(別添2)

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瀬戸内海環境保全基本計画の変更に関する
意見の募集結果について

 

 瀬戸内海環境保全基本計画の変更(部会報告案)について、平成12年10月6日より11月2日まで、広く国民の意見の募集(パブリックコメント手続き)を行ったところであるが、寄せられた意見の概要及びそれに対する考え方については以下のとおりである。

[意見の提出状況]
封書によるもの   4通
FAXによるもの   5通
電子メールによるもの   3通


  12通

意見ののべ数

  67件

 


1.基本計画変更案以外の部分(審議会の議論の経緯等の記述)に係る意見について

意見の概要意見に対する考え方
海砂利の採取について、「代替材の確保に限界がある点をも踏まえ」を削除又は「代替材の確保及び開発状況をも踏まえ」とする。海砂利の代替材の確保が地域事情等により困難な状況があるとともに、人工代替材等の研究開発にも様々な問題点がある現状を踏まえたより明確な文章とするため、「代替材の確保及び開発状況をも踏まえ」と修文します。
「海砂利への依存の低減」、「埋立ての抑制」とあるが、今日では余りに遅きに失する表現ではないか。もっと厳しい制限(厳禁に近い表現を用いた)を加えるべき。当審議会では、現地ヒアリング、関係機関ヒアリングなどを行い、多方面からの意見を踏まえ総合的に審議を行った上で、海砂利の採取に関しては「海砂利に依存しないことを目指しつつ、(中略)海砂利への依存の低減を図ることが必要である。」と、また、埋立てに関しては厳に埋立ての抑制を図り環境への影響の回避・低減に努めることが必要である。」との基本認識を取りまとめたものです。また、埋め立ての要請が依然として根強い状況ではありますが、「自然環境は悪化する方向であることから、こうした状況に歯止めをかける必要がある。」と認識しています。
埋立ての要請が依然として根強いと位置付けるべきではなく、そのような要請により瀬戸内海を破壊することは今後許されないことを明記すべき。また、当面埋立ては凍結し、総合的科学的に調査し、その上で全面的に埋立てを禁止するか、厳しい条件をつけ原則禁止とすべきか慎重に考慮すべき。その際十分に関係住民、専門家の意見を尊重すべき。
海を取巻く陸域の環境浄化があって初めて瀬戸内海の環境は浄化されるはずであり、何らかの言及があって然るべき。この部分は、当審議会で特に議論の多くあった、埋立てと海砂利採取について記述しています。なお、陸域における浄化のための施策は、「第3目標達成のための基本的な施策1水質汚濁の防止」において、陸域における汚濁負荷量削減対策について、「7健全な水循環機能の維持・回復」において、「森林や農地の適切な維持管理、河川や湖沼等における自然浄化能力の維持・回復、地下水の涵養に努める」等、その方向を記述しています。

 

2.基本計画変更案に係る意見について

第1 序説

意見の概要意見に対する考え方
1 計画策定の意義 
橋がかかっていない多くの島々では日常生活に海上交通を利用せざるをえないが、貨物船の超過密な航行から必ずしも安全とは言いがたく、生活環境の安全性の確保が必要不可欠である。船舶の航行に伴う安全確保については、重要な事項ではありますが、本基本計画は、水質の保全、自然景観の保全等に関しての計画ですので、その安全性の確保については対象としていません。
2 計画の性格 
生活環境の安全性の確保も含めてほしい。同上
3 計画の範囲 
「これと一体をなす陸域」の範囲をなるべく広く解釈してほしい。最低限、埋立地等の工場・精錬所・港湾施設等を含めてほしい。できれば、汚濁物質流入源となり得る流入河川や用排水路に対する規制措置を必要とするのではないか。ここでの「これと一体をなす陸域」は、自然景観の保全の範囲についての記述です。御指摘の水質保全に関しては、瀬戸内海環境保全特別措置法で、汚水を排出する工場等の特定施設に対する規制を定めるなど、陸域についても対象としています。

第2 計画の目標

意見の概要意見に対する考え方
1 水質保全等に関する目標 
(1)〜(5)全般について、世界においても比類のない景勝地、貴重な漁業資源の宝庫という瀬戸内海の位置付けから不充分な目標であり、昭和30年代前半の水質、底質などという具体的で目的にみあう規制や改善策を考えるべき。水質環境基準等の設定等の目標については、現時点においても適切と考えており、特に新たな目標を設定する必要はないと考えます。
(1)について、水質環境基準が未達成の海域については、達成目標年次を明示すべき。環境基準の達成期間については、人の健康の保護に関する環境基準においては、直ちに達成され、維持されるように努めることとされています。また、生活環境の保全に関する環境基準においては、各公共用水域ごとに、利水目的等に応じて定めることとされており、具体的には、環境基準を定める告示の中で定められていることから、達成目標年次を記述する必要はないと考えます。
(2)について、「赤潮」の後に「及び貧酸素水塊」を、「赤潮発生」の後に「貧酸素水塊形成」を、「その発生」の後に「及び形成」を追加する。貧酸素水塊については、瀬戸内海においては赤潮と比べてその発生状況、漁業被害等の知見が現状では不十分であるので、「水質保全等の目標」においては、原案どおりが適当です。しかし、その知見の集積に努めることは必要と考えられますので、「第3目標達成のための基本的な施策13環境保全に関する調査研究及び技術の開発等」に「赤潮の発生及び貧酸素水塊の形成のメカニズムの解明並びにそれらの防除技術の向上、」と追加します。
(3)について、底質について、「水銀、PCB等」を「水銀・カドミウムその他の重金属、PCB・DDT・BHC等の有機化学製品」とする。また、「生活環境」の前に「棲息魚類が斃死し、人の」を加える。現在、底質の除去基準が定められているのは、水銀及びPCBです。本計画においては、御指摘の物質について必要に応じその基準が定められることも想定し、「水銀、PCB等」と記述したものです。また、生活環境の保全に関する水質環境基準は水産生物の生息環境を考慮して設定されていることから、「棲息魚類の斃死」の観点は「生活環境への悪影響」との記述に含まれると考えます。以上より、原案どおりが適当です。
(3)について、汚染された底質は汚染が拡大しないように配慮しつつ除去するという目標を掲げるべき。魚介類に汚染が濃縮し、人や遺伝子に影響があるのではないかとの懸念があることから、魚介類に対する汚染を防止することを加える。またダイオキシンの規制についても魚介類に対する汚染を防止し、安全性を確保されたい。汚染された底質の除去については、「汚染された底質が存在しない」という目標に含まれると考えます。水銀、PCBの環境基準については、生物濃縮を考慮した上で設定されています。また、ダイオキシン類については、水質環境基準は設定されていますが、底質環境基準については、底質から魚介類への移行・蓄積の機構等の知見が不十分であるため、現在把握のための調査研究が実施されています。以上より原案どおりが適当です。
(4)について、都会にある藻場・干潟については特に保全に努力するように明記すべき。また、これまで失われた藻場・干潟などについては、必要に応じて回復ではなく、遊休地や低利用地は環境復元に努めることを明記すべき。瀬戸内海においては各地で藻場、干潟が消失していることから、その保全については、瀬戸内海全域での課題と考えます。また、環境の回復は地域の実情を踏まえて検討すべきと考えますので、原案どおりが適当です。
(4)について、砂質浅堆は古来より魚類の産卵の場になっている。「藻場」の次に「砂質浅堆」を加える。砂質浅堆については、その重要性を認識しており、「藻場、干潟等」の「等」に含まれると考えます。
(4)、(5)について、藻場及び干潟等と自然海岸について「それが現状よりもできるだけ減少することのないよう・・・」とあるが、これではあまりにも消極的な目標設定である。回復させる目標を積極的に示すこと(○○年当時に戻すなど)が重要である。回復の目標については、地域の実情を踏まえて検討すべきと考えますので、原案どおりが適当です。
(5)について、都会の住民も田舎のものも海に親しむという切実な要求があり、埋立地や遊休地、堤防なども安全に配慮しつつ、立ち入るための施設を整備し、また、立ち入ることを尊重すべき。海とのふれあいについては重要な観点であり、「第3目標達成のための基本的な施策15環境教育・環境学習の推進」において、「海とのふれあいを確保し、その健全な利用を促進する施設の整備に努める」と記述しています。
(5)について、自然海浜等についての記述に「また可能な限りその回復につとめること。」を追加する。自然海岸の回復の観点については、「2自然景観の保全に関する目標(3)」において、「これまでに失われた自然海岸については、必要に応じ、その回復のための措置が講ぜられていること」とその方向を記述しています。
2 自然景観の保全に関する目標 
無秩序な高層ビルや工作物が景観を破壊していることから、それらの規制についてもふれるべき。工作物等の規制については、「第3目標達成のための基本的な施策2自然景観の保全(5)その他の措置」において、「海面及び沿岸部等において、施設を設置する場合においても、景観の保全について十分配慮する」とその方向を記述しています。
(2)について、海辺の草木の緑は「魚付林」としても木陰の水面が重要な魚類の密集の場になっている。水産資源量回復のための重要な存在であることを忘れないで欲しい。ここでは、自然景観の保全に関する目標について記述しています。なお、御指摘のように海辺の草木の緑の保全は、「魚付林」として水産資源量回復の上でも重要と考えられます。
(3)について、現在目標とすべきは可能な限り自然海岸を復元することである。自然海岸の回復の目標については、地域の実情を踏まえて検討すべきと考えますので、「必要に応じ」との原案どおりが適当です。
(4)について、海岸に漂着したゴミ類だけではなく、大阪湾の海底等に沈殿しているゴミ類の除去も実施すべき。自然景観の保全に関する目標の記述ですので、「汚物、油等が海面に浮遊し、あるいは海浜に漂着し、又は投棄されていないこと。」としています。なお、「第3目標達成のための基本的な施策11海底及び河床の汚泥の除去等」において、海底に堆積し生活環境に影響を及ぼす底質の除去について記述しています。
(5)について、リゾート施設の建設により文化財の価値が失われないような規制措置が必要である。文化財に関する施策については、「第3目標達成のための基本的な施策2自然景観の保全(3)史跡、名勝、天然記念物の保全」において、「管理等に係る制度の適正な運用等によりできるだけ良好な状態で保全するよう努める」とその方向を記述しています。

第3 目標達成のための基本的な施策

意見の概要意見に対する考え方
1 水質汚濁の防止

(1)水質総量規制制度等の実施
 
窒素、燐だけでなく水銀、カドミウム等の重金属、PCB、BHC、DDT等の有機化学製品の汚濁負荷量の急速な削減対策を実施すべき。総量規制制度は、生活環境の保全に関する環境基準を確保するための制度であり、水銀、カドミウム等は対象外です。なお、水銀、カドミウム、PCBについては、水質汚濁防止法に基づく排水基準により適正に規制されており、またBHC、DDTを有効成分とする農薬については、販売が禁止されています。
(イ)について、産業排水については、密かに高濃度の廃液を工場外に投棄する業者が後を絶たない現状にかんがみ、査察の強化が必要ではないか。産業排水については、水質汚濁防止法に基づき規制及び監視されることとなっており、必要に応じ、立入検査も行われることとされています。
(エ)について、「自然環境が有する水質浄化機能」を「藻場・干潟・砂浜等の自然環境が有する水質浄化機能」とする。「自然環境」には海のほか、河川及び湖沼も含まれますので、原案どおりが適当です。
(2)有害化学物質問題への対応 
表題に「重金属」を加える。また、本文の末尾に「またPCB・BHC・DDT等の残存量の急速な削減並びに水銀・カドミウム等の重金属の削減にも努力する」を加える。達成すべき水質環境基準には、重金属が含まれ、また、問題への対応を明確にする観点から、御意見の趣旨を踏まえ、表題については「有害化学物質等の規制及び把握等」と修文します。現在、PCB、水銀、カドミウム等については、水質汚濁防止法に基づく排水基準等により適正に規制されており、また、BHC、DDTを有効成分とする農薬については、販売の禁止により対応されており、原案どおりが適当です。
有害化学物質について、文末に「排出量の低減に努める」を加える。有害性のある化学物質については、排出量の把握、管理を行い、環境の保全上の支障を未然に防止するというPRTR法の趣旨に基づき記述しているものであり、原案どおりが適当です。
(3)油等による汚染の防止 
油等の汚染の防止に関して、薬剤の使用については除油効果だけでなく、水産生物に与える影響にも留意してほしい。水産生物に与える影響の留意については、「環境への影響の少ない新たな油防除技術の調査研究を推進」との記述で対応しています。
瀬戸内海全域にわたる(島嶼部を含めた)潮間帯の諸生物に関するデータバンクを作るための緊急調査を実施してほしい。生物に関するデータの蓄積については、「平常時の自然環境等の観測データの蓄積に努める」との記述で対応しています。
(4)その他の措置 
「大阪湾奥部の水質保全に十分留意するように努める」ことが盛り込まれたことは、大阪湾の水環境の重大性から考えて適切である。 
2 自然景観の保全

(2)緑地等の保全
 
沿岸部において魚付林の保全と回復を重視してほしい。ここでは、自然景観の保全に関する施策について記述しています。なお、御指摘のように、沿岸域の森林の保全は、水産資源量回復の上でも重要と考えられ、その保全等については、「保安林の整備(中略)により健全な森林の保護育成に努める」等と記述しています。
(4)散乱ごみ、油の除去 
海底に投棄されるゴミに対しての取締りを強化してほしい。また、海底ゴミを漁業者が引き揚げた場合の処理を誰がどのようにするについて、何も規定はなく、法律等の整備を進めるとともに、そのような問題が発生している現実を広め、多様な立場の人を巻き込んだ議論を進め、対策について考えるべき。海底に堆積するごみに関する取締りについては、「海面、海浜における投棄に対する取締りの強化」との記述で対応しています。また、漁業者が引き揚げたごみの処理については、廃棄物処理行政の中で個別の事例に即して適切な対応が図られるべきものと考えます。
ゴミについては浮遊または漂着するもののほか、海底に沈殿しているものの引き揚げも必要である。「第二計画の目標2自然景観の保全に関する目標(4)」の考え方と同様。
「瀬戸内海における発泡スチロールの浮遊物の使用を禁止するとともに、ごみ発生を抑制するための生産活動を支援する、ごみ組成調査などにより、漂着ごみの実態を把握し、地域特性に応じた対策を講じる」を追加する。御意見の趣旨を踏まえ、廃プラスチックに関する記述を「廃プラスチック等の浮遊、漂着ごみについては、汚染の実態把握及び防止対策に努めるものとする。」と修文します。
(5)その他の措置 
残存する景観の保全は勿論のことであるが、景観の回復を最重点課題にしていただきたい。自然海岸の回復については、地域の実情を踏まえることが重要であり、「これまでに失われた自然海岸については、必要に応じ、その回復のための措置を講ずるよう努めるものとする。」との記述で対応しています。
「瀬戸内海各地に点在する(中略)人文的な景観についても適切に保全されるよう配慮するものとする。」とあるが、計画策定への市民の意見はこれまでの自治組織の意見しか取り入れられず、市民の意見が十分反映されていない。瀬戸内海に関しては環境庁が強制力、実行力のある規制を持つべきで、環境保全、景観保全という視点での瀬戸内海を守る仕組みを作るべき。環境保全に関し、住民の参加は重要な観点であり、「第三目標達成のための基本的な施策14環境保全思想の普及及び住民参加の推進」において「行政の施策策定への参加等の観点から、住民参加の推進に努めるものとする。」とその方向を記述しています。瀬戸内海の環境保全については、瀬戸内海環境保全特別措置法、水質汚濁防止法、自然公園法等の適正な運用により対応していくこととされています。
3 浅海域の保全等

(1)藻場及び干潟等の保全等
 
「砂質浅堆」を加える。ここも産卵の場であり、ここで海砂を採取するから問題である。「第二計画の目標1水質保全等に関する目標(4)」の考え方と同様、原案どおりが適当です。海砂利採取については、「4海砂利採取に当たっての環境保全に対する配慮」において、「環境等への影響が相対的に小さい海域での最小限の採取に留める」と記述し、その対応の方向を明確にしています。
4 海砂利採取に当たっての環境保全に対する配慮 
「海砂利の採取によって底質の悪化が認められる場合は、専門家の意見を聞いて好適な状態への保全に努力する」を加える。海砂利の採取により礫化した底質等を改善するのは困難と考えられることから、「採取が当面避けられない府県にあっては、(中略)環境等への影響が相対的に小さい海域での最小限の採取に留めるものとする。」と未然防止の考え方を記述しています。
経済活動を阻害しない範囲で瀬戸内海を保全しようとする姿勢には賛成できない。各県の判断に任せる現状を改め、禁止もしくは原則禁止、あるいは例えば3年に限り最小限の採取を認め、後は採取禁止とすべき。当審議会では、現地ヒアリング、関係機関ヒアリングなどを行い、多方面からの意見を踏まえ総合的に審議を行った上で、「海砂利に依存しないことを目指しつつ、海砂利への依存の低減を図る」との基本認識に立ち、「採取が当面避けられない府県にあっては、(中略)環境等への影響が相対的に小さい海域での最小限の採取に留めるものとする。」との考え方をまとめたものです。
海砂利採取の問題が、漸く取り上げられたことはうれしい。問題は代替骨材の入手方法であり、中国長江の河口の砂の採取、建設廃材中の使用済み骨材の再利用等が考えられるが、いずれも難問を抱えている。しかし、瀬戸内海での採取も既に限界に達しており、今後は禁止しないと水産資源の繁殖が極めて困難となる。同上
香川・岡山県が採取の全面禁止を打ち出していること、過去に採取が行われた海域での海底の環境が復元していないこと、多くの魚介類の水揚げが減少していることから、海砂利の採取は一刻も早く全面禁止とすべき。同上
「環境等への影響が相対的に小さい海域での最小限の採取に留める」について、全面禁止を要求する。また、最低限の要求として時限を設定するようにしてもらいたい。同上
過去採取が行われた海域での海底環境が回復していないことを考慮すると、「全面禁止」を打ち出すべき。同上
まず、海砂利採取の基本的抑制を打ち出すべき。「代替材の確保に伴い自然環境への影響等環境問題発生のおそれがあること等から」は意味が不明瞭。同上また、御指摘の点は、海砂利の主な代替材として考えられる砕砂の生産には、陸域における採石の拡大が必要であり、それに伴い自然環境の改変や景観問題の発生が懸念されることを踏まえ記述したものです。
これまで砕砂は天然砂に混合して用いられているが、その依存が多くなる中で、砕砂を細骨材として全量用いるためには、その表面形状を海砂とほぼ同等に改質処理するシステムが必要である。海砂利の代替材の開発については、「海砂利に代わる骨材等の研究開発を促進する」と記述し、その重要性を明確にしています。
5 埋立てに当たっての環境保全に対する配慮 
「引き続き環境保全に十分配慮する」について、埋立ての全面抑制を要求するが、最低限、「以前にも増して環境保全に十分配慮して埋立ての抑制に努める」と修正されたい。当審議会では、現地ヒアリング、関係機関ヒアリングなどを行い、多方面からの意見を踏まえ総合的に審議を行った上で、「厳に埋立ての抑制を図り環境への影響の回避、低減に努めることが必要」との基本認識に立ち、公有水面埋立法、環境影響評価法、環境影響評価条例の適切な運用とともに、瀬戸内法第13条に基づく「埋立ての基本方針」に沿って環境保全に十分配慮するよう明確に記述したものであり、原案どおりが適当です。
瀬戸内海では既に20m以上の深度にまで埋立てが進行しており、このまま埋立てが進めば瀬戸内海には細い運河しか残らないのではないかという不安さえある。埋立て規制に対して環境庁が毅然たる姿勢を示すことを待望している。同上
「埋立ては厳に抑制」を前面に打ち出すべき。また、「必要に応じ適切な代償措置」の「必要に応じ」を「埋立てがどうしてもやむを得ないときには」とすべき。同上代償措置については、環境への影響の回避、低減の検討を優先し、なお残る影響がある場合に検討するものです。このような趣旨に立って、「必要に応じ適切な代償措置を検討するものとする。」と記述したものであり、原案どおりが適当です。
6 廃棄物の処理施設の整備及び処分地の確保 
域外からの廃棄物の搬入を禁止すべき。瀬戸内海では廃棄物による埋立ては禁止することを明記すべき。廃棄物については、その発生抑制、再使用、再生利用の促進などが図られる循環型社会を構築し、これにより廃棄物の埋立てを抑制することが適切であり、原案どおりが適当です。
瀬戸内海およびその沿岸地域での廃棄物(特に産業廃棄物)の埋立てについては、禁止する記載に改めることが適当。同上
廃棄物の海面処分が、瀬戸内法の理念に照らし合わせて好ましくない行為であることに言及すべき。また他の地域からの廃棄物や建設残土・浚渫土の瀬戸内海地域への持ち込みについて反対する旨の記述が必要。同上
7 健全な水循環機能の維持・回復 
「自然浄化能力の回復に資する人工干潟等の適切な整備」については、開発の免罪符にならないよう留意が必要。人工干潟等の適切な整備については、あくまで、健全な水循環機能の維持・回復の上で必要があることから記述したものであり、開発の代償措置として記述しているものではありません。なお、代償措置については、環境への影響の回避、低減の検討を優先し、なお残る影響がある場合に検討するものです。
表題・本文に「自然浄化機能」を追加し、「海域においては〜陸域においては」までを削除し、「海域と河川の連続性に留意して」を加える。健全な水循環機能という用語は水循環による自然浄化も含めて用いていますので、原案どおりが適当です。海域と河川との連続性については、御意見の趣旨を踏まえ、「健全な水循環機能の維持・回復を図るため、」の次に「海域と陸域の連続性に留意して、」を追加します。
8 失われた良好な環境の回復 
住民や民間団体との連携をうたっているのは賛成であるが、対等の立場で互いに尊重しながら事業を進めることを明記すべき。失われた良好な環境を回復させる施策の展開に限らず、住民等との連携は重要であり、この重要性については、「17広域的な連携の強化等」において、「環境保全のための施策の策定に当たっては、住民や事業者等の幅広い意見を調整し、施策に反映するための適切な仕組みの検討に努めるものとする。」とその方向を記述しています。
9 島しょ部の環境の保全 
他地域からの廃棄物の持ち込みを許さない、環境学習の場として再生を図るなどの点で補足が必要。廃棄物については、その発生抑制、再使用、再生利用の促進などが図られる循環型社会を構築し、これにより廃棄物の埋立てを抑制することが適当であることから、「6廃棄物の処理施設の整備及び処分地の確保」の記述を設けています。また、環境学習の場としての再生に限らず、失われた良好な環境を回復することは重要であり、その回復に関しては「8失われた良好な環境の回復」等に記述しています。以上の観点については、個々の島しょの特性や現状等を踏まえて検討されるべきと考えており、原案どおりが適当です。
11 海底及び河川の汚泥の除去等 
大阪湾中央部の海底に堆積している大量のごみの除去を希望する。また製紙工場が排出したヘドロの除去状況の調査も課題である。生活環境に影響を及ぼす底質については、「所要の調査研究を進めるとともに、必要に応じ、除去等の適切な措置を講ずるよう努めるものとする。」との記述で対応しています。
12 水質等の監視測定 
「また、水質の監視測定に携わる技術者の研修・教育等により、長期間にわたる精度の維持、向上を図る。」を加える。水質の監視測定精度の維持、向上については、重要な観点であり、「監視測定技術の向上等」との記述で対応しています。
13 環境保全に関する調査研究及び技術の開発等 
「貧酸素水塊の形成の解明」、「水質総量規制制度等の実施が瀬戸内海の水質改善に及ぼす効果を判定する手法の開発及び水質改善メカニズム」の解明、「微量有害化学物質の影響評価」に関する調査研究を追加する。貧酸素水塊については、瀬戸内海の一部の海域で季節的にその形成が見られ、その形成メカニズムの調査研究及び防除技術が重要と考えられますので、「赤潮の発生及び貧酸素水塊の形成のメカニズムの解明並びにそれらの防除技術の向上、」と修文します。水質総量規制制度等の効果を判定する手法等については、水質総量規制制度の中で対応していくべき課題であると認識しています。化学物質については、瀬戸内海の生態系に対しどのような影響があるのかについての調査研究が特に重要であることから、「生態系への化学物質の影響」を追加します。
地方公共団体による環境影響評価に関してはそのほとんど全てが開発推進を大前提とした結論がなされ、住民の間では不信感が定着している。環境アセスメントの公正さについての信頼感を回復するためには先ず環境庁が科学的で公正な、模範的調査を実施して見せるほかない。環境影響評価については、環境影響評価法、環境影響評価条例に基づき対象事業を実施しようとする者が適切に実施することとされています。
15 環境教育・環境学習の推進 
計画や実行段階から住民団体の参加を記すべき。行政が主で住民団体が従であるという色彩が払拭できないものであり、新しい時代にふさわしいものにすべき。環境教育・環境学習については、国、地方公共団体、事業者、民間団体等の間のパートナーシップが大切であることから、御指摘を踏まえ、第一段落の「環境教育・環境学習を推進するものとする。」の前に、「国、地方公共団体、事業者、民間団体等の連携の下、」を追加します。
自然観察といった対象だけではなく、生業の場としての海、瀬戸内海の視点が欠けている。「海とのふれあい」のなかに、多様なプログラムが必要。民間団体が作成するプログラムを積極的に利用するなどの連携が必要。多様なプログラムが必要なことについては、「地域の自然及びそれと一体的な歴史的、文化的要素を積極的に活用しつつ推進する」、また「地域の特性を生かした体験的学習機会の提供等に努める」との記述で対応しています。連携については同上。
17 広域的な連携の強化等 
「各地域間の広域的な連携の一層の強化を図る」では具体的ではない。13府県の担当者、民間団体等による恒常的な組織を作るなど、施策を具体的に提示すべき。既に瀬戸内海知事・市長会議、瀬戸内海研究会議等の連携組織が活動しているところです。このような体制の具体的なあり方については、個別の必要性等を踏まえつつ、関係者間で検討するものであることから、原案どおりが適当です。
「広範な地域」を「一つの海域」に修文する。また、「流域を単位とした関係者間」の後に「及び流域を超えた関係者間」を追加する。瀬戸内海は、大阪湾、播磨灘、広島湾など閉鎖性の湾、灘が連続した海域ですので、「広範な」海域と記述するのが適当です。「瀬戸内海」は、「地域」というより「海域」ですので、「広範な海域」と修文します。また、「流域を単位とした」連携の強化は、健全な水循環機能の維持・回復等においては、流域を単位とした取組が特に効果的であることから記述するものであり、原案どおりが適当です。
18 海外の閉鎖性海域との連携 
海外の閉鎖性水域との連携の冒頭に住民団体、市民とともに連携すると明記すべき。住民団体、市民との連携の観点については「積極的な参加、人的交流、情報の発信及び交換」との記述で対応しています。

 

基本計画全般

意見の概要意見に対する考え方
今私達が21世紀の子供達に残せる自然環境は何か良く考えて行って欲しい。環境保全を前面に出し、また新しい補助金を作るための行動ならばストップしてもらいたい。「第一序説1計画策定の意義」に記述しているように「その恵沢を国民がひとしく享受し、後代の国民に継承すべきものであるとの認識に立って」計画を策定するものです。
国立公園、気候緩和作用としても瀬戸内海の存在意義があり、埋立ての抑制、海砂利採取の禁止、海洋汚染防止を沿岸地域の人たちに強く呼びかけたい。今回の改正案は賛同しうるもの。 
海砂利採取及び埋立てという現下の緊急課題についての厳しい基本認識が示されたことを評価したい。また、現行基本計画に比べて、時代の要請に従って必要項目が追加されているが、瀬戸内法そのものの改正を真剣に検討すべき時期にきている。要は、運用面においてこの基本計画がいかにして実効性をもつものになるかである。今後の動向を厳しく見守っていきたい。