報道発表資料本文


平成16年度ダイオキシン類の蓄積・ばく露状況及び臭素系ダイオキシン類の調査結果について

I.ダイオキシン類の人への蓄積量調査

1.調査方法

 「平成16年度ダイオキシン類の人への蓄積量調査」では、我が国の一般環境におけるダイオキシン類の人体における蓄積状況を把握するために、全国5地域15地区の対象者に対し、血液中のダイオキシン類の濃度を測定するとともに、食事調査を実施した(以下、「全国調査」という)。
 また、ダイオキシン類の人体における蓄積状況に関する経年変化を把握するために、平成10年度より環境省が血液中のダイオキシン類の調査を行った大阪府能勢町地域、埼玉県地域(所沢市、狭山市、川越市等)の対象者に対し、血液中のダイオキシン類濃度を測定した(以下、「継続調査」という)。

(1) 全国調査
  • 血液測定(人体における蓄積状況について)
     全国5地域(北海道東北、関東甲信越、東海北陸近畿、中国四国、九州沖縄)の都市地区、農村地区、漁村地区の対象者264名に対して血液中のダイオキシン類濃度を測定した。
  • 食事測定(蓄積量との関連について)
     人がダイオキシン類を摂取する経路のうち、最も寄与する割合が高いとされる食事とダイオキシン類の蓄積量との関係を明らかにするため、血液測定の対象者のうち75名に対して食事中ダイオキシン類濃度を測定し、食事経由のダイオキシン類摂取量を計算した。
(2) 継続調査
  • 血液測定(経年変化について)
     大阪府能勢町地域と埼玉県地域の51名に対して血液測定を行い、過去の測定結果と比較した。

2.調査結果

(1) 全国調査
○血液測定について
  • 血液中ダイオキシン類濃度については、対象者全員の平均値は24pg-TEQ/g-fat、中央値は20pg-TEQ/g-fatであり、範囲は1.1〜90pg-TEQ/g-fatであった。
  • 5地域の平均値の範囲は21〜27pg-TEQ/g-fat、3地区の平均値の範囲は21〜28pg-TEQ/g-fatであった。また濃度レベルは、これまで我が国で行われた既存調査とほぼ同じであった。
  • 加齢により血液中ダイオキシン類濃度が増加する傾向が認められた。
○食事測定について
  • 調査期間中の食事経由のダイオキシン類摂取量については、対象者全員の平均値は1.0pg-TEQ/kg体重/日、中央値は0.78pg-TEQ/kg体重/日であり、範囲は0.17〜4.4pg-TEQ/kg体重/日であった。
  • 5地域の平均値の範囲は0.86〜1.1pg-TEQ/kg体重/日、3地区の平均値はすべて1.0pg-TEQ/kg体重/日であった。
  • 血液中ダイオキシン類濃度と調査期間中の食事経由のダイオキシン類摂取量との間に関連が認められた。
(2) 継続調査
 大阪府能勢町地域及び埼玉県地域の対象者について、経年変化を見た場合、全体的にはほぼ同じレベルの濃度で推移していた。

II.野生生物のダイオキシン類の蓄積状況調査

1.調査方法

 野生生物におけるダイオキシン類の蓄積状況を把握するため、平成15年度に引き続き調査を実施した。平成16年度は、鳥類(カワウ、ハシブトガラス)、海棲哺乳類(スナメリ)及び陸棲哺乳類(アカネズミ)について、ダイオキシン類の蓄積状況を測定した。

2.調査結果

○アカネズミにおける蓄積状況について
 昨年度調査において高い集積を示したアカネズミの肝臓について、サンプル数を増やし調査した結果、昨年と同様、アカネズミの肝臓中の蓄積濃度(湿重量あたり)は体躯に比べて高い集積を示した。
○蓄積濃度の経年変化の傾向について
 本年度は全般的に蓄積濃度は低く、全体的に濃度は低下傾向にあると考えられた。

III.人におけるばく露の実態調査

1.調査方法

 ダイオキシン類のばく露状況を把握するために、環境省等がとりまとめた平成15年度におけるダイオキシン類に係る調査結果を解析し、個人総ばく露量の推計等を行った。

2.調査結果

(1) ばく露の推定に用いた調査について
[1] 環境中からのばく露について
 環境中(大気及び土壌)からのばく露については、ダイオキシン類に係る環境調査(環境省)の結果を用いて推計を行った。平成15年度調査の結果は次のとおりであった。
ア. 大気:0.0056〜0.50 pg-TEQ/m3(n=756、算術平均値0.064 pg-TEQ/m3
イ. 土壌:0〜360 pg-TEQ/g(n=2128、算術平均値2.6 pg-TEQ/g)
[2] 食事からのばく露について
 食事からのばく露については、食品からのダイオキシン類一日摂取量調査(トータルダイエットスタディー:厚生労働省)の結果を用いて推計を行った。平成15年度調査の結果、推計ばく露量は0.58〜3.05 pg-TEQ/kg/day(n=33、算術平均値1.33 pg-TEQ/kg/day)であった。
(2) 個人総ばく露量の推計
 ダイオキシン類によるばく露の主な経路を[1]食事、[2]大気、[3]土壌に区分し、各媒体の算術平均値を用いて各経路別の平均的なばく露量を推計したところ、[1]食事経由は1.33 pg-TEQ/kg/day、[2]大気経由は0.019 pg-TEQ/kg/day、[3]土壌経由は0.0052 pg-TEQ/kg/dayであり、個人総ばく露量は1.35 pg-TEQ/kg/dayとなった。食事からのばく露量は前年度よりわずかに減少していたが、総ばく露量に占める割合は9割以上であった。
 本調査の平成11年度からの推計ばく露量の推移は以下のとおり。


(3) 統計的解析による個人総ばく露量の推計
 環境媒体中の濃度及び食事からのばく露量について幾何平均値及びモンテカルロシミュレーションによりダイオキシン類の個人総ばく露量を推計した。その結果、幾何平均値による推計では1.24 pg-TEQ/kg/day、モンテカルロシミュレーションによる推計では1.45 pg-TEQ/kg/dayであった。

IV.臭素系ダイオキシン類に関する調査

1.調査方法

 臭素系ダイオキシン類についての調査研究を推進するため、平成16年度に臭素系ダイオキシン類の全国的な存在状況に関する一般環境調査等を行った。

(1) 調査地域
 平成15年度までの調査と異なる全国4地域(I地域〜L地域)、地域毎各3地点 合計12地点を設定
(2) 調査媒体
 大気、降下ばいじん、土壌、地下水、水質、底質、水生生物(魚介類)、野 生生物(鳥類、ほ乳類)及び食事試料及びハウスダストの10媒体を採取
(3) 測定対象
 臭素系ダイオキシン類(ポリ臭素化ダイオキシン類及びモノ臭素ポリ塩素 化ダイオキシン類)等

2.調査結果

(1) 地域別の検出状況
 臭素系ダイオキシン類(2,3,7,8-異性体)は、I地域では地下水及び水生生物を除く試料から、J地域では地下水、水生生物及び食事試料を除く試料から検出された。K地域では大気、土壌、水質、底質及びハウスダストから、L地域では大気、土壌、水質、食事試料及びハウスダストから検出された。
(2) 媒体別の検出状況
 臭素系ダイオキシン類(2,3,7,8-異性体)は、地下水及び水生生物以外の媒体(大気、降下ばいじん、土壌、水質、底質、野生生物、食事試料及びハウスダスト)から検出された。
表 臭素系ダイオキシン類(2,3,7,8-異性体)の検出状況
大気 降下
ばいじん
土壌 地下水 水質 底質 水生
生物
野生
生物
食事
試料
ハウス
ダスト
I地域 ○△ × × ○△
J地域 ○△ × ○△ × ×
K地域 × × ○△ × × ×
L地域 × × × × ×
その他 ×
凡例
○ モノ臭素ポリ塩素化ダイオキシン類が検出された。
△ ポリ臭素化ダイオキシン類が検出された。
× どちらも検出されなかった。
(参考)
  1. 「臭素系ダイオキシン類」とは、PCDDs(ポリ塩素化ジベンゾ−パラ−ジオキシン)又はPCDFs(ポリ塩素化ジベンゾフラン)の塩素が1つ以上臭素に置換したものを指す。
  2. 塩素が1つだけ臭素に置換したものを「モノ臭素ポリ塩素化ダイオキシン類」、全ての塩素が臭素に置換したものを「ポリ臭素化ダイオキシン類」という。
 なお、平成16年度ダイオキシン類の蓄積・ばく露状況及び臭素系ダイオキシン類の調査結果について(詳細版)は環境省ホームページにて公開する。



報道発表本文に戻る