東京国際空港再拡張事業に係る環境影響評価書に対する環境大臣意見
本事業は、東京国際空港の発着能力を大幅に増強するために滑走路の新設等を行おうとするものであり、多摩川河口域において大規模な構造物を建設することによる当該河口域や東京湾等への影響、離着陸機及び空港利用者の増加に伴う影響等、事業の実施が周辺環境へ及ぼす影響をできる限り回避・低減する必要がある。
このため、事業の実施にあたっては、下記の措置を講じる必要がある。
1.水域の水質、生態系等への影響
- (1)
- 本事業の実施が多摩川河口域及び東京湾の環境に及ぼす影響については、評価書で用いられたモデルにより計算された流況、水質等に係る影響の程度、影響の及ぶ範囲等の予測結果は不確実性を伴っており、また、これらの結果等を踏まえて行われた動植物及び生態系に係る予測結果についても不確実性を伴っていると考えられる。
このため、学識経験者や関係自治体の意見を聴取しつつ、今後、事業の進捗状況に応じて水質、底質、地形、水生生物、鳥類等の調査を行うとともに、その結果を十分に解析し、必要に応じ適切な措置を講じること。また、これらの内容について公表すること。
- (2)
- (1)の調査等に当たっては、調査項目それぞれについて、工事着手前または供用前の状況を十分に把握しておくとともに、工事着手後または供用後における状況の変化について整理を行い、変化が見られた場合には、事業による影響の可能性について検討を行うこと。また、その旨を評価書に記載すること。
- (3)
- (1)の調査を行うに当たっては、以下の点を考慮すること。
- [1]
- 多摩川河口域については、さまざまな水生生物の生育・生息場所であるだけでなく、シギ・チドリ類の重要な渡来地でもあることから、河口干潟を含め十分な調査を行うこと。
- [2]
- 調査地点については、予測された影響の程度を含めた予測の不確実性を勘案した上で、事業実施区域周辺にとどまらず、東京湾全体も視野に入れて、可能な限り多く、かつ、広範囲において適切に設定すること。また、東京湾において周辺自治体等が実施している調査の結果をできる限り活用し、効果的かつ効率的に調査を行うこと。
- [3]
- 本事業による生態系への影響を把握するため、生態系に係る環境影響評価において選定した注目種等から重要な種を選定して調査を行うこと。
- (4)
- 大規模な桟橋の建設による桟橋下の光環境の変化に伴う海域への影響については、十分な知見がなく、水生生物や生態系への影響が生ずるおそれがあることから、当該影響について、可能な限り予測を行うとともに環境保全措置を検討し、その結果を評価書に記載すること。
また、今後、水生生物等に関する調査を実施して影響の把握に努め、必要に応じ適切な措置を講じること。
- (5)
- 東京湾再生推進会議が策定した「東京湾再生のための行動計画」に基づき、関係機関が東京湾の環境改善のための施策に取り組んでいることから、本事業の実施に伴う環境保全措置等については、本事業実施区域外における措置も含め幅広く検討するとともに、東京湾の環境改善に資するよう、関係機関と連携して実施すること。
2.航空機騒音について
- (1)
- 飛行高度の引き上げや海上からの着陸ルートの設定等により、航空機騒音による影響の低減が図られているが、離着陸回数が大幅に増加することから、低騒音型機の導入の促進、飛行経路の遵守の徹底等に加え、管制技術の向上による飛行経路の改善を検討するなど、航空機騒音による影響のより一層の低減に努めること。
- (2)
- 今後、環境影響評価の前提となった飛行経路、便数等の変更があり、航空機騒音による影響が拡大することが懸念される場合には、必要に応じ、航空機騒音の予測を行い所要の措置を講じること。また、これらの結果について公表すること。
3.山砂の採取・運搬について
山砂使用量の低減の観点から、埋立工事の実施に当たっては、埋立用資材としてできる限り建設発生土等の活用に努めること。また、埋立に用いる山砂を運搬する車両等による大気質、騒音等に係る影響が回避・低減されるよう、適切な措置を講じること。
4.温室効果ガスについて
国自らが温室効果ガスの排出削減のための措置を率先して実施する役割を有することを踏まえ、今後、東京国際空港の運用に伴う温室効果ガスの排出削減に係る計画を早期に策定し、対策の推進に努めること。また、その旨を評価書に記載すること。