報道発表資料

平成21年5月29日
地球環境
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(お知らせ)「森林保全分野のパートナーシップ構築のあり方」調査報告書の公表について

 刻々と減少を続ける世界の森林に対して、ODA等日本政府としての取組だけではなく、民間企業・環境NGO等様々な主体とのパートナーシップを構築して、共同事業を促進することは、国連森林フォーラム(UNFF)、国際熱帯木材機関(ITTO)などにおいても求められている世界的な課題となっています。
 このため、環境省の委託により(財)地球・人間環境フォーラムは、平成20年度にアンケート及びヒアリングを実施し、日本企業のCSR活動としての森林保全活動の実態、森林保全分野における企業・NGO/NPOの連携の実態を調査し、森林保全活動におけるパートナーシップ構築のあり方をとりまとめました。
 本報告を受け、環境省では本年度以降、海外の森林保全分野における企業のCSR活動及び企業・NGO/NPO連携事業の優良事例を収集するなど、企業とNGO/NPOの連携を促進させる方策について引き続き検討を進める予定です。

1.目的(調査の背景)
 企業の環境に関する取組みは、CSR 意識の高まりもあり、近年益々活発となってきており、この一環として、企業の植林や森林整備を含む森林保全活動への参画意欲が高揚しています。しかし、事業の実施に当たっては、技術的な知見、活動場所における地元等との調整、植林から成林までの中長期的な計画の策定など事業の効果を確保するための課題があります。
 一方、日本の環境NGO/NPO の活動分野では、森林保全が突出して多く、海外で地道な活動を続け、成果を上げてきたNGO/NPO も多いのですが、これらの団体にはおしなべて資金不足の課題があり、不安定な活動を余儀なくされているのが現状です。
 また、気候変動枠組条約、世界銀行などにおいては、京都議定書で位置づけられている新規・再植林のみならず、減少を続ける森林の保全活動に対して、炭素クレジットなど新たな価値を見出すための検討が行われており、民間企業にとって森林保全活動が新たな環境投資先として注目されており、更に途上国等からも期待されています。
 本調査は、上記のような状況を踏まえ、世界的な森林保全活動に対する環境NGO、研究機関・国際機関等と民間企業とのパートナーシップの構築方策を検討し、我が国の官民併せた世界の森林保全への取組の効果を向上させることを目的にしています。
2.調査方法概要
(1)民間企業による森林保全活動への取組みに関するアンケート調査
[1]
対象:CSR 報告書を発行している企業642社を対象
[2]
アンケート実施時期:2008年12月
[3]
方法:アンケート調査票の郵送、ウェブ、E-mail の活用
[4]
回答数:郵送(168)、メール(139)合計307社 (回答率47.8%)
[5]
回答企業の属性:回答企業の業種別内訳は、電気機器(52社、17%)が最も多く、次いで化学(27社、9%)、食料品(21社、7%)。
(2)企業・NGO/NPO・関連団体のヒアリング調査
[1]
対象:企業、NGO/NPO、関連団体、計31団体
企業19社(製造業8社、流通業5社、建設業3社、金融・保険、電気・ガス、サービス業各1社)、NGO/NPO:9団体、関連団体:3団体
[2]
実施時期:2008年11月〜2009年2月
[3]
ヒアリング方法:訪問の上、調査票を用いた面談方式で行った。
3.検討委員会の設置
 下記の委員から構成される検討委員会を設置し、調査方法及び結果のとりまとめについて検討を行った。
小林 紀之
日本大学大学院教授(座長)
足立 直樹
株式会社レスポンスアビリティ代表取締役
粟野 美佳子
WWF ジャパン業務室法人グループ長
石川 竹一
国際熱帯木材機関事務局次長
井上 真
東京大学大学院農学生命科学研究科教授
緒方 陸夫
三井物産株式会社CSR 推進部社有林・環境基金室
岸  和幸
株式会社リコー社会環境本部環境コミュニケーション推進室
関  正雄
株式会社損保ジャパンCSR・環境推進室長、理事
曽田 良
住友林業株式会社山林環境本部環境経営部ビジネスグループグループマネージャー
仲  建三
財団法人国際緑化推進センター専務理事
中澤 健一
国際環境NGO FoE Japan 森林プログラム
日比 保史
コンサベーション・インターナショナル日本プログラム代表
3.調査結果概要
(1)企業の森林保全活動の現状と課題
 森林保全活動の内容としては、植林・育林活動を中心に、森林保全に配慮した産業としてアグロフォレストリーの支援や社会林業、トラストによる天然林の保全活動や森林生態系保全活動など、多様な取組み事例が見られた。その多くは企業の本業と直接かかわりがないと考えられる一方、木材や紙などの原料調達方針の策定を通じた森林保全の試みも見られる
 企業が森林保全を行う動機は、国内と海外で異なる。国内においては地域社会への貢献と、従業員の環境教育・ボランティア機会の創出が重視されている一方、海外で活動を行なっている企業は、世界規模での森林減少の防止の必要性や、製品製造に係る持続可能な原材料調達の必要性など、世界規模で森林資源のおかれている深刻な状況に起因すると考えられる動機を挙げた企業が多い
 企業が森林保全活動を行わない理由の中には、実施のノウハウ、他企業の取組みなどに関する情報不足が挙げられた。
 森林保全活動は、対象地域の自然や社会状況に関係するものであり、長期の関わりを必要とするなどの特有の困難が伴う。特に海外で活動している企業において、進捗が期待通りでないと認識している企業が多い。とりわけ地元社会との紛争などの問題に直面した経験のある企業もあった。いずれの課題も、十分な能力と経験、対象地とのネットワークを有する連携相手を見出すことが有効であると考えられる
 企業が森林保全活動を開始・継続する際には、こうした森林分野に特徴的な問題や課題を理解し、森林保全の意義や効果をいかに社内外で説得力を持って説明できるかということが鍵となると考えられる。このため、企業にとって森林保全活動と本業とのかかわりや効果、自社の環境活動の中での位置づけを明確にすることが課題となっている。
(2)企業・NGO/NPO連携の現状と課題
[1] 連携の形態・動機
 企業側にとって、NGO/NPOと連携する動機に関しては、自らの森林保全活動を達成するために必要な要素(例えば当該地域における経験と知識)を外部(NGO/NPO)に求める場合と、他者(NGO/NPO)が実施している森林保全活動への共感から出発し、他者が欠けていると思われる要素(例えば資金、広報手法)を自らが提供したいと考える場合とに大別できると考えられる。よって、前者においては、どのような団体がどのような能力を有しているかについての一元化された実用的な情報の不足、後者においては、そもそも当該団体が行っている活動の必要性や背景などの理念に関わる情報の不足やそのように共感できる団体との「出会い」の機会の不足などが、企業側にとっての連携の阻害要因となりうる。
[2] 企業・NGO/NPOの認識の相違
 企業の多くが森林保全は即ち「植林」をイメージする傾向があるのに対し、NGO/NPOは、森林減少の根本要因の解決を追求する傾向が強く、住民の生活と環境保全を両立させるためのプロジェクトの一部に植林や森林管理が含まれている。
 森林保全活動の評価について、企業は植林した樹木の本数や面積などの容易に数値化できる指標を重視する傾向にある。一方、NGOは森林を減少させる根本要因への対応、伝統的に森林を利用する権利の尊重や地域社会・コミュニティの生活向上・安定を重視することが多い。これは、地元住民やコミュニティの協力なくしては長期にわたる森林保全活動は成功しないという経験則に基づくものであると共に、森林などの自然資源に依存する地域の人々の暮らしが安定することが、過度の伐採や過放牧といった森林への圧力を下げることにつながるためである。
[3] 連携の効果・課題
 企業とNGO/NPOが「連携に期待する効果」においては、それぞれが元来持っているリソースが異なるため、連携によって自らに不足している部分を補完することが期待されているという結果が得られた。企業においては、「森林保全の専門的知見・技術・能力」等であり、NGOにおいては「資金」や「PR・情報発信」等である。
 原材料調達を通じての森林への配慮を行っている企業とNGOの連携においては、企業がNGO に「精度の高い情報」を期待し、NGO は「企業の調達方針への影響」を期待しており、双方がそれぞれの目的を連携によって達成することができるWin-Winの関係が成立しており特筆に値する
(3)企業−NGO/NPO 連携の促進・支援策(提言)
対策1:森林保全に取り組む企業およびNGO/NPO の情報プラットフォームを構築する
(想定される効果)
  • 森林保全に関連する連携に関心のある企業およびNGO/NPO に、容易に情報が得られる/発信できる/情報交換できる場所を提供
  • 情報公開の充実を通じたNGO/NPO の信頼性の確保
  • 企業、NGO/NPO 及び関連団体(ITTO を含む)の広報
対策2定期的な情報交換会を開催する。
(想定される効果)
  • 企業、NGO/NPO の双方にとって相手の活動への理解を深め、相手と顔の見える関係を構築する場を提供する。
  • 企業、NGO/NPO の双方に情報発信の場を提供
対策3
企業の本業と(生物多様性を含む)森林保全活動との関係を明確化するガイドライン(説明のためのツール)、森林保全活動に関する優良事例・留意点をまとめた事例集、企業・NGO/NPO 連携ガイドブックなどを作成し、活用のためのセミナーを開催する。
(想定される効果)
  • 森林保全活動に関して、意義や留意点に関連した包括的な情報の提供、理解の促進
  • 企業・NGO/NPO の担当者の認識のギャップの補完、キャパシティの向上
(了)

添付資料

連絡先
環境省地球環境局(旧)環境保全対策課
直通:03−5521−8245
代表:03−3581−3351
課長代行:田中 聡志(内線6740)
課長補佐:服部 浩治(内線6744)

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