシン類の90%程度を占める。)。
 なお、平成10年度の結果では、陸棲哺乳類では、相対的にPCDD+PCDFの蓄積量が高かったが、今回はコプラナーPCBの蓄積量がダイオキシン類の半分を越えていた(アカネズミについては平成10年度のコプラナーPCBの割合が29%であり、平成11年度は69%であった。一方、タヌキについては平成10年度は31%であり、平成11年度は51%であった。)。その理由については、さらに検体数を集めて検討する必要がある。
 生体内の濃度は蓄積結果であるため環境中の濃度変化を反映するには時間が必要と考えられる。平成10年度調査と同じ地点で採取された検体間で比較すると、ダイオキシン類の平均濃度が低下しているものが多いが、この2回の調査のみで評価するのは困難であり、今後も調査を継続する必要があると考えられた。

4 今後の予定

 今後も、ダイオキシン類が高濃度に蓄積していると考えられる鳥類、哺乳類等を対象として、現状のダイオキシン類の蓄積状況を把握するとともに、「ダイオキシン類対策特別措置法」や「ダイオキシン対策推進基本指針」に基づき実施されている対策の効果を検証することを目的として、調査を行う予定である。
 また新たに、ダイオキシン類等の影響の指標と考えられるバイオマーカーについても鳥類を対象に調査していく予定である。


表1 平成11年度 野生生物のダイオキシン類蓄積状況調査結果[GIFファイル]

表2 平成11年度 野生生物のダイオキシン類蓄積状況調査結果(その1)[GIFファイル]
表3 平成11年度 野生生物のダイオキシン類蓄積状況調査結果(その2)[GIFファイル]
表4 平成11年度 野生生物のダイオキシン類蓄積状況調査結果(その3)[GIFファイル]

図1 平成11年度 野生生物のダイオキシン類蓄積状況調査結果(湿重量当たり毒性等量)[GIFファイル]
図2 平成11年度 野生生物のダイオキシン類蓄積状況調査結果(平成10年度結果との比較)[GIFファイル]

連絡先
環境庁企画調整局環境保健部環境安全課環境リスク評価室
室    長 :金井 雅利(内6340)
 室長補佐 :山崎 邦彦(内6341)
        :武井 貞治(内6343)

ページ先頭へ