報道発表資料

平成21年3月17日
保健対策
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化学物質の環境リスク初期評価(第7次とりまとめ)の結果について

 環境省は、化学物質による環境汚染を通じて人の健康や生態系へ好ましくない影響を与えることを未然に防止するため環境リスク初期評価(第7次とりまとめ)を実施し、その結果について、中央環境審議会環境保健部会化学物質評価専門委員会に報告を行い、とりまとめた。その結果、健康リスク初期評価で1物質が、生態リスク初期評価で3物質が「詳細な評価を行う候補」とされた。
 「詳細な評価を行う候補」とされた物質については、関係部局との連携と分担の下で、詳細な評価の実施を含めた対応を図ることとしている。

1.はじめに

 世界で約10万種、我が国で約5万種流通していると言われる化学物質の中には、人の健康及び生態系に対する有害性を持つものが多数存在しており、適正に取り扱われなければ、環境汚染を通じて人の健康や生態系に好ましくない影響を与えるおそれがある。
 このような悪影響の発生を未然に防止するためには、化学物質の「潜在的に人の健康や生態系に有害な影響を及ぼす可能性のある化学物質が、大気、水質、土壌等の環境媒体を経由して環境の保全上の支障を生じさせるおそれ」(環境リスク)について、科学的な観点から定量的な検討と評価を行い、その結果に基づいて、必要に応じ、環境リスクを低減させるための対策を進めていく必要がある。

2.環境リスク初期評価の概要

(1) 実施主体

 環境省環境保健部環境リスク評価室では、平成9年度から化学物質の環境リスク初期評価に着手し、独立行政法人国立環境研究所環境リスク研究センターの協力を得て、その結果をこれまで6次にわたりとりまとめ、「化学物質の環境リスク評価」(第1巻〜第6巻)として公表している。
 環境リスク初期評価の結果のとりまとめに当たっては、中央環境審議会環境保健部会化学物質評価専門委員会において、評価を頂いている。

(2) 位置付け

 環境リスク初期評価は、多数の化学物質の中から相対的に環境リスクが高い可能性がある物質を、科学的な知見に基づいてスクリーニング(抽出)するための初めのステップである。

環境リスク初期評価による取組の誘導と化学物質に係る情報の創出

(3) 構成

 環境リスク初期評価は、人の健康に対するリスク(健康リスク)評価と生態系に対するリスク(生態リスク)評価から成り立っており、以下の3段階を経て、リスクの判定を行っている。

[1]有害性評価
人の健康及び生態系に対する有害性を特定し、用量(濃度)−反応(影響)関係の整理
[2]ばく露評価
人及び生態系に対する化学物質の環境経由のばく露量の見積もり
[3]リスクの程度の判定
有害性評価とばく露評価の結果を考慮

(4) 対象物質

 環境省内の関係部署や専門家から、各々の施策や調査研究において環境リスク初期評価を行うニーズのある物質(非意図的生成化学物質を含む。)を聴取し、優先度が高いと判断されたものを選定している。

(5) 評価の方法

 化学物質の環境リスク初期評価ガイドラインに基づいて、リスクの判定を行うとともに、リスクの判定ができない場合には、情報収集の必要性に関する総合的な判定を実施している。

(参考1)リスクの判定(例)
健康リスク:
無毒性量等を予測最大ばく露量(又は予測最大ばく露濃度)で除したMOEを求めて判定基準とする。
MOE 判定
10未満 詳細な評価を行う候補と考えられる。
10以上100未満 情報収集に努める必要があると考えられる
100以上 現時点では作業は必要ないと考えられる。
算出不能 現時点ではリスクの判定ができない。
生態リスク:
予測環境中濃度(PEC)と予測無影響濃度(PNEC)との比較により行う。
PEC/PNEC 判定
1以上 詳細な評価を行う候補と考えられる。
0.1以上1未満 情報収集に努める必要があると考えられる
0.1未満 現時点では作業は必要ないと考えられる。
情報不十分 現時点ではリスクの判定はできない。
(参考2)情報収集の必要性に関する総合的な判定
 リスクの判定結果を踏まえつつ、化学物質の製造量・用途、物性などの情報に基づいて、専門的な観点から、更なる情報収集の必要性について総合的な判定等を実施する。

 なお、初期評価を実施する際には、その趣旨に鑑み、環境リスクが高い物質を見逃してしまうことのないよう、有害性評価においては複数の種について毒性データが利用可能な場合には感受性がより高い種のデータを利用する、ばく露評価においては原則として検出最大濃度を利用するなど、安全側に立脚した取り扱いを行っている。

 また、このような趣旨を踏まえ、今回の環境リスク初期評価の実施に当たり、「化学物質の環境リスク初期評価ガイドライン」のうち以下の点を充実させている。

経口ばく露量(飲料水等)の算出において、地下水より公共用水域でより高濃度の測定データがある場合は、公共用水域の測定データも、ばく露量の算出に使用できることとした。
リスク判定を踏まえた提言等を検討するため、特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律(化管法)に基づき事業者から提出される届出排出量データをもとに、モデル等を用いて、大気濃度及び公共用水域濃度を推定することとした。

3.環境リスク初期評価(第7次とりまとめ)の結果の概要

(1) 対象物質

 今回の第7次とりまとめにおいては、健康リスクと生態リスクの双方を対象した環境リスク初期評価を23物質、生態リスク初期評価を10物質、それぞれ実施し、とりまとめた。

(2) 結果

[1]環境リスク初期評価(健康リスクと生態リスクの双方を対象)
 対象とした23物質の環境リスク初期評価の結果を、今後の対応の観点から整理をすると、以下のとおりとなる。
 今回の第7次とりまとめにより、これまでに160物質の環境リスク初期評価がとりまとめられたことになる。
健康リスク初期評価 生態リスク初期評価
A.詳細な評価を行う候補 【1物質】
1,2,4-トリメチルベンゼン
【0物質】
B.
関連情報の収集が必要
B1
リスクはAより低いと考えられるが、引き続き、関連情報の収集が必要
【3物質】
ジブロモクロロメタン、1,2,3-トリクロロプロパン、ブロモジクロロメタン
【2物質】
ジブロモクロロメタン、ピレン
B2
リスクの判定はできないが、総合的に考えて、関連情報の収集が必要
【2物質】
 アクリル酸ブチル、1,3,5-トリメチルベンゼン
【2物質】
 1,2,4-トリメチルベンゼン、1,3,5-トリメチルベンゼン
C.
現時点では更なる作業の必要性は低い
【17物質】
アクリル酸2-ヒドロキシエチル、アクリル酸メチル、3,3'-ジクロロ-4,4'-ジアミノジフェニルメタン、2,3-ジメチルアニリン、2,4-ジメチルアニリン、2,5-ジメチルアニリン、2,6-ジメチルアニリン、3,4-ジメチルアニリン、3,5-ジメチルアニリン、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフラン、1,3,5-トリクロロベンゼン、p-ニトロトルエン、ピレン、フタル酸ジアリルエステル、4,4'-メチレンジアニリン、o-メトキシフェノール
【18物質】
アクリル酸2-ヒドロキシエチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸メチル、3,3'-ジクロロ-4,4'-ジアミノジフェニルメタン、2,3-ジメチルアニリン、2,4-ジメチルアニリン、2,6-ジメチルアニリン、3,4-ジメチルアニリン、3,5-ジメチルアニリン、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフラン、1,2,3-トリクロロプロパン、1,3,5-トリクロロベンゼン、p-ニトロトルエン、フタル酸ジアリルエステル、ブロモジクロロメタン、4,4'-メチレンジアニリン、o-メトキシフェノール
注)
2,5-ジメチルアニリンについては、生態リスク初期評価は未実施。
ガイドラインに従い算出されたMOEやPEC/PNEC比ではリスクの判定は出来ないとなったが、諸データから総合的に判断して、現時点では更なる作業の必要性は低いと考えられる。

(3) 追加的に実施した生態リスク初期評価の結果

 対象とした10物質の生態リスク初期評価結果を、今後の対応の観点から整理すると、以下のとおりとなる。
 今回の第7次とりまとめにより、上記環境リスク初期評価の160物質に加え、これまでに90物質の生態リスク初期評価がとりまとめられたことになる。

A.詳細な評価を行う候補 【3物質】
5-クロロ-2-(2',4'-ジクロロフェノキシ)フェノール、1−デシルアルコール、ポリ(オキシエチレン)=ノニルフェニルエーテル
B.
関連情報の収集が必要
B1
リスクはAより低いと考えられるが、引き続き、関連情報の収集が必要
【2物質】
1,2,3-トリクロロベンゼン、1-ノナノール
B2
リスクの判定はできないが、総合的に考えて、関連情報の収集が必要
【0物質】
C.
現時点では更なる作業の必要性は低い
【5物質】
アセナフテン、4-n-オクチルフェノール、ジビニルベンゼン、n-ブチルベンゼン、4-n-ペンチルフェノール

(4)留意事項

 今回の結果から直ちに環境リスクの抑制が必要であると判断されるわけではない。

4.今後の対応

(1) 結果の公表

 環境リスク初期評価の結果は、「化学物質の環境リスク初期評価:第7巻」としてとりまとめるとともに、インターネット上で公表する(下記アドレス参照)。
http://www.env.go.jp/chemi/risk/index.html

(2) 関係部局等の取組の誘導

 「詳細な評価を行う候補」とされた化学物質については、関係部局、自治体等へ情報提供を行い、緊密な連携を図ることにより、必要な取組(例:詳細なリスク評価の実施、環境調査の実施、より詳細な毒性情報の収集等)の誘導を図るとともに、「関連情報の収集が必要」とされた化学物質については、個々の評価の内容を踏まえて関係部局との連携等を確保し、環境中の存在状況や、有害性に係る知見などの充実を図るものとする。
 具体的には、以下のような取組の誘導等を行っていく。
健康リスク初期評価の結果、「詳細な評価を行う候補」とされた1物質については、室内空気の吸入ばく露によるリスクが高い可能性があるため、本評価結果を関係機関に連絡し、その対応を見守ることとする。なお、一般環境大気からの吸入ばく露については、関係部局との連携の下で引き続き情報収集を進めることとする。
生態リスク初期評価の結果、「詳細な評価を行う候補」とされた3物質については、関係部局との連携と分担の下で、生態毒性及び発生源や環境中の存在状況等に関する知見を充実させつつ、生態リスクのより詳細な評価を優先的に進める対象物質とすることの検討(初期評価により得られた知見を、関係部局による水生生物の保全のための水質目標の設定の必要性の検討に反映等)。

(3) 科学的知見の活用の促進

 環境リスク初期評価により得られた科学的知見を、一般消費者が日常生活において、企業が経済活動において、より容易に活用することができるよう、物質ごとに初期評価の結果を要約したプロファイルを作成し、インターネット上で公表する。
 このほか、既存化学物質の点検、化学品の分類及び表示に関する世界調和システム(GHS)の導入等を含むさまざまな場面で、初期評価の結果の活用を進める。

(4) 再度の環境リスク初期評価の実施

 「関連情報の収集が必要」とされた物質については、関連情報を収集の上、適宜、環境リスク初期評価の対象物質とすることについて検討する。

(5)今後の課題

 環境リスク初期評価に必要となる物性情報の集積を進めるとともに、地方自治体と連携した地域の視点を加味したリスク評価の実施について検討する。
 OECD等における試験法及び評価手法に関する検討状況を適切に把握し、新たな知見等を環境リスク初期評価に速やかに反映させる。
 既に初期評価を行った物質であっても、その後内外で毒性データやばく露データの更新や評価手法の見直し等が行われたものについては、再評価の対象物質とすることを検討する。

添付資料

連絡先
環境省総合環境政策局環境保健部環境安全課環境リスク評価室
代表 03−3581−3351
室長 塚本 直也(内線6340)
室長補佐 筒井 誠二(内線6341)
室長補佐 長谷川 学(内線6343)

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